(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016593
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】照明装置、測距装置及び車載装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240131BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240131BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/484
G01C3/06 120Q
G01C3/06 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118834
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100160440
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】金谷 みどり
(72)【発明者】
【氏名】小林 高志
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AA09
2F112AD01
2F112BA01
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA05
2F112DA11
2F112DA17
2F112DA21
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2F112DA28
2F112EA20
2F112FA07
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
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5J084AC07
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5J084BA04
5J084BA05
5J084BA07
5J084BA08
5J084BA36
5J084BB04
5J084BB17
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】例えば、FOVの切替を可能とした照明装置を提供する。
【解決手段】第1の光を出射する第1の発光素子及び第2の光を出射する第2の発光素子を有する発光部と、第1の光及び第2の光の光路上に配置される光学部材が、第1の光及び第2の光のそれぞれに対して異なるように作用することで、第1の光による投射範囲と第2の光による投射範囲とを変化させる、照明装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1の発光素子及び第2の光を出射する第2の発光素子を有する発光部と、
前記第1の光及び前記第2の光の光路上に配置される光学部材が、前記第1の光及び前記第2の光のそれぞれに対して異なるように作用することで、前記第1の光による投射範囲と前記第2の光による投射範囲とを変化させる、
照明装置。
【請求項2】
前記光学部材が、前記第1の光には作用せず、前記第2の光のみを屈折又は回折することで、前記第1の光による投射範囲と前記第2の光による投射範囲とを変化させる、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1の光と前記第2の光とが、異なる偏光特性を有する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1の光と前記第2の光とが、互いに直交する偏光特性を有する、
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光学部材が、偏光回折素子である、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記光学部材が、液晶素子である、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光学部材が、偏光メタマテリアルである、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項8】
複数の前記第1の発光素子及び複数の前記第2の発光素子を有する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光学部材を有する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、面発光型半導体レーザである、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、励起光源層と、レーザ媒質と、可飽和吸収体とを含む構成を有する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、励起光源層と、レーザ媒質と、可飽和吸収体とが積層された構成を有する、
請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
請求項1に記載の照明装置と、
前記照明装置を制御する制御部と、
対象物から反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部で得られた画像データから測距距離を算出する測距部と、
を有する、
測距装置。
【請求項14】
請求項13に記載の測距装置を有する、
車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置、測距装置及び車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の空間伝搬時間計測(ToF: Time of Flight)による距離の測定や物体の形状認識などの用途に利用され、自動車の自動運転システムに不可欠なLiDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)方式に適用される照明装置に関する開発が進んでいる。ToF法を用い計測する方法としては、複数の発光素子から出射された光を拡散板で拡散させ、測定対象範囲全面に一様に照射(一様照射)し、反射光を2次元状に分割された受光部を持つ光検出器で検出する方法がある。また、測距距離を延ばす方法としては、複数の発光素子から出射された光をコリメータレンズで略平行にし、測定対象物に対して、点状の光ビームを照射(スポット照射)する方法がある。例えば、下記の特許文献1には、これら2つ(一様照射用とスポット照射用)の光源を有する測距装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2019/0137856号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測距対象範囲、すなわち、レーザ光の照射範囲に対応する視野角は、FOV(Field of view)と呼ばれ、デバイスの使用目的に応じて設定される。例えば、車載LiDAR向けのデバイスとしては、周辺監視等の目的においては近距離を測距可能、すなわち、FOVが大きい(広FOV)ことが要求とされ、高速運転時等は遠距離を測距可能、すなわち、FOVが小さい(狭FOV)ことが要求される。上述した特許文献1に記載の技術では、異なるFOVを有するそれぞれのデバイスが必要となってしまうため、装置全体の大型化やコストの増加を招来する虞がある。
【0005】
本開示は、異なるFOVの切替が可能な照明装置、及び、当該照明装置を備える測距装置及び車載装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、
第1の光を出射する第1の発光素子及び第2の光を出射する第2の発光素子を有する発光部と、
第1の光及び第2の光の光路上に配置される光学部材が、第1の光及び第2の光のそれぞれに対して異なるように作用することで、第1の光による投射範囲と第2の光による投射範囲とを変化させる、
照明装置である。
【0007】
本開示は、例えば、
上述した照明装置と、
照明装置を制御する制御部と、
対象物から反射された反射光を受光する受光部と、
受光部で得られた画像データから測距距離を算出する測距部と、
を有する、
測距装置である。
本開示は、上述した測距装置を有する車載装置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る測距装置の構成例を表すブロック図である。
【
図2】A及びBは、測距方法の具体例を説明するための図である。
【
図3】第1の実施形態に係る発光部の構成例を説明するための図である。
【
図4】第1の光及び第2の光を模式的に示した図である。
【
図5】第1の発光素子群及び第2の発光素子群の例を説明するための図である。
【
図6】第1の発光素子群及び第2の発光素子群に対する発光切替例を説明するための図である。
【
図7】第1の発光素子及び第2の発光素子を拡大して示した図である。
【
図8】A及びBは、第1の実施形態に係る回折素子によりFOVが拡大することを説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態に係る回折素子の構成例を説明するための図である。
【
図10】第1の実施形態に係る回折素子の断面構成例を説明するための図である。
【
図11】A及びBは、第2の実施形態に係る有機液晶素子の構成例を説明するための図である。
【
図12】A及びBは、第3の実施形態に係るメタマテリアルの構成例を説明するための図である。
【
図13】第4の実施形態に係る発光部の構成例を説明するための図である。
【
図14】コリメータレンズのみである場合の、発光部とコリメータレンズとFOVとの関係について説明するための図である。
【
図15】第5の実施形態に係る発光部の構成例を説明するための図である。
【
図16】第5の実施形態に係る拡散板の構成例を説明するための図である。
【
図17】第5の実施形態に係る拡散板及び偏光回折素子の作用の一例を説明するための図である。
【
図18】第5の実施形態に係る拡散板及び偏光回折素子の作用の一例を説明するための図である。
【
図19】第6の実施形態に係る発光素子の構成例を説明するための図である。
【
図20】第6の実施形態に係る偏光制御部の断面構成例を説明するための図である。
【
図21】第6の実施形態に係る偏光制御部の配置例を示す図である。
【
図22】第6の実施形態の変形例を説明するための図である。
【
図23】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<第1の実施形態>
<第2の実施形態>
<第3の実施形態>
<第4の実施形態>
<第5の実施形態>
<第6の実施形態>
<変形例>
<応用例>
なお、以下に説明する実施形態等は本開示の好適な具体例であり、本開示の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。なお、以下の説明において、実質的に同一の機能構成を有するものについては同一の符号を付し、重複説明を適宜省略する。また、図示が煩雑になることを防止するために、一部の構成のみに参照符号を付す場合や、図示を簡略化したり、拡大/縮小する場合もある。
【0010】
<第1の実施形態>
[測距装置の構成]
図1は、本技術に係る照明装置の一実施形態としての測距装置1の構成例を示している。図示のように測距装置1は、発光部2、駆動部3、電源回路4、発光側光学系5、受光側光学系6、受光部7、信号処理部8、制御部9、及び、温度検出部10を備えている。
【0011】
発光部2は、複数の発光素子(光源)により光を発する。後述するように、本例の発光部2は、各発光素子としてVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)による発光素子を有しており、それら発光素子が例えばマトリクス状等の所定態様により配列されて構成されている。
【0012】
駆動部3は、発光部2を駆動するための電源回路4を有して構成される。電源回路4は、例えば測距装置1に設けられた不図示のバッテリ等からの入力電圧に基づき、駆動部3の電源電圧を生成する。駆動部3は、該電源電圧に基づいて発光部2を駆動する。
【0013】
発光部2より発せられた光は、発光側光学系5を介して測距対象としての対象物Sに照射される。そして、このように照射された光の対象物Sからの反射光は、受光側光学系6を介して受光部7の受光面に入射する。
【0014】
受光部7は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の受光素子とされ、上記のように受光側光学系6を介して入射する対象物Sからの反射光を受光し、電気信号に変換して出力する。受光部7は、受光した光を光電変換して得た電気信号について、例えばCDS(Correlated Double Sampling)処理、AGC(Automatic Gain Control)処理などを実行し、さらにA/D(Analog/Digital)変換処理を行う。そしてデジタルデータとしての信号を、後段の信号処理部8に出力する。また、本例の受光部7は、フレーム同期信号Fsを駆動部3に出力する。これにより駆動部3は、発光部2における発光素子を受光部7のフレーム周期に応じたタイミングで発光させることが可能とされる。
【0015】
信号処理部8は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等により信号処理プロセッサとして構成される。信号処理部8は、受光部7から入力されるデジタル信号に対して、各種の信号処理を施す。
【0016】
制御部9は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイクロコンピュータ、或いはDSP等の情報処理装置を備えて構成され、発光部2による発光動作を制御するための駆動部3の制御や、受光部7による受光動作に係る制御を行う。
【0017】
制御部9は、測距部9sとしての機能を有する。測距部9sは、信号処理部8を介して入力される信号(つまり対象物Sからの反射光を受光して得られる信号)に基づき、対象物Sまでの距離を測定する。本例の測距部9sは、対象物Sの三次元形状の特定を可能とするために、対象物Sの各部について距離の測定を行う。ここで、測距装置1における具体的な測距の手法については後に改めて説明する。
【0018】
温度検出部10は、発光部2の温度を検出する。温度検出部10としては、例えばダイオードを用いて温度検出を行う構成を採ることができる。本例では、温度検出部10により検出された温度の情報は駆動部3に供給され、これにより駆動部3は該温度の情報に基づいて発光部2の駆動を行うことが可能とされる。
【0019】
[測距手法について]
測距装置1における測距手法としては、例えばSTL(Structured Light:構造化光)方式やToF方式による測距手法を採用することができる。STL方式は、例えばドットパターンや格子パターン等の所定の明/暗パターンを有する光を照射された対象物Sの画像に基づいて距離を測定する方式である。
【0020】
図2は、STL方式の説明図である。STL方式では、例えば
図2Aに示すようなドットパターンによるパターン光Lpを対象物Sに照射する。パターン光Lpは、複数のブロックBLに分割されており、各ブロックBLにはそれぞれ異なるドットパターンが割当てられている(ブロックBL間でドットパターンが重複しないようにされている。)。
【0021】
図2Bは、STL方式の測距原理についての説明図である。ここでは、壁Wとその前に配置された箱BXとが対象物Sとされ、該対象物Sに対してパターン光Lpが照射された例としている。図中の「G」は受光部7による画角を模式的に表している。また、図中の「BLn」はパターン光Lpにおける或るブロックBLの光を意味し、「dn」は受光部7による受光画像に映し出されるブロックBLnのドットパターンを意味している。
【0022】
ここで、壁Wの前の箱BXが存在しない場合、受光画像においてブロックBLnのドットパターンは図中の「dn’」の位置に映し出される。すなわち、箱BXが存在する場合と箱BXが存在しない場合とで、受光画像においてブロックBLnのパターンが映し出される位置が異なるものであり、具体的には、パターンの歪みが生じる。
【0023】
STL方式は、このように照射したパターンが対象物Sの物体形状によって歪むことを利用して対象物Sの形状や奥行きを求める方式となる。具体的には、パターンの歪み方から対象物Sの形状や奥行きを求める方式である。
【0024】
STL方式を採用する場合、受光部7としては、例えばグローバルシャッタ方式によるIR(Infrared:赤外線)受光部が用いられる。そして、STL方式の場合、測距部9sは、発光部2がパターン光を発光するように駆動部3を制御すると共に、信号処理部8を介して得られる画像信号についてパターンの歪みを検出し、パターンの歪み方に基づいて距離を計算する。
【0025】
続いて、ToF方式は、発光部2より発された光が対象物で反射されて受光部7に到達するまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで、対象物までの距離を測定する方式である。
【0026】
ToF方式として、いわゆるダイレクトToF(dTOF)方式を採用する場合、受光部7としてはSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を用い、また発光部2はパルス駆動する。この場合、測距部9sは、信号処理部8を介して入力される信号に基づき、発光部2より発せられ受光部7により受光される光について発光から受光までの時間差を計算し、該時間差と光の速度とに基づいて対象物Sの各部の距離を計算する。
【0027】
なお、ToF方式として、いわゆるインダイレクトToF(iTOF)方式(位相差法)を採用する場合、受光部7としては例えばIRを受光することのできる受光部が用いられる。
【0028】
[発光部の構成例]
(全体構成例)
次に、本実施形態に係る発光部2について説明する。
図3は、発光部2の全体構成例を説明するための図である。図示の通り、発光部2は、例えば、コリメータレンズ12と、回折素子13(本実施形態における光学部材の一例)と、を有する。また、発光部2は、複数の発光素子11を有する。具体的には、発光部2は、複数の第1の発光素子11Aと、複数の第2の発光素子11Bと、を有する。第1の発光素子11Aは第1の光L1を出射する。第2の発光素子11Bは第2の光L2を出射する。第1の光L1及び第2の光L2は、偏光特性が異なっている。例えば、第1の光L1はTM(Transverse Magnetic wave)偏光であり、第2の光L2はTE(Transverse Electric wave)偏光であり、偏光の向きが互いに直交する偏光特性である。第1の光L1がTE偏光であり、第2の光L2がTM偏光であってもよい。なお、第1の発光素子11Aと第2の発光素子11Bとを区別する必要がない場合や、個々の発光素子を区別する必要がない場合は、発光素子11と総称することもある。
【0029】
コリメータレンズ12及び回折素子13は、発光素子11から出射された光(第1の光L1及び第2の光L2)の光路上に、例えば、この順に配置されている。発光素子11は、例えば、保持部21によって保持されており、コリメータレンズ12及び回折素子13は、例えば、保持部22に保持されている。保持部21は、例えば、発光素子11を保持する面21S1とは反対側の面21S2に、例えば、1つのアノード電極部23と、2つのカソード電極部24、25を有する。
【0030】
第1の発光素子11A及び第2の発光素子11Bは、例えば、表面出射型の面発光半導体レーザである。複数の第1の発光素子11A及び複数の第2の発光素子11Bは、互いに電気的に分離されている。本実施形態では、各発光素子に対してアノード電極部23が共通の構成として接続されている。また、2つのカソード電極部24,25のうち、例えば、カソード電極部24が第1の発光素子11Aに接続され、カソード電極部25が第2の発光素子11Bに接続される。勿論、本例のような接続ではなく、例えば、カソード電極部が各発光素子に対して共通の構成とされ、異なるアノード電極部が、第1の発光素子11A及び第2の発光素子11Bのそれぞれに接続されてもよい。
【0031】
コリメータレンズ12は、複数の第1の発光素子11Aから出射された第1の光L1及び複数の第2の発光素子11Bから出射された第2の光L2を略平行光として出射するものである。コリメータレンズ12は、例えば、第1の光L1及び第2の光L2をそれぞれコリメートして、回折素子13と結合するためのレンズである。略平行とされた第1の光L1及び第2の光L2は、点状の光ビームとなって対象物Sに照射される。
【0032】
回折素子13は、コリメータレンズ12を経由した光ビームを3×3分割するための偏光回折素子(DOE)である。回折素子13により、第1の発光素子11A及び第2の発光素子11Bから出射された光束をタイリングしている。回折素子13は、一方の偏光特性を有する光(例えば、第2の光L2)のみに作用させることで、第2光のL2の光ビームのスポット数を増やし投射範囲(照射範囲)を広げることができる。
【0033】
保持部21及び保持部22は、発光素子11、コリメータレンズ12及び回折素子13を保持するためのものである。具体的には、保持部21は、上面(面21S1)に設けられた凹部C内に発光素子11を保持している。保持部22は、コリメータレンズ12及び回折素子13を保持している。コリメータレンズ12及び回折素子13は、例えば、接着剤によって、それぞれ保持部22に保持されている。
【0034】
保持部21の裏面(面21S2)には、複数の電極部が設けられている。具体的には、保持部21の面21S2には、複数の第1の発光素子11A及び複数の第2の発光素子11Bに共通なアノード電極部23と、複数の第1の発光素子11Aに接続されるカソード電極部24と、複数の第2の発光素子11Bに接続されるカソード電極部25とが設けられている。
【0035】
なお、コリメータレンズ12及び回折素子13が保持部22ではなく、保持部21に保持されていてもよい。
【0036】
(発光素子の具体例)
次に、発光素子11の具体例について説明する。上述したように、発光素子11は、第1の発光素子11A及び第2の発光素子11Bを有する。一例として、各発光素子の大きさは1cm角程度であり、300から600個程度の発光素子11が配置される。各発光素子の光出力は1Wから5W程度である。勿論、これらの数値は一例であり、例示した数値に限定されることはない。
図4に模式的に示すように、第1の発光素子11Aからは第1の光L1が出射され、第2の発光素子11Bからは第2の光L2が出射される。
【0037】
例えば、
図5に示したように、複数の第1の発光素子11Aは、一方向(例えば、Y軸方向)に延在するn個(例えば、
図5では12個)の第1の発光素子11Aからなる複数(例えば、
図5では6個)の第1の発光素子群X(第1の発光素子群X1~X6)を構成している。同様に、複数の第2の発光素子11Bは、一方向(例えば、Y軸方向)に延在するm個(例えば、
図5では12個)の第2の発光素子11Bからなる複数(例えば、
図5では6個)の第2の発光素子群Y(第2の発光素子群Y1~Y6)を構成している。
【0038】
第1の発光素子群X1~X6、第2の発光素子群Y1~Y6は、例えば、
図5に示したように、矩形形状を有するn型基板30に交互に配置されており、第1の発光素子群X1~X6は、例えば、n型基板30の一の辺に沿って設けられた電極パット34に、第2の発光素子群Y1~Y6は、例えば、n型基板30の一の辺と対向する他の辺に沿って設けられた電極パット35に、それぞれ電気的に接続されている。なお、
図5では、第1の発光素子群X1~X6と第2の発光素子群Y1~Y6とが交互に配置された例を示したが、これに限定されることはない。例えば、複数の第1の発光素子11A及び複数の第2の発光素子11Bの数は、それぞれ、所望の発光点の数、位置及び光出力の量によって、任意の配列とすることができる。一例として、複数の第2の発光素子11Bの配列を、複数の第1の発光素子11Aの配列2列おきに配置するようにしてもよい。また、本実施形態では第1の発光素子11Aの数と第2の発光素子11Bの数とが同一となっているが、異なっていても良い。また、第1の発光素子11Aと第2の発光素子11BとでFFP(Far Field Pattern)が異なっていても良い。
【0039】
電極パットに流す電流を切り替えることで、所望の発光素子を発光させる制御が行われる。例えば、
図6に示すように、電極パット34に電流を流すことで、第1の発光素子群X1~X6に含まれる第1の発光素子11A(ラインLAで囲まれる第1の発光素子11A)を発光させることができる。また、電極パット35に電流を流すことで、第2の発光素子群Y1~Y6に含まれる第2の発光素子11B(ラインLBで囲まれる第2の発光素子11B)を発光させることができる。
【0040】
図7は、
図5及び
図6に示した複数の第1の発光素子11A及び複数の第2の発光素子11Bの配列の一部を拡大して示した図である。第1の発光素子11Aは発光面積(OA径W1)を有し、第2の発光素子11Bは発光面積(OA径W2)を有する。それぞれの発光面積は同一でもよいし、異なっていてもよい。
図7における第1の発光素子11Aの矢印AN1と、第2の発光素子11Bの矢印AN2とは、偏光の向きを示している。上述したように、第1の発光素子11Aの偏光の向きと、第2の発光素子11Bの偏光の向きとは直交している。例えば、第1の発光素子11Aにおける応力分布と複数の第2の発光素子11Bの応力分布とを調整することにより、偏光の向きが互いに直交する偏光特性とすることができる。勿論、これに限定されることはなく、後述するように偏光制御部材等を用いて所望の偏光特性とすることもできる。
【0041】
[回折素子]
(作用)
次に、回折素子13について説明する。回折素子13は、第1の発光素子11Aから出射される第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれに対して異なるように作用する。本実施形態では、回折素子13が、第1の光L1には作用せず、第2の光L2のみに作用する。具体的には。回折素子13が、第1の光L1には作用せず、第2の光L2のみを屈折又は回折する。
図8Aは、第1の光L1による照射パターン例を示す。
図8Bは、第2の光L2による照射パターン例を示す。回折素子13は第1の光L1には作用しないため、FOVは広がらないものの、高い光密度が得られるため、長距離の測距が可能となる。
【0042】
図8Bに示すように、回折素子13が第2の光L2のみに作用することで、水平方向及び垂直方向ともに、FOVが
図8Aに示すFOVの3倍に広がっている。なお、FOVが広がる範囲は回折素子13の構造によって異なる。
【0043】
図9は、回折素子13のDOEパターンを拡大して示した図である。回折素子13は、微細凹凸構造であるグレーティング構造GRを有している。本実施形態ではグレーティング構造GRが2次元状に形成されているが、1次元的に形成されていてもよい。
【0044】
図10A及び
図10Bは、本実施形態における回折素子13の断面を示す断面図である。図示の通り回折素子13は、例えば、第1層131、第2層132、第3層133をZ方向に順に接合した3層構造を有する。第1層131の屈折率はn1であり、第3層133の屈折率はn3である。第2層132の屈折率は、方向によって異なり、
図10Aに示されるY方向の屈折率はn2yであり、
図10Bに示されるX方向の屈折率はn2xである。3層構造を有する回折素子13は、異方性材料の重ね合わせで構成され、n1とn2xは同じ(n1=n2x)であり、n1とn2yは異なる(n1≠n2y)。これらの屈折率の関係を満たす範囲で各層を任意の材料によって構成することができる。
【0045】
このように、回折素子13は、X方向とY方向で屈折率が異なるため、ある方向(X方向)の偏光については、平行平板として作用し、ある方向に直交する方向(Y方向)の偏光については光ビームを屈折又は回折する回折素子として作用する。このように、回折素子13は、偏光回折素子であり、例えば第2の光L2を屈折又は回折する。なお、回折素子13の代わりには体積ホログラムを用いてもよい。また、回折素子13は光を屈折又は回折する作用をもたらすものであればよく、例えば、フレネルレンズであってもよい。
【0046】
[測距装置の動作]
以上説明した測距装置1の動作例について説明する。例えば、測距装置1が車載LiDARに適用された場合、高速道路の走行のように、長距離の測距が要求される場合がある。この場合は、第1の発光素子群X1からX6を発光させる制御が行われる。係る制御は、例えば、制御部9によって行われる。第1の発光素子11Aから出射された第1の光L1に対しては回折素子13は作用しない。したがって、第1の光L1が分割されないことで光密度の高いスポット照射(
図8A参照)が可能となり、高精度の長距離の測距が可能となる。
【0047】
一方、都市部や市街地での走行のように、長距離ではなく広範囲の測距が要求される場合がある。この場合は、第2の発光素子群Y1からY6を発光させる制御が行われる。係る制御は、例えば、制御部9によって行われる。第2の発光素子11Bから出射された第2の光L2に対しては回折素子13は作用する。したがって、第2の光L2が回折素子13を通過することでFOVが拡大し(
図8B参照)、近距離且つ測距範囲が広い測距が可能となる。
【0048】
このように、本実施形態では、FOVをアクティブに切替可能とすることができる。また、FOVが異なる別々のデバイスを用意する必要がないため、測距装置1の大型化やコスト増を極力、抑制できる。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の説明において、上述した説明における同一又は同質の構成については同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜、省略する。また、特に断らない限り、第1の実施形態で説明した事項は第2の実施形態に対して適用することができる。第3の実施形態以降についても同様である。
【0050】
第2の実施形態は、光学部材が回折素子13ではなく液晶素子、具体的には有機液晶素子27である実施形態である。
図11A及び
図11Bは、有機液晶素子27の構成例を説明するための図である。
図11A及び
図11Bに示すように、有機液晶素子27は、X方向およびY方向の配向が異なっている。第1の発光素子11Aと第2の発光素子11Bとの発光切替えによってビーム光の偏光の向きを変えることができるので、ビーム光の偏光の向きを変えるために有機液晶素子27の配向を切替える必要がない。このため、有機液晶素子27の配向の切替え用の回路構成やフレキシブルケーブル等は不要であり、また、有機液晶素子27の配向の切替え時間の問題が発生しない。有機液晶素子27の代わりに、無機液晶素子を用いてもよい。無機液晶素子は有機液晶素子に比べて温度特性や耐熱性が良く、車載用途など高信頼性が要求される用途にも利用できる。
【0051】
第2の実施形態の作用については、基本的に第1の実施形態と同様である。すなわち、有機液晶素子27は、第1の光L1には作用せずに、第2の光L2のみに作用する。これにより、第1の光L1のFOVは変わらずに光密度の大きいスポット照射がなされ、第2の光L2はFOVが拡大されて対象物に照射される。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、光学部材がメタマテリアル33の実施形態である。
図12Aはメタマテリアルの構成例であり、
図12Bは
図12Aにおける参照符号AAの箇所を拡大した図である。メタマテリアル33により、偏光方向により異なる回折特性を発生させることができる。
【0053】
第3の実施形態の作用については、基本的に第1の実施形態と同様である。すなわち、メタマテリアル33は、第1の光L1には作用せずに、第2の光L2のみに作用する。これにより、第1の光L1のFOVは変わらずに光密度の大きいスポット照射がなされ、第2の光L2はFOVが拡大されて対象物に照射される。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、発光部の構成が第1の実施形態と異なっている。
図13は、第4の実施形態に係る発光部(発光部2A)の構成例を示す図である。発光部2Aは、回折素子13を有さず、本実施形態の光学部材である偏光回折素子44を有する点が、発光部2と異なっている。発光素子11(第1の発光素子11A及び第2の発光素子11B)、偏光回折素子44、及び、コリメータレンズ12が、第1の光L1及び第2の光L2の光路上にこの順で配置されている。偏光回折素子44は、例えば、保持部21により保持されるが、保持部22により保持されていてもよい。
【0055】
偏光回折素子44は、例えば、フレネルレンズであり、コリメータレンズ12と組レンズを構成する。これにより、コリメータレンズ12の焦点距離が、コリメータレンズ12の焦点距離と偏光回折素子44との合成焦点距離に変更されることで、FOVが変化する。偏光回折素子44は、第1の光L1及び第2の光L2の何れか一方のみに作用する。
【0056】
本実施形態について詳細に説明する。まず、偏光回折素子44がない場合、すなわち、
図14に示すように、コリメータレンズ12のみである場合、照射エリアに対応するFOVを決める投射光軸の傾け角θは、下記の式1になる。但し、式1におけるfはコリメータレンズ12の焦点距離(mm)である。aはNxとDxを乗じることで得られる値である。Nxは、発光部2Aの水平方向(X方向)における発光素子11の数、Dxは発光素子のピッチ(mm)である。
【0057】
【0058】
偏光回折素子44を設けることで、fがコリメータレンズ12の焦点距離から、コリメータレンズ12の焦点距離と偏光回折素子44の焦点距離との合成焦点距離に変化する。焦点距離が変化することで、θが変化する、すなわち、FOVが変化する。つまり、第1の光L1に対してはコリメータレンズ12のみが作用し、第2の光L2にはコリメータレンズ12及び偏光回折素子44が作用することで、FOVそのものを変化させることができる。偏光回折素子44のレンズパワーを正又負とすることで、FOVを大きくしたり小さくしたりすることができる。
【0059】
具体例を挙げて説明する。コリメータレンズ12から発光点(各発光素子)までのメカニカル的な距離は、狭FOV側と広FOV側で一致させる必要があるため、偏光回折素子44は負のレンズパワーを持つ素子で構成する。具体的な値としては、
Nx=40μm、Dx=50μm
コリメータレンズ12の焦点距離f1=2mm
偏光回折素子44の焦点距離f2=-2mm
コリメータレンズ12と偏光回折素子44との距離 1mm
とする。
このとき、例えば、偏光回折素子44が第2の光L2に作用せず、第2の光L2のFOVが60degになるのに対し、偏光回折素子44が第1の光L1に作用すると第1の光L1のFOVが29degと約半分にすることが可能となる。
【0060】
また、偏光回折素子44のレンズパワーを正のレンズパワーを持つ素子で構成すれば、偏光回折素子44が第2の光L2のみ作用することで、第2の光L2のFOVを大きくすることができる。このとき、偏光回折素子44は第1の光L1には作用しないため、第1の光L1のFOVは変わらない。
【0061】
なお、偏光回折素子44は、第2の実施形態で説明したような液晶素子であってもよいし、偏光メタマテリアルであってもよい。また、複数のマイクロレンズであってもよい。この場合、FOVを変化させる発光素子のみとマイクロレンズとが正対するように配置してもよい。これにより、一部の発光素子に対してのみ焦点距離が変化し、FOVが変化する構成とすることができる。この場合には、発光部が、偏光特性が同一の発光素子のみで構成されてもよい。
【0062】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、第1の発光素子11Aから出射された第1の光L1及び第2の発光素子11Bから出射された第2の光L2を拡散板51で拡散させ、測定対象範囲全面に一様に照射(一様照射)する光学モジュールにおける適用例である。測定対象範囲(照射範囲)を決定する機能をもつ拡散板51に対して、さらに範囲を広げる、もしくは狭くする機能をもつ偏光回折素子54を配置する。
【0063】
図15は、本実施形態に係る発光部2Bの構成例を示す図である。発光部2Bは、発光素子11、拡散板51、及び、偏光回折素子54を有し、この順で、第1の光L1及び第2の光L2の光路上に配置されている。発光素子11は支持部55により支持されており、拡散板51は支持部56により支持されている。偏光回折素子54の周縁が、支持部56の上面で支持されている。
【0064】
図16は、拡散板51の一例を示す斜視図である。拡散板51としては、例えば、微小なレンズ51Aをアレイ化したレンズ型拡散板を挙げることができる。拡散板51は、一般的に、微小なレンズ51A(数十μmオーダー)をアレイ化したものであり、発光素子11の光を拡散させ、輝度分布を均一化させる機能を有する。レンズ51Aは発光素子11と対向するようにして配置される。なお、拡散板51は、レンズ型拡散板ではなく、回折を利用したものなどであってもよい。
【0065】
本実施形態における光学部材に対応する偏光回折素子54は、例えば、グレーティング構造GRを有する素子である。偏光回折素子54は、液晶素子や偏光マテリアルであってもよい。
【0066】
図17及び
図18を参照して、拡散板51及び偏光回折素子54の作用について説明する。
図17に示すように、偏光回折素子54は、第1の発光素子11Aから出射された第1の光L1に対して作用しない。この場合、FOVは、拡散板51の作用のみで決定される。これに対して、偏光回折素子54は、第2の発光素子11Bから出射された第2の光L2に対して作用する。
図18に示すように、第2の光L2は、拡散板51で拡散された後、偏光回折素子54の作用によって更に拡散される。これにより、
図17に示す場合に比べてFOV(湾曲した矢印で示す)が大きくなる。
【0067】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について説明する。本実施形態は、発光素子11の構成が上述した実施形態と異なる。具体的には、第1の発光素子11A及び第2の発光素子11Bが、Qスイッチレーザによって構成される。また、それぞれの発光素子がSRG(Surface Relief Grating)構造を有することで、偏光特性が例えば互いに直交するように制御される。
【0068】
図19は、本実施形態に係る発光素子11の構成例を示す。発光素子11は、励起光源層61と、固体レーザ媒質62と、可飽和吸収体63とを一体に接合した構成を有する。
【0069】
励起光源層61は、面発光素子であり、積層構造の半導体層を有する。励起光源層61は、基板65、第5反射層R5、クラッド層66、活性層67、クラッド層68、及び、第1反射層R1を順に積層した構造を備えている。なお、
図19の励起光源層61は、基板65から連続波(CW:Continuous Wave)の励起光を放出するボトムエミッション型の構成を示しているが、第1反射層R1側からCW励起光を放出するトップエミッション型の構成もあり得る。
【0070】
基板65は、例えばn-GaAs基板である。基板65は、励起光源層61の励起長である第1波長λ1の光を一定の割合で吸収するため、極力薄くするのが望ましい。その一方で、後述する接合プロセスの際の機械的強度を維持できる程度の厚みを持たせるのが望ましい。
【0071】
活性層67は、第1波長λ1の面発光を行う。クラッド層68は、例えばAlGaAsクラッド層である。第1反射層R1は、第1波長λ1の光を反射させる。第5反射層R5は、第1波長λ1の光に対して一定の透過率を有する。第1反射層R1と第5反射層R5には、例えば、電気伝導が可能な半導体分布反射層(DBR:Distributed Bragg Reflector)が用いられる。第1反射層R1と第5反射層R5を介して外部から電流が注入され、活性層67内の量子井戸で再結合と発光が生じて、第1波長λ1の発光が行われる。
【0072】
第5反射層R5は、例えば基板65上に配置される。例えば、第5反射層R5は、n型ドーパント(例えばシリコン)を添加したAlz1Ga1-z1As/Alz2Ga1-z2As(0≦z1≦z2≦1)からなる多層反射膜を有する。第5反射層R5は、n-DBRとも呼ばれる。
【0073】
活性層67は、例えば、Alx1Iny1Ga1-x1-y1As層とAlx3Iny3Ga1-x3-y3As層を積層した多重量子井戸層を有する。
【0074】
第1反射層R1は、例えば、p型ドーパント(例えば炭素)を添加したAlz3Ga1-z3As/AlZ4Ga1-z4As(0≦z3≦z4≦1)からなる多重反射膜を有する。第1反射層R1は、p-DBRとも呼ばれる。
【0075】
励起光共振器としての光源内の各半導体層R5、66、67、68、R1は、MOCVD(有機金属気相成長)法、MBE(分子線エピタキシ法)等の結晶成長法を用いて形成することができる。そして、結晶成長後に、素子分離のためのメサエッチングや絶縁膜の形成、電極膜の蒸着等のプロセスを経て、電流注入による駆動が可能になる。
【0076】
励起光源層61の基板65の第5反射層R5とは反対側の端面には、固体レーザ媒質62が接合されている。以下では、固体レーザ媒質62の励起光源層61側の端面を第1面F1と呼び、固体レーザ媒質62の可飽和吸収体63側の端面を第2面F2と呼ぶ。また、可飽和吸収体63のレーザパルス出射面を第3面F3と呼び、励起光源層61の固体レーザ媒質62側の端面を第4面F4と呼ぶ。また、可飽和吸収体63の固体レーザ媒質62側の端面を第5面F5と呼ぶ。なお、
図19では便宜上分離して図示しているが、発光素子11の第4面F4は固体レーザ媒質62の第1面F1と接合され、固体レーザ媒質62の第2面F2は後述する偏光制御部76を介在させて可飽和吸収体63の第5面F5と接合される。
【0077】
発光素子11は、第1共振器71と第2共振器72とを備えている。第1共振器71は、励起光源層61内の第1反射層R1と固体レーザ媒質62内の第3反射層R3との間で、第1波長λ1の励起光L11を共振させる。第2共振器72は、固体レーザ媒質62内の第2反射層R2と可飽和吸収体63内の第4反射層R4との間で、第2波長λ2の放出光L12を共振させる。
【0078】
第2共振器72は、いわゆる、Qスイッチ固体レーザ共振器の構成をなす。第1共振器71が安定した共振動作を行えるように、固体レーザ媒質62内に、高反射層である第3反射層R3が設けられている。通常の共振器の場合、第3反射層R3は、アウトプットカプラーの機能を有し、第1波長λ1の光を外部に放出するための部分反射とする。これに対して、
図19に示す第1共振器71では、第3反射層R3を、第1波長λ1の励起光L11のパワーを第1共振器71内に閉じ込めるため、第3反射層R3を高反射層にしている。
【0079】
このように、励起光源層61と固体レーザ媒質62からなる第1共振器71の内部には、3つの反射層(第1反射層R1、第5反射層R5、及び第3反射層R3)が設けられる。このため、第1共振器71は、結合共振器(Coupled Cavity)構造である。
【0080】
第1共振器71内に第1波長λ1の励起光L11のパワーを閉じ込めることで、固体レーザ媒質62が励起される。これにより、第2共振器72にて、Qスイッチレーザパルス発振が生じる。第2共振器72は、固体レーザ媒質62内の第2反射層R2と可飽和吸収体63内の第4反射層R4との間で、第2波長λ2の光を共振させる。第2反射層R2は高反射層であるのに対し、第4反射層R4はアウトプットカプラーの機能を持つ部分反射層である。
図19では、第4反射層R4を可飽和吸収体63の端面に設けている。
【0081】
ここで、固体レーザ媒質62と可飽和吸収体63との間には、偏光制御部76が設けられている。偏光制御部76は、放出光L12の光路に平面レリーフグレーティング構造GRを有する。偏光制御部76のグレーティング構造GRは、表面層77によって被覆され平坦化されている。
【0082】
固体レーザ媒質62は、例えば、Yb(イットリビウム)をドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶Yb:YAGを含む。この場合、第1共振器15の第1波長λ1は940nm、第2共振器72の第2波長λ2は、1030nmとなる。
【0083】
固体レーザ媒質62は、Yb:YAGに限らず、例えば、固体レーザ媒質62として、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:glass、Yb:YAG、Yb:YLF、Yb:FAP、Yb:SFAP、Yb:YVO、Yb:glass、Yb:KYW、Yb:BCBF、Yb:YCOB、Yb:GdCOB、Yb:YABの少なくともいずれかの材料を使うことができる。なお、固体レーザ媒質62は、結晶に限らず、セラミック材料の利用を妨げない。
【0084】
また、固体レーザ媒質62は、4準位系の固体レーザ媒質62であってもよいし、3準位系の固体レーザ媒質62であってもよい。ただし、それぞれの結晶によって、適切な励起波長(第1波長λ1)は異なるので、固体レーザ媒質62の材料に応じて、励起光源層61内の半導体材料を選択する必要がある。
【0085】
可飽和吸収体63は、例えばCr(クロム)をドープしたYAG(Cr:YAG)結晶を含む。可飽和吸収体63は、入射光の強度が所定の閾値を超えると透過率が増大する材料である。第1共振器71による第1波長λ1の励起光L11により、可飽和吸収体63の透過率が増大し、第2波長λ2のレーザパルスを放出する。これはQスイッチと呼ばれる。可飽和吸収体63の材料として、V:YAGを用いることもできる。ただし、その他の種類の可飽和吸収体63を使ってもよい。また、Qスイッチとして、能動(アクティブ)Qスイッチ素子を使うことを妨げるものではない。
【0086】
図19では、励起光源層61、固体レーザ媒質62、偏光制御部76及び可飽和吸収体63を、それぞれ分離して図示しているが、これらは接合プロセスを用いて接合されて一体化された積層構造である。接合プロセスの例としては、常温接合、原子拡散結合、プラズマ活性化接合等を用いることができる。あるいは、その他の接合(接着)プロセスを用いることができる。
【0087】
励起光源層61に固体レーザ媒質62を安定に接合させるには、励起光源層61内のn-GaAsの基板65の表面を平坦にする必要がある。このため、上述したように、第1反射層R1第5反射層R5に電流を注入するための電極は、少なくとも基板65の表面に露出しないように配置するのが望ましい。
【0088】
このように、発光素子11を積層構造にすることで、積層構造体を作製した後にダイシングにより個片化して複数のチップを形成したり、あるいは一つの基板上に複数の発光素子11をアレイ状に配置したレーザアレイを形成したりすることが容易になる。
【0089】
接合プロセスにて積層構造の発光素子11を作製する場合、各層の表面粗さRaは1nm程度以下にする必要がある。また、各層の界面の光損失を回避するために、各層の間に誘電体多層膜を配置して、誘電体多層膜を介して各層を接合してもよい。例えば、発光素子11のベース基板である基板65の屈折率nは3.2であり、YAG(n:1.8)や一般的な誘電体多層膜材料に比べ、高屈折率を有する。このため、励起光源層61に固体レーザ媒質62と可飽和吸収体63を接合する際に、屈折率のミスマッチによる光損失が生じないようにする必要がある。具体的には、励起光源層61と固体レーザ媒質62との間に、第1共振器71の第1波長λ1の光を反射させない反射防止膜(ARコート膜又は無反射コート膜)を配置するのが望ましい。また、固体レーザ媒質62と可飽和吸収体18との間にも、反射防止膜(ARコート膜又は無反射コート膜)を配置するのが望ましい。
【0090】
接合材料によっては研磨が難しい場合があり、例えばSiO2などの第1波長λ1及び第2波長λ2に対して透明な材料を、接合のための下地層として成膜し、このSiO2層を表面粗さRa1nm程度に研磨して、接合のための界面として用いても良い。ここで、下地層としては、SiO2以外にも使用可能であり、ここでは材料に限定されない。
【0091】
誘電体多層膜には、短波長透過フィルタ膜(SWPF:Short Wave Pass Filter)、長波長透過フィルタ膜(LWPF:Long Wave Pass Filter)、バンドパスフィルタ膜(BPF:Band Pass Filter)、無反射保護膜(AR:Anti-Reflection)などがある。必要に応じて、異なる種類の誘電体多層膜を配置するのが望ましい。誘電体多層膜の成膜方法としては、PVD(Physical vapor deposition)法を用いることができ、具体的には、真空蒸着、イオンアシスト蒸着、スパッタなどの成膜方法を用いることができる。どの成膜方法を適用するかは問わない。また、誘電体多層膜の特性も任意に選択可能であり、例えば、第2反射層R2を短波長透過フィルタ膜とし、第3反射層R3を長波長透過フィルタ膜としてもよい。
【0092】
本実施形態によれば、第2共振器72の内部に、互いに直交するTM偏光とTE偏光の比率を制御する偏光制御部76が設けられている。グレーティング構造GRは、固体レーザ媒質62の表面に形成してもよい。
【0093】
図20A及び
図20Bは、偏光制御部76の断面構成例を示す図である。偏光制御部76は、例えば、第1層76A、及び、第2層76BをZ方向に順に接合した2層構造を有する。第1層76Aの屈折率はn1であり、第2層76Bの屈折率はn2である(但し、n1≠n2)。これらの屈折率の関係を満たす範囲で各層を任意の材料によって構成することができる。
【0094】
図21に模式的に示すようにグレーティング構造GRの配列方向を、発光素子11毎に適宜、異ならせることで、ある発光素子11を第1の発光素子11Aとして機能させることができ、別の発光素子11を第2の発光素子11Bとして機能させることができる。具体的には、偏光制御部76のグレーティング構造GRを第1の配列方向とすることで、励起光源層61から出射された光をTM偏光とし、偏光制御部76のグレーティング構造GRを第1の配列方向と直交する第2の配列方向することで、励起光源層61から出射された光をTE偏光とすることができる。すなわち、第1の実施形態のように発光素子11の応力分布を異なるようにしなくても(同じ構造の発光素子11)であっても、偏光制御部76を用いることで、偏光特性の異なる第1の光L1及び第2の光L2を容易に形成することができる。また、Qスイッチレーザを用いることで、発光素子11の性能を向上させ、且つ、コストを低減することができる。
【0095】
次に、
図19に示す発光素子11の動作例について説明する。励起光源層61の電極を介して電流を活性層67に注入することで、第1共振器71内で第1波長λ1のレーザ発振が起こり、励起光L11が生成される。励起光L11が固体レーザ媒質62に入射すると、固体レーザ媒質62が励起され、第2波長λ2の放出光L12が生成される。固体レーザ媒質62および偏光制御部76には可飽和吸収体63が接合されていることから、第1共振器71にレーザ発振が起こった最初の段階では、固体レーザ媒質62からの放出光L12は可飽和吸収体18に吸収されてしまい、可飽和吸収体63の出射面側の第4反射層R4による光放出が起こらず、Qスイッチレーザ発振には至らない。
【0096】
その後、固体レーザ媒質62が十分な励起状態となり、放出光L12の出力が上がり、ある閾値を超えると、可飽和吸収体63での光吸収率が急激に低下し、固体レーザ媒質62で発生した自然放出光L12は可飽和吸収体63を透過できるようになる。これにより、第2共振器72が、第2反射層R2と第4反射層R4との間において放出光L12を共振させ第4反射層R4側からレーザ光が出力される。放出光L12は、第2共振器72において共振しているときに、グレーティング構造GRを通過することによって偏光制御される。偏光制御された放出光L12は、第2共振器72でQスイッチレーザ発振が生じたときに、第4反射層R4から
図13中右側の空間に向けてレーザ光(第1の光L1又は第2の光L2)として放出される。これにより、レーザ光がQスイッチレーザパルスとして出力される。
【0097】
その後の動作は、上述した実施形態と同様である。例えば、Qスイッチレーザとして構成される第2の発光素子11Bから出射された第2の光L2に回折素子13が作用することでFOVが拡大する。また、Qスイッチレーザとして構成される第1の発光素子11Aから出射された第1の光L1には回折素子13が作用しないことで光密度が大きいスポット照射が可能となる。
【0098】
なお、第2共振器72の内部に、波長変換のための非線形光学結晶を配置することができる。非線形光学結晶の種類により、波長変換後のレーザパルスの波長を変えることができる。波長変換材料の例としては、LiNbO3、BBO、LBO、CLBO、BiBO、KTP、SLTなどの非線形光学結晶が挙げられる。また、波長変換材料として、これらに類似する位相整合材料を使ってもよい。ただし、波長変換材料の種類については問わない。波長変換材料によって、第2波長λ2を別の波長に変換することができる。
【0099】
偏光制御部76の一例として、フォトニック結晶を用いたフォトニック結晶偏光素子、または、メタサーフェスを利用した偏光素子が用いられてもよい。即ち、偏光制御部76の微細構造は、グレーティング構造の他、フォトニック結晶、または、メタサーフェス構造であってもよい。
【0100】
本実施形態に係る発光素子11は、
図22に示す構成であってもよい。
図22に示すように、固体レーザ媒質62及び可飽和吸収体63が偏光制御部76を介在させて接合されている。上述したように、第2反射層R2は高反射層であり、第4反射層R4は部分反射層である。励起光源層61は、固体レーザ媒質62及び可飽和吸収体63と接合されておらず、励起光源層61と固体レーザ媒質62との間に、集光レンズ部の一例であるマイクロレンズアレイ81が配置される。本実施形態では、励起光源層61から出射された光ビームがマイクロレンズアレイ81により固体レーザ媒質62に集光される。固体レーザ媒質62内の複数の配列した領域でQスイッチ発振した光ビーム(第1の光L1又は第2の光L2)が出射される。
【0101】
<変形例>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示の内容は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0102】
上述した実施形態では、第1の光L1をTM偏光とし、第2の光L2をTE偏光として説明したが、反対であってもよい。また、第1の光L1と第2の光L2は偏光特性が異なっていればよく、偏光の向きが直交以外で異なる偏光特性であってもよい。実施形態では2個のFOVの切替について説明したが3個以上のFOVの切替でもよい。
【0103】
また、上述した実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。また、一実施形態で説明した複数の構成例は互いに組み合わせることや入れ替えることが可能である。
【0104】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0105】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)
第1の光を出射する第1の発光素子及び第2の光を出射する第2の発光素子を有する発光部と、
前記第1の光及び前記第2の光の光路上に配置される光学部材が、前記第1の光及び前記第2の光のそれぞれに対して異なるように作用することで、前記第1の光による投射範囲と前記第2の光による投射範囲とを変化させる、
照明装置。
(2)
前記光学部材が、前記第1の光には作用せず、前記第2の光のみを屈折又は回折することで、前記第1の光による投射範囲と前記第2の光による投射範囲とを変化させる、
(1)に記載の照明装置。
(3)
前記第1の光と前記第2の光とが、異なる偏光特性を有する、
(1)又は(2)に記載の照明装置。
(4)
前記第1の光と前記第2の光とが、互いに直交する偏光特性を有する、
(3)に記載の照明装置。
(5)
前記光学部材が、偏光回折素子である、
(1)に記載の照明装置。
(6)
前記光学部材が、液晶素子である、
(1)に記載の照明装置。
(7)
前記光学部材が、偏光メタマテリアルである、
(1)に記載の照明装置。
(8)
複数の前記第1の発光素子及び複数の前記第2の発光素子を有する、
(1)から(7)までの何れかに記載の照明装置。
(9)
前記光学部材を有する、
(1)から(8)までの何れかに記載の照明装置。
(10)
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、面発光型半導体レーザである、
(1)から(9)までの何れかに記載の照明装置。
(11)
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、励起光源層と、レーザ媒質と、可飽和吸収体とを含む構成を有する、
(1)から(9)までの何れかに記載の照明装置。
(12)
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、励起光源層と、レーザ媒質と、可飽和吸収体とが積層された構成を有する、
(11)に記載の照明装置。
(13)
(1)から(12)までの何れかに記載の照明装置と、
前記照明装置を制御する制御部と、
対象物から反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部で得られた画像データから測距距離を算出する測距部と、
を有する、
測距装置。
(14)
(13)に記載の測距装置を有する、
車載装置。
【0106】
<応用例>
また、本技術に係る技術は、上述した応用例に限定されることなく、様々な製品へ応用することができる。例えば、本技術に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0107】
図23は、本技術に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図23に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0108】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサー等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図23では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0109】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0110】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサー、車両の加速度を検出する加速度センサー、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサーのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0111】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0112】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0113】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサー、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサーのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0114】
環境センサーは、例えば、雨天を検出する雨滴センサー、霧を検出する霧センサー、日照度合いを検出する日照センサー、及び降雪を検出する雪センサーのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサーは、超音波センサー、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサーないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサーないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0115】
ここで、
図24は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0116】
なお、
図24には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0117】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサー又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0118】
図23に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサー、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0119】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0120】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサー又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサーは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0121】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0122】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサー値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0123】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0124】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802。11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0125】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0126】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0127】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インターフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0128】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインターフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0129】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0130】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0131】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図23の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0132】
なお、
図23に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサー又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0133】
以上説明した車両制御システム7000において、本技術の照明装置は、例えば、車外情報検出部に適用され得る。
【符号の説明】
【0134】
1・・・測距装置
2、2A・・・発光部
11・・・発光素子
11A・・・第1の発光素子
11B・・・第2の発光素子
13・・・回折素子
27・・・有機液晶素子
33・・・メタマテリアル
54・・・偏光回折素子
76・・・偏光制御部
L1・・・第1の光
L2・・・第2の光