(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165886
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082462
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】福原 蓮士郎
(72)【発明者】
【氏名】筒 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC02
5H730CC04
5H730DD03
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG01
5H730XX04
5H730XX15
(57)【要約】
【課題】ブリッジ回路に過電流が流れることを抑制できる電力変換器を提供する。
【解決手段】電力変換器20は、互いに磁気結合された主コイル60及び第1~第4副コイル61~64を有するトランス50と、主コイル60に対応して設けられた主ブリッジ回路30と、各副コイル61~64に対応して設けられた第1~第4副ブリッジ回路31~34と、を備え、各ブリッジ回路30~34の間においてトランス50を介して双方向に電力伝達を行う。主ブリッジ回路30は、各ブリッジ回路30~34のうち定格電力の最も大きい回路である。主ブリッジ回路30に対応する主コイル60と主ブリッジ回路30とを接続する主接続経路70のインピーダンスが、各副ブリッジ回路31~34に対応する各副コイル61~64と各副ブリッジ回路31~34とを接続する各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに磁気結合された複数のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルと前記主ブリッジ回路とを接続する主接続経路(70)のインピーダンスが、前記副ブリッジ回路に対応する前記コイルと前記副ブリッジ回路とを接続する副接続経路(71~74)のインピーダンスよりも小さくされている、電力変換器。
【請求項2】
前記副ブリッジ回路は複数であり、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記送電回路の送電電力が前記受電回路の受電電力よりも大きく前記主ブリッジが受電する場合に、第1受電条件及び第2受電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件であり、
前記第2受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
前記各副ブリッジ回路のうち、いずれか1つの副ブリッジ回路が前記受電回路であり、残りの副ブリッジ回路が前記送電回路であり、かつ、前記受電回路及び前記送電回路が定格電力で動作する場合における、前記主ブリッジ回路の伝達電力に対する、前記受電回路の定格電力の比を電力比とし、
前記電力比に基づいて、前記主接続経路のインピーダンスと、前記各副接続経路のインピーダンスとが設定されている、請求項2に記載の電力変換器。
【請求項4】
互いに磁気結合された3つ以上のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記送電回路の送電電力が前記受電回路の受電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が受電する場合に、第1受電条件及び第2受電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件であり、
前記第2受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である、電力変換器。
【請求項5】
前記副ブリッジ回路は複数であり、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記受電回路の受電電力が前記送電回路の送電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が送電する場合に、第1送電条件及び第2送電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件であり、
前記第2送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項6】
前記各副ブリッジ回路のうち、いずれか1つの副ブリッジ回路が前記送電回路であり、残りの副ブリッジ回路が前記受電回路であり、かつ、前記受電回路及び前記送電回路が定格電力で動作する場合における、前記主ブリッジ回路の伝達電力に対する、前記送電回路の定格電力の比を電力比とし、
前記電力比に基づいて、前記主接続経路のインピーダンスと、前記各副接続経路のインピーダンスとが設定されている、請求項5に記載の電力変換器。
【請求項7】
互いに磁気結合された3つ以上のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記受電回路の受電電力が前記送電回路の送電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が送電する場合に、第1送電条件及び第2送電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件であり、
前記第2送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である、電力変換器。
【請求項8】
前記副接続経路に設けられたインダクタ(81~84)を備え、
前記主接続経路には、インダクタが設けられていない、請求項1~3,5,6のいずれか1項に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記主接続経路に設けられたキャパシタ(90)を備える、請求項1~3,5,6のいずれか1項に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記電力変換器は、
前記主ブリッジ回路側に電力系統(10)が接続可能であり、
前記各副ブリッジ回路側に充放電可能な蓄電部(11~14)が接続可能であり、前記電力系統と前記各蓄電部との間において双方向に電力伝達を行う、請求項1に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いに磁気結合された複数のコイルを有するトランスと、各コイルに対応して設けられたブリッジ回路とを備える電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換器として、ブリッジ回路を有する複数のポートを、トランスを介して互い接続し、各ポート間において双方向に電力伝達を行うマルチポートコンバータが知られている。マルチポートコンバータでは、各ポートのうちいずれかを低インダクタンスとすることにより、制御性の向上が図られている。このような技術の例として、非特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,(米),FEBRUARY 2021,VOL.36,NO.2,p.2231-2245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各ポート間がトランスを介して磁気結合されている構成では、各ポートにおける電力伝達制御が干渉することに起因して、各ポートのうちいずれかに大きな電流が流れることがある。この場合、ブリッジ回路に定格電流を超える過電流が流れることが懸念される。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ブリッジ回路に過電流が流れることを抑制できる電力変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における第1の構成は、
互いに磁気結合された複数のコイルを有するトランスと、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路とし、
前記主ブリッジ回路と前記コイルとを接続する主接続経路のインピーダンスが、前記副ブリッジ回路と前記コイルとを接続する副接続経路のインピーダンスよりも小さくされている。
【0007】
複数のブリッジ回路のうちいずれかの定格電力を、残りのブリッジ回路の定格電力よりも大きくするように、電力変換器を設計することが考えられる。この場合、定格電力が大きいブリッジ回路では、定格電力が小さいブリッジ回路に比べて、大きな電流が流れることが許容され得る。
【0008】
第1の構成では、各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい主ブリッジ回路に対応するコイルと主ブリッジ回路とを接続する主接続経路のインピーダンスが、各ブリッジ回路のうち主ブリッジ回路以外の副ブリッジ回路に対応するコイルと副ブリッジ回路とを接続する副接続経路のインピーダンスよりも小さくされている。この場合、主ブリッジ回路では、副ブリッジ回路に比べて交流電流が流れ易くなる。これにより、主ブリッジ回路では、副ブリッジ回路に比べて大きな電流が流れ易くなるものの、主ブリッジ回路では、定格電力が大きいことにより、副ブリッジ回路に比べて大きな電流が流れることが許容される。このため、主ブリッジ回路に流れる電流は定格電流以下の電流となる。一方、主接続経路のインピーダンスが副接続経路のインピーダンスよりも大きい又は同程度である場合に比べて、副ブリッジ回路に流れる電流が低減され、副ブリッジ回路に過電流が流れることが抑制される。その結果、各ブリッジ回路に過電流が流れることを抑制することができる。
【0009】
本開示における第2の構成は、
互いに磁気結合された3つ以上のコイルを有するトランスと、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記送電回路の送電電力が前記受電回路の受電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が受電する場合に、第1受電条件及び第2受電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置を備え、
前記第1受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件であり、
前記第2受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である。
【0010】
3つ以上の副ブリッジ回路それぞれが受電回路又は送電回路として動作する場合に、送電回路の送電電力が受電回路の受電電力よりも大きいことがある。この場合、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとが、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅れるように、主ブリッジ回路、受電回路及び送電回路のスイッチング制御が行われる。これにより、主ブリッジ回路のコイル及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から主ブリッジ回路へと電力が伝達され、受電回路のコイル及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。
【0011】
ここで、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅れていると、受電回路が、送電回路と主ブリッジ回路との間の電力伝達を中継する電力中継動作を行うことがある。電力中継動作中の受電回路は、送電回路から受電すると共に、主ブリッジ回路へと送電する。この際、電力中継動作中の受電回路において余分な電力の伝達が行われることに起因して、受電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0012】
そこで、第2の構成では、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするように、各ブリッジ回路のスイッチング制御が行われる。これにより、受電回路において電力中継動作が行われることが抑制される。そのため、受電回路において余分な電力の伝達が行われることを抑制でき、受電回路に過電流が流れることを抑制することができる。
【0013】
本開示における第3の構成は、
互いに磁気結合された3つ以上のコイルを有するトランスと、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記受電回路の受電電力が前記送電回路の送電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が送電する場合に、第1送電条件及び第2送電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置を備え、
前記第1送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件であり、
前記第2送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である。
【0014】
3つ以上の副ブリッジ回路それぞれが受電回路又は送電回路として動作する場合に、受電回路の受電電力が送電回路の送電電力よりも大きいことがある。この場合、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとが、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進むように、主ブリッジ回路、送電回路及び受電回路のスイッチング制御が行われる。この場合、主ブリッジ回路のコイル及び受電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、主ブリッジ回路から受電回路へと電力が伝達され、受電回路のコイル及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。
【0015】
ここで、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進んでいると、送電回路が、主ブリッジ回路と受電回路との間の電力伝達を中継する電力中継動作を行うことがある。電力中継動作中の送電回路は、主ブリッジ回路から受電すると共に、受電回路へと送電する。この際、電力中継動作中の送電回路において余分な電力の伝達が行われることに起因して、送電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0016】
そこで、第3の構成では、主ブリッジ回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするように、各ブリッジ回路のスイッチング制御が行われる。これにより、送電回路において電力中継動作が行われることが抑制される。そのため、送電回路において余分な電力の伝達が行われることを抑制でき、送電回路に過電流が流れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る電源システムの全体構成図。
【
図4】第2実施形態に係る電力変換器の動作状況を説明するための図。
【
図5】電力中継動作を説明するための比較例の制御を示す図。
【
図7】インダクタンス比と、各ブリッジ回路に流れる電流のピーク値を示す図。
【
図8】電力中継動作を説明するための比較例の制御を示す図。
【
図10】その他の実施形態に係る電源システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換器は、マルチポート型のものであり、例えば、電力系統及び複数台の電動化車両に接続され、電力系統と各電動化車両のバッテリとの間で双方向に電力伝達を行う。
【0019】
図1に示すように、電源システムは、電力系統10、複数のバッテリ及び電力変換器20を備えている。電力系統10は、例えば三相交流の商用電源等である。電力系統10は、電力変換器20の外部端子に接続されている。
図1に示す例では、複数のバッテリとして、第1~第4バッテリ11~14が設けられている。なお、電力系統10として、単相交流の商用電源を用いることも可能である。
【0020】
各バッテリ11~14は、充放電可能な2次電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池である。各バッテリ11~14は、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)等の電動化車両ごとに搭載されたバッテリであり、例えば電動化車両の走行動力源となる高圧バッテリである。なお、各バッテリ11~14は、高圧バッテリに限らず、補機電源用の低圧バッテリであってもよい。
【0021】
各バッテリ11~14は、電力変換器20の外部端子に接続されている。具体的には、車両のユーザ(例えばドライバ)又は作業者により、電力変換器20の外部端子により構成される接続プラグと、車両の充電インレットとが接続されることにより、車両に搭載されたバッテリと、電力変換器20の外部端子とが電気的に接続される。本実施形態において、各バッテリ11~14が「蓄電部」に相当する。
【0022】
電力変換器20は、AC‐DCコンバータ21、ブリッジ回路30~34及び制御装置40を備えている。
図1では、電力系統10に対応して設けられたブリッジ回路30を「主ブリッジ回路30」とし、第1バッテリ11に対応して設けられたブリッジ回路31を「第1副ブリッジ回路31」とし、第2バッテリ12に対応して設けられたブリッジ回路32を「第2副ブリッジ回路32」とし、第3バッテリ13に対応して設けられたブリッジ回路33を「第3副ブリッジ回路33」とし、第4バッテリ14に対応して設けられたブリッジ回路34を「第4副ブリッジ回路34」としている。
【0023】
AC‐DCコンバータ21は、交流側が電力変換器20の外部端子を介して電力系統10に接続され、直流側が主ブリッジ回路30に接続されている。AC‐DCコンバータ21は、電力系統10から供給される交流電力を直流電力に変換して主ブリッジ回路30へ供給することが可能であり、主ブリッジ回路30から供給される直流電力を交流電力に変換して電力系統10へ供給することが可能である。
【0024】
本実施形態では、
図2に示すように、AC‐DCコンバータ21は、三相PFC(Power Factor Correction)回路である。AC‐DCコンバータ21は、上アームスイッチQH及び下アームスイッチQLの直列接続体と、リアクトル22とを3相分備えている。各スイッチQH,QLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、より具体的には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。この場合、各スイッチQH,QLの高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。各スイッチQH,QLの上,下アームスイッチQH,QLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
【0025】
各相上アームスイッチQHのコレクタには、バスバー等を介して、主ブリッジ回路30の正極端子が接続されている。各相下アームスイッチQLのエミッタには、バスバー等を介して、主ブリッジ回路30の負極端子が接続されている。各相上,下アームスイッチQH,QLの接続点には、リアクトル22の第1端が接続されている。各相においてリアクトル22の第2端は、電力変換器20の外部端子を介して電力系統10に接続されている。なお、電力変換器20が単相交流の商用電源に接続される場合には、AC‐DCコンバータ21として、単相PFC回路を用いることが可能である。
【0026】
AC‐DCコンバータ21は、PFC回路用コンデンサ23を備えている。PFC回路用コンデンサ23は、各相上アームスイッチQHのコレクタと、各相下アームスイッチQLのエミッタとを接続している。
【0027】
制御装置40は、CPUや各種メモリを備えるマイクロコンピュータを主体として構成される。制御装置40は、電力系統10に入出力される電圧及び電流の位相と周波数とを調整することにより力率を改善すべく、各スイッチQH,QLを駆動する。
【0028】
主ブリッジ回路30は、フルブリッジ回路であり、第1~第4スイッチS1~S4及び主コンデンサ35を備えている。各スイッチS1~S4は、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、より具体的には、IGBTである。この場合、各スイッチS1~S4の高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。各スイッチS1~S4には、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0029】
主ブリッジ回路30において、第1スイッチS1及び第3スイッチS3のコレクタには、AC‐DCコンバータ21の正極端子が接続されている。第2スイッチS2及び第4スイッチS4のエミッタには、AC‐DCコンバータ21の負極端子が接続されている。第1スイッチS1のエミッタには、第2スイッチS2のコレクタが接続され、第3スイッチS3のエミッタには、第4スイッチS4のコレクタが接続されている。主コンデンサ35の第1端は、AC‐DCコンバータ21の正極端子に接続され、主コンデンサ35の第2端は、AC‐DCコンバータ21の負極端子に接続されている。なお、主コンデンサ35は、主ブリッジ回路30の外部に設けられてもよい。
【0030】
各副ブリッジ回路31,32,33,34は、フルブリッジ回路であり、各副ブリッジ回路31,32,33,34ごとに、第1スイッチST1,SU1,SV1,SW1、第2スイッチST2,SU2,SV2,SW2、第3スイッチST3,SU3,SV3,SW3、第4スイッチST4,SU4,SV4,SW4及び副コンデンサ36,37,38,39を備えている。各スイッチST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4は、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、より具体的には、IGBTである。この場合、各スイッチST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4の高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。各スイッチST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4には、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0031】
第1副ブリッジ回路31を例に説明すると、第1スイッチST1及び第3スイッチST3のコレクタには、第1バッテリ11の正極端子が接続されている。第2スイッチST2及び第4スイッチST4のエミッタには、第1バッテリ11の負極端子が接続されている。第1スイッチST1のエミッタには、第2スイッチST2のコレクタが接続され、第3スイッチST3のエミッタには、第4スイッチST4のコレクタが接続されている。副コンデンサ36の第1端は、第1バッテリ11の正極端子に接続され、副コンデンサ36の第2端は、第1バッテリ11の負極端子に接続されている。なお、副コンデンサ36は、第1副ブリッジ回路31の外部に設けられてもよい。
【0032】
なお、第2~第4副ブリッジ回路32~34の回路構成は第1副ブリッジ回路31と同様である。第2副ブリッジ回路32では、第1スイッチSU1及び第3スイッチSU3のコレクタと副コンデンサ37の第1端とが、第2バッテリ12の正極端子に接続され、第2スイッチSU2及び第4スイッチSU4のエミッタと副コンデンサ37の第2端とが、第2バッテリ12の負極端子に接続されている。
【0033】
第3副ブリッジ回路33では、第1スイッチSV1及び第3スイッチSV3のコレクタと副コンデンサ38の第1端とが、第3バッテリ13の正極端子に接続され、第2スイッチSV2及び第4スイッチSV4のエミッタと副コンデンサ38の第2端とが、第3バッテリ13の負極端子に接続されている。第4副ブリッジ回路34では、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3のコレクタと副コンデンサ39の第1端とが、第4バッテリ14の正極端子に接続され、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4のエミッタと副コンデンサ39の第2端とが、第4バッテリ14の負極端子に接続されている。
【0034】
電力変換器20は、コイル60~64を有するトランス50を備えている。
図1では、主ブリッジ回路30に対応するコイル60を「主コイル60」とし、第1副ブリッジ回路31に対応するコイル61を「第1副コイル61」とし、第2副ブリッジ回路32に対応するコイル62を「第2副コイル62」とし、第3副ブリッジ回路33に対応するコイル63を「第3副コイル63」とし、第4副ブリッジ回路34に対応するコイル64を「第4副コイル64」としている。
【0035】
主コイル60は、主接続経路70に設けられている。主接続経路70は、主ブリッジ回路30の第1スイッチS1及び第2スイッチS2における接続点と、主ブリッジ回路30の第3スイッチS3及び第4スイッチS4における接続点とを接続する経路である。つまり、主接続経路70により、主コイル60と主ブリッジ回路30とが接続されている。
【0036】
第1~第4副コイル61~64は、対応する第1~第4副接続経路71~74に設けられている。第1副コイル61を例に説明すると、第1副コイル61は、第1副接続経路71に設けられている。第1副接続経路71は、第1副ブリッジ回路31の第1スイッチST1及び第2スイッチST2における接続点と、第1副ブリッジ回路31の第3スイッチST3及び第4スイッチST4における接続点とを接続する経路である。つまり、第1副接続経路71により、第1副コイル61と第1副ブリッジ回路31とが接続されている。なお、第2副接続経路72及び第2副ブリッジ回路32の接続関係と、第3副接続経路73及び第3副ブリッジ回路33の接続関係と、第4副接続経路74及び第4副ブリッジ回路34の接続関係とは、第1副接続経路71と第1副ブリッジ回路31との接続関係と同様である。
【0037】
各コイル60~64は、トランス50が備えるコアを介して互いに磁気結合されている。主コイル60の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、各副コイル61~64それぞれには、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、主コイル60の第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、各副コイル61~64それぞれには、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0038】
各コイル60~64において、第2端に対する第1端の電位が高い場合、各コイル60~64の電圧の極性を正極性と定義し、第1端に対する第2端の電位が高い場合、各コイル60~64の電圧の極性を負極性と定義する。
【0039】
電源システムは、第1~第5電圧センサ51~55を備えている。第1電圧センサ51は、第1副ブリッジ回路31の副コンデンサ36の端子電圧である第1電圧V1を検出し、第2電圧センサ52は、第2副ブリッジ回路32の副コンデンサ37の端子電圧である第2電圧V2を検出する。第3電圧センサ53は、第3副ブリッジ回路33の副コンデンサ38の端子電圧である第3電圧V3を検出し、第4電圧センサ54は、第4副ブリッジ回路34の副コンデンサ39の端子電圧である第4電圧V4を検出する。第5電圧センサ55は、主ブリッジ回路30の主コンデンサ35の端子電圧である第5電圧V5を検出する。各センサ51~55により検出された第1~第5電圧V1~V5は、制御装置40に入力される。
【0040】
制御装置40は、電力変換器20に接続された電力系統10及び第1~第4バッテリ11~14の間において双方向に電力を伝達する電力伝達制御を行う。制御装置40は、電力伝達制御において、各ブリッジ回路30~34ごとに、第1スイッチS1,ST1,SU1,SV1,SW1及び第2スイッチS2,ST2,SU2,SV2,SW2を交互にオンし、第3スイッチS3,ST3,SU3,SV3,SW3及び第4スイッチS4,ST4,SU4,SV4,SW4を交互にオンする。
【0041】
各ブリッジ回路30~34は、対応するコイルに印加される交流電圧の極性を周期的に切り替える。主ブリッジ回路30を例にして説明すると、第1スイッチS1及び第4スイッチS4がオンされ、かつ第2スイッチS2及び第3スイッチS3がオフされている場合、主コイル60の電圧の極性は正極性となる。一方、第1スイッチS1及び第4スイッチS4がオフされ、かつ第2スイッチS2及び第3スイッチS3がオンされている場合、主コイル60の電圧の極性は負極性となる。
【0042】
制御装置40は、電力系統10及び各バッテリ11~14の間で伝達される電力を、各コイル60~64に印加される電圧の極性の切り替えタイミングにより制御する。具体的には、制御装置40は、各ブリッジ回路30~34のうち、他の回路から受電する回路では、他の回路に送電する回路に比べて、対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを遅らせる。制御装置40は、各コイル60~64に印加される電圧の極性の切り替えタイミングを、各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4のスイッチング制御により制御する。なお、本実施形態において、各ブリッジ回路30~31の各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4におけるスイッチング周期は、互いに同じである。
【0043】
図3に、制御装置40が行う電力伝達制御の一例を示す。制御装置40は、位相設定部41と、信号生成部42とを備えている。
【0044】
位相設定部41には、第1~第4バッテリ11~14の要求電力Pb1~Pb4と、第1~第5電圧V1~V5とが入力される。要求電力は、電力変換器20からバッテリに充電する電力又はバッテリから電力変換器20に放電する電力である。制御装置40は、各要求電力Pb1~Pb4として、車両と各副ブリッジ回路31~34側の外部端子とが接続された場合に、車両側から送信される情報に基づいて算出された値を用いることが可能である。制御装置40は、第1~第5電圧V1~V5として、第1~第5電圧センサ51~55の検出値を用いることが可能である。
【0045】
位相設定部41は、各要求電力Pb1~Pb4及び第1~第5電圧V1~V5に基づいて、各コイル60~64に印加される電圧の正極性への切り替えタイミングを設定する。具体的には、位相設定部41は、各要求電力Pb1~Pb4に基づいて、指令受電電力及び指令送電電力を算出する。指令受電電力は、各副ブリッジ回路31~34のうち他のブリッジ回路から受電する回路である受電回路の指令電力である。受電回路が複数の場合、指令受電電力は、複数の受電回路の指令電力の合計電力である。指令送電電力は、各副ブリッジ回路31~34のうち他のブリッジ回路に送電する回路である送電回路の指令電力である。送電回路が複数の場合、指令送電電力は、複数の送電回路の指令電力の合計電力である。位相設定部41は、指令受電電力、指令送電電力及び第1~第5電圧V1~V5に基づいて、第1位相差θa及び第2位相差θbを設定する。
【0046】
第1位相差θaは、送電回路に対応するコイルに印加される電圧の正極性への切り替えタイミングと、受電回路に対応するコイルに印加される電圧の正極性への切り替えタイミングとの差である。例えば、制御装置40は、指令受電電力及び指令送電電力のうち小さい方の電力が大きいほど、第1位相差θaを大きい値に設定する。
【0047】
第2位相差θbは、主ブリッジ回路30が送電回路から受電する場合、主コイル60に印加される電圧の正極性への切り替えタイミングと、送電回路に対応するコイルに印加される電圧の正極性への切り替えタイミングとの差である。また、第2位相差θbは、主ブリッジ回路30が受電回路へ送電する場合、主コイル60に印加される電圧の正極性への切り替えタイミングと、受電回路に対応するコイルに印加される電圧の正極性への切り替えタイミングとの差である。例えば、制御装置40は、指令送電電力及び指令受電電力の差分電力が大きいほど、第2位相差θbを大きい値に設定する。
【0048】
信号生成部42は、設定された第1位相差θa及び第2位相差θbに基づいて、各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4のゲートに出力する。駆動信号は、オン駆動信号又はオフ駆動信号である。ゲートに入力された駆動信号に基づいて、スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4がオンオフされる。
【0049】
ここで、各コイル60~64がトランス50のコアを介して磁気結合されている構成では、各ブリッジ回路30~34の電力伝達制御が干渉することに起因して、各ブリッジ回路30~34のうちいずれかに大きな電流が流れることがある。この場合、各ブリッジ回路30~34に設定されている定格電流を超える過電流がブリッジ回路に流れることが懸念される。
【0050】
以下、過電流が流れることを抑制するための本実施形態に係る電力変換器20の特徴的構成について説明する。
【0051】
複数のブリッジ回路のうちいずれか1つの定格電力を、残りのブリッジ回路の定格電力よりも大きくするように、電力変換器を設計することが考えられる。本実施形態では、主ブリッジ回路30の定格電力が、各副ブリッジ回路31~34の定格電力よりも大きくされている。この場合、主ブリッジ回路30では、各副ブリッジ回路31~34に比べて、大きな電流が流れることが許容され得る。
【0052】
各副ブリッジ回路31~34の定格電力は、各副ブリッジ回路31~34の温度が定格周囲温度になる場合において、各副ブリッジ回路31~34を連続動作させることが可能な電力の最大値として定められ、例えば各バッテリ11~14の定格電圧等に基づいて定められる。主ブリッジ回路30の定格電力は、例えば、各副ブリッジ回路31~34の定格電力の合計電力に基づいて定められる。この場合、各副ブリッジ回路31~34を定格電力により送電又は受電させた場合であっても、主ブリッジ回路30に流れる電流を定格電流以下の電流とすることが可能になる。
【0053】
本実施形態では、主ブリッジ回路30と主コイル60とを接続する主接続経路70のインピーダンスが、各副ブリッジ回路31~34と各副コイル61~64とを接続する各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくされている。
【0054】
具体的には、各副接続経路71~74には、外付けの受動素子であるインダクタ81~84が設けられている。つまり、各副コイル61~64には、各インダクタ81~84が直列接続されている。この場合、各副接続経路71~74のインダクタンスは、各インダクタ81~84のインダクタンスと、各副コイル61~64の漏れインダクタンスとの合計インダクタンスとなる。
【0055】
主接続経路70には、外付けのインダクタが設けられていない。この場合、主接続経路70のインダクタンスは、主コイル60の漏れインダクタンスに相当する大きさとなる。この場合、主接続経路70のインダクタンスは、各副接続経路71~74のインダクタンスよりも小さくすることが可能となり、主接続経路70のインピーダンスを、各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さい状態を的確に実現することができる。なお、
図1には、主コイル60の漏れインダクタンス80を主接続経路70のインダクタンスとして示している。各接続経路70~74のインダクタンスに、各接続経路70~74の配線インダクタンスを含めてもよい。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0057】
各ブリッジ回路30~34のうち定格電力の最も大きい主ブリッジ回路30と主コイル60とを接続する主接続経路70のインピーダンスが、各副ブリッジ回路31~34と各副コイル61~64とを接続する各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくされている。この場合、主ブリッジ回路30では、各副ブリッジ回路31~34に比べて交流電流が流れ易くなる。これにより、主ブリッジ回路30では、各副ブリッジ回路31~34に比べて大きな電流が流れ易くなるものの、主ブリッジ回路30の定格電力が副ブリッジ回路31~34の定格電力よりも大きいことにより、各副ブリッジ回路31~34に比べて大きな電流が流れることが許容される。このため、主ブリッジ回路30に流れる電流は、主ブリッジ回路30の定格電流以下の電流となる。一方、主接続経路70のインピーダンスが各副接続経路71~74のインピーダンスよりも大きい又は同程度である場合に比べて、各副ブリッジ回路31~34に流れる電流が低減され、各副ブリッジ回路31~34に過電流が流れることが抑制される。その結果、各ブリッジ回路30~34に過度に電流が流れることを抑制することができる。
【0058】
<第2実施形態>
本実施形態では、各副ブリッジ回路31~34のうちいずれかに過度な電流が流れる電力変換器20の動作状況を具体的に想定し、想定した動作状況において過度な電流が流れることを抑制可能なように、各接続経路70~74のインピーダンスが定められる。
【0059】
具体的には、以下のような電力変換器20の動作状況において、各副ブリッジ回路31~34のうちいずれかに過度な電流が流れることが懸念される。
【0060】
各副ブリッジ回路31~34が受電回路又は送電回路として動作する場合に、送電回路の送電電力が受電回路の受電電力よりも大きいことがある。この場合、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとが、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅れるように、主ブリッジ回路30、受電回路及び送電回路のスイッチング制御が行われる。これにより、主コイル60及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から主ブリッジ回路30へと電力が伝達され、受電回路のコイル及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。
【0061】
ここで、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅れていると、受電回路が、送電回路と主ブリッジ回路30との間の電力伝達を中継する電力中継動作を行うことがある。電力中継動作中の受電回路は、送電回路から受電すると共に、主ブリッジ回路30へと送電する。この際、電力中継動作中の受電回路において余分な電力の伝達が行われることに起因して、受電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0062】
例えば、第1バッテリ11の要求電力Pb1が、電力変換器20から第1バッテリ11に充電する電力P0とされ、第2~第4バッテリ12~14の要求電力Pb2~Pb4が、第2~第4バッテリ12~14から電力変換器20に放電する電力P0とされることがある。この場合、
図4に示すように、第1副ブリッジ回路31が電力P0を受電し、かつ、第2~第4副ブリッジ回路32~34が電力P0を送電するように、電力変換器20が動作する。ここで、電力P0は、各副ブリッジ回路31~34の定格電力である。
【0063】
図4に示す動作状況では、位相設定部41は、指令受電電力をP0とし、指令送電電力を3×P0として、第1位相差θa及び第2位相差θbを設定する。詳しくは、位相設定部41は、指令受電電力がP0であり、指令送電電力が3×P0であるため、電力P0が送電回路から受電回路へ伝達されるように、第1位相差θaを設定する。位相設定部41は、指令送電電力及び指令受電電力の差分電力が2×P0であるため、電力2×P0が送電回路から主ブリッジ回路30へ伝達されるように、第2位相差θbを設定する。信号生成部42は、設定された第1位相差θa及び第2位相差θbに基づいて、駆動信号を生成する。
【0064】
上述した駆動信号に基づいて、各ブリッジ回路30~34の各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4がオンオフされた結果として、各コイルの電圧Vc1,Vc2,Vc3の波形が、例えば
図5に示すものとなることがある。ここで、
図5は、各接続経路70~74のインダクタンスが同じとされた場合の比較例の電圧波形である。
図5において、(a)は送電回路に対応するコイルの電圧Vc1の推移を示し、(b)は受電回路に対応するコイルの電圧Vc2の推移を示し、(c)は主ブリッジ回路30の主コイル60における電圧Vc3の推移を示す。具体的には、送電回路に対応するコイルの電圧は、第2~第4副コイル62~64の電圧であり、受電回路に対応するコイルは、第1副コイル61の電圧である。
【0065】
図5では、各コイルの電圧Vc1,Vc2,Vc3における極性の切り替わりタイミングが互いにずれている。詳しくは、1スイッチング周期Tsw内において、送電回路に対応するコイルの電圧Vc1が正極性に切り替えられる第1タイミングに比べて、受電回路に対応するコイルの電圧Vc2が正極性に切り替えられる第2タイミングが、位相差θ12だけ遅れている。また、1スイッチング周期Tsw内において、第1タイミングに比べて、主コイル60の電圧Vc3が正極性に切り替えられる第3タイミングが位相差θ31だけ遅れている。
【0066】
例えば位相差θ12に相当する期間では、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。また、例えば位相差θ31に相当する期間では、送電回路から主ブリッジ回路30へと電力が伝達される。各位相差θ12,θ31は、送電回路から受電する受電時間に相当する。
図5では、主ブリッジ回路30の受電時間よりも、受電回路の受電時間の方が短くなっている。
【0067】
図5に示すように、位相差θ12が位相差θ31よりも短い場合、第2タイミングと第3タイミングとの間にもずれが生じる。第2タイミング及び第3タイミング間の位相差θ23に相当する期間では、受電回路から主ブリッジ回路30へと電力が伝達される。この場合、受電回路は、位相差θ12に相当する期間中に送電回路から受電すると共に、位相差θ23に相当する期間中に主ブリッジ回路30へと送電する電力中継動作を行う。電力中継動作中において、受電回路では、主ブリッジ回路30へと送電する分だけ送電回路から余分に受電することに起因して、受電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0068】
ここで、
図4に示した電力変換器20の動作状況は、各副ブリッジ回路31~34のうち、第1副ブリッジ回路31のみが受電回路であり、残りの第2~第4副ブリッジ回路32~34が送電回路であり、かつ、受電回路及び送電回路が定格電力で動作する状況である。この場合、受電回路である第1副ブリッジ回路31において電力中継動作が行われ易いことが懸念される。そして、各副ブリッジ回路31~34が定格電力で動作しているため、第1副ブリッジ回路31において電力中継動作が行われた際に、第1副ブリッジ回路31に過電流が流れ易いことが懸念される。
【0069】
上述した点に鑑みて、本実施形態の電力変換器20は、以下の特徴的構成を備える。
【0070】
図4に示した電力変換器20の動作状況において、
図6に示すように、第3タイミング及び第1タイミング間の位相差θ31が、第1タイミング及び第2タイミング間の位相差θ12に等しい場合、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることが抑制されると考えられる。また、
図4に示した電力変換器20の動作状況において、位相差θ31が位相差θ12よりも小さい場合でも、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることが抑制されると考えられる。なお、
図6(a)~(c)は、先の
図5(a)~(c)に対応している。
【0071】
そこで、制御装置40は、以下の第1受電条件及び第2受電条件を満たすように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御を実行する。第1受電条件は、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件である。第2受電条件は、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である。すなわち、第2受電条件は、位相差θ12,θ31の大小関係をθ12≧θ31にするとの条件である。
【0072】
第1受電条件及び第2受電条件を満たすように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御が行われるには、送電回路から主ブリッジ回路30への受電時間を、送電回路から受電回路への受電時間以下にする必要がある。この点、本実施形態では、
図4に示した電力変換器20の動作状況において、第1受電条件及び第2受電条件を満たすようにスイッチング制御を実行すべく、各副ブリッジ回路31~34の定格電力P0に基づいて、各接続経路70~74のインピーダンスが設定されている。
【0073】
各副ブリッジ回路31~34が定格電力P0により動作する状況では、第1タイミング及び第2タイミング間の位相差θ12と、第3タイミング及び第1タイミング間の位相差θ31の大小関係は、主ブリッジ回路30の受電電力に対する受電回路の受電電力の比である電力比と、各副接続経路71~74のインダクタンスLT2に対する主接続経路70のインダクタンスL1の比であるインダクタンス比L1/LT2との大小関係に対応する。具体的には、θ12>θ31とするには、インダクタンス比L1/LT2を電力比よりも小さくすればよく、θ12=θ31とするには、インダクタンス比L1/LT2を電力比に等しくすればよい。
【0074】
なお、第1実施形態において説明したように、主接続経路70のインダクタンスL1は、主コイル60の漏れインダクタンスに相当する。各副接続経路71~74のインダクタンスLT2は、各インダクタ81~84のインダクタンスと、各副コイル61~64の漏れインダクタンスとの合計インダクタンスL2を、主コイル60及び各副コイル61~64の巻き数比により換算した値である。具体的には、主コイル60の巻き数をn1とし、各副コイル61~64の巻き数をn2とすると、各副接続経路71~74のインダクタンスLT2は下式(e1)となる。
【0075】
【数1】
先の
図4に示す状況を想定すると、主ブリッジ回路30は、第2~第4副ブリッジ回路32~34における定格電力の合計電力3×P0から、第1副ブリッジ回路31の定格電力P0を差し引いた差分電力2×P0だけ受電する。そのため、電力比は、主ブリッジ回路30の受電電力2×P0に対する、受電回路である第1副ブリッジ回路31の定格電力P0の比であり、つまり1/2である。本実施形態では、インダクタンス比L1/LT2が電力比よりも小さくなるように、各接続経路70~74のインピーダンスが設定されている。
【0076】
図7は、
図4に示した電力変換器20の動作状況において、インダクタンス比L1/LT2と、主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1及び各副ブリッジ回路31~34に流れる電流のピーク値Ip2との関係性を示す図である。
図7において、実線にて、主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1を示し、破線にて、各副ブリッジ回路31~34に流れる電流のピーク値Ip2を示している。
【0077】
インダクタンス比L1/LT2が0.5よりも小さいと、主ブリッジ回路30に電力中継動作を行わせることが可能となり、各副ブリッジ回路31~34により電力中継動作が行われることが抑制される。そのため、
図7に示すように、インダクタンス比L1/LT2が0.5よりも小さい領域では、各副ブリッジ回路31~32に流れる電流のピーク値Ip2が、主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1に比べて低減されている。主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1は、インダクタンス比L1/LT2が小さいほど増大するものの、主ブリッジ回路30の定格電力は、各副ブリッジ回路31~34が定格電力により送電又は受電する場合の合計電力に基づいて定められるため、主ブリッジ回路30に流れる電流は定格電流以下の電流となる。
【0078】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0079】
主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングになるように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御が行われる。この場合、送電回路から主ブリッジ回路30への受電時間を、送電回路から受電回路への受電時間以下にする必要がある。この点、主ブリッジ回路30では、各副ブリッジ回路31~34に比べて交流電流が流れ易くされているため、送電回路から主ブリッジ回路30への受電時間を短縮するのに好適な構成となっている。そのため、受電回路において電力中継動作が行われることを抑制するスイッチング制御を的確に実行でき、受電回路に過電流が流れることを的確に抑制することができる。
【0080】
受電回路において電力中継動作が行われた際に、受電回路に過電流が流れ易い電力変換器20の動作状況を想定し、想定した状況での主ブリッジ回路30の受電電力に対する、受電回路の定格電力の比が電力比とされる。そして、電力比に基づいて、主接続経路70のインピーダンスと、各副接続経路71~74のインピーダンスとが設定されている。この場合、受電回路において過電流が流れ易い電力変換器20の動作状況を想定し、想定した動作状況において受電回路による電力中継動作が行われることを抑制するように、各ブリッジ回路30~34のインピーダンスを定めることができる。その結果、受電回路において電力中継動作が行われることを抑制するスイッチング制御を的確に実行することができる。
【0081】
<第2実施形態の変形例>
・インダクタンス比L1/LT2が電力比と等しくなるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めてもよい。先の
図4に示す動作状況を想定する場合では、インダクタンス比が1/2となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めてもよい。
【0082】
インダクタンス比L1/LT2が0.5に等しいと、主ブリッジ回路30に流れる電流の増大が抑制されつつ、各副ブリッジ回路31~34により電力中継動作が行われることが抑制される。そのため、先の
図7に示したように、主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1と、各副ブリッジ回路31~32に流れる電流のピーク値Ip2とを共に低減できる。そのため、主ブリッジ回路30に流れる電流が増大し、電力損失が増大することを抑制しつつ、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることを抑制することができる。
【0083】
なお、インダクタンス比L1/LT2が電力比と同程度となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めてもよい。例えば、各副ブリッジ回路31~32に流れる電流のピーク値Ip2が主ブリッジ回路30に流れる電流のピーク値Ip1を上回らない範囲内で、インダクタンス比L1/LT2が電力比以上である大きい場合に、インダクタンス比L1/LT2が電力比と同程度であるとしてもよい。先の
図7を例にして説明すると、0.5≦L1/LT2<0.6であれば、インダクタンス比L1/LT2が電力比と同程度であるとしてもよい。
【0084】
・
図4に示す電力変換器20の動作状況以外の状況でも、各副ブリッジ回路31~34のうちいずれかに過度な電流が流れることが懸念される。具体的には、各副ブリッジ回路31~34が受電回路又は送電回路として動作する場合に、受電回路の受電電力が送電回路の送電電力よりも大きいことがある。この場合、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとが、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進むように、主ブリッジ回路30、送電回路及び受電回路のスイッチング制御が行われる。これにより、主コイル60及び受電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、主ブリッジ回路30から受電回路へと電力が伝達され、受電回路のコイル及び送電回路のコイルにおける印加電圧の極性が互いに異なる期間において、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。
【0085】
ここで、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進んでいると、送電回路が、主ブリッジ回路30と受電回路との間の電力伝達を中継する電力中継動作を行うことがある。電力中継動作中の送電回路は、主ブリッジ回路30から受電すると共に、受電回路へと送電する。この際、電力中継動作中の送電回路において余分な電力の伝達が行われることに起因して、送電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0086】
例えば、第1バッテリ11の要求電力Pb1が、第1バッテリ11から電力変換器20に放電する定格電力P0とされ、第2~第4バッテリ12~14の要求電力Pb2~Pb4が、電力変換器20から第2~第4バッテリ12~14に充電する定格電力P0とされることがある。この場合、第1副ブリッジ回路31が定格電力P0を送電し、かつ、第2~第4副ブリッジ回路32~34が定格電力P0を受電するように、電力変換器20が動作する。
【0087】
上述した動作状況では、位相設定部41は、指令受電電力を3×P0とし、指令送電電力をP0として、第1位相差θa及び第2位相差θbを設定する。詳しくは、位相設定部41は、指令受電電力が3×P0であり、指令送電電力がP0であるため、電力P0が送電回路から受電回路へ伝達されるように、第1位相差θaを設定する。位相設定部41は、指令受電電力及び指令送電電力の差分電力が2×P0であるため、電力2×P0が主ブリッジ回路30から受電回路へ伝達されるように、第2位相差θbを設定する。信号生成部42は、設定された第1位相差θa及び第2位相差θbに基づいて、駆動信号を生成する。
【0088】
上述した駆動信号に基づいて、各ブリッジ回路30~34の各スイッチS1~S4,ST1~ST4,SU1~SU4,SV1~SV4,SW1~SW4がオンオフされた結果として、各コイルの電圧Vc1,Vc2,Vc3の波形が、例えば
図8に示すものとなることがある。ここで、
図8は、各接続経路70~74のインダクタンスが同じとされた場合の比較例の電圧波形である。なお、
図8(a)は
図5(c)に対応し、
図8(b)は
図5(a)に対応し、
図8(c)は
図5(b)に対応している。
【0089】
図8では、各コイルの電圧Vc1,Vc2,Vc3における極性の切り替わりタイミングが互いにずれている。詳しくは、1スイッチング周期Tsw内において、受電回路に対応するコイルの電圧Vc2が正極性に切り替えられる第2タイミングに比べて、送電回路に対応するコイルの電圧Vc1が正極性に切り替えられる第2タイミングが、位相差θ12だけ進められている。また、第2タイミングに比べて、主コイル60の電圧Vc3が正極性に切り替えられる第3タイミングが、位相差θ23だけ進められている。
【0090】
例えば位相差θ12に相当する期間では、送電回路から受電回路へと電力が伝達される。また、位相差θ23に相当する期間では、主ブリッジ回路30から受電回路へと電力が伝達される。各位相差θ12,θ23は、受電回路に電力を送電する送電時間に相当する。
図8では、主ブリッジ回路30の送電時間よりも、送電回路の送電時間の方が短くなっている。
【0091】
図8に示すように、位相差θ12が位相差θ23よりも短い場合、第3タイミングと第1タイミングとの間にもずれが生じる。位相差θ31に相当する期間では、主ブリッジ回路30から送電回路へと電力が伝達される。この場合、送電回路は、位相差θ31に相当する期間中に主ブリッジ回路30から受電すると共に、位相差θ12に相当する期間中に受電回路へと送電する電力中継動作を行う。電力中継動作中において、送電回路では、主ブリッジ回路30から受電する分だけ受電回路へと余分に送電することに起因して、送電回路に過電流が流れることが懸念される。
【0092】
上述した電力変換器20の動作状況は、各副ブリッジ回路31~34のうち、第1副ブリッジ回路31のみが送電回路であり、残りの第2~第4副ブリッジ回路32~34が受電回路であり、かつ、受電回路及び送電回路が定格電力で動作する状況である。この場合、送電回路である第1副ブリッジ回路31において電力中継動作が行われ易いことが懸念される。そして、各副ブリッジ回路31~34が定格電力で動作しているため、第1副ブリッジ回路31において電力中継動作が行われた際に、第1副ブリッジ回路31に過電流が流れ易いことが懸念される。
【0093】
図9に示すようにθ12=θ23である場合、又はθ12>θ23である場合に、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることが抑制されると考えられる。そこで、制御装置40は、以下の第1送電条件及び第2送電条件を満たすように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御を実行する。第1送電条件は、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、受電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件である。第2送電条件は、主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である。すなわち、第2送電条件は、位相差θ12,θ23の大小関係をθ12≧θ23にするとの条件である。なお、
図9(a)~(c)は、先の
図8(a)~(c)に対応している。
【0094】
第1送電条件及び第2送電条件を満たすように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御が行われるには、主ブリッジ回路30から受電回路への送電時間を、送電回路から受電回路への送電時間以下にする必要がある。この点、本実施形態では、上述した動作状況において、第1受電条件及び第2受電条件を満たすようにスイッチング制御を実行すべく、各副ブリッジ回路31~34の定格電力P0に基づいて、各接続経路70~74のインピーダンスが設定されている。
【0095】
各副ブリッジ回路31~34が定格電力P0により動作する状況では、位相差θ12,θ23の大小関係は、主ブリッジ回路30の送電電力に対する送電回路の送電電力の比である電力比と、上述したインダクタンス比L1/LT2との大小関係に対応する。具体的には、θ12≧θ23とするには、インダクタンス比L1/LT2を電力比以下にすればよい。そのため、インダクタンス比L1/LT2が電力比以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めることにより、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることを抑制することができる。
【0096】
例えば、各副ブリッジ回路31~34のうち、第1副ブリッジ回路31のみが送電回路であり、残りの第2~第4副ブリッジ回路32~34が受電回路であり、かつ、受電回路及び送電回路が定格電力で動作する状況を想定すると、電力比は1/2である。そのため、インダクタンス比L1/LT2が1/2以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスが設定されていることにより、想定した動作状況において、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることを抑制することができる。
【0097】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0098】
主コイル60の印加電圧の正極性への切り替えタイミングが、送電回路に対応するコイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングになるように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御が行われる。この場合、主ブリッジ回路30から受電回路への送電時間を、送電回路から受電回路への送電時間以下にする必要がある。この点、主ブリッジ回路30では、各副ブリッジ回路31~34に比べて交流電流が流れ易くされているため、主ブリッジ回路30から受電回路への送電時間を短縮するのに好適な構成となっている。そのため、送電回路において電力中継動作が行われることを抑制するスイッチング制御を的確に実行でき、送電回路に過電流が流れることを的確に抑制することができる。
【0099】
送電回路において電力中継動作が行われた際に、送電回路に過電流が流れ易い電力変換器20の動作状況を想定し、想定した状況での主ブリッジ回路30の送電電力に対する、送電回路の定格電力の比が電力比とされる。そして、電力比に基づいて、主接続経路70のインピーダンスと、各副接続経路71~74のインピーダンスとが設定されている。この場合、送電回路において過電流が流れ易い電力変換器20の動作状況を想定し、想定した動作状況において送電回路による電力中継動作が行われることを抑制するように、各ブリッジ回路30~34のインピーダンスを定めることができる。その結果、送電回路において電力中継動作が行われることを抑制するスイッチング制御を的確に実行することができる。
【0100】
・副ブリッジ回路の数が4つより多い場合に、インダクタンス比L1/LT2が電力比以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めることが可能である。具体的には、電力変換器20が副ブリッジ回路を5つ以上備える構成において、第1副ブリッジ回路31が定格電力P0を受電し、第2~第n副ブリッジ回路が定格電力P0を送電するように、電力変換器20が動作することがある。ここで、nは、動作する副ブリッジ回路の数を示し、5以上の整数である。
【0101】
上述した場合では、主ブリッジ回路30の受電電力に対する受電回路の受電電力の比である電力比は、1/(n-2)となる。この場合、各副ブリッジ回路により電力中継動作が行われることを抑制するには、動作する副ブリッジ回路の数が5つである場合、インダクタンス比を1/3以下にすればよいし、動作する副ブリッジ回路の数が6つである場合、インダクタンス比を1/4以下にすればよい。
【0102】
・各副ブリッジ回路のうち他の副ブリッジ回路と異なる動作をする回路の数が2以上である場合を想定し、インダクタンス比L1/LT2が電力比以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めることが可能である。
【0103】
例えば、電力変換器20が副ブリッジ回路を7つ備える構成において、2つの副ブリッジ回路が定格電力P0を受電し、残りの5つの副ブリッジ回路が定格電力P0を送電するように、電力変換器20が動作する場合を想定する。この場合、受電回路の受電電力が2×P0であり、送電回路の送電電力が5×P0であり、送電回路の送電電力と受電回路の受電電力との差分電力3×P0が主ブリッジ回路30の受電電力となる。電力比は、主ブリッジ回路30の受電電力3×P0に対する、受電回路の受電電力2×P0の比であり、つまり2/3である。そのため、インダクタンス比L1/LT2が電力比である2/3以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めることにより、上述した動作状況において、各副ブリッジ回路において電力中継動作が行われることを抑制することができる。
【0104】
なお、電力変換器20が副ブリッジ回路を7つ備える構成において、2つの副ブリッジ回路が定格電力P0で電力を送電し、残りの5つの副ブリッジ回路が定格電力P0で電力を受電する場合では、送電回路の送電電力が2×P0であり、受電回路の受電電力が5×P0であり、主ブリッジ回路30の送電電力が3×P0となる。この場合、電力比は、主ブリッジ回路30の送電電力3×P0に対する、送電回路の送電電力2×P0の比となる。つまり、電力比は、送電回路の送電電力と受電回路の受電電力との差分電力に対する、受電回路の受電電力及び送電回路の送電電力のうち低い方の比である。
【0105】
・各副ブリッジ回路31~34が定格電力より小さい電力を伝達する場合を想定して、各副ブリッジ回路において電力中継動作が行われることが抑制されるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めることが可能である。
【0106】
例えば、第1副ブリッジ回路31が電力P1を受電し、第2~第4副ブリッジ回路32~34が電力P2を送電し、主ブリッジ回路30が差分電力3×P2-P1を受電するように、電力変換器20が動作することがある。ここで、電力P1,P2は、定格電力P0より小さい電力である。この状況を想定すると、電力比を、P1/(3×P2-P1)として、第1副接続経路71のリンクインダクタンスL21に対する主接続経路70のリンクインダクタンスL12の比であるリンクインダクタンス比が電力比以下となるように、各接続経路70~74のインピーダンスを定めればよい。
【0107】
ここで、リンクインダクタンスLijは、対応する各接続経路70~74のインダクタンスと正の相関を有するインダクタンスであり、i番目のブリッジ回路からj番目のブリッジ回路へと伝達される伝達電力Pij、及びi番目のブリッジ回路及びj番目のブリッジ回路間の位相差θと、下式(e2)の関係を有するインダクタンスである。
【0108】
【数2】
ここで、Vi,Vjは、i,j番目のブリッジ回路の直流電圧を示し、ni,njは、i,j番目のブリッジ回路に対応するコイルの巻き数を示し、fは、スイッチング周波数を示す。なお、リンクインダクタンスLijは、具体的には下式(e3),(e4)のように表されるインダクタンスである。
【0109】
【数3】
ここで、Lmは、励磁インダクタンスである。なお、ブリッジ回路の番号は、任意に定めることが可能であり、例えば、主ブリッジ回路30を1番目とし、第1,第2,第3,第4副ブリッジ回路31,32,33,33を順に2番目、3番目、4番目及び5番目と定めることが可能である。
【0110】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0111】
・インダクタンスに代えて、各接続経路70~74の抵抗値を定めることにより、主接続経路70のインピーダンスを、各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくしてもよい。各接続経路70~74の抵抗値は、例えば、各接続経路70~74の配線抵抗を変更したり、各接続経路70~74に抵抗体を設けたりすることにより定めることが可能である。
【0112】
・
図10に示すように、電力変換器20は、主接続経路70に設けられたキャパシタ90を備えてもよい。この場合、主接続経路70において、主コイル60と、キャパシタ90とが直列接続される。
【0113】
本実施形態によれば、主接続経路70のキャパシタンス及びインダクタンスにより定まる共振周波数により主ブリッジ回路30のスイッチング制御が行われることにより、主接続経路70のリアクタンスを低減することが可能となる。そのため、主接続経路70のインピーダンスを、各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さい状態を的確に実現することができる。
【0114】
・主接続経路70に外付けの受動素子であるインダクタを設けてもよい。この場合、主接続経路70に設けられるインダクタのインダクタンスを、各副接続経路71~74に設けられたインダクタ81~84のインダクタンスよりも小さくすることにより、主接続経路70のインピーダンスを、各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくすることが可能である。
【0115】
・主接続経路70のインピーダンスが、各副接続経路71~74のインピーダンスよりも小さくなるように定められていなくてもよい。制御装置40が、第1受電条件及び第2受電条件を満たすようにスイッチング制御を行う、又は第1送電条件及び第2送電条件を満たすように、各ブリッジ回路30~34のスイッチング制御を行うことにより、各副ブリッジ回路31~34において電力中継動作が行われることを抑制可能である。これにより、各副ブリッジ回路31~34において余分な電力の伝達が行われることを抑制でき、各副ブリッジ回路31~34に過電流が流れることを抑制することができる。
【0116】
・各スイッチは、IGBTに代えて、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
【0117】
・電力変換器20は、各ブリッジ回路30~34として、フルブリッジ回路に代えて、ハーフブリッジ回路を備えていてもよい。
【0118】
・各バッテリ11~14は、車載バッテリに限らず、例えば、太陽光発電装置等の再生可能エネルギーを利用した発電装置の発電電力を蓄える蓄電池であってもよい。
【0119】
・各バッテリ11~14に代えて、各副ブリッジ回路31~34に、集合住宅又は商用施設等の建物に備えられた電気機器又は電力系統が接続されてもよい。
【0120】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0121】
・以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
互いに磁気結合された複数のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルと前記主ブリッジ回路とを接続する主接続経路(70)のインピーダンスが、前記副ブリッジ回路に対応する前記コイルと前記副ブリッジ回路とを接続する副接続経路(71~74)のインピーダンスよりも小さくされている、電力変換器。
[構成2]
前記副ブリッジ回路は複数であり、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記送電回路の送電電力が前記受電回路の受電電力よりも大きく前記主ブリッジが受電する場合に、第1受電条件及び第2受電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件であり、
前記第2受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である、構成1に記載の電力変換器。
[構成3]
前記各副ブリッジ回路のうち、いずれか1つの副ブリッジ回路が前記受電回路であり、残りの副ブリッジ回路が前記送電回路であり、かつ、前記受電回路及び前記送電回路が定格電力で動作する場合における、前記主ブリッジ回路の伝達電力に対する、前記受電回路の定格電力の比を電力比とし、
前記電力比に基づいて、前記主接続経路のインピーダンスと、前記各副接続経路のインピーダンスとが設定されている、構成2に記載の電力変換器。
[構成4]
互いに磁気結合された3つ以上のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記送電回路の送電電力が前記受電回路の受電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が受電する場合に、第1受電条件及び第2受電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも遅らせるとの条件であり、
前記第2受電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以前のタイミングにするとの条件である、電力変換器。
[構成5]
前記副ブリッジ回路は複数であり、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記受電回路の受電電力が前記送電回路の送電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が送電する場合に、第1送電条件及び第2送電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件であり、
前記第2送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である、構成1に記載の電力変換器。
[構成6]
前記各副ブリッジ回路のうち、いずれか1つの副ブリッジ回路が前記送電回路であり、残りの副ブリッジ回路が前記受電回路であり、かつ、前記受電回路及び前記送電回路が定格電力で動作する場合における、前記主ブリッジ回路の伝達電力に対する、前記送電回路の定格電力の比を電力比とし、
前記電力比に基づいて、前記主接続経路のインピーダンスと、前記各副接続経路のインピーダンスとが設定されている、構成5に記載の電力変換器。
[構成7]
互いに磁気結合された3つ以上のコイル(60~64)を有するトランス(50)と、
前記各コイルに対応して設けられ、前記コイルに印加される交流電圧の極性を切り替えるブリッジ回路(30~34)と、を備え、前記各ブリッジ回路の間において前記トランスを介して双方向に電力伝達が可能な電力変換器(20)において、
前記各ブリッジ回路のうち定格電力の最も大きい回路を主ブリッジ回路(30)とし、
前記各ブリッジ回路のうち前記主ブリッジ回路以外の回路を副ブリッジ回路(31~34)とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路から受電する回路を受電回路とし、
前記各副ブリッジ回路のうち他の前記ブリッジ回路に送電する回路を送電回路とし、
前記受電回路の受電電力が前記送電回路の送電電力よりも大きく前記主ブリッジ回路が送電する場合に、第1送電条件及び第2送電条件を満たすように前記各ブリッジ回路のスイッチング制御を行う制御装置(40)を備え、
前記第1送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングと、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングとを、前記受電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングよりも進めるとの条件であり、
前記第2送電条件は、前記主ブリッジ回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミングを、前記送電回路に対応する前記コイルの印加電圧の正極性への切り替えタイミング以後のタイミングにするとの条件である、電力変換器。
[構成8]
前記副接続経路に設けられたインダクタ(81~84)を備え、
前記主接続経路には、インダクタが設けられていない、構成1~3,5,6のいずれか1つに記載の電力変換器。
[構成9]
前記主接続経路に設けられたキャパシタ(90)を備える、構成1~3,5,6のいずれか1つに記載の電力変換器。
[構成10]
前記電力変換器は、
前記主ブリッジ回路側に電力系統(10)が接続可能であり、
前記各副ブリッジ回路側に充放電可能な蓄電部(11~14)が接続可能であり、前記電力系統と前記各蓄電部との間において双方向に電力伝達を行う、構成1~9のいずれか1つに記載の電力変換器。
【符号の説明】
【0122】
20…電力変換器、30…主ブリッジ回路、31~34…第1~第4副ブリッジ回路、50…トランス、60…主コイル、61~64…第1~第4副コイル。