(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165872
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ワーク位置取得方法およびワーク位置取得装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241121BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B25J13/08 A
G01B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082432
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】小林 優一
(72)【発明者】
【氏名】中野 真克
(72)【発明者】
【氏名】田畑 裕輔
【テーマコード(参考)】
2F065
3C707
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA17
2F065AA51
2F065AA52
2F065BB15
2F065BB27
2F065DD06
2F065FF04
2F065GG04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM04
3C707AS14
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS06
3C707KS17
3C707KS21
3C707KW06
3C707KX07
3C707NS09
(57)【要約】
【課題】ワークの回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得する。
【解決手段】ワーク位置取得方法は、ワーク9に対して着脱可能である3個以上の被検出部8を、ワーク9の回転面上において周方向に沿って配列する工程と、形状測定機4が設けられたロボット2のアーム21の移動を行いつつ、回転面上の被検出部8を形状測定機4により順に測定する工程と、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、回転面上における当該被検出部8の取付位置の座標を求める工程と、被検出部8の取付位置の座標に基づいて、回転面の中心を求める工程とを備える。これにより、ワーク9の回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの座標系において、回転面を有するワークにおける前記回転面の中心を取得するワーク位置取得方法であって、
a)前記ワークに対して着脱可能である3個以上の被検出部を、前記ワークの前記回転面上において周方向に沿って配列する工程と、
b)前記ロボットのアームに非接触式の形状測定機が設けられており、前記アームの移動、および/または、前記回転面の中心軸に平行な軸を中心とした前記ワークの回転を行いつつ、前記回転面上の前記3個以上の被検出部を前記形状測定機により順に測定する工程と、
c)前記b)工程において前記アームを移動する場合、各被検出部の測定時における前記アームの座標、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記b)工程において前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記ワークの回転角、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記b)工程において前記アームを移動し、かつ、前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記アームの座標および前記ワークの回転角、並びに、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記回転面上における前記各被検出部の取付位置の座標を求める工程と、
d)前記3個以上の被検出部の取付位置の座標に基づいて、前記回転面の中心を求める工程と、
を備えるワーク位置取得方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク位置取得方法であって、
前記形状測定機が、物体の断面プロファイルを測定するレーザセンサであるワーク位置取得方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク位置取得方法であって、
前記b)工程において、前記形状測定機が前記周方向に略垂直な前記断面プロファイルを測定する状態で、前記形状測定機が前記回転面に沿って前記周方向に相対移動するワーク位置取得方法。
【請求項4】
請求項2に記載のワーク位置取得方法であって、
前記c)工程において、前記断面プロファイルが示す前記回転面上の物体の高さが、所定範囲に含まれる場合に、前記物体が被検出部として扱われるワーク位置取得方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1つに記載のワーク位置取得方法であって、
前記各被検出部において、前記回転面に接触する第1面と、前記第1面に対向する第2面とが平行であり、
前記b)工程において、前記各被検出部に対して2箇所以上で前記断面プロファイルが測定され、
前記c)工程において、前記各被検出部の前記第2面が求められ、前記各被検出部の取付位置が、前記第2面上の所定の点から、前記第2面に垂直かつ前記第1面に向かう方向にずれた位置として求められるワーク位置取得方法。
【請求項6】
請求項5に記載のワーク位置取得方法であって、
前記各被検出部の前記第2面および前記第1面の形状が円であり、前記第2面上の前記所定の点が前記円の中心であるワーク位置取得方法。
【請求項7】
ロボットの座標系において、回転面を有するワークにおける前記回転面の中心を取得するワーク位置取得装置であって、
前記ロボットのアームに設けられる非接触式の形状測定機と、
前記ワークに対して着脱可能である3個以上の被検出部が、前記ワークの前記回転面上において周方向に沿って配列されており、前記アームの移動、および/または、前記回転面の中心軸に平行な軸を中心とした前記ワークの回転を行いつつ、前記回転面上の前記3個以上の被検出部を前記形状測定機により順に測定する測定制御部と、
前記測定制御部が前記アームを移動する場合、各被検出部の測定時における前記アームの座標、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記測定制御部が前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記ワークの回転角、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記測定制御部が前記アームを移動し、かつ、前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記アームの座標および前記ワークの回転角、並びに、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記回転面上における前記各被検出部の取付位置の座標を求める取付位置算出部と、
前記3個以上の被検出部の取付位置の座標に基づいて、前記回転面の中心を求める中心算出部と、
を備えるワーク位置取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの座標系において、回転面を有するワークにおける当該回転面の中心を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットを用いて溶接やガス切断等の加工を行う場合、ロボットに加工対象のワークの位置を事前に教示する作業が必要となる。当該作業では、例えば、オペレータがティーチングペンダントを操作して、ロボットのアームの先端をワーク表面に移動させ、ワーク表面の位置をロボットに教示(手動教示)する。円筒胴等の円筒面を有するワークでは、オペレータがロボットのアームの先端を円筒面上の複数の位置に移動させることにより、ロボットの座標系における当該円筒面の中心が取得される。
【0003】
特許文献1のロボット制御装置では、ワークの基準となる3つ以上の点がカメラによって認識され、認識された各点とカメラとの相対位置関係が決定される。そして、当該相対位置関係により、CAD/CAMで得られた仮想的なプログラム位置に補正がかけられる。特許文献2および3では、ワークに取り付けられたマーク(ターゲット)を撮像することにより、ワークの位置を特定する手法が開示されており、ワークに対して着脱可能な磁石を当該マークとして用いることも記載されている。特許文献4では、レーザセンサを用いてワークの位置を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2767417号公報
【特許文献2】特開2019-200677号公報
【特許文献3】特開2009-125839号公報
【特許文献4】特許第5805457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ロボットの座標系における円筒面の中心を取得する場合、オペレータがロボットのアームの先端を円筒面上の複数の位置に移動させる(すなわち、手動教示する)必要がある。しかしながら、作業に長時間を要したり、オペレータによって精度がばらつくことがある。また、ワークが大径の円筒胴である等、円筒面の直径が大きい(例えば、数mである)場合には、円筒面を目視確認しながら手動教示するのは容易ではなく、足場等の段取りも必要となる。これらの問題は、円筒面以外の回転面(例えば、半球面や円錐面等)を有するワークにおいても同様である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ワークの回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、ロボットの座標系において、回転面を有するワークにおける前記回転面の中心を取得するワーク位置取得方法であって、a)前記ワークに対して着脱可能である3個以上の被検出部を、前記ワークの前記回転面上において周方向に沿って配列する工程と、b)前記ロボットのアームに非接触式の形状測定機が設けられており、前記アームの移動、および/または、前記回転面の中心軸に平行な軸を中心とした前記ワークの回転を行いつつ、前記回転面上の前記3個以上の被検出部を前記形状測定機により順に測定する工程と、c)前記b)工程において前記アームを移動する場合、各被検出部の測定時における前記アームの座標、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記b)工程において前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記ワークの回転角、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記b)工程において前記アームを移動し、かつ、前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記アームの座標および前記ワークの回転角、並びに、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記回転面上における前記各被検出部の取付位置の座標を求める工程と、d)前記3個以上の被検出部の取付位置の座標に基づいて、前記回転面の中心を求める工程とを備える。
【0008】
本発明の態様2は、態様1のワーク位置取得方法であって、前記形状測定機が、物体の断面プロファイルを測定するレーザセンサである。
【0009】
本発明の態様3は、態様2のワーク位置取得方法であって、前記b)工程において、前記形状測定機が前記周方向に略垂直な前記断面プロファイルを測定する状態で、前記形状測定機が前記回転面に沿って前記周方向に相対移動する。
【0010】
本発明の態様4は、態様2(態様2または3であってもよい。)のワーク位置取得方法であって、前記c)工程において、前記断面プロファイルが示す前記回転面上の物体の高さが、所定範囲に含まれる場合に、前記物体が被検出部として扱われる。
【0011】
本発明の態様5は、態様2ないし4のいずれか1つのワーク位置取得方法であって、前記各被検出部において、前記回転面に接触する第1面と、前記第1面に対向する第2面とが平行であり、前記b)工程において、前記各被検出部に対して2箇所以上で前記断面プロファイルが測定され、前記c)工程において、前記各被検出部の前記第2面が求められ、前記各被検出部の取付位置が、前記第2面上の所定の点から、前記第2面に垂直かつ前記第1面に向かう方向にずれた位置として求められる。
【0012】
本発明の態様6は、態様5のワーク位置取得方法であって、前記各被検出部の前記第2面および前記第1面の形状が円であり、前記第2面上の前記所定の点が前記円の中心である。
【0013】
本発明の態様7は、ロボットの座標系において、回転面を有するワークにおける前記回転面の中心を取得するワーク位置取得装置であって、前記ロボットのアームに設けられる非接触式の形状測定機と、前記ワークに対して着脱可能である3個以上の被検出部が、前記ワークの前記回転面上において周方向に沿って配列されており、前記アームの移動、および/または、前記回転面の中心軸に平行な軸を中心とした前記ワークの回転を行いつつ、前記回転面上の前記3個以上の被検出部を前記形状測定機により順に測定する測定制御部と、前記測定制御部が前記アームを移動する場合、各被検出部の測定時における前記アームの座標、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記測定制御部が前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記ワークの回転角、および、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記測定制御部が前記アームを移動し、かつ、前記ワークを回転する場合、前記各被検出部の測定時における前記アームの座標および前記ワークの回転角、並びに、前記形状測定機による前記各被検出部の測定結果を用い、前記回転面上における前記各被検出部の取付位置の座標を求める取付位置算出部と、前記3個以上の被検出部の取付位置の座標に基づいて、前記回転面の中心を求める中心算出部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークの回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】コンピュータが実現する機能構成を示すブロック図である。
【
図6】被検出部の断面プロファイルを示す図である。
【
図9】ターンテーブル上のワークを示す平面図である。
【
図10】断面プロファイルの測定時のワークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る加工システム1の構成を示す図である。加工システム1は、加工対象であるワーク9に対してロボット2を利用して溶接やガス切断等の加工を行う。
図1の例では、ワーク9は、炭素鋼等の金属にて形成される、大径(例えば、直径数mの)円筒胴であり、同心の円筒面(回転面)である内周面91および外周面92を有する。ワーク9は、図示省略の支持部により支持される。
図1では、互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示す(ワーク9を示す他の図において同様)。X方向およびY方向は、水平方向であり、Z方向は、上下方向(鉛直方向)である。X方向およびY方向が、水平方向に対して傾斜してもよく、Z方向が、上下方向に対して傾斜してもよい。
【0017】
加工システム1は、ロボット2と、コンピュータ3とを備える。ロボット2は、例えば、垂直多関節ロボットであり、
図1の例では、6個の関節(6軸)を有するアーム21を備える。アーム21の関節の個数は、5個以下であってもよく、7個以上であってもよい。また、ロボット2は、垂直多関節ロボット以外であってもよい。ロボット2は、周知の産業用ロボットであるため、詳細な説明を省略する。コンピュータ3は、CPU、メモリ等を備える。
【0018】
図2は、コンピュータ3が実現する機能構成を示すブロック図である。コンピュータ3のCPU等が、所定のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、
図2中の測定制御部31、取付位置算出部32および中心算出部33の機能が実現される。これらの機能は専用の電気回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気回路が用いられてもよい。測定制御部31、取付位置算出部32および中心算出部33の機能の詳細については後述する。
図2では、ロボット2、並びに、後述の形状測定機4およびターンテーブル(またはポジショナー)71もブロックにて示している。ターンテーブル71は、後述の処理例で用いられる。
【0019】
図3は、ロボット2の座標系においてワーク9の円筒面の中心を取得するワーク位置取得処理の流れを示す図である。ワーク位置取得処理は、ロボット2を利用したワーク9の加工の前に、ロボット2にワーク9の位置を教示する処理である。
図1の例では、円筒胴であるワーク9が倒れた状態であり、ワーク9の中心軸J1がX方向におよそ沿っている。なお、ワーク位置取得処理の開始時には、ワーク9の中心軸J1の正確な位置は不明である。中心軸J1はX方向に対して傾斜していてもよい。以下の説明では、ワーク9の中心軸J1に沿う方向を軸方向という。軸方向は、ワーク9の長さ方向である。
【0020】
ワーク位置取得処理では、まず、ワーク9の(-X)側の端部96において、オペレータにより、複数の被検出部8がワーク9の円筒面上に取り付けられる(ステップS11)。本処理例におけるワーク9の(-X)側の端部96および(+X)側の端部97のそれぞれでは、軸方向における所定位置において、中心軸J1を中心とする周方向に延びる線(ゲージ線とも呼ばれる。)が内周面91に予め設けられている。複数の被検出部8は、内周面91上において当該線上に配置される。
図1では、(+X)側の端部97にも、複数の被検出部8を図示している。複数の被検出部8は、専用の装置により内周面91に取り付けられてもよい。
【0021】
図4は、ワーク9の端部96における断面図であり、
図1中の矢印IV-IVの位置における中心軸J1に垂直な断面を示している。ステップS11では、3個以上の被検出部8が、およそ等角度間隔にて周方向に配列される。
図4の例では、4個の被検出部8が、約90°間隔にて周方向に配列される。ワーク9が磁性体により形成される場合、被検出部8は、磁石であることが好ましく、ワーク9の内周面91に磁力により着脱可能に固定される。
【0022】
図1および
図4に示す各被検出部8は、円柱状であり、互いに対向する2つの底面81,82(以下、「第1面81」および「第2面82」という。)を有する。第1面81および第2面82は、互いに平行である。第1面81は、ワーク9の内周面91に接触する面であり、
図4の例では、中心軸J1を中心とする径方向の外側を向く。第2面82は、ワーク9の内周面91に接触しない面であり、
図4の例では、径方向の内側を向く。第1面81および第2面82は、共に円形である。第1面81と第2面82との間の距離、すなわち、被検出部8の高さは既知である。被検出部8の形状は、円柱以外であってよく、第1面81および第2面82は、円形以外の形状(例えば、矩形、多角形、楕円形等)であってもよい。被検出部8は、磁石以外であってもよく、例えば、クランプ、吸盤、両面粘着テープ等を用いて、ワーク9に対して着脱可能に取り付けられてもよい。
【0023】
続いて、
図1に示すように、ロボット2のアーム21の先端に、非接触式の形状測定機4が取り付けられる。形状測定機4は、アーム21の先端に設けられたロボットハンドに保持されてもよい。形状測定機4は、例えば、2次元のレーザセンサ(レーザ変位計)であり、物体の断面プロファイルを測定する。測定制御部31が、ロボット2を制御してアーム21を移動することにより、
図4に示すように、ワーク9の内部において、形状測定機4が内周面91からある程度離れた位置に配置される。その後、アーム21の動作により、形状測定機4が、内周面91に沿って周方向全周に亘って連続的に移動する。すなわち、形状測定機4が、内周面91に沿って一周回転する。
図4では、形状測定機4の移動経路を破線の矢印にて示している。周方向に移動する形状測定機4により、内周面91上の複数の被検出部8が順に測定される(ステップS12)。
【0024】
形状測定機4の周方向の移動では、帯状のレーザ光が広がる方向(または、レーザ光のスキャン方向)が径方向および軸方向に沿うように、ロボット2により形状測定機4の姿勢が調整される。換言すると、形状測定機4では、周方向に略垂直な断面における、物体の表面プロファイル(すなわち、断面プロファイル)を測定可能な状態が維持される。周方向に略垂直な断面とは、例えば、周方向とのなす角度が60°~90°となる断面である。形状測定機4では、所定の周期にて断面プロファイルが測定されており、各被検出部8に対して、周方向における複数の位置にて断面プロファイルが取得される。各断面プロファイルのデータは、取付位置算出部32に出力される。また、当該断面プロファイルの測定時におけるアーム21の先端の座標が、ロボット2から取付位置算出部32に出力される。アーム21の先端の座標は、ロボット2の座標系における座標である。以下の説明において、単に「座標」という場合、ロボット2の座標系における座標を意味する。
【0025】
図5は、径方向に沿って見た1つの被検出部8を示す図である。
図5の上下方向が、周方向に対応し、断面プロファイルが測定される複数の位置M1~M7を破線にて示している。
図6は、位置M4における被検出部8の断面プロファイルを示す図である。取付位置算出部32では、各断面プロファイルにおいて、角部が検出される。角部は、例えば、傾きの変化量が所定値以上となる点である。断面プロファイルでは、両端の部分(
図6中の左右方向における両端の部分であり、以下、「ベース部」という。)が、ワーク9の内周面91を示す直線状となっており、検出された角部のうち、ベース部からの高さが所定範囲に含まれる角部が、特徴点として特定される。
【0026】
図6の断面プロファイルでは、2つの特徴点Fが特定される。特徴点Fは、被検出部8の第2面82のエッジを示す。被検出部8が存在しない位置で測定された断面プロファイルでは、原則として角部が検出されない。また、内周面91上にごみ等の不要物が付着している場合、当該不要物は、通常、被検出部8に比べて十分に小さい。したがって、当該不要物に由来する角部が検出された場合でも、ベース部からの高さが所定範囲に含まれないため、当該角部が、特徴点Fとして特定されることが防止される。
【0027】
取付位置算出部32では、連続して測定された2以上の断面プロファイルのそれぞれに特徴点Fが含まれる場合に、当該2以上の断面プロファイルの特徴点Fの集合が、特徴点群として1つの被検出部8に対応付けられる。
図5の例では、連続して測定された、位置M3~M5の断面プロファイルのそれぞれに特徴点Fが含まれており、位置M3~M5の断面プロファイルの特徴点Fの集合が特徴点群として扱われる。実際には、複数の被検出部8にそれぞれ対応付けられた複数の特徴点群が特定される。
【0028】
既述のように、各断面プロファイルの測定時におけるアーム21の先端の座標が取得されており、各特徴点群に含まれる複数の特徴点Fについて、ロボット2の座標系における座標が求められる。なお、ステップS12における形状測定機4の周方向の移動(回転移動)では、回転中心が決まっており、各断面プロファイルの測定時における、アーム21の先端と形状測定機4との相対位置関係が算出可能である。
【0029】
各被検出部8について、特徴点群に含まれる複数の特徴点Fの座標が求められると、当該被検出部8の第2面82の中心が、当該複数の特徴点Fの座標から求められる。既述のように、複数の特徴点Fは、円形である第2面82のエッジ上の点である。3次元空間において複数の点を通る円の中心を求める手法は周知であるため、説明を省略する。3次元空間における円の中心は、当該円周上の3点から求めることが可能であるため、第2面82の中心を求める際に、複数の特徴点Fのうち3個の特徴点Fのみが用いられてもよい。換言すると、特徴点Fの個数は3個以上であればよい。
【0030】
その後、第2面82の中心から、第2面82に垂直かつ第1面81に向かう方向に被検出部8の高さの距離だけずれた位置を、当該被検出部8の取付位置として、当該取付位置の座標が求められる(ステップS13)。第2面82に垂直な方向は、当該複数の特徴点Fを含む面の法線方向であり、被検出部8の高さは既知である。
図6では、位置M4の断面プロファイル上に第2面82の中心C2が位置するものと仮定し、中心C2から被検出部8の高さの距離だけずれた取付位置C1を図示している。なお、取付位置算出部32の設計によっては、断面プロファイルに基づいてベース部からの第2面82の高さが求められ、中心C2から当該高さだけずれた位置が取付位置C1とされてもよい。この場合に、断面プロファイルの測定方向(すなわち、レーザセンサの照射方向)と第2面82とが直交しないときには、両者がなす角度を取得することにより、断面プロファイルに基づく第2面82の高さが補正されてもよい。
【0031】
中心算出部33では、複数の被検出部8の取付位置C1の座標に基づいて、ワーク9の(-X)側の端部96における内周面91の中心の座標が求められる(ステップS14)。例えば、被検出部8の第2面82の中心を求める場合と同様に、複数の被検出部8の取付位置C1を通る円の中心が、端部96における内周面91の中心として求められる。以上のように、
図2に示す形状測定機4、測定制御部31、取付位置算出部32および中心算出部33により、ロボット2の座標系において、ワーク9の円筒面(ここでは、内周面91)の中心を取得するワーク位置取得装置40が実現される。内周面91の中心が求められると、内周面91上の複数の被検出部8が取り外されて回収される。
【0032】
ステップS14では、第2面82の中心を求める場合と同様に、複数の被検出部8の取付位置C1のうち3個の被検出部8の取付位置C1のみを用いて、内周面91の中心が求められてもよい。換言すると、被検出部8の個数は3個以上であればよい。内周面91の中心をより精度よく求めるには、内周面91の中心の算出に用いる被検出部8の個数は多いことが好ましい。一方、被検出部8の個数が多い場合、ステップS11における被検出部8の配置(および、被検出部8の内周面91からの回収)に要する時間が長くなる。被検出部8の個数は、上記等を考慮して適宜決定されてよい。例えば、被検出部8の個数は、10個以下である。
【0033】
本処理例では、上記ステップS11~S14と同様の処理が、ワーク9の(+X)側の端部97に対して行われ、端部97における内周面91の中心が求められる。そして、(-X)側の端部96における内周面91の中心と、(+X)側の端部97における内周面91の中心との間の中点が、ワーク9の加工に係る原点(ワーク原点)として設定される。また、両中心を結ぶ線が、ワーク9の中心軸J1として取得される。ワーク位置取得処理では、ワーク9の外周面92において、複数の被検出部8が配列され、円筒面である外周面92の中心が求められてもよい。
【0034】
以上に説明したように、ワーク位置取得処理は、3個以上の被検出部8を、ワーク9の円筒面上において周方向に沿って配列する工程(ステップS11)と、形状測定機4が設けられたロボット2のアーム21を移動しつつ、円筒面上の被検出部8を形状測定機4により順に測定する工程(ステップS12)と、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、円筒面上における当該被検出部8の取付位置の座標を求める工程(ステップS13)と、被検出部8の取付位置の座標に基づいて、円筒面の中心を求める工程(ステップS14)とを備える。ワーク位置取得処理では、ワーク9が大径である場合であっても、ロボット2の座標系において、ワーク9の円筒面の中心を容易に、かつ、精度よく(例えば、オペレータによって精度がばらつくことなく)取得することができる。
【0035】
ところで、各被検出部8の測定において、形状測定機4に代えてカメラを用いることも考えられる。しかしながら、カメラを用いて被検出部8の3次元座標を取得するには、被検出部8の撮像方向を複数通りに変更する必要があるため、被検出部8の測定に長時間を要してしまう。これに対し、上記ワーク位置取得処理では、断面プロファイルを短い周期にて測定可能な形状測定機4を、被検出部8に対して連続的に移動することにより、被検出部8の測定を短時間で完了することが可能である。
【0036】
好ましくは、ステップS12において、形状測定機4が周方向に略垂直な断面プロファイルを測定する状態で、形状測定機4が円筒面に沿って周方向に移動する。これにより、被検出部8の測定を容易に(上記処理例では、自動的に)行うことができる。
【0037】
好ましくは、ステップS13において、断面プロファイルが示す円筒面上の物体の高さが、所定範囲に含まれる場合に、当該物体が被検出部8として扱われる。その結果、円筒面上のごみ等が被検出部8として検出されることを容易に防止することができ、異常値に基づいてワーク9の円筒面の中心が求められることを回避することができる。
【0038】
好ましいワーク位置取得処理では、ステップS12において、各被検出部8に対して2箇所以上で断面プロファイルが測定される。また、ステップS13において、各被検出部8の第2面82(第2面82を示す方程式)が求められ、各被検出部8の取付位置が、第2面82上の所定の点から、第2面82に垂直かつ第1面81に向かう方向にずれた位置として求められる。これにより、形状測定機4が測定する断面が、被検出部8の第2面82の法線に対して傾いている場合でも、被検出部8の取付位置を精度よく求めることができる。また、各被検出部8の第2面82および第1面81の形状が円であり、第2面82上の上記所定の点が当該円の中心であることがより好ましい。この場合、被検出部8の取付位置を安定して精度よく求めることができる。
【0039】
ワーク位置取得装置40は、形状測定機4と、測定制御部31と、取付位置算出部32と、中心算出部33とを備える。形状測定機4は、ロボット2のアーム21に設けられる。測定制御部31は、ワーク9の円筒面上において周方向に沿って配列された3個以上の被検出部8を、アーム21を移動しつつ形状測定機4により順に測定する。取付位置算出部32は、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、円筒面上における当該被検出部8の取付位置の座標を求める。中心算出部33は、被検出部8の取付位置の座標に基づいて、円筒面の中心を求める。ワーク位置取得装置40では、ロボット2の座標系において、ワーク9の円筒面の中心を自動的に、かつ、適切に取得することができる。
【0040】
図7は、縦置きしたワーク9を示す平面図であり、
図8は、ワーク9を示す側面図である。
図7および
図8に示す例では、ワーク9は、直立した状態で(すなわち、中心軸J1がZ方向に略平行となる状態で)、ターンテーブル71の上面上に載置される。ターンテーブル71は、中心軸J1に平行な回転軸を中心として回転可能である。
【0041】
図7および
図8に示すワーク9に対するワーク位置取得処理では、円筒面である外周面92において、軸方向における所定位置(例えば、軸方向の中央)にて周方向に延びる線が描かれ、外周面92上において当該線上に複数の被検出部8が配列される(
図3:ステップS11)。当該線は、ワーク9の外周面92に予め設けられていてもよい。複数の被検出部8が配列されると、ロボット2を制御してアーム21を移動することにより、複数の被検出部8が形状測定機4により順に測定される(ステップS12)。
図7および
図8では、ロボット2の図示を省略している。ステップS13,S14の処理は、上記の処理例と同様である。これにより、軸方向の所定位置におけるワーク9の外周面92の中心が求められる。当該中心は、ワーク9の加工に係る原点として設定される。
図7および
図8に示すワーク9においても、内周面91の中心が求められてもよい。
【0042】
次に、ロボット2のアーム21の位置を固定し、ターンテーブル71によりワーク9を回転するワーク位置取得処理について説明する。
図9は、ターンテーブル71上のワーク9を示す平面図であり、
図9では、ターンテーブル71の回転軸に符号R1を付す。ワーク位置取得処理では、事前準備として、ロボット2の座標系において、ターンテーブル71の回転軸R1の位置が予め特定される。例えば、オペレータがロボット2を操作して、ターンテーブル71の外周面における複数の位置にアーム21の先端を接触させることにより、回転軸R1の位置が取得可能である。回転軸R1の位置は、他の手法により求められてよい。回転軸R1は、ワーク9の中心軸J1に平行である。
【0043】
続いて、ワーク9の外周面92に対して、軸方向における所定位置にて周方向に延びる線が描かれ(当該線が予め設けられていてもよい。)、外周面92上において当該線上に複数の被検出部8が配列される(
図3:ステップS11)。また、ロボット2のアーム21の先端は、ワーク9の外周面92に対向する位置に配置されており、アーム21の先端には、形状測定機4が取り付けられる。形状測定機4は、例えば、回転軸R1を含む面における、外周面92の断面プロファイルを測定可能である。
【0044】
その後、ターンテーブル71が回転を開始し、ワーク9が回転軸R1を中心として回転基準位置から回転する。回転基準位置は、例えば、ターンテーブル71の回転の原点である。
図9では、ターンテーブル71が回転基準位置に位置する際のワーク9(以下、単に「回転基準位置のワーク9」という。)において、1つの被検出部8aの、回転軸R1を中心とする角度位置を一点鎖線K1により示している。ワーク位置取得装置40では、外周面92上の各被検出部8が形状測定機4に対向する位置を通過する際に、形状測定機4により当該被検出部8の断面プロファイルが取得される。このようにして、外周面92上の複数の被検出部8が形状測定機4により順に測定される(ステップS12)。
【0045】
形状測定機4による各断面プロファイルの測定時には、ワーク9の回転角(すなわち、回転軸R1を中心とする、回転基準位置からの回転角)も取得されており、当該回転角は取付位置算出部32に出力される。
図10に示す状態では、被検出部8aが形状測定機4に対向する位置に到達しており、
図10に示す被検出部8aの角度位置と、角度位置K1とがなす角度θ1がワーク9の回転角となる。
図10では、回転基準位置のワーク9を二点鎖線にて示している。なお、
図9および
図10の例では、ターンテーブル71の回転軸R1と、ワーク9の中心軸J1は一致していない。
【0046】
取付位置算出部32では、上記処理例と同様に、連続して測定された2以上の断面プロファイルのそれぞれに特徴点F(
図6参照)が含まれる場合に、当該2以上の断面プロファイルの特徴点Fの集合が、特徴点群として1つの被検出部8に対応付けられる。ここで、断面プロファイルにおける各特徴点Fが示す被検出部8上の点(以下、「被検出部8上の特徴点」という。)は、ワーク9の回転により、回転軸R1を中心として回転する。取付位置算出部32では、アーム21の先端の座標、および、断面プロファイルにおける当該特徴点Fの位置から、当該断面プロファイルの測定時における被検出部8上の当該特徴点の座標が求められる。そして、測定時における被検出部8上の当該特徴点の位置を、回転軸R1を中心として、当該測定時におけるワーク9の回転角だけワーク9(ターンテーブル71)の回転方向とは反対側に回転移動することにより、回転基準位置のワーク9における被検出部8上の当該特徴点の座標が求められる。
【0047】
続いて、回転基準位置のワーク9における各被検出部8の第2面82(
図9に示すように、外周面92に接触しない面である。)の中心が、回転基準位置のワーク9における当該被検出部8上の複数の特徴点の座標から求められる。第2面82の中心が求められると、第2面82の中心から、第2面82に垂直かつ第1面81に向かう方向に被検出部8の高さの距離だけずれた位置が、回転基準位置のワーク9における当該被検出部8の取付位置として求められる(ステップS13)。中心算出部33では、回転基準位置のワーク9における複数の被検出部8の取付位置の座標に基づいて、回転基準位置のワーク9の外周面92の中心が求められる(ステップS14)。当該中心は、ワーク9の加工に係る原点として設定される。もちろん、ワーク9の内周面91の中心が求められてもよい。
【0048】
以上のように、
図9および
図10を参照して説明したワーク位置取得処理は、3個以上の被検出部8を、ワーク9の円筒面上において周方向に沿って配列する工程(ステップS11)と、円筒面の中心軸J1に平行な回転軸R1を中心としてワーク9を回転しつつ、円筒面上の被検出部8を形状測定機4により順に測定する工程(ステップS12)と、各被検出部8の測定時におけるワーク9の回転角、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、円筒面上における当該被検出部8の取付位置の座標を求める工程(ステップS13)と、被検出部8の取付位置の座標に基づいて、円筒面の中心を求める工程(ステップS14)とを備える。これにより、ロボット2のアーム21の位置を固定し、ターンテーブル71によりワーク9を回転する場合であっても、ロボット2の座標系において、ワーク9の円筒面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することができる。なお、上記処理例では、ステップS12において、形状測定機4が周方向に略垂直な断面プロファイルを測定する状態で、形状測定機4が円筒面に沿って周方向に相対移動していると捉えることが可能である。
【0049】
ターンテーブル71によりワーク9を回転するワーク位置取得処理において、各被検出部8を形状測定機4により測定する際に、ワーク9の回転が一時的に停止されてもよい。例えば、
図9のように、ワーク9の外周面92(内周面91であってもよい。)に被検出部8が配列される場合に、ワーク9の回転により各被検出部8が形状測定機4におよそ対向する対向位置へと到達すると、ワーク9の回転が停止される。例えば、形状測定機4が測定する断面プロファイルにおいて、ベース部からの高さが所定範囲に含まれる角部(すなわち、特徴点)が特定された場合に、被検出部8の対向位置への到達が検出される。各被検出部8が対向位置へと到達するワーク9の回転角が設定回転角として予め設定され、ワーク9の回転において回転角が設定回転角に到達した際に、ワーク9の回転が停止されてもよい。
【0050】
続いて、ワーク9の回転が停止した状態で、ロボット2のアーム21を、所定の範囲内において外周面92に沿って移動することにより、形状測定機4により当該被検出部8に対して複数の断面プロファイルが取得される(
図3:ステップS12)。形状測定機4による当該被検出部8の測定の完了後、ワーク9の回転が再開される。取付位置算出部32では、ロボット2のアーム21を移動して被検出部8を測定する
図4および
図7の例と同様に、当該被検出部8の測定時におけるアーム21の座標、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、外周面92上における当該被検出部8の取付位置の座標が求められる。その後、当該被検出部8の取付位置を、測定時のワーク9(すなわち、回転停止時のワーク9)の回転角だけ、回転軸R1を中心としてワーク9の回転方向とは反対側に回転移動することにより、回転基準位置のワーク9における当該被検出部8の取付位置の座標が求められる(ステップS13)。そして、回転基準位置のワーク9における複数の被検出部8の取付位置の座標に基づいて、回転基準位置のワーク9の外周面92の中心が求められる(ステップS14)。
【0051】
以上のように、ワーク9の回転を一時的に停止するワーク位置取得処理では、ステップS12において、複数の被検出部8を形状測定機4により順に測定する際に、アーム21の移動、および、回転面の中心軸J1に平行な軸を中心としたワーク9の回転の双方が行われる。このように、ステップS12において、アーム21を移動し、かつ、ワーク9を回転する場合、ステップS13では、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標およびワーク9の回転角、並びに、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果を用い、回転面上における当該被検出部8の取付位置の座標が求められる。これにより、ワーク9の回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【0052】
図11は、他の例に係るワーク9aを示す平面図であり、
図12は、ワーク9aを示す側面図である。
図11および
図12に示すワーク9aは、鏡板であり、略半球状の球面部と、中心軸J1を中心とする略円筒状の円筒部とを有し、球面部と円筒部とが互いに接続する。球面部では、中心軸J1を含む面における断面が、例えば、半楕円または半円である。ワーク9aは、円筒部が下側に配置された状態で、ターンテーブル71上に載置される。後述するように、鏡板であるワーク9aは、略半球状の球面部のみを有していてもよい。ターンテーブル71は、中心軸J1に平行な回転軸を中心として回転可能である。
【0053】
ワーク9aに対するワーク位置取得処理では、円筒部の外周面92に対して、所定の高さ位置にて周方向に延びる線が描かれ(当該線が予め設けられていてもよい。)、外周面92上において当該線上に複数の被検出部8が配列される(
図3:ステップS11)。ワーク位置取得装置40では、形状測定機4が設けられたロボット2のアーム21の移動、および/または、ターンテーブル71の回転軸を中心としたワーク9aの回転を行いつつ、外周面92上の複数の被検出部8が形状測定機4により順に測定される(ステップS12)。
【0054】
続いて、外周面92上における各被検出部8の取付位置の座標が求められる(ステップS13)。このとき、ステップS12においてアーム21を移動する場合、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果が用いられる。また、ステップS12においてワーク9aを回転する場合、各被検出部8の測定時におけるワーク9aの回転角、および、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果が用いられる。ステップS12においてアーム21を移動し、かつ、ワーク9aを回転する場合、各被検出部8の測定時におけるアーム21の座標およびワーク9aの回転角、並びに、形状測定機4による当該被検出部8の測定結果が用いられる。その後、複数の被検出部8の取付位置の座標に基づいて、ワーク9aの外周面92の中心が求められる(ステップS14)。鏡板であるワーク9aでは、例えば、当該中心から所定の高さの位置(例えば、球面部の外面上の位置)が、ワーク9aの加工に係る原点として設定される。ワーク9aにおいても、円筒部の内周面の中心が求められてもよい。
【0055】
上記ワーク位置取得方法およびワーク位置取得装置40では様々な変形が可能である。
【0056】
上記実施の形態では、円筒面を有するワーク9,9aにおいて当該円筒面の中心を取得する場合について説明したが、例えば、略半球状の球面部のみを有する鏡板であるワークにおいて、軸方向の所定位置における当該球面部の断面中心が求められてもよい。このように、ワークは、円筒面以外に、半球面や円錐面等の回転面を有するもの(すなわち、円形断面を有するもの)であってよく、上記ワーク位置取得方法およびワーク位置取得装置40では、当該回転面の中心を容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【0057】
図3のステップS12において、複数の被検出部8を形状測定機4により順に測定する際に、アーム21の移動、および、回転面の中心軸J1に平行な軸を中心としたワーク9,9aの回転の双方が行われる場合に、必ずしもワーク9,9aの回転が一時的に停止される必要はない。すなわち、各被検出部8を形状測定機4により測定する際に、アーム21の移動、および、ワーク9,9aの回転が並行して行われていてもよい。
【0058】
ステップS12においてアーム21を移動する場合に、ワーク9,9aのサイズ等によっては、形状測定機4をワーク9,9aの円筒面に沿って周方向に移動することなく、複数の被検出部8の近傍のみに順次配置してもよい。
【0059】
ステップS13では、被検出部8の第2面82において、中心以外の任意の位置が求められてもよい。また、断面プロファイルが示す被検出部8の第1面81のエッジの位置に基づいて、被検出部8の取付位置の座標が求められてもよい。
【0060】
形状測定機4は、3次元のレーザセンサ、3次元レーザスキャナ等であってもよい。
【0061】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0062】
2 ロボット
4 形状測定機
8,8a 被検出部
9,9a ワーク
21 アーム
31 測定制御部
32 取付位置算出部
33 中心算出部
40 ワーク位置取得装置
81 (被検出部の)第1面
82 (被検出部の)第2面
91 (ワークの)内周面
92 (ワークの)外周面
C1 取付位置
S11~S14 ステップ