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特開2024-165948二酸化炭素吸収液、二酸化炭素吸収液の製造方法、二酸化炭素吸収方法、及び二酸化炭素吸収装置
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  • 特開-二酸化炭素吸収液、二酸化炭素吸収液の製造方法、二酸化炭素吸収方法、及び二酸化炭素吸収装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165948
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収液、二酸化炭素吸収液の製造方法、二酸化炭素吸収方法、及び二酸化炭素吸収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241121BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B01D53/14 210
C01F11/18 C ZAB
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/18 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082568
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】523169084
【氏名又は名称】株式会社セブンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】浅井 貞光
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA12
4D002DA66
4D002EA02
4D002FA02
4D020AA03
4D020BA02
4D020BA08
4D020BB03
4D020CB01
4D020CC01
4G076AA16
4G076AB02
4G076AB06
4G076BA09
4G076CA02
4G076DA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストで、十分な量の二酸化炭素を回収できる二酸化炭素吸収液、その製造方法および二酸化炭素吸収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素吸収液Lを使用した二酸化炭素吸収装置10は、第1タンク12と、第1タンク12に収容された二酸化炭素吸収液Lと、第1タンク12の内部に開口し、二酸化炭素を含む空気を二酸化炭素吸収液に吹き込む導入配管18と、を有し、二酸化炭素吸収液Lは、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液であって、
貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液を含む、二酸化炭素吸収液。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素吸収液であって、
前記貝殻はホタテの貝殻である、二酸化炭素吸収液。
【請求項3】
請求項1又は2記載の二酸化炭素吸収液であって、
前記水溶液から未溶解の固形分を除去した、二酸化炭素吸収液。
【請求項4】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液の製造方法であって、
貝殻を焼成して貝殻焼成粉末を製造する工程と、
前記貝殻焼成粉末を水に溶解させて水溶液とする工程と、を有し、
前記貝殻焼成粉末を製造する工程は、焼成炉に前記貝殻を投入し、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を前記焼成炉に供給して前記貝殻を焼成する、二酸化炭素吸収液の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の二酸化炭素吸収液の製造方法であって、
さらに、フィルターにより前記水溶液から未溶解の固形分を除去する工程を有する、二酸化炭素吸収液の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の二酸化炭素吸収液の製造方法であって、
前記フィルターは、砕石よりなる、二酸化炭素吸収液の製造方法。
【請求項7】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収方法であって、
貝殻を焼成してなる貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液からなる二酸化炭素吸収液を製造する工程と、
二酸化炭素を含むガスと前記二酸化炭素吸収液とを接触させる工程と、を有し、
前記貝殻焼成粉末は、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を使用して前記貝殻を焼成して製造される、二酸化炭素吸収方法。
【請求項8】
請求項7記載の二酸化炭素吸収方法であって、前記二酸化炭素吸収液を製造する工程は、
前記貝殻焼成粉末を水に溶解させる工程と、
フィルターにより前記水溶液から未溶解の固形分を除去する工程と、を有する、二酸化炭素吸収液の製造方法。
【請求項9】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収装置であって、
タンクと、
前記タンクに収容された二酸化炭素吸収液と、
前記タンクの内部に開口し、二酸化炭素を含む空気を前記二酸化炭素吸収液に吹き込む導入配管と、を備え、
前記二酸化炭素吸収液は、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液である、二酸化炭素吸収装置。
【請求項10】
請求項9記載の二酸化炭素吸収装置であって、 前記タンクの底部に、前記二酸化炭素吸収液と二酸化炭素との反応で生じた析出物を回収する回収部を有する、二酸化炭素吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収液、二酸化炭素吸収液の製造方法、二酸化炭素吸収方法、及び二酸化炭素吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策に対する関心が高まり、大気中への二酸化炭素の排出量の削減が求められている。自動車を初めとする機械類の製造工場では、例えば、塗装工程の加熱機器等から二酸化炭素が発生する。そのため、工場からの二酸化炭素の排出量を削減するために、工場内で発生した二酸化炭素を吸収する技術が求められている。
【0003】
特許文献1は、セメント工場で石灰石を焼成して得られる酸化カルシウム及び水酸化カルシウムを含むカルシウム化合物を分散材とともに水に分散させて液剤化し、この液剤を二酸化炭素の吸収に使用する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-541560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、石灰石を焼成する過程で、大量の二酸化炭素が発生してしまう。そのため、特許文献1の方法で製造された液剤を工場から排出される二酸化炭素の吸収に用いたとしても、工場から排出される二酸化炭素の削減には貢献しない。特許文献1の技術において、石灰石の焼成の際に発生する二酸化炭素を回収することが考えられるが、液剤の製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0006】
そのため、より低コストに十分な量の二酸化炭素を回収できる技術が求められている。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液であって、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液を含む、二酸化炭素吸収液にある。
【0009】
別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液の製造方法であって、貝殻を焼成して貝殻焼成粉末を製造する工程と、前記貝殻焼成粉末を水に溶解させて水溶液とする工程と、を有し、前記貝殻焼成粉末を製造する工程は、焼成炉に前記貝殻を投入し、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を前記焼成炉に供給して前記貝殻を焼成する、二酸化炭素吸収液の製造方法にある。
【0010】
さらに別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収方法であって、貝殻を焼成してなる貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液からなる二酸化炭素吸収液を製造する工程と、二酸化炭素を含むガスと前記二酸化炭素吸収液とを接触させる工程と、を有し、前記貝殻焼成粉末は、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を使用して前記貝殻を焼成して製造される、二酸化炭素吸収方法にある。
【0011】
さらに別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収装置であって、タンクと、前記タンクに収容された二酸化炭素吸収液と、前記タンクの内部に開口し、二酸化炭素を含む空気を前記二酸化炭素吸収液に吹き込む導入配管と、を備え、前記二酸化炭素吸収液は、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液である、二酸化炭素吸収装置にある。
【発明の効果】
【0012】
上記観点の二酸化炭素吸収液、二酸化炭素吸収液の製造方法、二酸化炭素吸収方法、及び二酸化炭素吸収装置は、低コストで大量の二酸化炭素を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る二酸化炭素吸収装置の説明図である。
図2図2は、図1の二酸化炭素吸収装置に使用される二酸化炭素吸収液の製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1に示される本実施形態に係る二酸化炭素吸収装置10は、二酸化炭素吸収液Lに二酸化炭素を吸収させて除去する装置である。
【0015】
二酸化炭素吸収装置10は、第1タンク12と、第2タンク14と、第3タンク16と、導入配管18と、第1連結配管20と、第2連結配管22と、排気配管24と、を有する。第1タンク12、第2タンク14及び第3タンク16は、それぞれ所定量の二酸化炭素吸収液Lを収容する。
【0016】
第1タンク12は、その底部12bに回収部26を有する。回収部26は、二酸化炭素吸収液Lと二酸化炭素との反応によって生じる析出物Dを回収する。析出物Dは、炭酸カルシウムを主成分の一つとして含み、二酸化炭素吸収液Lとの比重差により回収部26に沈殿する。回収部26には、廃液とともに析出物Dを回収するためのドレイン配管(図示せず)が接続されてもよい。同様の回収部26は、第2タンク14及び第3タンク16にも、それぞれ設けられている。
【0017】
導入配管18は、第1タンク12に接続され、第1タンク12に、二酸化炭素を含んだ空気を導入する配管である。導入配管18は、図示しないポンプによって、工場の空調システムから取り込まれた空気を、第1タンク12に導く。導入配管18は、第1タンク12の底部12bに近い所定位置で第1タンク12の内部に入り、導入配管18の下流側の端部は、第1タンク12の底部12bから離れて開口する。導入配管18の下流側の端部の開口は、第1タンク12の二酸化炭素吸収液Lに浸かっている。導入配管18は、導入した空気を第1タンク12の二酸化炭素吸収液Lの下部に吹き込む。
【0018】
第1連結配管20は、第1タンク12と、第2タンク14とを接続する配管である。第1連結配管20は、上流側の端部20aが第1タンク12の上部12aに開口し、下流側の端部20bが第2タンク14の底部14bに近い所定位置に開口する。第1連結配管20の下流側の端部20bの開口は、第2タンク14の二酸化炭素吸収液Lに浸かっている。第1連結配管20は、第1タンク12から排出される空気を、第2タンク14の二酸化炭素吸収液Lの下部に吹き込む。第1連結配管20の端部20bは、第2タンク14の底部14bから上方に離間している。第2タンク14の回収部26は、端部20bと底部14bとの間に形成される。
【0019】
第2連結配管22は、第2タンク14と第3タンク16とを連結する配管である。第2連結配管22は、上流側の端部22aが第2タンク14の上部14aに開口し、下流側の端部22bが第3タンク16の底部16bに近い所定位置に開口する。第2連結配管22の下流側の端部22bの開口は、第3タンク16の二酸化炭素吸収液Lに浸っている。第2連結配管22は、第2タンク14から排出される空気を、第3タンク16の二酸化炭素吸収液Lの下部に吹き込む。第2連結配管22の端部22bは、第3タンク16の底部16bから上方に離間する。第3タンク16の回収部26は、端部22bと底部16bとの間に形成される。
【0020】
排気配管24は、第3タンク16の上部16aに接続されている。排気配管24は、第3タンク16から排出された空気を放出する配管である。排気配管24は、工場の内部の空調システムに接続され、工場内で処理された空気を循環させることができる。なお、排気配管24は、工場の外部の大気中に開放されてもよい。
【0021】
二酸化炭素吸収液Lは、貝殻焼成粉末を水に溶解させることで得られる水溶液であり、主要な成分の一つとして水酸化カルシウムを含む。二酸化炭素吸収液Lは、二酸化炭素吸収装置10による吸収率を高める観点から、酸化カルシウム等の固形分が除去された水溶液とすることが望ましい。
【0022】
二酸化炭素吸収液Lは、図2に示される方法で製造(調製)される。
【0023】
まず、原料となる貝殻を焼成する工程(ステップS10)が行われる。原料となる貝殻は、例えば、ホタテ、カキ、アワビ、サザエ、アサリ、シジミ、ハマグリ等の貝殻が使用される。大量の二酸化炭素を吸収する観点から、入手性に優れたホタテやカキの貝殻が好適に用いられる。その中でもホタテの貝殻は、炭酸カルシウムの含有量が多く、44重量%の二酸化炭素を含んでいるため、二酸化炭素の固定に好適である。また、ホタテの貝殻は、日本国内において、年間20万トンが廃棄物として廃棄されているため、大量に入手することができる。
【0024】
貝殻の焼成によって、貝殻の主成分である炭酸カルシウムが、酸化カルシウムと二酸化炭素とに分解される。その際に貝殻から放出される二酸化炭素は、もともと大気中の二酸化炭素を貝殻が取り込んだブルーカーボンである。したがって、貝殻から放出される二酸化炭素は、バイオマス発電で放出される二酸化炭素(グリーンカーボン)と同様に、地球環境の二酸化炭素の増減に影響を及ぼさないとされる。そのため、焼成工程で排出される二酸化炭素の回収は不要であり、低コストで二酸化炭素の吸収資材を製造できる。
【0025】
さらに、本実施形態では、貝殻を焼成する工程において貝殻は、電気炉に投入されてもよい。この電気炉には、太陽光発電、風力発電、又は地熱発電等の二酸化炭素を発生しない発電方法によって生み出されたグリーン電力が供給される。これにより、本実施形態で製造される貝殻焼成物は、地球環境における二酸化炭素を増加させることなく製造でき、いわゆるカーボンニュートラルを達成できる。したがって、本実施形態の貝殻焼成物は、その二酸化炭素吸収量の全量を工場から排出される二酸化炭素の排出削減量として利用できる。なお、貝殻の焼成は、電気炉以外の焼成炉(ガス炉、高周波加熱炉等)を使用してもよい。この場合、焼成炉は、大気中の二酸化炭素を増やさない方法で生成されたグリーン水素又はグリーン電力等のエネルギー源によって駆動すればよい。
【0026】
次に、二酸化炭素吸収液Lの製造工程は、粉砕工程(ステップS20)に進む。粉砕工程は、貝殻焼成物を粉砕し、微細な破片からなる貝殻焼成粉末を形成する。粉砕工程は、必要に応じて、貝殻焼成粉末の粒径を整えるためのふるい分け工程を含んでもよい。
【0027】
次に、二酸化炭素吸収液Lの製造工程は、水和工程(ステップS30)に進む。水和工程は、貝殻焼成粉末を水に接触させて水和させる工程である。貝殻焼成粉末の主成分である酸化カルシウムは、水と接触することにより、水酸化カルシウムとなる。水和工程では、さらに十分な量の水が供給されることで、貝殻焼成粉末が水酸化カルシウムを主成分の一つとする水溶液として溶解してもよい。
【0028】
貝殻焼成粉末を水和させておくことで、酸化カルシウムの水和熱による発熱及び発火の危険性を防ぐことができ、より安全に輸送及び保管できる。さらに、予め水溶液とした場合には、煩雑な溶解操作を行うことなく、すぐに二酸化炭素吸収装置10に利用できるため、工場側の作業を減らすことができて好適である。
【0029】
次に、二酸化炭素吸収液Lの製造工程は、固形分の除去工程(ステップS40)に進む。固形分の除去工程は、フィルターにより、貝殻焼成粉末の水溶液に混在する固形分の除去が行われる。フィルターを通さない貝殻焼成粉末の水溶液には、固形分として未溶解の水酸化カルシウム及び未溶解の酸化カルシウム等が含まれる。これらの固形分を除去することにより、二酸化炭素吸収液Lの取り扱い性が向上して好適である。
【0030】
固形分の除去工程には、フィルターとして自然石を破砕した砕石(麦飯石や花崗岩)を使用することができる。このようなフィルターは、使用した後にコンクリート骨材や路盤材料等として利用することができ、廃棄物の処理コストを低減できる。
【0031】
以上の工程により、二酸化炭素吸収液Lが製造される。二酸化炭素吸収装置10は、以下のように動作する。
【0032】
図1に示されるように、二酸化炭素吸収装置10の第1タンク12、第2タンク14及び第3タンク16には、二酸化炭素吸収液Lが充填される。その後、工場等の施設の空気は、導入配管18を通じて第1タンク12に吹き込まれる。空気は、第1タンク12の二酸化炭素吸収液Lと接触し、一部の二酸化炭素が第1タンク12の二酸化炭素吸収液Lによって吸収される。二酸化炭素吸収液Lと二酸化炭素との反応によって、炭酸カルシウムを主成分の一つとして含む析出物Dが生成される。生成した析出物Dは、回収部26に集まる。
【0033】
その後、空気は、第1タンク12から排出され、第1連結配管20を通じて第2タンク14に導入される。第2タンク14において、空気は再び二酸化炭素吸収液Lと接触し、二酸化炭素の除去が進む。第2タンク14においても、炭酸カルシウムを主成分の一つとして含む析出物Dが生成される。空気に含まれる二酸化炭素の量が減っているため、第2タンク14の回収部26に集められる析出物Dの量は、第1タンク12の回収部26に集められる析出物Dの量よりも少ない。
【0034】
さらに、空気は、第2タンク14から排出され、第2連結配管22を通じて第3タンク16に導入される。第3タンク16において、空気は二酸化炭素吸収液Lと接触して、さらに二酸化炭素の除去が行われる。第3タンク16においても、析出物Dが生成される。第3タンク16の析出物Dの発生量は、第2タンク14の析出物Dの発生量よりも少ない。その後、空気は排気配管24を通じて二酸化炭素吸収装置10から排出される。
【0035】
以上のように、本実施形態の二酸化炭素吸収装置10は、低コストで製造できる二酸化炭素吸収液Lを用いて、工場等の製造施設の二酸化炭素の排出量を削減できる。なお、上記の例では第1タンク12~第3タンク16を有する二酸化炭素吸収装置10を例示したが、本実施形態はこれに限定されず、タンクの数は1つでも、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0036】
上記した開示に関し、さらに以下の付記が開示される。
【0037】
(付記1)
一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液(L)は、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液を含む。このような二酸化炭素吸収液は、貝殻焼成物を使用することで、安価に二酸化炭素を吸収することができ、工場等の製造設備から排出される二酸化炭素の排出量を削減できる。また、二酸化炭素吸収液は、水和熱による発熱及び発火のおそれがなく安全であり、煩雑な溶解工程なしに使用できるので、取り扱い性に優れる。
【0038】
(付記2)
付記1記載の二酸化炭素吸収液であって、前記貝殻は、ホタテの貝殻であってもよい。ホタテの貝殻は、純度が高い炭酸カルシウムを含むため、より二酸化炭素の吸収性能に優れた二酸化炭素吸収液が得られる。
【0039】
(付記3)
付記1又は2記載の二酸化炭素吸収液は、前記水溶液から未溶解の固形分を除去してもよい。この二酸化炭素吸収液は、より取り扱い性に優れる。
【0040】
(付記4)
別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収液の製造方法であって、貝殻を焼成して貝殻焼成粉末を製造する工程(ステップS10)と、前記貝殻焼成粉末を水に溶解させて水溶液とする工程(ステップS30)と、を有し、前記貝殻焼成粉末を製造する工程は、焼成炉に前記貝殻を投入し、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を前記焼成炉に供給して前記貝殻を焼成してもよい。この二酸化炭素吸収液の製造方法は、カーボンオフセットを実現しつつ二酸化炭素吸収液を製造でき、その二酸化炭素の吸収量の全量を、工場等の製造施設の二酸化炭素の排出削減量として利用できる。
【0041】
(付記5)
付記4記載の二酸化炭素吸収液の製造方法は、さらに、フィルターにより前記水溶液から未溶解の固形分を除去する工程(ステップS40)を有してもよい。この二酸化炭素吸収液の製造方法は、固形分を含まない高純度の二酸化炭素吸収液を供給できる。
【0042】
(付記6)
付記5記載の二酸化炭素吸収液の製造方法であって、前記フィルターは、砕石でもよい。この二酸化炭素吸収液の製造方法は、フィルターの再利用が容易であり、フィルターの処分費用を削減できる。
【0043】
(付記7)
別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収方法であって、貝殻を焼成してなる貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液からなる二酸化炭素吸収液を製造する工程と、二酸化炭素を含むガスと前記二酸化炭素吸収液とを接触させる工程と、を有し、前記貝殻焼成粉末は、二酸化炭素を発生させない発電方法で発電された電力を使用して前記貝殻を焼成して製造される、二酸化炭素吸収方法にある。この二酸化炭素吸収方法は、低コストに二酸化炭素の排出量を削減できる。
【0044】
(付記8)
付記7記載の二酸化炭素吸収方法であって、前記二酸化炭素吸収液を製造する工程は、前記貝殻焼成粉末を水に溶解させる工程と、フィルターにより前記水溶液から未溶解の固形分を除去する工程と、を有してもよい。この二酸化炭素吸収方法は、低コストに二酸化炭素吸収液を製造できる。
【0045】
(付記9)
別の一観点は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素吸収装置(10)であって、タンク(12)と、前記タンクに収容された二酸化炭素吸収液と、前記タンクの内部に開口し、二酸化炭素を含む空気を前記二酸化炭素吸収液に吹き込む導入配管(18)と、を備え、前記二酸化炭素吸収液は、貝殻を焼成した貝殻焼成粉末を水に溶解させた水溶液である、二酸化炭素吸収装置にある。このような二酸化炭素吸収装置は、低コストで二酸化炭素の排出量を削減できる。
【0046】
(付記10)
付記9記載の二酸化炭素吸収装置は、前記タンクの底部(12b)に、前記二酸化炭素吸収液と二酸化炭素との反応で生じた析出物(D)を回収する回収部(26)を有してもよい。この二酸化炭素吸収装置は、二酸化炭素を析出物として二酸化炭素吸収液から分離して回収できる。
【0047】
なお、本発明は、上記した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0048】
10…二酸化炭素吸収装置 12…第1タンク
14…第2タンク 16…第3タンク
18…導入配管 20…第1連結配管
22…第2連結配管 24…排気配管
26…回収部 D…析出物
L…二酸化炭素吸収液
図1
図2