(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165905
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】弾性クローラ用芯材及び弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082491
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】前田(林) 優希
(57)【要約】
【課題】 脱輪防止性能を向上し得る弾性クローラ用芯材及び弾性クローラを提供する。
【解決手段】 本発明は、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体2に埋設される弾性クローラ用芯材3である。弾性クローラ用芯材3は、クローラ周方向Xに対応する第1方向aと、クローラ幅方向Yに対応する第2方向bと、クローラ内周側Ziに対応する第3内周側ciと、クローラ外周側Zoに対応する第3外周側coとが規定されたときに、第2方向bに延びる芯材本体8と、芯材本体8から、第1方向aに突出する一対の脱輪防止突起9とを含んでいる。一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、第3内周側ciに位置する内周面9aと、第3外周側coに位置する外周面9bとを有している。内周面9aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面9bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、互いに異なっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体に埋設される弾性クローラ用芯材であって、
クローラ周方向に対応する第1方向と、クローラ幅方向に対応する第2方向と、クローラ内周側に対応する第3内周側と、クローラ外周側に対応する第3外周側とが規定されたときに、
前記第2方向に延びる芯材本体と、
前記芯材本体から、前記第1方向に突出する一対の脱輪防止突起とを含み、
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記第3内周側に位置する内周面と、前記第3外周側に位置する外周面とを有し、
前記内周面の前記第2方向の長さである第1長さと前記外周面の前記第2方向の長さである第2長さとが、互いに異なる、
弾性クローラ用芯材。
【請求項2】
前記第2長さは、前記第1長さの150%~250%である、請求項1に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項3】
前記第2長さは、前記第1長さの40%~66%である、請求項1に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項4】
前記内周面と前記外周面とは、互いに平行な平行部分を含み、
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記平行部分に直交する方向に延びる第1側面と、前記第1側面に傾斜する方向に延びる第2側面とを有する、請求項1に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項5】
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記内周面と前記第2側面とを接続する第1角部と、前記外周面と前記第2側面とを接続する第2角部とを有し、
前記第1角部及び前記第2角部は、それぞれ、曲率半径が1~6mmの円弧部分を含む、請求項4に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項6】
前記一対の脱輪防止突起は、前記芯材本体から前記第1方向の一方側に突出する一対の第1突起と、前記芯材本体から前記第1方向の他方側に突出する一対の第2突起とを含み、
前記一対の第1突起のそれぞれの前記第1長さに対する前記第2長さの比率は、前記一対の第2突起のそれぞれの前記第1長さに対する前記第2長さの比率に等しい、請求項1に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項7】
前記一対の第1突起の間の前記第2方向の距離は、前記一対の第2突起の間の前記第2方向の距離よりも大きい、請求項6に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項8】
前記内周面及び前記外周面は、それぞれ、凹凸部分を含む、請求項1に記載の弾性クローラ用芯材。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の弾性クローラ用芯材と、前記クローラ本体とを含む、弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体に埋設される弾性クローラ用芯材及び弾性クローラ用芯材を含む弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設される弾性クローラ用芯材とを含む弾性クローラが知られている。例えば、下記特許文献1は、芯材が、クローラ幅方向に延びる芯材本体と、芯材本体からクローラ周方向の一方側、他方側に突出する脱輪防止突起とを含む弾性クローラを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の芯材は、クローラ周方向に隣接する芯材の脱輪防止突起がクローラ厚さ方向にずれたときに、互いの脱輪防止突起のクローラ幅方向の位置が入れ替わり易く、脱輪防止性能に対して更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、脱輪防止性能を向上し得る弾性クローラ用芯材及び弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体に埋設される弾性クローラ用芯材であって、クローラ周方向に対応する第1方向と、クローラ幅方向に対応する第2方向と、クローラ内周側に対応する第3内周側と、クローラ外周側に対応する第3外周側とが規定されたときに、前記第2方向に延びる芯材本体と、前記芯材本体から、前記第1方向に突出する一対の脱輪防止突起とを含み、前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記第3内周側に位置する内周面と、前記第3外周側に位置する外周面とを有し、前記内周面の前記第2方向の長さである第1長さと前記外周面の前記第2方向の長さである第2長さとが、互いに異なる、弾性クローラ用芯材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾性クローラ用芯材は、上述の構成を備えることにより、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の弾性クローラ用芯材を示す斜視図である。
【
図3】弾性クローラ用芯材の一部を拡大して示す正面図である。
【
図4】弾性クローラ用芯材の配列状態を概念的に示す平面図である。
【
図7】第2の実施形態の脱輪防止突起の端面図である。
【
図8】第3の実施形態の脱輪防止突起の端面図である。
【
図9】第4の実施形態の脱輪防止突起の端面図である。
【
図10】第5の実施形態の脱輪防止突起の端面図である。
【
図11】第5の実施形態の脱輪防止突起の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、ゴム等の弾性体からなる無端帯状のクローラ本体2と、クローラ本体2に埋設される複数の弾性クローラ用芯材3とを含んでいる。弾性クローラ1は、クローラ本体2に埋設される抗張体4を含むのが望ましい。
【0010】
本明細書において、
図1の符号Xで示される方向が、クローラ周方向Xと規定され、弾性クローラ1の回転方向に相当する。また、
図1の符号Yで示される方向が、クローラ幅方向Yと規定され、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪(図示省略)の軸方向に相当する。
【0011】
また、
図1の符号Zで示される方向が、クローラ厚さ方向Zと規定され、クローラ周方向X及びクローラ幅方向Yに直交する方向に相当する。クローラ厚さ方向Zのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側が、クローラ内周側Ziと規定され、無端帯状の弾性クローラ1の外側が、クローラ外周側Zoと規定される。
【0012】
クローラ本体2は、例えば、略一定の幅を有してクローラ周方向Xに連続して延びている。クローラ本体2のクローラ外周側Zoの面2oには、クローラ周方向Xに間隔を有して配列された複数本のラグ5が設けられるのが望ましい。このようなラグ5は、クローラ幅方向Yに延びているので、不整地走行時のトラクション性を向上させることができる。
【0013】
クローラ本体2のクローラ内周側Ziの面2iには、例えば、複数の突起6aからなる2列の突起列6が形成されている。このような突起列6、6は、その間に、車体側の駆動輪、遊動輪、転輪等を案内することができる。なお、突起6aは、弾性クローラ用芯材3に設けられたガイド突起7により補強されるのが望ましい。
【0014】
本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、クローラ幅方向Yの補強材として機能し、クローラ周方向Xに間隔を隔てて配されている。弾性クローラ用芯材3は、弾性体よりも硬質の材料からなるのが望ましい。この硬質の材料としては、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料が好適に採用される。このような弾性クローラ用芯材3は、剛性に優れており、不整地走行時の安定性を向上させることができる。
【0015】
図2は、本実施形態の弾性クローラ用芯材3を示す斜視図である。
図2に示されるように、本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、第2方向bに延びる芯材本体8と、芯材本体8から第1方向aに突出する一対の脱輪防止突起9とを含んでいる。
【0016】
ここで、本明細書では、クローラ本体2に埋設される前の弾性クローラ用芯材3の方向が、弾性クローラ1の方向と対応して規定される。
図2の符号aで示される方向が、第1方向aと規定され、
図1のクローラ周方向Xに相当する。また、
図2の符号bで示される方向が、第2方向bと規定され、
図1のクローラ幅方向Yに相当する。
【0017】
また、
図2の符号cで示される方向が、第3方向cと規定され、
図1のクローラ厚さ方向Zに相当する。第3方向cにおいては、
図1のクローラ内周側Ziに対応する第3内周側ciと、
図1のクローラ外周側Zoに対応する第3外周側coとが規定される。
【0018】
本実施形態の芯材本体8は、第2方向bの中央に配される係合部8aと、係合部8aの第2方向bの両外側に配される翼部8bとを含んでいる。係合部8aの第3内周側ciの面は、例えば、第3内周側ciに凸の円弧面として形成されている。このような係合部8aは、駆動輪の歯溝部と噛み合うときに滑らかであり、振動や騒音を抑制するという課題をも解決することができる。
【0019】
本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、芯材本体8の第3内周側ciの面から第3方向cに突出する一対のガイド突起7を含んでいる。一対のガイド突起7は、係合部8aの第2方向bの両側に配されるのが望ましい。このような一対のガイド突起7は、その間に駆動輪、遊動輪、転輪等を挟んでガイドすることができる。
【0020】
図3は、弾性クローラ用芯材3の一部を拡大して示す正面図である。
図3に示されるように、本実施形態の一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、第3内周側ciに位置する内周面9aと、第3外周側coに位置する外周面9bとを有している。本実施形態の内周面9aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面9bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、互いに異なっている。
【0021】
この弾性クローラ用芯材3の作用、効果が、
図4ないし
図6を用いて説明される。
図4は、弾性クローラ用芯材3の配列状態を概念的に示す平面図である。
図4に示されるように、弾性クローラ用芯材3は、クローラ本体2(
図1に示す)に埋設されたときに、互いに隣接する2つの弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9が、第2方向bにおいて互いに重なり合うように配列されるのが望ましい。
【0022】
図5は、
図4のA-A線の端面図である。
図4及び
図5に示されるように、弾性クローラ用芯材3は、第2方向bの力が作用した場合、一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9と、他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9とが接触して、第2方向bのずれが抑制される。
【0023】
図6は、弾性クローラ用芯材3に捻れ方向に力、すなわち第2方向bの力と第3方向cの力とが複合した力が作用したときの
図5に対応する脱輪防止突起9の作用図である。
図5及び
図6に示されるように、弾性クローラ用芯材3は、例えば、捻れ方向の力が作用した場合、一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9が他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9と第3方向cに重なり合うことがある。
【0024】
この場合であっても、本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、内周面9aの第1長さL1又は外周面9bの第2長さL2が大きいので、
図6に示されるような第3方向cに重なり合う状態を維持することができる。このような弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止突起9が乗り越えて互いの第2方向bの位置が入れ替わることを抑制することができる。
【0025】
これにより、本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、クローラ本体2の弾性力や抗張体4の張力といった復元力により、脱輪防止突起9を
図5に示される通常の位置に戻すことが容易である。このため、本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【0026】
より好ましい態様として、第2長さL2は、第1長さL1よりも大きい。第2長さL2は、好ましくは、第1長さL1の150%~250%である。第2長さL2が第1長さL1の150%以上であることで、脱輪防止突起9の乗り越えをより確実に抑制することができる。第2長さL2が第1長さL1の250%以下であることで、脱輪防止突起9の乗り越えを抑制しつつ、弾性クローラ用芯材3を軽量化するという課題をも解決することができる。
【0027】
第1長さL1及び第2長さL2は、脱輪防止突起9の第3方向cの高さhよりも小さいのが望ましい。このような脱輪防止突起9は、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能と軽量化とを両立するのに好適である。
【0028】
内周面9aと外周面9bとは、互いに平行な平行部分を含むのが望ましい。このような脱輪防止突起9は、第3方向cに重なり合ったときにその状態を維持することに役立ち、乗り越えによる第2方向bの位置が入れ替わりをより確実に抑制することができる。
【0029】
本実施形態の一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、平行部分に直交する方向に延びる第1側面9cと、第1側面9cに傾斜する方向に延びる第2側面9dとを有している。これにより、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9の第1側面9cと他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起9の第1側面9cとは、互いに平行に配されている。
【0030】
このような脱輪防止突起9は、
図5に示される通常の位置において、第1側面9c同士が接触することで、第1方向aに隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。また、この脱輪防止突起9は、第2側面9dが傾斜しているので、高い剛性と断面積の低減とを両立することができ、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立するという課題をも解決することができる。
【0031】
本実施形態の一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、内周面9aと第2側面9dとを接続する第1角部9eを有している。第1角部9eは、好ましくは、曲率半径r1が1~6mmの円弧部分を含んでいる。第1角部9eの曲率半径r1が1mm以上であることで、応力の集中を抑制しつつ断面積を低減することができるので、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。第1角部9eの曲率半径r1が6mm以下であることで、十分な平行部分を確保することができるので、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を向上させることができる。
【0032】
本実施形態の一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、外周面9bと第2側面9dとを接続する第2角部9fを有している。第2角部9fは、好ましくは、曲率半径r2が1~6mmの円弧部分を含んでいる。第2角部9fの曲率半径r2が1mm以上であることで、応力の集中を抑制しつつ断面積を低減することができるので、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。第2角部9fの曲率半径r2が6mm以下であることで、十分な平行部分を確保することができるので、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を向上させることができる。
【0033】
本実施形態の第2角部9fの曲率半径r2は、第1角部9eの曲率半径r1よりも小さい。このような脱輪防止突起9は、鋭角である第2角部9fの曲率半径r2が、鈍角である第1角部9eの曲率半径r1よりも小さいので、十分な平行部分を確保と断面積の低減とを両立することができる。このため、本実施形態の弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能と軽量化とを両立することができる。
【0034】
一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、例えば、内周面9aと第1側面9cとを接続する第3角部9gを有している。第3角部9gは、例えば、曲率半径r3が1~6mmの円弧部分を含んでいる。第3角部9gの曲率半径r3が1mm以上であることで、応力の集中を抑制しつつ断面積を低減することができるので、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。第3角部9gの曲率半径r3が6mm以下であることで、十分な平行部分を確保することができるので、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を向上させることができる。
【0035】
一対の脱輪防止突起9のそれぞれは、例えば、外周面9bと第1側面9cとを接続する第4角部9hを有している。第4角部9hは、例えば、曲率半径r4が1~6mmの円弧部分を含んでいる。第3角部9gの曲率半径r3が1mm以上であることで、応力の集中を抑制しつつ断面積を低減することができるので、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。第3角部9gの曲率半径r3が6mm以下であることで、十分な平行部分を確保することができるので、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を向上させることができる。
【0036】
図3ないし
図6に示されるように、本実施形態の一対の脱輪防止突起9は、芯材本体8から第1方向aの一方側に突出する一対の第1突起9Aと、芯材本体8から第1方向aの他方側に突出する一対の第2突起9Bとを含んでいる。このような脱輪防止突起9は、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の第1突起9Aと他方の弾性クローラ用芯材3の第2突起9Bとを接触させることで、弾性クローラ用芯材3の第2方向bのずれを抑制することができる。
【0037】
一対の第1突起9Aのそれぞれの第1長さL1と第2長さL2との大小関係は、一対の第2突起9Bのそれぞれの第1長さL1’と第2長さL2’との大小関係と同じであるのが望ましい。本実施形態の一対の第1突起9Aのそれぞれの第1長さL1に対する第2長さL2の比率は、一対の第2突起9Bのそれぞれの第1長さL1’に対する第2長さL2’の比率に等しい。このような脱輪防止突起9は、第3方向cに重なり合ったときに、接触面のいずれか一方の長さが大きいので、第3方向cに重なり合う状態を維持し、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を向上させることができる。
【0038】
本実施形態の第1突起9Aの断面形状と第2突起9Bの断面形状とは、第2方向bにおいて、対称となるように形成されている。このため、本実施形態の第1突起9Aの第1長さL1は、第2突起9Bの第1長さL1’に等しい。また、本実施形態の第1突起9Aの第2長さL2は、第2突起9Bの第2長さL2’に等しい。このような脱輪防止突起9は、第1突起9Aと第2突起9Bとのいずれか一方が早期に破損することを抑制することができ、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0039】
図4に示されるように、一対の第1突起9Aの間の第2方向bの距離L3は、一対の第2突起9Bの間の第2方向bの距離L4よりも大きい。このような脱輪防止突起9は、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の第1突起9Aの間に他方の弾性クローラ用芯材3の第2突起9Bを配することができ、脱輪防止性能を向上させることに役立つ。
【0040】
図7は、第2の実施形態の脱輪防止突起19の端面図である。上述の実施形態と同一の要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図7に示されるように、第2の実施形態の脱輪防止突起19は、上述の脱輪防止突起9と同様、第3内周側ciに位置する内周面19aと、第3外周側coに位置する外周面19bとを有している。
【0041】
第2の実施形態の内周面19aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面19bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、上述の実施形態と同様、互いに異なっている。このため、第2の実施形態の脱輪防止突起19を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【0042】
第2の実施形態の第2長さL2は、第1長さL1よりも小さい。第2長さL2は、好ましくは、第1長さL1の40%~66%である。第2長さL2が第1長さL1の40%以上であることで、脱輪防止突起19の乗り越えを抑制しつつ、弾性クローラ用芯材3を軽量化することができる。第2長さL2が第1長さL1の66%以下であることで、脱輪防止突起19の乗り越えをより確実に抑制することができる。
【0043】
第2の実施形態の脱輪防止突起19は、上述の脱輪防止突起9と同様、内周面19aと外周面19bとの平行部分に直交する方向に延びる第1側面19cと、第1側面19cに傾斜する方向に延びる第2側面19dとを有している。これにより、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起19の第1側面19cと他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起19の第1側面19cとは、互いに平行に配されている。
【0044】
このような脱輪防止突起19は、通常の位置において、第1側面19c同士が接触することで、隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。また、この脱輪防止突起19は、第2側面19dが傾斜しているので、高い剛性と断面積の低減とを両立することができ、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0045】
第2の実施形態の脱輪防止突起19は、上述の脱輪防止突起9と同様、芯材本体8から第1方向aの一方側に突出する第1突起19Aと、芯材本体8から第1方向aの他方側に突出する第2突起19Bとを含んでいる。第2の実施形態の第1突起19Aの断面形状と第2突起19Bの断面形状とは、第2方向bにおいて、対称となるように形成されている。このような脱輪防止突起19は、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0046】
図8は、第3の実施形態の脱輪防止突起29の端面図である。上述の実施形態と同一の要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図8に示されるように、第3の実施形態の脱輪防止突起29は、上述の脱輪防止突起9と同様、第3内周側ciに位置する内周面29aと、第3外周側coに位置する外周面29bとを有している。
【0047】
第3の実施形態の内周面29aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面29bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、上述の実施形態と同様、互いに異なっている。このため、第3の実施形態の脱輪防止突起29を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【0048】
第3の実施形態の脱輪防止突起29は、内周面29aと外周面29bとの平行部分に直交する方向に延びる第1側面29cと、第2方向bに向けて凹む第2側面29dとを有している。これにより、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起29の第1側面29cと他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起29の第1側面29cとは、互いに平行に配されている。
【0049】
このような脱輪防止突起29は、通常の位置において、第1側面29c同士が接触することで、隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。また、この脱輪防止突起29は、第2側面29dが凹んでいるので、大幅な軽量化を達成することができる。このため、第3の実施形態の脱輪防止突起29を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能と軽量化とを両立することができる。
【0050】
第3の実施形態の脱輪防止突起29は、上述の脱輪防止突起9と同様、芯材本体8から第1方向aの一方側に突出する第1突起29Aと、芯材本体8から第1方向aの他方側に突出する第2突起29Bとを含んでいる。第3の実施形態の第1突起29Aの断面形状と第2突起29Bの断面形状とは、第2方向bにおいて、対称となるように形成されている。このような脱輪防止突起29は、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0051】
図9は、第4の実施形態の脱輪防止突起39の端面図である。上述の実施形態と同一の要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図9に示されるように、第4の実施形態の脱輪防止突起39は、上述の脱輪防止突起9と同様、第3内周側ciに位置する内周面39aと、第3外周側coに位置する外周面39bとを有している。
【0052】
第4の実施形態の内周面39aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面39bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、上述の実施形態と同様、互いに異なっている。このため、第4の実施形態の脱輪防止突起39を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【0053】
第4の実施形態の脱輪防止突起39は、内周面39aと外周面39bとの平行部分に直交する方向に延びる第1側面39cと、第2方向bに向けて凹む第2側面39dとを有している。これにより、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起39の第1側面39cと他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起39の第1側面39cとは、互いに平行に配されている。
【0054】
このような脱輪防止突起39は、通常の位置において、第1側面39c同士が接触することで、隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。また、この脱輪防止突起39は、第2側面39dが凹んでいるので、大幅な軽量化を達成することができる。このため、第3の実施形態の脱輪防止突起39を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能と軽量化とを両立することができる。
【0055】
第4の実施形態の第2側面39dは、第2方向bに凹む方向の円弧部分を有している。第2側面39dの円弧部分は、上述の円弧部分よりも大きい曲率半径r5を有するのが望ましい。このような脱輪防止突起39は、高い剛性と断面積の低減とを両立することができ、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0056】
第4の実施形態の脱輪防止突起39は、上述の脱輪防止突起9と同様、芯材本体8から第1方向aの一方側に突出する第1突起39Aと、芯材本体8から第1方向aの他方側に突出する第2突起39Bとを含んでいる。第4の実施形態の第1突起39Aの断面形状と第2突起39Bの断面形状とは、第2方向bにおいて、対称となるように形成されている。このような脱輪防止突起39は、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0057】
図10は、第5の実施形態の脱輪防止突起49の端面図であり、
図11は、脱輪防止突起49の作用図である。上述の実施形態と同一の要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図10及び
図11に示されるように、第5の実施形態の脱輪防止突起49は、上述の脱輪防止突起9と同様、第3内周側ciに位置する内周面49aと、第3外周側coに位置する外周面49bとを有している。
【0058】
第5の実施形態の内周面49aの第2方向bの長さである第1長さL1と外周面49bの第2方向bの長さである第2長さL2とは、上述の実施形態と同様、互いに異なっている。このため、第5の実施形態の脱輪防止突起49を含む弾性クローラ用芯材3は、脱輪防止性能を大幅に向上することができる。
【0059】
第5の実施形態の内周面49a及び外周面49bは、それぞれ、凹凸部分を含んでいる。このような脱輪防止突起49は、第3方向cに重なり合ったときに凹凸部分が噛み合うことで、隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。
【0060】
なお、凹凸部分は、波状のものが例示されているが、そのような態様に限定されるものではなく、例えば、鋸歯状であってもよく、ジグザグ状であってもよい。凹凸部分は、鋸歯状である場合、脱輪防止突起49が乗り越える方向には移動し難く、通常の位置に戻る方向には移動し易い形状であるのが望ましい。このような脱輪防止突起49は、弾性クローラ用芯材3の脱輪防止性能を大幅に向上させることに役立つ。
【0061】
第5の実施形態の内周面49a及び外周面49bは、それぞれ、凹凸部分の平均高さとして規定される基準面を有している。内周面49aの基準面と外周面49bの基準面とは、互いに平行な平行部分を含むのが望ましい。このような脱輪防止突起49は、第3方向cに重なり合ったときにその状態を維持することに役立つ。
【0062】
第5の実施形態の脱輪防止突起49は、内周面49aの基準面と外周面49bの基準面との平行部分に直交する方向に延びる第1側面49cと、第1側面49cに傾斜する方向に延びる第2側面49dとを有している。これにより、第1方向aに隣接する一方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起49の第1側面49cと他方の弾性クローラ用芯材3の脱輪防止突起49の第1側面49cとは、互いに平行に配されている。
【0063】
このような脱輪防止突起49は、通常の位置において、第1側面49c同士が接触することで、隣接する弾性クローラ用芯材3が第2方向bにずれることを抑制することができる。また、この脱輪防止突起49は、第2側面49dが傾斜しているので、高い剛性と断面積の低減とを両立することができ、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0064】
第5の実施形態の脱輪防止突起49は、上述の脱輪防止突起9と同様、芯材本体8から第1方向aの一方側に突出する第1突起49Aと、芯材本体8から第1方向aの他方側に突出する第2突起49Bとを含んでいる。第5の実施形態の第1突起49Aの断面形状と第2突起49Bの断面形状とは、第2方向bにおいて、対称となるように形成されている。このような脱輪防止突起49は、弾性クローラ用芯材3の耐久性と軽量化とを両立することができる。
【0065】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例0066】
図1ないし
図6の基本構造を有する弾性クローラ用芯材が表1の仕様に基づき試作され、その軽量化性能がテストされた。また、この弾性クローラ用芯材が埋設された弾性クローラが試作され、脱輪防止性能がテストされた。共通仕様とテスト方法は、以下のとおりである。
【0067】
<共通仕様>
第2突起 : 第1突起と対称形状
テスト車両 : ミニバックホー
【0068】
<軽量化性能>
試作された弾性クローラ用芯材10個の重量が測定され、その平均が求められた。結果は、比較例を100とする指数で示され、数値が大きいほど重量が軽く、軽量化に優れていることを意味する。
【0069】
<脱輪防止性能>
試作された弾性クローラがテスト車両の走行装置に装着され、突起物への乗り上げ及び旋回を含む走行試験が行われ、弾性クローラが脱輪した頻度が測定された。結果は、比較例を100とする指数で示され、数値が大きいほど脱輪の発生頻度が少なく、脱輪防止性能に優れていることを意味する。
【0070】
【0071】
テストの結果、実施例の弾性クローラ用芯材は、比較例に対して、軽量化しつつ、脱輪防止性能を向上しており、その合計値で評価される総合性能も優れていることが確認された。
【0072】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0073】
[本発明1]
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体に埋設される弾性クローラ用芯材であって、
クローラ周方向に対応する第1方向と、クローラ幅方向に対応する第2方向と、クローラ内周側に対応する第3内周側と、クローラ外周側に対応する第3外周側とが規定されたときに、
前記第2方向に延びる芯材本体と、
前記芯材本体から、前記第1方向に突出する一対の脱輪防止突起とを含み、
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記第3内周側に位置する内周面と、前記第3外周側に位置する外周面とを有し、
前記内周面の前記第2方向の長さである第1長さと前記外周面の前記第2方向の長さである第2長さとが、互いに異なる、
弾性クローラ用芯材。
【0074】
[本発明2]
前記第2長さは、前記第1長さの150%~250%である、本発明1に記載の弾性クローラ用芯材。
【0075】
[本発明3]
前記第2長さは、前記第1長さの40%~66%である、本発明1に記載の弾性クローラ用芯材。
【0076】
[本発明4]
前記内周面と前記外周面とは、互いに平行な平行部分を含み、
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記平行部分に直交する方向に延びる第1側面と、前記第1側面に傾斜する方向に延びる第2側面とを有する、本発明1ないし3のいずれかに記載の弾性クローラ用芯材。
【0077】
[本発明5]
前記一対の脱輪防止突起のそれぞれは、前記内周面と前記第2側面とを接続する第1角部と、前記外周面と前記第2側面とを接続する第2角部とを有し、
前記第1角部及び前記第2角部は、それぞれ、曲率半径が1~6mmの円弧部分を含む、本発明4に記載の弾性クローラ用芯材。
【0078】
[本発明6]
前記一対の脱輪防止突起は、前記芯材本体から前記第1方向の一方側に突出する一対の第1突起と、前記芯材本体から前記第1方向の他方側に突出する一対の第2突起とを含み、
前記一対の第1突起のそれぞれの前記第1長さに対する前記第2長さの比率は、前記一対の第2突起のそれぞれの前記第1長さに対する前記第2長さの比率に等しい、本発明1ないし5のいずれかに記載の弾性クローラ用芯材。
【0079】
[本発明7]
前記一対の第1突起の間の前記第2方向の距離は、前記一対の第2突起の間の前記第2方向の距離よりも大きい、本発明6に記載の弾性クローラ用芯材。
【0080】
[本発明8]
前記内周面及び前記外周面は、それぞれ、凹凸部分を含む、本発明1ないし7のいずれかに記載の弾性クローラ用芯材。
【0081】
[本発明9]
本発明1ないし8のいずれかに記載の弾性クローラ用芯材と、前記クローラ本体とを含む、弾性クローラ。