(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165827
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】熱交換型換気装置、熱交換型換気システム及び熱交換型換気装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/80 20180101AFI20241121BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20241121BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241121BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20241121BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F7/08 101B
F24F7/08 101J
F24F11/74
F24F11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082352
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】桑名 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳生
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB01
3L260AB17
3L260BA32
3L260CB51
3L260CB65
3L260FA06
3L260FB15
(57)【要約】
【課題】温調コイルに冷媒を供給する室外機が一時的な給気風量の低下により故障することを抑制した熱交換型換気装置を得ること。
【解決手段】熱交換型換気装置50は、給気流を発生させる給気送風機8及び温調コイル2を有する室内機1と、加熱又は冷却された冷媒を温調コイル2に送る室外機4とを備え、室内機1は、給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部71を備え、給気送風機8は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能であり、温調制御部は、風量推定部によって推定した給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を行い、風量推定部によって推定した給気風量が閾値未満の場合には、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気流を発生させる給気送風機及び温調コイルを有する室内機と、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルに送る室外機とを備え、前記温調コイルにおいて前記冷媒と前記給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気装置であって、
前記室内機は、前記給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部を備え、
前記給気送風機は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能であり、
前記風量推定部は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気風量を推定し、
前記温調制御部は、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行い、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合には、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を強制停止させることを特徴とする熱交換型換気装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を強制停止させたことを報知する処理を行う報知部を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱交換型換気装置。
【請求項3】
給気流を発生させる給気送風機及び温調コイルを有する室内機と、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルに送る室外機とを備え、前記温調コイルにおいて前記冷媒と前記給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気装置であって、
前記室内機は、前記給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部を備え、
前記給気送風機は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能であり、
前記風量推定部は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気風量を推定し、
前記温調制御部は、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行い、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合には、前記給気風量が増大するように前記給気送風機の風量ノッチを変更することを特徴とする熱交換型換気装置。
【請求項4】
前記温調制御部は、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が予め設定された閾値未満の場合には、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が前記閾値以上になるまで、前記給気送風機の風量ノッチを段階的に変更することを特徴とする請求項3に記載の熱交換型換気装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記給気送風機の風量ノッチの変更により前記給気風量が前記閾値未満から前記閾値以上になったことを報知する処理を行う報知部を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の熱交換型換気装置。
【請求項6】
給気流を発生させる給気送風機を有する室内機と、冷媒と前記給気流との間で熱交換する温調コイルを有する温調コイルユニットと、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルユニットに送る室外機とを備え、前記温調コイルユニットにおいて前記冷媒と前記給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気システムであって、
前記室内機は、前記給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部を備え、
前記給気送風機は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能であり、
前記風量推定部は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気風量を推定し、
前記温調制御部は、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を行い、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合には、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を強制停止させることを特徴とする熱交換型換気システム。
【請求項7】
給気流を発生させる給気送風機を有する室内機と、冷媒と前記給気流との間で熱交換する温調コイルを有する温調コイルユニットと、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルユニットに送る室外機とを備え、前記温調コイルユニットにおいて前記冷媒と前記給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気システムであって、
前記室内機は、前記給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部を備え、
前記給気送風機は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能であり、
前記風量推定部は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気風量を推定し、
前記温調制御部は、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、前記温調コイルユニット及び前記室外機による前記給気流の温調を行い、前記風量推定部によって推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合には、前記給気風量が増大するように前記給気送風機の風量ノッチを変更することを特徴とする熱交換型換気システム。
【請求項8】
複数の風量ノッチのいずれかに設定可能である給気送風機及び温調コイルを有する室内機と、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルに送る室外機とを備え、前記温調コイルにおいて前記冷媒と前記給気送風機が発生させる給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気装置の制御方法であって、
前記室内機は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気流の風量である給気風量を推定するステップと、
推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上であるか否かを判断するステップと、
推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上である場合に、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行うステップと、
推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合には、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を強制停止させるステップとを備えることを特徴とする熱交換型換気装置の制御方法。
【請求項9】
複数の風量ノッチのいずれかに設定可能である給気送風機及び温調コイルを有する室内機と、加熱又は冷却された冷媒を前記温調コイルに送る室外機とを備え、前記温調コイルにおいて前記冷媒と前記給気送風機が発生させる給気流との間で熱交換することによって、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行う熱交換型換気装置の制御方法であって、
前記室内機は、前記給気送風機に設定された風量ノッチにおける前記給気流の風量である給気風量を推定するステップと、
推定した前記給気風量が予め設定された閾値以上の場合に、前記温調コイル及び前記室外機による前記給気流の温調を行うステップと、
推定した前記給気風量が前記閾値未満の場合に、前記給気風量が増大するように前記給気送風機の風量ノッチを変更するステップとを備えることを特徴とする熱交換型換気装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直膨コイルを用いた熱交換器である温調コイルによって給気流を温調する熱交換型換気装置、熱交換型換気システム及び熱交換型換気装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和によるエネルギーロスを低減しつつ室内を快適な温度に保つために、給気送風機によって室外から室内へ導入される給気と、排気送風機によって室内から室外へ排出される排気との間で熱交換を行わせた上で給気を室内へ導く熱交換型換気装置が用いられている。
【0003】
また、熱交換型換気装置の一種として、伝熱管の外面に複数のフィンを配置した特許文献1に開示されるような直膨コイルを用いた熱交換器を給気風路に設置することによって給気流を温調するものがある。直膨コイルを用いた熱交換器は、「温調コイル」と称される。
【0004】
温調コイルは、冷媒配管によって室外機と接続される。室外機において加熱又は冷却された冷媒が冷媒配管を通じて温調コイルに送られ、伝熱管内を通ることにより、伝熱管の内部を流れる冷媒とフィンを通過する給気流との間で熱交換が行われ、給気流が温調される。
【0005】
温調コイルを有する熱交換型換気装置において、温調コイルを通過する給気流の風量が低下すると、温調コイルでの熱交換が行われにくくなる。このため、例えば冬季の暖房運転時の場合は、室外機に戻る冷媒の圧力が上がって冷媒配管において凝縮不良を引き起こし、冷媒を循環させるポンプが高負荷となったり、冷媒が高圧となったりすることで、室外機の故障リスクが高くなる。同様に夏季の冷房運転時においては、蒸発不良を引き起こし、直膨コイルの凍結又は冷媒の逆流によってコンプレッサが壊れる可能性があり、室外機の故障リスクが高くなる。
【0006】
一方で、近年の熱交換型換気装置の送風機には、直流ブラシレスモータなどの採用により、モータの動作点を細かく指定することができるようになったため、風量ノッチが多段階化されたり、省エネルギー性向上のために低風量ノッチの風量が小さく設定されたりする傾向にある。
【0007】
このため、温調コイルを有するとともに風量ノッチが多段階化された熱交換型換気装置では、給気風量が低下した際に室外機が故障することを防止するため、予め設定された風量ノッチ以下では、室外機から温調コイル及び室外機による給気流の温調が停止することがある。温調コイル及び室外機による給気流の温調が行われる状態は、「サーモオン」と称され、温調コイル及び室外機による給気流の温調が強制停止された状態は「サーモオフ」と称される。
【0008】
サーモオン及びサーモオフが可能な熱交換型換気装置の中には、給気流の温調を実行することを優先する場合に、給気送風機の風量ノッチを、サーモオンとサーモオフとの切り替えの基準となる風量ノッチよりも風量が低い風量ノッチに設定できないようにされたものがある。このような熱交換型換気装置では、温調の実行を優先する場合には、サーモオフされない範囲でしか給気送風機の風量ノッチを設定できないため、室外機の故障を防ぎつつ給気流の温調を実行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、室外の給気流吸込口又は室内の給気流吹出口が一時的に塞がれたりすることによって、設定した風量ノッチでの風量よりも給気風量が低くなってしまうことがある。例えば、風によって飛ばされた異物が室外の給気流吸込口に付着してしまった場合には、異物が給気流吸込口から脱落するまでの間は、給気風量が低下してしまうことになる。このため、温調の実行を優先する場合にサーモオフされない範囲でしか送風機の風量ノッチを設定できない熱交換型換気装置において、サーモオフする必要がない風量ノッチに設定したにも関わらず、温調コイルと給気流との間の熱交換が不十分となるレベルにまで実際の給気風量が低下してしまい、室外機を故障させてしまうことがあった。
【0011】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、温調コイルに冷媒を供給する室外機が一時的な給気風量の低下により故障することを抑制した熱交換型換気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る熱交換型換気装置は、給気流を発生させる給気送風機及び温調コイルを有する室内機と、加熱又は冷却された冷媒を温調コイルに送る室外機とを備え、温調コイルにおいて冷媒と給気流との間で熱交換することによって、温調コイル及び室外機による給気流の温調を行う。室内機は、給気流の風量である給気風量を推定する風量推定部と、温調コイル及び室外機による給気流の温調を制御する温調制御部とを有する制御部を備える。給気送風機は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能である。風量推定部は、給気送風機に設定された風量ノッチにおける給気風量を推定する。温調制御部は、風量推定部によって推定した給気風量が予め設定された閾値以上の場合には、温調コイル及び室外機による給気流の温調を行い、風量推定部によって推定した給気風量が閾値未満の場合には、温調コイル及び室外機による給気流の温調を強制停止させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、温調コイルに冷媒を供給する室外機が一時的な給気風量の低下により故障することを抑制した熱交換型換気装置を得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る熱交換型換気装置の構成を示す図
【
図2】実施の形態1に係る熱交換型換気装置の室内機の制御部の構成を示す図
【
図3】実施の形態1に係る熱交換型換気装置の動作の流れを示すフローチャート
【
図4】実施の形態2に係る熱交換型換気装置の温調優先モード時の動作の流れを示すフローチャート
【
図5】実施の形態2に係る熱交換型換気装置の風量と機外静圧との関係を示す図
【
図6】実施の形態3に係る熱交換型換気装置の室内機の制御部の構成を示す図
【
図7】実施の形態4に係る熱交換型換気システムの構成を示す図
【
図8】実施の形態1から実施の形態4に係る室内機の制御部のハードウェア構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施の形態に係る熱交換型換気装置、熱交換型換気システム及び熱交換型換気装置の制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置の構成を示す図である。熱交換型換気装置50は、室内機1と、室外機4とを備える。室内機1は、給気流を形成する給気送風機8と、排気流を形成する排気送風機9と、給気流と排気流との間で熱交換を行わせる熱交換素子17と、排気流の空気質を測定する空気質センサ6と、冷媒配管15,16で室外機4に接続された温調コイル2と、給気送風機8、排気送風機9及び温調コイル2を制御する制御部71とを備える。給気送風機8は、複数の風量ノッチのいずれかに設定可能である。温調コイル2は、冷媒と給気流との間で熱交換することによって給気流を温調する。温調コイル2は、伝熱管の外面に複数のフィンを配置した直膨コイルを有しており、伝熱管の内部を冷媒が通ることにより、フィンを通過する給気流と冷媒との間で熱交換する。室外機4は、加熱又は冷却された冷媒を温調コイル2に送る。
【0017】
室内機1には、外壁31に設置された給気吸込口21に通じる室外空気吸込ダクト11、換気対象空間の天井32に設置された給気吹出口22に通じる室内空気吹出ダクト12、天井32に設置された排気吸込口23に通じる室内空気吸込ダクト13及び外壁31に設置された排気吹出口24に通じる室外空気吹出ダクト14が接続されている。給気送風機8は、給気吸込口21及び室外空気吸込ダクト11を通じて屋外空気OAを吸い込み、室内空気吹出ダクト12及び給気吹出口22を通じて給気SAを換気対象空間に吹き出すことにより給気流を形成する。また、排気送風機9は、排気吸込口23及び室内空気吸込ダクト13を通じて室内空気RAを吸い込み、室外空気吹出ダクト14及び排気吹出口24を通じて排気EAを屋外に吹き出すことにより排気流を形成する。
【0018】
空気質センサ6は、例えば、排気流の二酸化炭素濃度又は悪臭成分の濃度を検知する。なお、空気質センサ6は、室内から室内空気吸込ダクト13に流入する室内空気の空気質を検知することができる位置であれば、室内機1の外部に設置されてもよい。
【0019】
室外機4は、温調コイル2への冷媒の供給の有無と、温調コイル2に供給する冷媒の加熱及び冷却を制御する制御部72を備える。室外機4において加熱又は冷却された冷媒は、冷媒配管15を通じて温調コイル2に送られる。温調コイル2において、給気流との熱交換が行われた冷媒は、冷媒配管16を通じて室外機4に戻される。
【0020】
給気風量の設定値は、ユーザによる設定、又は空気質センサ6の測定値に基づく風量自動調整などによって変化する。空気質センサ6の測定値に基づく風量自動調整を行う場合には、制御部71は、二酸化炭素濃度又は悪臭成分の濃度が予め設定される基準値以下となって室内の快適性が保たれるように給気風量を設定し、設定した給気風量で換気が行われるように給気送風機8を制御する。
【0021】
図2は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置の室内機の制御部の構成を示す図である。制御部71は、給気送風機8のモータを制御するモータ制御部711と、給気送風機8のモータの回転速度を検出する回転速度検出部712と、給気風量を推定する風量推定部713と、データテーブル714aを記憶する記憶部714と、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を制御する温調制御部715とを備える。データテーブル714aは、給気送風機8のモータの回転速度と、給気送風機8が発生させる気流の風量との関係を風量ノッチごとに示すテーブルである。
【0022】
風量推定部713は、設定されている風量ノッチの情報と、回転速度検出部712で検出したモータの現在の回転速度の情報と、データテーブル714aとに基づいて、現在の給気風量を推定する。
【0023】
データテーブル714aは、給気送風機8のモータ電流と、給気送風機8が発生させる気流の風量との関係を風量ノッチごとに示すテーブルであってもよい。この場合、制御部71は、回転速度検出部712の代わりにモータ電流検出部を備えた構成とし、風量推定部713は、モータの回転速度の代わりにモータ電流に基づいて給気風量を推定する。したがって、給気送風機8のモータの回転速度と給気送風機8が発生させる気流の風量との関係を風量ノッチごとに示す場合、及び、データテーブル714aが給気送風機8のモータ電流と給気送風機8が発生させる気流の風量との関係を風量ノッチごとに示す場合のどちらの場合でも、風量推定部713は、設定された風量ノッチにおける給気風量を推定する。
【0024】
給気風量の推定は、常時行ってもよいし、予め設定された間隔ごとに定期的に行ってもよいが、ユーザの指示又は空気質センサ6の測定値に基づく指示によって風量ノッチが切り替わった直後には、給気風量の推定を行うものとする。
【0025】
温調制御部715は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制的に停止させるためのサーモオフ指令と、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を許可するサーモオン指令とを室外機4の制御部72に出力する。
【0026】
制御部72は、サーモオフ指令を受信すると、温調コイル2への冷媒の供給及び冷媒の加熱又は冷却を停止させる。サーモオフ時に制御部72がサーモオン指令を受信すると、温調コイル2への冷媒の供給及び冷媒の加熱又は冷却を実行させる。
【0027】
図3は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置の動作の流れを示すフローチャートである。ステップS101において、制御部71は、給気送風機8のモータの回転速度を検出する。ステップS102において、制御部71は、給気風量を推定する。ステップS103において、制御部71は、推定した給気風量が閾値Qmin以上であるか否かを判断する。なお、閾値Qminは、給気流と冷媒との間の熱交換量の低下による室外機4の故障を防止するための最低風量に相当する閾値であり、室外機4の機種によって定まる。なお、閾値Qminは、室外機4の故障を回避することができる値であるならば、ユーザが任意に設定してもよい。
【0028】
推定した給気風量が、閾値Qmin以上であれば、ステップS103でYesとなり、ステップS104において、制御部71は、サーモオン指令を室外機4の制御部72に出力する。ステップS104の後、処理はステップS101に戻る。
【0029】
推定した給気風量が、閾値Qmin未満であれば、ステップS103でNoとなり、ステップS105において、制御部71は、サーモオフ指令を室外機4の制御部72に出力する。ステップS105の後、処理はステップS101に戻る。
【0030】
上記の動作を行うことにより、推定した給気風量が閾値Qmin以上であれば、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を行い、推定した給気風量が閾値Qmin未満であれば、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制停止させることができる。また、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制停止させた後に、推定した給気風量が閾値Qmin以上になったら、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を再開することができる。このため、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50は、温調コイル2に冷媒を供給する室外機4が一時的な給気風量の低下により故障することを抑制することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態2に係る熱交換型換気装置50の構成は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50と同様である。実施の形態2に係る熱交換型換気装置50は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を行う温調優先モードと、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を行わない省エネルギー優先モードとの2種類の動作モードのいずれかのモードに設定されて動作する。実施の形態2に係る熱交換型換気装置50において、温調制御部715は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を制御する際に、推定した給気風量に基づいて、モータ制御部711によって給気送風機8のモータを制御して給気送風機8の風量ノッチを変更する。
【0032】
図4は、実施の形態2に係る熱交換型換気装置の温調優先モード時の動作の流れを示すフローチャートである。温調優先モード時は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を許可するサーモオンの状態で処理が開始される。ステップS201からステップS203の処理は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50のステップS101からステップS103の処理と同様である。
【0033】
推定した給気風量が、閾値Qmin以上であれば、ステップS203でYesとなり、ステップS204において、制御部71は、直前に行った風量ノッチの変更が風量ノッチを上げる変更であるか否かを判断する。直前に行った風量ノッチの変更が風量ノッチを上げる変更であれば、ステップS204でYesとなり、処理はステップS201に戻る。直前に行った風量ノッチの変更が風量ノッチを下げる変更であれば、ステップS204でNoとなり、ステップS205において、制御部71は、風量ノッチを1段階下げる。ステップS205の後、処理はステップS201に戻る。
【0034】
また、推定した給気風量が、閾値Qmin未満であれば、ステップS203でNoとなり、ステップS206において、制御部71は、現在の風量ノッチが最大の風量ノッチであるか否かを判断する。現在の風量ノッチが最大の風量ノッチであれば、ステップS206でYesとなり、ステップS207において、制御部71は、室外機4の制御部72にサーモオフ指令を出力し、処理を終了する。現在の風量ノッチが最大の風量ノッチでなければ、ステップS206でNoとなり、ステップS208において、制御部71は、風量ノッチを1段階上げる。ステップS208の後、処理はステップS201に戻る。
【0035】
上記の動作を行うことにより、温調優先モード時には、推定した給気風量が閾値Qmin以上であり、かつ直前に風量ノッチを上げる変更を行っていなければ、風量ノッチを下げて給気風量を低下させることができる。また、推定した給気風量が閾値Qmin未満であり、かつ現在の風量ノッチが最大の風量ノッチでなければ、風量ノッチを上げて換気風量を増大させることができる。さらに、推定した給気風量が閾値Qmin以上であり、かつ直前に風量ノッチを上げる変更を行っていれば、現在の風量ノッチを維持することができる。さらに、推定した給気風量が閾値Qmin未満であり、かつ現在の風量ノッチが最大の風量ノッチであれば、サーモオフして温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制停止させることができる。これにより、温調優先モード時には給気流と冷媒との間の熱交換量の低下による室外機4の故障を防止するための最低風量を確保できるため、温調コイル2に冷媒を供給する室外機4が一時的な給気風量の低下により故障することを抑制することができる。
【0036】
図5は、実施の形態2に係る熱交換型換気装置の風量と機外静圧との関係を示す図である。ここでは、給気送風機8の風量ノッチを4段階に設定可能であるとし、
図5には、各風量ノッチに対応する風量曲線である曲線F01,F02,F03,F04のみを図示している。なお、給気送風機8の風量ノッチは、4段階に限定されない。曲線C00,C01,C02は、圧力損失曲線を示している。曲線F04は、最大の風量となる風量ノッチに対応する風量曲線である。
【0037】
給気流と冷媒との間の熱交換量の低下による室外機4の故障を防止するための最低風量相当する閾値である閾値Qminは、
図5において破線で示されている。
【0038】
ここで、予め設定された風量ノッチ以下ではサーモオフする熱交換型換気装置を実施の形態2の比較例に係る熱交換型換気装置とする。実施の形態2の比較例に係る熱交換型換気装置において、曲線F03は、室外機にサーモオン指令を出力する最小風量ノッチに対応するものとする。
【0039】
例えば、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C00で表される場合、実施の形態2の比較例に係る熱交換換気装置では、曲線F03に対応する風量ノッチでの給気風量は、点P00に対応する風量となる。また、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C01で表される場合、実施の形態2の比較例に係る熱交換換気装置では、曲線F03に対応する風量ノッチでの給気風量は、点P01に対応する風量となる。このため、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C00又は曲線C01で表される場合には、曲線F03に対応する風量ノッチで給気送風機8を動作させている際に給気風量が閾値Qminを下回る状態が継続することはなく、Qmin以上の給気風量が確保されるため、サーモオンしても室外機4が故障することはない。
【0040】
一方、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C02で表される場合、実施の形態2の比較例に係る熱交換換気装置では、曲線F03に対応する風量ノッチでの給気風量は、点P05に対応する風量となる。この時の給気風量はQmin未満であるため、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C02で表される場合には、サーモオン時に曲線F03に対応する風量ノッチで給気送風機を動作させると、室外機が故障するリスクがある。
【0041】
実施の形態2に係る熱交換型換気装置50においては、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C01で表される場合に、ユーザの指示又は空気質センサ6の測定値に基づく指示が曲線F01に対応する風量ノッチでの点P02に対応する風量での動作であったとしても、温調優先モード時には、制御部71は、曲線F01に対応する風量ノッチから曲線F02に対応する風量ノッチに変更し、点P04に対応する風量で給気送風機8を動作させる。なお、曲線F01に対応する風量ノッチと曲線F02に対応する風量ノッチとの間の風量ノッチを連続的に変更可能である場合は、制御部71は点P03に対応する風量で給気送風機8を動作させる。
【0042】
なお、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C02で表される場合には、最大風量となる曲線F04に対応する風量ノッチで給気送風機8を動作させても給気風量が閾値Qmin以上とならないため、制御部71はサーモオフ指令を室外機4の制御部72に出力する。
【0043】
省エネルギー優先モード時には、制御部71は、最小の風量ノッチで給気送風機8を動作させる。
図5に示す例においては、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C01で表される場合には、曲線F01に対応する最小の風量ノッチで給気送風機8を動作させるため、給気風量は点P02に対応する風量となる。この風量は閾値Qmin未満であるため、制御部71は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を強制停止させる。なお、給気送風機8が曲線F02,F03,F04で示される風量曲線に対応する風量ノッチに設定可能である場合は、最小の風量ノッチは曲線F02に対応する風量ノッチとなる。このとき、給気吸込口から給気吹出口までの間の風路の圧力損失が曲線C01で表される場合には、給気風量は、点P04に対応する風量となる。この風量は閾値Qmin以上であるため、制御部71は、温調コイル2及び室外機4による給気流の温調を許可する。すなわち、省エネルギー優先モード時には、設定された送風ノッチに関わらず、給気風量が閾値Qmin以上であればサーモオンし、給気風量が閾値Qmin未満であればサーモオフする。
【0044】
なお、常時サーモオフするサーモオフモードを設け、熱交換型換気装置50をサーモオフモードで動作させてもよい。熱交換型換気装置50をサーモオフモードで動作させる場合は、運転状況に関わらずサーモオンされることがないため、風量自動制御及びユーザによる風量ノッチの指示に制限はなく、省エネルギー性の高い運転が可能である。
【0045】
実施の形態2に係る熱交換型換気装置50は、風量推定部713によって推定した給気風量が閾値Qmin未満の場合には、給気風量が増大するように給気送風機8の風量ノッチを変更する。このため、給気風量の低下が一過性の原因による場合だけでなく、熱交換素子17又は不図示のフィルタの目詰まりが原因で給気風量が低下した場合でも、室外機4の故障を防止することができる。
【0046】
また、風量推定部713によって推定した給気風量が、予め設定された閾値Qmin以上の場合には、直前に行った風量ノッチの変更が風量ノッチを上げる変更でなければ、風量ノッチを1段階下げる。このため、室外空気吸込ダクト11及び室内空気吹出ダクト12のダクト長が設計値よりも短いことが原因で給気風量が設計値よりも大きくなった場合には、給気風量が閾値Qminを下回らない範囲で給気送風機8の風量ノッチを下げることができる。したがって、実施の形態2に係る熱交換型換気装置50は、室外機4の故障を防止しつつ、消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0047】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係る熱交換型換気装置の室内機の制御部の構成を示す図である。実施の形態3に係る熱交換型換気装置50の室内機1の制御部71は、報知部716を備える点で、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50の室内機1の制御部71と相違する。この他は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50の室内機1の制御部71と同様である。
【0048】
報知部716は、室内に設置された不図示のリモートコントローラ又は不図示のユーザ端末に、温調優先モード中にサーモオフしたことを報知するメッセージ及び温調優先モード中に風量ノッチの変更により給気風量が閾値Qmin未満から閾値Qmin以上になったことを報知するメッセージを表示させる。ユーザ端末の例としては、スマートフォン端末及びタブレット端末を上げることができるが、これに限定されない。
【0049】
実施の形態3に係る熱交換型換気装置50は、報知部716が温調優先モード中にサーモオフしたことを報知するメッセージ及び温調優先モード中に風量ノッチの変更により給気風量が閾値Qmin未満から閾値Qmin以上になったことを報知する処理を行うため、熱交換型換気装置50のユーザは、温調優先モードであるにも関わらず温調を行えない状態であること、及び温調を行えない状態から温調を行える状態になったことを知ることができる。
【0050】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係る熱交換型換気システムの構成を示す図である。実施の形態4に係る熱交換型換気システム100は、熱交換型換気装置50と、温調コイルユニット3とを備える。温調コイルユニット3は、温調コイル2を備える。温調コイルユニット3は、室内空気吹出ダクト12によって給気吹出口22と接続されており、接続ダクト5によって室内機1と接続されている。温調コイルユニット3は、室内機1から接続ダクト5に吹き出された給気流を温調する。
【0051】
室内機1は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50の室内機1から温調コイル2を省いた構成である。すなわち、実施の形態4に係る熱交換型換気システム100は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50の室内機1から温調コイル2を独立させ、熱交換型換気装置50と温調コイルユニット3と組み合わせてシステムとして構成したものである。
【0052】
実施の形態4に係る熱交換型換気システム100の動作は、実施の形態1に係る熱交換型換気装置50と同様であるため、重複する説明は省略する。なお、実施の形態2又は実施の形態3に係る熱交換型換気装置50の室内機1から温調コイル2を独立させて構成した熱交換型換気システム100に、実施の形態2又は実施の形態3に係る熱交換型換気装置50と同様の動作を行わせることも可能である。
【0053】
次に、実施の形態1から実施の形態4に係る室内機1の制御部71のハードウェア構成について説明する。
【0054】
図8は、実施の形態1から実施の形態4に係る室内機の制御部のハードウェア構成を示す図である。制御部71は、各種処理を実行するプロセッサ91と、メインメモリであるメモリ92と、情報を記憶する記憶装置93とを備えたコンピュータシステムによって実現される。
【0055】
プロセッサ91は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ92には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリを用いることができる。記憶装置93には、給気送風機8による給気風量推定及び変更と、サーモオンオフの切り替えとを実行するためのプログラムが格納されている。
【0056】
上記のコンピュータシステムは、プロセッサ91が記憶装置93に記憶された、各構成要素の処理に対応するプログラムをメモリ92に読み出して実行することにより、制御部71の機能を実現する。また、メモリ92は、プロセッサ91が実行する各処理における一時メモリとしても使用される。プロセッサ91が実行するプログラムは、記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよいし、ネットワークを介して提供されてもよい。
【0057】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 室内機、2 温調コイル、3 温調コイルユニット、4 室外機、5 接続ダクト、6 空気質センサ、8 給気送風機、9 排気送風機、11 室外空気吸込ダクト、12 室内空気吹出ダクト、13 室内空気吸込ダクト、14 室外空気吹出ダクト、15,16 冷媒配管、17 熱交換素子、21 給気吸込口、22 給気吹出口、23 排気吸込口、24 排気吹出口、31 外壁、32 天井、50 熱交換型換気装置、71,72 制御部、91 プロセッサ、92 メモリ、93 記憶装置、100 熱交換型換気システム、711 モータ制御部、712 回転速度検出部、713 風量推定部、714 記憶部、714a データテーブル、715 温調制御部、716 報知部。