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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165908
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】大気開放弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/126 20060101AFI20241121BHJP
   F24H 9/16 20220101ALI20241121BHJP
【FI】
F16K31/126 A
F24H9/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082494
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393030534
【氏名又は名称】リンナイ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100163315
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】武部 重樹
(72)【発明者】
【氏名】三戸 翔太
【テーマコード(参考)】
3H056
【Fターム(参考)】
3H056AA02
3H056CA07
3H056CB03
3H056CB09
3H056CC02
3H056CD01
3H056GG05
(57)【要約】
【課題】給湯装置の水抜きに伴って大気開放弁が開弁した状態で、給湯通路の湯水の排出を促進する。
【解決手段】給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に接続された大気開放弁37の構造として、給湯通路との接続通路53が上方に向けて延設された開放室52と、給湯装置への給水の圧力が検圧通路18を介して導入される背圧室51とがダイヤフラム50で上下に仕切られている。開放室内に収容された弁体55は、上下動が可能にダイヤフラムで支持されていると共に、付勢部材56で背圧室側に向けて付勢されている。また、開放室の側面には排出通路58の一端が開口している。背圧室に導入された給水圧力で弁体が上方に移動して開放室の上面における接続通路の開口部を囲む弁座54に当接することで閉弁し、給水圧力の低下に伴い弁体が弁座から離間することで開弁する。そして、接続通路の内周面には、開放室側の端部を拡径することで段差Dが設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に接続されて、前記給湯装置への給水の圧力を受けることで閉弁すると共に、該給水の圧力が低下すると開弁して前記給湯通路の湯水を排出する大気開放弁において、
前記給湯通路に接続される接続通路が上方に向けて延設された開放室と、
前記開放室の下方にダイヤフラムで仕切られて設けられ、前記給水の圧力が検圧通路を介して導入される背圧室と、
前記開放室内に収容され、上下動が可能に前記ダイヤフラムで支持された弁体と、
前記弁体を前記背圧室側に向けて付勢する付勢部材と、
前記開放室の側面に一端が開口し、他端が大気に開放された排出通路と
を備え、
前記背圧室に導入された前記給水の圧力で前記ダイヤフラムが前記開放室側に押し込まれると、前記開放室の上面における前記接続通路の開口部を囲む弁座に、前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して当接することで閉弁すると共に、前記給水の圧力の低下に伴い、前記付勢部材の付勢力で前記弁体が前記弁座から離間することで開弁し、
前記接続通路の内周面には、前記開放室側の端部を拡径することで段差が設けられている
ことを特徴とする大気開放弁。
【請求項2】
請求項1に記載の大気開放弁において、
前記弁体には、前記弁座に当接する環状の当接部よりも内側に、複数のガイド片が上方に向かって立設されていると共に、
前記弁体の前記当接部が前記弁座から離間した開弁状態で、前記複数のガイド片の先端側は、前記接続通路における前記段差の前記給湯通路側である細径部の内側に挿入されており、
前記複数のガイド片が、前記細径部の内周面に沿って摺動することにより、前記弁体の上下動を案内する
ことを特徴とする大気開放弁。
【請求項3】
請求項1に記載の大気開放弁において、
前記弁体は、前記弁座に当接する環状の当接部よりも内側に、該当接部よりも上方に突出して設けられた凸部を有し、
前記凸部の外径は、前記接続通路における前記段差の前記給湯通路側である細径部の内径よりも大きくなっており、
前記弁体の前記当接部が前記弁座に当接した閉弁状態で、前記凸部は、前記接続通路における前記段差の前記開放室側である太径部の内側空間に収容されている
ことを特徴とする大気開放弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の大気開放弁において、
前記弁体は、前記弁座に当接する環状の当接部を有する当接台と、前記ダイヤフラムに貼付される貼付板とが、該当接台および該貼付板よりも小径な支柱を介して連結されており、該当接台と該貼付板との間に該支柱の全周にわたって環状空間を有し、
前記弁体の前記当接部が前記弁座から離間した開弁状態で、前記開放室の側面に開口した前記排出通路の一端と、前記弁体の前記環状空間とが面している
ことを特徴とする大気開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に接続されて、給湯装置への給水の圧力を受けることで閉弁すると共に、給水の圧力が低下すると開弁して給湯通路の湯水を排出する大気開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に大気開放弁を接続しておくことにより、断水時などに浴槽からの湯水の逆流を防止することが提案されている(例えば、特許文献1)。大気開放弁は、可撓性のダイヤフラムによって上方の開放室と下方の背圧室とに仕切られた構造が一般的であり、開放室から上方に向けて延設された接続通路が給湯通路に接続されると共に、給湯装置への給水の圧力が検圧通路を介して背圧室に導入されるようになっている。また、開放室内に収容された弁体は、上下動が可能にダイヤフラムで支持されていると共に、付勢部材によって背圧室側に向けて付勢されている。さらに、開放室の側面には排出通路の一端が開口しており、排出通路の他端は大気に開放されている。
【0003】
このような大気開放弁は、給湯装置に正常に給水されていれば、背圧室に導入された給水の圧力でダイヤフラムが開放室側に押し込まれ、開放室の上面における接続通路の開口部を囲む弁座に、弁体が付勢部材の付勢力に抗して当接することで閉弁している。一方、断水などで給水の圧力が低下すると、付勢部材の付勢力で弁体が弁座から離間して大気開放弁が開弁し、給湯通路の湯水が排出されることにより、浴槽から給湯装置に湯水が逆流するのを防ぐことができる。また、断水時だけでなく、給湯装置の水抜きに伴って大気開放弁が開弁し、給湯通路の湯水が排出されると共に流入する空気に置換されることで、冬季の凍結膨張による破損を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-270698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の大気開放弁では、給湯装置の水抜きに伴って開弁しても、給湯通路の湯水が排出されないことがあるという問題があった。これは、大気開放弁の小型化に伴い、弁体が弁座から離間して開弁しても十分な開度を確保できないと、表面張力によって支えられて湯水の排出が妨げられることに起因しており、特に、温度が下がるほど表面張力が大きくなることから、冬季に湯水が排出されない不具合が起こり易くなる。
【0006】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、給湯装置の水抜きに伴って大気開放弁が開弁した状態で、給湯通路の湯水の排出を促進することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の大気開放弁は次の構成を採用した。すなわち、
給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に接続されて、前記給湯装置への給水の圧力を受けることで閉弁すると共に、該給水の圧力が低下すると開弁して前記給湯通路の湯水を排出する大気開放弁において、
前記給湯通路に接続される接続通路が上方に向けて延設された開放室と、
前記開放室の下方にダイヤフラムで仕切られて設けられ、前記給水の圧力が検圧通路を介して導入される背圧室と、
前記開放室内に収容され、上下動が可能に前記ダイヤフラムで支持された弁体と、
前記弁体を前記背圧室側に向けて付勢する付勢部材と、
前記開放室の側面に一端が開口し、他端が大気に開放された排出通路と
を備え、
前記背圧室に導入された前記給水の圧力で前記ダイヤフラムが前記開放室側に押し込まれると、前記開放室の上面における前記接続通路の開口部を囲む弁座に、前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して当接することで閉弁すると共に、前記給水の圧力の低下に伴い、前記付勢部材の付勢力で前記弁体が前記弁座から離間することで開弁し、
前記接続通路の内周面には、前記開放室側の端部を拡径することで段差が設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の大気開放弁では、接続通路における開放室側の端部を拡径して内周面に段差を設けておくことにより、弁座から弁体の当接部が離間した開弁状態で、弁体との間隔を確保し、弁座と弁体の当接部との間隔よりも狭い狭窄部分を除去することが可能である。その結果、大気開放弁が開弁した状態で、接続通路における開放室側の端部で湯水に表面張力が働きに難くなり、給湯通路の湯水の排出を促すことが可能となる。
【0009】
上述した本発明の大気開放弁では、次のようにしてもよい。まず、弁体には、弁座に当接する環状の当接部よりも内側に、複数のガイド片が上方に向かって立設されていると共に、弁体の当接部が弁座から離間した開弁状態で、複数のガイド片の先端側は、接続通路における段差の給湯通路側である細径部の内側に挿入されている。そして、複数のガイド片が、細径部の内周面に沿って摺動することにより、弁体の上下動を案内する。
【0010】
このような構成の大気開放弁では、接続通路の内径を全体的に拡げるのではなく、段差を設けることにより、段差の給湯通路側(上側)である細径部では、ガイド片の摺動面として弁体の上下動を案内する機能を残しながら、段差の開放室側(下側)である太径部では、開弁時の弁体との間隔を確保して、湯水の排出を促すことができる。
【0011】
また、前述した本発明の大気開放弁では、次のようにしてもよい。まず、弁体は、弁座に当接する環状の当接部よりも内側に、当接部よりも上方に突出して設けられた凸部を有すると共に、凸部の外径は、接続通路における段差の給湯通路側である細径部の内径よりも大きくなっている。そして、弁体の当接部が弁座に当接した閉弁状態で、凸部は、接続通路における段差の開放室側である太径部の内側空間に収容されている。
【0012】
このような構成の大気開放弁では、弁座から弁体が離間して開弁するのに伴って、太径部の内側空間から凸部が退去することにより、太径部の内側空間では凸部による排除体積が減少して圧力が低下する。その結果、太径部の内側空間には、排出通路側から空気が引き込まれると共に、給湯通路側から湯水が引き込まれることになり、界面が乱れることによって湯水に表面張力が働き難いため、湯水の排出を促すことが可能となる。
【0013】
こうした本発明の大気開放弁では、次のようにしてもよい。まず、弁体は、弁座に当接する環状の当接部を有する当接台と、ダイヤフラムに貼付される貼付板とが、当接台および貼付板よりも小径な支柱を介して連結されており、当接台と貼付板との間に支柱の全周にわたって環状空間を有する。そして、弁体の当接部が弁座から離間した開弁状態で、開放室の側面に開口した排出通路の一端と、弁体の環状空間とが面している。
【0014】
このような構成の大気開放弁では、排出通路を通って流入した空気が、環状空間を回り込むことにより、排出通路が開口した側だけでなく、弁体の全周にわたって置換用の空気を接続通路に導入することが可能となる。また、接続通路の湯水についても、排出通路が開口した側だけでなく、弁体の全周にわたり環状空間を介して排出通路へと流出することが可能となるので、給湯通路の湯水の排出を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の大気開放弁37が用いられる湯張システム1の全体構成を例示した説明図である。
図2】本実施例の大気開放弁37が組み込まれた湯張制御装置30の構成を概念的に示した説明図である。
図3】給湯装置10の水抜きに伴って大気開放弁37が開弁しても、給湯通路20の湯水が残ってしまう場合を例示した説明図である。
図4】本実施例の大気開放弁37の構造を示した縦断面図である。
図5】本実施例の弁体55を拡大して示した斜視図である。
図6】本実施例の大気開放弁37が開弁した状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施例の大気開放弁37が用いられる湯張システム1の全体構成を例示した説明図である。図示されるように湯張システム1は、湯を生成する給湯装置10や、湯を溜める浴槽2や、給湯装置10から浴槽2に湯水を導くための給湯通路20や、給湯通路20の途中に設けられた湯張制御装置30などを備えており、本実施例の大気開放弁37は湯張制御装置30に組み込まれている。
【0017】
給湯装置10は、ガス通路11を通じて供給された燃料ガスを燃焼させるバーナ12と、バーナ12に燃焼用空気を送る燃焼ファン13と、バーナ12での燃焼によって生じた燃焼排気と熱交換するための熱交換器14とを備えている。熱交換器14には、給水通路15を通じて上水が供給されており、供給された上水は熱交換器14で燃焼排気との熱交換によって加熱された後、湯となって給湯通路20へと流出する。また、熱交換器14を通過した燃焼排気は、給湯装置10の上部から装置外へ排出される。
【0018】
熱交換器14の上流側に接続された給水通路15には、給湯装置10への上水の供給を停止するための止水栓16や、止水栓16よりも下流側で給湯装置10の水抜きの際に開栓する第1水抜栓17が設けられている。また、給水通路15の第1水抜栓17よりも下流から分岐した検圧通路18が設けられており、この検圧通路18は湯張制御装置30に接続されている。
【0019】
熱交換器14の下流側に接続された給湯通路20は、湯張制御装置30の手前で2つに分岐して、一方が湯張制御装置30を介して浴槽2に接続され、他方がカラン21に接続されており、カラン21側の途中に水抜きのための第2水抜栓22が設けられている。さらに、湯張制御装置30は、湯張システム1全体を制御するコントローラ40と電気的に接続されている。
【0020】
図2は、本実施例の大気開放弁37が組み込まれた湯張制御装置30の構成を概念的に示した説明図である。図示されるように湯張制御装置30は、まず、給湯通路20上に湯張電磁弁31と、流量センサ32と、フィルタ33と、2つの逆止弁(第1逆止弁34および第2逆止弁35)とを備えている。
【0021】
湯張電磁弁31は、給湯通路20を開閉可能であり、コントローラ40によって開閉動作が制御される。そして、湯張電磁弁31の開弁によって湯張りが開始され、湯張電磁弁31の閉弁によって湯張りが停止される。本実施例の湯張電磁弁31には、周知のパイロット式電磁弁を用いているが、直動式電磁弁を用いてもよい。差圧を利用するパイロット式電磁弁は、一般的に直動式電磁弁に比べて小さな力で開閉するので、アクチュエータの小型化を図ると共に、消費電力を抑えることが可能である。
【0022】
流量センサ32は、湯張電磁弁31よりも上流側(給湯装置10側)に設けられており、給湯通路20を通過する湯水の流量を計測する。本実施例の流量センサ32には、給湯通路20内の湯水の流れによって回転する羽根車が内蔵されており、羽根車の回転速度に基づいて湯水の流量を計測してコントローラ40に出力する。また、流量センサ32よりも上流側には、フィルタ33が設けられており、給湯装置10からの湯水に混入する異物をフィルタ33で除去することによって、流量センサ32や湯張電磁弁31が異物で正常に動作しなくなる事態を防止している。
【0023】
第1逆止弁34および第2逆止弁35は、湯張電磁弁31よりも下流側(浴槽2側)に直列で設けられている。図示されるように、湯張電磁弁31側に位置した第1逆止弁34は、給湯通路20を開閉可能に移動する弁体34aと、給湯通路20を閉じる閉弁方向に弁体34aを付勢する閉弁バネ34bとを備えている。湯張電磁弁31の開弁によって給湯装置10から供給される湯水の圧力が上昇して所定の開弁圧力を上回ると、閉弁バネ34bの付勢力に抗して弁体34aが開弁方向に移動するので、第1逆止弁34は開弁状態となる。また、浴槽2側に位置した第2逆止弁35も、基本的には第1逆止弁34と同様の構成で閉弁方向に付勢されており、第1逆止弁34の開弁によって給湯装置10から供給される湯水の圧力が所定の開弁圧力を上回ると開弁状態となる。こうして第1逆止弁34および第2逆止弁35が開弁状態となって湯水を通過させることで、浴槽2の湯張りが行われる。
【0024】
一方、湯張り中に断水などの理由で給湯装置10から供給される湯水の圧力が低下すると、閉弁バネ34bの付勢力によって弁体34aが閉弁方向に押し戻され、第1逆止弁34は閉弁状態となる。また、第2逆止弁35も同様に閉弁状態となることにより、浴槽2側から給湯装置10側への湯水の逆流を阻止する。このように2つの逆止弁34,35を直列に設置しておくことで、逆止弁が1つの場合よりも確実に湯水の逆流を阻止することができる。
【0025】
そして、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間で給湯通路20に大気開放弁37が接続されている。大気開放弁37の詳細については別図を用いて後述するが、開弁方向に付勢されており、給湯装置10に上水が正常に供給されていれば、検圧通路18を介して上水の圧力を受けることで付勢に抗して閉弁状態になっている。一方、断水などが発生して上水の圧力が低下すると、付勢によって大気開放弁37が開弁し、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間の給湯通路20の湯水が排出されることから、仮に第1逆止弁34や第2逆止弁35の故障で閉弁が不完全であったとしても、浴槽2側から給湯装置10側への湯水の逆流を防ぐことができる。
【0026】
また、断水の発生時だけでなく、冬季に凍結膨張による破損を防止するなどの目的で給湯装置10の水抜きが行われるのに伴って、大気開放弁37が開弁することになる。但し、従来の大気開放弁37では、給湯装置10の水抜きに伴って開弁しても、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間の給湯通路20の湯水が排出され難く残ってしまうことがある。以下では、この点について詳しく説明する。
【0027】
図3は、給湯装置10の水抜きに伴って大気開放弁37が開弁しても、給湯通路20の湯水が残ってしまう場合を例示した説明図である。まず、図3(a)には、給湯装置10の水抜きが行われる前の湯張制御装置30内の状態が示されており、図中のハッチングを付した部分は湯水の存在を表している。尚、給湯装置10の水抜き前には浴槽2の湯水が抜かれることによって、第2逆止弁35よりも下流側の給湯通路20の湯水は排出されているものとする。また、水抜きに際して湯張りが行われることはないので、湯張電磁弁31は閉弁した状態となっており、それに伴って第1逆止弁34および第2逆止弁35も閉弁した状態になっている。加えて、検圧通路18には上水の圧力がかかっているため、大気開放弁37は閉弁した状態になっている。
【0028】
給湯装置10の水抜き時には、作業者が給水通路15の止水栓16を閉じて上水の供給を停止した後、第1水抜栓17および第2水抜栓22を開ける(図1参照)。すると、図3(b)に示されるように、給湯通路20内の湯張電磁弁31よりも上流側(給湯装置10側)の湯水は、第2水抜栓22(あるいは第1水抜栓17)から排出される。また、パイロット式電磁弁を採用した湯張電磁弁31は、上流側の湯水が排出される(湯水の圧力が低下する)のに伴って開弁するため、湯張電磁弁31と第1逆止弁34との間についても給湯通路20の湯水が第2水抜栓22から排出されることになる。尚、湯張電磁弁31が開弁しても、第1逆止弁34および第2逆止弁35は閉弁したままである。
【0029】
また、前述したように検圧通路18は、給水通路15の第1水抜栓17よりも下流から分岐しており、第1水抜栓17を開けると、検圧通路18内の上水が第1水抜栓17から排出される。その結果、検圧通路18に上水の圧力がかからなくなり、大気開放弁37は開弁することになる。但し、給湯装置10の水抜きに伴って大気開放弁37が開弁したにもかかわらず、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間の給湯通路20の湯水が排出されずに残ってしまうことがある。これは次のような理由によるものと考えられる。
【0030】
まず、大気開放弁37の小型化に伴って、大気開放弁37が開弁した状態であっても、開度を十分に確保できていないと、狭窄部分で湯水に表面張力が働き易く、その表面張力によって湯水が支えられて排出が妨げられる。特に、こうした表面張力は、温度が下がるほど大きくなることから、冬季に湯水が排出され難く残ってしまい、凍結膨張による破損の虞がある。
【0031】
また、給湯通路20の湯水の排出には、代わりに空気の導入による置換が必要であるものの、第1逆止弁34および第2逆止弁35の何れも閉弁したままであり、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間で給湯通路20が袋小路になっているため、開弁した大気開放弁37から置換用の空気を導入するしかない。そして、こうした大気開放弁37からの空気の導入が滞ることで、湯水が排出されずに残ってしまう。そこで、本実施例の大気開放弁37では、給湯装置10の水抜きに伴って開弁した際に給湯通路20の湯水の排出を促すために、以下のような構成を採用している。
【0032】
図4は、本実施例の大気開放弁37の構造を示した縦断面図である。図では、大気開放弁37が閉弁した状態を表している。図示されるように大気開放弁37は、可撓性のダイヤフラム50によって下方の背圧室51と上方の開放室52とに仕切られた構造になっている。背圧室51には、給水通路15から分岐した検圧通路18が接続されており、検圧通路18を通って上水が導かれる。
【0033】
開放室52の上方には、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間の給湯通路20に接続される接続通路53が延設されており、開放室52の上面における接続通路53の開口部を囲んで弁座54が設けられている。また、開放室52内には、ダイヤフラム50によって上下動が可能に支持された弁体55が収容されている。さらに、開放室52の側面には、排出通路58の一端が開口しており、排出通路58の他端は大気に開放されている。
【0034】
図5は、本実施例の弁体55を拡大して示した斜視図である。図では、弁体55の中心軸を含む略垂直な平面で弁体55を切断して断面形状が見えるように表している。図示されるように本実施例の弁体55は、弁座54に当接する環状のパッキン60が上面に埋め込まれたパッキン台61と、ダイヤフラム50に貼付される貼付板62とが、パッキン台61および貼付板62よりも小径な支柱63を介して連結された構造になっており、パッキン台61と貼付板62との間に支柱63の全周にわたって環状空間64が設けられている。本実施例の弁体55では、中心軸に直交する平面で切断した支柱63の断面積に対して、パッキン台61の断面積の面積比を5倍以上とすることで環状空間64を広く確保している。環状空間64の役割については、後ほど詳しく説明する。尚、本実施例のパッキン台61は、本発明の「当接台」に相当している。
【0035】
また、パッキン台61の上方にはパッキン60を抜け止めするための環状のパッキン押え66が設置されており、パッキン押え66の中央の篏合孔を、パッキン台61の上面中央から上方に突出した突出部65に篏合させて固定されている。このパッキン押え66の外径は、パッキン60の外径よりも小さく、且つパッキン60の内径よりも大きくなっており、パッキン60における弁座54との当接部よりも内側にパッキン押え66が位置している。加えて、パッキン押え66の外縁部分には、内側から外側に向かって下る傾斜が付けられている。さらに、パッキン押え66の外縁部分に沿って等間隔に複数(本実施例では3つ)のガイド片67が上方に向かって立設されている。
【0036】
このような弁体55は、図4に示されるように開放室52内に収容された状態で、上方から付勢バネ56によって下方の背圧室51に向けて付勢されている。付勢バネ56は、上端側が接続通路53内のバネ受け57に支持され、下端側がパッキン押え66に当接している。尚、バネ受け57は、中空の筒部材の外周面と接続通路53の内周面とが複数(本実施例では3つ)のスポークで連結されており、湯水が流通可能となっている。また、複数のガイド片67は、弁座54(パッキン60の当接部)よりも内側に位置して接続通路53の内側に挿入されており、ガイド片67の各々が接続通路53の内周面に沿って摺動することにより、弁体55の上下動を案内するようになっている。
【0037】
そして、図4では、検圧通路18を介して背圧室51に供給される上水の圧力によってダイヤフラム50が開放室52側に押し込まれ、付勢バネ56の付勢力に抗して弁体55のパッキン60が弁座54に当接することで接続通路53の開口部を塞ぐため、大気開放弁37が閉弁した状態になっている。尚、本実施例の付勢バネ56は、本発明の「付勢部材」に相当している。
【0038】
一方、図6は、本実施例の大気開放弁37が開弁した状態を示した縦断面図である。給湯装置10の水抜きに伴い、検圧通路18を介して背圧室51に上水の圧力がかからなくなると、図6(a)に示されるように、付勢バネ56の付勢力で弁体55およびダイヤフラム50が背圧室51側に押し返され、弁体55のパッキン60が弁座54から離間することで接続通路53の開口部を開放するため、大気開放弁37が開弁した状態となる。そして、本実施例の接続通路53の内周面には、図6(b)に拡大して示されるように、開放室52側の端部を拡径することで下側の太径部53aと上側の細径部53bとの段差Dが設けられている。
【0039】
図6(b)中に破線で示したように接続通路53の内周面に段差D(太径部53a)を設けていない場合には、弁体55(パッキン押え66)との間隔を確保し難く、弁座54とパッキン60との間隔よりも狭い狭窄部分ができ易いことから、狭窄部分で湯水に表面張力が働くことによって湯水の排出が妨げられてしまう。これに対して、本実施例の大気開放弁37では、接続通路53の内周面における開放室52側の端部に段差D(太径部53a)を設けることにより、弁体55(パッキン押え66)との間隔を確保し、狭窄部分を除去することが可能である。その結果、大気開放弁37が開弁した状態で、接続通路53における開放室52側の端部で湯水に表面張力が働き難くなり、湯水の排出を促すことが可能となる。加えて、接続通路53における開放室52側の端部で内径を拡げておけば、接続通路53(細径部53b)内で表面張力によって湯水が支えられたとしても、湯水が重量で細径部53bから太径部53aへと下がるのに伴って界面(表面)が拡がることになるので、接続通路53の内径に変化がない(同径である)場合に比べて、表面張力を破り易くなる効果を得ることができる。
【0040】
また、図6(a)に示されるように大気開放弁37が開弁した状態で、本実施例の弁体55における複数のガイド片67の先端側は、接続通路53における段差Dの上側(給湯通路20側)である細径部53bの内側に挿入されており、ガイド片67の各々が細径部53bの内周面に沿って摺動するようになっている。すなわち、接続通路53の内径を全体的に拡げるのではなく、段差Dを設けることにより、上側の細径部53bでは、ガイド片67の摺動面として弁体55の上下動を案内する機能を残しながら、下側(開放室52側)の太径部53aでは、上述したように弁体55との間隔を確保して、開弁時の湯水の排出を促すことができる。
【0041】
加えて、本実施例の弁体55のパッキン押え66は、パッキン60における弁座54との当接部よりも内側に位置すると共に、パッキン押え66の外径が、接続通路53の細径部53bの内径よりも大きくなっている。しかも、パッキン押え66の上面がパッキン60の当接部よりも上方に突出しており、大気開放弁37が閉弁した状態で、接続通路53の太径部53aの内側空間にパッキン押え66が収容されている(図4参照)。そして、大気開放弁37の開弁に伴って、太径部53aの内側空間からパッキン押え66が退去することにより(図6参照)、太径部53aの内側空間ではパッキン押え66による排除体積が減少して圧力が低下する。その結果、太径部53aの内側空間には、排出通路58側から空気が引き込まれると共に、給湯通路20側から湯水が引き込まれることになり、界面が乱れることによって湯水に表面張力が働き難いため、湯水の排出を促すことが可能となる。尚、本実施例のパッキン押え66は、本発明の「凸部」に相当している。
【0042】
さらに、本実施例の弁体55には、前述したようにパッキン台61と貼付板62との間に環状空間64が設けられている(図5参照)。そして、大気開放弁37が開弁した状態で、図6(a)に示されるように開放室52の側面に開口した排出通路58の一端と、弁体55の環状空間64とが面している。このようにすれば、排出通路58を通って流入した空気が、環状空間64を回り込むことにより、排出通路58が開口した側だけでなく、弁体55の全周にわたって置換用の空気を接続通路53に導入することが可能となる。また、接続通路53の湯水についても、排出通路58が開口した側だけでなく、弁体55の全周にわたり環状空間64を介して排出通路58へと流出することが可能となるので、給湯通路20の湯水の排出を促すことができる。尚、弁体55の環状空間64は、上下方向の高さの全体で排出通路58の一端と面していなくてもよく、高さの少なくとも一部で排出通路58の一端と面していればよい。
【0043】
以上、本実施例の大気開放弁37について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0044】
例えば、前述した実施例では、弁体55が上下方向に移動可能であると共に、接続通路53が同じく上下方向に接続された向き(縦向き)となるように大気開放弁37が設置されていた。しかし、大気開放弁37の設置の向きは、縦向きに限られず、弁体55が左右方向に移動可能であると共に、接続通路53が同じく左右方向に接続された向き(横向き)にしてもよい。但し、大気開放弁37が開弁した状態で給湯通路20の湯水が排出されない不具合は、横向きよりも縦向きで起こり易いことから、特に大気開放弁37が縦向きに設置される場合に、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…湯張システム、 2…浴槽、 10…給湯装置、
11…ガス通路、 12…バーナ、 13…燃焼ファン、
14…熱交換器、 15…給水通路、 16…止水栓、
17…第1水抜栓、 18…検圧通路、 20…給湯通路、
21…カラン、 22…第2水抜栓、 30…湯張制御装置、
31…湯張電磁弁、 32…流量センサ、 33…フィルタ、
34…第1逆止弁、 34a…弁体、 34b…閉弁バネ、
35…第2逆止弁、 37…大気開放弁、 40…コントローラ、
50…ダイヤフラム、 51…背圧室、 52…開放室、
53…接続通路、 53a…太径部、 53b…細径部、
54…弁座、 55…弁体、 56…付勢バネ、
57…バネ受け、 58…排出通路、 60…パッキン、
61…パッキン台、 62…貼付板、 63…支柱、
64…環状空間、 65…突出部、 66…パッキン押え、
67…ガイド片、 D…段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6