(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165951
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
B60K 6/383 20071001AFI20241121BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20241121BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20241121BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241121BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241121BHJP
F16D 41/02 20060101ALI20241121BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20241121BHJP
F16D 43/284 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B60K6/383 ZHV
B60K6/40
B60K6/442
B60L15/20 K
B60L50/16
F16D41/02 A
F16D41/06 A
F16D43/284 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082571
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202EE15
3D202EE23
3D202FF12
3D202FF15
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125EE58
(57)【要約】
【課題】シリーズハイブリッド車両用のトランスアクスルにおいて、入力軸方向の長さを短くして、車両への実装を容易とする。
【解決手段】実施形態のトランスアクスルは、エンジンと、発電用の第1モータジェネレータと、駆動用の第2モータジェネレータと、前記エンジンの出力により駆動されるオイルポンプと、を備えたハイブリッド車両のトランスアクスルであって、直達軸と、前記直達軸に設けられ、前記エンジンの出力を駆動軸へ伝達・遮断する直達クラッチと、を備え、前記第1モータジェネレータ、前記第2モータジェネレータ及び前記直達軸は、同軸上に配置されており、前記オイルポンプの駆動軸は、前記直達軸とは、別軸に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、内燃機関の出力が伝達される発電用モータと、発電機が発電した電力を蓄電するバッテリと、バッテリから電力が供給され駆動する駆動用モータと、駆動用モータの出力が伝達される駆動軸と、を備えたハイブリッド車両の動力伝達機構であって、
前記内燃機関の出力を駆動軸に伝達、遮断できるセレクタブルワンウェイクラッチと、
前記セレクタブルワンウェイクラッチにおいて前記内燃機関の出力を駆動軸に伝達/遮断を切り替えるための油圧ピストンと、
を備えたハイブリッド車両の動力伝達機構。
【請求項2】
前記セレクタブルワンウェイクラッチは、前記内燃機関の出力を前記駆動軸に伝達するための伝達軸と、
前記伝達軸の軸方向に沿って前記油圧ピストンにより駆動され、前記内燃機関の出力の伝達/遮断を切り替えるための切替部材と、
を備えた請求項1に記載のハイブリッド車両の動力伝達機構。
【請求項3】
前記セレクタブルワンウェイクラッチは、ハイブリッド車両への設置時に発電用モータの下方であり、デファレンシャル軸の側方に配置される、
請求項1に記載のハイブリッド車両の動力伝達機構。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両の水平静止時において、前記セレクタブルワンウェイクラッチの一部が、静油面ラインよりも下方に位置するように設置される、
請求項3に記載のハイブリッド車両の動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハイブリッド車両の動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、発電用の第1モータジェネレータと、駆動用の第2モータジェネレータとを備え、エンジンを第1モータジェネレータを駆動して発電用として用いるとともに、エンジンの駆動力を直接車軸に伝達する伝達機構を備えたSPHEV(series parallel hybrid electric vehicle)方式のハイブリッド車両が知られている。
【0003】
このようなハイブリッド車両において、直達用に湿式多板クラッチを用いてエンジンと駆動軸とを直達させる動力伝達機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような動力伝達機構を用いた場合、湿式多板クラッチの制御のために油圧制御ユニットが必要となるが、クラッチ係合のためには、油圧制御ユニットにおける油圧を高圧にする必要があり、損失が大きくなっていた。
また、湿式多板クラッチは、非係合時においても引き摺りトルクが発生していた。
さらに、クラッチ係合時においては、入出力の回転数を正確に同期させる必要があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構成を簡略化でき、油圧機構における損失を低減することができるハイブリッド車両の動力伝達機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態のハイブリッド車両の動力伝達機構は、内燃機関と、内燃機関の出力が伝達される発電用モータと、発電機が発電した電力を蓄電するバッテリと、バッテリから電力が供給され駆動する駆動用モータと、駆動用モータの出力が伝達される駆動軸と、を備えたハイブリッド車両の動力伝達機構であって、前記内燃機関の出力を駆動軸に伝達、遮断できるセレクタブルワンウェイクラッチと、前記セレクタブルワンウェイクラッチにおいて前記内燃機関の出力を駆動軸に伝達/遮断を切り替えるための油圧ピストンと、を備える。
【0008】
この構成によれば、動力伝達機構の構成を簡略化し、動力伝達経路の切替を行う油圧機構における損失を低減できる。
【0009】
また、実施形態の動力伝達機構において、前記セレクタブルワンウェイクラッチは、前記内燃機関の出力を前記駆動軸に伝達するための伝達軸と、前記伝達軸の軸方向に沿って前記油圧ピストンにより駆動され、前記内燃機関の出力の伝達/遮断を切り替えるための切替部材と、を備える。
【0010】
この構成によれば、切替部材の駆動方向は、駆動力の伝達方向とは、交差方向となるので、油圧機構によるセレクタブルワンウェイクラッチの切替時の油圧を多板式クラッチを用いる場合と比較して大幅に低下させることが可能となり、油圧機構における損失を低減することができる。
【0011】
また、実施形態のハイブリッド車両の動力伝達機構において、前記セレクタブルワンウェイクラッチは、ハイブリッド車両への設置時に発電用モータの下方であり、デファレンシャル軸の側方に配置される。
【0012】
この構成によれば、セレクタブルワンウェイクラッチの設置による他の部材への影響を抑制でき、セレクタブルワンウェイクラッチの仕様変更およびセレクタブルワンウェイクラッチを有さない車種への展開も容易となり、設計変更コストあるいは製造コストの低減が図れる。
【0013】
また、実施形態のハイブリッド車両の動力伝達機構において、前記ハイブリッド車両の水平静止時において、前記セレクタブルワンウェイクラッチの一部が、静油面ラインよりも下方に位置するように設置される。
【0014】
この構成によれば、セレクタブルワンウェイクラッチの可動部には確実にオイルが供給された状態となっており、潤滑をよくして切替時の負荷を低減することができる。
【0015】
また、実施形態のハイブリッド車両の動力伝達機構において、前記セレクタブルワンウェイクラッチは、前記内燃機関の駆動力を前記ハイブリッド車両の走行駆動系に直接的に伝達する直達クラッチとして設けられている。
この構成によれば、動力伝達機構の構成を簡略化しつつ、効率良く、駆動力を伝達することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるハイブリッド車両の動力伝達機構によれば、動力伝達機構の構成を簡略化し、動力伝達経路の切替を行う油圧機構における損失を低減できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る動力伝達機構が適用されたハイブリッド車両の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、トランスアクスルカバーを外した状態におけるトランスアクスル及びエンジンの正面図である。
【
図3】
図3は、セレクタブルワンウェイクラッチ機構の断面図である。
【
図4】
図4は、シリーズ-HEVモードから直達モードへの移行時の処理フローチャートである。
【
図5】
図5は、直達モードからシリーズ-HEVモードへの移行時の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる車両制御装置の一例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る動力伝達機構が適用されたハイブリッド車両の要部構成を示すブロック図である。
ハイブリッド車両10は、シリーズ方式のハイブリッドシステムを搭載した車両として構成されている。
【0019】
ハイブリッド車両10は、エンジン11と、第1モータジェネレータ12と、第2モータジェネレータ13と、ディファレンシャルギア14と、リングギア15と、駆動モータギア16と、ドライブシャフト17と、駆動輪18と、直達ギア19と、MG-ECU20と、HV-ECU21と、セレクタブルワンウェイクラッチ機構25を備えている。
【0020】
エンジン11は、例えば、3気筒4ストロークのレシプロエンジンでとして構成されており、燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。
【0021】
第1モータジェネレータ12は、エンジン11により駆動可能とするため、エンジン11に直結されている。これにより第1モータジェネレータ12は発電モータ12は、エンジン11のクランクシャフトと一体に回転軸が回転して、発電を行う。
【0022】
第2モータジェネレータ13は、ハイブリッド車両1の走行用の動力を発生する駆動モータとして、その回転軸がハイブリッド車両10の走行駆動系に連結されている。
ここで、第1モータジェネレータ12及び第2モータジェネレータ13は、例えば、永久磁石同期モータ(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)として構成されている。
【0023】
ハイブリッド車両10の走行駆動系は、リングギア15を有する、デファレンシャルギア14を備えている。
【0024】
リングギア15には、駆動モータギア16が噛合しており、リングギア15は、第2モータジェネレータ13の回転軸と一体に回転する駆動モータギア16の回転に伴って回転するようにされている。
【0025】
これにより、第2モータジェネレータ13により発生する駆動力は、リダクション軸REDX及び駆動モータギア16を介して、ディファレンシャルギア14のリングギア15に伝達される。
【0026】
リングギア15に伝達された駆動力は、デファレンシャルギヤ14から左右のドライブシャフト17を介して、左右の駆動輪18に伝達され、駆動輪18が回転する。
そして、駆動輪18の回転により、ハイブリッド車両10が前進走行または後進走行することとなる。
【0027】
MG-ECU20は、第1モータジェネレータ12及び第2モータジェネレータの制御を行う。
HV-ECU21は、エンジン11、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ13を含むハイブリッドシステムの全体を統括的に制御するユニットである。
【0028】
また、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ13の制御では、HV-ECU21からMG-ECU20にモータ制御指令が送信される。
【0029】
セレクタブルワンウェイクラッチ機構25は、エンジン11の出力を駆動用モータジェネレータである第2モータジェネレータ13の出力軸である駆動軸DRVXに伝達、遮断すべく、回転軸方向に直動可能で回転する直動回転部材Mを有し、エンジン11の出力を第2モータジェネレータ13の出力軸である駆動軸DRVXに伝達、遮断するセレクタブルワンウェイクラッチ25Aと、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aの直動回転部材Mを軸方向に駆動する油圧ピストン25Bと、を備えている。
【0030】
図2は、トランスアクスルカバーを外した状態におけるトランスアクスル及びエンジンの正面図である。
トランスアクスルは、第1モータジェネレータ11の軸MG1Xと、入力軸INPXと、第2モータジェネレータ12の軸MG2Xと、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aが設けられた直達ギヤ軸と、デファレンシャルギア軸DIFXと、を備えている。
【0031】
この場合において、第1モータジェネレータ11と第2モータジェネレータ12は、並列構造とされており、これらを避けた位置にセレクタブルワンウェイクラッチ25Aが設けられ必要がある。
【0032】
このため、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、ハイブリッド車両10に搭載した場合に第1モータジェネレータ11の軸MG1Xの下方及びディファレンシャルギア軸DEFXの側方であって、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aの一部がハイブリッド車両10を水平静止状態とした場合に静油面ラインLLよりも下方に位置して、油浴につかるようにしている。
【0033】
この構成によれば、セレクタブルワンウェイクラッチの切替に用いられる可動部(特に後述の内ケージ)には確実にオイルが供給された状態となっており、潤滑をよくして切替時の負荷を低減することができる。
【0034】
ここで、セレクタブルワンウェイクラッチ機構について詳細に説明する。
図3は、セレクタブルワンウェイクラッチ機構の断面図である。
セレクタブルワンウェイクラッチ機構25は、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aと、油圧ピストン25Bと、入力ギア51と、出力ギア52と、を備えている。
【0035】
セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、外輪61と、内輪62と、複数のスプラグ63と、内ケージ64と、伝達軸65と、を備えている。
【0036】
外輪61は、リング状に形成され、入力ギア51と一体に回転可能とされている。
内輪62は、リング状に形成され、出力ギア52が設けられた伝達軸65と一体に回転可能とされている。
【0037】
上記構成において、入力ギア51は、直達ギア19と噛合しており、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aの外輪61と一体に回転する。
また出力ギア52は、駆動ギア16と噛合し、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aの内輪62及び伝達軸65と一体に回転可能とされている。
【0038】
そして、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、油圧ピストン25Bをばね70及びばね71の弾性力に抗してセレクタブルワンウェイクラッチ25Aの回転軸方向に駆動し、切替部材を移動させることによりスプラグ63の姿勢を変更することができ、スプラグ63の姿勢に応じて、ワンウェイモードと、フリーモードと、を切り替えることが可能となっている。
【0039】
ここで、ワンウェイモードは、入力ギア51及び外輪61を介して入力された駆動力を内輪62に伝達して内輪61を所定の一方向にのみ回転させるモードである。
また、フリーモードは、入力ギア51及び外輪61を介して入力された駆動力を外輪61を空転させて内輪62、ひいては、出力ギア52及び駆動ギアに伝達させないモードである。
【0040】
ここで、セレクタブルワンウェイクラッチ単独の動作について説明する。
セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、油圧ピストン25Bが非駆動状態であれば、スプラグ63の姿勢は、フリーモードに対応する姿勢となっており、外輪61が空転した状態となっている。
したがって、エンジン11から伝達された駆動力が駆動軸DRVXに伝達されることはない。
これに対し、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、油圧ピストン25Bが駆動状態となると、スプラグ63の姿勢は、ワンウェイモードに対応する姿勢となり、内輪62は、外輪61と一体となって、所定の一方向にのみ回転する状態となる。
従って、エンジン11から伝達された駆動力が駆動軸DRVXに伝達されることとなる。
【0041】
以上の説明のように、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、油圧ピストン25Bをソレノイドで軸方向に沿って駆動して、ワンウェイモードとフリーモードとを切り替える構成を採っているので、クラッチとして従来のように湿式多板クラッチを用いる場合と比較して、低圧で駆動することが可能となり油圧制御の簡素化が図れる。
【0042】
また、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aの一部を含む直達ギア軸が静油面ラインLLよりも下方に位置しており常に油浴状態であり、潤滑油が十分な状態となっているので、油圧ピストン25Bにかかる負荷を小さくでき、油圧ピストン25Bの駆動力を小さくできるようになっている。ひいては、オイルポンプにおける損失(ポンプロス)の低減が図られている。
【0043】
またクラッチとしてセレクタブルワンウェイクラッチ25Aを用いているので、非駆動力伝達時には、外輪61及び入力ギア51が空転状態となるだけであり、クラッチとして従来のように湿式多板クラッチを用いる場合のように引き摺りロスが発生することなく、引き摺りロスをほぼゼロとすることが可能となっている。
【0044】
次にセレクタブルワンウェイクラッチの切替動作について詳細に説明する。
ここで、初期状態においては、ハイブリッド車両10は、シリーズ-HEVモード(エンジンを発電用に用い、駆動用としては用いない動作モード)で動作しているものとする。
【0045】
図4は、シリーズ-HEVモードから直達モードへの移行時の処理フローチャートである。
まず、HV-ECU21は、エンジン11の駆動力を直接、駆動軸へ伝達する直達モードに移行する状態か否かを判断する(ステップS11)。
ステップS11の判断において、未だ直達モードに移行する状態ではない場合には(ステップS11;No)、シリーズ-HEVモードを維持して待機状態となる。
【0046】
ステップS11の判断において、直達モードに移行する状態である場合には(ステップS11;Yes)、HV-ECU21は、エンジン11の出力軸の回転数が、駆動モータとしての第2モータジェネレータの駆動軸の回転数に近づくように制御する。さらに、HV-ECU21は、エンジンの出力軸の回転数が第2モータジェネレータ13の駆動軸の回転数よりも若干(所定回転数)低くなるように制御する(ステップS12)。すなわち、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aがオン状態ではあるが、駆動力非伝達状態となるように制御する。
【0047】
これにより、エンジン11の出力軸、すなわち、直達軸19と一体に回転する出力ギア52及び、この出力ギアに噛合している入力ギア51を介して回転駆動される外輪61は、相対的に第2モータジェネレータ13の駆動軸の駆動ギア16に噛合している出力ギア52を介して回転される内輪62と逆方向に回転する状態(逆転状態)となり、外輪61及び入力ギア51は実効的に空転状態となる。
【0048】
この空転状態において、HV-ECU21は、油圧ピストン25Bをソレノイドをオン状態とするので、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、オン状態となり、フリー状態からロック状態へと移行し、複数のスプラグ63は当接姿勢となる。
このとき、上述したように外輪61及び入力ギア51は実効的に空転状態であるので、油圧ピストン25Bへの負荷は小さく、低圧で駆動することが可能となっている。
【0049】
そして、スプラグ63は当接姿勢となるが、外輪61が内輪62に対して逆転状態であるので、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aとしては、係合解除状態となる。
【0050】
そこで、HV-ECU21は、エンジン11を制御し、エンジン11の出力軸の回転数が第2モータジェネレータ13の駆動軸の回転数と同期状態となるようにエンジン11の出力軸の回転数をあげる。
この結果、スプラグ63が当接姿勢のままで、出力ギアに噛合している入力ギア51を介して回転駆動される外輪61は、第2モータジェネレータ13の駆動軸の駆動ギア16に噛合している出力ギア52を介して回転される内輪62と同一方向に回転する状態(正転状態となり、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、係合状態となる。
【0051】
そして、HV-ECUは、動力源が第2モータジェネレータ13からエンジン11となるようにトルク移行を行う(ステップS15)。
【0052】
図5は、直達モードからシリーズ-HEVモードへの移行時の処理フローチャートである。
まず、HV-ECU21は、シリーズ-HEVモードに移行する状態か否かを判断する(ステップS21)。
ステップS21の判断において、未だシリーズ-HEVモードに移行する状態ではない場合には(ステップS21;No)、直達モードを維持して待機状態となる。
【0053】
ステップS21の判断において、シリーズ-HEVモードに移行する状態である場合には(ステップS21;Yes)、HV-ECU21は、車軸への動力源をエンジン11から第2モータジェネレータ13となるようにトルク移行を行う(ステップS22)。すなわち、エンジン11の駆動力を発電機として機能する第1モータジェネレータ12で吸収し、第2モータジェネレータ13のトルクを上げる。
【0054】
続いてHV-ECU21は、エンジン11から第2モータジェネレータ13へのトルク移行が完了したか否かを判断する(ステップS23)。
ステップS23の判断において、未だエンジン11から第2モータジェネレータ13へのトルク移行が完了していない場合には(ステップS23;No)、処理を再びステップS22に移行し、待機状態となる。
【0055】
ステップS23の判断において、エンジン11から第2モータジェネレータ13へのトルク移行が完了した場合には(ステップS23;Yes)、HV-ECU21は、エンジン11の回転数を下げてセレクタブルワンウェイクラッチ25Aの同期解除を行う(ステップS24)。
【0056】
続いて、HV-ECU21は、HV-ECU21は、
図6で示した状態から、油圧ピストン25Bをソレノイドをオフ状態とすることにより非加圧状態となり、スプラグ63は、再び離間姿勢となる。
この結果、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aは、再びオフ状態となる。
【0057】
以上の説明のように、エンジン11の出力軸の回転数を駆動軸DRVXの回転数よりも所定回転数低い回転数に制御し、エンジン11の出力軸の回転数が駆動軸DRVXの回転数よりも所定回転数低い回転数となった場合に、油圧ピストン25Bを制御し、セレクタブルワンウェイクラッチ25Aにおいてエンジン11の出力を駆動軸DRVXに伝達可能な状態へと切り替えるので、従来の様に、クラッチの入力側と出力側とで同期を完全にとることなく切り替えを行うことが可能となり、動力伝達機構の構成を簡略化することができる。
【0058】
さらに、動力伝達経路の切替を行う場合に、セレクタブルワンウェイクラッチの切替時の油圧機構における油圧を、多板式クラッチを用いる場合の油圧と比較して大幅に低下させることが可能となり、油圧機構における損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 ハイブリッド車両
11 エンジン(内燃機関)
12 第1モータジェネレータ(発電用)
13 第2モータジェネレータ(駆動用)
14 ディファレンシャルギア
15 リングギア
16 駆動モータギア
17 ドライブシャフト
18 駆動輪
19 直達ギア
20 MG-ECU
21 HV-ECU(制御装置)
25 セレクタブルワンウェイクラッチ機構
25A セレクタブルワンウェイクラッチ
25B 油圧ピストン
51 入力ギア
52 出力ギア
61 外輪
62 内輪
63 スプラグ
64 内ケージ
65 伝達軸