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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165898
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】曲がり管
(51)【国際特許分類】
   F15D 1/04 20060101AFI20241121BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F15D1/04
F16L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082482
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】池松 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 英明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 僚太
(72)【発明者】
【氏名】浅井田 康浩
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019EA20
(57)【要約】
【課題】圧力損失の低減を可能にする曲がり管を提供する。
【解決手段】曲がり管1は、上流側に向けられる第1開口2と、下流側に向けられる第2開口3と、第1開口2と第2開口3とをつなぐ屈曲流路4と、屈曲流路4の流路断面積が第1開口2の断面積よりも小さくなる縮小部位4aが屈曲流路4の内周側の角部4bと第1開口2との間に存在するように、屈曲流路4の内周側の第1壁面11から屈曲流路4の外周側の第2壁面12に向かって突出する突出部5と、を備える。第1開口2の直径をd、頂部5cでの突出部5の高さをh、第1開口2の中心軸C2の方向における突出部5の下流側の端部5aから縮小部位4aにおいて流路断面積が最小となる頂部5cまでの距離をL1、中心軸C2の方向における突出部5の上流側の端部5bから頂部5cまでの距離をL2とすると、h≦0.4d、0.8d≦L1+L2≦7d、0.4d≦L1≦L2、を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の向きを変える曲がり管であって、
上流側に向けられる第1開口と、
下流側に向けられる第2開口と、
前記第1開口と前記第2開口とをつなぐ屈曲流路と、
前記屈曲流路の流路断面積が前記第1開口の断面積よりも小さくなる縮小部位が前記屈曲流路の内周側の角と前記第1開口との間に存在するように、前記屈曲流路の内周側の第1壁面から前記屈曲流路の外周側の第2壁面に向かって突出する突出部と、
を備え、
前記突出部は、前記縮小部位において前記流路断面積が最小となる頂部を含み、
前記第1開口の直径をd、
前記頂部での前記突出部の高さをh、
前記突出部の下流側の端部から前記頂部までの距離をL1、
前記突出部の上流側の端部から前記頂部までの距離をL2とすると、
h≦0.4d、
0.8d≦L1+L2≦7d、
0.4d≦L1≦L2、
を満たす、
曲がり管。
【請求項2】
0.1d≦h≦0.3dを満たす、
請求項1の曲がり管。
【請求項3】
0.8d≦L1+L2≦4.5dを満たす、
請求項1の曲がり管。
【請求項4】
1.2d≦L1+L2≦4.5dを満たす、
請求項1の曲がり管。
【請求項5】
0.4d≦L1≦0.4L2を満たす、
請求項1の曲がり管。
【請求項6】
前記流路を流れる流体は、Re≧10000を満たす、
請求項1の曲がり管。
【請求項7】
前記突出部の高さは、前記上流側の端部から前記頂部まで増加し、
前記突出部の高さの増加量は、前記上流側の端部から前記頂部に近付くほど減少する、
請求項1の曲がり管。
【請求項8】
前記突出部の高さは、前記頂部から前記下流側の端部まで減少し、
前記突出部の高さの減少量は、前記頂部から前記下流側の端部に近付くほど増加する、
請求項1の曲がり管。
【請求項9】
前記第1開口から見て、前記突出部は、前記突出部の幅方向の両端を結ぶ直線から前記第2壁面側には突出しない、
請求項1の曲がり管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、曲がり管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エルボやベンド等の曲がり管において壁面に沿う流体の流れが壁面に沿って向きを変えることにより生じるはく離を防止する境界層制御装置において、流体の流れがはく離を生じるはく離点上の壁面に、同壁面近くの流体の流れを局部的に加速させる突起物を流れの中へ突出させて設けることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-40109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、圧力損失や流れの乱れの原因となるはく離を防止するために、突起物を設ける。突起物は、はく離の防止に寄与するかもしれないが、流路を狭める。流路が狭まると圧力損失が生じ得る。特許文献1では、突起物の形状や大きさについて記載がなく、突起物を設けても圧力損失を低減できない可能性がある。
【0005】
本開示は、圧力損失の低減を可能にする曲がり管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる曲がり管は、流路の向きを変える曲がり管であって、上流側に向けられる第1開口と、下流側に向けられる第2開口と、第1開口と第2開口とをつなぐ屈曲流路と、屈曲流路の流路断面積が第1開口の断面積よりも小さくなる縮小部位が屈曲流路の内周側の角と第1開口との間に存在するように、屈曲流路の内周側の第1壁面から屈曲流路の外周側の第2壁面に向かって突出する突出部と、を備える。突出部は、縮小部位において流路断面積が最小となる頂部を含む。第1開口の直径をd、頂部での突出部の高さをh、突出部の下流側の端部から頂部までの距離をL1、突出部の上流側の端部から頂部までの距離をL2とすると、h≦0.4d、0.8d≦L1+L2≦7d、0.4d≦L1≦L2、を満たす。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様は、流体の圧力損失の低減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態にかかる曲がり管の斜視図
図2】一実施の形態にかかる曲がり管の断面図
図3】一実施の形態にかかる曲がり管を第1開口側から見た図
図4図2のA-A線断面図
図5】第1条件でのレイノルズ数と圧力損失比との関係を示すグラフ
図6】第2条件での第1開口の直径に対する突出部の長さの比と圧力損失比との関係を示すグラフ
図7】第3条件での第1開口の直径に対する突出部の長さの比と圧力損失比との関係を示すグラフ
図8】第4条件での第1開口の直径に対する突出部の長さの比と圧力損失比との関係を示すグラフ
図9】第5条件での第1開口の直径に対する突出部の長さの比と圧力損失比との関係を示すグラフ
図10】第6条件での突出部の高さと圧力損失比との関係を示すグラフ
図11】第7条件でのレイノルズ数と圧力損失比との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0011】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「第1」、「第2」等の接頭辞を構成要素の名称に付すが、構成要素に付した符号により互いに区別可能である場合には、文章の読みやすさを考慮して、「第1」、「第2」等の接頭辞を省略する場合がある。
【0012】
[1.1 構成]
図1は、本実施の形態にかかる曲がり管1の斜視図である。曲がり管1は、配管システムにおいて、流路の向きを変えるために用いられる。
【0013】
配管システムは、例えば、雨樋システムである。雨樋システムは、建物からの雨水を地面のます部に流すために用いられる。建物は、例えば、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設の建物である。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。
【0014】
曲がり管1は、円筒状であるが、管軸(中心線)が曲線状の部位と直線状の部位とを含む。曲がり管1の材料は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルである。
【0015】
曲がり管1は、両端に第1開口2と、第2開口3とを有する。曲がり管1の内周面10は、屈曲流路4を規定する。
【0016】
第1開口2は、上流側に向けられる。上流側は、流体が曲がり管1に流入する側である。第2開口3は、下流側に向けられる。下流側は、流体が曲がり管1から流出する側である。屈曲流路4は、第1開口2と第2開口3とをつなぐ。本実施の形態では、屈曲流路4は、第1開口2の中心軸C2と第2開口3の中心軸C2とが交差するように第1開口2と第2開口3とをつなぐ。中心軸C2と中心軸C3との間の角度は、特に限定されない。本実施の形態では、例えば、中心軸C2と中心軸C3との間の角度は、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」で規定される91.17°である。
【0017】
図2は、曲がり管1の断面図である。図3は、曲がり管1を第1開口2側から見た図である。図4は、図2のA-A線断面図である。
【0018】
図2からよく理解されるように、屈曲流路4の流路断面積は一定ではなく、屈曲流路4の流路断面積が第1開口2の断面積よりも小さくなる縮小部位4aが存在する。屈曲流路4の内周側の第1壁面11は、縮小部位4aが屈曲流路4の内周側の角部4bと第1開口2との間に存在するように、屈曲流路4の外周側の第2壁面12に向かって突出する。第1壁面11は、曲がり管1の内周面10における屈曲流路4の内周側の部位(一例として内周側の半分の部位)である。第2壁面12は、曲がり管1の内周面10における屈曲流路4の外周側の部位(一例として外周側の半部の部位)である。つまり、曲がり管1の内周面10は、第1壁面11と第2壁面12とで構成される。
【0019】
曲がり管1では、屈曲流路4の流路断面積が第1開口2の断面積よりも小さくなる縮小部位4aが屈曲流路4の内周側の角部4bと第1開口2との間に存在するように、屈曲流路4の内周側の第1壁面11が、屈曲流路4の外周側の第2壁面12に向かって(部分的に)突出する。つまり、第1壁面11は、屈曲流路4の流路断面積を第2開口3の断面積よりも小さくするように、第1壁面11から第2壁面12に向かって突出する突出部5を含む。突出部5は、第1壁面11において、縮小部位4aを形成する部分である。
【0020】
突出部5は、下流側の端部5aと、上流側の端部5bと、を有する。下流側の端部5aは、突出部5における第2開口3側の端部である。上流側の端部5bは、突出部5における第1開口2側の端部である。突出部5の下流側の端部5aは、角部4bに一致するか、角部4bに対して第1開口2側において角部4bの近傍に位置することが好ましい。
【0021】
突出部5の高さは、第1開口2の中心軸C2の方向に沿って変化する。突出部5は、下流側の端部5aと上流側の端部5bとの間に、突出部5において高さが最も高い部分である頂部5cを有する。図2及び図3に示すように、突出部5の高さは、第1開口2の直径に対応する面を基準とした高さである。
【0022】
突出部5の高さは、上流側の端部5bから頂部5cに向かって増加する。つまり、上流側の端部5bと頂部5cとの間の任意の点において、上流側の端部5bから任意の点までの距離が増加すれば、任意の点での突出部5の高さも増加する。本実施の形態では、突出部5の高さの増加量は、頂部5cに近付くほど減少する。つまり、突出部5の高さは、上流側の端部5bから頂部5cまで対数関数的に増加する。これにより、さらに圧力損失が低減される。
【0023】
突出部5の高さは、頂部5cから下流側の端部5aに向かって減少する。つまり、頂部5cと下流側の端部5aとの間の任意の点において、頂部5cから任意の点までの距離が増加すれば、任意の点での突出部5の高さは減少する。本実施の形態では、突出部5の高さの減少量は、下流側の端部5aに近付くほど増加する。つまり、突出部5の高さは、頂部5cから下流側の端部5aまで指数関数的に減少する。これにより、さらに圧力損失が低減される。
【0024】
突出部5は、頂部5cにおいて、縮小部位4aの流路断面積を最も小さくする。つまり、頂部5cは、縮小部位4aにおいて流路断面積が最小となる部位に対応する。
【0025】
突出部5の幅方向に直交する断面では、突出部5は、頂部5cにおいて第2壁面12側に突出する曲面形状を含む。これによって、流量を向上できる。別の観点から、突出部5は、コアンダ効果を生じるように第2壁面12に向かって突出した形状を有していればよい。突出部5の表面粗さは小さいほうが、流量の向上が期待できるため好ましい。
【0026】
図3及び図4から、第1開口2から見て、突出部5は、突出部5の幅方向の両端を結ぶ直線から第2壁面12側には突出しない形状である。これにより、さらに圧力損失が低減される。本実施の形態では、第1開口2の中心軸C2に直交する断面において、突出部5の第2壁面12側の面は、突出部5の幅方向の両端を結ぶ直線上に位置する。
【0027】
図1図2及び図4を参照する。突出部5の下流側の端部5aから頂部5cまでの距離L1、突出部5の上流側の端部5bから頂部5cまでの距離L2、及び、頂部5cでの突出部5の高さhは、曲がり管1の第1開口2の直径dに基づいて設定される。距離L1,L2は、突出部5の長さ方向に沿った距離である。本実施の形態では、突出部5の長さ方向は、第1開口2の中心軸C2の方向に一致している。突出部5の長さをLとすると、L=L1+L2である。
【0028】
[1.2 評価]
突出部5の効果を確認するために、突出部5のL1,L2,hの条件を変えて、圧力損失比を評価した。圧力損失比は、曲がり管1における突出部5の有無による圧力損失の変化を表す。具体的には、突出部5を有していない(つまり、縮小部位4aがない)比較例の曲がり管1の圧力損失に対する突出部5を有する実施例の曲がり管1の圧力損失の比である。圧力損失比の評価には、数値計算ソフトのCOMSOL Multiphysics(登録商標)を用いた。曲がり管1は乱流領域での使用が想定されるから、レイノルズ数は10000以上に設定した。
【0029】
図5は、第1条件でのレイノルズ数(Re)と圧力損失比との関係を示すグラフである。第1条件では、h=0.4d、L1=L2=dとし、レイノルズ数Reを変化させた。図5の横軸は、レイノルズ数Reの対数を示す。図5から、レイノルズ数Reの増加に伴って圧力損失比が低下していることが理解される。これは、レイノルズ数Reが増加するほど、突出部5による圧力損失の低減の効果が大きくなることを示す。そのため、Re=10000である場合に、圧力損失比が1以下になるように突出部5のL1,L2,hを設定すれば、Re>10000の場合には、圧力損失比を1未満にできることが確認された。
【0030】
図6は、第2条件での第1開口2の直径dに対する突出部5の長さLの比(L/d)と圧力損失比との関係を示すグラフである。第2条件では、Re=10000、L1=0.4d、h=0.4dとして、L2を変化させることでLを変化させた。
【0031】
図7は、第3条件での第1開口2の直径dに対する突出部5の長さLの比(L/d)と圧力損失比との関係を示すグラフである。第3条件では、Re=10000、L1=L2、h=0.4dとして、L2を変化させることでLを変化させた。
【0032】
図8は、第4条件での第1開口2の直径dに対する突出部5の長さLの比(L/d)と圧力損失比との関係を示すグラフである。第4条件では、Re=1000000、L1=0.4d、h=0.4dとして、L2を変化させることでLを変化させた。
【0033】
図9は、第5条件での第1開口2の直径dに対する突出部5の長さLの比(L/d)と圧力損失比との関係を示すグラフである。第5条件では、Re=1000000、L1=L2、h=0.4dとして、L2を変化させることでLを変化させた。
【0034】
図6図9から、0.8≦L/d≦7.0の範囲で、良好な圧力損失比が得られることが確認された。図8の第4条件は、図6の第2条件においてReを10000から1000000にしたものであり、図9の第5条件は、図7の第3条件においてReを10000から1000000にしたものである。図6図8の比較、図7図9の比較からも、Re=10000である場合に、圧力損失比が1以下になるように突出部5のL1,L2,hを設定すれば、Re>10000の場合には、圧力損失比を1未満にできることが確認された。
【0035】
図10は、第6条件での突出部5の高さhと圧力損失比との関係を示すグラフである。第6条件では、Re=10000、L1=L2=dとして、hを変化させた。h=0は、突出部5が存在しない場合に等しい。図10から、h≦0.4dである場合には、良好な圧力損失比が得られることが確認された。
【0036】
以上の結果から、h≦0.4d、0.8d≦L1+L2≦7d、0.4d≦L1≦L2を満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失の低減を可能にする。
【0037】
さらに、0.1d≦h≦0.3dを満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0038】
さらに、0.8d≦L1+L2≦4.5dを満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0039】
さらに、1.2d≦L1+L2≦4.5dを満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0040】
さらに、0.4d≦L1≦0.4L2を満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。特に、0.3L2≦L1≦0.4L2であるとよい。
【0041】
さらに、流路を流れる流体は、Re≧10000を満たすことが好ましい。これは、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0042】
図11は、第7条件でのレイノルズ数と圧力損失比との関係を示すグラフである。第7条件では、h=0.3d、L1=0.5d、L2=1.5dとし、Reを変化させた。さらに、第7条件では、突出部5の下流側の端部5aから頂部5cまでの曲線を、長半径がL1に等しい楕円弧に設定し、突出部5の上流側の端部5bから頂部5cまでの曲線を、長半径がL2に等しい楕円弧に設定している。図5の第2条件と比較すれば、40%~70%の程度の圧力損失の低減が可能であることが確認された。したがって、L1<L2であることが好ましい。
【0043】
[1.3 効果等]
以上述べた曲がり管1は、流路の向きを変える曲がり管であって、上流側に向けられる第1開口2と、下流側に向けられる第2開口3と、第1開口2と第2開口3とをつなぐ屈曲流路4と、屈曲流路4の流路断面積が第1開口2の断面積よりも小さくなる縮小部位4aが屈曲流路4の内周側の角部4bと第1開口2との間に存在するように、屈曲流路4の内周側の第1壁面11から屈曲流路4の外周側の第2壁面12に向かって突出する突出部5と、を備える。突出部5は、縮小部位4aにおいて流路断面積が最小となる頂部5cを含む。第1開口2の直径をd、頂部5cでの突出部5の高さをh、第1開口2の中心軸C2の方向における突出部5の下流側の端部5aから頂部5cまでの距離をL1、第1開口2の中心軸C2の方向における突出部5の上流側の端部5bから頂部5cまでの距離をL2とすると、h≦0.4d、0.8d≦L1+L2≦7d、0.4d≦L1≦L2、を満たす。この構成は、流体の圧力損失の低減を可能にする。
【0044】
曲がり管1において、0.1d≦h≦0.3dを満たす。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0045】
曲がり管1において、0.8d≦L1+L2≦4.5dを満たす。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0046】
曲がり管1において、1.2d≦L1+L2≦4.5dを満たす。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0047】
曲がり管1において、0.4d≦L1≦0.4L2を満たす。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0048】
曲がり管1において、流路を流れる流体は、Re≧10000を満たす。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0049】
曲がり管1において、突出部5の高さは、上流側の端部5bから頂部5cまで増加する。突出部5の高さの増加量は、上流側の端部5bから頂部5cに近付くほど減少する。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0050】
曲がり管1において、突出部5の高さは、頂部5cから下流側の端部5aまで減少する。突出部5の高さの減少量は、頂部5cから下流側の端部5aに近付くほど増加する。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0051】
曲がり管1において、第1開口2から見て、突出部5は、突出部5の幅方向の両端を結ぶ直線から第2壁面12側には突出しない。この構成は、流体の圧力損失のさらなる低減を可能にする。
【0052】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0053】
一変形例において、突出部5の高さは、上流側の端部5bから頂部5cに向かって増加するが、突出部5の高さの増加量は、必ずしも頂部5cに近付くほど減少しなくてもよい。つまり、突出部5の高さの増加量は、適宜設定されてよい。突出部5の高さは、頂部5cから下流側の端部5aに向かって減少するが、突出部5の高さの減少量は、必ずしも下流側の端部5aに近付くほど増加しなくてもよい。つまり、突出部5の高さの減少量は、適宜設定されてよい。
【0054】
一変形例において、突出部5は、曲がり管1に一体的に形成されている必要はない。突出部5は、従来周知の曲がり管に取り付けられて、曲がり管1を構成するための突起部材として提供されてよい。この突起部材は、上流側に向けられる第1開口と、下流側に向けられる第2開口と、第1開口と第2開口とをつなぐ屈曲流路とを有し、流路の向きを変える曲がり管に配置される。突起部材は、屈曲流路の流路断面積が第1開口の断面積よりも小さくなる縮小部位が屈曲流路の内周側の角と第1開口との間に存在するように、屈曲流路の内周側の第1壁面から屈曲流路の外周側の第2壁面に向かって突出するように配置される。突起部材は、縮小部位において流路断面積が最小となる頂部を含み、第1開口の直径をd、頂部での突起部材の高さをh、突起部材の下流側の端部から頂部までの距離をL1、突起部材の上流側の端部から頂部までの距離をL2とすると、h≦0.4d、0.8d≦L1+L2≦7d、0.4d≦L1≦L2を満たす。
【0055】
一変形例において、曲がり管1の屈曲流路4の形状は、上記の実施の形態に限定されない。屈曲流路4は、第1開口2と第2開口3とをつなげばよく、第1開口2の中心軸C2と第2開口3の中心軸C2との間の角度は、特に限定されない。例えば、中心軸C2と中心軸C3との間の角度は、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」で規定される91.17°であってよいし、45°であってもよい。また、屈曲流路4はU字状であってよく、この場合、中心軸C2と中心軸C3との間の角度は0°であってよい。屈曲流路4は、これらの他、S字状等の流路の向きが変わる部分を含んでいればよく、必ずしも中心軸C2と中心軸C3とが交差するとは限らない。
【0056】
一変形例において、曲がり管1の材料は、必ずしも硬質ポリ塩化ビニルでなくてもよい。曲がり管1の材料は、配管システムに求められる要件にしたがって決定されてよく、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂であってもよい。また、曲がり管1の材料は、合成樹脂ではなく、金属であってもよい。
【0057】
一変形例において、曲がり管1の形状及び寸法は、90°曲がりエルボ(所謂、DL)等のエルボと同様であってよいが、特に限定されない。また、曲がり管1が適用される配管システムは、雨樋システムに限定されない。配管システムの例としては、上水道又は下水道のための配管システム、工場等の施設内において目的の流体を搬送数ための配管システムが挙げられる。
【0058】
一変形例において、配管システムで搬送する流体は、雨水に限定されない。また、流体は、液体ではなく、気体等であってもよい。
【0059】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0060】
[態様1]
流路の向きを変える曲がり管であって、
上流側に向けられる第1開口と、
下流側に向けられる第2開口と、
前記第1開口の中心軸と前記第2開口の中心軸とは交差するように前記第1開口と前記第2開口とをつなぐ屈曲流路と、
前記屈曲流路の流路断面積が前記第1開口の断面積よりも小さくなる縮小部位が前記屈曲流路の内周側の角と前記第1開口との間に存在するように、前記屈曲流路の内周側の第1壁面から前記屈曲流路の外周側の第2壁面に向かって突出する突出部と、
を備え、
前記突出部は、前記縮小部位において前記流路断面積が最小となる頂部を含み、
前記第1開口の直径をd、
前記頂部での前記突出部の高さをh、
前記第1開口の中心軸の方向における前記突出部の下流側の端部から前記頂部までの距離をL1、
前記第1開口の中心軸の方向における前記突出部の上流側の端部から前記頂部までの距離をL2とすると、
h≦0.4d、
0.8d≦L1+L2≦7d、
0.4d≦L1≦L2、
を満たす、
曲がり管。
【0061】
[態様2]
0.1d≦h≦0.3dを満たす、
態様1の曲がり管。
【0062】
[態様3]
0.8d≦L1+L2≦4.5dを満たす、
態様1又は2の曲がり管。
【0063】
[態様4]
1.2d≦L1+L2≦4.5dを満たす、
態様1~3のいずれか一つの曲がり管。
【0064】
[態様5]
0.4d≦L1≦0.4L2を満たす、
態様1~4のいずれか一つの曲がり管。
【0065】
[態様6]
前記流路を流れる流体は、Re≧10000を満たす、
態様1~5のいずれか一つの曲がり管。
【0066】
[態様7]
前記突出部の高さは、前記上流側の端部から前記頂部まで増加し、
前記突出部の高さの増加量は、前記上流側の端部から前記頂部に近付くほど減少する、
態様1~6のいずれか一つの曲がり管。
【0067】
[態様8]
前記突出部の高さは、前記頂部から前記下流側の端部まで減少し、
前記突出部の高さの減少量は、前記頂部から前記下流側の端部に近付くほど増加する、
態様1~7のいずれか一つの曲がり管。
【0068】
[態様9]
前記第1開口から見て、前記突出部は、前記突出部の幅方向の両端を結ぶ直線から前記第2壁面側には突出しない、
態様1~8のいずれか一つの曲がり管。
【0069】
[態様10]
流路の向きを変える曲がり管に配置される突起部材であって、
前記曲がり管は、
上流側に向けられる第1開口と、
下流側に向けられる第2開口と、
前記第1開口と前記第2開口とをつなぐ屈曲流路と、
を有し、
前記突起部材は、前記屈曲流路の流路断面積が前記第1開口の断面積よりも小さくなる縮小部位が前記屈曲流路の内周側の角と前記第1開口との間に存在するように、前記屈曲流路の内周側の第1壁面から前記屈曲流路の外周側の第2壁面に向かって突出するように配置され、
前記突起部材は、前記縮小部位において前記流路断面積が最小となる頂部を含み、
前記第1開口の直径をd、
前記頂部での前記突起部材の高さをh、
前記突起部材の下流側の端部から前記頂部までの距離をL1、
前記突起部材の上流側の端部から前記頂部までの距離をL2とすると、
h≦0.4d、
0.8d≦L1+L2≦7d、
0.4d≦L1≦L2、
を満たす、
突起部材。
【0070】
態様2~9は、任意の要素であり、必須ではない。態様2~9は、態様10に適宜組み合わせて適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、曲がり管に適用可能である。具体的には、配管システムにおいて流路の向きを変えるために用いられる曲がり管に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 曲がり管
2 第1開口
3 第2開口
4 屈曲流路
4a 縮小部位
4b 角部
5 突出部
5a 下流側の端部
5b 上流側の端部
5c 頂部
11 第1壁面
12 第2壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11