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特開2024-165954極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165954
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20241121BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F25B9/14 530A
F25B9/00 A
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082575
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 祐貴
(57)【要約】
【課題】極低温冷凍機の低圧側冷媒ガス流路に生じうるオイル汚染に対処する。
【解決手段】極低温冷凍機10は、圧縮機12と、コールドヘッド14と、コールドヘッド14をバイパスするように圧縮機12に接続されたバイパスバルブ33と、圧縮機12を停止させ、圧縮機12の停止から遅延させてバイパスバルブ33を開き、圧縮機12の停止からバイパスバルブ33の開放までの期間の少なくとも一部においてコールドヘッド14を運転するように構成されるコントローラ100と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
コールドヘッドと、
前記コールドヘッドをバイパスするように前記圧縮機に接続されたバイパスバルブと、
前記圧縮機を停止させ、
前記圧縮機の停止から遅延させて前記バイパスバルブを開き、
前記圧縮機の停止から前記バイパスバルブの開放までの期間の少なくとも一部において前記コールドヘッドを運転するように構成されるコントローラと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記バイパスバルブの出入口間の差圧、または入口側の圧力、または出口側の圧力を測定する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記圧縮機の停止後であって前記コールドヘッドの運転中に、前記圧力センサによって測定された圧力を取得し、
取得された圧力に基づいて、前記バイパスバルブを開き、前記コールドヘッドを停止させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記コントローラは、
測定された前記バイパスバルブの出入口間の差圧を取得し、
取得された差圧を差圧しきい値と比較し、
取得された差圧が前記差圧しきい値を下回るとき、前記バイパスバルブを開き、前記コールドヘッドを停止させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記圧縮機は、前記圧縮機を駆動する圧縮機モータを備え、
前記コールドヘッドは、前記コールドヘッドを駆動するコールドヘッドモータを備え、
前記コントローラは、前記圧縮機モータを第1速度プロファイルに従って停止させ、前記コールドヘッドモータを第2速度プロファイルに従って停止させるように構成され、
前記第1速度プロファイルは、前記圧縮機モータを第1タイミングで停止させるように前記圧縮機モータの速度を減少させるように設定され、
前記第2速度プロファイルは、前記コールドヘッドモータを前記第1タイミングから遅れた第2タイミングで停止させるように前記コールドヘッドモータの速度を減少させるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記圧縮機の停止から、予め定められた待機時間をカウントし、
前記待機時間が経過するとき前記コールドヘッドを停止させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項6】
前記コントローラは、前記コールドヘッドの停止後に前記バイパスバルブを開くように構成されることを特徴とする請求項4または5に記載の極低温冷凍機。
【請求項7】
極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、圧縮機と、コールドヘッドと、前記コールドヘッドをバイパスするように前記圧縮機に接続されたバイパスバルブとを備え、前記方法は、
前記圧縮機を停止させることと、
前記圧縮機の停止から遅延させて前記バイパスバルブを開くことと、
前記圧縮機の停止から前記バイパスバルブの開放までの期間の少なくとも一部において前記コールドヘッドを運転することと、を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機などの極低温冷凍機では、オイル潤滑式の圧縮機がよく用いられている。圧縮機で圧縮された高圧の冷媒ガスは潤滑オイルを含有しうるので、オイルセパレータとアドゾーバが設けられている。オイルセパレータは、高圧冷媒ガスからオイルを分離・回収する。アドゾーバは、オイルセパレータを通過した高圧冷媒ガスから残留オイル成分を吸着により除去する。高圧冷媒ガスは、こうしてオイルセパレータとアドゾーバにより清浄化され、膨張機として働くコールドヘッドに供給される。コールドヘッドでの膨張により低圧となった冷媒ガスは、圧縮機に回収される。圧縮機には、高圧側の冷媒ガス流路を低圧側の冷媒ガス流路につなぐバイパス流路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-74326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記の極低温冷凍機ではオイル除去された冷媒ガスがコールドヘッドに供給されているにもかかわらず、コールドヘッドから圧縮機に回収される低圧冷媒ガスが流れる低圧側の冷媒ガス流路が時にオイルで汚染されることを発見した。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温冷凍機の低圧側冷媒ガス流路に生じうるオイル汚染に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、圧縮機と、コールドヘッドと、コールドヘッドをバイパスするように圧縮機に接続されたバイパスバルブと、圧縮機を停止させ、圧縮機の停止から遅延させてバイパスバルブを開き、圧縮機の停止からバイパスバルブの開放までの期間の少なくとも一部においてコールドヘッドを運転するように構成されるコントローラと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の運転方法が提供される。極低温冷凍機は、圧縮機と、コールドヘッドと、コールドヘッドをバイパスするように圧縮機に接続されたバイパスバルブとを備える。方法は、圧縮機を停止させることと、圧縮機の停止から遅延させてバイパスバルブを開くことと、圧縮機の停止からバイパスバルブの開放までの期間の少なくとも一部においてコールドヘッドを運転することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極低温冷凍機の低圧側冷媒ガス流路に生じうるオイル汚染に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転方法を説明するフローチャートである。
図3】実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転方法の一例を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転方法の一例を説明するフローチャートである。
図5図5(a)および図5(b)は、実施の形態に係り、圧縮機モータおよびコールドヘッドモータの速度プロファイルの例を示す模式図である。
図6】実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1は、実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【0012】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、コールドヘッド14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の冷媒ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。コールドヘッド14は、膨張機とも称され、室温部14aと、冷却ステージとも称される低温部14bとを有する。圧縮機12とコールドヘッド14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより低温部14bが所望の極低温に冷却される。冷媒ガスは、作動ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0013】
極低温冷凍機10は、一例として、単段式または二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。コールドヘッド14は、極低温冷凍機10のタイプに応じて異なる構成を有するが、圧縮機12は、極低温冷凍機10のタイプによらず、以下に説明する構成を用いることができる。
【0014】
なお、一般に、圧縮機12からコールドヘッド14に供給される冷媒ガスの圧力と、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
【0015】
圧縮機12は、圧縮機本体16、オイルライン18、オイルセパレータ20、アドゾーバ21を備える。また、圧縮機12は、吐出ポート22、吸入ポート24、吐出流路26、吸入流路28、ストレージタンク30、冷媒ガスチャージポート31、バイパスバルブ33を有するバイパス流路32、冷媒ガス冷却部34、オイル冷却部36を備える。
【0016】
圧縮機本体16は、その吸入口から吸入される冷媒ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体16は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または冷媒ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体16は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0017】
圧縮機本体16は、その駆動源として圧縮機モータ17を備える。圧縮機モータ17は、例えば、外部電源(例えば、商用の三相交流電源)からの給電により動作する電気モータである。圧縮機モータ17は、例えば電源周波数に相当する一定の運転周波数すなわち回転数で動作してもよく、それにより、圧縮機本体16は、固定された一定の冷媒ガス流量を吐出してもよい。あるいは、圧縮機モータ17は、運転周波数すなわち回転数を可変としてもよく、それにより、圧縮機本体16は、吐出する冷媒ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。この場合、後述のコントローラ100による制御のもとで圧縮機モータ17の運転周波数を制御する圧縮機インバータが、圧縮機モータ17とコントローラ100との間に接続されてもよい。圧縮機モータ17の運転周波数は、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で制御されてもよい。
【0018】
圧縮機本体16は、潤滑と冷却のためにオイルが使用されるオイル潤滑式であり、吸入された冷媒ガスは圧縮機本体16内でこのオイルに直接さらされる。よって、冷媒ガスは、オイルが若干混入した状態で吐出口から送出される。
【0019】
オイルライン18は、オイル循環ライン18aと、オイル戻りライン18bとを備える。オイル循環ライン18aは、オイル冷却部36を有し、圧縮機本体16から流出するオイルがオイル冷却部36により冷却され再び圧縮機本体16に流入するように構成されている。オイル循環ライン18aには、内部を流れるオイル流量を制御するオリフィスが設けられていてもよい。また、オイル循環ライン18aには、オイルに含まれる塵埃を除去するフィルターが設けられてもよい。オイル戻りライン18bは、オイルセパレータ20で回収されたオイルを圧縮機本体16に戻すために、オイルセパレータ20を吸入流路28に接続する。オイル戻りライン18bには、オイルセパレータ20で回収されたオイルを含む冷媒ガスが流れる。オイル戻りライン18bの途中には、オイルセパレータ20で分離されたオイルに含まれる塵埃を除去するフィルターと、圧縮機本体16へのオイルの戻り量を制御するオリフィスが設けられてもよい。
【0020】
オイルセパレータ20は、圧縮機本体16を通ることによって冷媒ガスに混入するオイルを冷媒ガスから分離するために設けられている。オイルセパレータ20は、吐出流路26の上流部26aを通じて圧縮機本体16の吐出口に接続されている。また、オイルセパレータ20は、吐出流路26の下流部26bを通じて吐出ポート22に接続されている。
【0021】
アドゾーバ21は、吐出流路26に設けられ、冷媒ガス中のガス状オイル成分(例えば、気化したオイルやミスト状のオイルなど)や水分を吸着することにより冷媒ガスを浄化する。アドゾーバ21は、吐出流路26の下流部26bの途中、つまりオイルセパレータ20と吐出ポート22の間で吐出流路26上に配置されている。
【0022】
吐出ポート22は、圧縮機本体16により高圧に昇圧された冷媒ガスを圧縮機12から送出するために圧縮機筐体38に設置された冷媒ガスの出口であり、吸入ポート24は、低圧の冷媒ガスを圧縮機12に受け入れるために圧縮機筐体38に設置された冷媒ガスの入口である。吐出流路26は、吐出ポート22を圧縮機本体16の吐出口に接続する。吐出流路26には、圧縮機本体16から吐出ポート22へと吐出される冷媒ガスが流れる。吸入流路28は、吸入ポート24を圧縮機本体16の吸入口に接続する。吸入流路28には、吸入ポート24から圧縮機本体16に吸入される冷媒ガスが流れる。吐出流路26と吸入流路28はそれぞれ、圧縮機筐体38内に設けられた圧縮機12の内部配管であり、フレキシブル管またはリジッド管であってもよい。
【0023】
ストレージタンク30は、コールドヘッド14から圧縮機12へと戻る低圧の冷媒ガスに含まれる脈動を除去するための容積として設けられている。ストレージタンク30は、吸入流路28に配置されている。
【0024】
冷媒ガスチャージポート31は、極低温冷凍機10に冷媒ガスを充填するための充填口として圧縮機筐体38に設けられている。冷媒ガスチャージポート31は、この実施の形態では、ストレージタンク30と吸入ポート24の間で吸入流路28に接続されている。あるいは、冷媒ガスチャージポート31は、ストレージタンク30に接続されてもよい。冷媒ガスチャージポート31は、通常は蓋で閉じられていてもよい。冷媒ガスを充填するとき、冷媒ガスチャージポート31に冷媒ガスタンクが接続され、そこから冷媒ガスが冷媒ガスチャージポート31を通じて圧縮機12内に供給される。
【0025】
バイパスバルブ33は、コールドヘッド14をバイパスするように圧縮機12に接続されている。バイパスバルブ33は、バイパス流路32上に設けられ、バイパス流路32は、コールドヘッド14をバイパスして吐出流路26から吸入流路28に冷媒ガスを還流させるように吐出流路26を吸入流路28に接続する。一例として、バイパス流路32は、図示されるように、オイルセパレータ20とアドゾーバ21の間で吐出流路26から分岐し、ストレージタンク30に接続されてもよい。
【0026】
バイパスバルブ33は、極低温冷凍機10の運転中には閉鎖され、吐出流路26と吸入流路28を分離し、それにより極低温冷凍機10の高圧側と低圧側の圧力差が維持される。バイパスバルブ33は、詳細は後述するが、極低温冷凍機10を運転停止するとき開放される。バイパスバルブ33の開放により、吐出流路26からバイパス流路32を通じた吸入流路28への冷媒ガスの流入が許容され、吐出流路26と吸入流路28の冷媒ガス圧力が均圧化される。よって、バイパスバルブ33は、均圧弁と称されてもよい。バイパスバルブ33は、例えば、常開型の開閉弁であってもよく、極低温冷凍機10の給電停止により自然に開放されてもよい。
【0027】
なお、バイパス流路32には、バイパスバルブ33と並列に流量制御弁が設けられてもよい。この流量制御弁を利用して、吐出流路26と吸入流路28の差圧が調整されてもよい。あるいは、バイパスバルブ33はその開度を調整可能であってもよく、極低温冷凍機10の運転中にバイパスバルブ33を利用して、吐出流路26と吸入流路28の差圧が調整されてもよい。
【0028】
冷媒ガス冷却部34およびオイル冷却部36は、例えば冷却水などの冷却媒体を用いて圧縮機12を冷却する冷却系を構成する。冷媒ガス冷却部34は、吐出流路26の上流部26aに配置され、圧縮機本体16での冷媒ガスの圧縮に伴って生じる圧縮熱により加熱された高圧の冷媒ガスを冷却するために設けられている。冷媒ガス冷却部34は、冷媒ガスと冷却媒体との熱交換により冷媒ガスを冷却する。また、オイル冷却部36は、圧縮機本体16から流出するオイルと冷却媒体との熱交換によりオイルを冷却する。冷却媒体は、外部から圧縮機12に供給され、冷媒ガス冷却部34とオイル冷却部36を経て、圧縮機12の外部に排出される。このようにして、圧縮機本体16で生じる圧縮熱は、冷却媒体とともに圧縮機12の外へと除去される。なお、冷却媒体は、例えばチラー(図示せず)により冷却され、再び供給されてもよい。
【0029】
また、極低温冷凍機10には、圧力センサ37(例えば、第1圧力センサ37a及び/または第2圧力センサ37b)が設けられている。圧力センサ37は、バイパスバルブ33の出入口間の差圧、または入口側の圧力、または出口側の圧力を測定する。例えば、第1圧力センサ37aは、吐出流路26を流れる冷媒ガスの圧力を測定するよう吐出流路26に配置されている。第1圧力センサ37aは、測定された圧力を表す第1測定圧信号PHをコントローラ100に出力するよう構成されている。このようにして、第1圧力センサ37aは、バイパスバルブ33の入口側の圧力を測定することができる。第2圧力センサ37bは、吸入流路28を流れる冷媒ガスの圧力を測定するよう吸入流路28に配置されている。第2圧力センサ37bは、測定された圧力を表す第2測定圧信号PLをコントローラ100に出力するよう構成されている。このようにして、第2圧力センサ37bは、バイパスバルブ33の出口側の圧力を測定することができる。また、第1圧力センサ37aと第2圧力センサ37bによって測定された圧力からバイパスバルブ33の出入口間の差圧を取得することができる。
【0030】
圧縮機筐体38には、圧縮機本体16をはじめとして、吐出流路26上のオイルセパレータ20、アドゾーバ21、吸入流路28上のストレージタンク30といった圧縮機12の各構成要素が収容されている。冷媒ガス冷却部34、オイル冷却部36、圧力センサ37も圧縮機筐体38に収容されている。
【0031】
コールドヘッド14は、コールドヘッド14への冷媒ガスの出入口として室温部14aに高圧ポート40と低圧ポート41とを備える。高圧ポート40は、高圧配管42によって圧縮機12の吐出ポート22に接続され、低圧ポート41は、低圧配管43によって圧縮機12の吸入ポート24に接続されている。高圧配管42と低圧配管43は、圧縮機12の外に配置される。通例、高圧配管42と低圧配管43は、フレキシブル管であるが、リジッド管であってもよい。
【0032】
コールドヘッド14は、コールドヘッド14を駆動するコールドヘッドモータ15を備える。知られているように、コールドヘッドモータ15は、コールドヘッド14内の冷媒ガスの膨張空間を高圧ポート40と低圧ポート41に交互に接続する圧力切替バルブを駆動する。また、GM冷凍機の場合、コールドヘッドモータ15は、コールドヘッド14内で膨張空間の容積を定めるディスプレーサを駆動する。コールドヘッドモータ15の駆動により、膨張空間には周期的な容積変動とこれに同期した冷媒ガスの圧力変動が生成され、それにより極低温冷凍機10の冷凍サイクル(例えばGMサイクル)が構成される。
【0033】
コールドヘッドモータ15は、例えば、外部電源(例えば、商用の三相交流電源)からの給電により動作する電気モータである。コールドヘッドモータ15は、圧縮機12を介して外部電源に接続されてもよく、言い換えれば、圧縮機12がコールドヘッドモータ15の電源として設けられていてもよい。コールドヘッドモータ15は、例えば電源周波数に相当する一定の運転周波数すなわち回転数で動作してもよく、それにより、コールドヘッドモータ15は、コールドヘッド14に冷凍サイクルを一定の周波数で生じさせてもよい。あるいは、コールドヘッドモータ15は、運転周波数すなわち回転数を可変としてもよく、それにより、コールドヘッド14に生じる冷凍サイクルの周波数が可変とされてもよい。この場合、コントローラ100による制御のもとでコールドヘッドモータ15の運転周波数を制御するコールドヘッドインバータが、コールドヘッドモータ15とコントローラ100との間に接続されてもよい。コールドヘッドモータ15の運転周波数は、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で制御されてもよい。
【0034】
極低温冷凍機10は、極低温冷凍機10のオンオフを切り替えるためのメインスイッチ50を備えてもよい。メインスイッチ50は、例えば圧縮機12に設置されてもよい。メインスイッチ50がオンのとき、圧縮機12とコールドヘッド14が運転され、メインスイッチ50がオフのとき、圧縮機12とコールドヘッド14の運転が停止される。メインスイッチ50は、手動により操作可能であってもよい。それとともに、またはそれに代えて、メインスイッチ50は、予め定められた条件に従って自動的に切り替えられてもよい。例えば、メインスイッチ50は、予め定められたスケジュールに従って、極低温冷凍機10をオンまたはオフに切り替えてもよい。
【0035】
また、極低温冷凍機10には、極低温冷凍機10を制御するコントローラ100が設けられている。コントローラ100は、極低温冷凍機10のオンオフを制御するように構成されている。例えば、コントローラ100は、圧縮機モータ17のオンオフを制御するように圧縮機モータ17に接続されている。コントローラ100によって圧縮機モータ17をオン(またはオフ)にすることにより、圧縮機12が運転(または運転停止)される。同様に、コントローラ100は、コールドヘッドモータ15のオンオフを制御するように圧縮機モータ17に接続されている。コントローラ100によってコールドヘッドモータ15をオン(またはオフ)にすることにより、コールドヘッド14が運転(または運転停止)される。また、コントローラ100は、バイパスバルブ33のオンオフ(つまり開閉)を制御するようにバイパスバルブ33に接続されている。
【0036】
コントローラ100は、極低温冷凍機10の運転中に、運転停止指令に応答して、極低温冷凍機10を運転停止させる(つまりオフにする)ように構成されていてもよい。運転停止指令は、メインスイッチ50のオフ操作により生成され、メインスイッチ50からコントローラ100に入力されてもよい。あるいは、運転停止指令は、コントローラ100での内部処理によって生成されてもよい。あるいは、運転停止指令は、コントローラ100に接続された他のコントローラ(例えば、極低温冷凍機10が組み込まれた上位装置を制御する上位コントローラ)により生成され、コントローラ100に入力されてもよい。
【0037】
詳細は後述するが、コントローラ100は、運転停止指令に応答して圧縮機12を停止させ、圧縮機12の停止から遅延させてバイパスバルブ33を開き、圧縮機12の停止からバイパスバルブ33の開放までの期間の少なくとも一部においてコールドヘッド14を運転するように構成されてもよい。
【0038】
コントローラ100は、図示されるように、圧縮機12に設けられてもよい(例えば、圧縮機筐体38に搭載されてもよい)。あるいは、コントローラ100は、コールドヘッド14に設けられてもよい。あるいは、コントローラ100は、圧縮機12およびコールドヘッド14とは別体の制御装置として設けられ、圧縮機12およびコールドヘッド14に接続されてもよい。
【0039】
コントローラ100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図1では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
メインスイッチ50がオンとされ、極低温冷凍機10が運転されるとき、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスは、低圧ポート41から低圧配管43を通じて圧縮機12の吸入ポート24に流入する。冷媒ガスは、吸入流路28上のストレージタンク30を経て、圧縮機本体16の吸入口へと回収される。
【0041】
冷媒ガスは、圧縮機本体16によって圧縮され昇圧される。圧縮機本体16の吐出口から送出される冷媒ガスは、吐出流路26上の冷媒ガス冷却部34で冷却され、その後オイルセパレータ20およびアドゾーバ21で浄化される。圧縮機本体16で冷媒ガスに混入したオイルの大部分は、オイルセパレータ20で分離されて圧縮機本体16へと回収される。このとき、バイパスバルブ33は閉鎖されているため、オイルセパレータ20から出た冷媒ガスは、バイパス流路32ではなく、アドゾーバ21に向かう。オイルセパレータ20を通過した冷媒ガスは、アドゾーバ21に供給され、冷媒ガスに残留しているガス状オイル成分がアドゾーバ21に吸着され除去される。
【0042】
冷媒ガスは、吐出ポート22から圧縮機12を出て、高圧配管42と高圧ポート40を経てコールドヘッド14の内部に供給される。コールドヘッド14内での冷媒ガスの断熱膨張により、コールドヘッド14の低温部14bが冷却される。こうして低圧となった冷媒ガスは、再びコールドヘッド14から圧縮機12に回収される。
【0043】
ところで、本発明者は、長期にわたり運転された極低温冷凍機10では、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される低圧冷媒ガスが流れる低圧側の冷媒ガス流路(例えば、吸入流路28、低圧配管43、冷媒ガスチャージポート31)がオイルで汚染されうることを発見した。
【0044】
既存の極低温冷凍機10では、極低温冷凍機10を運転停止させるとき、圧縮機12およびコールドヘッド14など極低温冷凍機10の各構成要素への給電が一斉に遮断される。例えば、圧縮機モータ17、バイパスバルブ33、コールドヘッドモータ15への給電は同時に終了される。圧縮機モータ17とコールドヘッドモータ15が停止し、それと同時にバイパスバルブ33が開く。
【0045】
本発明者の考察によると、上述の低圧側オイル汚染は、このような運転停止動作とそれに基づくバイパス流路32を通じた均圧化に起因すると考えられる。
【0046】
バイパスバルブ33が開くと、吐出流路26と吸入流路28の圧力差にしたがい、吐出流路26からバイパス流路32を通じて吸入流路28へと冷媒ガスが流れ込む。冷媒ガスの一部はバイパス流路32から圧縮機本体16へと向かうが、バイパス流路32からの冷媒ガス流れの大半は、図1に破線の矢印60で示すように、吸入流路28を吸入ポート24および冷媒ガスチャージポート31に向かって逆流し、さらには低圧配管43へと逆流しうる。これは、吸入流路28から低圧配管43を通じて低圧ポート41に至る低圧側流路容積に比べて、圧縮機本体16に向かう流路容積が小さいためである。
【0047】
この逆流する冷媒ガスは、オイルセパレータ20によってオイル分離されているが、アドゾーバ21を経由していないので、ガス状オイル成分を(微量であるが)含みうる。そのため、長期の運転を通じてきわめて多数回の冷媒ガス逆流(例えば2500回程度のオンオフ切替とそれに伴う均圧化および冷媒ガス逆流)を受けることにより、徐々にオイルが低圧側の冷媒ガス流路に蓄積され、汚染が進んだものと考えられる。汚染された場合には、流路内の洗浄や配管の交換など煩雑な保守作業を要し、手間や費用がかかる。
【0048】
加えて、冷媒ガスチャージポート31への逆流により、冷媒ガスチャージポート31にオイルが溜まりうる。冷媒ガスを充填するために冷媒ガスチャージポート31を開いたときオイルがガスとともに噴出し、周囲を汚すといった不都合も起こりうる。
【0049】
図2は、実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転方法を説明するフローチャートである。この方法は、極低温冷凍機10の運転停止方法であり、極低温冷凍機10の運転を終了するときに実行される。この運転停止方法は、圧縮機12の運転を停止させることと(S10)、圧縮機12の停止から遅延させてバイパスバルブ33を開くことと(S12)、圧縮機12の停止からバイパスバルブ33の開放までの期間の少なくとも一部においてコールドヘッド14を運転することと(S14)、を備える。なお、圧縮機12の停止は、上述のように、コントローラ100によって、運転停止指令に応答して行われてもよい。あるいは、圧縮機12は、手作業により停止されてもよい。
【0050】
この方法では、圧縮機12が停止されるとき、それと同時にバイパスバルブ33が直ちに開放されるのではなく、遅延時間の分だけバイパスバルブ33を閉じた状態が継続される。この遅延時間(すなわち、圧縮機12の停止からバイパスバルブ33の開放までの期間)の少なくとも一部においてコールドヘッド14が運転される。例えば、コールドヘッド14は、圧縮機12の停止の前後にわたり継続して運転されてもよい。そして、コールドヘッド14は、バイパスバルブ33を開く前に、またはバイパスバルブ33を開くと同時に、またはバイパスバルブ33を開いた後に、運転停止される(S16)。
【0051】
圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33を閉じた状態でコールドヘッド14を運転することにより、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を通じて冷媒ガスを流すことができる。このようにして、バイパス流路32ではなく、コールドヘッド14を通じて、吐出流路26と吸入流路28の圧力差を低減し、またはこれらを均圧化することができる。その後、バイパスバルブ33が開いた後は、バイパス流路32も利用して吐出流路26と吸入流路28を均圧化することができる。
【0052】
図1に実線の矢印62で示すように、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を経由する冷媒ガスは、アドゾーバ21で浄化されているから、低圧側の冷媒ガス流路のオイル汚染は可能な限り避けられる。したがって、オイル汚染に起因する煩雑な保守作業や冷媒ガスチャージポート31からのオイル噴出など上記で指摘した問題も解消または軽減される。
【0053】
一例として、圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33の開放を遅延させかつコールドヘッド14の運転を一時的に継続させる実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転停止方法は、圧縮機12の停止後の圧力測定に基づいてもよい。この場合、コントローラ100は、(i)圧縮機12の停止後であってコールドヘッド14の運転中に、圧力センサ37によって測定された圧力を取得し、(ii)取得された圧力に基づいて、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させるように構成されてもよい。このような運転停止方法の例を図3および図4を参照して以下に述べる。
【0054】
図3は、実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転方法の一例を説明するフローチャートである。本方法は、極低温冷凍機10の運転を停止する際にコントローラ100によって実行される。コントローラ100は、例えば、上述の運転停止指令に応答して、本方法を開始してもよい。
【0055】
本方法ではまず、図3に示されるように、圧縮機12の運転が停止される(S20)。コントローラ100によって運転停止指令が取得された場合、コントローラ100は、この運転停止指令に応答して、圧縮機モータ17への給電を停止し、それにより圧縮機12を停止させてもよい。このとき、上述のように、圧縮機12は停止されるが、コールドヘッド14の運転は停止されることなく、そのまま継続される。また、バイパスバルブ33は、閉じた状態に引き続き維持される。
【0056】
圧縮機12が停止されると、バイパスバルブ33の出入口間の差圧が監視される(S21)。例えば、コントローラ100は、第1圧力センサ37aから第1測定圧信号PHを受信し、第2圧力センサ37bから第2測定圧信号PLを受信し、第1測定圧信号PHと第2測定圧信号PLに基づいてバイパスバルブ33の出入口間の差圧を取得してもよい。第1測定圧信号PHが第1圧力センサ37aによって測定された吐出流路26の圧力すなわちバイパスバルブ33の入口側圧力を表し、第2測定圧信号PLが第2圧力センサ37bによって測定された吸入流路28の圧力すなわちバイパスバルブ33の出口側圧力を表すから、これら2つの測定圧力の差を計算することによりバイパスバルブ33の出入口間の差圧を取得することができる。このようにして、コントローラ100は、圧縮機12の停止後における、測定されたバイパスバルブ33の出入口間の差圧を取得できる。
【0057】
圧縮機12の停止後の差圧監視(S21)では、コントローラ100は、取得された差圧(すなわち測定されたバイパスバルブ33の出入口間の差圧)を差圧しきい値と比較する。この差圧しきい値は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。差圧しきい値は、例えば、上述のオイル汚染問題を解決する観点から、吐出流路26と吸入流路28の差圧が低減または解消されたとみなされる水準の圧力値に設定されてもよい。差圧しきい値は、例えば、圧縮機12の停止時に測定される吐出流路26と吸入流路28の差圧(例えば、S21の差圧監視において最初に測定される差圧)の所定割合以下(例えば、1/2以下、または1/10以下)の圧力値であってもよい。あるいは、差圧しきい値は、圧縮機12の運転中にとりうる吐出流路26と吸入流路28の設計上の差圧値の所定割合以下の圧力値であってもよい。差圧しきい値は、例えば、1MPa以下の圧力値、または0.1MPa以下の圧力値であってもよい。
【0058】
取得された差圧が差圧しきい値を上回るときには(S21のNo)、コントローラ100は、所定時間待機し、その後、取得された差圧と差圧しきい値との上述の比較を再度行う(S21)。待機時間の間に生じるであろうコールドヘッド14を通じた吐出流路26から吸入流路28への冷媒ガス流れによって、吐出流路26と吸入流路28の均圧化が進むことが期待される。
【0059】
取得された差圧が差圧しきい値を下回るときには(S21のYes)、コントローラ100は、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させる(S24)。バイパスバルブ33が常開弁である場合には、コントローラ100は、バイパスバルブ33への給電を停止し、それによりバイパスバルブ33を開放してもよい。また、コントローラ100は、コールドヘッドモータ15への給電を停止し、それによりコールドヘッド14を停止させてもよい。バイパスバルブ33の開放とコールドヘッド14の停止は、順不同である。これらは同時に行われてもよいし、どちらかが先に行われてもよい。なお、コントローラ100は、取得された差圧が差圧しきい値以下となる場合に、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させてもよい。このようにして、本運転停止方法は終了する。
【0060】
図3に示される極低温冷凍機10の運転停止方法によれば、圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33を閉じた状態でコールドヘッド14を運転することにより、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を通じて冷媒ガスを流すことができる。このようにして、バイパス流路32ではなく、コールドヘッド14を通じて、吐出流路26と吸入流路28の圧力差を低減し、またはこれらを均圧化することができる。コールドヘッド14を経由する冷媒ガスはアドゾーバ21で浄化されているから、上述のような低圧側で起こりうるオイル汚染を抑制することができる。また、差圧監視(S21)により、バイパスバルブ33の出入口間の差圧が所望の水準を下回ることを確認した上で、バイパスバルブ33を開くことができる。吐出流路26から吸入流路28へとバイパスバルブ33を経由する冷媒ガス流れを低減することができ、こうした冷媒ガス流れに起因して起こりうる低圧側でのオイル汚染を抑制できる。
【0061】
図4は、実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転方法の一例を説明するフローチャートである。この方法は、図3に示される方法と同様に、極低温冷凍機10の運転を停止する際にコントローラ100によって実行される。ただし、図3の方法ではバイパスバルブ33の出入口間の差圧が監視されるのに対して、図4に示される運転停止方法では、バイパスバルブ33の入口側圧力が監視される。
【0062】
まず、圧縮機12が停止される(S20)。圧縮機12が停止されると、バイパスバルブ33の入口側圧力が監視される(S22)。例えば、コントローラ100は、第1圧力センサ37aから第1測定圧信号PHを受信し、第1測定圧信号PHに基づいてバイパスバルブ33の入口側圧力を取得してもよい。この圧力監視(S22)では、コントローラ100は、取得された圧力を圧力しきい値と比較する。圧力しきい値は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。
【0063】
取得された圧力が圧力しきい値を上回るときには(S22のNo)、コントローラ100は、所定時間待機し、その後、圧力監視を再度行う(S22)一方、取得された圧力が圧力しきい値を下回るときには(S22のYes)、コントローラ100は、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させる(S24)。こうして、本運転停止方法は終了する。
【0064】
このようにしても、図3の運転停止方法と同様に、圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33を閉じた状態でコールドヘッド14を運転し、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を通じて冷媒ガスを流して均圧化することができる。したがって、上述のオイル汚染問題に対処することができる。
【0065】
同様にして、バイパスバルブ33の出口側圧力が監視されてもよい。この場合、圧縮機12の停止後に、コントローラ100は、第2圧力センサ37bから第2測定圧信号PLを受信し、第2測定圧信号PLに基づいてバイパスバルブ33の出口側圧力を取得してもよい。コントローラ100は、取得された圧力を圧力しきい値と比較し、取得された圧力が圧力しきい値を下回るとき待機しその後圧力監視を再度行い、取得された圧力が圧力しきい値を上回るときバイパスバルブ33を開きコールドヘッド14を停止させてもよい。
【0066】
実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転停止方法の他の例として、圧縮機モータ17とコールドヘッドモータ15の回転数を制御可能である場合には、以下に述べるように、運転停止時の両モータの回転数の減少の仕方を異ならせる方法も可能である。上述のように、圧縮機モータ17の回転数は圧縮機インバータにより制御され、コールドヘッドモータ15の回転数はコールドヘッドインバータにより制御されてもよい。
【0067】
この場合、コントローラ100は、圧縮機モータ17を第1速度プロファイルに従って停止させ、コールドヘッドモータ15を第2速度プロファイルに従って停止させるように構成されてもよい。第1速度プロファイルは、圧縮機モータ17を第1タイミングで停止させるように圧縮機モータ17の速度を減少させるように設定されていてもよい。第2速度プロファイルは、コールドヘッドモータ15を第1タイミングから遅れた第2タイミングで停止させるようにコールドヘッドモータ15の速度を減少させるように設定されていてもよい。
【0068】
図5(a)および図5(b)は、実施の形態に係り、圧縮機モータ17およびコールドヘッドモータ15の速度プロファイルの例を示す模式図である。各図において、縦軸にはモータの回転数が示され、横軸には経過時間が示される。圧縮機モータ17のための第1速度プロファイル70が破線で示され、コールドヘッドモータ15のための第2速度プロファイル72が実線で示されている。
【0069】
図5(a)に示される例では、第2速度プロファイル72は、第1速度プロファイル70に比べて、モータ回転数の低下速度が小さくなっている。そのため、図示されるように、圧縮機モータ17は、極低温冷凍機10の運転停止指令から第1時間Δt1後の第1タイミングT1で停止される。これに対して、コールドヘッドモータ15は、運転停止指令から第2時間Δt2後の第2タイミングT2で停止される。第2時間Δt2は、第1時間Δt1より長く、第2タイミングT2は、第1タイミングT1から遅延している。
【0070】
また、図5(b)に示される例では、第1速度プロファイル70と第2速度プロファイル72でモータ回転数の低下速度は等しいが、第2速度プロファイル72でのモータ回転数の低下の開始が第1速度プロファイル70のそれに比べて待ち時間Δtwだけ遅れている。その結果、圧縮機モータ17は、極低温冷凍機10の運転停止指令から第1時間Δt1後の第1タイミングT1で停止される。これに対して、コールドヘッドモータ15は、運転停止指令から第2時間Δt2後の第2タイミングT2で停止される。なお、この待ち時間Δtwの設定は、図5(a)の例に併用されてもよい。
【0071】
このようにしても、図3の運転停止方法と同様に、圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33を閉じた状態でコールドヘッド14を運転し、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を通じて冷媒ガスを流して均圧化することができる。これにより、上述のオイル汚染問題に対処することができる。
【0072】
コントローラ100は、コールドヘッド14の停止後にバイパスバルブ33を開くように構成されていてもよい。このようにすれば、コールドヘッド14の運転継続に伴うコールドヘッド14を通じた均圧化の実施後に、バイパスバルブ33を開くことができる。バイパスバルブ33を通じた冷媒ガス流れを低減し、それにより生じうる低圧側のオイル汚染を抑制できる。
【0073】
また、モータ回転数の低下速度に基づくこの運転停止方法は、図3を参照して説明した差圧監視、または図4を参照して説明した圧力監視と併用されてもよい。この場合、圧縮機モータ17が停止する第1タイミングT1後に、測定差圧と差圧しきい値との比較に基づいて、または測定圧力と圧力しきい値との比較に基づいて、コントローラ100は上述のように、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14(すなわちコールドヘッドモータ15)を停止させてもよい。
【0074】
図6は、実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転方法の一例を説明するフローチャートである。この方法は、図3に示される方法と同様に、極低温冷凍機10の運転を停止する際にコントローラ100によって実行される。ただし、図3の方法ではバイパスバルブ33の出入口間の差圧が監視されるのに対して、図6に示される運転停止方法では、待機時間がカウントされる。図6の方法は、実装が容易であり、有利である。
【0075】
まず、圧縮機12が停止される(S20)。圧縮機12が停止されると、予め定められた待機時間がカウントされる(S23)。例えば、コントローラ100は、内蔵されたタイマーを用いて、圧縮機12の停止時点から待機時間をカウントしてもよい。待機時間は、予め定められ、コントローラ100に設定されていてもよい。待機時間は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。待機時間は、例えば、上述のオイル汚染問題を解決する観点から、圧縮機12の停止から起算して吐出流路26と吸入流路28の差圧が低減または解消されると期待される時間に設定されてもよい。待機時間は、例えば、10秒以下、または5秒以下の時間であってもよい。
【0076】
待機時間が経過するまでは(S23のNo)、コントローラ100は、待機する。一方、待機時間が経過したとき(S23のYes)、コントローラ100は、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させる(S24)。こうして、本運転停止方法は終了する。
【0077】
このようにしても、図3の運転停止方法と同様に、圧縮機12の停止後にバイパスバルブ33を閉じた状態でコールドヘッド14を運転し、吐出流路26から吸入流路28へとコールドヘッド14を通じて冷媒ガスを流して均圧化することができる。したがって、上述のオイル汚染問題に対処することができる。
【0078】
なお、コントローラ100は、コールドヘッド14の停止後にバイパスバルブ33を開くように構成されていてもよい。この場合、待機時間が経過したとき(S23のYes)、まずコールドヘッド14が停止され、その後にバイパスバルブ33が開かれることになる。このようにすれば、コールドヘッド14を通じた均圧化を完了したうえで、バイパスバルブ33を開くことができる。
【0079】
また、図6の方法は、図3を参照して説明した差圧監視、または図4を参照して説明した圧力監視を備えてもよい。この場合、待機時間が経過していない場合(S23のNo)であっても、上述のように、測定差圧と差圧しきい値との比較に基づいて、または測定圧力と圧力しきい値との比較に基づいて、コントローラ100は、バイパスバルブ33を開き、コールドヘッド14を停止させてもよい。
【0080】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0081】
上述の実施の形態では、バイパス流路32は、吐出流路26でオイルセパレータ20とアドゾーバ21の間に接続されているが、バイパス流路32は、吐出流路26上の他の場所に接続されてもよい。例えば、バイパス流路32は、アドゾーバ21と吐出ポート22の間に接続されてもよい。このようにすれば、バイパスバルブ33が開いたとき、アドゾーバ21で浄化された冷媒ガスを吐出流路26から吸入流路28へと流すことができる。したがって、低圧側でのオイル汚染を低減でき、有利である。
【0082】
上述の実施の形態では、バイパス流路32は、圧縮機12の内部に設けられているが、圧縮機12の外に設けられてもよい。例えば、バイパス流路32は、圧縮機筐体38の外に配置され、高圧配管42と低圧配管43を接続してもよい。また、第1圧力センサ37a、第2圧力センサ37b等の圧力センサ37は、圧縮機12に設けられることは必須ではなく、高圧配管42、低圧配管43、コールドヘッド14など、圧力を測定可能な任意の場所に設けられてもよい。
【0083】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0084】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 14 コールドヘッド、 15 コールドヘッドモータ、 17 圧縮機モータ、 33 バイパスバルブ、 70 第1速度プロファイル、 72 第2速度プロファイル、 100 コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6