(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165907
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】獣害対策用防護設備の維持管理システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/18 20060101AFI20241121BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20241121BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20241121BHJP
G16Y 10/05 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
G08B21/18
G08C15/00 D
G08B25/08 A
G16Y10/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082493
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】山端 直人
【テーマコード(参考)】
2F073
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2F073AA11
2F073AB01
2F073BB06
2F073BB07
2F073CC02
2F073CC03
2F073CC08
2F073CD01
2F073CD11
2F073DD07
2F073FH01
2F073GG01
2F073GG07
2F073GG09
5C086AA34
5C086CA11
5C086CA24
5C086CA26
5C086CB35
5C086DA10
5C086DA14
5C086FA17
5C087AA03
5C087AA09
5C087BB15
5C087BB20
5C087BB74
5C087CC05
5C087CC08
5C087DD08
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自治体(集落)に、農作物の獣害対策用として張り巡らされているフェンス(柵)やネット、その他の防護設備をタイミング良く点検し、維持管理するシステムを提供する。
【解決手段】維持管理システムは、防護設備Fに異常事態の検知センサーとして配線された光ファイバーケーブル17と、防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの付随的な異常事態(イベント)を検知するために、そのケーブルの基端部に設置されたOTDR方式のIOT測定装置Aと、その測定装置からケーブルの異常事態検知出力信号を受けた時、その異常事態の発生個所を表示するクラウドサーバWと、を備え、防護設備の管理ユーザーがその使用する管理ユーザー端末Mからインターネットを介しクラウドサーバへアクセスして、その表示されている異常事態の発生個所を閲覧し確認の上、設置現場にある防護設備の異常事態発生個所へ直行し、その異常事態の修繕を行う。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に設置されたOTDR方式のIOT測定装置と、
そのIOT測定装置からモバイル通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けた時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場へ出向して、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項2】
携帯電話サービスのエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に設置されたOTDR方式のIOT測定装置と、
上記IOT測定装置を子機として、その子機から無線通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けるべく、携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機と、
その親機からモバイル通信により、同じく光ファイバーケーブルにおける上記異常事態の検知出力信号を受けた時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場へ出向して、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項3】
OTDR方式のIOT測定装置は光ファイバーケーブルの基端部に設置された据え付け固定型として、
その上記基端部から光ファイバーケーブル内へ入射した測定光パルスが反射又は散乱された戻り光の受光レベルを測定するOTDR測定部と、GPS取得部とを備え、
そのOTDR測定部による定期的な測定の結果を、光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとして、
その何れかのデータを上記IOT測定装置からモバイル通信によりクラウドサーバへ、又はIOT測定装置から無線通信により親機を経て、その親機から更にモバイル通信によりクラウドサーバへ、何れも送信するように定めたことを特徴とする請求項1又は2記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項4】
クラウドサーバの測定結果表示部に表示される光ファイバーケーブルの異常事態を、IOT測定装置のOTDR測定部により測定された光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表わす波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとし、
その上記異常事態の発生個所をクラウドサーバの地図表示部へ表示する手段として、防護設備に取り付けられた光ファイバーケーブルの配線図又はその光ファイバーケーブルの基端部に位置するIOT測定装置を、栽培地域の地図上に描画すると共に、
上記配線図における異常事態の発生個所又は異常事態の発生しているIOT測定装置に、その異常事態が発生していない着色カラーのピンと識別できる着色カラーのピンをプロットしておき、
その異常事態が発生している着色カラーのピンを、防護設備の管理ユーザー端末からクリックすれば、その異常事態の内容と発生個所を上記測定結果表示部における波形データ又はイベントリストデータの閲覧によって確認することができるように定めたことを特徴とする請求項1又は2記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項5】
光ファイバーケーブルを防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部又は/及びその地面とほぼ同等高さ位置にある下端部への配線状態として、その光ファイバーケーブルの延在する距離方向に沿って列設すると共に、
上記光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、プッシュ・プル方式の光コネクターによる着脱・交換自在として、しかも全体的な直列状態に接続一本化したことを特徴とする請求項1又は2記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項6】
防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部と、その地面とのほぼ同等高さ位置にある下端部との2列に配線された光ファイバーケーブルを、その先端部において連続する滑らかな円弧状にUターンさせたことを特徴とする請求項5記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農作物や果実などを栽培している各地域(集落)に、獣害対策用として張り巡らされているフェンス(柵)やネット、その他の防護設備をタイミング良く点検し、維持管理するために有用なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自治体の市区町村ではその各地域(集落)にある農作物や果実、樹木の新芽などが、鹿や猪、猿、熊、その他の野生動物から被害を受けないための対策として、田畑や果樹園、山林などの周囲にフェンス(柵)やネット、その他の防護設備を張り巡らすことが行われており、その防護設備を住民の自治協議会に属する地域(集落)毎に管理し、その地域住民の出会い作業によって、防護設備を点検している通例である。
【0003】
ところが、上記防護設備は地域住民の居住地から遠く離れた山間部にあり、また狩猟者や農林業に従事する青年男子が減少している最近では、その防護設備を定期的にパトロールして、保守・点検・修繕することがますます困難になっている。
【0004】
殊更、上記防護設備の突破や損傷、倒壊、歪み変形などの異常事態とその発生個所を、居住地の遠方からタイミング良く知る術はなく、その現場に張り巡らされた長い距離の全体を見て廻らなければわからないため、その管理には多大の時間と労力を要し、徒労に終わることも稀ではない結果、その異常事態のままに長時間放置されていることが殆どであり、このようなことは野生動物による獣害のみならず、台風などの自然現象による防護設備の倒壊やその他の異常事態についても同様に言える。
【0005】
この点、特許文献1には建物やその敷地を監視領域として、その監視領域である敷地内への不法侵入を検知する侵入検知システムが開示されており、これは光ファイバーを検知センサーとして利用している点で、本発明と類似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された「侵入検知システム」では、監視領域である建物やその敷地自体を保守・点検することがそもそも求められておらず、その破損の発生事態が問題視されていない結果、これを修繕する必要性の説明もない。
【0008】
本発明において利用されている光ファイバーケーブルは、上記野生動物が防護設備の内部へ侵入することを検知するためのものではなく、野生動物が侵入を試みた行動の結果として、その防護設備に発生した破損や歪みなどを初め、台風などの自然現象により発生した防護設備の倒壊なども、遠隔地から定期的に又は随時に自ずと点検して、必要な修繕や新品との取り替えなどをタイミング良く行うという維持管理に資するものであるため、特許文献1に記載の発明とは目的が異なり、その特許文献1に記載の発明を獣害対策用防護設備にそのまま適用したとしても、本発明のような維持管理システムを成立させることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では獣害対策用防護設備の維持管理システムとして、携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
【0010】
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
【0011】
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に設置されたOTDR方式のIOT測定装置と、
【0012】
そのIOT測定装置からモバイル通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けた時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
【0013】
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
【0014】
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
【0015】
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場へ出向して、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2では携帯電話サービスのエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
【0017】
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
【0018】
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に設置されたOTDR方式のIOT測定装置と、
【0019】
上記IOT測定装置を子機として、その子機から無線通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けるべく、携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機と、
【0020】
その親機からモバイル通信により、同じく光ファイバーケーブルにおける上記異常事態の検知出力信号を受けた時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
【0021】
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
【0022】
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
【0023】
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場へ出向して、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする。
【0024】
請求項3ではOTDR方式のIOT測定装置は光ファイバーケーブルの基端部に設置された据え付け固定型として、
【0025】
その上記基端部から光ファイバーケーブル内へ入射した測定光パルスが反射又は散乱された戻り光の受光レベルを測定するOTDR測定部と、GPS取得部とを備え、
【0026】
そのOTDR測定部による定期的な測定の結果を、光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとして、
【0027】
その何れかのデータを上記IOT測定装置からモバイル通信によりクラウドサーバへ、又はIOT測定装置から無線通信により親機を経て、その親機から更にモバイル通信によりクラウドサーバへ、何れも送信するように定めたことを特徴とする。
【0028】
請求項4ではクラウドサーバの測定結果表示部に表示される光ファイバーケーブルの異常事態を、IOT測定装置のOTDR測定部により測定された光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表わす波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとし、
【0029】
その上記異常事態の発生個所をクラウドサーバの地図表示部へ表示する手段として、防護設備に取り付けられた光ファイバーケーブルの配線図又はその光ファイバーケーブルの基端部に位置するIOT測定装置を、栽培地域の地図上に描画すると共に、
【0030】
上記配線図における異常事態の発生個所又は異常事態の発生しているIOT測定装置に、その異常事態が発生していない着色カラーのピンと識別できる着色カラーのピンをプロットしておき、
【0031】
その異常事態が発生している着色カラーのピンを、防護設備の管理ユーザー端末からクリックすれば、その異常事態の内容と発生個所を上記測定結果表示部における波形データ又はイベントリストデータの閲覧によって確認することができるように定めたことを特徴とする。
【0032】
請求項5では光ファイバーケーブルを防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部又は/及びその地面とほぼ同等高さ位置にある下端部への配線状態として、その光ファイバーケーブルの延在する距離方向に沿って列設すると共に、
【0033】
上記光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、プッシュ・プル方式の光コネクターによる着脱・交換自在として、しかも全体的な直列状態に接続一本化したことを特徴とする。
【0034】
更に、請求項6では防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部と、その地面とのほぼ同等高さ位置にある下端部との2列に配線された光ファイバーケーブルを、その先端部において連続する滑らかな円弧状にUターンさせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
請求項1の構成によれば、獣害対策用防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへアクセスして、IOT測定装置のOTDR測定部による光ファイバーケーブルの定期的な測定結果を、そのクラウドサーバの測定結果表示部と地図表示部から閲覧することにより、その光ファイバーケーブルのイベント(障害/異常事態)とその発生個所(障害点)を確認することができるようになっている。
【0036】
また、上記OTDR測定部によって光ファイバーケーブルにおけるイベントの発生が検知された場合には、その検知出力信号を受信したクラウドサーバから管理ユーザー端末へ、異常事態であることの通報が配信されるようになってもいる。
【0037】
そのため、上記防護設備の管理ユーザーとしては従来のように、その防護設備の設置現場へ定期的に出向して、これの全体を見て廻ることにより、破損や歪み、倒壊、その他の異常事態が発生しているか否かを点検(探索)する必要がなく、その設置現場から遠く離れた管理ユーザーの居住地において、上記防護設備の異常事態とその発生個所を知ることができ、これを予め確認した上で、設置現場にある防護設備の異常事態が発生している個所へ直行し、その異常事態の修繕をワンポイント的に早く行えるのであり、その防護設備における維持管理の省力化に役立ち、農作物や果実などを獣害から防護することができる。
【0038】
請求項2の構成によれば、携帯電話サービスのエリヤ外にある奥深い山間部の栽培地域でも、請求項1の上記効果を得られるのであり、その防護設備の維持管理を省力的に行うことができる。
【0039】
上記請求項1、2の何れにあっても、獣害対策用防護設備の異常事態検知センサーとして機能する光ファイバーケーブルが、その防護設備自身の距離方向に沿って全体的な連続の配線状態に取り付け一体化されているため、OTDR方式のIOT測定装置により光ファイバーケーブルを測定した結果から、その光ファイバーケーブルのイベントを検知することができれば、そのイベントの発生は防護設備自体の破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態に起因する付随的なものと合理的に判定することができ、しかもそのイベントの発生個所から上記防護設備における異常事態の発生個所を特定することもできるため、上記効果を得られるのである。
【0040】
その場合、請求項3の構成を採用するならば、上記防護設備の異常事態を検知するセンサーとなる光ファイバーケーブルの基端部に、OTDR方式のIOT測定装置が据え付け固定されており、そのIOT測定装置のOTDR測定部による光ファイバーケーブルの定期的な測定結果が、OTDR波形データ又はイベントリストデータとしてモバイル通信により、クラウドサーバへ送信されるようになっているため、防護設備の管理ユーザーにとってはそのデータから異常事態の発生個所を確認しやすい効果がある。
【0041】
また、請求項4の構成を採用するならば、クラウドサーバの地図表示部に表示された識別可能なピンの着色カラーに基づいて、上記異常事態の発生個所をますます容易・正確に把握することができ、防護設備をタイミング良く修繕し得る効果がある。
【0042】
更に、請求項5の構成を採用するならば、上記防護設備の野生動物による破損や歪みなどのほか、強風を受けた倒木による光ファイバーケーブルのイベント(障害/異常事態)を検知(測定)しやすく、その光ファイバーケーブルが断線や折れ曲がり、押し潰しなどの異常状態を発生した場合、その異常事態が発生した一定長さのケーブル単位体だけを新品と取り替えて、残余の正常な状態にあるケーブル単位体と光コネクターを介して接続すれば足り、光ファイバーケーブルにおける全体の煩雑な修繕作業を省略できる効果がある。
【0043】
その場合、請求項6の構成を採用するならば、光ファイバーケーブルを上下2列に配線しつつも、これと接続使用するOTDR測定部を備えたIOT測定装置は一基あれば足り、必要な構成の簡素化に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る獣害対策用防護設備(フェンス)の設置状態を示す正面図である。
【
図3】忍び返しを張り出し形成したフェンスの断面模式図である。
【
図5】フェンスユニット(フェンス単位体)の正面図である。
【
図7】光ファイバーケーブル単位体の正面図である。
【
図9(a)】フェンスに対する光ファイバーケーブルの取付方法を示す断面模式図である。
【
図9(b)】
図9(a)と別な取付方法を示す断面模式図である。
【
図13】フェンスの支柱に対する光コネクターの縛り付け状態を示す正面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図15】IOT測定装置のOTDR測定部による光ファイバーケーブルのイベント検知方式を示す作用説明図である。
【
図16(a)】光ファイバーケーブルの測定結果における波形データの表示を説明する正面図である。
【
図16(b)】光ファイバーケーブルの測定結果におけるイベントリストデータの表示を説明する正面図である。
【
図17】
図14に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
【
図18】クラウドサーバの地図表示部におけるイベント発生個所の表示方法を示す説明図である。
【
図19】クラウドサーバの地図表示部におけるイベント発生個所の別な表示方法を示す説明図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図21】
図20に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述する。
図1~19はその第1実施形態に係る獣害対策用防護設備の維持管理システムを示しており、(F)は携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域(市区町村の集落)毎に、例えばその田畑の周囲に沿って張り巡らされた防護設備としてのフェンス(柵)であって、多数の支柱(11)と網面体(12)とを備えている。
【0046】
その支柱(11)は金属パイプや棒杭などから成り、地面(GL)に打ち込み固定されている。網面体(12)は金網やワイヤーメッシュ、樹脂ネットなどから成り、その支柱(11)と連接一体化された状態にある。その網面体(12)の網目としては、約10cm以下に小さく形成することが好ましい。
【0047】
また、上記フェンス(防護設備)(F)の高さ(H)は例えば約2.0~2.5mとして、鹿の侵入を防ぐことができるようになっており、その支柱(11)同士の隣り合う間隔ピッチ(L1)は例えば約2mとして、網面体(12)を安定良く強固に支持している。
【0048】
その場合、
図3、4に例示する如く、フェンス(F)の上端部から約45cmだけ斜め外向きに忍び返し(13)を張り出すことによって、鹿の飛び越しを防止したり、同じくフェンス(F)の下端部から約50cmだけ外向き水平に忍び返し(14)を張り出して、これを地面(GL)へ埋め込むと共に、その忍び返し(14)の張り出し先端部をアンカーピンやペグ(15)などにより、地面(GL)へ固定して、猪による穴堀りやフェンス(F)の持ち上げなどを防止したりすることが望ましい。
【0049】
更に、
図3、4から明白なように、上記フェンス(F)における地面(GL)から高さ:約20cmまでの地際には、金属パイプ(16)を水平に固定横架させることにより、猪のくぐり抜けや突破などを防止すべく、その網面体(12)を増強することが好ましい。この高さ位置にある金属パイプ(16)は草刈り作業の境界線として使うことができ、これよりも上側に後述の光ファイバーケーブルを配線する一方、下側に草刈り刃(図示省略)を挿入して草刈り作業することにより、その草刈り作業に起因して光ファイバーケーブルが断線してしまうおそれを予防できる利点もある。
【0050】
特に、上記フェンス(F)はその
図5、6に抽出して示す高さ(H)と、支柱(11)の間隔ピッチ(L1)を備えた一定単位の矩形なフェンスユニット(Fu)として、その多数のフェンスユニット(Fu)を例えば隣り合う支柱(11)同士の着脱可能なクランプ金具(図示省略)などによる連接構造に組み立てることにより、フェンス(F)に後述の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態が発生した場合、そのフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)毎に新品のそれと取り替えることもできるように設定しておくことが好ましい。
【0051】
尚、獣害対策用防護設備としてのフェンス(F)を田畑の周囲(区画の境界部)に張り巡らす旨として説明したが、そのフェンス(F)を全体的な閉鎖回路となる設置状態に限定する趣旨ではなく、フェンス(F)としてはその切り離し端部や出入り口がある平面視の直線や曲線などに配列設置されることもあり得る。
【0052】
何れにしても、上記防護設備としてのフェンス(F)には鹿や猪、熊、その他の野生動物の摂餌行動による破損や歪み変形などを初め、強風を受けたり、蔓性植物が絡み付いたりして起きる倒木や、経年劣化による損壊、その他の異常事態を検知すべく、そのセンサーとして機能する光ファイバーケーブル(17)が、そのフェンス(F)の延在する距離(長さ/道程)方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化されている。
【0053】
図1はその光ファイバーケーブル(17)における配線状態の一例を示しており、上記フェンス(防護設備)(F)における地面(GL)からの一定な高さ位置(先に例示した約2.0~2.5m)にある上端部と、その地面(GL)とほぼ同等の高さ位置にある下端部との2列に配線されている。その上下2列の配線によって、鹿と猪の侵入行動に対処し得るようになっている。
【0054】
その場合、光ファイバーケーブル(17)を
図7に示すような長さ(L2)が一定(例えば約10m)な光ファイバーケーブル単位体(17u)の複数本から、プッシュ・プル方式やネジ締め方式、バヨネット締結式などの各種光コネクター(C)による着脱・交換自在に接続一本化することが望ましい。その短いケーブル単位体(17u)毎に新品との取り替えを行えるからである。
【0055】
図8はそのプッシュ・プル方式の光コネクター(C)を例示しており、(18)は光アダプター(SCアダプター)(19)を介して抜き差し自在に差し込み接続されたSCコネクターであって、そのフェルール(20)に光ファイバーの切り離し端部が固定されている。(21)は光アダプター(19)に内蔵された割スリーブであり、これによってフェルール(20)を同芯状態に突き合わせ固定するようになっている。
【0056】
特に、上記野生動物の侵入行動や倒木などによる強大な引張り力が光ファイバーケーブル(17)に突然作用した時、自ずと切り離される(引き抜かれる)こととなるプッシュ・プル方式の光コネクター(C)(18)を用いて、その光ファイバーケーブル(17)のケーブル単位体(17u)同士を接続配線しておくことにより、意図的な断線状態を起生させ、そのランダムに破損した光ファイバーケーブル(17)の復旧(修繕)作業に必要となる多大な時間と労力並びに経費を省略できるように定めることが好ましい。
【0057】
また、上記フェンス(F)の上端部と下端部へ2列に配線した光ファイバーケーブル(17)を、
図1に併記する如く、その距離方向へ延びる先端部(終端部)において、光コネクター(C)を介して連続する滑らかな円弧状にUターン(弯曲)させることも好適である。
【0058】
そうすれば、そのUターンされた上端部にある光コネクター(C)と、同じく下端部にある光コネクター(C)との間隔距離(D)は、上記フェンス(F)の高さ(H)とほぼ同じ寸法(先に例示した約2.0~2.5m)として、光ファイバーケーブル(17)におけるケーブル単位体(17u)の長さ(L2)(先に例示した約10m)よりも小さく(短く)なるため、後述するIOT測定装置のOTDR測定部によって光ファイバーケーブル(17)の損失分布特性や測定光パルスの伝送不能な異常事態/障害(以下、イベントということもある)を測定(検知)する際、その測定(検知)を光コネクター(C)による接続部も支障なく行えることが相俟って、上記Uターン部分を光ファイバーケーブル(17)における上下分かれ目(分岐点)の位置であると特定できる利点がある。
【0059】
尚、フェンス(防護設備)(F)における上端部と下端部との2列に配線された状態を説明したが、そのフェンス(F)を設置する栽培地域の現場状況次第では、上記フェンス(F)の上端部における光ファイバーケーブル(17)の配線を省略し、その下端部だけに配線しても良く、また上端部と下端部に加えて、その上下相互間における適当な中途高さ位置(例えば地面から約50cmまでの高さ位置)にも、光ファイバーケーブル(17)を配線することができる。上記した下端部の配線に代えて又は加えて、地面(GL)から一定深さ(例えば約5~10cm)までの地中へ、埋込み配線状態に敷設しても良い。
【0060】
更に、光ファイバーケーブル(17)を上記フェンス(防護設備)(F)へ取り付け一体化する方法としては、そのフェンス(F)の網面体(12)へ光ファイバーケーブル(17)を
図9(a)のように編み込み固定する方法や、
図9(b)のようにフェンス(F)の支柱(11)と網面体(12)へ、結束線材や結束バンドなどの適当な結束具(22)を介して縛り付け固定する方法などを採用することができる。
【0061】
その何れの方法を採用する場合でも、フェンス(F)に配線された光ファイバーケーブル(17)が、そのフェンス(F)から脱落しないことは勿論のこと、強風を受けた倒木や野生動物の強い能動勢力によって、特に上下方向へ過度に大きく弯曲変形されず、常時直線状態を安定良く維持できるように、
図10~12のような光ファイバーケーブル(17)の通し込み可能なケーブルホルダー(23)(24)を、フェンス(F)の支柱(11)又は/及び網面体(12)へ組み付け固定して、そのケーブルホルダー(23)(24)へ光ファイバーケーブル(17)を通し込んだり、またその通し込む方法に代えて又は加えて、
図2のように上記フェンス(F)の下端部に配線された光ファイバーケーブル(17)が、猪によって持ち上げられないようペグやアンカーピン(25)を地面(GL)へ打ち込み固定したり、更に上記光コネクター(C)(18)の就中光アダプター(19)を
図13のように、フェンス(F)の支柱(11)や網面体(12)へ上記結束具(22)によってクロス状態などに縛り付け固定したりしておくことが望ましい。
【0062】
(26)は
図10、11に例示したケーブルホルダー(23)のケーブル受け入れ半筒、(27)はそのフェンス(F)の支柱(11)に抱き付く包囲バンド、(28)はその包囲バンド(27)とケーブル受け入れ半筒(26)との張り出しフランジ(27y)(26x)同士をフェンス(F)の網面体(12)へ挟み付け固定する複数のネジ締結具、(29)は
図12に例示した別なケーブルホルダー(24)のケーブル受け入れ凹溝、(30)はそのフェンス(F)の網面体(12)へ弾圧的に喰い付き固定される複数の係止爪であり、上記凹溝(29)に受け入れた光ファイバーケーブル(17)を網面体(12)へ押し付けるようになっている。
【0063】
本発明の第1実施形態に係る上記フェンス(防護設備)(F)の維持管理システムは、そのフェンス(F)の破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態に起因する上記光ファイバーケーブル(17)の断線や過度な屈曲(折れ曲がり)、押し潰し、その他の付随的なイベント(障害/測定光パルスの伝送不能な異常事態)を検知するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)方式のIOT測定装置(A)と、その測定装置(A)に4Gや5G、LTEなどのモバイル回線を介して接続されたクラウドサーバ(ウェブサーバ)(W)と、そのクラウドサーバ(W)にインターネットを介して接続された管理ユーザー端末(M)とから構成されており、上記フェンス(F)の管理ユーザーがその設置現場にあるフェンス(F)の異常事態を直に見て廻り点検(探索)する必要なく、その維持管理を軽労力でのタイミング良く行えるようになっている。
【0064】
先ず、OTDR方式のIOT測定装置(A)は
図14のブロック図から明白なように、制御部(31)やその電源となるバッテリー(32)、OTDR測定部(33)、GPS取得部(34)、クラウドサーバ(W)へ無線通信するモバイル回線部(35)並びに上記バッテリー(32)の充電用ソーラーパネル(36)を備えており、
図1に示唆する如く、上記フェンス(F)の一端部や出入り口付近などに設置された据え付け固定型として、そのOTDR測定部(33)が上記光ファイバーケーブル(17)における配線の一端部(基端部/始端部)に接続されている。
【0065】
そして、そのIOT測定装置(A)のOTDR測定部(33)は自ら測定光パルスを光ファイバーケーブル(17)へ入射し、その光ファイバーケーブル(17)から戻ってくる反射戻り光(後方散乱光)の強さの時間的な変化を測定することにより、光ファイバーケーブル(17)に存在する損失分布特性やイベントの発生個所(障害点)を検知する。
【0066】
つまり、
図15を参照して言えば、OTDR測定部(33)から光ファイバーケーブル(17)に入射された測定光パルス(P1)が、イベント(障害)(X)に到達すると、その位置から後方散乱光(P2)が発生するため、イベント(X)を検知することができるのみならず、そのイベント(X)までの判明(測定)した距離(Y)をイベント(X)の発生個所(障害点)として特定することもできることになる。
【0067】
上記OTDR測定部(33)による測定(検知)は定期的(定時)(例えば1日に少なくとも1回や毎日朝・昼・夜の3回)に行われ、その検知出力信号に相当する測定結果が
図16(a)に例示するような光ファイバーケーブル(17)の距離と損失レベルとの2軸で表す波形データか、又は別な
図16(b)に例示するような同じくケーブル(17)の距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとして知得され、その何れかのデータが
図17の動作シーケンス図から明白なように、IOT測定装置(A)のモバイル回線部(35)からクラウドサーバ(W)へ無線送信されるようになっている。
【0068】
その場合、上記イベント(X)の発生個所(障害点)を波形データやイベントリストデータから読み取り難いならば、そのイベント(X)の位置まで測定した距離(Y)の数値を、そのデータ形式に代わるデジタル表示として閲覧させることが好ましい。そうすれば、そのイベント(X)の発生個所(障害点)を一目瞭然に知得することができる。
【0069】
上記OTDR測定部(33)により光ファイバーケーブル(17)の測定(検知)を行う定期的な周期の設定は、フェンス(F)における設置現場の状況や野生動物の出没頻度などを考慮して、クラウドサーバ(W)上から遠隔的に変更調整することができる。
【0070】
尚、IOT測定装置(A)のGPS取得部(34)によって位置情報(GPS)も取得されるようになっているため、そのOTDR測定部(33)による上記測定結果(光ファイバーケーブルにおけるイベントの検知出力信号)が、自治体(市区町村)の如何なる栽培地域にあるどのフェンス(F)のIOT測定装置(A)から発信されているかを、自ずと特定できることは言うまでもない。
【0071】
上記クラウドサーバ(W)は
図14のブロック図に示すような制御部(37)と通信部(38)並びにデータベース(39)のほかに、測定結果表示部(40)と地図表示部(41)も備えており、上記IOT測定装置(A)からOTDR測定部(33)による光ファイバーケーブル(17)の定期的な測定結果(イベントの検知出力信号)を受信した時には、これをデータベース(39)に記憶(蓄積)すると共に、その測定結果としての上記波形データ又はイベントリストデータを測定結果表示部(40)に表示し、更に上記光ファイバーケーブル(17)におけるイベント(X)の発生個所(障害点)を地図表示部(41)に表示する。
【0072】
その地図表示部(41)への表示手段としては
図18に例示する如く、各栽培地域の地図上へフェンス(F)に取り付けられた光ファイバーケーブル(17)の配線図(42)を描画して、その配線図(42)における上記イベント(X)の発生個所(障害点)に、着色カラーが好ましくは赤色のピン(43)又は×印のマークをプロットしておく一方、イベント(X)の発生していない正常な状態にある配線図(42)には、その赤色と識別できる別の適当な着色カラー(例えば青色)のピン(44)をプロットしておく。しかも、その正常な状態を示すピン(44)の着色カラーは、市区町村の地域(集落)毎に異なるものとして、識別できるように定めることが望ましい。
【0073】
そして、上記クラウドサーバ(W)の地図表示部(41)におけるイベント(X)の発生個所にプロットされた赤色のピン(43)又は×印のマークを、フェンス(F)の管理ユーザーがその使用する管理ユーザー端末(M)からクリックすれば、そのイベント(X)の内容と発生個所を同じくクラウドサーバ(W)の測定結果表示部(40)に表示された測定結果の波形データ又はイベントリストデータの閲覧により、具体的に確認することができるように定めることが好ましい。
【0074】
但し、別な
図19に例示する如く、上記光ファイバーケーブル(17)の配線図(42)に代えて、OTDR測定部(33)が光ファイバーケーブル(17)の基端部に接続されたIOT測定装置(A)を、各栽培地域の地図上に描画して、そのイベント(X)の発生しているIOT測定装置(A)に上記赤色のピン(43)又は×印のマークをプロットしておく一方、そのイベント(X)が発生していない正常な状態にあるIOT測定装置(A)に、その赤色と識別できる適当な着色カラーのピン(44)をプロットしておくことにより、上記と同様に管理ユーザー端末(M)をクリックすれば表示されるグラフ上の数値から、そのイベント(X)の発生個所(障害点)を閲覧して、これが光ファイバーケーブル(17)の基端部から約250mの位置にあることを確認できるように定めても良い。
【0075】
更に、上記管理ユーザー端末(M)は自治体(市区町村)の獣害対策課や管理事務所、栽培地域毎の自治会、管理委託業者などに設置されたパソコンや、これらのスタッフが所持するスマートフォン、タブレット端末、その他のモバイル通信端末として、
図14のブロック図に示すような制御部(45)と通信部(46)並びに表示部(47)を備えており、上記フェンス(F)の管理ユーザー(上記スタッフである管理者や地域住民など)が、
図17の動作シーケンス図に示す如く、その使用する端末(M)からクラウドサーバ(W)へアクセスして、上記IOT測定装置(A)のOTDR測定部(33)による光ファイバーケーブル(17)の定期的な測定結果(イベントの検知出力信号)を、そのクラウドサーバ(W)の上記測定結果表示部(40)と地図表示部(41)から閲覧することにより、その光ファイバーケーブル(17)のイベント(X)とその発生個所(障害点)を確認することができるようになっている。
【0076】
また、上記IOT測定装置(A)のOTDR測定部(33)によって光ファイバーケーブル(17)におけるイベント(X)(障害/異常事態)の発生が検知された場合には、その検知出力信号(上記測定結果)を受けたクラウドサーバ(W)の通信部(38)から
図17のように、管理ユーザー端末(M)へメールやLINEなどにより異常事態であることの通報(アラート)を配信するようになってもいる。そのため、上記フェンス(F)の管理ユーザーとしてはその異常通報を受けた随時に、クラウドサーバ(W)の測定結果表示部(40)と地図表示部(41)をタイミング良く閲覧して、上記イベント(X)の内容と発生個所を具体的に確認することができる。
【0077】
そのため、フェンス(F)の管理ユーザーとしては従来のように、そのフェンス(F)の設置現場へ定期的に出向して、これの全体を見て廻ることにより、破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態が発生しているか否かを点検(探索)する必要がなく、その設置現場から遠く離れた管理ユーザーの居住地において、上記フェンス(F)の異常事態とその発生個所を知ることができ、その予め確認した上で、設置現場にあるフェンス(F)の異常事態が発生している個所へ、言わばピンポイント的に直行して、その異常事態の修繕を容易に早く行えるのであり、フェンス(F)における維持管理の省力化に役立つ。
【0078】
その場合、上記フェンス(F)を多数のフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)からクランプ金具などによって、着脱可能な連接状態に組み立てると共に、そのフェンス(F)に取り付け配線する光ファイバーケーブル(17)を、これも複数本の光ファイバーケーブル単位体(17u)から光コネクター(C)によって、着脱・交換自在に接続一本化するならば、上記フェンス(F)とその異常事態の検知センサーである光ファイバーケーブル(17)とのランダムな修繕を行う代わりに、そのフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)毎や光ファイバーケーブル単位体(17u)毎の部分的に新品と取り替えることも可能となるため、煩雑な上記修繕作業を行う必要がなく、その省力化にますます優れる。
【0079】
次に、
図20、21は本発明の第2実施形態に係る獣害対策用防護設備の維持管理システムを示しており、その構成上
図1~19の第1実施形態と異なる点は下記のとおりである。
【0080】
即ち、その第2実施形態では上記防護設備としてのフェンス(F)が、携帯電話サービスのエリヤ外にある栽培地域(市区町村の集落など)毎に、第1実施形態のそれと同様に張り巡らされている。そのフェンス(F)の物理的な構造やこれに対する光ファイバーケーブル(17)の取付方法並びに配線状態などについては、上記第1実施形態と同一であって良い。
【0081】
その光ファイバーケーブル(17)の上記イベント(X)(障害/測定光パルスの伝送不能な異常事態)を検知するOTDR方式のIOT測定装置(A)は、第2実施形態の場合上記第1実施形態のモバイル回線部(35)に代わる無線送信部(48)を備えた据え付け固定型の子機として、やはりフェンス(F)の端部位置や出入り口付近などに設置されており、そのOTDR測定部(33)による光ファイバーケーブル(17)の上記測定結果(イベントの検知出力信号)を、その無線通信部(48)から携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機(基地局)(B)へ、無線送信し得るようになっている。
【0082】
その親機(基地局)(B)は上記子機(IOT測定装置)(A)からの無線通信を受信する無線通信部(49)のほかに、制御部(50)とその太陽光により充電されるバッテリー(電源)(51)並びに子機(A)から受信した光ファイバーケーブル(17)の上記測定結果(イベントの検知出力信号)を、クラウドサーバ(W)へ送信するためのモバイル回線部(52)も備えている。(53)はソーラーパネルである。
【0083】
その際、親機(B)は複数の子機(A)から上記測定結果(イベントの検知出力信号)の無線送信を受けることができるようになっている。各子機(A)は位置情報(GPS)の取得機能を有するため、その複数の設置場所を識別できることは言うまでもない。また、上記子機(A)から親機(B)への無線通信としては、山間部での遠距離用にふさわしい150MHZのLPWA通信方式を採用することが好ましい。
【0084】
尚、第2実施形態におけるクラウドサーバ(W)と管理ユーザー端末(M)の構成やその
図21に示す動作シーケンスなどについては、上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その
図20、21に
図1~19と同じ符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0085】
上記第1、2実施形態の何れにあっても、獣害対策用防護設備であるフェンス(F)の異常事態を検知するセンサーとしての光ファイバーケーブル(17)が、そのフェンス(F)自体の延在する距離方向に沿って全体的に連続する配線状態に取り付け一体化されているため、上記IOT測定装置(子機)(A)のOTDR測定部(33)により光ファイバーケーブル(17)を測定した結果の波形データ又はイベントリストデータから、その光ファイバーケーブル(17)のイベント(X)(障害/異常事態)を検知することができれば、そのイベント(X)の発生はフェンス(F)自体の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態に起因する付随的なものと合理的にみなすことができ、しかもそのイベント(X)の発生個所(障害点)から上記フェンス(F)における異常事態の発生個所を特定することもできる。
【0086】
その結果、
図17、21の動作シーケンス図から明白なように、上記フェンス(F)の管理ユーザーとしてはその管理ユーザー端末(M)を用いて、クラウドサーバ(W)の測定結果表示部(40)と地図表示部(41)を閲覧することにより、フェンス(F)における異常事態の発生個所を確認の上、その設置現場にあるフェンス(F)の異常事態発生個所へ直行して、その異常事態をピンポイント的に早く修繕することができ、フェンス(F)の全体を定期的にパトロールして、その異常事態を調査(探索)する必要はない。そのための多大な労力や時間などを省略し乍らも、農作物や果実などを獣害から防護できるのである。
【0087】
殊更、光ファイバーケーブル(17)の断線や過度な屈曲(折れ曲がり)、押し潰し、その他のイベント(X)(障害/異常事態)を前提として、フェンス(F)における破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知する方式ではなく、その光ファイバーケーブル(17)を
図7、8に例示したような複数本のケーブル単位体(17u)から、プッシュ・プル方式の光コネクター(SCコネクター)(C)(18)による着脱・交換自在に接続一本化しておき、その光ファイバーケーブル(17)に突然急激な強い引張り力が加わった時だけ、自ずと光コネクター(C)(18)から切り離されて(抜けて)、意図的な断線状態を起生することとなるように構成することが好ましい。
【0088】
そうすれば、フェンス(F)の距離方向に沿って長く連続する配線状態の光ファイバーケーブル(17)としては、そのイベント(X)の煩わしい修繕を行う必要がなく、イベント(X)が発生した異常なケーブル単位体(17u)だけを言わば部分的に新品と取り替えて、イベントが発生していない残余の正常なケーブル単位体(17u)と光コネクター(C)(18)を介して接続すれば足りるからである。
【0089】
その場合、光ファイバーケーブル(17)が上下方向へ過大に弯曲変形すると、その光アダプター(SCアダプター)(19)を介して接続状態にある光コネクター(SCコネクター)(C)(18)同士の抜き差し作用が、自ずと円滑には営まれないおそれがあるため、
図10~13に基づいて説示したように、その複数本のケーブル単位体(17u)から成る光ファイバーケーブル(17)の接続状態を、上記ケーブルホルダー(23)(24)や光アダプター(19)の結束具(22)などにより、常時安定な直線状態に保つことが望ましい。
【0090】
尚、図示実施形態の何れにあっても光ファイバーケーブル(17)におけるイベント(X)の発生個所(障害点)と対応位置するフェンス(F)の異常事態を修繕又は新品と取り替え作業すべく、その異常事態の発生個所をフェンス(F)の設置現場において早く位置確認しやすくするために、例えばフェンス(F)の就中支柱(11)や光ファイバーケーブル(17)の就中光コネクター(C)における一定な間隔距離(例えば50mや200m)を保つ毎に、番号や記号、着色カラー、その他の目印(図示省略)を直接又は間接的に付与しておくことが好ましい。
【0091】
そうすれば、フェンス(F)における管理ユーザーの誰もがその管理上共有する目印の位置を基準として、そこからフェンス(F)自体に発生している異常事態の位置まで、僅かな矩距離だけを見て歩けば足り、フェンス(F)の長くなればなる程その時間と労力などの節減に役立つ。
【符号の説明】
【0092】
(11)・・・・・・・・・支柱
(12)・・・・・・・・・網面体
(17)・・・・・・・・・光ファイバーケーブル
(17u)・・・・・・・・ケーブル単位体
(18)・・・・・・・・・SCコネクター
(19)・・・・・・・・・光アダプター
(23)(24)・・・・・ケーブルホルダー
(33)・・・・・・・・・OTDR測定部
(34)・・・・・・・・・GPS取得部
(40)・・・・・・・・・測定結果表示部
(41)・・・・・・・・・地図表示部
(42)・・・・・・・・・配線図
(43)(44)・・・・・ピン
(A)・・・・・・・・・・IOT測定装置(子機)
(B)・・・・・・・・・・親機
(C)・・・・・・・・・・光コネクター
(F)・・・・・・・・・・防護設備(フェンス)
(GL)・・・・・・・・・地面
(M)・・・・・・・・・・管理ユーザー端末
(X)・・・・・・・・・・イベント(障害/異常事態)
(Y)・・・・・・・・・・(イベント/障害点までの)距離
(W)・・・・・・・・・・クラウドサーバ