(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165914
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】支持部材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20241121BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A01G9/14 K
A01G13/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082503
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 明
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
【Fターム(参考)】
2B024EC06
2B029CA08
(57)【要約】
【課題】
本発明では、簡易構築物に設置されると巻取軸の駆動に必要な力の低減やシートの劣化の抑制を達成できるバンドの支持部材の提供を目的とする。
【解決手段】
前記課題を解決するための手段は、アーチ型のビニールハウス本体10の屋根面の所定の範囲を上方から覆う遮光用シート2と、遮光用シート2の一端に取付けられてビニールハウス本体10の屋根面を転動して遮光用シート2の巻取りおよび繰り出しをする巻取軸3と、ビニールハウス本体10の幅方向に沿って設置されて上方から遮光用シート2をビニールハウス本体10側へ押さえつけ可能なバンド4とを備えたビニールハウスHに設置されてバンド4の一端を支持する支持部材7であって、ビニールハウス本体10の側部における巻取軸3によって最大限繰り出された状態の遮光用シート2の下端よりも下方に設けられバンド4の一端をビニールハウス本体10の側部から屋外側に離間した位置で支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行方向に沿って並べられる複数のアーチ状の骨材と前記骨材に展張される被覆シートを有するアーチ型の簡易構築物本体と、簡易構築物本体の屋根面の所定の範囲を上方から覆うシートと、前記シートの一端に取付けられて前記簡易構築物本体の屋根面を転動して前記シートの巻取りおよび繰り出しをする巻取軸と、前記簡易構築物本体の幅方向に沿って設置されて上方から前記シートを前記簡易構築物本体側へ押さえつけ可能なバンドとを備えた簡易構築物に設置されて前記バンドの一端を支持する支持部材であって、
前記簡易構築物本体の側部における前記巻取軸によって最大限繰り出された状態の前記シートの下端よりも下方に設けられ前記バンドの一端を前記簡易構築物本体の側部から屋外側に離間した位置で支持する
ことを特徴とする支持部材。
【請求項2】
前記簡易構築物本体の側部に定着される定着部と、
弾性を有して、前記定着部から前記簡易構築物本体の屋外側に向けて起立する起立部と、
前記起立部の先端に設けられて前記バンドの一端を支持する支持部とを備え、
前記起立部の先端が前記起立部の基端を通る前記簡易構築物本体の法線よりも上方に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の支持部材。
【請求項3】
前記起立部は、
前記定着部から前記簡易構築物本体の屋外側へ向けて延びて前記簡易構築物本体の奥行方向に沿って並べて配置される一対の直線片と、
前記各直線片の先端から延びて前記先端よりも上方へ向けて傾斜する一対の傾斜片とを有し、
前記支持部は、
前記簡易構築物本体の奥行方向に沿って延びるとともに前記各傾斜片の先端同士を接続する
ことを特徴とする請求項2に記載の支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスや温室、簡易型の倉庫等の簡易構築物には、簡易構築物の屋根面に展張される屋根シートを開閉して換気を行う換気装置や、屋根シートを覆う遮光シートを展開及び格納して簡易構築物内に入る日差しの量を調整する遮光装置等のシート巻取り装置が設けられる場合がある。
【0003】
このようなシート巻取り装置は、屋根シートや遮光シート(以下、「シート」と称する。)の下端に取付けられて簡易構築物を構成するアーチ状の骨組上を転動してシートを巻取り及び繰り出す巻取軸と、巻取軸を駆動する駆動装置とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような簡易構築物では、強風が吹いた際にシートが風に煽られてバタつくのを防止するために、上方からシートを屋根面側に向けて押え付けるバンドを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなバンドは、簡易構築物の頂部から側部にかけて架け渡されるか、あるいは、簡易構築物の頂部を跨いで簡易構築物の一方の側部から他方の側部に架け渡して使用される。また、バンドは、強風時のシートのバタつきを抑えるために、ある程度の張力がかけられてシートに接している。
【0007】
そして、シートを巻取軸で巻取る場合、シートは巻取軸にロール状に巻取られていくが、シートの巻取りが進むと、巻取軸に巻取られたシートのロール径が大きくなる。
【0008】
このように、シートの巻取りが進んでロール径が大きくなると、その分だけ、バンドがロール状のシートによって屋根面から遠ざかる方向へ押されるので、その反力でバンドがシートを骨組に強く押し付けることになる。
【0009】
バンドの押付力が強いとバンドとシートとの間の摩擦力及びシートと巻取軸との間の摩擦力が大きくなって、巻取軸の駆動に必要な力の増大や、シートの劣化を招いてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、簡易構築物に設置されると、巻取軸の駆動に必要な力の低減やシートの劣化の抑制を達成できるバンドの支持部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成させるための手段は、奥行方向に沿って並べられる複数のアーチ状の骨材と前記骨材に展張される被覆シートを有するアーチ型の簡易構築物本体と、簡易構築物本体の屋根面の所定の範囲を上方から覆うシートと、前記シートの一端に取付けられて前記簡易構築物本体の屋根面を転動して前記シートの巻取りおよび繰り出しをする巻取軸と、前記簡易構築物本体の幅方向に沿って設置されて上方から前記シートを前記簡易構築物本体側へ押さえつけ可能なバンドとを備えた簡易構築物に設置されて前記バンドの一端を支持する支持部材であって、前記簡易構築物本体の側部における前記巻取軸によって最大限繰り出された状態の前記シートの下端よりも下方に設けられ前記バンドの一端を前記簡易構築物本体の側部から屋外側に離間した位置で支持することを特徴とする。この構成によると、支持部材が簡易構築物本体の側部に取付けられると、バンドの一端を簡易構築物本体の側部から屋外側へ離間させることができるため、簡易構築物本体の側部付近においてバンドがシートを簡易構築物本体側に向けて押さえつける力が小さくなる。
【0012】
また、本発明の支持部材は、前記簡易構築物本体の側部に定着される定着部と、弾性を有して前記定着部から前記簡易構築物本体の屋外側に向けて起立する起立部と、前記起立部の先端に設けられて前記バンドの一端を支持する支持部とを備え、前記起立部の先端が前記起立部の基端を通る前記簡易構築物本体の法線よりも上方に位置してもよい。この構成によると、起立部の先端に設けられてバンドを直接支持している支持部が起立部の基端を通る骨材の法線よりも簡易構築物本体の頂部寄りに位置している。そのため、支持部は、バンドの張力を受けて骨材へ向けて押圧されるが、支持部がバンドから受ける押付力の作用線が直線片の軸方向とずれるので、起立部はバンドの押付力によって、基端を支点として、ビニールハウス本体の頂部側へ向けて倒すモーメントを受ける。したがって、シートの巻取時にシートのロールの直径が大きくなってバンドの押付力が一定以上の大きさとなると、起立部が簡易構築物本体の頂部側に向けて倒れるように弾性変形して、バンドの一端を支持する支持部が簡易構築物本体の頂部に接近し、その分だけバンドが緩むので、バンドの押付力が小さくなる。よって、このように構成された支持部材によると、シートの巻取時におけるバンドの押付力が特に大きくなる際に、バンドの押付力を小さくできるので、バンドとシートとの間で生じる摩擦力及びシートと巻取軸との間で生じる摩擦力を効果的に低減できる。
【0013】
また、本発明の支持部材では、前記起立部は、前記定着部から前記簡易構築物本体の屋外側へ向けて延びて前記簡易構築物本体の奥行方向に沿って並べて配置される一対の直線片と、前記各直線片の先端から延びて前記先端よりも上方へ向けて傾斜する一対の傾斜片とを有し、前記支持部は、前記簡易構築物本体の奥行方向に沿って延びるとともに前記各傾斜片の先端同士を接続してもよい。この構成によると、直線片を法線に沿うように配置すれば、起立部の先端を法線よりも上方に位置させることが容易にできる。また、バンドを支持する支持部が一対の起立部によって支えられるので、支持部材が安定し、支持部材のグラつきを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の支持部材によれば、簡易構築物に設置されると、巻取軸の駆動に必要な力の低減やシートの劣化の抑制を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本実施の形態のバンドの一端の簡易構築物への定着部分を拡大して示す斜視図である。
【
図6】(A)は変形例の支持部材の簡易構築物への定着部分を拡大して示す正面図である。(B)変形例の支持部材の簡易構築物への定着部分を拡大して示す正面図であって、支持部材の起立部がアーチパイプの頂部側に向けて倒れる状態を示す図である。
【
図7】変形例の支持部材の簡易構築物への設置部分を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0017】
簡易構造物は、本実施の形態ではビニールハウスHとされている。ビニールハウスHは、
図1,
図2に示すように、奥行方向に沿って並べられる複数のアーチ状の骨材であるアーチパイプP1とアーチパイプP1に展張される被覆シートSを有する簡易構築物本体であるビニールハウス本体10と、ビニールハウス本体10の屋根面を上方から覆う遮光用シート2を巻取りおよび繰り出し可能なシート巻取り装置としての遮光装置1と、ビニールハウス本体10の幅方向に沿って設置されて上方から遮光用シート2をビニールハウス本体10側へ押さえつけ可能なバンド4と、ビニールハウス本体10の側部に設置されてバンド4の一端をビニールハウス本体10の側部から離間した位置で支持する支持部材7とを備えている。
【0018】
以下、本実施の形態のビニールハウスHの各部について詳細に説明する。本実施の形態のビニールハウス本体10におけるアーチパイプP1は、
図1,
図2に示すように、地面Gから直線状に起立する一対の起立部P1aと、各起立部P1aの上端同士を繋ぐ略円弧状のアーチ部P1bとを有している。
【0019】
以下の説明では、ビニールハウス本体10におけるアーチパイプP1の頂部と対向する部分をビニールハウス本体10の頂部とし、アーチパイプP1のアーチ部P1bの範囲の面をビニールハウス本体10の屋根面とし、アーチパイプP1の起立部P1aと対向する部分をビニールハウス本体10の側面とする。
【0020】
本実施の形態では、アーチパイプP1に展張される被覆シートSは、
図1,
図2に示すように、ビニールハウス本体10の左右の側面をそれぞれ覆う側面シートS1と、ビニールハウス本体10の前後の妻面をそれぞれ覆う妻側シートS2と、ビニールハウス本体10の頂部を境にして幅方向に分割してビニールハウス本体10の頂部から各側部にかけてそれぞれ展張されてビニールハウスHの屋根面を覆う2枚の屋根側シートS3,S3とで構成されている。
【0021】
具体的には、
図1,
図2に示すように、奥行方向から見てアーチパイプP1の各起立部P1aには、それぞれ、起立部P1aの上端側に奥行方向に沿って架け渡される上側フレームF1と、起立部P1aの下端側に奥行方向に沿って架け渡される下側フレームF2とが上下に並べて配置されている。そして、上側フレームF1と下側フレームF2の間に側面シートS1の各端部を定着することで、ビニールハウスHの各側面には、それぞれ側面シートS1が設けられている。
【0022】
また、
図2に示すように、ビニールハウス本体10は、妻側に配置されるアーチパイプP1を下側から支持するとともにビニールハウス本体10の幅方向に沿って配置される複数の支柱パイプP2と、各支柱パイプP2間にビニールハウス本体10の幅方向に沿って架け渡される複数の妻側フレームF3とを備え、支柱パイプP2と妻側フレームF3と地面Gとによって囲われた開口部が形成されている。
【0023】
そして、妻側シートS2を当該開口部を避けつつ妻側フレームF3に定着することで、妻側シートS2をビニールハウスHの妻面に設けつつ、当該開口部をビニールハウスHの出入り口として機能させている。
【0024】
また、詳細には説明しないが、本実施の形態の上側フレームF1と下側フレームF2と妻側フレームF3は、それぞれ底部よりも開口の幅が狭く形成された溝を有しており、この溝にシートS1,S2を挿入した状態で、シートS1,S2の上から波型の金属ばねからなる弾性部材を嵌め込むことで、各シートS1,S2は弾性部材の弾発力で各フレームF1,F2,F3に定着されている。なお、この弾性部材は、波型の金属ばねには限られず、ゴムやコイルスプリング等の他の弾性部材であってもよい。
【0025】
また、ビニールハウスHの妻面には、当該開口部の上枠と下枠に沿うように図示しないレールが支柱パイプP2,P2間にそれぞれ架け渡されている。そして、一対の扉D,Dを当該レールに沿ってスライド自在に設置することで、ビニールハウスHの開口部を扉Dによって開閉できるようになっている。なお、扉Dの枚数は特に限定されず、開口部の大きさに応じて適宜決定されればよい。
【0026】
また、本実施の形態では、扉Dは引き戸とされているが、扉Dの開閉方向は、特に限定されず、例えば扉Dは開き戸であってもよい。なお、当該開口部と扉DはビニールハウスHの少なくとも一方の妻面に設けられていればよいが、両方の妻面に設けられていてもよい。
【0027】
また、ビニールハウス本体10は、
図1,
図2に示すように、アーチパイプP1の頂部の上部間に架け渡されて奥行方向に沿って延びる棟材5を備えている。この棟材5は、奥行方向から見て左右にそれぞれ設けられて屋根側シートS3の一端を展着可能な屋根側シート定着フレーム5a,5aと、上端に設けられて後述する遮光用シート2を定着可能な遮光用シート定着フレーム5bとを有している。
【0028】
そして、奥行方向から見て、棟材5の右側の屋根側シート定着フレーム5aと右側の上側フレームF1の間と、棟材5の左側の屋根側シート定着フレーム5aと左側の上側フレームF1の間には、それぞれ屋根側シートS3が定着されている。これにより、本実施の形態では、ビニールハウス本体10の頂部を挟んだ屋根の両側にそれぞれビニールハウス本体10の頂部から各側部にかけて2枚の屋根側シートS3,S3が展張されている。
【0029】
したがって、本実施の形態では、屋根側シートS3,S3の一部が劣化や破損した場合に、劣化や破損のある一方の屋根側シートS3のみを張り替えれば済む。
【0030】
よって、ビニールハウスHの屋根面を1枚の屋根側シートで覆う場合に比べて、屋根側シートS3の張り替えの手間や材料費等の張り替えコストを削減できる。1枚のシートでビニールハウスHの屋根面を覆うようにしてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態の被覆シートSとしては、塩化ビニルフィルム、PETフィルム等のポリオレフィン系フィルムなどの軟質シートが利用されているが、ポリエステルフィルム、フッ素フィルムなどの硬質シートが利用されてもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、独立して設置される単棟型のビニールハウスHについて説明しているが、ビニールハウスHは複数の棟を幅方向で左右に連ねた連棟型であってもよい。
【0033】
つづいて、遮光装置1について詳細に説明する。本実施の形態の遮光装置1は、
図1,
図2に示すように、棟材5の遮光用シート定着フレーム5bに中央部分が定着されるとともにビニールハウス本体10の頂部を跨いで屋根側シートS3を上方から覆う遮光用シート2と、遮光用シート2の各端部にそれぞれ取付けられてビニールハウス本体10の屋根面を転動可能な巻取軸3と、各巻取軸3をそれぞれ駆動する2つの駆動装置6とを備える。
【0034】
駆動装置6は、ビニールハウスHの妻側の地面Gにホルダ8を介してビニールハウスHの奥行方向を軸にして軸回りに回転可能に設置されたモータ60と、モータ60の出力軸に連結されてモータ60の出力軸の駆動に合わせて周方向に回転するとともに軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド61と、伸縮ロッド61の上端と巻取軸3の一端との間に設けられて伸縮ロッド61の周方向の回転運動を巻取軸3の軸回りの回転運動に変換して巻取軸3に伝達する変換機構62とを備える。
【0035】
つづいて、遮光装置1の作動について説明する。まず、遮光用シート2を巻取軸3から繰り出す場合、モータ60を正方向に回転駆動させて、モータ60の出力軸に連結された伸縮ロッド61を正方向に回転させる。すると、伸縮ロッド61の回転運動は変換機構62によって巻取軸3の回転運動に変換されるので、伸縮ロッド61がモータ60と巻取軸3の距離が短くなるのに合わせて収縮しつつ、巻取軸3がビニールハウス本体10の側面側に向けて転動して、遮光用シート2が巻取軸3から繰り出される。そして、巻取軸3が、
図2中左側で示すように、ビニールハウス本体10の側面付近まで達すると、遮光用シート2が、ビニールハウス本体10の頂部から一方の側部までの所定範囲を覆う状態である展開状態となるので、ビニールハウスH内に入る日差しの量を減少させられる。
【0036】
反対に遮光用シート2を巻取軸3に巻き取る場合、モータ60を逆方向に回転駆動させて、モータ60の出力軸に連結された伸縮ロッド61を逆方向に回転させる。すると、伸縮ロッド61の回転運動は変換機構62によって巻取軸3の回転運動に変換されるので、伸縮ロッド61がモータ60と巻取軸3の距離が長くなるのに合わせて伸長しつつ、巻取軸3がビニールハウス本体10の頂部側に向けて転動して、遮光用シート2が巻取軸3に巻き取られる。そして、巻取軸3が、
図2中右側で示すように、ビニールハウス本体10の頂部付近まで達すると、遮光用シート2が、ビニールハウス本体10の頂部付近まで巻き取られた状態である格納状態となるので、日差しが遮光用シート2によって遮られることなくビニールハウスH内に入る。
【0037】
よって、本実施の形態の遮光装置1は、駆動装置6により巻取軸3を駆動して遮光用シート2を展開又は格納することで、ビニールハウスH内に入る日差しの量を調整できる。
【0038】
なお、上述した駆動装置6の構成は一例であって、ビニールハウス本体10の屋根面上に巻取軸3を転動させることができる限りにおいて、駆動装置6の構成は特に限定されない。例えば、巻取軸3の端部に直接モータを取付けて、モータが巻取軸と共に移動するようにしてもよい。
【0039】
また、遮光用シート2は、巻取軸3に巻取り可能な程度の可撓性があって、通過する日差しの量を減少させることができる限りにおいて、材質や構造は特に限定されない。例えば、遮光用シート2は、遮光率の高い素材で形成されたり、網目状に形成されてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、
図2に示すように、上方から遮光用シート2をビニールハウス本体10側へ押さえつけ可能なバンド4が、ビニールハウス本体10の幅方向に沿って設置されている。
【0041】
このバンド4はある程度の張力がかけられて遮光用シート2の上方に配置されているので、遮光用シート2が風に煽られても、バンド4によって遮光用シート2がアーチパイプP1側に押さえつけられて、遮光用シート2のバタつきが防止される。
【0042】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、バンド4が、ビニールハウスHの奥行方向に沿って所定の間隔を空けて3箇所に設置されているが、バンド4の設置数や設置間隔は特に限定されず、ビニールハウスHの奥行方向の長さやビニールハウスHを設置する地域の風の強さ等の気候条件に応じて適宜決定されればよい。
【0043】
詳細には、本実施の形態のバンド4は、
図1,
図2に示すように、弾性を有する幅広帯状であって、中央が棟材5の遮光用シート定着フレーム5bに支持されつつ、ビニールハウス本体10の頂部を跨いで各端部がビニールハウス本体10の側面の一部である各側部に設けられた上側フレームF1に定着されている。
【0044】
ここで、上側フレームF1は、
図3に示すように、上下に並べて配置される2つの溝F1a,F1bを有するフレーム材である。なお、実際には下側の溝F1bには弾性部材を介して側面シートS1の上端が定着されているが、
図3では説明を分かりやすくするために、側面シートS1を省略している。
【0045】
そして、
図4に示すように、バンド4の各端部は、上側フレームF1の上側の溝F1aに取付けられた支持部材7によってビニールハウス本体10の側部から屋外側へ離間した位置で支持されつつ、下側の溝F1bに波型の金属ばねからなる弾性部材15を介して定着されている。
【0046】
また、
図2中左側に示すように、支持部材7は、ビニールハウス本体10の側部における巻取軸3によって最大限繰り出された状態(展開状態)の遮光用シート2の下端よりも下方に位置する上側フレームF1に定着されているので、遮光装置1の繰り出し時に巻取軸3が支持部材7に干渉することがない。
【0047】
詳細には、本実施の形態の支持部材7は、
図3に示すように、金属製の線材を屈曲して成形されており、略コ字状であって中央にバンド4の横幅より少し幅が広い凹部70aを有する支持部70と、支持部70の各端部に設けられて上側フレームF1の上側の溝F1aに定着可能な一対の定着部71,71とを備える。
【0048】
定着部71は、
図4に示すように、波型ばね状に形成されており、上側フレームF1の上側の溝F1aに挿入されると弾発力を発揮して上側フレームF1の上側の溝F1aに定着される。
【0049】
したがって、
図4に示すように、一対の定着部71,71を上側フレームF1の上側の溝F1aに定着することで、支持部材7は、支持部70を上側の溝F1aの開口から突出させた状態で、上側フレームF1に取付けられる。
【0050】
つづいて、バンド4の取付け方法について説明する。まず、アーチパイプP1の頂部に設置されて屋根側シートS3及び遮光用シート2が定着される棟材5を跨いでバンド4をビニールハウス本体10の幅方向に沿って架ける。次に、バンド4の一端を、一方の上側フレームF1の上側の溝F1aに取付けられた支持部材7の支持部70の凹部70a内に収容して沿わせつつ、上側フレームF1の下側の溝F1b内に挿入する。この状態で、バンド4の上から弾性部材15を下側の溝F1b内に挿入して、弾性部材15の弾発力でバンド4の一端を上側フレームF1に定着する。
【0051】
この際、本実施の形態では、バンド4を支持部材7の支持部70に設けられた凹部70aに収容して、バンド4の横ズレを抑制した状態で、バンド4の端部を上側フレームF1に定着できるので、バンド4の取付け作業が容易となる。ただし、支持部70において凹部70aは省略されてもよい。
【0052】
その後、バンド4の他端についても、バンド4の一端と同様の手順で他方の上側フレームF1の下側の溝F1bに定着する。すると、バンド4は、各端部がそれぞれ支持部材7によってビニールハウスHの側部から屋外側に離間した位置で支持され、中央部が棟材5の遮光用シート定着フレーム5bによってビニールハウス本体10の頂部から上方側に離間した位置で支持された状態で、ビニールハウス本体10の頂部を跨いでビニールハウス本体10の左右の側部間に架け渡される。
【0053】
この状態では、バンド4の各端部は、それぞれ支持部材7によってビニールハウスHの側部から屋外側に離間した位置で支持される。すると、ビニールハウス本体10の側部付近において、バンド4は、ビニールハウス本体10の側部から離間するので、支持部材7を設けていない場合に比べて、ビニールハウス本体10の側部付近におけるバンド4が遮光用シート2をビニールハウス本体10側に向けて押さえつける力(押付力)は小さくなる。よって、遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、バンド4と遮光用シート2との間で生じる摩擦力及び遮光用シート2と巻取軸3との間で生じる摩擦力を低減できるので、遮光用シート2の劣化を抑制できる。加えて、遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、巻取軸3の駆動に必要な力を低減できる。
【0054】
また、本実施の形態では、バンド4の中央部が、棟材5の遮光用シート定着フレーム5bによってビニールハウス本体10の頂部から上方側に離間した位置で支持される。すると、ビニールハウス本体10の頂部付近においても、バンド4がビニールハウス本体10の頂部から離間するので、棟材5を備えない場合に比べて、特にビニールハウス本体10の頂部付近においてバンド4の押付力が小さくなる。
【0055】
よって、遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、遮光用シート2と巻取軸3との間で生じる摩擦をさらに低減できるので、遮光用シート2の劣化を抑制できる。加えて、遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、巻取軸3の駆動に必要な力を低減できる。
【0056】
また、支持部材7に代えて、
図5に示す形態の支持部材700を上側フレームF1に取付けてもよい。変形例の支持部材700は、
図5,
図6,
図7(A)に示すように、金属製の線材を屈曲して成形されており、上側フレームF1の上側の溝F1aに定着される一対の定着部710,710と、弾性を有して各定着部710の互いに対向する端部からビニールハウス本体10の屋外側に向けて起立する一対の起立部720,720と、ビニールハウス本体10の奥行方向に沿って延びるとともに起立部720の先端同士を接続して中央にバンド4の横幅より少し幅が広い凹部730aを有して凹部730aでバンド4の一端を支持する支持部730とを備える。
【0057】
各起立部720は、
図5に示すように、定着部710の端部から直線状に起立する直線片720aと、直線片720aの先端から傾斜しながら延びる傾斜片720bとを備えている。
【0058】
そして、
図6,
図7(A)に示すように、傾斜片720bの先端を上側に向けて、一対の定着部710を上側フレームF1の溝F1aに定着させると、一対の直線片720a,720aは、各定着部710の端部からビニールハウス本体10の屋外側へ向けて延びてビニールハウス本体10の奥行方向に沿って並べて配置され、一対の傾斜片720b,720bは、各直線片720aの先端からビニールハウス本体10の頂部側に向けて傾斜する。
【0059】
よって、バンド4を支持する支持部730が一対の起立部720によって支えられるので、支持部材700が安定して、支持部材700のグラつきを防止できる。
【0060】
また、起立部720の先端には、バンド4の端部を支持する支持部730が設けられているため、バンド4が起立部720をビニールハウス本体10側に向けて押す力である押付力が作用するが、
図7(A)に示すように、直線片720aが起立部720の基端(直線片720aの基端)を通るビニールハウス本体10の法線Lに沿うように配置されており、バンド4を直接支持している支持部730は法線Lよりもビニールハウス本体10の頂部寄りに位置している。支持部730は、バンド4の張力を受けてアーチパイプP1へ向けて押圧されるが、支持部730がバンド4から受ける押付力の作用線が直線片720aの軸方向とずれるので、起立部720は、バンド4の押付力によって、定着部710との接続部である基端を支点として、ビニールハウス本体10の頂部側へ向けて倒すモーメントを受ける。
【0061】
ここで、本実施の形態では、バンド4は、棟材5と支持部材700によってビニールハウス本体10から屋外側へ離間した位置で支持されるとともに、棟材5と支持部材700との間に配置される遮光用シート2のロール2Aによって屋外側に向けて押されている。よって、遮光用シート2のロール2Aの直径が大きくなると、その分だけ、バンド4がロール2Aによってビニールハウス本体10の屋根面から遠ざかる方向へ押されるので、その反力でバンド4の押付力は大きくなり、反対に遮光用シート2のロール2Aの直径が小さくなるとバンド4の押付力は小さくなる。
【0062】
そのため、遮光装置1によって遮光用シート2がアーチパイプP1の頂部付近まで巻き取られて遮光用シート2のロール2Aの直径が大きくなり、バンド4の押付力が一定以上の大きさとなると、起立部720は、
図7(B)に示すように、定着部710との接続部である基端を支点としてビニールハウス本体10の頂部側に向けて倒れるように弾性変形する。
【0063】
すると、バンド4の一端を支持する支持部730がバンド4の中央部を支持する棟材5側に接近し、その分だけバンド4が緩むので、バンド4の押付力が小さくなる。
【0064】
したがって、このように構成された支持部材700によると、遮光用シート2のロール2Aの直径が大きくなって、バンド4の押付力が特に大きくなる際に、起立部720がビニールハウス本体10の頂部側に向けて倒れるように弾性変形して、バンド4の押付力を小さくできるので、バンド4と遮光用シート2との間で生じる摩擦力及び遮光用シート2と巻取軸3との間で生じる摩擦力を効果的に低減できる。
【0065】
また、支持部材700が弾性変形するタイミングは、線材の径の太さや起立部720の長さを変更することで適宜調整できる。
【0066】
なお、本変形例の支持部材700の形状は、起立部720の先端が起立部720の基端を通るビニールハウス本体10の法線Lよりも上方に位置する限りにおいて特に限定されず、例えば、起立部720は、定着部710から上方に向けて弓なりに湾曲する形状或いは、定着部710から上方に向けて斜めに延びる形状であってもよい。
【0067】
なお、上述した支持部材7,700の形状は、一例であって、バンド4の端部をビニールハウス本体10から屋外側で離間した位置で支持できる限りにおいて、上述した形状には限定されない。また、支持部材7のビニールハウス本体10への取付方法も上述した方法には限定されず、例えば、アーチパイプP1に直接連結してもよい。
【0068】
なお、バンド4の端部をビニールハウス本体10の側部に取付ける方法は、上述した方法には限定されず、バンド4は上側フレームF1以外の箇所に取付けられてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、1つのバンド4をビニールハウス本体10の一方の側部から他方の側部にかけて架け渡しているが、ビニールハウス本体10の一方の側部から頂部にかけてと、ビニールハウス本体10の他方の側部から頂部にかけて1つずつバンド4を架け渡すようにしてもよい。このようにする場合は、バンド4の上端を棟材5の遮光用シート定着フレーム5bに定着すればよい。なお、バンド4を1枚のシート状、例えばネット状のシートとして、バンド4の各端部を各上側フレームF1,F1に取付けて、バンド4がビニールハウス本体10の屋根面の全体を覆うようにしてもよい。
【0070】
前述したように、本実施の形態の支持部材7は、奥行方向に沿って並べられる複数のアーチ状の骨材としてのアーチパイプP1とアーチパイプP1に展張される被覆シートSを有するアーチ型の簡易構築物本体としてのビニールハウス本体10と、ビニールハウス本体10の屋根面を上方から覆うシートとしての遮光用シート2と、遮光用シート2の一端に取付けられてビニールハウス本体10の屋根面を転動して遮光用シート2の巻取りおよび繰り出しをする巻取軸3と、ビニールハウス本体10の幅方向に沿って設置されて上方から遮光用シートをビニールハウス本体10側へ押さえつけ可能なバンド4とを備えたビニールハウスHに設置されてバンド4の一端を支持するものであって、ビニールハウス本体10の側部における巻取軸3によって最大限繰り出された状態の遮光用シート2の下端よりも下方に設けられバンド4の一端をビニールハウス本体10の側部から屋外側に離間した位置で支持している。
【0071】
このように構成された支持部材7は、ビニールハウス本体10の側部に取付けられると、バンド4の一端をビニールハウス本体10の側部から屋外側へ離間させることができる。すると、支持部材7を備えない場合に比べて、ビニールハウス本体10の側部付近においてバンド4が遮光用シート2をビニールハウス本体10側に向けて押さえつける力が小さくなる。よって、ビニールハウスHに設置されるシート巻取り装置としての遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、遮光用シート2と巻取軸3との間で生じる摩擦力を低減できるので、遮光用シート2の劣化をより抑制できる。加えて、遮光装置1が、遮光用シート2を展開又は格納する際に、巻取軸3の駆動に必要な力をより低減できる。
【0072】
なお、本実施の形態では、ビニールハウス本体10の屋根面を覆うシートを遮光用シート2としているが、当該シートをビニールハウス本体10の屋根面の一部に設けられた開口窓を覆う開閉シートとして、シート巻取り装置をビニールハウスHの換気を行う換気装置としてもよい。
【0073】
また、遮光用シート2や上記開閉シート等の当該シートは、ビニールハウス本体10の屋根面の所定の範囲を覆っていればよく、屋根面全体を覆っていなくともよい。
【0074】
また、変形例の支持部材700は、ビニールハウス本体10の側部に定着される定着部710と、弾性を有して、定着部710からビニールハウス本体10の屋外側に向けて起立する起立部720と、起立部720の先端に設けられてバンド4の一端を支持する支持部730とを備え、起立部720の先端が起立部720の基端を通るビニールハウス本体10の法線Lよりも上方に位置している。
【0075】
この構成によると、起立部720の先端に設けられてバンド4を直接支持している支持部730が起立部720の基端を通るアーチパイプP1の法線Lよりもビニールハウス本体10の頂部寄りに位置している。そのため、支持部730は、バンド4の張力を受けてアーチパイプP1へ向けて押圧されるが、支持部730がバンド4から受ける押付力の作用線が直線片720aの軸方向とずれるので、起立部720はバンド4の押付力によって、定着部710との接続部である基端を支点として、ビニールハウス本体10の頂部側へ向けて倒すモーメントを受ける。
【0076】
したがって、遮光用シート2の巻取時に遮光用シート2のロール2Aの直径が大きくなってバンド4の押付力が一定以上の大きさとなると、起立部720がビニールハウス本体10の頂部側に向けて倒れるように弾性変形して、バンド4の一端を支持する支持部730がビニールハウス本体10の頂部に接近し、その分だけバンド4が緩むので、バンド4の押付力が小さくなる。
【0077】
よって、このように構成された支持部材700によると、遮光用シート2の巻取時におけるバンド4の押付力が特に大きくなる際に、バンド4の押付力を小さくできるので、バンド4と遮光用シート2との間で生じる摩擦力及び遮光用シート2と巻取軸3との間で生じる摩擦力を効果的に低減できる。
【0078】
また、本変形例の支持部材700では、起立部720は、定着部710からビニールハウス本体10の屋外側へ向けて延びてビニールハウス本体10の奥行方向に沿って並べて配置される一対の直線片720a,720aと、各直線片720aの先端から延びて直線片720aの先端よりも上方へ向けて傾斜する一対の傾斜片720bとを有し、支持部730は、ビニールハウス本体10の奥行方向に沿って延びるとともに各傾斜片720bの先端同士を接続している。
【0079】
このように構成された支持部材700によると、直線片720aを法線Lに沿うように配置すれば、起立部720の先端を法線Lよりも上方に位置させることが容易にできる。また、バンド4を支持する支持部730が一対の起立部720によって支えられるので、支持部材700が安定し、支持部材700のグラつきを防止できる。
【0080】
なお、本実施の形態では、支持部材7,700は、金属製の線材を屈曲して成形されているが、それ以外の方法で成形されてもよい。また、支持部材7,700は金属製以外であってもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、簡易構築物として、ビニールハウスHを例に説明したが、簡易構築物は温室や簡易型の倉庫等であってもよく、ビニールハウスHには限定されない。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0083】
2・・・遮光用シート(シート)、3・・・巻取軸、4・・・バンド、7,700・・・支持部材、10・・・ビニールハウス本体(簡易構築物本体)、710・・・定着部、720・・・起立部、720a・・・直線片、720b・・・傾斜片、730・・・支持部、H・・・ビニールハウス(簡易構築物)、L・・・法線、P1・・・アーチパイプ(骨材)、S・・・被覆シート