(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165941
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】バルブ式液材滲出具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/00 20060101AFI20241121BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B43K8/00 100
A45D34/04 525A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082548
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】500205840
【氏名又は名称】株式会社 エポックケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小高 晴男
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HC03
2C350KF01
2C350NA14
(57)【要約】
【課題】バルブホルダーの液材タンク軸への組付け作業を簡易迅速に行うことができるバルブ式マーカーその他のバルブ式液材滲出具を提供することを課題とする。
【解決手段】液材タンク軸1の上端部は縮径化されてその外周面に係止環6が形成され、バルブホルダー2の下端面に内方に向く係止片7が形成され、係止片7は、バルブホルダー2を液材タンク軸1の先端部に嵌装するに伴い、係止環6によって上方に押し畳まれ、更に押し込まれて係止環を越えることにより、係止環6にロックされる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液材タンク軸と、前記液材タンク軸の先端部に嵌め付けられるバルブホルダーと、前記液材タンク軸の先端部からバルブホルダーにかけて内装されるバルブユニットと、前記バルブユニットに固定されて前記バルブホルダーから突出する芯と、前記バルブホルダーに被着されるキャップとから成り、
前記液材タンク軸の上端部は縮径化されてその外周面に係止環が形成され、前記バルブホルダーの下端面に内方に向く係止片が形成され、前記係止片は、前記バルブホルダーを前記液材タンク軸の先端部に嵌装するに伴い、前記係止環によって上方に押し畳まれ、更に押し込まれて前記係止環を越えることにより、前記係止環にロックされることを特徴とするバルブ式液材滲出具。
【請求項2】
前記係止片は、付け根が薄肉化されたヒンジ構造となっている、請求項1に記載のバルブ式液材滲出具。
【請求項3】
前記係止片は8個設けられる、請求項1又は2に記載のバルブ式液材滲出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ式液材滲出具に関するものであり、より詳細には、バルブ機構を備えた直液式マーカー等の筆記具、あるいは、化粧用具や医療用具その他の塗液具に適用可能で、十分な量のインク、化粧液、液状薬品、塗料等の液材を貯留し、それを随時芯に浸透させて筆記したり、塗布したりすることができるバルブ式液材滲出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マーカー等の筆記具は、軸内にインクを含浸させた中綿を装填する中綿式タイプと、軸内に直接インクを注入する直液式(生インク式)タイプとに大別される。このうち中綿式の場合は、一旦芯先が乾くと、再び筆記可能状態にまでインクが染み込むのに時間がかかり、また、素早く筆記した場合は、インクの染み込みが追い付かないために筆記した文字が掠れるという欠点があるため、最近では、そのような欠点のない直液式のものが主流になってきている。
【0003】
直液式の場合は、芯に過剰にインクが染み出て、所謂インクのぼた落ち現象が起こるおそれがあるため、芯を押し込むことによって開放されるバルブ機構を介して芯にインクを染み込ませるバルブ式のものが多い。この従来のバルブ式マーカーの場合、芯を取り付けたバルブ機構を内装したバルブホルダーと液材タンク軸との組付けは、一般にネジ締めによって行われ、分解防止のためにネジ部分に接着剤を塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-6668号公報
【特許文献2】特開2008-87422号公報
【特許文献3】特開2005-342950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のバルブ式マーカーの場合は、バルブホルダーの液材タンク軸への組付けをネジ締めによって行い、更に分解防止のためにネジ部分に接着剤を塗布するという方法を用いているため、その分製造に手間がかかるという問題がある。本発明はそのような問題を解決するためになされたもので、バルブホルダーの液材タンク軸への組付け作業を簡易迅速に行うことができるバルブ式マーカーその他のバルブ式液材滲出具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、液材タンク軸と、前記液材タンク軸の先端部に嵌め付けられるバルブホルダーと、前記液材タンク軸の先端部からバルブホルダーにかけて内装されるバルブユニットと、前記バルブユニットに固定されて前記バルブホルダーから突出する芯と、前記バルブホルダーに被着されるキャップとから成り、
前記液材タンク軸の上端部は縮径化されてその外周面に係止環が形成され、前記バルブホルダーの下端面に内方に向く係止片が形成され、前記係止片は、前記バルブホルダーを前記液材タンク軸の先端部に嵌装するに伴い、前記係止環によって上方に押し畳まれ、更に押し込まれて前記係止環を越えることにより、前記係止環にロックされることを特徴とするバルブ式液材滲出具である。
【0007】
一実施形態においては、前記係止片は、付け根が薄肉化されたヒンジ構造となっている、請求項1に記載のバルブ式液材滲出具。
【0008】
一実施形態においては、前記係止片は8個設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバルブ式液材滲出具は上記構成であるため、バルブホルダーの液材タンク軸への組付け作業を、ねじ締め作業及び接着剤の塗布作業を要せずに、単に押し込み操作のみによって簡易迅速に行うことができ、以て、製造の手間とコストを軽減し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るバルブ式液材滲出具のキャップを外した状態の斜視図である。
【
図2】本発明に係るバルブ式液材滲出具の要部断面図である。
【
図3】本発明に係るバルブ式液材滲出具のバルブホルダーの構成を示す部分断面正面図、側面図、C-C線断面図、D部詳細図である。
【
図4】本発明に係るバルブ式液材滲出具の組み立て時の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつより詳細に説明する。なお、以下の説明は、主に、本発明に係るバルブ式液材滲出具がバルブ式筆記具であるとしてのものであるが、筆記具以外の化粧用具や医療用具、その他各種塗液具に適用した場合においても、その構成及び作用効果は、基本的に変わりはない。
【0012】
図1は、本発明に係る筆記具のキャップを外した状態の斜視図、
図2はその要部断面図であり、それらに示されるように本筆記具は、液材タンク軸1と、液材タンク軸1の先端部に嵌め付けられるバルブホルダー2と、液材タンク軸1の先端部からバルブホルダー2にかけて内装されるバルブユニット3と、バルブユニット3に固定されていて先端部がバルブホルダー2から突出する芯4と、バルブホルダー2に被着されるキャップ5とから成る。なお、以下の説明は、芯4側(
図1,2において左側)を先端側又は上面側とし、反対側を後端側又は下面側(底面側)としている。
【0013】
液材タンク軸1の上端部は縮径化され、その外周面に係止環6が形成される。係止環6は通例一連のものであるが、不連続なものであってもよい。係止環6の上縁部は曲面とされる。バルブホルダー2は、先端側から、小径部2a、中径部2b、大径部2cの順に形成され、大径部2cの内周面下端に、内方に向く係止片7が形成される(
図3参照)。係止片7は複数に分割され、それぞれ大径部2cの下端に、付け根を薄肉化してヒンジ連結状態に形成されることにより、水平状態から垂直状態に折曲可能にされる(
図4参照)。係止片7の前端面7aによって形成される円形空間(
図3(C)参照)の直径は、液材タンク軸1の縮径化された上端部の外径よりも少し小となるように設定される(
図4参照)。
【0014】
バルブホルダー2は、後述するようにしてバルブユニットを組み込んだ状態で、液材タンク軸1の上端部1aに嵌め付けられる。係止片7は、その組み付け前においては内方水平方向に向いているが(
図3参照)、嵌め付けに際して液材タンク軸1の上端部1aに向けて進行させると、その前端部が上端部1aに当たって押し上げられて傾斜し、その状態のまま上端部1a周面に摺接する(
図4(A))。その状態で更に押し込むと、やがて係止片7の付け根側縁部7bが係止環6の上縁曲面部に当たることで係止片7は更に折り返され(
図4(B))、係止環6の外周面に摺接することで、垂直状態になる。そして、その状態で更に押し込むと、係止片7は係止環6を乗り越え、その復元力によって係止環6の裏側に逃げる。かくして係止片7は、係止環6の裏面に当たってロックされ(
図4(C))、以後バルブホルダー2を液材タンク軸1から抜くことができなくなる。
【0015】
このように本発明に係るバルブ式液材滲出具の場合は、バルブホルダー2の液材タンク軸1への組付けを、単にバルブホルダー2を、その係止片7が係止環6を越えるまで液材タンク軸1に押し込むだけで行うことができるので、組付け作業を簡易迅速に行うことが可能になり、以て、製造コストを軽減することができる。また、その組付けに伴って係止片7が係止環6にロックされ、バルブホルダー2は液材タンク軸1から抜き取り不可となるので、接着剤の塗布作業が不要となる。
【0016】
バルブホルダー2の小径部2aの内周面には、軸方向に伸びる芯支持用リブ8が複数、等間隔置きに形成される。芯4は、この芯保持用リブ8に沿って摺動可能に支持される。バルブホルダー2内には、バルブユニット、及び、バルブユニットを介して液材タンク軸1から供給されるインクを貯留して、芯4に含浸させるインク貯留部材9が配置される。インク貯留部材9は、中心を貫くように芯挿入孔が形成された円筒体で、芯4はこの芯挿入孔に摺動可能に挿入される。
【0017】
バルブユニットは、バルブユニットケース11内に、弁体12と、弁体12の下半部を包囲し、常時弁体12を上方に付勢するリターンスプリング13と、バルブユニットケース11の上端開口に嵌め付けられる栓部材14とから成る。バルブユニットケース11の下端には、弁体12の下端部が望むインク流入口が開口され、そこから常時バルブユニットケース11内にインクが流入するようになっている。弁体12の中央部には弁座当接部となるテーパー面16が円錐形状に形成され、その裏面にリターンスプリング13が当たることにより、弁体12は常時上方に付勢される。
【0018】
栓部材14は、下面が開口されていてバルブユニットケース11内に嵌合される筒部と、筒部上端に形成されるフランジとから成るもので、先端に芯4を固定した弁体12の上部のテーパー面16までが、その下面開口から栓部材14内に進入する。そして、栓部材14の下面開口の縁部が弁座となって、テーパー面16を受ける。栓部材14のフランジは、バルブユニットケース11の上端に形成されるフランジ部と、バルブホルダー2の中径部2bと大径部2cとの間の段部との間に挟持され、インク貯留部材9を受ける。
【0019】
弁体12は、無負荷時にはリターンスプリング13よって常時押し上げられて、そのテーパー面16が栓部材14の下面開口の縁部に当接して下面開口を閉じ続ける(
図2の状態)。そして、リターンスプリング13の押上力に抗して芯4が押し込まれ、芯4を介して弁体12が押し込まれると、そのテーパー面16が栓部材14の下面開口の縁部から離れ、その部分を開放することで、バルブユニットケース11内に貯まっていたインクを芯4側に導入する。かくしてインク貯留部材9がインクを十分に含浸し、芯4にインクが浸透する。
【0020】
また、液材タンク軸1内のインクは、芯4を下向きにすることにより、自重でバルブユニットケース11の底面開口からバルブユニットケース11内に流入し、そこを満たす。このバルブユニットケース11内に流入したインクは、芯4がバルブホルダー2内に押し込まれて弁体12が開くまでそこに留まり、芯4がバルブホルダー2内に押し込まれて弁体12が開くと、栓部材14内に流入し、インク貯留部材9を湿潤させる。
【0021】
なお、上述したバルブユニット機構は一例であって、それに限定される訳ではなく、他の機構であってもよい。また、上記説明は、本発明に係るバルブ式液材滲出具をバルブ式筆記具に適用した場合についてのものであるが、上述したように、筆記具以外の化粧用具や医療用具、その他各種塗液具に適用した場合においても、その構成及び作用効果は筆記具の場合に準じるので、それらについての詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るバルブ式液材滲出具は上記構成であるため、バルブホルダーの液材タンク軸への組付け作業を、ねじ締め作業及び接着剤の塗布作業を要せずに、単に押し込み操作のみによって簡易迅速に行うことができるので、製造の手間とコストを軽減し得る効果があり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0023】
1 液材タンク軸
2 バルブホルダー
3 バルブユニット
4 芯
6 係止環
7 係止片