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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165926
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】塗装方法および塗料セット
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20241121BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B05D3/12 Z
C09D201/00
B05D7/24 301U
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082522
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白方 陽菜子
(72)【発明者】
【氏名】網野 可菜
(72)【発明者】
【氏名】青木 敬太
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】若尾 順子
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC53
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB60Z
4D075BB91Z
4D075BB96Z
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA27
4D075DB36
4D075DC01
4D075DC05
4D075DC11
4D075EA05
4D075EA27
4D075EB22
4D075EB35
4D075EB38
4D075EB51
4D075EC30
4D075EC51
4J038DG111
4J038DG191
4J038DG261
4J038JA18
4J038MA07
4J038NA24
(57)【要約】
【課題】主剤と硬化剤を混合した後の塗料の粘度上昇率が低いことから、工場での塗装にも適用できる多液反応硬化型塗料の塗装方法と塗料セットを提供する。
【解決手段】多液反応硬化型塗料の塗装方法であって、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤、あるいは、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を含有する(A)主剤と(B)硬化剤とを予め用意し、塗装前に混合した後に塗装媒体に塗工することを特徴とする、塗装方法および塗料セット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多液反応硬化型塗料組成物の塗装方法であって、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を予め用意し、塗装前に混合して調製された塗料組成物(X)を塗装媒体に塗工することを特徴とする、塗装方法。
【請求項2】
(A)主剤と(B)硬化剤とを少なくとも含む多液反応型塗料組成物の塗装方法であって、(A)主剤は(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を含み、(A)主剤と(B)硬化剤を塗装前に混合して調製された塗料組成物(Y)を塗装媒体に塗工することを特徴とする、塗装方法。
【請求項3】
前記(B)硬化剤がイソシアネートを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の塗装方法。
【請求項4】
前記塗料組成物(X)を調製した後、23℃、4時間経過した後の塗料組成物(X)の粘度上昇率が塗料混合初期の2倍以内であるとともに、完全硬化時の塗膜のゲル分率が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の塗装方法
【請求項5】
前記塗料組成物(Y)を調製した後、23℃、4時間経過した後の塗料組成物(Y)の粘度上昇率が塗料混合初期の2倍以内であるとともに、完全硬化時の塗膜のゲル分率が80%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の塗装方法
【請求項6】
(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を少なくとも含む、塗料セット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液型塗料の塗装方法と塗料セットに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料には1液で乾燥するラッカータイプ塗料、1液の架橋性塗料、2液以上の多液形態で塗装時に混合して使用する多液混合型塗料等の他、粉体塗料、水性塗料、溶剤系塗料、エネルギー線硬化型塗料、常温乾燥型塗料、加熱乾燥型塗料等さまざまな種類、特徴があり、使用環境や被塗物、目的性能による使い分けがなされている。この中で、主剤と硬化剤を塗装直前に混合して使用する2液反応硬化型塗料は、主に建築物や構造物用途、自動車補修用途等の常温乾燥型塗料として使用されることが多く、塗料を混合後、被塗物への塗装が完了するまで塗装作業性の良い塗料であることと、塗装後、速やかに乾燥硬化して次段階の塗装を行う、あるいは塗装を完了させる観点から、混合後の可使時間が1時間~8時間程度となるように用途にあわせて調整した塗料を使用することが一般的である。
【0003】
ところで、近年、塗料に替わり、フィルムを用いて基材を保護、加飾する方法についても検討がなされている。特開2002-234077号公報(特許文献1)には、無機建材表面に、塗装フィルムを熱及び/又は圧力により接合させることにより得られることを特徴とする塗膜積層無機建材が記載されている。特許文献1では、無機建材は、多孔質構造を有すると共に各種加工が施されているものが一般的に使用されていることから、塗料による塗装では、均一な塗膜を形成することが難しく、塗膜自体にワレや剥がれが生じるなどといった問題点があったところ、無機建材表面に塗装フィルムを熱及び/又は圧力により接合させる手法とすることで、塗料による塗装で生じていた問題点を解決することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-234077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の実施例3に開示されているA成分とB成分を混合するタイプの2液反応型塗料においては、2成分混合後ただちに塗装した場合には均一な塗膜を形成できるものの、混合後時間が経過するとともに反応の進行によって塗料の粘度が上昇し、塗工が困難となる特徴があった。特に、工場でのフィルム塗工では長時間塗料を使用し続けるため、建築物や構造物向けの2液反応型塗料の可使時間に比べ、より長い可使時間が求められる。つまり、2成分混合後、粘度の経時的な上昇率が小さく、長期にわたり良好に塗工できる2液反応型塗料が必要になるが、従来の技術ではこれを実現することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、塗料混合後の粘度上昇率が低く、可使時間の長い塗料の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)主剤と(B)硬化剤を含む多液反応硬化型塗料を混合して塗装する際に、別途(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を用意し、これらを混合した後に塗装媒体に塗工することによって、塗料の粘度上昇率が抑えられるとともに可使時間の十分に長い塗装方法を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
従って、本発明の塗装方法は、多液反応硬化型塗料の塗装方法であって、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を予め用意し、塗装前に混合して調製された塗料組成物(X)を塗装媒体に塗工することを特徴とする、塗装方法である。
【0009】
本発明の他の形態は、(A)主剤と(B)硬化剤とを少なくとも含む多液反応型塗料組成物の塗装方法であって、(A)主剤は(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を含み、(A)主剤と(B)硬化剤を塗装前に混合して調製された塗料組成物(Y)を塗装媒体に塗工することを特徴とする、塗装方法である。
【0010】
本発明の塗装方法の好適例において、(B)硬化剤がイソシアネートを含む。
【0011】
本発明の塗装方法の他の好適例においては、前記塗料組成物(X)を調製した後、23℃、4時間経過した後の塗料組成物(X)の粘度上昇率が塗料混合初期の2倍以内であるとともに、乾燥後の塗膜のゲル分率が80%以上である。
【0012】
本発明の塗装方法の他の好適例においては、前記塗料組成物(Y)を調製した後、23℃、4時間経過した後の塗料組成物(Y)の粘度上昇率が塗料混合初期の2倍以内であるとともに、乾燥後の塗膜のゲル分率が80%以上である。
【0013】
また、本発明の他の形態は、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を少なくとも含む、塗料セットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、混合後の塗料の粘度上昇率が抑えられるとともに加飾フィルム塗装等の工場塗装に用いられる際にも適用できる、可使時間の長い塗装方法と、それを実現する塗料セットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、塗料の塗装方法および塗料セットに関する。
本発明の塗装方法は、塗料を基材に塗装する方法である。ここで、基材はフィルムの他、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタンやそれらの合金等の金属基材、セメント、コンクリート、石膏、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、大理石、人工大理石、ガラス、セラミック等の金属以外の無機質基材、木質基材、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、特にはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック基材、並びにこれら基材の2種以上の材料を組み合わせた複合基材等が挙げられる。
【0016】
基材がフィルムの場合には、基材フィルム層は、樹脂フィルムから構成されていることが好ましい。フィルムに使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ABS樹脂及びPVC樹脂が特に好ましい。樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、基材は、様々な形状のものがあり、例えば、フィルム状、シート状、板状等の二次元形状基材や複雑形状の立体物である三次元形状基材等がある。基材の表面は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。また、本発明における基材は、表面に塗料やインク等が予め塗工されたものであっても良い。
【0018】
まず、本発明の塗装方法について説明する。本発明の塗装方法は、以下の2つの工程を含む塗装方法である。
第1の工程:(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤、または、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を含有する(A)主剤と(B)硬化剤を別々に用意した後、混合して1つの塗料とする工程。
第2の工程:第1の工程にて調製した塗料を基材上に塗装する工程。
【0019】
本発明の塗装方法では、(A)主剤と(B)硬化剤に加えて、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を用意し、これを混合した塗料を塗工することで、塗料の粘度上昇が抑えられ、たとえば加飾フィルムを作成するために工場で塗工し、塗膜層を形成する際にも、十分な可使時間を確保することができる。尚、(A)主剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤は、別々に用意して塗工前に混合してもよいが、(A)主剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤をあらかじめ混合して用意しておき、塗工前に(B)硬化剤と混合してもよい。本発明においては、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を予め用意し、塗装前に混合して調製された塗料組成物を塗料組成物(X)、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を含む(A)主剤と(B)硬化剤を塗装前に混合して調製された塗料組成物を塗料組成物(Y)という。
【0020】
本発明において、塗膜層とは、基材上に配置される層のうち、塗装によって形成される塗膜の層を意味する。
【0021】
第1の工程において、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の他に別の成分を別途用意し、混合してもよい。
【0022】
第1の工程における、(A)主剤は、通常樹脂を含む。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの内、(B)硬化剤と反応硬化する観点より、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、アルコキシメチル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有していることが好ましく、特に、水酸基を含有していることが好ましい。
【0023】
水酸基を含有する樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有エポキシ樹脂、水酸基含有アルキド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
第1の工程における、(B)硬化剤は、イソシアネートやカルボジイミド、オキサゾリン、メラミン、アミン等、通常使用される硬化剤であれば特に限定されるものではなく、従来公知の硬化剤を広く使用することができるが、中でも、水酸基含有樹脂と反応する観点より、イソシアネート、 カルボジイミドより選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。これら(B)硬化剤は(A)主剤と混合することで反応を開始し、架橋密度が高く、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の物性に優れる塗膜を形成することができる。
(A)主剤と(B)硬化剤の配合比は当量比から求めることが好ましい。例えば、(A)主剤が水酸基を含み、(B)硬化剤がイソシアネートを含む場合の当量比(NCO/OH)は0.6~2.2であることが好ましく、0.7~2.0であることがより好ましく、0.8~1.8であることが特に好ましい。
【0025】
第1の工程における、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤は、(A)主剤と(B)硬化剤の硬化速度を調整する機能を有する。本明細書では、この(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を「本発明の硬化速度調整剤」とも称する。
【0026】
本発明の硬化速度調整剤に用いられるアルコール類としては、例えば、1価アルコール、多価アルコールなどが挙げられる。
【0027】
1価アルコールは、1分子中に水酸基を1つ有する有機化合物であって、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなどの直鎖状の1価アルコール、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルへキサン-1-オール、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(炭素数5~20)などの分岐状の1価アルコールが挙げられる。
【0028】
多価アルコールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブタンジオールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタンなどのアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどの脂肪族多価アルコールが挙げられる。
【0029】
アルコール類として、好ましくは、1価アルコール、または2価アルコール、より好ましくは、分子量70~170の1価アルコール、より好ましくは、ブタノール、イソブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、tert-ブタノール等が挙げられる。なかでも、分子量80以下の1価アルコールが塗料の粘度上昇率を効果的に抑えるとともに、塗工後の乾燥性、成膜性に優れることから特に好ましい。
【0030】
本発明の硬化速度調整剤に用いられるアルコール類は沸点が70℃以上であることが好ましく、沸点が80℃以上250℃未満であることがより好ましい。本発明において、硬化速度調整剤は(B)硬化剤との混合時に使用することで、(A)主剤と(B)硬化剤の硬化速度を緩やかにし、混合後の塗料の可使時間を長くする効果を有する。沸点80℃以上250℃未満のアルコールを含む硬化速度調整剤を用いることで、硬化速度が緩やかになり、塗料の粘度上昇率が抑えられるとともに、硬化後は(C)硬化速度調整剤を含まない場合と同様に架橋密度の高い塗膜を形成することができる。
【0031】
第1の工程において、(A)主剤および/または(B)硬化剤は有機溶剤等の溶媒成分を含んでいることが好ましい。これら溶媒は通常、塗料に使用されるものであれば限定なく使用することができる。塗料中の溶媒量は10~95質量%の範囲内であることが好ましく、20~90質量%の範囲内であることがより好ましい。本発明は特に弱溶剤系塗料、強溶剤系塗料等の非水系塗料において顕著な効果が得られる。
【0032】
第1の工程において、(A)主剤および/または(B)硬化剤は、その他の成分として、顔料、溶剤、分散剤、酸化防止剤、沈降防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、付着性付与剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、殺虫剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、帯電防止剤、導電性付与剤等を必要に応じて適宜含んでいてもよい。
【0033】
第2の工程において、基材は予め塗料やインク等が塗工されていてもよく、基材上に塗装する塗膜層は一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0034】
第2の工程において、基材上に設けられる塗膜層は、厚さが120μm以下であることが好ましく、5~80μmであることがより好ましい。塗膜層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、塗膜層の合計の厚さを指す。本発明における第2の工程は、同一の塗料を用いて二層以上の塗膜を形成してもよいし、別種の塗料を用いて二層以上の多層を形成してもよい。
【0035】
第2の工程において、塗膜層は、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、ロールコーター塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)、シャーワーコーター塗装、ディッピング塗装等によって基材に塗料を塗装することで得られる。
【0036】
第2の工程において、塗膜層の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよい。
【0037】
本発明の塗装方法は、特に基材が加飾フィルム等のフィルムである際の効果に優れる。特に、加飾フィルムをロールTOロールで塗装する際には、1層目を塗工した加飾フィルムを一旦ロール状に巻き取り、その後、再度ロールを開いて2層目を塗工し、再度ロール状に巻き取るといった工程となることから、塗料は可使時間が確保されるとともに乾燥性にも優れることが求められる。本発明の塗装方法は可使時間が確保されるとともに、乾燥性に優れることから、ロールTOロールでの塗装にも適している。ここで、加飾とは、意匠を施したり、異なる質感を付与したりすることを意味する。また、意匠とは、形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合である。
【0038】
本発明において、基材が加飾フィルムの場合、適用される対象物には各種物品が含まれるが、自動車や自動車部品、住宅外装材、内装材、電化製品、小物、インテリア用品等が好適である。また、加飾フィルムを適用する対象物の材質も多様であり、例えば、プラスチックや金属等がある。
【0039】
本発明において、加飾フィルムは、多層構造を有していてもよい。多層構造の形態としては、例えば、接着層/基材フィルム層/プライマー層/光輝層/クリヤー層、クリヤー層/基材フィルム層/プライマー層/光輝層/接着層、接着層/基材フィルム層/エナメル層/クリヤー層、接着層/基材フィルム層/プライマー層/エナメル層、接着層/基材フィルム層/プライマー層/エナメル層/クリヤー層、基材フィルム層/接着層/プライマー層/光輝層/クリヤー層、基材フィルム層/接着層/エナメル層、基材フィルム層/接着層/エナメル層/クリヤー層、基材フィルム層/接着層/プライマー層/エナメル層/クリヤー層、接着層/成形フィルム層/プライマー層/エナメル層、接着層/成形フィルム層/プライマー層/エナメル層/クリヤー層、接着層/プライマー層/エナメル層、接着層/プライマー層/エナメル層/クリヤー層や、エナメル層や光輝層を印刷層としたもの、等がある。
【0040】
フィルムの製造に使用できる成形方法、塗装方法及び印刷方法としては、従来知られている成形方法、塗装方法及び印刷方法を使用することができる。なお、例えば、塗膜のみから構成されるフィルムや印刷膜のみから構成されるフィルムを使用する場合は、ポリプロピレン等の支持体上に塗膜(単層もしくは積層)又は印刷膜(単層もしくは積層)を形成し、支持体から塗膜又は印刷膜を剥離することで、塗装フィルムを得ることができる。
【0041】
フィルムの製造に使用できる成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、圧空成形等が挙げられる。
【0042】
フィルムの製造に使用できる塗装方法としては、例えば、バーコーター、ダイコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等のコーターを用いた塗装方法やディッピングが挙げられる。
【0043】
フィルムの製造に使用できる印刷方法としては、例えば、インクジェット(IJ)印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、デザインスプレー等が挙げられる。
【0044】
フィルムに塗工する際の塗膜層は、厚さが250μm以下であることが好ましく、10~180μmであることが更に好ましい。塗膜層が厚すぎると、例えば凹凸形状の基材上にフィルムを含む塗膜層を設ける場合に、基材の凹凸に追従した状態で設置する観点から、厚すぎないことが好ましい。フィルム上の塗膜層が複数層からなる場合、ここに記載される厚さの数値範囲は、塗膜層の合計の厚さを指す。
【0045】
フィルム上の塗膜層は、着色されていてもよいし、透明であってもよい。また、全面に塗装しても良いし、一部のみを塗装しても良い。
【0046】
また、基材が加飾フィルムの場合、フィルム層の一方の表面には、接着層が設けられていてもよい。加飾フィルムは、接着層を介して、加飾をおこなう対象物に付着させることができる。
【0047】
接着層は、接着剤から構成される層である。接着層及び接着剤は、それぞれ粘着層及び粘着剤と称される場合もある。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、これらの中でも、アクリル系接着剤が好ましい。
【0048】
本発明の基材が加飾フィルムの場合、加飾フィルムの対象物への付着性の観点から、第2の工程により得られる塗膜層と、フィルム層の表面に設けられた接着層のいずれか一方の層がアクリル樹脂を含むことが好ましく、当該塗膜層と接着層の両方の層がアクリル樹脂を含むことが更に好ましい。
【0049】
接着層の厚さは、20~200μmであることが好ましい。
【0050】
接着層は、加飾フィルム層の表面に接着剤を塗布することで形成することができる。フィルム状の接着層を加飾フィルム層に貼り合わせることもできる。
【0051】
次に、本発明の塗装方法における粘度上昇率と塗膜のゲル分率について説明する。
【0052】
(A)主剤と(B)硬化剤を混合して塗装する反応硬化型塗料は混合によって架橋反応が進行することから、塗料の粘度が上昇し、塗装後、乾燥した後には、架橋された塗膜によって高い塗膜物性が得られる。ゲル分率は塗膜の架橋度を測る尺度として用いられる。塗料を加飾フィルムに工場ラインで塗装する際、好ましい粘度上昇率は塗料の種類や初期粘度、塗装機にもよるものの混合初期の2~5倍程度までであり、連続して塗工する時間としては4~18時間程度が求められる。また、塗料の反応速度は温度によっても依存されるが、常温~微加温にて塗装されることを想定した場合、23℃において、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤を混合した後の粘度上昇率が4時間後に初期の2倍以内、好ましくは19時間後に初期の5倍以内であれば、工場生産時にも適用できるものと考えられる。
【0053】
本発明における粘度は23℃に調整した塗料のレオメーター(例えばPhysical MCR301)によって測定される10(1/s)および100(1/s)における粘度である。塗料の塗装においては、塗装時の粘度と塗装後の粘度の両方を調整することが好ましいことから、10(1/s)および100(1/s)の粘度が4時間後も2倍以内であることが好ましい。
【0054】
本発明における塗料の粘度は特に限定されるものではなく、塗料混合後8時間まで、特には19時間までの塗料の粘度上昇率が低いことが重要であるが、粘度の初期値は例えば10(1/s)において20~100mPa・sの範囲内であり、100(1/s)において20~100mPa・sの範囲内である。
【0055】
ここで、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤は(A)主剤と(B)硬化剤の硬化反応を緩やかに進行させるように硬化速度を調整するものの、形成される塗膜の物性を低下させないものが好ましい。そこで、塗料組成物(X)および/または塗料組成物(Y)を塗装して得られる塗膜の完全硬化時におけるゲル分率は80%以上とすることが好ましい。ここで、本発明でいう「塗膜の完全硬化時」とは、塗料組成物を室温による自然乾燥あるいは加熱等による強制乾燥より溶剤(揮発成分)を揮発させた後、23℃にて6日間養生した時を指す。また、ロールTOロールでの塗装においては、ロールに巻き取る前の塗膜のゲル分率が50%以上であることが好ましい。
【0056】
ゲル分率は、有機溶媒に対する塗膜の耐性の程度を表す指標である。本明細書において、塗膜のゲル分率は、100mm×100mmの塗膜を有機溶媒中に浸漬させた際に溶出せずに残存する塗膜の質量割合をいう。
具体的には、浸漬前の塗膜の質量をM1とし、浸漬後の塗膜の質量をM2とするとき、以下の式から塗膜のゲル分率を求めることができる。
ゲル分率(%)=M2/M1×100
ここで、浸漬とは、塗膜1gに対して100gの量のトルエンとアセトンの混合溶液(質量比1:1)中に塗膜を還流下で5時間浸漬させることを指す。浸漬後の塗膜の質量は、浸漬後に105℃で30分間乾燥した後の塗膜の質量である。
【0057】
(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の種類と量を調整することで、23℃で混合して19時間後の粘度上昇率を2倍以内とし、かつ、塗工後、6日間後のゲル分率を80%以上とすることができる。具体的には、塗料に使用される樹脂のガラス転移点(Tg)や水酸基価及び硬化剤の官能基含有率を適宜調整すること、(A)主剤と(B)硬化剤の当量比を調整すること、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の配合量を調整すること等によって調製できる。(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の配合量は(A)主剤に含まれるバインダー樹脂量の5~30質量%であることが好ましい。(C)アルコールを含む硬化速度調整剤量が多い場合には高い粘度上昇抑制効果と可使時間延長効果が得られるものの、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤量が多すぎる場合には、(A)主剤と(B)硬化剤の硬化反応が阻害され、得られた塗膜のゲル分率が低くなり、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜物性が低下する場合がある。特には、(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の作用によって(B)硬化剤が失活し、硬化後の塗膜のゲル分率が低くなる場合がある。また、ゲル分率が低い場合には、ロールTOロールでの巻取りが困難になりやすいことから、特にロールTOロールで塗装を行う場合には、塗膜の完全硬化時におけるゲル分率は80%以上、巻き取り時におけるゲル分率は50%以上であることが好ましい。
【0058】
(A)主剤に対する(C)アルコールを含む硬化速度調整剤の配合量は3~15質量%であることが好ましい。
【0059】
次に、本発明の塗料セットについて説明する。
【0060】
本発明の塗料セットは、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤とを少なくとも含む。(A)主剤と(C)アルコールを含む硬化速度調整剤は別々に用意してもよく、予め混合して用意してもよい。(B)硬化剤は(A)主剤と反応して硬化することから、本発明の塗料セットは、(A)主剤と(B)硬化剤と(C)アルコールよりなる塗料セット、あるいは、(A)主剤および(C)アルコールを含む硬化速度調整剤と、(B)硬化剤よりなる塗料セットである。各々の内容については、前述の塗装方法の説明において記載したとおりである。
【実施例0061】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
<塗料の調製>
下記混合比にて、実施例1~25、比較例1~6の塗料を調製した。

(A)主剤
・主剤No.1
アクリル樹脂A/ポリエステル樹脂A/ポリエステル樹脂B=70/10/20の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・アクリル樹脂A:固形分69質量%、酸価9.0mgKOH/g、水酸基価117mgKOH/g
・ポリエステル樹脂A:固形分100質量%、酸価3.3mgKOH/g、水酸基価110mgKOH/g
・ポリエステル樹脂B:固形分80質量%、酸価1.8mgKOH/g、水酸基価3.5mgKOH/g
・主剤No.2
アクリル樹脂B/アクリル樹脂C/ポリエステル樹脂A=49/21/30の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・アクリル樹脂B:固形分50質量%、酸価4.0mgKOH/g、水酸基価0mgKOH/g
・アクリル樹脂C:固形分50質量%、酸価3.0mgKOH/g、水酸基価0mgKOH/g
・ポリエステル樹脂A:固形分100質量%、酸価3.3mgKOH/g、水酸基価110mgKOH/g

(B)硬化剤
・硬化剤No.1
イソシアネート硬化剤A/イソシアネート硬化剤B=50/50の固形分質量比で混合し、硬化剤No.1を調製した。使用した材料は下記のとおりである。
・イソシアネート硬化剤A:製品名スミジュールN3800、固形分100質量%、NCO基含有率11.0質量%、住化コベストロウレタン(株)製
・イソシアネート硬化剤B:製品名スミジュールZ4470MPA/X、固形分100質量%、NCO基含有率11.9質量%、住化コベストロウレタン(株)製
・硬化剤No.2
硬化剤No.2に使用した材料は下記のとおりである。
・イソシアネート硬化剤C:バーノック DN-990S、固形分100質量%、NCO基含有率17.0質量%、DIC(株)製

(C)アルコールを含む硬化速度調整剤
・nBOH:n-ブタノール、分子量74.12、沸点117.7℃、第一級アルコール
・IBOH:イソブタノール、分子量74.12、沸点108℃、第一級アルコール
・IPOH:イソプロパノール、分子量60・9、沸点83℃、第二級アルコール
・PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル、分子量90.12、沸点120℃、第一級アルコール
・CCB:エチレングリコールモノブチルエーテル、分子量111.18、沸点171℃、第二級アルコール
・2CCB:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、分子量162.23、沸点230℃、第一級アルコール
・tBOH:tert-ブタノール、分子量74.12、沸点83℃、第三級アルコール

(その他の溶剤)
・MEK:メチルエチルケトン、分子量72.11、沸点79.6℃、ケトン系溶剤
・BA:酢酸ブチル、116.16、沸点126.1℃、エステル系溶剤
【0063】
<実施例1>
<ゲル分率測定用単離膜の作製>
主剤No.1、硬化剤No.1を当量比1.6になるように混合し、硬化速度調整剤nBOHを表1に示す割合にて添加した塗料をPP板(150mm×70mm×2mm)に対し3ミルアプリケーターにて塗装し、80℃にて30分乾燥後、6日間23℃にて養生し塗装体を得た後、剥離し単離膜を得た。
【0064】
<塗膜外観・耐酸性・耐アルカリ性・塗膜乾燥性試験用塗装体の作製>
主剤No.1、硬化剤No.1を当量比1.6になるように混合し、nBOHを表1に示す割合にて添加した塗料をABS板(150mm×70mm×2mm)に対し3ミルアプリケーターにて塗装し、80℃30分乾燥させ、塗装体を得た。
【0065】
<実施例2~25、比較例1~6>
実施例2~25、比較例1~6についても、実施例1と同様に表1または2に記載の条件に基づいて塗装体を作製した。
【0066】
<粘度上昇率の測定>
塗料調製後、直ちに測定した粘度の値と、23℃、4時間または19時間静置後の粘度の値を比較し、粘度上昇率を求めて表1および表2に記載した。粘度の測定にはレオメーター Physical MCR301(Anton Paar社製)を使用した。4時間後の粘度上昇率が2.0未満である場合、さらには、19時間後の粘度上昇率が7.0未満、特には5.0未満であるとき、高い可使時間延長効果が得られていると判断できる。

(評価基準)
・4時間後の評価
〇:粘度上昇率≦2.0
×:粘度上昇率>2.0
・19時間後の評価
塗装仕様、初期粘度の違いにより、表1と表2の塗料においては好ましい粘度上昇率の範囲が異なるため、各々、以下の基準にて粘度上昇率を評価した。〇は初期と同様の条件にて初期と同等の塗膜外観が得られる粘度範囲、△は塗装は行えるものの、塗布量や塗工速度の調整等の工夫が必要な粘度範囲、×は塗工が困難な粘度範囲である。
表1の塗料の場合
〇:粘度上昇率≦5.0
△:5.0<粘度上昇率≦7.0
×:粘度上昇率>7.0
表2の塗料の場合
〇:粘度上昇率≦2.0
×:粘度上昇率>2.0
【0067】
<塗膜外観評価>
上記にて得られた80℃30分乾燥後の塗装体について、下記の基準に基づいて塗膜外観評価を行った。
(評価基準)
○:ゆず肌が発生していない状態。
×:ゆず肌が発生した状態。
【0068】
<ゲル分率の測定>
実施例1~12および比較例1~3の塗料を用いて、各々の塗膜のゲル分率を測定した。上記にて得られた単離膜1gに対して100gの量のトルエンとアセトンの混合溶液(質量比1:1)中に塗膜を還流下で5時間浸漬させた後、105℃で30分間乾燥させ、下記の式にてゲル分率を求めた。結果を表1に示した。
ゲル分率(%)=M2/M1×100
(浸漬前の塗膜の質量をM1、浸漬後の塗膜の質量をM2とする)
(評価基準)
〇:ゲル分率≧90.0
△:80.0≦ゲル分率<90.0
×:ゲル分率<80.0
【0069】
<耐酸性試験・耐アルカリ性試験>
上記にて得られた80℃30分乾燥後の塗装体を23℃にて6日間養生した後、「JIS K 5600-6-1」、耐液体性(一般的方法)試験法、点滴法に準拠して、耐酸性試験・耐アルカリ性試験を行った。
試験液としては、耐アルカリ性試験については試験液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液とし、50±2℃に保持した恒温槽に入れ、3時間放置した後、試験体を水洗して拭き取り、試験部の塗面状態を目視により下記の基準で評価した。また、同様に耐酸性試験については試験液として0.1N硫酸水溶液を使用し、標準状態(25±2℃、50±5%RH)で24時間放置した後、試験板を水洗して拭き取り、試験部の塗面状態を目視により下記の基準で評価した。結果を表1および表2に示した。
(評価基準)
〇:塗膜表面に変化なし
△:塗膜表面にわずかな変色が認められる。
×:塗膜表面に変色が認められる。
【0070】
<塗膜乾燥性試験>
上記にて得られた80℃30分乾燥後の塗装体について、「JIS K 5600-1-1」に準拠し、指触乾燥性を試験し、以下の基準に基づいて塗膜乾燥性を評価した。
(評価基準)
〇:塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態。
△:塗面の中央に指先で軽く触れて、わずかに指先が汚れる状態。
×:塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れる状態。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】