IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2024-165862経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム
<>
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図1
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図2
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図3
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図4
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図5
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図6
  • 特開-経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165862
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20241121BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20241121BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
G08G3/02 A
B63B49/00 Z
B63B79/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082418
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 周平
(72)【発明者】
【氏名】神代 明暢
(72)【発明者】
【氏名】彌城 祐亮
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC14
5H181FF13
5H181FF23
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】船舶が航行可能な経路を適切に作成する。
【解決手段】船舶の経路作成装置は、障害物の代表点の位置を検出し、代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築する折れ線マップ構築部と、折れ線マップを用いて、障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、折れ線マップの位置毎に設定する条件設定部と、評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成する最適化計算実行部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築する折れ線マップ構築部と、
前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定する条件設定部と、
前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成する最適化計算実行部と、
を含む、
経路作成装置。
【請求項2】
前記条件設定部は、前記障害物から遠くなるにつれて評価が高くなる前記評価値が、前記折れ線マップの位置毎に割り振られたポテンシャルマップを作成し、前記最適化計算実行部は、前記船舶が前記ポテンシャルマップ上の経由する位置における前記評価値の総和を評価関数として、前記最適化計算を行う、
請求項1に記載の経路作成装置。
【請求項3】
前記条件設定部は、隣接する2つの前記代表点に基づいて、前記障害物から遠くなるにつれて値が減少する一次ポテンシャル関数を設定し、前記隣接する2つの前記代表点の組合せごとの前記一次ポテンシャル関数を重ね合わせて、前記ポテンシャルマップを作成する、
請求項2に記載の経路作成装置。
【請求項4】
前記最適化計算実行部は、航行時間と、前記船舶の消費エネルギーと、前記船舶の航行状態と、前記船舶への入力の変化率と、前記船舶が前記ポテンシャルマップ上の経由する位置における前記評価値の総和とを評価関数として、前記最適化計算を行う、
請求項2または請求項3に記載の経路作成装置。
【請求項5】
前記最適化計算実行部は、前記航行時間が出来るだけ短くなり、前記船舶の消費エネルギーが出来るだけ少なくなり、前記船舶の航行状態が出来るだけ安定し、前記船舶への入力の変化率が出来るだけ小さくなり、かつ、前記評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように、最適化計算を行う、
請求項4に記載の経路作成装置。
【請求項6】
前記条件設定部は、前記障害物のある位置では第1の値をとり、前記障害物がない位置では前記第1の値より評価が高い第2の値をとる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定し、前記評価値に基づいて、位置毎に前記評価値が割り振られたコストマップを作成し、前記最適化計算実行部は、前記船舶が前記コストマップ上を経由する位置における前記評価値の総和を評価関数として、前記最適化計算を行う、
請求項1に記載の経路作成装置。
【請求項7】
前記最適化計算実行部は、前記評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように、最適化計算を行う、
請求項6に記載の経路作成装置。
【請求項8】
前記条件設定部は、前記コストマップにフィルタリング処理を実施してフィルタリングコストマップを作成し、前記最適化計算実行部は、前記船舶が前記フィルタリングコストマップ上を経由する位置における前記評価値の総和を評価関数として、前記最適化計算を行う、
請求項6又は請求項7に記載の経路作成装置。
【請求項9】
前記条件設定部は、前記コストマップに基づいて最適化計算により算出された前記船舶の経路を、ベース経路として取得して、前記ベース経路と前記船舶との距離が規定値以内であることを制約条件として設定し、前記折れ線マップを用いて、前記障害物から遠くなるにつれて評価が高くなる前記評価値が、位置毎に割り振られたポテンシャルマップを作成し、前記最適化計算実行部は、前記船舶が前記ポテンシャルマップ上の経由する位置における前記評価値の総和を評価関数とし、かつ、前記制約条件を満たすように、前記最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成する、
請求項6又は請求項7に記載の経路作成装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の経路作成装置を有する、船舶。
【請求項11】
障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築するステップと、
前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定するステップと、
前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成するステップと、
を含む、
経路作成方法。
【請求項12】
障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と航行不可能な領域を示す折れ線マップを構築するステップと、
前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定するステップと、
前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶の航行経路を自動作成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、船舶の航行経路を自動作成する方法として、センサにより着岸先の岸壁を点群データとして検出し、そのデータを基に船舶の着岸位置となる目標点を設定後、船舶と目標点までの経路を、経由点という制御点に分けて作成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/111044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように船舶の航行経路を自動作成する際には、船舶が航行可能な経路を適切に作成することが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、船舶が航行可能な経路を適切に作成可能な経路作成装置、船舶、経路作成方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る船舶の経路作成装置は、障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築する折れ線マップ構築部と、前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定する条件設定部と、前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成する最適化計算実行部とを、備える。
【0007】
本開示に係る船舶は、上記経路作成装置を備える。
【0008】
本開示に係る船舶の経路作成方法は、障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に、船舶が航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築するステップと、前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定するステップと、前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成するステップとを含む。
【0009】
本開示に係るプログラムは、障害物の代表点の位置を検出し、前記代表点の位置を基に船舶が航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップを構築するステップと、前記折れ線マップを用いて、前記障害物の位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、前記折れ線マップの位置毎に設定するステップと、前記評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、前記最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成するステップとを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、船舶が航行可能な経路を適切に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る船舶の模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る経路作成装置の模式的なブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係るポテンシャルマップの概要図である。
図4図4は、第1実施形態に係る経路作成装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係るコストマップの概要図である。
図6図6は、第2実施形態に係る経路作成装置の出力結果の説明図である。
図7図7は、第2実施形態に係る経路作成装置の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
(第1実施形態)
図1を用いて、船舶の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る船舶の模式図である。
【0014】
(船舶)
図1に示す、本実施形態に係る船舶SHは、自動航行が可能な移動体である。ただしそれに限られず、船舶SHは、運転者の操作により移動するものであってもよい。本実施形態においては、船舶SHは、水W上(水面)を移動する移動体であるが、それに限られず、水中を移動する水中航行体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、船舶SHは、経路作成装置1を有する。経路作成装置1は、船舶SHの出発位置Sから到着位置Gまでの経路Rを自動作成する装置である。以下、経路作成装置1について具体的に説明する。本実施形態では、2次元平面における経路Rが作成される。二次元平面における、水平方向に沿った一方向を、X方向とし、水平方向に沿った方向であってX方向と直交する方向を、Y方向とする。なお、本実施形態では、経路作成装置1は、船舶SHに搭載されるが、それに限られず、船舶SHと異なる位置に設けられてもよい。この場合、船舶SHに設けられた制御装置が、経路作成装置1が作成した経路Rの情報を取得して、経路Rに従って船舶SHを自動航行させてよい。
【0016】
(経路作成装置)
図2は、本実施形態に係る経路作成装置の模式的なブロック図である。本実施形態に係る経路作成装置1は、例えばコンピュータであり、図2に示すように、入力部10と、出力部20と、メモリ30と、制御部40とを有する。入力部10は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えばマウス、キーボード、タッチパネルなどであってよい。出力部20は、情報を出力する装置であり、例えば画像を表示するディスプレイなどであってよい。
【0017】
メモリ30は、制御部40の演算内容や、プログラム、入力部10から経路作成装置1の使用者によって入力された各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。メモリ30が保存する制御部40用のプログラムは、経路作成装置1が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0018】
制御部40は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部40は、折れ線マップ構築部411と、条件設定部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414と、移動制御部415とを含む。制御部40は、メモリ30からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、折れ線マップ構築部411と、条件設定部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414と、移動制御部415とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部40は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、折れ線マップ構築部411と、条件設定部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414と、移動制御部415との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0019】
(経路)
図1に示すように、経路作成装置1は、船舶SHの出発位置Sから到着位置Gまでの経路Rを作成する。図1の例では、出発位置Sは、港湾設備より外海側の位置であり、到着位置Gは、港湾設備内に設けられた接岸位置である。出発位置S及び到着位置Gは、任意の位置であってよい。出発位置S及び到着位置Gは、例えば運転者によって設定されてよい。
【0020】
(経路作成装置の処理)
以下で、経路作成装置1の処理内容を説明する。
【0021】
(障害物情報の取得)
折れ線マップ構築部411は、船舶SHの現在位置および接岸する位置(到着位置G)周辺の岸壁等の障害物OBの位置を示す情報である、障害物情報を取得する。障害物情報の入手方法は任意でよい。例えば、船舶SHの現在位置および接岸する位置(到着位置G)周辺の地図情報が、障害物情報を含んでおり、折れ線マップ構築部411が、図示しない通信部を介して、外部サーバ等からその地図情報を取得してもよい。また、折れ線マップ構築部411は、図示しない船舶SHに取りつけられたセンサを用いて、障害物情報を検出してもよい。障害物情報を取得するセンサは、例えばLIDAR(Light Detection and Ranging)であってよい。また、障害物情報は、予めメモリ30に記憶されていてもよいし、使用者によって入力部10を介して入力されてもよい。
【0022】
(折れ線マップの構築)
折れ線マップ構築部411は、取得した障害物情報に基づいて、障害物OBの代表点SPの位置を検出する。障害物OBの代表点SPとは、障害物OBが存在する領域内の位置である。障害物OBの代表点SPは、障害物OBが存在する領域内の任意の位置であってよいが、例えば二次元平面上における障害物OBの端点や折れ曲がり点(極値となる点)であってよい。折れ線マップ構築部411は、障害物OBの代表点SPの位置を基に、船舶SHが航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップLMを構築する。具体的には、折れ線マップ構築部411は、取得した地図情報から、障害物OBの代表点SPの位置情報を点群データとして検出する。そして、折れ線マップ構築部411は、検出した障害物OBの代表点SPの位置を示す点データ同士を、線分で結ぶことにより折れ線マップLMを構築する。言い換えれば、折れ線マップLMは、船舶SHが航行可能な領域(水Wの領域)と、航行不可能な領域(障害物OBが存在する領域)との境界を示すマップである。
【0023】
本実施形態においては、条件設定部412は、折れ線マップ構築部411が構築した折れ線マップLMを用いて、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を設定し、最適化計算実行部413は、評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を実行して、船舶SHの経路Rを作成する。まずは、評価値について以下で説明する。
【0024】
(評価値の取得)
条件設定部412は、折れ線マップLMを用いて、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、折れ線マップLMの位置毎に設定する。すなわち、評価値は、折れ線マップLMの位置ごとに決まる値である。例えば、折れ線マップLMの第1の位置と、第1の位置よりも障害物OBからの距離が近い第2の位置とを例にすると、条件設定部412は、第1の位置における評価値が、第2の位置における評価値よりも、評価が高くなるように、第1の位置及び第2の位置の評価値を設定する。なお、本実施形態の例では、評価値の値が小さい程、評価が高くなるように評価値を設定するため、第1の位置における評価値を、第2の位置における評価値よりも小さくする。ただしそれに限られず、評価値の値が大きい程評価を高くしてもよい。
【0025】
本実施形態では、条件設定部412は、障害物OBの位置から離れるにつれて、評価が徐々に高くなるように(本例では値が小さくなるように)、折れ線マップLMの位置毎の評価値を設定することで、設定した評価値が折れ線マップLMの位置毎に割り振られたマップを、ポテンシャルマップPMとして設定する。より詳しくは、条件設定部412は、評価値を決めるポテンシャル関数を設定して、ポテンシャル関数に基づいて、ポテンシャルマップPMを作成することが好ましい。以下、ポテンシャル関数について説明する。
【0026】
本実施形態においては、条件設定部412が、障害物OBから距離が遠くなるにつれて、評価が高くなる(値が減少する)ポテンシャル関数の値を、評価値p(xi,yi)として取得する。言い換えると、評価値p(xi,yi)は、XYの2次元座標系における、ある位置の座標点(xi,yi)におけるポテンシャル関数の値である。iは、座標点の識別子である。すなわち、「i=1,...N」であり、Nは、折れ線マップLM上のX軸及びY軸のそれぞれの座標点(位置)の総数を指す。本実施形態に係る経路作成装置1は、座標点を繋ぐ軌跡を、経路Rとして作成する。Nの数を大きくすると座標点が増える為、経路Rを細かく作成することができるが、最適化計算の計算量も増えることになる。座標点数Nの値については、任意に設定してよい。例えば、Nの値は、使用者により設定されてよい。その場合、条件設定部412は、使用者によって入力部10を介して入力された値を、X軸及びY軸のそれぞれの座標点数Nとして取得してよい。
【0027】
ここで、評価値p(xi,yi)を決めるポテンシャル関数とは、複数の一次ポテンシャル関数の重ね合わせによって算出される関数である。ポテンシャル関数を説明するにあたり、まずは以下で一次ポテンシャル関数について説明する。
【0028】
(一次ポテンシャル関数)
条件設定部412は、障害物OBからの距離が遠くなるについて、評価が徐々に高くなる(値が減少する)関数を、一次ポテンシャル関数として設定する。本実施形態においては、条件設定部412は、折れ線マップLM上の隣接する障害物OBの2つの代表点SPに基づいて、それらの2つの代表点SPから所定距離範囲内の位置における評価値を示す、一次ポテンシャル関数を算出する。例えば、条件設定部412は、隣接する2つの代表点SPを焦点とするそれぞれの楕円を等高線とするガウス関数を、一次ポテンシャル関数として設定する。すなわち例えば、条件設定部412は、2つの代表点SPを焦点とする1つの楕円の外周に、同じ値となる評価値を設定する。そして、条件設定部412は、2つの代表点SPを焦点とするそれぞれの楕円の外周に対して、楕円の大きさが小さくなるほど、値が大きくなる(評価が低くなる)ように、評価値を設定する。そして、条件設定部412は、楕円の外周と、それよりも一段階小さな楕円との間の領域に対しては、その楕円の外周(大きな方の楕円の外周)、又は一段階小さな楕円の外周と同じ評価値を設定してもよいし、それらの楕円の外周の評価値同士の間の値となる評価値を設定してもよい。これにより、隣接する2つの代表点SPから遠いほど、評価が高くなる(値が小さくなる)一次ポテンシャル関数が設定される。
【0029】
(ポテンシャル関数)
条件設定部412は、折れ線マップLM上の、隣接する障害物OBの2つの代表点SPの全ての組み合わせごとに、一次ポテンシャル関数を設定する。そして、条件設定部412は、算出した全ての一次ポテンシャル関数を重ね合わせて、本実施形態に係るポテンシャル関数を設定する。
【0030】
条件設定部412が算出したポテンシャル関数は、全ての一次ポテンシャル関数の重ね合わせのため、一次ポテンシャル関数と同様に、障害物OBからの距離が遠くなるにつれて値が減少し評価が高くなる関数となり、ポテンシャル関数における位置(座標点)ごとの値が、評価値となる。
【0031】
(ポテンシャルマップの作成)
図3は、第1実施形態に係るポテンシャルマップの概要図である。条件設定部412は、折れ線マップLMの位置毎に評価値p(xi,yi)(ポテンシャル関数の値)が割り当てられたポテンシャルマップPMを作成する。具体的には、条件設定部412は、一次ポテンシャル関数を重ね合わせて算出したポテンシャル関数の値(評価値p(xi,yi))を、折れ線マップLM上の全ての位置(座標点)について算出する。すなわち、条件設定部412が算出した位置(座標点)ごとの評価値p(xi,yi))の分布図が、ポテンシャルマップPMといえる。言い換えれば、条件設定部412は、障害物OBから遠くなるにつれて、値が減少する評価値p(xi,yi)を、折れ線マップLM上の全ての位置(N個の座標点)について算出して、ポテンシャルマップPMを作成する。つまり、折れ線マップLMとポテンシャルマップPMの座標点の数は同じN個となる。
【0032】
(制約条件の取得)
条件設定部412は、最適化計算に用いる制約条件を取得してもよい。制約条件とは、経路Rを作成する際に守るべき制約条件である。制約条件は任意の内容であってよいが、本実施形態では、条件設定部412は、船舶SHの舵角が上限舵角以下の範囲に収まることを制約とする第1制約条件と、船舶SHのエンジン回転数が上限回転数以下に収まることを制約とする第2制約条件とを、制約条件として取得する。条件設定部412は、任意の方法で制約条件を取得してよく、例えば予め設定された制約条件を、外部サーバから取得してもよいし、メモリ30から読み出してもよい。
【0033】
(制約条件)
本実施形態における制約条件は、例えば以下の式(1)から式(2)に示したものとなる。ただし、以下に示す制約条件は一例であり、制約条件はそれに限定されない。
【0034】
【数1】
【0035】
式(1)は、船舶SHの舵角が、上限舵角A1以下の範囲に収まることを制約とする第1制約条件に対応する制約条件である。式(1)は、船舶SHの舵角であるr(xi,yi)が、全ての位置(座標点)において上限舵角A1を超えないことを意味する。本実施形態に係る上限舵角A1は30°に設定しているが、上限舵角A1の値については、任意に設定してよい。例えば、上限舵角A1の値は、使用者により設定されてよい。この場合、条件設定部412は、使用者によって入力部10を介して入力された値を、上限舵角A1として取得してよい。また、上限舵角A1は、条件設定部412により自動で設定されてもよい。この場合例えば、条件設定部412は、障害物情報と船舶SHの寸法情報および動力性能等の情報とに基づき、上限舵角A1を設定してもよい。
【0036】
【数2】
式(2)は、船舶SHのエンジン回転数が、上限回転数E2以下の範囲に収まることを制約とする第2制約条件に対応する制約条件である。式(2)は、船舶SHのエンジン回転数であるe(xi,yi)が、全ての位置(座標点)において上限回転数E2を超えないことを意味する。上限回転数E2の値については、任意に設定してよい。例えば、上限回転数E2の値は、使用者により設定されてよい。この場合、条件設定部412は、使用者によって入力部10を介して入力された値を、上限回転数E2として取得してよい。また、上限回転数E2は、条件設定部412により自動で設定されてもよい。この場合例えば、条件設定部412は、障害物情報と船舶SHの寸法情報および動力性能等の情報とに基づき、上限回転数E2を設定してもよい。
【0037】
(評価関数の取得)
条件設定部412は、設定した評価値(ポテンシャルマップPM)に基づいて値が決まる、最適化計算に用いる評価関数を取得する。具体的には、条件設定部412は、ポテンシャルマップPM上の船舶SHが経由する各位置における評価値p(xi,yi)の総和を示す関数を、評価関数として取得する。
【0038】
(最適化計算)
最適化計算実行部413は、取得した評価関数を用いて最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。すなわち、最適化計算実行部413は、出発位置Sから到着位置Gまでの船舶SHがとり得る各経路のうちで、評価関数に基づいて最適化された経路を、船舶SHの経路Rとして作成する。具体的には、最適化計算実行部413は、ポテンシャルマップPM(各位置の評価値)に基づいて、経路上の各位置(船舶がポテンシャルマップPM上の経由する各位置)における評価値の総和を算出して、評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように(本例では評価値の総和が出来るだけ小さくなるように)、最適化計算を行う。すなわち例えば、最適化計算実行部413は、船舶SHがとり得る経路のそれぞれについて、経路上の各位置における評価値の総和を算出して、評価値の総和が所定値以下となる経路を(好ましくは総和が最小となる経路を)、最適化された経路Rとして設定する。
【0039】
さらに言えば、最適化計算実行部413は、条件設定部412が設定した制約条件(本例では第1制約条件及び第2制約条件)を満しつつ、第1評価関数を評価関数として、最適化計算を行うことが好ましい。ただし制約条件を用いることは必須ではない。
【0040】
(複数の評価関数を用いる場合の例)
また、本実施形態においては、最適化計算実行部413は、評価値の総和(第1評価関数)以外の評価関数も用いて、最適化計算を実行してよい。以下、評価値の総和以外の評価関数も用いた最適化計算について説明する。
【0041】
この場合、条件設定部412は、評価値の総和を示す第1評価関数に加えて、第2評価関数、第3評価関数、第4評価関数、および第5評価関数を取得してよい。第2評価関数は、船舶SHが出発位置Sから到着位置Gに到達するまでの航行時間に関する評価関数である。第3評価関数は、船舶SHが出発位置Sから到着位置Gに到達するまでの、船舶SHの消費エネルギーに関する評価関数であり、船舶SHへの制御入力(舵角やエンジン回転数)を変数とする関数であってよい。第4評価関数は、船舶SHの航行状態を示す関数である。船舶SHの航行状態とは、船舶SHがどのように航行しているかを示す指標であり、船舶SHの位置、姿勢、速度、及び角速度の少なくとも1つ(好ましくは全て)に基づいて決まる。すなわち、第4評価関数は、船舶SHの位置、姿勢、速度、及び角速度の少なくとも1つ(好ましくは全て)を変数とする関数である。第5評価関数は、船舶への入力の変化率を示す関数である。船舶SHへの入力の変化率とは、船舶SHへの制御入力(舵角やエンジン回転数)の、単位時間当たりの変化量を指す。すなわち、第5評価関数は、船舶SHへの入力の変化率を変数とする関数である。
【0042】
最適化計算実行部413は、第1評価関数に加えて、第2評価関数、第3評価関数、第4評価関数、および第5評価関数のうちの少なくとも1つを評価関数として、最適化計算を実行してもよい。より詳しくは、最適化計算実行部413は、経路上の各位置における評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように(本例では評価値の総和が出来るだけ小さくなるように)、船舶SHの出発位置Sから到着位置Gに到達するまでの航行時間が出来るだけ短くなり、船舶SHの出発位置Sから到着位置Gに到達するまでの、船舶SHの消費エネルギーが出来るだけ少なくなり、船舶SHの航行状態が出来るだけ安定し、かつ船舶SHへの入力の変化率が出来るだけ少なくなるように、最適化計算を行って、最適化された経路Rを設定することが好ましい。具体的には、最適化計算実行部413は、第1評価関数から第5評価関数までの、5つの評価関数の総和が最小となる経路Rを、最適化計算の結果として算出する。なおこの場合でも、制約条件を満たすように、最適化計算を行うことが好ましい。最適化計算を行う数式の例としては、以下に示す式(3)が最小となるように、最適化計算を実施してもよい。
【0043】
【数3】
式(3)における変数は、船舶SHの舵角を表すδ(t)と、船舶SHのスラスタ回転数を表すn(t)と、船舶SHが出発位置Sから到着位置Gに到達するまでの航行時間を示すt座標点(X(t),Y(t))におけるポテンシャル関数を示すP(X(t),Y(t))である。wからwは、重み付け係数であり、各項が最適化計算の結果に及ぼす影響度合いを示す値であり、言い換えれば、最適化計算を実施する際に、どの項を優先して最適化するかを表す指標である。すなわち、重み付け係数が高い程、その項が最適化計算に及ぼす影響が高くなる。重み付け係数は、任意に設定されてよいが、項毎に設定されることが好ましい。
【0044】
出力制御部414は、最適化計算実行部413が算出した最適化計算の結果を出力する。最適化計算の結果は、船舶SHの経路Rを示す情報であり、さらに、航行時間の情報も含んでよい。出力制御部414による最適化計算の結果の出力方法も任意であってよく、例えば外部の装置に送信してもよいし、出力部20に表示してよい。
【0045】
(船舶の制御)
移動制御部415は、船舶SHの駆動機構を制御して、言い換えれば駆動機構に制御入力を行って、船舶SHを航行させる。移動制御部415は、最適化計算実行部413によって算出された経路Rに従って、船舶SHを移動させる。
【0046】
なお、本実施形態では、移動制御部415が、経路Rに従って移動するように、船舶SHの移動を自動制御するが、それに限られず、例えば運転者の操作によって、船舶SHの移動を手動制御してよい。この場合でも、運転者は、例えば出力部20に表示された経路Rを目視しつつ、自動設定された経路Rに沿うように船舶SHを手動制御してよい。また例えば、出力制御部414は、経路Rを実現するための制御入力を設定して、設定した制御入力の情報を出力部20に表示させてよい。この場合、運転者は、出力部20に表示された制御入力を目視して、その制御入力を参考にして、船舶SHを手動制御してよい。
【0047】
(処理フロー)
次に、本実施形態の処理フローを説明する。図4は、本実施形態に係る経路作成のフローチャートである。経路Rを作成する場合、折れ線マップ構築部411は、岸壁などの障害物OBの情報である障害物情報を取得する。折れ線マップ構築部411は、取得した障害物情報から、障害物OBの代表点SP(端点や折れ曲がり点)の位置情報を検出し、検出した全ての障害物OBの代表点SPを、線分で結んだ折れ線マップLMを構築する(ステップS1)。条件設定部412は、折れ線マップ構築部411が作成した折れ線マップLMを基に、ポテンシャルマップPMを作成する(ステップS2)。条件設定部412は、評価関数を取得する(ステップS3)。最適化計算実行部413は、ポテンシャルマップPMおよび評価関数に基づき、最適化計算を実行して、船舶SHの経路Rを設定する(ステップS4)。
【0048】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る経路作成装置1は、取得した障害物情報から、岸壁などの障害物OBの代表点SPの位置を検出し、折れ線マップLMを構築する。その後、構築した折れ線マップLMを基に、ポテンシャルマップPMを作成する。そして、経路作成装置1は、ポテンシャルマップPMおよび評価関数を用いて、最適化計算を実施して、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、折れ線マップLMを基に、ポテンシャルマップPMを作成し、ポテンシャルマップPMを用いて経路Rを作成していたが、第2実施形態においては、折れ線マップLMを基に、コストマップCMを作成し、コストマップCMを用いて経路Rを作成する点で、第1実施形態とは異なる。ここで、コストマップCMとは、本実施形態に係る新たな評価値の分布図である。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0050】
(評価値の取得)
第2実施形態に係る条件設定部412は、折れ線マップLMに基づき、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、折れ線マップLMの位置毎に設定する。具体的には、条件設定部412は、障害物OBのある位置では第1の値をとり、障害物OBがない位置では、第1の値よりも評価が高い第2の値をとるように、各位置における評価値を設定する。本実施形態の例では、評価値の値が小さい程、評価が高くなるように評価値を設定するため、第1の位置における評価値を、第2の位置における評価値よりも小さくする。例えば、条件設定部412は、第1の値を1とし、第2の値を0としてよい。ただしそれに限られず、評価値の値が大きい程評価を高くしてもよい。以降においては、XYの2次元座標系における、ある座標点(al,bl)における評価値を、適宜、評価値c(al,bl)として示す。lは、後述する格子点の識別子である。すなわち、「l=1,...M」であり、Mは、折れ線マップLM上のX軸及びY軸のそれぞれの格子点の総数を指す。本実施形態に係る経路作成装置1は、格子点を繋ぐ軌跡を、経路Rとして作成する。X軸及びY軸のそれぞれの格子点の総数であるMを大きくすると、格子点が増える為、経路Rを細かく作成することができるが、最適化計算の計算対象となる格子点も増えることになる。X軸及びY軸のそれぞれの格子点の総数Mの値については、任意に設定してよい。例えば、Mの値は、使用者により設定されてよい。この場合、条件設定部412は、使用者によって入力部10を介して入力された値を、X軸及びY軸のそれぞれの格子点の総数Mとして取得してよい。
【0051】
(コストマップの作成)
図5は、第2実施形態に係るコストマップの概要図である。本実施形態においては、条件設定部412は、折れ線マップLMの位置毎に評価値c(al,bl)が割り当てられたコストマップCMを作成する。具体的には、条件設定部412は、全ての格子点(座標)について評価値c(al,bl)を算出して、各格子点に評価値を割付ける。その割付けられた評価値c(al,bl)の分布図が、コストマップCMといえる。言い換えれば、条件設定部412は、折れ線マップLMを基に、全ての格子点(M個の座標点)を障害物OBのある格子点と、障害物OBがない格子点とに区別する。そして、条件設定部412は全ての格子点について、障害物OBのある格子点には1を、障害物OBがない格子点には0を、評価値c(al,bl)として割付ける。その結果、得られた評価値c(al,bl)の分布図がコストマップCMとなる。折れ線マップLMとコストマップCMのそれぞれの座標点(格子点)の数は同じM個となる。
【0052】
(評価関数の取得)
条件設定部412は、設定した評価値(コストマップCM)に基づいて値が決まる、最適化計算に用いる評価関数を取得する。条件設定部412は、コストマップCM上の船舶SHが経由する各位置(各格子点)における評価値c(al,bl)の総和を示す関数を、評価関数として取得する。条件設定部412は、任意の方法で評価関数を取得してよく、例えば、予め設定された評価関数を、外部サーバから取得してもよいし、メモリ30から読み出してもよい。
【0053】
(最適化計算)
最適化計算実行部413は、条件設定部412が取得した評価関数(船舶SHが経路する格子点における評価値c(al,bl)の総和)に基づいて、最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の、船舶SHの経路Rを作成する。すなわち、最適化計算実行部413は、出発位置Sから到着位置Gまでの船舶SHがとり得る各経路のうちで、評価関数に基づいて最適化された経路を、船舶SHの経路Rとして作成する。より詳しくは、最適化計算実行部413は、コストマップCM(各位置の評価値)に基づいて、船舶SHが経由する格子点における評価値c(al,bl)の総和を算出して、評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように(本例では評価値の総和が出来るだけ小さくなるように)、最適化計算を行う。すなわち例えば、最適化計算実行部413は、船舶SHがとり得る経路のそれぞれについて、経路上の各位置における評価値の総和を算出して、評価値の総和が所定値以下となる経路を(好ましくは総和が最小となる経路を)、最適化された経路Rとして設定する。
【0054】
出力制御部414は、最適化計算実行部413が算出した最適化計算の結果を出力する。最適化計算の結果は、船舶SHの経路Rを示す情報である。
【0055】
図6は、第2実施形態に係る経路作成装置の出力結果の説明図である。出力制御部414は、図6に示すように、コストマップCM上の格子点毎に位置を示す位置番号を採番する。1つの位置番号に対して、1つ座標(al,bl)が対応する。そして、船舶SHがどの番号の格子点を通るかを、経路となる格子点の位置番号を順に並べて表示する形式(図6の例では1、2、7、12、17、22、23、24、25の順に格子点の位置番号を出力する)で、出力部20に最適化計算の結果として表示してよい。またさらに、格子点の位置番号の出力結果に併記して、位置番号に対応するXY座標を列挙してもよい。
【0056】
(処理フロー)
次に、本実施形態の処理フローを説明する。図7は、本実施形態に係る経路作成のフローチャートである。経路Rを作成する場合、折れ線マップ構築部411は、岸壁などの障害物OBの情報である障害物情報を取得する。折れ線マップ構築部411は、取得した障害物情報から、障害物OBの代表点SP(端点や折れ曲がり点)の位置情報を検出し、検出したそれぞれの障害物OBの代表点SPを、線分で結んだ折れ線マップLMを構築する(ステップS11)。条件設定部412は、折れ線マップ構築部411が作成した折れ線マップLMを基に、コストマップCMを作成する(ステップS12)。条件設定部412は、評価関数を取得する(ステップS13)。最適化計算実行部413は、コストマップCM及び評価関数に基づき、最適化計算を実行する(ステップS14)。
【0057】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る経路作成装置1は、取得した障害物情報から、岸壁などの障害物OBの代表点SPの位置を検出し、折れ線マップLMを構築する。その後、構築した折れ線マップLMを基に、コストマップCMを作成する。そして、コストマップCMと評価関数とを用いて最適化計算を実施して、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。さらに言えば、本実施形態においては、第1実施形態と比較して、制約条件や評価関数が少ないため、最適化計算の結果を早く算出することができる。
【0058】
(第2実施形態の変形例1)
次に、第2実施形態の変形例1について説明する。第2実施形態では、全ての位置(格子点)について、条件設定部412が、障害物OBのある位置(格子点)には1を、障害物OBがない位置(格子点)には0の評価値c(al,bl)を割付けてコストマップCMを作成し、それを基に経路Rを作成していた。すなわち、第2実施形態のコストマップCMは、各位置の評価値が、第1の値または第2の値となる、二値化されたマップであった。それに対して、本例では、フィルタリング処理を施して、位置毎の評価値が3種類以上となるように、コストマップCMを補正して、フィルタリングコストマップFCMを作成する。
【0059】
(フィルタリング処理)
具体的には、条件設定部412が、二値化されたコストマップCM上の障害物OBがない格子点で、かつ障害物OBとの距離が所定の距離より近い格子点に、障害物OBとの距離に応じた第3の値となるコストを割りつけるフィルタリング処理を施し、フィルタリングコストマップFCMを作成する。例えば、条件設定部412が、障害物OBから距離2d離れた格子点(以降、閾値格子点と呼称する)には0の評価値c(al,bl)を割りつけ、閾値格子点から障害物OBに近づくにつれて、格子点に割付けられる評価値c(al,bl)が1に近づくように設定してもよい。本例においては、障害物OBから距離2d離れた閾値格子点に、0の評価値c(al,bl)を割りつけ、障害物OBと閾値格子点との中間位置にあたる、障害物OBから距離dの位置にある格子点に0.5の評価値c(al,bl)を割付け、それ以外の障害物OBからの距離が2dより近い格子点には、障害物OBとの距離に応じた評価値c(al,bl)を割付ける。ここで、障害物OBと閾値格子点までの距離2dは、船舶SHが障害物OBを回避して安全に航行する為に確保する、船舶SHと障害物OBとの距離である。距離2dについては、条件設定部412により自動で設定されてよい。この場合例えば、条件設定部412は、障害物情報と船舶SHの寸法情報および動力性能等の情報とに基づき、距離2dを設定してよい。
【0060】
本例においては、このようにして作成したフィルタリングコストマップFCMを、第2実施形態におけるコストマップCMとして扱って、第2実施形態と同様の方法で、以降の最適化計算の処理などを行う。
【0061】
(効果)
以上説明したように、本例に係る経路作成装置1は、作成したコストマップCMに、障害物OBからの所定の距離に基づいたフィルタリング処理を実施し、フィルタリングコストマップFCMを作成する。そして、フィルタリングコストマップFCMを基に、評価関数を取得し、最適化計算を実施して、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを、船舶SHと障害物OBとの距離を考慮しながら、適切に作成することができる。さらに言えば、本例においては、第1実施形態と比較して、制約条件や評価関数が少ないため、最適化計算の結果を早く算出することができる。
【0062】
(第2実施形態の変形例2)
次に、第2実施形態の変形例2について説明する。第2実施形態の変形例1では、障害物情報を含んだ地図情報を基に、折れ線マップLMやコストマップCMを作成し、作成したコストマップCMにフィルタリング処理を施し、フィルタリングコストマップFCMを作成していたが、本例においては、第2実施形態の変形例1の方法でコストマップCMを作成後、フィルタリング処理を行う前に、図示しない船舶SHに取りつけられたセンサ(LIDAR等)を用いて、障害物情報(他の船舶の位置情報も含む)を更新する。その後、更新した障害物情報に基づき、追加となった障害物OBのある格子点に1の値の評価値c(al,bl)を割付け、コストマップCMも更新する。最後に、第2実施形態の変形例1に示した方法で、更新したコストマップCMにフィルタリング処理を施し、フィルタリングコストマップFCMを作成する。以降フィルタリングコストマップFCMを基に、最適化計算を実施する方法は、変形例1と同じ為説明を省略する。
【0063】
(効果)
以上説明したように、本例に係る経路作成装置1は、作成したコストマップCMを、センサ(LIDAR等)から入手した障害物情報に基づいて更新し、更新した障害物OBからの所定の距離に基づくフィルタリング処理を実施し、フィルタリングコストマップFCMを作成する。そして、フィルタリングコストマップFCMを基に、評価関数を取得し、最適化計算を実施して、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを、船舶SHと障害物OBとの距離を考慮しつつ、センサ等により得た障害物情報を織り込んで、適切に作成することができる。さらに言えば、本例においては、第1実施形態と比較して、制約条件や評価関数が少ないため、最適化計算の結果を早く算出することができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、第2実施形態の方法と第1実施形態の方法を組み合わせて、経路Rを作成する。本実施形態においては、まず第2実施形態で示した方法で船舶SHの経路を作成し、作成した経路をベース経路R0として、ベース経路R0を利用して、第1実施形態に示した方法で経路Rを作成する。
【0065】
すなわち、第3実施形態においては、経路作成装置1は、第2実施形態と同様の方法で、コストマップCMに基づいた経路Rを設定する。第2実施形態と同様の方法で設定した経路Rを、適宜、ベース経路R0と記載する。
【0066】
第3実施形態においては、条件設定部412は、船舶SHの位置とベース経路R0との距離が規定値の範囲に収まることを制約とする、制約条件(第3制約条件)を設定する。
【0067】
条件設定部412は、第1実施形態と同様の方法でポテンシャルマップPM(位置毎の評価値)を設定する。
【0068】
最適化計算実行部413は、船舶SHの位置とベース経路R0との距離が規定値の範囲に収まるという制約条件(第3制約条件)を満たすことを条件とする以外は、第1実施形態と同様の方法で最適化計算を行い、最適化された経路Rを算出する。すなわち、最適化計算実行部413は、船舶SHの位置とベース経路R0との距離が規定値の範囲に収まるという制約条件を満しつつ、経路上の各位置における評価値の総和(第1評価関数)を評価関数として用いて、最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する。なお、第3実施形態においても、第1実施形態で規定した制約条件(第1および第2制約条件)や、第2~第5評価関数も用いてよい。
【0069】
以上説明したように、第3実施形態によると、船舶SHが航行可能な経路Rを、適切に作成することができる。さらに言えば、本実施形態においては、第1実施形態と比較して、第3制約条件が追加されたことで、ポテンシャルマップPM上での最適化計算を行う範囲が限定されるため、最適化計算の結果を早く算出することができる。
【0070】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係る経路作成装置1は、障害物OBの代表点SPの位置を検出し、代表点SPの位置を基に船舶SHが航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップLMを構築する折れ線マップ構築部411と、折れ線マップLMを用いて、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を折れ線マップLMの位置毎に設定する条件設定部412と、評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成する最適化計算実行部413とを含む。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0071】
本開示の第2態様に係る経路作成装置1は、第1態様に係る経路作成装置1であって、条件設定部412は、障害物OBから遠くなるにつれて評価が高くなる評価値が、折れ線マップLMの位置毎に割付けられたポテンシャルマップPMを作成し、最適化計算実行部413は、船舶SHがポテンシャルマップPM上の経由する位置における評価値の総和を評価関数として、最適化計算を行う。本開示によると、船舶SHがポテンシャルマップPM上の経由する位置における評価値の総和を考慮して、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0072】
本開示の第3態様に係る経路作成装置1は、第2態様に係る経路作成装置1であって、条件設定部412は、隣接する2つの代表点SPに基づいて、障害物OBから遠くなるにつれて値が減少する一次ポテンシャル関数を設定し、隣接する2つの代表点SPの組合せごとの一次ポテンシャル関数を重ね合わせて、ポテンシャルマップPMを作成する。本開示によると、隣接する2つの代表点SPに基づきポテンシャルマップPMを作成し、作成したポテンシャルマップPM考慮して、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0073】
本開示の第4態様に係る経路作成装置1は、第2態様または第3態様に係る経路作成装置1であって、最適化計算実行部413は、航行時間と、船舶SHの消費エネルギーと、船舶SHの航行状態と、船舶SHへの入力の変化率と、船舶SHがポテンシャルマップPM上の経由する位置における評価値の総和とを評価関数として、前記最適化計算を行う。本開示によると、航行時間と、船舶SHの消費エネルギーと、船舶SHの航行状態と、船舶SHへの入力の変化率と、船舶SHがポテンシャルマップPM上の経由する位置における評価値の総和を考慮した最適化計算を実行することができる。
【0074】
本開示の第5態様に係る経路作成装置1は、第4態様に係る経路作成装置1であって、最適化計算実行部413は、航行時間が出来るだけ短くなり、船舶SHの消費エネルギーが出来るだけ少なくなり、船舶SHの航行状態が出来るだけ安定し、船舶SHへの入力の変化率が出来るだけ小さくなり、かつ、評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように、最適化計算を行う。本開示によると、航行時間が出来るだけ短くなり、船舶SHの消費エネルギーが出来るだけ少なくなり、船舶SHの航行状態が出来るだけ安定し、船舶SHへの入力の変化率が出来るだけ少なくなり、かつ、評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように最適化計算を実行することができる。
【0075】
本開示の第6態様に係る経路作成装置1は、第1態様に係る経路作成装置1であって、
条件設定部412は、障害物OBのある位置では第1の値をとり、障害物OBがない位置では、第1の値より評価が高い第2の値をとる評価値を、折れ線マップLMの位置毎に設定し、評価値に基づいて、位置毎に評価値が割付けられたコストマップCMを作成し、最適化計算実行部413は、船舶SHがコストマップCM上を経由する位置における評価値の総和を評価関数として、最適化計算を行う。本開示によると、船舶SHがコストマップCM上の経由する位置における評価値の総和を考慮して、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0076】
本開示の第7態様に係る経路作成装置1は、第6態様に係る経路作成装置1であって、最適化計算実行部413は、評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように、最適化計算を行う。本開示によると、船舶SHのコストマップCM上の経由する位置における評価値の総和の評価が出来るだけ高くなるように最適化計算を実行することができる。
【0077】
本開示の第8態様に係る経路作成装置1は、第6態様又は第7態様に係る経路作成装置1であって、条件設定部412はコストマップCMに、フィルタリング処理を実施してフィルタリングコストマップFCMを作成し、最適化計算実行部413は、船舶SHがフィルタリングコストマップFCM上を経由する位置における評価値の総和を評価関数として、最適化計算を行う。本開示によると、船舶SHが障害物OBを回避して安全に航行する為の、船舶SHと障害物OBとの距離を考慮した経路Rを作成することができる。
【0078】
本開示の第9態様に係る経路作成装置1は、第6態様又は第7態様に係る経路作成装置1であって、条件設定部412は、コストマップCMに基づいて最適化計算により算出された船舶SHの経路を、ベース経路R0として取得して、ベース経路R0と船舶SHとの距離が規定値以内であることを制約条件として設定し、折れ線マップLMを用いて、障害物OBから遠くなるにつれて評価が高くなる評価値が位置毎に割り振られたポテンシャルマップPMを作成し、最適化計算実行部413は、船舶SHがポテンシャルマップPM上の経由する位置における評価値の総和を評価関数とし、かつ、制約条件を満たすように、最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の船舶の経路を作成する。本開示によると、最適化計算に要する時間を第1態様と比較して短縮することが出来る。
【0079】
本開示の第10態様に係る船舶は、第1態様から第3態様、第6態様及び第7態様のいずれか1項に記載の経路作成装置1を有する。本開示によると、航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0080】
本開示の第11態様に係る経路作成方法は、障害物OBの代表点SPの位置を検出し、代表点SPの位置を基に、船舶SHが航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップLMを構築するステップと、折れ線マップLMを用いて、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、折れ線マップLMの位置毎に設定するステップと、評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成するステップとを含む。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0081】
本開示の第12態様に係るプログラムは、障害物OBの代表点SPの位置を検出し、代表点SPの位置を基に船舶SHが航行可能な領域と、航行不可能な領域とを示す折れ線マップLMを構築するステップと、折れ線マップLMを用いて、障害物OBの位置から遠くなると評価が高くなる評価値を、折れ線マップLMの位置毎に設定するステップと、評価値に基づいた評価関数を用いて最適化計算を行い、最適化計算の結果が最適となる際の船舶SHの経路Rを作成するステップとをコンピュータに実行させる。本開示によると、船舶SHが航行可能な経路Rを適切に作成することができる。
【0082】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 経路作成装置
S 出発位置
G 到着位置
R 経路
LM 折れ線マップ
PM ポテンシャルマップ
CM コストマップ
SH 船舶
OB 障害物
SP 代表点
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7