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  • 特開-案内システム及び案内方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165885
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】案内システム及び案内方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/005 20060101AFI20241121BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20241121BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20241121BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G08G1/005
G01C21/26 P
G06F3/16 650
G06F3/16 690
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082461
(22)【出願日】2023-05-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】金岡 利知
(72)【発明者】
【氏名】森川 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】八谷 友子
(72)【発明者】
【氏名】大前 智史
(72)【発明者】
【氏名】堺 稚菜
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 主揮
【テーマコード(参考)】
2F129
5E555
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC03
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF15
2F129FF20
2F129GG17
5E555AA08
5E555BA02
5E555BA24
5E555BB02
5E555BB24
5E555CA47
5E555DA21
5E555EA23
5E555FA00
5H181AA21
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF04
5H181FF14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザの想定しないことを案内したり、体験させたりする。
【解決手段】少なくともユーザの会話を捉えるマイク、ユーザに話しかけるためのスピーカー、ユーザの現在位置を把握するための位置検索装置、ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムであって、案内システムは、ユーザが訪れる対象地点としてあらかじめ定めた第1の目標地点にいくときに、現在地から当該第1の目標地点とは異なる第2の目標地点を前記ユーザに事前に報知することなく設定し、当該第2の目標地点にむかうように誘導する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともユーザの会話を捉えるマイク、ユーザに話しかけるためのスピーカー、ユーザの現在位置を把握するための位置検索装置、ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムであって、
前記案内システムは、前記ユーザが訪れる対象地点としてあらかじめ定めた第1の目標地点にいくときに、現在地から当該第1の目標地点とは異なる第2の目標地点を前記ユーザに事前に報知することなく設定し、当該第2の目標地点にむかうように誘導する案内システム。
【請求項2】
少なくともユーザの会話を捉えるマイク、前記ユーザに話しかけるためのスピーカー、前記ユーザの身体に通電させる電気ショッカー部、前記ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムであって、
前記案内システムは、前記ユーザが所定の位置に到達したときに、あるいは前記ユーザと第3者の会話から所定の状況が発現したと判断したときに、予め質問を発するように設定され、当該質問に対する前記ユーザの会話内容が所定の要件を満たしたときに、アクション提示部が前記ユーザに不快感を感じさせるアクションを起こす案内装置。
【請求項3】
前記アクションは、皮膚への通電あるいは臭いを出すことである請求項2に記載の案内システム。
【請求項4】
前記ユーザの身体を冷却するクーラー部をさらに備え、
前記質問を発する直前に、クーラー部を動作させる請求項2に記載の案内システム。
【請求項5】
ユーザの身体にアルコールを含むガスを噴霧する噴霧部をさらに備え、
前記質問を発する直前に、クーラー部を動作させる請求項2に記載の案内システム。
【請求項6】
前記アクション提示部が臭いを発するガスを噴霧する場合には、当該噴霧されるガスに硫化物あるいは硫黄成分が含まれる請求項3に記載の案内システム。
【請求項7】
前記案内システムの筐体は、顔を持つロボット型を成しており、前記ロボットは複数の異なる顔を付け替え可能に構成されている請求項1に記載の案内システム。
【請求項8】
少なくともユーザの会話を捉えるマイク、ユーザに話しかけるためのスピーカー、ユーザの現在位置を把握するための位置検索装置、ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムをもちいて案内をする方法であって、
前記ユーザが訪れる対象地点としてあらかじめ定めた第1の目標地点にいくときに、ユーザの意思に関係なく、現在地から当該第1の目標地点とは異なる第2の目標地点に先にむかうように誘導する案内方法。
【請求項9】
少なくともユーザの会話を捉えるマイク、前記ユーザに話しかけるためのスピーカー、前記ユーザの身体に通電させる通電部、前記ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムをもちいて案内をする方法であって、
前記ユーザが所定の位置に到達したときに、あるいは前記ユーザと第3者の会話から所定
の状況が発現したと判断したときに、予め質問を発しするとともに、当該質問に対する前記ユーザの会話内容が所定の要件を満たしたときに、アクション提示部が前記ユーザに不快感を与えるアクションを提示する案内方法。
【請求項10】
少なくともユーザの会話を捉えるマイク、前記ユーザに話しかけるためのスピーカー、前記ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備えた案内システムをもちいて案内を
する方法であって、
前記ユーザと第3者との間での前記マイクから捕捉される音声データにおいて、特定地域に特有の表現が含まれており、当該特有の表現には当該特定地域に特有の意味内容がある場合に、前記ユーザに対して前記特有の意味内容を標準語に修正して提示する案内方法。
【請求項11】
前記特定地域に特有の表現には、標準語にて表現される通常の意味内容と、特定地域に特有の意味内容との2つの意味を併せ持つ表現である請求項10に記載の案内方法。
【請求項12】
前記第3者とは異なる特定地域に特有の表現を理解する人物が、前記特定地域に特有の表現が含まれているか否か判断し、当該特定地域に特有の表現に関する当該特定地域における意味内容を標準語に修正してスピーカーから出力する請求項10または請求項11に記載の案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観光等に用いられる案内システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、観光客等のユーザに案内するサービスとしては、観光ガイドによるツアーであったり、あるいは特定の観光対象の前に配置され、ボタンを押下すると案内文章を読みあげる装置等があった。また、肩にのせるロボットにより、ガイド役の人間がロボットのスピーカーを利用して案内を行う場合もあった。またサービスの臨場感を高めるために、においを出すロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-5883
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://robotstart.info/2021/05/14/nin_nin-kouchi-live.html
【非特許文献2】https://www.interaction-ipsj.org/archives/paper2012/data/Interaction2012/oral/data/pdf/12INT009.pdf
【非特許文献3】https://www.cyber-world.jp.net/bubuduke/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ユーザの想定しないことを案内したり、体験させたりすることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の案内システムは、少なくともユーザの会話を捉えるマイク、ユーザに話しかけるためのスピーカー、ユーザの現在位置を把握するための位置検索装置、ユーザの身体あるいは衣服に取り付ける取付部を備え、ユーザが訪れる対象地点としてあらかじめ定めた第1の目標地点にいくときに、現在地から当該第1の目標地点とは異なる第2の目標地点を前記ユーザに事前に報知することなく設定し、当該第2の目標地点にむかうように誘導する案内システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの想定しない案内を体験させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る案内システムの概略構成図である。
図2】案内システムにおいて、ユーザが用いるロボット型装置を示す図である。
図3】案内システムにおいて、ユーザの観光対象の地域に対する理解の深度とコンテンツとの関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る案内システムの概略構成図である。
【0011】
図2は、案内システムにおいて、ユーザが用いるロボット型装置である。
【0012】
たとえば、案内装置は、ロボット型装置を含み、当該ロボット型装置は少なくとも、カメラ1、マイク2、スピーカー3、通電部4、アロマ噴射部5、冷却部6、顔色変化部10を含む。また案内システムは、ロボット型装置内或いは別途準備されるサーバに配置された制御部11を備え、制御部11は、例えば認識部7、判定部8、データ格納部9、顔変化部10,位置検索装置12を備える。
【0013】
ロボット型装置は例えばユーザの身体近くに取り付けられる。例えば肩に載るロボットでもよいし、カバンに入るものであってもよい。また帽子や衣服に取り付けられるものでもよい。ロボット型装置は、スピーカーからユーザに案内情報やコンテンツ情報を聞かせ得る位置にあればどこでもよい。例えば追従型ロボットでユーザの前に立ち案内するものやユーザの後を自動追尾しながら案内業務を行うものでもよい。それら自立移動に必要な機構は従来周知のロボット技術を用いて容易に実現されてもよい。
【0014】
カメラ1は、ユーザの周囲環境或いはユーザの見ている方向の様子を捉えるために用いられる。すなわち、歩いているユーザの前方にあるものを捉えたり、土産物屋での店員との会話の様子やユーザが手に取っている商品などを映像データとして取得したりする。マイク2は、ユーザの話す声、ユーザと会話している人の声、周囲音等を音声データとして取得する。スピーカー3は、案内情報やコンテンツを実行するために音声を流す必要のある時に用いられ、ユーザに聞こえる範囲で音声を出す。
【0015】
通電部4は、ユーザの皮膚や衣服の近傍において微弱電流をユーザに流すためのものである。アロマ噴射部5は、ユーザの近傍でユーザに向かって匂いの発するガスを噴射するためのものである。従来周知のアロマディフューザーのタンクに所望のガスあるいは気化する液体を充てんさせて使用される。これらの通電部4やアロマ噴射部5は、例えばユーザが特定地域のマナーや慣習から見て良く無いとされる行動や言動があったときに、あるいは特定地域言葉の意味内容を正しく当該特定地域での意味内容として把握できなかったときに、いわば懲罰的にユーザにとって不快な刺激を与える代表的な例である。このとき例えば一あるいは複数のタンクに充てんされる物質には、臭いにおいを発する硫化物や硫黄を含んだ物質が用いられてもよい。あるいは別な目的として、名産品を案内するときには、観光案内の対象となる特定地域の名産品の匂い、例えば浜松ではウナギの匂い、京都や奈良では線香の匂い、鹿児島では桜島の火山の匂いをもちいてもよい。これらのにおいを発するためのガスは、適宜案内する内容やユーザの行動から所定のアクションを提示するときに適宜使用される。
なお、このような懲罰的なアクションを提示するためには、通電部4やアロマ噴射部5に限られず、例えばロボット型装置のアームでユーザの腕を摘んだり、スピーカー3から不快な音、例えば4kHz程度の単音や、蚊の羽音をユーザの耳元でマイクロフォンで計測したときに70~90dV(SPL)程度を数秒流すといったことでもよい。
【0016】
冷却部6は、ユーザの近傍に配置され、ユーザに冷たさを感じさせるために搭載されてもよい。例えばユーザに向かってアルコールの噴霧をしたり、あるいはネッククーラーのようにユーザの首元の接触する部位にペルチェ阻止で冷却した部位をあてがうように構成したりしてもよい。あるいは扇風機のように風を吹かせるものでもよい。これらが単一或いは複合的に用いられてもよい。これらのユーザに対してアクションを起こす機能部を総称してアクション部と呼ぶ。すなわちアクション部は通電部4やアロマ噴射部5、冷却部6の一部あるいは全部を含んでいてよい。
【0017】
認識部7は、カメラ1、マイク2、後述する位置検索装置12等の各センサからのデータをもとに、ユーザの周囲環境、ユーザの発話内容、ユーザと会話している相手方の対話
内容、周囲の客や店舗の店員、その他第3者同士の会話音、車両等の走行音、店舗からの有線ラジオ音声からユーザの状態やユーザを取り巻く環境を認識する。さらに認識部7は、会話内容を、標準語による意味内容と、特定地域言葉での意味内容の双方の意味内容を特定する。標準語で発せられた会話に対しては、特定地域言葉の意味内容と標準語で発せられた会話の意味内容が一致するため、標準的な意味内容として会話内容を把握する。一方、特定地域においては標準語による意味内容とは異なる裏の意味を持つ言葉があり、そういった言葉が当該特定地域において発せられたときは、標準語による意味内容に加え、当該裏の意味内容も2つめの会話の意味内容として認識する。
【0018】
判定部8は、認識部7が把握した会話や周囲環境等からユーザの特定地域言葉の把握度合、理解度等を判定する。例えば津軽地方の方言のように短く省略された(と思えてしまう)言葉の意味内容の理解度を判定したり、いわゆる京都人の表向きの言葉に込められた裏の意味内容を理解したかを、ユーザが発する音声や会話内容、カメラデータからの挙動などから判定したりする。
【0019】
データ格納部9は、案内を実行するためのトリガーとなる情報が参照テーブルとして格納されている。当該情報は、例えば標準語及び案内の対象となる特定地域言葉の双方の会話内容が格納されている。例えば京都において、京都人らしき人物からユーザに向かって、いわゆる全く異なる裏の意味を持つ表向きの言葉が発せられ、当該参照テーブルに該当する会話内容が格納されていたときに、特定の意味内容にてユーザに向かって発話がなされたものとして所定の動作を実行する。
【0020】
所定の動作とは、例えば当該京都人の裏の意味内容をユーザに標準語にて伝えたり、裏の意味内容を理解できたかを確認するアクションを起こしたりする場合に用いられる。或いは特定の意味内容を把握できたと判定部8が判定したときに、特定地域のイントネーションにてほめる言葉を発したり、顔変化部10にて笑顔を提示したり、顔色を赤くさせてもよい。
【0021】
顔変化部10はロボットの顔の部分であり、その顔色や表情が変化したり、あるいは顔そのものが交換パーツとして子供の顔、動物の顔、大人の顔、特定地域のお土産等に用いられるこけしの顔、シーサーの顔、舞子の顔、芸子や舞子の顔等に取り換えることができたりしてもよい。これらのユーザを観光地に案内するうえで、ユーザとのやり取りへの反応の提示として適宜用いられる。
【0022】
位置検索装置12は、例えばGPSやGNSSが用いられて、それらはロボット型装置に配置されてもよい。あるいはユーザのスマートフォンに連携可能に構成されて、スマートフォンに搭載されたGPS機能による位置情報をWi-FiやBluetooth等の
通信機能を用いて送信してもらうものでもよい。あるいは周囲環境のカメラ画像や言葉から類推するものであってもよい。この場合、あらかじめ当該対象地域の画像を参照画像としてデータ格納部9に格納しておき、この参照画像と、カメラが取得した周囲の画像とを、パターンマッチングで照合したり、あるいはあらかじめAI認識により当該対象地域の画像を学習させたモデルにより判定させたりしてもよい。なお、案内装置は車のナビゲーション装置のように随時連続的に道案内をするものでもよいが、断続的にターゲットとなる位置にユーザが到来したか否かを判別できるものであってもよい。
【0023】
また、図示していないが、通信部をさらに備えていてもよい。通信部は制御部がサーバに置かれる場合や上述したスマートフォンとのスマートフォンアプリによるリンクやGPS情報の取得、ナビゲーション情報の取得等に使用可能なものであれば何でもよい。4Gや5G等の広域通信網、 Wi-FiやBluetooth等のローカル通信網が適宜用い
られてよい。
【0024】
さらに図示しないが、ロボット型装置には、ユーザの体に搭載するためやあるいはユーザの衣服に取り付けるための取付部を備えていてもよい。カバンに入れる場合にはこれらは不要であるが、ユーザに話しかけたり、ユーザの視線方向にカメラが向いたりすることが好ましいため、ユーザの腕や頭、肩付近に取り付けられ、カメラ1の光軸方向がユーザ
の視線方向とほぼ同じ(例えば光軸方向と視線方向の成す角が0°~45°)になるように配置してあることが望ましい。
【0025】
次に、案内システムを用いた案内の実例を示す。
【0026】
最初に、ユーザの特定地域への理解度や特定地域の言葉への理解度をレベル判定するために、質問が行われる。質問の提示方法はなんでもよい。例えば案内システムを進める店員が口頭で質問してもよい。あるいはロボット型装置が口頭で質問を行ってもよい。特定地域の言葉には、例えば標準語での意味内容であるかに見えつつ、まったく異なる裏の意味内容が含まれた言葉がある。そのような言葉に対する理解度が高い場合、当該ユーザは特定地域への理解度レベルが高いと判定してもよい。一方、標準語になれた通用のユーザはそのような2つ目の裏の意味内容に気づけない。その場合、特定地域の言葉への理解度が低いと判定してもよい。
また、過去に訪れたことのある観光地や食事するための店舗、訪れたことがないが行きたい観光地や店舗等もヒアリングされる。また興味のあることや旅行における体験したいこと、好きな食事やアルコールの種類等もヒアリングされてよい。
【0027】
質問に対する回答内容から認識部7,判定部8を用いて、レベル判定を行い、その結果がデータ格納部9に入力される。あるいは判定は店員が行い、結果をデータ格納部9に入力してもよい。
【0028】
具体的には、例えばユーザが京都観光をする場合、ユーザは、質問に対する回答として、まず、出発地点と自身が行きたい場所を案内システムに対して入力する。入力方法は、ロボット型装置に向かって口頭で話しかけることによりマイク部2から拾った音声を認識部7で認識させてもよいし、スマートフォンとリンクさせてスマートフォンにダウンロードしたアプリを用いてスマートフォンから入力した情報を通信部経由で案内システムに登録するものであってもよい。行きたい場所がユーザにより入力装置に入力されると、案内システムは行きたい場所を目標地点として登録する。
【0029】
出発地点から目標地点までを結ぶ地域内に、ユーザが認識していないが体験すると喜ばれると推定される推奨地点、あるいは案内システムを構築する側が推奨したい推奨地点がないかどうかを判定する。推奨地点はデータ格納部9にコンテンツ情報として格納されており、一定の条件下にある場合は、判定部8により推奨可能と判断されて、ユーザに推奨されてもよい。一定の条件は種々設定されうるが、例えば推奨地点に過去にユーザが訪問したことがないことを条件としてもよい。また出発地点から推奨値店を経由して目標地点までに向かうルートの場合、当該ルートが出発地点から目標地点までを結んだ道路上の最短距離の2倍以内の距離となることという条件であってもよい。あるいは出発地点と目標地点との中心点から当該出発地点までの距離の1.5倍の長さを半径とする同心円状内に推奨地点があることという条件であってもよい。推奨地点が条件外である場合は推奨されない。
【0030】
次に、推奨地点が決まってもユーザには基本的に報知しないように設定されている。推奨地点が複数ある場合は、いくつかを秘密にし、いくつかを報知してもよい。報知した結果、ユーザが拒否した場合、当該拒否された推奨地点には案内しない。
【0031】
ユーザは案内システムに従って、出発地点から目標地点に向かっているつもりであるが、途中のルート案内は推奨地点に向かうように設定されている。したがって、ユーザが途中で遠回りをさせられているような違和感を覚えるかもしれないが、案内を停止してほしい旨の意思表示が入力されるまでは、当該推奨地点への案内を続行する。
推奨地点に近くなると、当該推奨地点で得られるアクションや体験等に関連した音をスピーカー3から出力したり、アロマ噴射部から関連するにおい等をユーザに提示したりしてもよい。
【0032】
例えば推奨地点が宇治の抹茶や焙じ茶を販売したり、その場で飲んだりすることができるお茶屋さんのような店舗である場合、それらのお茶の匂いを噴霧してもよい。あるいは会話音として「お茶屋によりませんか?」というような会話音を案内の対象となっている特定地域の言葉やイントネーションでスピーカー3から出力してもよい。次に推奨地点であるお茶屋さん近くに到達すると、ユーザに対して「京のお茶屋さんがありましたゑ。お寄りになっていかはらしまへんか?」の意味内容を言い換えて、「よう歩きはってそろそろお疲れになったんとちがいますか?」」と会話音を用いて寄り道を促してもよい。ユーザが同意をした場合、お茶屋さんに入るように促す。この際、ロボット型装置は店舗の店員に対して「ごめんやす」と特定地域の言葉イントネーションで挨拶する。これにより例えば京都のお茶屋さんのような気位が高そうに感じる場所であっても、観光客が入りやすくなる。
【0033】
入ってきた店員がロボット型装置及びユーザの存在を認識して会話が始まると、ロボット型装置はユーザと会話内容をマイク2から取得して当該マイク2からの音声データから認識部7にて会話内容を把握する。このとき、会話内容が案内対象となっている特定地域の言葉の意味内容でなされたか標準的になされたかを判定する。標準的になされた会話の場合は特段のアクションはしなくともよい。このような特定地域内で通じる裏の意味内容を持つ会話は、表向きの意味内容、すなわち標準語として通常の意味でとらえた意味内容と、特定地域に習熟した人間にはわかると推測可能な裏の意味内容とがセットでデータ格納部9に登録されていてもよい。あるいは当該データ格納部9に収納するデータセットをあらかじめ認識部8のAIに学習させて、認識部8が裏の意味内容を持つ言葉が発せられ
たか否かを認識するようにしてもよい。あるいは特定地域の協力者が遠隔地におり、その旨の判定を行ってもよい。
【0034】
特定地域の意味内容を持つ言葉でなされた場合は、ユーザが当該特定地域の言葉の持つ意味内容を理解できたか否かをカメラ1、マイク2などのデータから判定部8が判定する。具体的には、ユーザが戸惑う様子であるか、あるいは店員に対してした回答が妥当かどうかなどから判定する。なお、回答の会話内容は認識部7が認識する。判定部8がユーザの理解度が低いと判定した場合、特定のアクションを起こす。これは特定地域の言葉に対する理解度が低いことに対する懲罰的なアクションであるため、ユーザに不快な思いをさせるアクションが選択される。アクションの選定は、判定部8が、自身が判定した判定内容とデータ格納部9に判定内容と紐づけられたアクションのデータを参照して、いずれのアクションを行うかあるいはアクションを行わないかを決定する。
【0035】
ただしアクションはユーザの特定地域に対する理解度レベルをあらかじめ把握し、当該レベルに応じて変えてもよい。例えば理解度レベルが初級レベルである場合、京都人の言葉の裏の意味内容を把握することは困難であるため、初級レベルであるときはアクションとして、裏の意味をスピーカー3から小声で教授するにとどめてもよい。レベルが高いユーザであれば、アクションとして嫌なにおいがする物体を噴霧したり、首に冷気を充てるなどしてもよい。レベル判定は事前にスマートフォンにダウンロードされたアプリにおいて、特定地域の言葉の理解を判定するテストを受けさせて判定してもよい。あるいは案内前に案内システムのロボット型装置から問題を発する形で特定地域の言葉の理解を判定す
るテストを受けさせて判定してもよい。判定結果のデータはデータ格納部9に格納される
【0036】
なお、上述においては、これらの案内をすべきタイミングの判定や提示すべきアクションの選定、特定地域の裏の言葉の意味内容の理解度判定等を制御部内の認識部7、判定部
8等を用いて行ってきたが、特定地域に実際に居住する地元民にこれらを行わせてもよい。具体的には、ロボット型装置のカメラ1やマイク2を用いて、ユーザと店舗の店員との会話を聞きながら、言葉の裏の意味内容の理解度が低いと地元民が判断した場合、その裏の意味を地元民がスピーカー3を用いてユーザに教授してもよい。あるいは懲罰のアクションも地元民が遠隔地からネットワークを通じて繋がったPC(パーソナルコンピュータ)に選択を入力することにより行われてもよい。その場合、PCにはデータ格納部9に格
納された種々のデータが開示され、ユーザのレベル情報や言葉毎にその裏の意味内容を理解できなかった時のレベルごとのアクションがコンテンツとして明示され、それに従って例えば通電部に通電させるべくスイッチのON/OFF動作をさせてもよい。
【0037】
この場合、ロボット型装置は遠隔の地元民の当該ユーザへのサービス提供端末として機能する。あるいは制御部による自動モードと、協力者による手動モードを切り替えるように設定されていてもよい。地元民はあたかも自身が街を巡っているような錯覚を覚えたり、あるいはロボット型装置になったような錯覚を味わえたり、またユーザと実際に友人になれたような錯覚を覚えるメリットがある。
【0038】
更に本発明により、「新しい旅の体験価値」を提供する方法(図3を参照)について、以下に説明する。例えば、ユーザは旅行する地域について以前に訪れた事はあるが、主に有名な観光地を巡る経験はしているが、更に奥深い体験、通常のガイドブックには載っておらず、地元に生活する人でも少数しか知らない様なマニアックな場所を訪れてみたいと思う様になる場合がある。またその地域の隠された歴史や風土にまつわる風習など、やや専門的な情報に触れたいと思う場合がある。更にはその土地に暮らす人達と、より親近感を持った触れあいをしてみたいと考える場合もある。
【0039】
例えば、京都には「いけず」と言われる文化があり、「一見さんお断り」や「京のぶぶ漬け」の様に、京都で長年に亘って暮らす人達でしか理解しづらいしきたりや表現方法が存在する。これが「京都人は表と裏を使い分ける」や「本音では何を考えているか判らない」といった様に、外から入る旅行者にとって恐れを抱かせるひとつの要因となっている。一方でその様な風習や伝統は地域の風土や歴史によって育まれたその土地ならではの文化でもあり、表面的な観光旅行に満足しない来訪者にとって、一種の「怖いもの見たさ」も合わさった魅力であるとも言える。インターネットやVR、メタバースなどが急速に普及する現代にあって、その土地に行かなければ味わえない生身の人と人の触れあいや、多少のアクシデントを含む非日常体験は重要な観光資源としての価値を持っていると思われる(非特許文献3を参照)。
その様な潜在的な価値や期待に対して、例えば非特許文献1では、案内者がロボットを肩にのせ、旅行者がロボットに遠隔で接続する事によって、あたかもその場所に実際に行ったかの様な体験を仮想的に提供するシステムを提案している。このシステムによれば、遠隔地にいる仮想旅行者はその土地を良く知る案内者の導きによって、ガイドブックには載っていない、より深い地域の魅力に接する事が可能となる。しかしながら、実際にその場所にいるのは案内人であり、仮想旅行者はスマートホンなどのデバイス越しに見聞きしているに過ぎない。仮にそこで「いけず」を仕掛けられたとしても、それを瞬時に感じて対応する事はできず、案内者の対応を第三者的に眺めているだけでは、体験価値は半減かそれ以下であると言わざるを得ない。
【0040】
これに対して、本発明による案内システムによれば、旅行者がロボットを肩に載せるの
であって、案内者は遠隔にいて旅行の案内を行う事ができる。この場合、案内者はその土地を良く知る人であって、旅行者はロボットの案内によってその場所で直に体験を得る事ができる。
【0041】
また例えば非特許文献2では、ウエアラブル・アバターを肩に載せた装着者と遠隔でアバターを操作する操作者とが目線とカメラを一致させたり、音声でコミュニケーションする事で、装着者の意思を踏まえた目的地選定や、第三者である店舗従業員との会話に操作者が介入する事で装着者の体験をより深いものにする事を可能とするシステムを提案している。しかしながらこのシステムによれば、情報の入力および伝達手段は映像と音声であり、装着者と操作者だけに通じる情報伝達手段は有していない。「いけず」を仕掛けられた際に、受け手があからさまに反応するのは「無粋」であり、言葉の裏に隠された真意や配慮を敏感に感じ取って遠回しに受け流すのが洗練された「粋」なのである。従って、店舗従業員に気づかれない方法で、「いけず素人」の装着者と「いけず達者」の操作者が意思疎通できる何らかの仕組みが必要になる。
【0042】
これに対して本発明による案内システムによれば、通電部4、アロマ噴射部5、冷却部6を備えており、旅行者と案内者、装着者と操作者の間だけで意思を交わすことができる。操作者から、「いま「いけず」を仕掛けられてるで、気いつけや」という意味で装着者に電気刺激や香り、冷感を与える、といった使い方である。装着者はこれを受けてさりげなく受け流す「技」を試されるので、「いけず」に対する理解や好奇心、上達意欲が刺激され、結果としてその旅行先への愛着が増進されるのである。
【0043】
また本発明の案内システムによれば、案内者乃至操作者は、通信ネットワークを用いれば、システムに接続すれば良いので、例えば身体障害者であっても良く、地理的に遠く離れている人でも良い。更に、案内が必要な時にだけ接続すれば良いので、別の主たる仕事を有している人が副業としても活用する場合や、主婦などが家事の合間に参加する事ができる。更に、肩のせロボットはボイスチェンジャーを搭載する事ができるので、高齢の女性、例えばリタイアした芸子さんが若い舞子さんの役になって参加しても良く、或いは男性が女性の舞子さんになりきっても良い。即ち、空間や年齢(時間)、性別といった様々な現実世界の制約を超越して、「リアルなメタバース空間」でのコミュニケーションを実現する手段にあり得るのである。これは今後重要とされる多様性を尊重する社会、全ての人のWell Beingを目指す社会の実現に寄与するものであると言える。
【符号の説明】
【0044】
1・・・カメラ
2・・・マイク
3・・・スピーカー
4・・・通電部
5・・・アロマ噴射部
6・・・冷却部
7・・・認識部
8・・・判定部
9・・・データ格納部
10・・・顔変化部
11・・・制御部
12・・・位置検索装置
13・・・通信部
図1
図2
図3