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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165824
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】プレキュアトレッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/56 20060101AFI20241121BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B29D30/56
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082349
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】泉原 優史
【テーマコード(参考)】
4F202
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F202AA24
4F202AD08
4F202AH20
4F202CA21
4F202CM72
4F202CU01
4F202CU20
4F215AH20
4F215AM32
4F215VA11
4F215VA17
4F215VC13
4F215VD06
4F215VL27
4F215VP37
4F501TA11
4F501TA14
4F501TB13
4F501TC06
4F501TE22
4F501TL36
4F501TV06
4F501TV11
4F501TV20
(57)【要約】
【課題】ベア発生を抑制しつつ、材料費を低減し且つ歩留まりを向上させることができる、プレキュアトレッドの製造方法を提供する。
【解決手段】プレキュアトレッド20の製造方法は、リトレッドタイヤ1のリトレッドタイヤ幅W0に対応する金型ショルダー幅W2と、台タイヤ周長L0以上の金型長さL2とを有するプレキュアトレッド加硫金型40を用意し、グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40によって加硫成型する。グリーントレッド30は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2に対して±5mmであり、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に30mm加えた長さに対して±25mmであり、質量G3がプレキュアトレッド20の質量G2に0.8kg加えた重さに対して±0.4kgである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台タイヤの外周面に取り付けられてリトレッドタイヤを形成するためのプレキュアトレッドの製造方法であって、
前記リトレッドタイヤのショルダー幅に対応する金型ショルダー幅と、前記台タイヤの周長より長い金型長さとを有する、プレキュアトレッドを加硫成型するためのプレキュアトレッド加硫金型を用意すること、
グリーントレッドを前記プレキュアトレッド加硫金型によって加硫成型すること
を含んでおり、
前記グリーントレッドは、
前記リトレッドタイヤのタイヤ軸方向に対応する長さであるグリーントレッド幅が、前記金型ショルダー幅に対して±5mmであり、
前記リトレッドタイヤのタイヤ周方向に対応する長さであるグリーントレッド長さが、前記金型長さに30mm加えた長さに対して±25mmであり、
質量が、前記グリーントレッドを前記プレキュアトレッド加硫金型によって加硫成型したときに形成されるはみ出しゴムを除いた質量である前記プレキュアトレッドの質量に0.8kg加えた重さに対して±0.4kgである、
プレキュアトレッドの製造方法。
【請求項2】
前記加硫成型において、前記グリーントレッドのうち加硫成型後に接地面を構成する表面とは反対側である背面と、前記プレキュアトレッド加硫金型と、の間に前記プレキュアトレッドの前記プレキュアトレッド加硫金型への密着を防止するフィルムを介在させる、
請求項1に記載のプレキュアトレッドの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムは、ポリエステルフィルムである、
請求項2に記載のプレキュアトレッドの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムの幅は、前記グリーントレッド幅に対して150%以上210%以下である、
請求項2又は3に記載のプレキュアトレッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキュアトレッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リトレッドタイヤは、トレッドパターンを有する加硫済みのプレキュアトレッドを台タイヤに加硫接着することによって構成される。
【0003】
特許文献1は、グリーントレッドのうち台タイヤと加硫接着される面に帆布を埋設してプレキュアトレッドを加硫して形成し、台タイヤに貼り付けるときに帆布を除去することによりプレキュアトレッドのバフ掛けを不要とすることを開示している。特許文献2は、耐摩耗性のあるゴム組成物からなる上層と、自着性のよいゴム組成物からなる下層とを重ねてプレキュアトレッドを製造することを開示している。特許文献3は、プレキュアトレッドの底部に係止可能なキャビティを形成しつつ、該キャビティを含む底面に剥離可能なポリマーフィルムを張り付けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-057871号公報
【特許文献2】特開昭60-247547号公報
【特許文献3】欧州特許第2199110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリーントレッドをプレキュアトレッド加硫金型にて加硫する場合、加硫されてなるプレキュアトレッドにおけるベア発生を防止するため、グリーントレッドのボリュームをプレキュアトレッド加硫金型に充填するのに必要とされるボリュームよりも余裕を大きく持たせて設定される場合がある。
【0006】
この結果、加硫成型されたプレキュアトレッドからはみ出したゴムであるはみ出しゴムが多く生じ、廃棄されるはみ出しゴムが多いために、材料費が嵩んでいた。さらに、多く形成されたはみ出しゴムが、プレキュアトレッド加硫金型に残存してしまう場合があり、この場合に同加硫金型において次に加硫されるプレキュアトレッドに、残存したはみ出しゴムがゴム異痕として残り不良品となってしまい、歩留まりを悪化させる要因になっていた。
【0007】
本発明は、ベア発生を抑制しつつ、材料費の低減及び歩留まり向上を可能とする、プレキュアトレッドの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
台タイヤの外周面に取り付けられてリトレッドタイヤを形成するためのプレキュアトレッドの製造方法であって、
前記リトレッドタイヤのショルダー幅に対応する金型ショルダー幅と、前記台タイヤの周長より長い金型長さとを有する、プレキュアトレッドを加硫成型するためのプレキュアトレッド加硫金型を用意すること、
グリーントレッドを前記プレキュアトレッド加硫金型によって加硫成型すること
を含んでおり、
前記グリーントレッドは、
前記リトレッドタイヤのタイヤ軸方向に対応する長さであるグリーントレッド幅が、前記金型ショルダー幅に対して±5mmであり、
前記リトレッドタイヤのタイヤ周方向に対応する長さであるグリーントレッド長さが、前記金型長さに30mm加えた長さに対して±25mmであり、
質量が、前記グリーントレッドを前記プレキュアトレッド加硫金型によって加硫成型したときに形成されるはみ出しゴムを除いた質量である前記プレキュアトレッドの質量に0.8kg加えた重さに対して±0.4kgである、
プレキュアトレッドの製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、グリーントレッドはプレキュアトレッド加硫金型に対して適切な大きさであるので、加硫成型されてなるプレキュアトレッドにおけるベア発生を抑制しつつ、はみ出しゴムが過剰に形成されることが抑制される。この結果、廃棄されるはみ出しゴムが減少するので材料費を低減できる。さらに、はみ出しゴムの金型への残存が抑制されるので、後続するプレキュアトレッドにはみ出しゴムがゴム異痕として形成される不良品の発生が抑制される。よって、グリーントレッドを過大に用意することがないのでプレキュアトレッド製造に要する材料費が低減されると共に、プレキュアトレッド製造の歩留まりが向上する。
【0010】
また、前記加硫成型において、前記グリーントレッドのうち加硫成型後に接地面を構成する表面とは反対側である背面と、前記プレキュアトレッド加硫金型と、の間に前記プレキュアトレッドの前記プレキュアトレッド加硫金型への密着を防止するフィルムを介在させてもよい。
【0011】
本構成によれば、フィルムを介して加硫成型することによって、グリーントレッドが加硫成型されてなるプレキュアトレッドのプレキュアトレッド加硫金型への密着が抑制される。さらに、はみ出しゴムのプレキュアトレッド加硫金型への密着もフィルムによって抑制されるので、後続する加硫成型時におけるゴム異痕の発生が抑制される。
【0012】
また、前記フィルムは、ポリエステルフィルムであってもよい。
【0013】
本構成によれば、フィルムは、プレキュアトレッドの加硫成型時における高温、高圧の条件下における耐性を有するので、フィルムによるプレキュアトレッド及びはみ出しゴムのプレキュアトレッド加硫金型への上記密着抑制効果を、好適に発揮させることができる。
【0014】
前記フィルムの幅は、前記グリーントレッド幅に対して150%以上210%以下であってもよい。
【0015】
本構成によれば、フィルムが、グリーントレッドに対して十分幅広であるので、加硫成型されてなるはみ出しゴムがフィルムを幅方向外側から回り込んで、プレキュアトレッド加硫金型側に到達することが抑制される。これによって、はみ出しゴムのプレキュアトレッド加硫金型への密着が抑制されるのでゴム異痕の発生がより確実に抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るプレキュアトレッドの製造方法によれば、ベア発生を抑制しつつ、材料費の低減及び歩留まり向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るリトレッドタイヤの斜視図。
図2図1のリトレッドタイヤに使用されるプレキュアトレッドの斜視図。
図3】プレキュアトレッド加硫金型の分解斜視図。
図4】プレキュアトレッドの製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るプレキュアトレッドの製造方法を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレキュアトレッドの製造方法によって形成されたプレキュアトレッド20を有するリトレッドタイヤ1(再生タイヤともいう)の斜視図である。なお、図1において、プレキュアトレッド20は一部が破断された状態で示されている。図1に示されるように、リトレッドタイヤ1は、トラック、バス又はライトトラック用のタイヤであって、一般に摩耗した古いトレッドが除去された台タイヤ10の外周面11に予め加硫成型されたプレキュアトレッド20を、加硫缶にて加硫接着することによって形成される。
【0020】
図2は、プレキュアトレッド20の単体斜視図である。図2に示されるように、プレキュアトレッド20は、帯状部材であって、パターンが形成されておりリトレッドタイヤ1において接地面を構成する表面21と、その反対側に位置しており台タイヤ10の外周面11に貼り付けられる裏面22とを有している。本実施形態に係るプレキュアトレッド20は表面21と一対の幅方向側面23との間それぞれが角24で接続されたスクエアショルダーである。
【0021】
プレキュアトレッド20は、一対の角4間の寸法であってタイヤ軸方向に対応する方向における幅であるプレキュアトレッド幅W1がリトレッドタイヤ1の接地面におけるタイヤ軸方向の寸法(すなわちショルダー幅)であるリトレッドタイヤ幅W0(図1参照)に等しい。一方で、プレキュアトレッド20は、タイヤ周方向に対応する長さであるプレキュアトレッド長さL1が台タイヤ10のタイヤ周方向の寸法である台タイヤ周長L0(図1参照)よりも長い。すなわち、プレキュアトレッド20は、台タイヤ周長L0よりも長いものが準備され、長さが台タイヤ周長L0に合わせてカットされて使用される。
【0022】
図3は、プレキュアトレッド20を加硫成型するためのプレキュアトレッド加硫金型40の分解斜視図である。図3には、プレキュアトレッド加硫金型40において加硫成型されてプレキュアトレッド20になるグリーントレッド30と、フィルム44とが併せて示されている。図3に示されるように、プレキュアトレッド加硫金型40は、パターン成型金型41と、パターン成型金型41の上側に位置する熱板上型42と、パターン成型金型41の下側に位置する熱板下型43とを有している。
【0023】
パターン成型金型41は、上方に開口したキャビティ41aを有し、キャビティ41aの底面41cに、グリーントレッド30に対してトレッドパターンを転写するための骨41bを有する。すなわち、グリーントレッド30は、キャビティ41a内で加硫されてプレキュアトレッド20に形成される。本実施形態では、パターン成型金型41は複数のセグメント45を長手方向に組み合わせることによってタイヤ周方向に対応する方向に長尺状に延びている。
【0024】
キャビティ41aはプレキュアトレッド20の形状に一致している。すなわち、キャビティ41aのタイヤ周方向に対応する方向における長さである金型長さL2は、プレキュアトレッド長さL1(図2参照)と等しい。また、キャビティ41aの底面41cにおけるタイヤ軸方向に対応する方向における長さである金型ショルダー幅W2は、プレキュアトレッド幅W1(図2参照)に等しい。換言すれば、金型ショルダー幅W2は、加硫成型されるプレキュアトレッド20の接地面のタイヤ軸方向における長さに対応しており、プレキュアトレッド20の一対の角24(図2参照)間のタイヤ接地面における長さに対応している。
【0025】
熱板上型42は、加硫時にグリーントレッド30に対して上側から加硫に必要な熱を与える。熱板上型42は、キャビティ41aを上側の開口において封止する。熱板下型43は、加硫時にグリーントレッド30に対してパターン成型金型41を介して下側から加硫に必要な熱を与える。
【0026】
また、本実施形態では、パターン成型金型41と熱板上型42との間にフィルム44が介在している。フィルム44は、加硫時の温度及び圧力に耐え得る材料製であり、本実施形態ではポリエステル製である。フィルム44によれば、加硫成型時におけるグリーントレッド30が熱板上型42に直接に当接することがなく、これによってグリーントレッド30(又は加硫後のプレキュアトレッド20)の熱板上型42への付着が防止される。
【0027】
グリーントレッド30は、例えば口金(不図示)から押出成形された、所定の厚みを有する帯状の未加硫ゴム部材である。グリーントレッド30は、加硫成型後に接地面を構成する表面31と、加硫成型後に台タイヤ10に貼り付けられる背面32とを有している。グリーントレッド30は、キャビティ41a内において、表面31が下側に位置すると共に背面32が上側に位置するようにセットされる。
【0028】
グリーントレッド30は、タイヤ軸方向に対応する方向における長さであるグリーントレッド幅W3及びタイヤ周方向に対応する方向における長さであるグリーントレッド長さL3が、パターン成型金型41のキャビティ41aの大きさ基づいて設定されている。具体的には、グリーントレッド幅W3は、表面31における長さであって、金型ショルダー幅W2に対して±5mmの長さに設定されている。グリーントレッド長さL3は、金型長さL2に30mm加えた長さに対して±25mm加えた(すなわち金型長さL2に対して5mm以上55mm以下加えた)長さに設定されている。
【0029】
さらに、グリーントレッド30は、グリーントレッド幅W3及びグリーントレッド長さL3が上述したように設定されたうえで、質量G2が、プレキュアトレッド20の質量G1に0.8kg加えた重さに対して±0.4kg加えた(すなわち質量G1に対して0.4kg以上1.2kg以下加えた)重さとなるように設定されている。これによって、グリーントレッド30は平面視におけるサイズ及び質量を満足するように、適切な厚みT3に設定されることになる。
【0030】
フィルム44は、タイヤ軸方向に対応する方向における長さであるフィルム幅W4及びタイヤ周方向に対応する方向における長さであるフィルム長さL4が、グリーントレッド30の大きさ基づいて設定されている。具体的には、フィルム幅W4は、グリーントレッド幅W3に対して150%以上210%以下の長さに設定されている。フィルム長さL4は、グリーントレッド長さL4に対して105%以上120%以下の長さに設定されている。
【0031】
例えば、本実施形態に係るリトレッドタイヤ1は、トラック・バス用として、タイヤサイズが例えば245/70R19.5、265/70R19.5、10R22.5、11R22.5、235/70R22.5、12R22.5、275/70R22.5、275/80R22.5、295/80R22.5であり得る。
【0032】
一例として、金型ショルダー幅W2は190mm以上250mm以下であり、金型長さL2は2800mm以上3500mm以下であり得る。グリーントレッド幅W3は185mm以上255mm以下であり、グリーントレッド長さL3は2805mm以上3555mm以下であり得る。フィルム幅W4は390mmであり、フィルム長さL4は4000mmであり得る。フィルム44は、グリーントレッド長さL4に合わせてカットして使用される。
【0033】
次に、図4を参照してプレキュアトレッド20の製造方法を説明する。図4では、グリーントレッド30、プレキュアトレッド20、及びプレキュアトレッド加硫金型40がタイヤ周方向に対応する方向に直交する断面形状で簡略的に示されている。
【0034】
まず図4(a)を参照して、グリーントレッド30が準備される。グリーントレッド30は、不図示の例えば口金(不図示)から押出成形された、所定の厚みを有する帯状の未加硫ゴム部材である。
【0035】
次に図4(b)に示されるように、プレキュアトレッド加硫金型40を用意して、グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40にセットする。具体的には、グリーントレッド30を、キャビティ41a内において、表面31が下側に位置すると共に背面32が上側に位置するように、パターン成型金型41にセットする。さらに、グリーントレッド30と熱板上型42との間にフィルム44を介在させる。
【0036】
次に図4(c)に示されるように、熱板上型42と熱板下型43とを油圧により上下方向に型締めした後に解放するバンピングを1サイクル(30秒)として複数サイクル繰り返し、グリーントレッド30をキャビティ41aに沿わせて、グリーントレッド30とキャビティ41aとの間に介在し得るエアを抜く。例えば、本実施形態では、型締めによってグリーントレッド30に生じる面圧が約2.94MPaになるように、型締油圧が14.7MPa以上16.9MPa以下に設定されている。また、本実施形態では、バンピングを2サイクル実施する。
【0037】
次に図4(d)に示されるように、グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40において例えば約165℃の条件下で約25分間加硫する。このとき、グリーントレッド30のうち一部のゴムが、プレキュアトレッド加硫金型40の合わせ面すなわちパターン成型金型41とフィルム44との間を通して、キャビティ41aの外側へはみ出て、はみ出しゴム25として加硫される。
【0038】
次に図4(e)に示されるように、熱板上型42を上方へ移動させてプレキュアトレッド加硫金型40を型開きして、はみ出しゴム25を有するプレキュアトレッド20を取り出す。ここで、プレキュアトレッド加硫金型40では、フィルム44がグリーントレッド30と熱板上型42との間にフィルム44が介在している。フィルム44は、グリーントレッド30に対して十分幅広であるので、はみ出しゴム25がフィルム44を超えて幅方向外側からフィルム44の上側へ回り込むことがなく、熱板上型42に接触して付着することが防止されている。この結果、プレキュアトレッド20は、はみ出しゴム25が接続された状態で取り出される。
【0039】
最後に図4(f)に示されるように、はみ出しゴム25をカッタ46でカットすることによって、プレキュアトレッド20を製造できる。
【0040】
本実施形態に係るプレキュアトレッド20の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0041】
(1)プレキュアトレッド20の製造方法は、
台タイヤ10の外周面11に取り付けられてリトレッドタイヤ1を形成するためのプレキュアトレッド20の製造方法であって、
リトレッドタイヤ1のリトレッドタイヤ幅W0に対応する金型ショルダー幅W2と、台タイヤ10の台タイヤ周長L0より長い金型長さL2とを有する、プレキュアトレッド20を加硫成型するためのプレキュアトレッド加硫金型40を用意すること、
グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40によって加硫成型すること
を含んでおり、
グリーントレッド30は、
リトレッドタイヤ1のタイヤ軸方向に対応する長さであるグリーントレッド幅W3が、金型ショルダー幅W2に対して±5mmであり、
リトレッドタイヤ1のタイヤ周方向に対応する長さであるグリーントレッド長さL3が、金型長さL2に30mm加えた長さに対して±25mmであり、
質量G3が、グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40によって加硫成型したときに形成されるはみ出しゴム25を除いた質量であるプレキュアトレッド20の質量G2に0.8kg加えた重さに対して±0.4kgである。
【0042】
その結果、グリーントレッド30はプレキュアトレッド加硫金型40に対して適切な大きさであるので、加硫成型されてなるプレキュアトレッド20におけるベア発生を抑制しつつ、はみ出しゴム25が過剰に形成されることが抑制される。この結果、廃棄されるはみ出しゴム25が減少するので材料費を低減できる。さらに、はみ出しゴム25のプレキュアトレッド加硫金型40への残存が抑制されるので、後続して加硫成型されるプレキュアトレッド20にはみ出しゴム25がゴム異痕として形成される不良品の発生が抑制される。よって、グリーントレッド30を過大に用意することがないので材料費が低減されると共に、はみ出しゴム25に起因した不良品発生が抑制されるので歩留まりが向上する。
【0043】
(2)また、加硫成型において、グリーントレッド30のうち加硫成型後に接地面を構成する表面31とは反対側である背面32と、プレキュアトレッド加硫金型40の熱板上型42と、の間にプレキュアトレッド20の熱板上型42への密着を防止するフィルムを介在させる。
その結果、フィルム44を介して加硫成型することによって、加硫成型されてなるプレキュアトレッド20のプレキュアトレッド加硫金型40の熱板上型42への密着が抑制される。さらに、はみ出しゴム25の熱板上型42への密着も抑制されるので、後続する加硫成型時におけるゴム異痕の発生が抑制される。
【0044】
(3)また、フィルム44は、ポリエステルフィルムである。
その結果、フィルム44は、プレキュアトレッド20の加硫成型時における高温、高圧の条件下における耐性を有するので、フィルム44によるプレキュアトレッド20及びはみ出しゴム25のプレキュアトレッド加硫金型40への上記密着抑制効果を、好適に発揮させることができる。
【0045】
(4)また、フィルム幅W4は、グリーントレッド幅W3に対して150%以上210%以下である。
その結果、フィルム44が、グリーントレッド30に対して十分幅広であるので、加硫成型されてなるはみ出しゴム25がフィルム44を幅方向外側から回り込んで、プレキュアトレッド加硫金型40の熱板上型42側に到達することが抑制される。これによって、はみ出しゴム25の熱板上型42への密着が抑制されるのでゴム異痕の発生がより確実に抑制される。
【0046】
なお、本発明に係るプレキュアトレッドの製造方法は、上記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【実施例0047】
グリーントレッド30のサイズ(W3、L3、G3)、フィルム44の有無、及びバンピング回数を変化させた条件(比較例1~6、実施例1~3)の下、グリーントレッド30をプレキュアトレッド加硫金型40において加硫形成し、得られたプレキュアトレッド20の不良発生を評価した。
【0048】
表1に示されるように、比較例1~3は、上記条件の1つ又は複数が上記実施形態の数値範囲を満たしていない。
【0049】
具体的には、比較例1は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2に対して-6mmでありW3の数値範囲の下限を下回っており、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+5mmでありL3の数値範囲の下限である。このため、グリーントレッド30の質量G3はプレキュアトレッド20の質量G2に対して+0.3kgでありG3の数値範囲の下限を下回っている。
【0050】
比較例2は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2に対して+6mmでありW3の数値範囲の上限を上回っており、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+55mmでありL3の数値範囲の上限である。このため、グリーントレッド30の質量G3はプレキュアトレッド20の質量G2に対して+1.3kgでありG3の数値範囲の上限を上回っている。
【0051】
比較例3は、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+3mmでありL3の数値範囲の下限を下回っているが、グリーントレッド幅W3及び質量G3は数値範囲内である。
【0052】
比較例4は、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+60mmでありL3の数値範囲の上限を上回っているが、グリーントレッド幅W3及び質量G3は数値範囲内である。
【0053】
比較例5,6はいずれもグリーントレッドのサイズは数値範囲であるが、比較例5ではフィルム44を介在させずに加硫成形し、比較例6ではバンピングを1サイクルのみ実施した。比較例1~5はバンピングを2サイクル実施した。比較例1~4,6はフィルム44を介在させて加硫成形した。
【0054】
表2に示されるように、実施例1~3は、上記実施形態の数値範囲を満たしている。実施例1~3はいずれも、フィルム44を介在させて加硫成形しており、バンピングを2サイクル実施した。
【0055】
具体的には、実施例1は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2に対して-5mmであり、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+5mmであり、W3及びL3の数値範囲の下限に設定されている。このため、グリーンタイヤの質量G3はプレキュアトレッド20の質量G2に対して+0.4kgでありG3の数値範囲の下限である。
【0056】
実施例2は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2と等しく、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+30mmであり、W3及びL3の数値範囲の中央に設定されている。このため、グリーンタイヤの質量G3はプレキュアトレッド20の質量G2に対して+0.8kgでありG3の数値範囲の中央である。
【0057】
実施例3は、グリーントレッド幅W3が金型ショルダー幅W2に対して+5mmであり、グリーントレッド長さL3が金型長さL2に対して+55mmであり、W3及びL3の数値範囲の上限に設定されている。このため、グリーンタイヤの質量G3はプレキュアトレッド20の質量G2に対して+1.2kgでありG3の数値範囲の中央である。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1に示されるように、グリーントレッド幅W3、グリーントレッド長さL3及び質量G3の少なくとも1つが、それぞれ数値範囲の下限値を下回っている、比較例1,3はゴムボリュームが不足しており、ベアが発生する結果となった。また、グリーントレッド幅W3、グリーントレッド長さL3及び質量G3の少なくとも1つが、それぞれ数値範囲の上限値を上回っている、比較例2,4はゴムボリュームが過大となっており、はみ出しゴムが多く形成される結果、はみ出しゴムに起因するゴム異痕が発生する結果となった。
【0061】
また、フィルムを介在させずに加硫成形した比較例5では、熱板上型42にグリーントレッド30又は加硫成形されてなるプレキュアトレッド20が張り付きやすく、同プレキュアトレッド加硫金型40によって後続して加硫成形されるプレキュアトレッドにおいてゴム異痕が発生する結果となった。
【0062】
表2に示されるように、実施例1~3では、グリーントレッド幅W3、グリーントレッド長さL3及び質量G3の全てが、それぞれの数値範囲であるので、グリーントレッド30のボリュームが適正となり、ベア発生もゴム異痕も発生しなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 リトレッドタイヤ
10 台タイヤ
11 外周面
20 プレキュアトレッド
25 はみ出しゴム
30 グリーントレッド
40 プレキュアトレッド加硫金型
41 パターン成型金型
41a キャビティ
42 熱板上型
43 熱板下型
44 フィルム
W2 金型ショルダー幅
W3 グリーントレッド幅
W4 フィルム幅
L2 金型長さ
L3 グリーントレッド長さ
G1 プレキュアトレッドの質量
G2 グリーントレッドの質量
図1
図2
図3
図4