(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165828
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】光演出システム、及び、光演出方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/19 20200101AFI20241121BHJP
H05B 45/20 20200101ALI20241121BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
H05B47/19
H05B45/20
H05B47/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082353
(22)【出願日】2023-05-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 瑠璃亜
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA05
3K273QA15
3K273QA24
3K273QA29
3K273QA39
3K273SA18
3K273SA35
3K273SA36
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA28
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA57
3K273UA02
3K273UA15
3K273UA17
3K273UA22
3K273UA23
(57)【要約】
【課題】設置位置が変更され得る発光端末を発光させることで、光による演出を実現することができる光演出システムを提供する。
【解決手段】光演出システム10は、実空間に設置された複数の照明機器20を備え、複数の照明機器20のそれぞれは、演出データが記憶される記憶部24と、演出データを近距離無線通信によって送信する無線通信部25とを備える。実空間に位置する発光端末50は、演出データを受信すると、受信した演出データによって定まる発光色で発光する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間に設置された複数の通信機器を備え、
前記複数の通信機器のそれぞれは、
演出データが記憶される記憶部と、
前記演出データを近距離無線通信によって送信する無線通信部とを備え、
前記実空間に位置する発光端末は、前記演出データを受信すると、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する
光演出システム。
【請求項2】
前記複数の通信機器のそれぞれは、さらに、当該通信機器が備える前記記憶部に記憶された前記演出データに基づいて発光する発光部を備える
請求項1に記載の光演出システム。
【請求項3】
前記無線通信部は、自発的に前記演出データを送信する
請求項1または2に記載の光演出システム。
【請求項4】
前記無線通信部は、前記発光端末からの要求に応じて前記発光端末へ前記演出データを送信する
請求項1または2に記載の光演出システム。
【請求項5】
前記発光端末は、前記複数の通信機器のうち第1通信機器によって送信された第1演出データと、前記複数の通信機器のうち第2通信機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、前記第1演出データ及び前記第2演出データのいずれかによって定まる発光色で発光する
請求項1または2に記載の光演出システム。
【請求項6】
前記発光端末は、前記複数の通信機器のうち第1通信機器によって送信された第1演出データと、前記複数の通信機器のうち第2通信機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、前記第1演出データ及び前記第2演出データの両方によって定まる発光色で発光する
請求項1または2に記載の光演出システム。
【請求項7】
前記発光端末は、携帯端末であり、
前記携帯端末が前記演出データを受信すると、前記携帯端末が備えるディスプレイが、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する
請求項1または2に記載の光演出システム。
【請求項8】
実空間に設置された複数の通信機器のそれぞれが、当該通信機器が備える記憶部に記憶された演出データを近距離無線通信によって送信する送信ステップと、
前記実空間に位置する発光端末が、前記演出データを受信し、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する発光ステップとを含む
光演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光演出システム、及び、光演出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信に基づく照明制御システムが知られている。特許文献1には、受信強度を向上することができる照明制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、設置位置が変更され得る発光端末を発光させることで、光による演出を実現することができる、光演出システム及び光演出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る光演出システムは、実空間に設置された複数の通信機器を備え、前記複数の通信機器のそれぞれは、演出データが記憶される記憶部と、前記演出データを近距離無線通信によって送信する無線通信部とを備え、前記実空間に位置する発光端末は、前記演出データを受信すると、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する。
【0006】
本発明の一態様に係る光演出方法は、実空間に設置された複数の通信機器のそれぞれが、当該通信機器が備える記憶部に記憶された演出データを近距離無線通信によって送信する送信ステップと、前記実空間に位置する発光端末が、前記演出データを受信し、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する発光ステップとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光演出システム及び光演出方法は、設置位置が変更され得る発光端末を発光させることで、光による演出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る光演出システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、マッピング情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、演出情報が設定されたマッピング情報を示す図である。
【
図6】
図6は、光による演出を説明するための図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るマッピング情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る光演出システムの概要について説明する。
図1は、実施の形態に係る光演出システムの機能構成を示すブロック図である。
【0012】
光演出システム10は、複数の発光端末50を発光させることにより、光による演出を行うことができるシステムである。複数の発光端末50のそれぞれは、あらかじめ演出用に固定設置された装置ではなく、一般ユーザが所持する携帯端末、または、仮設の照明機器などである。一般的な光演出システムにおいては、演出用の照明機器を設置するための設備投資費用が膨らみ、体験価値に訴える演出を断念するような場合がある。これに対し、光演出システム10は、ユーザが所持する携帯端末等を演出用の機材として使用することで、設備投資費用を抑制しつつ、ユーザの体験価値を向上するような、光による演出を実現することができる。
【0013】
図1に示されるように、光演出システム10は、複数の照明機器20と、クラウドサーバ30と、情報端末40と、複数の発光端末50とを備える。
【0014】
照明機器20は、実空間に設置された、光による照明演出に使用される機器である。照明機器20は、建物の内部の空間(天井または壁など)に設置される場合もあるし、建物のすぐ外側の空間(屋上または外壁など)に設置される場合もある。照明機器20は、発光部21と、通信部22と、制御部23と、記憶部24と、無線通信部25とを備える。
【0015】
発光部21は、発光色の変更が可能な発光デバイスである。発光部21は、例えば、互いに独立して調光が可能な、赤色LED(Light Emitting Diode)素子、緑色LED素子、及び、青色LED素子によって実現される発光モジュールなどである。
【0016】
通信部22は、照明機器20がクラウドサーバ30と広域通信ネットワーク60を通じて通信を行うための通信回路(通信モジュール)である。広域通信ネットワーク60には、インターネットなどが含まれる。通信部22は、例えば、無線通信を行う無線通信回路であるが、有線通信を行う有線通信回路であってもよい。通信部22が行う通信の通信規格については特に限定されない。
【0017】
制御部23は、発光部21の発光制御などの制御処理を行う。制御部23は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。制御部23の機能は、制御部23を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサなどのハードウェアが記憶部24に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0018】
記憶部24は、制御部23が制御処理を行うために必要な情報(コンピュータプログラムなど)が記憶される記憶装置である。記憶部24は、例えば、半導体メモリによって実現される。
【0019】
無線通信部25は、発光端末50が照明機器20と近距離無線通信を行うための無線通信回路(通信モジュール)である。近距離無線通信の通信規格は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)などであるが、近距離無線通信の通信規格については特に限定されない。なお、ここで近距離無線通信とは広義の意味であり、局所通信ネットワークを使用する無線通信というような意味合いである。
【0020】
クラウドサーバ30は、複数の照明機器20へ演出指令を送信することにより、光による演出を行うサーバ装置である。クラウドサーバ30は、通信部31と、情報処理部32と、記憶部33とを備える。
【0021】
通信部31は、クラウドサーバ30が、照明機器20及び情報端末40と広域通信ネットワーク60を通じて通信を行うための通信回路(通信モジュール)である。通信部31は、例えば、有線通信を行う有線通信回路であるが、無線通信を行う無線通信回路であってもよい。通信部31が行う通信の通信規格については特に限定されない。
【0022】
情報処理部32は、光演出を実現するために、複数の照明機器20をどのように発光させるかを決定するための情報処理などを行う。情報処理部32は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。情報処理部32の機能は、情報処理部32を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサなどのハードウェアが記憶部33に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0023】
記憶部33は、情報処理部32が情報処理を行うために必要な情報(コンピュータプログラムなど)が記憶される記憶装置である。記憶部33は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよい。
【0024】
情報端末40は、光による演出の管理者(運営者)が演出の内容の設定などを行うためのユーザインターフェース装置である。情報端末40は、具体的には、パーソナルコンピュータ、または、タブレット端末などである。
【0025】
発光端末50は、例えば、一般ユーザが所持する、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯端末であるが、仮設の照明機器であってもよい。なお、発光端末50は、専用端末であってもよく、発光端末50が専用端末である場合、ペンライトまたはサイリウムのような長尺の棒状であってもよいし、うちわ状であってもよい。発光端末50は、移動自在な発光装置(照明機器)であると考えることができる。発光端末50は、発光部51と、無線通信部52と、制御部53と、記憶部54とを備える。
【0026】
発光部51は、発光色の変更が可能な発光デバイスである。発光端末50が携帯端末である場合、発光部51は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現されるディスプレイ(表示部)である。発光端末50が仮設の照明機器、または、専用端末である場合、発光部51は、例えば、互いに独立して調光が可能な、赤色LED素子、緑色LED素子、及び、青色LED素子によって実現される発光モジュールなどである。
【0027】
無線通信部52は、発光端末50が照明機器20と近距離無線通信を行うための無線通信回路(通信モジュール)である。無線通信部52が行う無線通信の通信規格は、例えば、BLEなどであるが、無線通信の通信規格については特に限定されない。
【0028】
制御部53は、発光部51の発光制御などの制御処理を行う。制御部53は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。制御部53の機能は、制御部53を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサなどのハードウェアが記憶部54に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0029】
記憶部54は、制御部53が制御処理を行うために必要な情報(コンピュータプログラムなど)が記憶される記憶装置である。記憶部54は、例えば、半導体メモリによって実現される。
【0030】
[照明機器への演出データの記憶]
光演出システム10は、複数の照明機器20の演出データをあらかじめ記憶しておき、複数の照明機器20のそれぞれが近距離無線通信によって演出データを複数の発光端末50に配信することで、複数の発光端末50を用いた光による演出を実現する。演出データは、発光端末50に対して指示する発光色の時系列データであり、光による演出の内容を示すデータである。後述のように、照明機器20が光による演出に参加する場合には、演出データは、照明機器20に対して指示する発光色の時系列データでもある。
【0031】
まず、複数の照明機器20に演出データを記憶する方法について説明する。管理者等は、光による演出の内容を決定するために、事前にマッピング情報、及び、演出情報をクラウドサーバ30の記憶部33に登録する。情報処理部32は、マッピング情報、及び、演出情報を参照することにより、以下のように照明機器20に記憶する演出データを決定することができる。
【0032】
まず、マッピング情報について説明する。マッピング情報は、光演出システム10の制御対象となる複数の照明機器20が位置する実在の空間(以下、実空間と記載される)を示す画像情報である。
図2は、マッピング情報の一例を示す図である。
【0033】
図2に示されるように、マッピング情報としては、例えば、実在の建物の3次元CADデータなどから得られる図面(実在の建物の設計図)が使用される。
図2の例では、3つのビルを外側(具体的には側方)から見た図面(画像)であり、このようなマッピング情報が使用される場合、3つのビルの内部の実空間またはすぐ外側の実空間に位置する複数の照明機器20が、光による演出における制御対象となる。
【0034】
管理者等は、例えば、情報端末40へ所定の操作を行うことで、
図2のようなマッピング情報を含むオリジナルデータ(3次元CADデータ)を情報端末40からクラウドサーバ30へアップロードする。この結果、クラウドサーバ30の記憶部33にマッピング情報が記憶(登録)される。なお、オリジナルデータにおいては、複数の照明機器20の設置位置(配置)も規定されている。
【0035】
次に、演出情報について説明する。演出情報は、マッピング情報に対して演出用の発光色を設定するための情報である。
図3は、演出情報の一例を示す図である。
【0036】
演出情報は、マッピング情報と同じサイズの画像情報であり、
図3の例では、演出情報に対応する画像は、3種類の演出データに対応する3つの領域に分割されている。領域Aには、演出データAが割り当てられ、領域Bには演出データBが割り当てられ、領域Cには、演出データCが割り当てられる。
【0037】
管理者等は、例えば、情報端末40へ所定の操作を行うことで、
図3のような演出情報をマッピング情報に対して設定する。つまり、クラウドサーバ30の記憶部33には、マッピング情報に加えて演出情報が記憶(登録)される。
【0038】
図4は、演出情報が設定されたマッピング情報を示す図である。マッピング情報に演出情報が設定される(重ね合わされる)と、クラウドサーバ30の情報処理部32は、演出情報が設定されたマッピング情報に基づいて、実空間の座標範囲と、当該座標範囲に位置する照明機器20に送信される演出データとを対応付ける。実空間が直方体形状であるとした場合、実空間の座標範囲とは、直方体の8つの頂点の3次元座標によって定まる範囲を意味する。
【0039】
図4の例では、左側のビルの上側フロアは、領域Aと重なっていることから、上側フロア内の実空間aに設置された照明機器20には、演出データAが送信される。上述のように、マッピング情報のオリジナルデータは、3次元CADデータなどであることから、情報処理部32は、マッピング情報、及び、そのオリジナルデータに基づいて、領域Aと重なっている実空間aの座標範囲を特定することができる。
【0040】
また、左側のビルの下側フロア、及び、右側のビルの全体は、領域Bと重なっていることから、左側のビルの下側フロア内、及び、右側のビル内の実空間bに設置された照明機器20には、演出データBが送信される。情報処理部32は、マッピング情報、及び、そのオリジナルデータに基づいて、領域Bと重なっている実空間bの座標範囲を特定することができる。同様に、中央のビルの全体は、領域Cと重なっていることから、中央のビル内の実空間cに設置された照明機器20には、演出データCが送信される。情報処理部32は、マッピング情報、及び、そのオリジナルデータに基づいて、領域Cと重なっている実空間cの座標範囲を特定することができる。
【0041】
複数の照明機器20のそれぞれは、クラウドサーバか30から演出データを受信すると、受信した演出データを記憶部24に記憶する。複数の照明機器20のそれぞれの記憶部24には、光による演出が行われる全期間分(例えば、1時間分)の演出データが記憶される。
【0042】
なお、このようなクラウドサーバ30を用いた照明機器20への演出データの記憶方法は一例である。例えば、管理者等は、情報端末40に複数の照明機器20を1台ずつ通信接続し、演出データを複数の照明機器20のそれぞれに個別に送信することで、複数の照明機器20のそれぞれの記憶部24に演出データを記憶してもよい。
【0043】
[演出動作]
次に、光演出システム10による演出動作について説明する。
図5は、演出動作のシーケンス図である。なお、発光端末50の記憶部54には、光演出システム10に対応する所定のアプリケーションプログラム(以下、単に、所定のアプリとも記載される)がインストールされている。制御部53により所定のアプリが実行されることで、発光端末50は、以下で説明される処理を実行することができる。
【0044】
光による演出の開始時刻が到来すると、クラウドサーバ30の情報処理部32は、通信部31を用いて、演出の開始(言い換えれば、発光端末50への演出データの配信の開始)を指示するための開始指令を複数の照明機器20のそれぞれへ送信する(S11)。
【0045】
照明機器20の通信部22は、開始指令を受信する。制御部23は、受信された開始指令に応じて、演出データに基づく発光部21の制御を開始する(S12)。制御部23は、具体的には、演出データに基づいて、発光部21の発光色を経時変化させる。なお、照明機器20を演出に参加させない場合には、ステップS12の処理は省略される。
【0046】
一方、制御部23は、無線通信部25を用いて、記憶部24に記憶された演出データを送信する(S13)。具体的には、無線通信部25は、電波により演出データをブロードキャスト送信する。無線通信部25は、例えば、ビーコン信号などのように、自発的に演出データを送信する。
【0047】
所定のアプリを実行中の発光端末50の無線通信部52は、照明機器20の無線通信部25によって送信される演出データを受信する。制御部53は、受信された演出データに基づいて、発光部51を発光させる(S14)。
【0048】
無線通信部25によって送信される演出データ(電波)の到達範囲は限定的であるため、演出データAを送信する照明機器20の近くに位置する発光端末50は演出データAを受信し、当該発光端末50の発光部51は、演出データAにしたがって発光色が経時変化する。同様に、演出データBを送信する照明機器20の近くに位置する発光端末50は演出データBを受信し、当該発光端末50の発光部51は、演出データBにしたがって発光色が経時変化する。演出データCを送信する照明機器20の近くに位置する発光端末50は演出データCを受信し、当該発光端末50の発光部51は、演出データCにしたがって発光色が経時変化する。
【0049】
図6は、光による演出を説明するための図である。ステップS12、及び、ステップS14の処理の結果、
図6に示されるように、上述のマッピング情報に示されている3つのビルの実物を外側から見ると、実空間aに設置された照明機器20、及び、実空間aに位置する発光端末50からは演出データAによって指示される色の光が出射され、実空間bに設置された照明機器20、及び、実空間bに位置する発光端末50からは演出データBによって指示される色の光が出射される。実空間cに設置された照明機器20、及び、実空間cに位置する発光端末50からは演出データCによって指示される色の光が出射される。つまり、光による演出が実現される。
【0050】
なお、ステップS13において送信される演出データは、光による演出が行われる全期間(例えば、1時間)に相当する発光色の時系列データであってもよいし、単位時間(例えば、数秒程度の時間)における発光色を示すデータ(例えば、データを受信してから単位時間経過後までの間の1つの発光色を示すデータ)であってもよい。ステップS13において送信される演出データが単位時間における1つの発光色を示すデータである場合、ステップS13及びステップS14の処理は単位時間ごとに(つまり、所定の時間間隔で)繰り返される。
【0051】
以上説明したように、光演出システム10は、実空間に設置された複数の照明機器20を備え、複数の照明機器20のそれぞれは、演出データが記憶される記憶部24と、演出データを近距離無線通信によって送信する無線通信部25とを備える。実空間に位置する発光端末50は、演出データを受信すると、受信した演出データによって定まる発光色で発光する。
【0052】
例えば、発光端末50が一般ユーザが所持する携帯端末である場合、光演出システム10は、光による演出のために追加の照明機器を準備する必要がないため、設備投資費用を抑制しつつ、光による演出を行うことができる。また、発光端末50が仮設の照明機器である場合、照明機器の設置位置についてシビアな設計が不要であるため、照明機器の施工に関する費用を抑制することができる。
【0053】
また、光演出システム10においては、建物への来訪者が所持する携帯端末が光による演出の機材となるため、来訪者は、光による演出に参加する感覚を味わうことができる。つまり、光演出システム10は、来訪者の体験価値を高めることができる。
【0054】
なお、本演出動作においては、照明機器20の無線通信部25は、自発的に演出データを送信したが、発光端末50からの要求に応じて発光端末50へ演出データを送信してもよい。この場合、所定のアプリを実行中の発光端末50の無線通信部52は、演出データの送信を要求する要求情報をブロードキャスト送信し、要求情報を受信した照明機器20から演出データを受信することができる。
【0055】
[複数種類の演出データを受信した場合の処理]
ところで、発光端末50が、演出データAを送信する照明機器20の電波の到達範囲内で、かつ、演出データBを送信する照明機器20の電波の到達範囲内に位置する場合、当該発光端末50の無線通信部52は、ステップS13において、演出データA及び演出データBの複数種類の演出データを受信する可能性がある。
【0056】
このような場合、発光端末50は、所定のルールに基づいて、複数種類の演出データのいずれか1つを採用し、発光部51を発光させる。発光端末50の制御部53は、例えば、複数種類の演出データのうち受信タイミングが最も早い演出データを採用してもよいし、2種類の演出データのうち受信タイミングが最も遅い演出データを採用してもよい。
【0057】
また、無線通信部52が演出データを受信したときの受信信号強度を計測できるような場合、制御部53は、複数種類の演出データのうち受信信号強度が高い演出データを採用してもよい。また、複数種類の演出データに対する優先度を定めた優先度情報が記憶部54にあらかじめ記憶されているような場合、制御部53は、優先度情報に基づいて、複数種類の演出データのうち優先度が最も高い演出データを採用してもよい。
【0058】
このように、発光端末50は、複数の照明機器20のうち第1照明機器によって送信された第1演出データと、複数の照明機器20のうち第2照明機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、第1演出データ及び第2演出データのいずれかによって定まる発光色で発光する。
【0059】
また、発光端末50は、受信した複数種類の演出データに基づいて、新たな発光色を決定し、決定した発光色で発光部51を発光させてもよい。例えば、演出データA及び演出データBを受信し、演出データAが第1発光色(例えば、赤色)を指示し、演出データBが第2発光色(例えば、青色)を指示するような場合、制御部53は、第1発光色と第2発光色との中間色(例えば、マゼンタ色など)を算出し、算出した中間色で発光部51を発光させてもよい。
【0060】
このように、発光端末50は、複数の照明機器20のうち第1照明機器によって送信された第1演出データと、複数の照明機器20のうち第2照明機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、第1演出データ及び第2演出データの両方によって定まる発光色で発光してもよい。
【0061】
[演出データの受信が中断された場合の処理]
照明機器20から発光端末50へ送信される演出データが、単位時間における発光色を示すデータであり、演出データの送信が単位時間ごとに繰り返される場合、通信状態の悪化により、演出データの受信が中断する場合がある。このような場合、制御部53は、発光部51を消灯させるのではなく、直近に受信した演出データが示す発光色で発光部51を発光させてもよい。これにより、急に発光端末50が消灯することで、光による演出の視認者が違和感を感じてしまうことを抑制することができる。
【0062】
[演出のタイムラグを抑制するための処理]
複数の発光端末50、及び、複数の照明機器20の双方が演出に参加する場合、演出の同期をとる方法には検討の余地がある。照明機器20の制御部23は、無線通信部25を用いて演出データを送信した後、当該演出データを受信した発光端末50からの応答として、当該発光端末50が保持している時刻情報を取得(受信)し、取得した時刻情報に合わせて発光部21の発光タイミングを補正(調整)することで、演出の同期をとる(タイムラグの発生を抑制する)ことができる。
【0063】
[発光端末の発光色の見え方を調整するための処理]
発光端末50が携帯端末である場合、発光部51の発光色が、明るさ(バックライトの制御パラメータ)と色(液晶パネルの制御パラメータ)との2つの制御パラメータで決定され、照明機器20の発光部21の発光色とは、色の見え方が異なる場合がある。このような場合に、発光端末50の明るさを制御することで、発光端末50の発光部51の発光色の見え方が調整されてもよい。
【0064】
例えば、照明機器20から発光端末50へ演出データに加えて、明るさデータが送信されてもよい。明るさデータは、例えば、鮮やかな演出を意図する場合には、バックライトを100%の調光率で発光させるように設定され、淡い演出を意図する場合には、バックライトを50%の調光率で発光させるように設定される。
【0065】
このように、発光端末50が携帯端末である場合には、明るさデータによって発光部51の発光色の見え方(演出の意図)が調整されてもよい。
【0066】
[演出データを送信する通信機器の変形例]
上記実施の形態では、近距離無線通信により発光端末50に演出データを送信する通信機器は、照明機器20であると説明した。ここで、発光端末50に演出データを提供する通信機器は、当該通信機器自体は、発光しない(演出データを再生しない)機器であってもよい。
【0067】
例えば、近距離無線通信により発光端末50に演出データを送信する通信機器は、ビーコン発信器などの専用の無線通信機器であってもよい。また、近距離無線通信により発光端末50に演出データを送信する通信機器は、照明機器20への電力供給をオン及びオフする壁スイッチまたはACリレーであってもよい。なお、ACリレーは、配線ダクトに取り付けられ、配線ダクトに取り付けられた1台または複数台の照明機器20への交流電力をオンオフすることにより、当該1台または複数台の照明機器20を点灯及び消灯することができる装置である。
【0068】
[演出情報の具体例]
演出情報に含まれる演出データ(発光端末50に対して指示する発光色の時系列データ)は、例えば、光演出システム10の管理者等が情報端末40への操作によって定義(生成)する。ここで、演出データとして、既存の動画の画素値が用いられてもよい。動画においては、画素値、つまり、画素の色が経時変化することから、例えば、ある動画の特定の画素の画素値を演出データとして使用することができる。
【0069】
また、演出情報として、動画がそのまま使用されてもよい。つまり、演出情報は、動画がm×nピクセルであれば、マッピング情報をm×nの領域に分割し、各領域の演出データとして、対応する画素の画素値を設定する情報であってもよい。
【0070】
また、発光色を経時変化させない演出を行う場合には、演出情報によって規定される発光色として静止画の画素の色が用いられてもよい。このように、演出情報は、既存の動画または静止画の画素の色を演出用の発光色として設定する情報であってもよい。
【0071】
[マッピング情報の変形例]
上記実施の形態では、マッピング情報は、建物を外側から見た画像の画像情報であると説明されたが、建物内のフロアの間取りを示す画像情報であってもよい。
図7は、変形例に係るマッピング情報を示す図である。また、マッピング情報が建物内のフロアの全部の間取りを示す画像情報であることは必須ではなく、マッピング情報は、建物内のフロアの一部の間取りを示す画像情報であってもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、複数の発光端末50が位置する空間(実空間)は、ビルの内部またはビルの周辺の空間であると説明されたが、コンサートホール内及びその周辺の空間、または、競技場などの空間であってもよい。この場合、観客が所持する発光端末50が光による演出の機材となるため、観客は、光による演出に参加する感覚を味わうことができる。つまり、光演出システム10は、観客の体験価値を高めることができる。
【0073】
[効果等]
本明細書の開示内容から導き出される発明は、例えば以下のような発明である。以下、本明細書の開示内容から導き出される発明について、当該発明によって得られる効果等と合わせて説明する。
【0074】
発明1は、実空間に設置された複数の通信機器を備え、複数の通信機器のそれぞれは、演出データが記憶される記憶部と、演出データを近距離無線通信によって送信する無線通信部とを備え、実空間に位置する発光端末50は、演出データを受信すると、受信した演出データによって定まる発光色で発光する、光演出システム10である。
【0075】
このような光演出システム10は、設置位置が変更され得る発光端末50を発光させることで、光による演出を実現することができる。
【0076】
発明2は、複数の通信機器のそれぞれは、さらに、当該通信機器が備える記憶部に記憶された演出データに基づいて発光する発光部を備える、発明1の光演出システム10である。ここでの通信機器は、例えば、発光部21を備える照明機器20である。
【0077】
このような光演出システム10は、発光端末50及び通信機器のそれぞれを発光させることで、光による演出を実現することができる。
【0078】
発明3は、無線通信部は、自発的に演出データを送信する、発明1または2の光演出システム10である。
【0079】
このような光演出システム10は、通信機器が自発的に送信する演出データに基づいて、光による演出を実現することができる。
【0080】
発明4は、無線通信部は、発光端末50からの要求に応じて発光端末50へ演出データを送信する、発明1または2の光演出システム10である。
【0081】
このような光演出システム10は、通信機器が発光端末50からの要求に応じて送信する演出データに基づいて、光による演出を実現することができる。
【0082】
発明5は、発光端末50は、複数の通信機器のうち第1通信機器によって送信された第1演出データと、複数の通信機器のうち第2通信機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、第1演出データ及び第2演出データのいずれかによって定まる発光色で発光する、発明1~4のいずれかの光演出システム10である。
【0083】
このような光演出システム10は、発光端末50が複数種類の演出データを受信したときに、1つの演出データを優先して使用することができる。
【0084】
発明6は、発光端末50は、複数の通信機器のうち第1通信機器によって送信された第1演出データと、複数の通信機器のうち第2通信機器によって送信された第2演出データとを受信した場合、第1演出データ及び第2演出データの両方によって定まる発光色で発光する、発明1~4のいずれかの光演出システム10である。
【0085】
このような光演出システム10は、発光端末50が複数種類の演出データを受信したときに、複数種類の演出データを考慮して発光端末50を発光させることができる。
【0086】
発明7は、発光端末50は、携帯端末であり、携帯端末が演出データを受信すると、携帯端末が備えるディスプレイが、受信した演出データによって定まる発光色で発光する、発明1~6のいずれかの光演出システム10である。
【0087】
このような光演出システム10は、携帯端末のディスプレイを発光させることで、光による演出を実現することができる。
【0088】
発明8は、空間に設置された複数の通信機器のそれぞれが、当該通信機器が備える記憶部に記憶された演出データを近距離無線通信によって送信する送信ステップS13と、実空間に位置する発光端末50が、演出データを受信し、受信した前記演出データによって定まる発光色で発光する発光ステップS14とを含む、光演出方法である。
【0089】
このような光演出方法は、設置位置が変更され得る発光端末50を発光させることで、光による演出を実現することができる。
【0090】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0091】
例えば、上記実施の形態では、光演出システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。例えば、光演出システムは、クラウドサーバに相当する単一の装置として実現されてもよい。光演出システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された光演出システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0094】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0095】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0096】
例えば、本発明は、上記実施の形態の通信機器(照明機器)として実現されてもよい。本発明は、上記実施の形態の光演出システムなどのコンピュータによって実行される光演出方法として実現されてもよい。また、本発明は、このような光演出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、発光端末にインストールされる所定のアプリケーションプログラムとして実現されてもよい。これらのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0097】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
10 光演出システム
20 照明機器
21、51 発光部
22、31 通信部
23、53 制御部
24、33、54 記憶部
25、52 無線通信部
30 クラウドサーバ
32 情報処理部
40 情報端末
50 発光端末
60 広域通信ネットワーク