(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165955
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】極低温冷凍機用蓄冷材、極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20241121BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20241121BHJP
C22C 12/00 20060101ALI20241121BHJP
C22C 30/02 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C09K5/14 F
F25B9/00 D
C22C12/00
C22C30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082576
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】許 名堯
(72)【発明者】
【氏名】林 小鋼
(57)【要約】
【課題】靱性を向上した極低温冷凍機用蓄冷材、およびこれを用いた極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機を提供する。
【解決手段】極低温冷凍機10用の蓄冷材、例えば高温側蓄冷材28aは、ビスマスを主成分として備えるとともに、多くとも10重量%の銀を添加物として備える。また、極低温冷凍機10用の蓄冷器、例えば第2蓄冷器28は、ビスマスを主成分として備えるとともに、多くとも10重量%の銀を添加物として備えるビスマス銀蓄冷材と、蓄冷器の軸方向においてビスマス銀蓄冷材とは異なる場所に配置された磁性蓄冷材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマスを主成分として備えるとともに、
多くとも10重量%の銀を添加物として備えることを特徴とする極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項2】
多くとも5重量%の銀を添加物として備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項3】
多くとも2重量%の銀を添加物として備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項4】
多くとも1重量%の銀を添加物として備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項5】
銀のみを添加物として備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項6】
粒状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の極低温冷凍機用蓄冷材。
【請求項7】
ビスマスを主成分として備えるとともに、多くとも10重量%の銀を添加物として備えるビスマス銀系蓄冷材と、
蓄冷器の軸方向において前記ビスマス銀系蓄冷材とは異なる場所に配置された磁性蓄冷材と、を備えることを特徴とする極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項8】
蓄冷器の軸方向において前記ビスマス銀系蓄冷材に対して前記磁性蓄冷材と反対側に配置された亜鉛系蓄冷材をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項9】
請求項7または8に記載の極低温冷凍機用蓄冷器を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機用蓄冷材、およびこれを用いた極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、極低温冷凍機用の蓄冷材として、球状の鉛が用いられていた。鉛は、およそ50K以下の低い温度領域で他の材料より高い比熱を持ち、安価でもあることから、過去において広く使われていた。しかしながら、現在では、環境および人体への悪影響を考慮して、鉛の使用は規制または禁止されている。鉛に代替する蓄冷材として、粒状に成形した純ビスマスを用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
純ビスマスは脆いので、極低温冷凍機の製造工程において蓄冷器に充填する際に、粉状に割れてしまうことがある。また、極低温冷凍機の運転中に、蓄冷材間の空隙を流れる作動ガス(例えばヘリウムガス)から蓄冷材に加わる力によって、純ビスマスの蓄冷材が割れるリスクも想定される。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、靱性を向上した極低温冷凍機用蓄冷材、およびこれを用いた極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機用蓄冷材は、ビスマスを主成分として備えるとともに、多くとも10重量%の銀を添加物として備える。
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機用蓄冷器は、ビスマスを主成分として備えるとともに、多くとも10重量%の銀を添加物として備えるビスマス銀系蓄冷材と、蓄冷器の軸方向においてビスマス銀系蓄冷材とは異なる場所に配置された磁性蓄冷材と、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、上述の態様の極低温冷凍機用蓄冷器を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靱性を向上した極低温冷凍機用蓄冷材、およびこれを用いた極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図3】実施の形態に関連して、いくつかの金属材料の容積比熱を示すグラフである。
【
図4】実施の形態に係り、極低温冷凍機の第2蓄冷器の軸方向温度プロファイルを示す模式図である。
【
図5】実施の形態に係り、ビスマス銀系蓄冷材における銀の含有率と極低温冷凍機の第1段の冷却温度との関係を示すグラフである。
【
図6】実施の形態に係り、ビスマス銀系蓄冷材における銀の含有率と極低温冷凍機の第2段の冷却温度との関係を示すグラフである。
【
図7】変形例に係る極低温冷凍機の第2蓄冷器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1および
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。
図1には、極低温冷凍機10の外観を示し、
図2には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。
【0013】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0014】
膨張機14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18と、冷凍機ハウジング20とを備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、ディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。なお、冷凍機ハウジング20の内部容積は圧縮機12の低圧側に接続され、低圧に維持されてもよい。
【0015】
冷凍機シリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0016】
ディスプレーサ組立体18は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0017】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0018】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0019】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1ディスプレーサ18aの筒状の本体が、軸方向に延在する第1蓄冷器容器となる。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの本体の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0020】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2ディスプレーサ18bの筒状の本体が、軸方向に延在する第2蓄冷器容器となる。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部はそれぞれ、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0021】
第2蓄冷器28は、少なくとも二種の蓄冷材、この例では、三種の蓄冷材を備え、これら蓄冷材は、第2ディスプレーサ18bの軸方向に積層されている。
図2に示されるように、第2蓄冷器28は、軸方向に高温側から低温側へと順に、高温側蓄冷材28a、中間蓄冷材28b、および低温側蓄冷材28cを備える。極低温冷凍機10の第2段の冷凍能力を高めるために、これらの蓄冷材としてはそれぞれ異なる温度で大きな比熱をもつ材料が選択される。
【0022】
高温側蓄冷材28aは、第2ディスプレーサ18bの高温側の温度、例えば10Kから50Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱(例えば、銅よりも高い容積比熱)をもつ材料で形成されていてもよい。高温側蓄冷材28aは、この温度範囲で、上述のように第1ディスプレーサ18aで典型的に使用される蓄冷材である銅よりも高い容積比熱を有してもよい。また、高温側蓄冷材28aは、この温度範囲で後述の磁性蓄冷材よりも高い容積比熱を有してもよい。高温側蓄冷材28aは、非磁性の金属材料で形成されていてもよい。
【0023】
そのような高温側蓄冷材28aの例として、この実施の形態では、ビスマス銀系蓄冷材、例えばビスマス銀合金が使用される。ビスマス銀系蓄冷材は、ビスマスを主成分として備えるとともに、少量の銀を添加物として備える。
【0024】
ここで、「主成分」とは、蓄冷材組成物の全量のなかで最も多い成分(例えば、重量%が最大となる成分)を意味する。ビスマス銀系蓄冷材は、例えば、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%のビスマスを含んでもよい。ビスマス銀系蓄冷材は、添加物(すなわち銀)を除く残部をすべてビスマスとしてもよい。
【0025】
この実施の形態では、ビスマス銀系蓄冷材は、多くとも10重量%の銀を添加物として含有する。なぜなら、銀の比率が10重量%を超えると、ビスマス銀合金の製作が困難または不可能となるためである。ビスマス銀合金は固液共存温度域(262.5~350℃)が広いため、合金製作過程において溶液温度から冷却が始まるとデンドライト(樹枝状晶)を形成しながら凝固が進行する。このとき、デンドライトの成長に伴い、溶質となるビスマスが液相に排出される。その結果、デンドライト固体中ではビスマスが少なく、残った液相中ではビスマスが増加することになる。したがって、銀の含有率が10重量%を超えるビスマス銀合金を安定的に製作することは、困難または不可能である。
【0026】
後述のように、ビスマス銀系蓄冷材は、例えば、多くとも5重量%、または多くとも2重量%、または多くとも1重量%の銀を添加物として含有してもよい。ビスマス銀系蓄冷材は、少なくとも0.001重量%の銀を添加物として含有してもよい。ビスマス銀系蓄冷材は、銀のみを添加物として含有してもよい。
【0027】
中間蓄冷材28bとしては、高温側蓄冷材28aとは別種の材料が用いられる。中間蓄冷材28bは、第2ディスプレーサ18bの軸方向中間部の温度、例えば5Kから10Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱をもつ材料で形成されていてもよい。典型的には、中間蓄冷材28bは、磁気相転移に伴う容積比熱のピークをこの温度範囲に有する磁性蓄冷材で形成されていてもよい。中間蓄冷材28bは、例えばHoCu2、Er3Niなど、金属の磁性材料で形成されていてもよい。
【0028】
低温側蓄冷材28cとしては、中間蓄冷材28bとは別種の磁性蓄冷材が用いられる。低温側蓄冷材28cは、第2ディスプレーサ18bの低温側(すなわち、ディスプレーサ組立体18で最も温度が低くなるディスプレーサ低温端)の温度、例えば1Kから5Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱をもつ磁性蓄冷材で形成されていてもよい。
【0029】
低温側蓄冷材28cに適する磁性蓄冷材は、磁気相転移に伴う容積比熱のピークをこの温度範囲に有する。磁性蓄冷材は、非金属の磁性材料であってもよく、一般式RxO2S又は(R1-yR′y)xO2S(R、R′は少なくとも一種類の希土類元素、0.1≦x≦9、0<y<1)、若しくはGdxAl2-xO3(1≦x<2)で表わされる磁性蓄冷材のうち少なくとも一種類を含んでもよい。希土類元素R、R′は、例えば、イットリウムY、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユーロピウムEu、ガドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、又は、イッテルビウムYbであってもよい。
【0030】
低温側蓄冷材28cに使用される磁性蓄冷材は、Gd2O2S(GOSとも呼ばれる)、Tb2O2S(TBOSとも呼ばれる)、(Gd1-yTby)2O2S(0<y<1、GdTbOSとも呼ばれる)、または、GdAlO3(GAPとも呼ばれる)であってもよく、またはこれらのうち少なくとも一種類を含んでもよい。
【0031】
こうした非金属の磁性蓄冷材は、知られているように、例えばHoCu2など金属の磁性蓄冷材に比べて、例えば1Kから5Kの温度範囲またはその少なくとも一部において高い(例えば数倍高い)容積比熱を有する。よって、低温側蓄冷材28cは、この温度範囲の極低温冷却を提供する極低温冷凍機10の冷凍能力を高めるのに好適である。
【0032】
なお、磁性蓄冷材の機械強度を改善するために、磁性蓄冷材に添加物が添加されてもよい。添加物は、例えば、ジルコニウムZr、アルミニウムAl、アルミナ(Al2O3)のうち少なくとも一種であってもよい。磁性蓄冷材に対する添加物の重量比は、例えば20%以下、または15%以下であってもよい。このようにすれば、磁性蓄冷材の容積比熱を大きく変えることなく(すなわち極低温冷凍機10の冷凍能力に大きな影響を与えることなく)、磁性蓄冷材の硬度を高め、衝撃による破損や粉化のリスクを低減することができる。
【0033】
高温側蓄冷材28a、中間蓄冷材28bおよび低温側蓄冷材28cは、粒状であってもよい。こうした粒状蓄冷材を構成する粒体は、例えば0.01mm以上3mm以下の大きさの粒状に成形され、第2ディスプレーサ18bに充填されてもよい。粒体の粒径は、例えば、0.14mm以上1.6mm以下、好ましくは0.15mm以上1.4mm以下、更に好ましくは0.22mm以上1.3mm以下であってもよい。粒径が0.14mm以上1.6mm以下の粒体の割合が全粒体に対して70重量%以上であってもよい。粒径が0.14mm未満の場合は、蓄冷器に充填する際の密度が高くなりすぎ、作動ガス(例えばヘリウムガス)の通過抵抗が急激に増大しうることになる。また、粒径が1.6mmを超える場合には、粒体と作動ガスとの間の熱交換効率が著しく低下しうることが懸念される。
【0034】
また、粒体の最小径に対する最大径の比(アスペクト比)は、3次元の任意の方向について5以下、好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に可能な限り球形に近づけることが好ましい。アスペクト比が5を超える場合には、機械的に変形破壊を起こし易くなると共に、高密度で充填することが困難となるため、冷却効率が低下する。よって、短径に対する長径の比が5以下である粒体の割合が全粒体に対して70重量%以上であってもよい。
【0035】
こうした粒体の保護のために、その表面が例えば1~50μmの厚さのコーティング(例えば、アルミナ(Al2O3)、フッ素樹脂など)で被覆されてもよい。
【0036】
高温側蓄冷材28aと中間蓄冷材28bを分けるために、高温側蓄冷材28aと中間蓄冷材28bの境界29aに例えば金網などの仕切部材が配置されてもよい。また、必要に応じて、中間蓄冷材28bと低温側蓄冷材28cの境界29bに仕切部材が配置されてもよい。
【0037】
図2を参照すると、ディスプレーサ組立体18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0038】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0039】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0040】
また、膨張機14は、圧力切替バルブ40と、駆動モータ42とを備える。圧力切替バルブ40は、冷凍機ハウジング20に収容され、駆動モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。
【0041】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて膨張機14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の作動ガスが膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。理解のために、作動ガスの流れる方向を
図2に矢印で示す。
【0042】
駆動モータ42は、ディスプレーサ組立体18の往復動を駆動するために設けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から冷凍機ハウジング20を貫通して上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。上部室30から冷凍機ハウジング20(上述のように低圧に維持されている場合がある)への作動ガスのリークを防ぐために、第3シール38cが設けられている。第3シール38cは、冷凍機ハウジング20とディスプレーサ駆動軸44との間に配置されるように冷凍機ハウジング20に装着されてもよい。
【0043】
駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するようにこれらバルブに連結されている。
【0044】
極低温冷凍機10は、圧縮機12および駆動モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約30K~約80Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度、例えば1K~20Kに冷却されることができる。第2冷却温度は、約4.2Kの液体ヘリウム温度またはそれよりも低い温度であってもよい。
【0045】
実施の形態によると、上述のように、ビスマス銀系蓄冷材、例えばビスマス銀合金が使用される。以下に示す表は、実施の形態に係るビスマス銀合金からなる粒状蓄冷材についてのビッカース硬さの測定結果を示す。表には比較例として、従来の純ビスマスの粒状蓄冷材についてのビッカース硬さの測定結果も示されている。なお、本書において、純ビスマスとは、例えば純度99.99%以上、または純度99.995%以上、または純度99.997%以上のビスマスを指してもよい。
【0046】
【0047】
実施の形態に係るビスマス銀合金の粒状蓄冷材は、比較例の純ビスマスの粒状蓄冷材に比べて、ビッカース硬さの測定値(HV)が大きいことが、表から理解される。すなわち、ビスマス銀合金の粒状蓄冷材は、純ビスマスの粒状蓄冷材よりも硬い。具体的には、純ビスマスの粒状蓄冷材のビッカース硬さが19.9(HV)と測定されたのに対して、11.0重量%の銀を添加したBi-1.0%Agの粒状蓄冷材のビッカース硬さは21.9(HV)と測定され、2.0重量%の銀を添加したBi-2.0%Agの粒状蓄冷材のビッカース硬さは28.9(HV)と測定され、5.0重量%の銀を添加したBi-5.0%Agの粒状蓄冷材のビッカース硬さは40.9(HV)と測定されている。表には、各硬さ測定結果についての標準偏差も付記されている。
【0048】
このように、純ビスマスに少量の銀を添加することにより、硬度(ビッカース硬さ、HV)が向上される。つまり、実施の形態に係るビスマス銀合金の粒状蓄冷材は、比較例の純ビスマスの粒状蓄冷材に比べて、靱性(割れにくさ)が向上される。
【0049】
したがって、実施の形態によると、極低温冷凍機10の製造工程において蓄冷器に充填する際に、粒状蓄冷材がつぶれる(粉砕される)リスクが低減される。同様に、極低温冷凍機10の運転中に、蓄冷器内を流れる作動ガス(例えばヘリウムガス)から受ける力によって、粒状蓄冷材がつぶれるリスクが低減される。
【0050】
図3は、実施の形態に関連して、いくつかの金属材料の容積比熱を示すグラフである。
図3には、70K以下の温度範囲における鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)の容積比熱の温度変化が示されている。
【0051】
鉛は約60K以下の極低温で高い比熱をもつことから、過去において蓄冷材として広く利用されていたが、環境および人体への悪影響を考慮して現在では鉛の使用は規制または禁止されている。ビスマスは、鉛ほどではないものの、極低温(例えば約10Kから約30Kの温度範囲)で比較的高い比熱を有するため、鉛に代替する蓄冷材として近年利用されている。銀は、図示されるように、約32Kを超える温度ではビスマスより比熱が高く、それより低い温度ではビスマスより比熱が低いことがわかる。銅は、知られているように、約60Kを超える温度で高い比熱をもつが、それよりも低温では比熱がかなり小さくなる。
【0052】
実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材は、純ビスマスに少量(例えば多くとも10重量%)の銀を添加したものであるから、その比熱は純ビスマスのそれに概ね等しいと考えられる。ただし、このビスマス銀合金の比熱は、約32Kより低い温度では純ビスマスに比べてわずかに低くなり、約32Kより高い温度では純ビスマスに比べてわずかに高くなると考えられる。
【0053】
図4は、実施の形態に係り、極低温冷凍機10の第2蓄冷器28の軸方向温度プロファイルを示す模式図である。図において縦軸は温度(K)を示し、横軸は正規化距離を示す。正規化距離は、第2蓄冷器28の高温端(すなわち
図2における上端)を0とし、第2蓄冷器28の低温端(
図2における下端)を1として、第2蓄冷器28の軸方向位置を表す。例えば、正規化距離0.5は、軸方向において第2蓄冷器28の高温端と低温端との中点(ちょうど1/2の位置)を表す。
【0054】
図4には、実施の形態に係る第2蓄冷器28の軸方向温度プロファイルが一点鎖線で示され、比較例に係る第2蓄冷器28の軸方向温度プロファイルが実線で示されている。実施の形態に係る第2蓄冷器28では、正規化距離で0から0.5の範囲に高温側蓄冷材28a、すなわち実施の形態に係るビスマス銀合金が充填されている。一方、比較例に係る第2蓄冷器28では、正規化距離で0から0.5の範囲に高温側蓄冷材28aとして純ビスマスが充填されている。両者で共通して、正規化距離で0.5から0.75の範囲に中間蓄冷材28bが充填され、正規化距離で0.75から1の範囲に低温側蓄冷材28cが充填されている。
【0055】
図4に示される例では、第2蓄冷器28の高温端(正規化距離で0の位置)での温度は、約38Kである。第2蓄冷器28の中間(正規化距離で0.5の位置)での温度は、実施の形態と比較例でわずかに異なるが、約7~8Kである。実施の形態に係るビスマス銀合金の比熱は、上述のように、この温度範囲の大半で(正確には約32K以下の温度範囲で)、純ビスマスに比べて低くなる。
【0056】
したがって、図示されるように、実施の形態に係る高温側蓄冷材28aは、比較例に比べて温度が若干高くなる。より正確には、実施の形態に係る第2蓄冷器28の軸方向温度プロファイル(一点鎖線)は、高温側蓄冷材28aに相当する軸方向範囲(正規化距離で0から0.5の範囲)で、比較例に係る第2蓄冷器28の軸方向温度プロファイル(実線)よりも上方に遷移している。中間蓄冷材28bおよび低温側蓄冷材28cでの温度プロファイルは、両者で概ね一致している。
【0057】
極低温冷凍機10の作動ガス(典型的にはヘリウムガス)は、室温から極低温へと温度が低くなるにつれて密度が増加する。極低温冷凍機10の運転中、第2蓄冷器28の温度は、第1蓄冷器26に比べて低いから、第2蓄冷器28でのガスの密度は、第1蓄冷器26でのガスの密度に比べて大きくなる。そのため、第2蓄冷器28の温度が低いほど、圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスのうちより多くのガスが第1蓄冷器26から第2蓄冷器28へと吸収(トラップ)されることになる。過剰に多くのガスが第2蓄冷器28に偏って配分された場合には、極低温冷凍機10の第1段の冷凍能力が低下することになるかもしれない。
【0058】
上述のように、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材を高温側蓄冷材28aに使用することにより、比較例の純ビスマスに比べて、第2蓄冷器28の温度プロファイルを上昇させることができる。これにより、第2蓄冷器28にトラップされるガスの量を減らし、それに応じて第1蓄冷器26で冷却に利用されるガスの量を増やすことができる。実施の形態によると、比較例に比べて、極低温冷凍機10の第1段の冷凍能力を向上できる可能性がある。
【0059】
ただし、銀の含有率が高すぎる場合には、純ビスマスに対するビスマス銀系蓄冷材の比熱の低下量が大きくなり、それに起因して極低温冷凍機10の冷凍能力が低下する可能性もある。
【0060】
図5は、実施の形態に係り、ビスマス銀系蓄冷材における銀の含有率と極低温冷凍機10の第1段の冷却温度との関係を示すグラフである。
図5には、第2蓄冷器28の高温側蓄冷材28aとして使用されるビスマス銀合金における銀の含有率を、0%(つまり純ビスマス)、0.01重量%、0.25重量%、1.0重量%、2.0重量%、5.0重量%としたときの第1冷却ステージ33の測定温度T1がプロットされている。
【0061】
なお、測定にあたり使用された極低温冷凍機10は、住友重機械工業株式会社製4K-GM冷凍機(型番RDE-412)および圧縮機(型番F-50)である。作動ガスの封入圧は1.6MPaである。極低温冷凍機10は、商用電源の電源周波数で駆動され、無負荷運転とされている。運転中の圧力は、高圧側で2.2MPa、低圧側で0.5MPaである。ビスマス銀系蓄冷材は、上述の数値範囲内の粒径をもつ粒状に成形されている。
【0062】
図5に示されるように、比較例では、つまり高温側蓄冷材28aとして純ビスマスが使用された場合には、第1冷却ステージ33の測定温度T1は、約40.2Kとなっている。
【0063】
これに対して、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率にかかわらず、比較例に比べて測定温度T1が低いことがわかる。具体的には、測定温度T1は、約40.0K(@0.01重量%Ag)、約38.9K(@0.25重量%Ag)、約39.4K(@1.0重量%Ag)、約39.8K(@2.0重量%Ag)、約39.2K(@5.0重量%Ag)となっている。
【0064】
このように、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率を多くとも5重量%とすることにより、比較例の純ビスマス蓄冷材に比べて、極低温冷凍機10の第1段の冷凍能力を同等に維持するか、または向上することができる。すなわち、ビスマスに銀を添加したことによる比熱の低下は、極低温冷凍機10の冷凍能力に悪影響を及ぼしていない。
【0065】
第1段の冷凍能力を高め、第1段温度をより低くする観点から、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率は、多くとも2重量%、または多くとも1重量%であってもよい。また、銀の含有率は、少なくとも0.01重量%、または少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.25重量%であってもよい。
【0066】
図6は、実施の形態に係り、ビスマス銀系蓄冷材における銀の含有率と極低温冷凍機10の第2段の冷却温度との関係を示すグラフである。
図6には、第2蓄冷器28の高温側蓄冷材28aとして使用されるビスマス銀合金における銀の含有率を、0%(つまり純ビスマス)、0.25重量%、1.0重量%、2.0重量%、5.0重量%としたときの第2冷却ステージ35の測定温度T2がプロットされている。なお、極低温冷凍機10の運転条件は
図5の測定と同様である。
【0067】
図6に示されるように、比較例では、つまり高温側蓄冷材28aとして純ビスマスが使用された場合には、第2冷却ステージ35の測定温度T2は、約3.86Kとなっている。これに対して、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率にかかわらず、比較例に比べて測定温度T2が低いことがわかる。具体的には、測定温度T2は、約3.83K(@0.25重量%Ag)、約3.82(@1.0重量%Ag)、約3.83K(@2.0重量%Ag)、約3.83K(@5.0重量%Ag)となっている。
【0068】
このように、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率を多くとも5重量%とすることにより、比較例の純ビスマス蓄冷材に比べて、極低温冷凍機10の第2段の冷凍能力を同等に維持するか、または向上することができる。第2段の冷凍能力を高め、第2段温度をより低くする観点から、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材では、銀の含有率は、多くとも2重量%、または多くとも1重量%であってもよい。また、銀の含有率は、少なくとも0.01重量%、または少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.25重量%であってもよい。
【0069】
図7は、変形例に係る極低温冷凍機の第2蓄冷器28を示す模式図である。第2蓄冷器28は、上述の実施の形態と同様に、高温側蓄冷材28a、中間蓄冷材28b、および低温側蓄冷材28cを備える。ただし、高温側蓄冷材28aは、高温側の第1領域28a1と低温側の第2領域28a2に区分けされている。第1領域28a1には、亜鉛系蓄冷材が充填され、第2領域28a2には、ビスマス銀系蓄冷材が充填されてもよい。亜鉛系蓄冷材は、亜鉛または亜鉛を主成分とする合金であってもよい。亜鉛系蓄冷材は、ビスマス銀系蓄冷材と同様に粒状に成形されていてもよい。亜鉛系蓄冷材は、第2蓄冷器28の軸方向においてビスマス銀系蓄冷材に対して磁性蓄冷材(中間蓄冷材28bおよび低温側蓄冷材28c)と反対側に配置されている。第1領域28a1と第2領域28a2を仕切るために、それらの境界に例えば金網などの仕切部材が配置されてもよい。
【0070】
ビスマス銀系蓄冷材の配置エリアは、軸方向の正規化距離で、0から0.6の範囲から選択されてもよい。ビスマス銀系蓄冷材に対して高温側に亜鉛系蓄冷材など他の蓄冷材が充填される場合、ビスマス銀系蓄冷材の配置エリアは、0.2から0.6の範囲から選択されてもよい。例えば、ビスマス銀系蓄冷材の配置エリアは、0.25から0.5の範囲であってもよい。
【0071】
図7に示される第2蓄冷器28を採用した場合にも、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0073】
例えば、粒状蓄冷材の形状は、球状には限られない。粒状蓄冷材は、ブロック状、ペレット状、またはその他の形状を有してもよい。
【0074】
また、実施の形態に係るビスマス銀系蓄冷材は、粒状以外の形状を有してもよい。例えば、ビスマス銀系蓄冷材は、金網に加工されてもよいし、または、板状に成形されてもよい。ビスマス銀系蓄冷材は、母材(例えば銅など適宜の金属材料)で形成された金網または板状部材の表面に、たとえばめっきなどコーティングされてもよい。
【0075】
ビスマス銀系蓄冷材には、銀に加えて、銀と異なる第2の添加物が添加されてもよい。第2の添加物は、例えば、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)のうち少なくとも1つ、またはこれらの任意の混合物であってもよい。
【0076】
ある実施の形態においては、ビスマスを主成分として備える蓄冷材は、銀とともに、または銀に代えて、銅を添加物として備えてもよい。
【0077】
上述の実施の形態では、GM冷凍機を例として説明しているが、本発明はこれに限定されない。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、例えば、ソルベイ冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機など、他の形式の極低温冷凍機であってもよい。実施の形態に係る磁性蓄冷材の発泡体は、多段式の極低温冷凍機において任意の冷却段(例えば最低温の冷却段)の蓄冷器として用いられてもよい。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0079】
10 極低温冷凍機、 14 膨張機、 26 第1蓄冷器、 28 第2蓄冷器、 28a 高温側蓄冷材、 28b 中間蓄冷材、 28c 低温側蓄冷材。