(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165883
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】鉄骨梁
(51)【国際特許分類】
E04C 3/08 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E04C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082459
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】富田 和磨
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA12
2E163FB02
2E163FB23
(57)【要約】
【課題】複数の貫通孔を備えつつ所望の強度を有する鉄骨梁を提供することである。
【解決手段】建築物に用いられる鉄骨梁1であって、複数の梁側貫通孔5a、5bが設けられた板状部4と、複数の補強側貫通孔11a、11bが設けられ、複数の補強側貫通孔11a、11bのそれぞれを対応する梁側貫通孔5a、5bに一致させて板状部4の一方の面に固定された補強板10と、を有することを特徴とする鉄骨梁1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に用いられる鉄骨梁であって、
複数の梁側貫通孔が設けられた板状部と、
複数の補強側貫通孔が設けられ、複数の前記補強側貫通孔のそれぞれを対応する前記梁側貫通孔に一致させて前記板状部の一方の面に固定された補強板と、を有することを特徴とする鉄骨梁。
【請求項2】
前記梁側貫通孔が、円形の第1梁側貫通孔と、前記第1梁側貫通孔よりも小径の円形の第2梁側貫通孔とを有し、
前記第2梁側貫通孔の中心位置が前記第1梁側貫通孔の中心位置に対して軸方向に垂直な方向にずれている、請求項1に記載の鉄骨梁。
【請求項3】
一対のフランジ部の間に前記板状部が設けられたH形鋼により形成されている、請求項1または2に記載の鉄骨梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に用いられる鉄骨梁に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の建築物の梁としては、例えばH形鋼などで形成された鉄骨梁が用いられる。
【0003】
鉄骨梁には、建築物の内部に設けられた空調機器用の配管、給排水用の配管、電気配線等を通すために、H形鋼におけるウェブ部などの板状部に貫通孔が設けられることがある。この場合、鉄骨梁の強度を確保するために、板状部には貫通孔の周囲を囲う形状の補強板が固定されるのが一般的である。
【0004】
例えば特許文献1には、それぞれ貫通孔を中心とした半環状(コの字形状)に形成された2枚の補強板を組み合わせて貫通孔の周囲に固定した構成の鉄骨梁が記載されている。補強板として半環状のものを用いることで、補強板の歩留まりをよくして鉄骨梁のコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄骨梁の板状部に、複数の貫通孔が近接して並べて設けられることが考えられる。
【0007】
しかし、板状部に、複数の貫通孔が近接して並べて設けられた場合では、隣り合う貫通孔のそれぞれの周囲に2枚の補強板を組み合わせて固定しようとすると、隣り合う補強板が互いに干渉する虞があるため、鉄骨梁を所望の強度を有するものとするのが困難になる、という問題点があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の貫通孔を備えつつ所望の強度を有する鉄骨梁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄骨梁は、建築物に用いられる鉄骨梁であって、複数の梁側貫通孔が設けられた板状部と、複数の補強側貫通孔が設けられ、複数の前記補強側貫通孔のそれぞれを対応する前記梁側貫通孔に一致させて前記板状部の一方の面に固定された補強板と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の鉄骨梁は、上記構成において、前記梁側貫通孔が、円形の第1梁側貫通孔と、前記第1梁側貫通孔よりも小径の円形の第2梁側貫通孔とを有し、前記第2梁側貫通孔の中心位置が前記第1梁側貫通孔の中心位置に対して軸方向に垂直な方向にずれている構成とすることができる。
【0011】
本発明の鉄骨梁は、上記構成において、一対のフランジ部の間に前記板状部が設けられたH形鋼により形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の貫通孔を備えつつ所望の強度を有する鉄骨梁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄骨梁の正面図である。
【
図3】
図1に示す鉄骨梁のA-A線に沿う断面図である。
【
図4】
図1に示す鉄骨梁のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る鉄骨梁について詳細に例示説明する。
【0015】
図1、
図2に示す本実施形態に係る鉄骨梁1は、鉄骨造の建築物の梁として用いられるものである。本実施形態に係る鉄骨梁1が用いられる建築物は、鉄骨造のものであれば、例えばオフィスビル、商業ビル、倉庫、集合住宅などなど、種々の建築物であってよい。
【0016】
本実施形態では、鉄骨梁1は、H形鋼により形成されている。より具体的には、鉄骨梁1は、互いに平行な一対のフランジ部2、3と、一対のフランジ部2、3の間に設けられた板状部4とを有している。板状部4はウェブとも呼ばれる部分であり、一対のフランジ部2、3に対して垂直な平らな板状となっており、それぞれのフランジ部2、3の幅方向中央部に溶接により固定されている。
【0017】
フランジ部2、3は、鉄骨梁1の軸方向(
図1、
図2において左右方向であって、鉄骨梁1の軸力が加わる方向)の両端部に向けて幅が拡大する部分を有する形状とされ、当該拡大部分の間においてはフランジ部2、3の幅は一定である。なお、フランジ部2、3の幅は、鉄骨梁1の軸方向の一端と他端との間の全範囲において一定であってもよい。
【0018】
鉄骨梁1の板状部4には、それぞれ板状部4を板厚方向に貫通する複数(2つの)の梁側貫通孔5a、5bが設けられている。
【0019】
これらの梁側貫通孔5a、5bは、鉄骨梁1を用いた建築物において、この建築物の内部に設けられた空調機器用の配管、給排水用の配管、電気配線等を通すために用いられるものである。
【0020】
本実施形態では、板状部4には、円形の梁側貫通孔(第1梁側貫通孔)5aと、梁側貫通孔5aよりも小径の円形の梁側貫通孔(第2梁側貫通孔)5bとが、鉄骨梁1の軸方向に並べて設けられている。梁側貫通孔5aは、その中央位置が板状部4のフランジ部2とフランジ部3との間の中央に位置するように配置されている。これに対し、梁側貫通孔5bは、その中心位置が、梁側貫通孔5aの中心位置に対して軸方向に垂直な方向にずれて位置するように配置されている。すなわち、梁側貫通孔5aはフランジ部2とフランジ部3との中央位置に配置され、梁側貫通孔5bはフランジ部3の側に偏って配置されている。
【0021】
板状部4には、梁側貫通孔5a、5bが設けられた部分を補強するために、補強板10が固定されている。
【0022】
補強板10は鋼板により矩形の板状に形成され、板状部4の一方の面に溶接により固定されている。補強板10には、複数の梁側貫通孔5a、5bに対応した複数の補強側貫通孔11a、11bが設けられている。補強側貫通孔11aは梁側貫通孔5aと同径の円形であり、補強側貫通孔11bは梁側貫通孔5bと同径の円形である。また、補強側貫通孔11bは、補強側貫通孔11aに対して軸方向にずれるとともに軸方向に垂直な方向にもずれて設けられている。
【0023】
補強板10は、補強側貫通孔11aを梁側貫通孔5aに一致させるとともに、補強側貫通孔11bを梁側貫通孔5bに一致させて板状部4に固定されている。すなわち、補強板10は、
図3に示すように補強側貫通孔11aの中心位置を梁側貫通孔5aの中心位置に一致させるとともに、
図4に示すように補強側貫通孔11bの中心位置を梁側貫通孔5bの中心位置に一致させて板状部4に固定されている。
【0024】
なお、本実施形態では、補強側貫通孔11aを梁側貫通孔5aと同径の円形としたが、補強側貫通孔11aを梁側貫通孔5aよりも大径の円形としてもよい。同様に、本実施形態では、補強側貫通孔11bを梁側貫通孔5bと同径の円形としたが、補強側貫通孔11bを梁側貫通孔5bよりも大径の円形としてもよい。
【0025】
上記構成を有する本実施形態の鉄骨梁1では、板状部4に設けられた複数の梁側貫通孔5a、5bの周囲が全周に亘って補強板10によって囲われた構成となるので、板状部4は、梁側貫通孔5a、5bが設けられた部分において補強板10により補強される。したがって、鉄骨梁1を、板状部4に複数の梁側貫通孔5a、5bが設けられた構成としつつ、補強板10により板状部4の複数の梁側貫通孔5a、5bが設けられた部分を補強して、鉄骨梁1を所望の強度にまで高めることができる。
【0026】
また、本実施形態の鉄骨梁1では、板状部4に設けられた複数の梁側貫通孔5a、5bを1枚の補強板10によって補強するようにしたので、隣り合う梁側貫通孔5a、5bのそれぞれの周囲に2枚の補強板を組み合わせて固定する場合のように隣り合う補強板が互いに干渉することを無くして、1枚の補強板10によって複数の梁側貫通孔5a、5bが設けられた鉄骨梁1を所望の強度にまで高めることができる。
【0027】
さらに、本実施形態の鉄骨梁1では、板状部4に設けられた複数の梁側貫通孔5a、5bを1枚の補強板10によって補強するようにしたので、隣り合う梁側貫通孔5a、5bのそれぞれの周囲に2枚の補強板を組み合わせて固定する場合に比べて、補強板10を板状部4に固定するための溶接量を減らすことができる。これにより、補強板10を板状部4に固定する際の工数を減らして、鉄骨梁1のコストを低減することができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、鉄骨梁1を、一対のフランジ部2、3の間に板状部4が設けられたH形鋼により形成されたものとしたので、所望の強度を有する鉄骨梁1を、安価なH形鋼を用いてより低コストで製造することができる。
【0029】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0030】
例えば、前記実施形態では、板状部4に2つの梁側貫通孔5a、5bを設けた場合を例示しているが、板状部4に3つ以上の梁側貫通孔を設けた構成としてもよい。この場合、補強板10には、梁側貫通孔と同数の補強側貫通孔を設ければよい。
【0031】
また、前記実施形態では、鉄骨梁1をH形鋼により形成されたものとしたが、これに限らず、梁側貫通孔5a、5bが設けられる板状部4を備えていれば、例えば、I型鋼などの他の鋼材で形成されたものであってもよい。
【0032】
さらに、前記実施形態では、補強板10は、溶接により板状部4に固定された構成となっているが、これに限らず、ボルトとナット等の締結部材を用いて板状部4に固定された構成としてもよい。
【0033】
さらに、前記実施形態では、板状部4の一方の面にのみ補強板10を固定するようにしているが、板状部4の両方の面に補強板10を固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 鉄骨梁
2 フランジ部
3 フランジ部
4 板状部
5a 梁側貫通孔(第1梁側貫通孔)
5b 梁側貫通孔(第2梁側貫通孔)
10 補強板
11a 補強側貫通孔
11b 補強側貫通孔