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  • 特開-しころ、および呼吸器セット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165923
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】しころ、および呼吸器セット
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/02 20060101AFI20241121BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20241121BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A62B18/02 Z
A41D13/05 112
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082517
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000145507
【氏名又は名称】株式会社重松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】重松 宣雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 研一
(72)【発明者】
【氏名】井出 弘之
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
【テーマコード(参考)】
2E185
3B211
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA07
2E185CC31
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC14
(57)【要約】
【課題】吸気ラインの動作による首の露出の可能性を低減し、首周りを十分に保護することが可能なしころ、および呼吸器セットを提供する。
【解決手段】
使用者の首の側部に位置する内側オーバーラップ領域51と、首の側部に位置し、首の側方から見て内側オーバーラップ領域51に重なるように内側オーバーラップ領域51に対して外側に配置された外側オーバーラップ領域52と、内側オーバーラップ領域52から使用者の後側に延びる第一の非オーバーラップ領域53と、外側オーバーラップ領域52から使用者の前側に延びる第二の非オーバーラップ領域54と、内側オーバーラップ領域51と外側オーバーラップ領域52とが重なることで形成される内部空間である重畳空間を前側に開放させる前側開放端55と、重畳空間を後側に開放させる後側開放端56と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の部材であり、使用状態において使用者の首周りに巻き回されて環状となるシート本体によって構成されて防火帽に設けられる防炎用のしころであって、
前記シート本体は、
前記首の側部に位置する内側オーバーラップ領域と、
前記首の側部に位置し、前記首の側方から見て前記内側オーバーラップ領域に重なるように該内側オーバーラップ領域に対して外側に配置された外側オーバーラップ領域と、
前記内側オーバーラップ領域から前記使用状態で前記使用者の前後方向となるシート前後方向の後側に延びる第一の非オーバーラップ領域と、
前記外側オーバーラップ領域から前記シート前後方向の前側に延びる第二の非オーバーラップ領域と、
前記内側オーバーラップ領域と前記外側オーバーラップ領域とが重なることで形成される内部空間である重畳空間を前記前側に開放させる前側開放端と、
前記重畳空間を前記後側に開放させる後側開放端と、
を有するしころ。
【請求項2】
前記内側オーバーラップ領域は、前記使用状態で前記使用者の上下方向となるシート上下方向に延びる自身の前端の縁となる内側前端縁を有し、
前記外側オーバーラップ領域は、前記シート上下方向に延びる自身の後端の縁となる外側後端縁を有し、
前記前側開放端は、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とによって形成され、
前記後側開放端は、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とによって形成され、
前記前側開放端の上端では、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とが固定され、前記前側開放端の上端より下側の部分では、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とが非固定となっており、
前記後側開放端の上端では、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とが固定され、前記後側開放端の上端より下側の部分では、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とが非固定となっている請求項1に記載のしころ。
【請求項3】
前記重畳空間における前記シート上下方向の少なくとも下側半分の領域は、全周で開放されている請求項1に記載のしころ。
【請求項4】
前記外側オーバーラップ領域における前記外側後端縁は、前記シート上下方向の下側に向かうにしたがって前側に向かって傾斜している請求項2または3に記載のしころ。
【請求項5】
前記内側オーバーラップ領域における前記内側前端縁は、前記シート上下方向の下側に向かうにしたがって後側に向かって傾斜している請求項4に記載のしころ。
【請求項6】
前記内側オーバーラップ領域および前記外側オーバーラップ領域は、前記首の一方側の側部のみに設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のしころ。
【請求項7】
前記重畳空間は、前記使用者の背面に配置される吸気ガス源から吸気ガスを前記使用者まで案内する吸気ラインが配置される吸気ライン配置空間となっており、
前記前側開放端および前記後側開放端は、前記吸気ラインが通過可能となっている請求項1から3のいずれか一項に記載のしころ。
【請求項8】
前記使用者に供給される吸気ガスが貯留された吸気ガス源によって構成され、前記使用者の背面に装着される呼吸器本体と、
前記使用者の顔面に装着される面体と、
前記呼吸器本体との前記面体との間に設けられて前記吸気ガスを面体に供給可能とするとともに、前記使用者の肩の近傍に配置される吸気ラインと、
前記吸気ラインを、前記重畳空間に配置する請求項1から3のいずれか一項に記載のしころと、
前記しころが設けられた防火帽と、
を備える呼吸器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防炎用のしころ、およびこれを備えた呼吸器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災現場や工事現場、その他の場所において酸素欠乏の可能性があったり、人体に有害な物質を吸入してしまうおそれがあったりするような場面で使用される空気呼吸器(自給式呼吸器)が知られている。
【0003】
そして特許文献1に示すように、例えば火災現場では空気呼吸器とともに防火服、防火帽(ヘルメット等)が使用される。そして防火帽には、首周りを覆う「しころ」と呼ばれる防炎用のシート状部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-205785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の空気呼吸器においては、使用者の背面に装着された呼吸器の本体から、吸気ラインを介して吸気ガスが面体まで供給されるようになっている。したがって吸気ラインは使用者の肩の近傍を通過して延びている。このため、使用者の顔の動作にともなって吸気ラインが動作すると、吸気ラインに「しころ」が干渉して捲れ上がってしまうことがある。
【0006】
そこで本発明は、吸気ラインの動作による首の露出の可能性を低減し、首周りを十分に保護することが可能な防炎用のしころ、およびこれを備えた呼吸器セットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るしころは、シート状の部材であり、使用状態において使用者の首周りに巻き回されて環状となるシート本体によって構成されて防火帽に設けられる防炎用のしころであって、前記シート本体は、前記首の側部に位置する内側オーバーラップ領域と、前記首の側部に位置し、前記首の側方から見て前記内側オーバーラップ領域に重なるように該内側オーバーラップ領域に対して外側に配置された外側オーバーラップ領域と、前記内側オーバーラップ領域から前記使用状態で前記使用者の前後方向となるシート前後方向の後側に延びる第一の非オーバーラップ領域と、前記外側オーバーラップ領域から前記シート前後方向の前側に延びる第二の非オーバーラップ領域と、前記内側オーバーラップ領域と前記外側オーバーラップ領域とが重なることで形成される内部空間である重畳空間を前記前側に開放させる前側開放端と、前記重畳空間を前記後側に開放させる後側開放端と、を有する。
【0008】
上記のしころでは、前記内側オーバーラップ領域は、前記使用状態で前記使用者の上下方向となるシート上下方向に延びる自身の前端の縁となる内側前端縁を有し、前記外側オーバーラップ領域は、前記シート上下方向に延びる自身の後端の縁となる外側後端縁を有し、前記前側開放端は、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とによって形成され、前記後側開放端は、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とによって形成され、前記前側開放端の上端では、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とが固定され、前記前側開放端の上端より下側の部分では、前記内側前端縁と前記外側オーバーラップ領域とが非固定となっており、前記後側開放端の上端では、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とが固定され、前記後側開放端の上端より下側の部分では、前記外側後端縁と前記内側オーバーラップ領域とが非固定となっていてもよい。
【0009】
上記のしころでは、前記重畳空間における前記シート上下方向の少なくとも下側半分の領域は、全周で開放されていてもよい。
【0010】
上記のしころでは、前記外側オーバーラップ領域における前記外側後端縁は、前記シート上下方向の下側に向かうにしたがって前側に向かって傾斜していてもよい。
【0011】
上記のしころでは、前記内側オーバーラップ領域における前記内側前端縁は、前記シート上下方向の下側に向かうにしたがって後側に向かって傾斜していてもよい。
【0012】
上記のしころでは、前記内側オーバーラップ領域および前記外側オーバーラップ領域は、前記首の一方側の側部のみに設けられていてもよい。
【0013】
上記のしころでは、前記重畳空間は、前記使用者の背面に配置される吸気ガス源から吸気ガスを前記使用者まで案内する吸気ラインが配置される吸気ライン配置空間となっており、前記前側開放端および前記後側開放端は、前記吸気ラインが通過可能となっていてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る呼吸器セットは、前記使用者に供給される吸気ガスが貯留された吸気ガス源によって構成され、前記使用者の背面に装着される呼吸器本体と、前記使用者の顔面に装着される面体と、前記呼吸器本体との前記面体との間に設けられて前記吸気ガスを面体に供給可能とするとともに、前記使用者の肩の近傍に配置される吸気ラインと、前記吸気ラインを、前記重畳空間に配置する上記のしころと、前記しころが設けられた防火帽と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記のしころ等によれば、吸気ラインの動作による首の露出の可能性を低減し、首周りを十分に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る呼吸器セットを使用者が装着した状態を示す全体斜視図である。
図2】上記呼吸器セットにおけるしころを展開して使用者の背面側から見た平面図である。
図3】上記呼吸器セットにおけるしころの要部(図2のA部)拡大図であって、外側オーバーラップ領域を捲り上げた状態を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係るしころを展開して使用者の背面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る呼吸器セット100について説明する。
(全体構成)
図1に示すように呼吸器セット100は、使用者(消防士等)Uの背面に装着される呼吸器本体1と、使用者Uの顔面を覆うように装着される面体2と、呼吸器本体1と面体2との間に設けられた吸気ライン3と、吸気ライン3を配置するとともに使用者Uの首周りに巻き回されるシート状の部材である防炎用のしころ4と、しころ4が設けられた防火帽5とを備えている、
【0018】
呼吸器本体1は、使用者Uに供給される吸気ガスが貯留された吸気ガス源となるガスボンベBと、ガスボンベBを支持するとともに使用者Uの背面に装着可能となるように固定ベルト10が設けられたフレーム状の背負い具11とを有している。ガスボンベBには、吸気ガスとして大気圧よりも高圧の圧縮空気が貯留され、背負い具11にはガスボンベBから流出した吸気ガスの圧力を減圧する不図示の圧力調整器が設けられている。よってこの圧力調整器は使用状態で使用者の背面に配置されている。
【0019】
面体2は、光透過性を有する材料(透明樹脂等)によって顔面形状に沿うように形成された面体本体20と、面体本体20に設けられて使用者Uの口および鼻を覆う隔障21と、面体本体20に設けられて後述する吸気ライン3が接続されかつ隔障21の内側の呼吸室に吸気ガスを供給可能とする吸気ライン接続部22とを有している。
【0020】
(吸気ライン)
吸気ライン3は、上記圧力調整器と吸気ライン接続部22とを接続する管状部材であって、使用者Uの背面に配置されるガスボンベBから吸気ガスを使用者まで案内する。吸気ライン3は、使用者Uの一方の肩の近傍(例えば肩の上方)に配置される。なお本実施形態において吸気ライン3には0〔kPa〕以上3〔kPa〕以下の圧力(ゲージ圧)で吸気ガスGが流通するようになっている。
【0021】
(防火帽)
防火帽5は使用者Uの頭部に装着され、頭部を保護するヘルメットであるが、その構造や材質は特に限定されるものではない。
【0022】
次に、しころ4について説明する。
しころ4は防火帽5に固定され、図2に示すように、使用状態では環状となって使用者Uの首の表面に対向配置されるシート本体40と、シート本体40に設けられてシート本体40を防火帽5に固定するための第一固定部材41と、シート本体40を環状に固定し、および帯状に展開可能とする第二固定部材42とを備えている。しころ4の外形は、使用状態で首の背面部に位置する中心線Oを基準として左右対称となっている。
【0023】
シート本体40は、例えば耐炎性、耐熱性に優れた例えば布等によって形成されている。そしてシート本体40は、首の一方側の側部(本実施形態では、使用者Uに向かって右側の側部)のみにおいて設けられた内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52と、内側オーバーラップ領域51に連続する第一の非オーバーラップ領域53と、外側オーバーラップ領域52に連続する第二の非オーバーラップ領域54と、内側オーバーラップ領域51と外側オーバーラップ領域52との間の空間を開放させる前側開放端55および後側開放端56とを有している。
【0024】
またシート本体40はさらに、内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52と、第一の非オーバーラップ領域53との間にわたってこれらの領域51~53の上部に接続された接続領域57をさらに有している。
【0025】
ここでしころ4の使用状態を基準として使用者Uの上下方向に一致する方向をシート上下方向と定義し、使用者Uの前後方向に一致する方向をシート前後方向と定義し、以下では「上下」はシート上下方向の上下を示し、「前後」はシート前後方向の前後を示すものとする。
【0026】
(内側オーバーラップ領域)
使用状態で内側オーバーラップ領域51は首の側部に配置されている。内側オーバーラップ領域51は、上下に延びる自身の前端の縁となる内側前端縁51aと、内側前端縁51aの上端から後側に延びる内側上端縁51bとを有している。本実施形態において内側前端縁51aは、下側に向かうにしたがって後側に向かって漸次傾斜する直線状をなしている。
【0027】
(第一の非オーバーラップ領域)
第一の非オーバーラップ領域53は内側オーバーラップ領域51と一体に形成され、使用状態において内側オーバーラップ領域51から後側に延びるとともに首の背面部に位置する中心線Oを超えて中心線Oの位置からさらに前側へ、首の前部に対向する位置まで延びている。
【0028】
(外側オーバーラップ領域)
外側オーバーラップ領域52は使用状態で首の側部に位置し、首の側方から見て内側オーバーラップ領域51に重なるように内側オーバーラップ領域51に対して外側に配置されている。外側オーバーラップ領域52は、上下に延びる自身の後端の縁となる外側後端縁52aと、外側後端縁52aの上端から前側に延びる外側上端縁52bとを有している。本実施形態において外側後端縁52aは、下側に向かうにしたがって前側に向かって漸次傾斜する直線状をなしている。よって、内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52は、ともに正面視で下方に向かって先細りとなる略逆三角形状の領域となっている。
【0029】
また外側オーバーラップ領域52の外側上端縁52bは、内側オーバーラップ領域51の内側上端縁51bに接続されている。そして本実施形態では外側オーバーラップ領域52と内側オーバーラップ領域51とが、これら外側上端縁52bおよび内側上端縁51bのみで互いに接続されており、この結果、図3に示すように外側オーバーラップ領域52を内側オーバーラップ領域51に対して上方に捲り上げることが可能となっている。よって内側オーバーラップ領域51と外側オーバーラップ領域52とが重なることで形成される内部空間である重畳空間Sの全領域のうち、外側上端縁52bおよび内側上端縁51bの位置を除く領域において、重畳空間Sが全周で開放されていることになる。
【0030】
そしてこの重畳空間Sは、呼吸器本体1と面体2とを接続する上記の吸気ライン3が配置される吸気ライン配置空間となっている。
【0031】
(第二の非オーバーラップ領域)
図2に戻って、第二の非オーバーラップ領域54は外側オーバーラップ領域52と一体に形成され、使用状態において外側オーバーラップ領域52から前側に、首の前部に対向する位置まで延びている。そして使用状態においては、詳しく後述する第二固定部材42によって第二の非オーバーラップ領域54の前端部が第一の非オーバーラップ領域53の前端部と固定されることで、しころ4全体が環状状態に維持されるようになっている。
【0032】
(前側開放端)
前側開放端55は、内側オーバーラップ領域51の内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とによって形成されている。よって前側開放端55は、外側オーバーラップ領域52と第二の非オーバーラップ領域54との境界上に位置してスリット状をなしている。また前側開放端55の上端55aでは、内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とが固定され、前側開放端55の上端55aより下側の部分となる上端55aと下端55bの間および下端55bでは、内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とが非固定となっている。また前側開放端55を、重畳空間(吸気ライン配置空間)Sに配置された吸気ライン3が通過可能になっている(図3参照)。
【0033】
(後側開放端)
後側開放端56は、外側オーバーラップ領域52の外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とによって形成されている。よって後側開放端56は、内側オーバーラップ領域51と第一の非オーバーラップ領域53との境界上に位置してスリット状をなしている。また後側開放端56の上端56aでは、外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とが固定され、後側開放端56の上端56aより下側の部分となる上端56aと下端56bの間および下端56bでは、外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とが非固定となっている。また後側開放端56を、重畳空間(吸気ライン配置空間)Sに配置された吸気ライン3が通過可能になっている(図3参照)。
【0034】
(接続領域)
接続領域57は、内側オーバーラップ領域51、外側オーバーラップ領域52、および第一の非オーバーラップ領域53を上側から支持するように設けられて前後に延びる帯状をなしている。
【0035】
第一固定部材41は例えばボタン等であって、シート本体40における接続領域57において前後に互いに間隔をあけて複数配置されている。第一固定部材41は防火帽5(図1参照)の内側下部に設けられた不図示の被固定部材に着脱可能に固定されることで、しころ4が防火帽5によって支持されるようになっている。
【0036】
第二固定部材42は例えば面ファスナーであって、シート本体40の第一の非オーバーラップ領域53の前端部、および第二の非オーバーラップ領域54の前端部にそれぞれ設けられ、第一の非オーバーラップ領域53と第二の非オーバーラップ領域54とを着脱可能に固定する。これにより、しころ4を図1に示す環状の固定状態、および図2に示す帯状の展開状態とすることが可能となっている。
【0037】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の呼吸器セット100によれば、しころ4におけるシート本体40が、内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52を有している。このため、内側オーバーラップ領域51と外側オーバーラップ領域52との間に形成された重畳領域Sに吸気ライン3を配置することで、使用者Uの顔の動作にともなって吸気ライン3が動作した際には、仮に外側オーバーラップ領域52が捲れ上がることがあっても、内側オーバーラップ領域51が首を覆った状態を維持することができる。したがって、吸気ライン3の動作による首の露出の可能性を低減でき、首周りを十分に保護することが可能となる。
【0038】
また、重畳空間Sを開放させる前側開放端55の上端55aのみにおいて、内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とが固定され、前側開放端55の上端55a以外の部分では内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とが非固定となっている。同様に、後側開放端56の上端56aのみにおいて、外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とが固定され、後側開放端56の上端56a以外の部分では外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とが非固定となっている。換言すると、重畳空間Sの全領域うち、外側上端縁52bおよび内側上端縁51bの位置を除く領域において、重畳空間Sが全周で開放されていることになる。よって、吸気ライン3が大きく動作した場合にも、この動作に追従して外側オーバーラップ領域52だけがフラップのように大きく捲れ上がることができ、内側オーバーラップ領域51は首を覆った状態を維持することができる。
【0039】
また、外側オーバーラップ領域52の外側後端縁52aは、下側に向かうにしたがって前側に向かって傾斜しているため、使用者Uの背面から肩に向かって斜め上方に延びてくる吸気ライン3が配置される重畳空間Sにおける領域、すなわち吸気ライン3が内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52に対向して挟み込まれる領域を最小限に抑えることができる。よって、吸気ライン3の動作による外側オーバーラップ領域52の捲れ上がり(バタつき)を最小限に抑えることができる。
【0040】
これに加え、内側オーバーラップ領域51における内側前端縁51aは、下側に向かうにしたがって後側に向かって傾斜しているため、重畳空間Sの大きさを最小限に抑え、すなわち、シート本体40がオーバーラップする部分を少なくし、材料費低減によるコストダウンにつながる。
【0041】
また吸気ライン3は通常、首の一方側の側部のみに配置される。この点、本実施形態では内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52が、首の一方側の側部のみに設けられていることで、首の一方側の側部のみに位置する吸気ライン3を重畳空間Sに配置する機能を十分果たすことができ、かつ、シート本体40がオーバーラップする部分を最小限にして材料費低減や加工費低減によるコストダウンにつながる。
【0042】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、内側オーバーラップ領域51と外側オーバーラップ領域52とが重なることで形成される内部空間である重畳空間Sの全領域のうち、少なくとも下側半分の領域が全周で開放されていればよい。具体的には例えば図4に示すように、内側前端縁51aの上端から内側前端縁51aの延在方向の中央位置C1までが内側前端縁51aと外側オーバーラップ領域52とが固定され、外側後端縁52aの上端から外側後端縁52aの延在方向の中央位置C2までが外側後端縁52aと内側オーバーラップ領域51とが固定されていてもよい。この場合、重畳空間Sの全領域のうち下側半分の領域Xが全周で開放されていることになる。
【0043】
外側オーバーラップ領域52における外側後端縁52a、および内側オーバーラップ領域51における内側前端縁51aは必ずしも前後へ傾斜していなくともよく、例えば上下に真っすぐに延びるように形成してもよい。
【0044】
また、内側オーバーラップ領域51および外側オーバーラップ領域52は、首の両側の側部に設けてもよい。この場合、しころ4は上記中心線Oを基準として、完全に左右対称の構成とすることができ、吸気ライン3を首のいずれの側に配置する場合においても、しころ4を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のしころ、および呼吸器セットによれば、吸気ラインの動作による首の露出の可能性を低減し、首周りを十分に保護することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1…呼吸器本体
2…面体
3…吸気ライン
4…しころ
5…防火帽
10…固定ベルト
11…背負い具
20…面体本体
21…隔障
22…吸気ライン接続部
40…シート本体
41…第一固定部材
42…第二固定部材
51…内側オーバーラップ領域
51a…内側前端縁
52…外側オーバーラップ領域
52a…外側後端縁
53…第一の非オーバーラップ領域
54…第二の非オーバーラップ領域
55…前側開放端
56…後側開放端
57…接続領域
100…呼吸器セット
B…ガスボンベ(吸気ガス源)
G…吸気ガス
S…重畳空間(吸気ライン配置空間)
U…使用者
X…下側半分の領域
図1
図2
図3
図4