(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165956
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】二重管ブレースとその製作方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20241121BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/58 D
E04B1/58 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082577
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長濱 温子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇紀
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB17
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA04
2E139BD14
2E139BD22
(57)【要約】
【課題】芯材が拘束材に包囲される形態の二重管ブレースに関し、芯材と端部接合材の接合部が拘束材で包囲され、接合部が構造弱部になることが防止されている二重管ブレースとその製作方法を提供すること。
【解決手段】二重管ブレース60は、第1鋼管により形成される芯材10と、芯材10の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材20と、第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、芯材10を包囲する拘束材30とを有し、拘束材30は、合計の長さが芯材10の長さよりも長い2つの第1拘束材31を備え、一方の第1拘束材31Bは、第2鋼管が周方向に分割された複数の第1分割管35により形成され、2つの第1拘束材31のそれぞれの端部の内側に、芯材10と端部接合材20の接合部15を割り込ませた状態で、2つの第1拘束材31が接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲する拘束材とを有し、
前記拘束材は、合計の長さが前記芯材の長さよりも長い2つの第1拘束材を備え、
一方の前記第1拘束材は、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第1分割管により形成されており、
前記2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態で、該2つの第1拘束材が接合されていることを特徴とする、二重管ブレース。
【請求項2】
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲する拘束材とを有し、
前記拘束材は、合計の長さが前記芯材の長さよりも短い2つの第1拘束材と、該2つの第1拘束材を繋ぐ第2拘束材とを備え、
前記2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態で、該2つの第1拘束材が前記第2拘束材で繋がれていることを特徴とする、二重管ブレース。
【請求項3】
前記第2拘束材は、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第2分割管により形成され、
前記2つの第1拘束材の間に、前記複数の第2分割管が相互に接合された状態で介在し、該2つの第1拘束材に接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の二重管ブレース。
【請求項4】
前記第2拘束材は、前記第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成され、
前記第2拘束材の両端部の内側に前記2つの第1拘束材の端部が収容され、相互に接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の二重管ブレース。
【請求項5】
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲して、該芯材よりも長い拘束材とを有し、
前記拘束材の両端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部が割り込んだ状態となっており、
前記拘束材の両端部における、前記端部接合材と対応する位置には、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットが設けられ、該第1スリットに前記端部接合材の少なくとも一部が遊嵌されおり、
前記拘束材の両端部のうちの少なくとも一方の端部にある前記第1スリットは、構造上のスリット長さよりも長い第2スリットとされていることを特徴とする、二重管ブレース。
【請求項6】
前記第2スリットのうち、構造上のスリット長さよりも長い前記拘束材の中央側の領域が、鋼材による穴埋め部、もしくは、鋼材カバーにより閉塞されていることを特徴とする、請求項5に記載の二重管ブレース。
【請求項7】
前記端部接合材が十字ガセットプレートであり、
前記拘束材の両端部における、前記端部接合材と対応する位置には、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットが設けられ、該第1スリットに前記端部接合材の少なくとも一部が遊嵌されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二重管ブレース。
【請求項8】
前記拘束材の両端部のうちの片方の端部と、該端部に対応する前記端部接合材が、ずれ止め用溶接、もしくは、ずれ止め用鋼材を介した溶接により、相互に位置決め固定されていることを特徴とする、請求項1,2,5のいずれか一項に記載の二重管ブレース。
【請求項9】
前記芯材に係合部が設けられ、前記第1分割管もしくは前記第2分割管の内側における該係合部に対応する位置に被係合部が設けられており、
前記被係合部に前記係合部が係合して、前記芯材と前記拘束材のずれ止めが図られている、請求項1又は3に記載の二重管ブレース。
【請求項10】
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも長く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材のうちの一方の第1拘束材を挿通し、該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A1工程と、
前記一方の第1拘束材を前記芯材の一方端側へ寄せ、他方の第1拘束材を形成するべく、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第1分割管を前記芯材の周囲で接合し、前記2つの第1拘束材を接合することにより該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B1工程とを有することを特徴とする、二重管ブレースの製作方法。
【請求項11】
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも短く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材を挿通し、該芯材の中央側へ該2つの第1拘束材を寄せて該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A2工程と、
前記2つの第1拘束材を前記芯材の両端部側へ寄せて、該2つの第1拘束材の間に隙間を形成し、該隙間に対して、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第2分割管を介在させ、該複数の第2分割管を相互に接合して第2拘束材を形成し、該第2拘束材と該2つの第1拘束材を接合することにより、該第1拘束材と該第2拘束材からなる該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B2工程とを有することを特徴とする、二重管ブレースの製作方法。
【請求項12】
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも短く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材を挿通し、該2つの第1拘束材の周囲に、該第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成される第2拘束材を挿通し、該芯材の中央側へ該2つの第1拘束材を寄せて該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A3工程と、
前記2つの第1拘束材を前記芯材の両端部側へ寄せて、該2つの第1拘束材の間に隙間を形成し、該2つの第1拘束材に跨がる位置に前記第2拘束材を位置合わせし、該第2拘束材と該2つの第1拘束材を接合することにより、該第1拘束材と該第2拘束材からなる該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B3工程とを有することを特徴とする、二重管ブレースの製作方法。
【請求項13】
第1鋼管により形成される芯材の一方の端部に、他部材と接合される端部接合材を固定し、該芯材の他方の端部側から拘束材を挿入し、該拘束材は、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、該芯材よりも長く、両端部における該端部接合材と対応する位置に、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットを備え、少なくとも一方の該第1スリットは、他方の該第1スリットよりも長い第2スリットとされている、C工程と、
前記拘束材を前記端部接合材側へ寄せて、該端部接合材を前記第2スリットに挿通させることにより、前記芯材の他方の端部を露出させ、該他方の端部に別途の端部接合材を固定し、該拘束材を該芯材の中央側へ寄せて、該拘束材の両端部にある前記第1スリットと前記第2スリットに対して対応する前記端部接合材を挿通させる、D工程とを有することを特徴とする、二重管ブレースの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管ブレースとその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物架構(柱・梁架構、屋根架構等)を形成するブレースとして、二重管ブレースが適用されている。二重管ブレースは、地震エネルギーを吸収する鋼管(円形鋼管)からなる芯材と、芯材の座屈を防止するべく、芯材を包囲して芯材よりも相対的に大径の鋼管からなる拘束材(補剛材)とを備えた二重鋼管構造を有しており、地震エネルギー吸収性に優れ、比較的軽量な座屈拘束ブレースである。
【0003】
正面視矩形枠状の建物架構に上記する二重管ブレースを組み込む際は、建物架構の対角位置にある一対の隅角部からそれぞれ内側へブラケットやガセットプレート等を張り出させておき、二重管ブレースの芯材の両端部には端部接合材を取り付けておき、一対のブラケットやガセットプレート等と一対の端部接合材がボルト接合等されるのが一般的である。
【0004】
ところで、大地震時に建物架構が変形した際に、二重管ブレースの芯材に地震エネルギーを効果的に伝達させ、芯材の全域で地震エネルギーを吸収させるには、建物架構と直接接合される端部接合材が十分な剛性を有し、芯材に先行して塑性破壊等しないことが前提となることから、端部接合材として、剛性の高い十字ガセットプレート等が適用される場合がある。十字ガセットプレートは一般に、芯材を形成する鋼管の端部に取り付けられているエンドプレートに対して溶接接合され、エンドプレートから側方に向かってガセットプレートの幅(平面寸法幅)が漸次広くなり、広幅面の平面寸法幅が芯材よりも大きくなるような形状及び寸法を備えている。
【0005】
このように端部接合材の剛性を高めることにより、二重管ブレースの初期の地震エネルギー吸収性を発揮させることが可能になるが、その一方で、芯材と端部接合材の接合部が芯材を包囲する拘束材の外側に位置して外部に露出する場合に、端部接合材から芯材へと剛性が変化する剛性変化点となる接合部が構造弱部となり易く、剛性の高められた端部接合材では先行破壊しないものの、接合部における先行破壊が懸念される。そこで、接合部を拘束材の内部に割り込ませることで構造弱部となり得る接合部を拘束材にて補剛する方策が考えられるが、上記するように芯材に比べて端部接合材の平面寸法幅が一般に広いことから、接合部を拘束材の内部に割り込ませることが難しいといった課題がある。
【0006】
ここで、特許文献1には、鋼管芯材の局部座屈やき裂などの損傷を目視で直接確認することのできる、ブレース材が提案されている。このブレース材は、軸力を負担する鋼管芯材と、鋼管芯材の管内に挿入された座屈拘束材と、一端が鋼管芯材の端部に溶接され、他端が建築構造物の躯体に接合される十字形断面の接合部材とを有する。鋼管芯材の両端部には、接合部材の一端が割り込み挿入される複数の第1切欠き部が軸方向に所定の長さで形成され、接合部材は、十字の各辺の寸法が鋼管芯材の外径よりも大きくなるように形成されており、第1切欠き部の内端面まで挿入されて溶接される挿入部と、挿入部と一体的に形成され、挿入部の端面から軸方向に向かって延伸されて鋼管芯材の外面に溶接される延伸部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のブレース材は、上記する芯材を拘束材が包囲する構造とは逆に、拘束材よりも芯材が大径の鋼管により形成されるものであることから、芯材が拘束材に包囲される形態の二重管ブレースに関して、芯材と端部接合材の接合部が構造弱部になるといった上記課題を解消する手段を開示するものではない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、芯材が拘束材に包囲される形態の二重管ブレースに関し、芯材と端部接合材の接合部が拘束材で包囲され、接合部が構造弱部になることが防止されている二重管ブレースとその製作方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による二重管ブレースの一態様は、
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲する拘束材とを有し、
前記拘束材は、合計の長さが前記芯材の長さよりも長い2つの第1拘束材を備え、
一方の前記第1拘束材は、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第1分割管により形成されており、
前記2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態で、該2つの第1拘束材が接合されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1鋼管からなる芯材を包囲する第2鋼管からなる拘束材が、合計の長さが芯材の長さよりも長い2つの第1拘束材により形成され、一方の第1拘束材が、第2鋼管が周方向に分割された複数(例えば2つ)の第1分割管により形成されていることにより、芯材の両端と一対の端部接合材との間の一対の接合部を2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に割り込ませた状態の二重管ブレースを形成することができる。このことにより、芯材と端部接合材の接合部が拘束材で包囲され、接合部が構造弱部になることを防止できる。
【0012】
本態様の二重管ブレースは、芯材の周囲に一方の第1拘束材を挿通し、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、一方の第1拘束材を芯材の一方端側へ寄せ、複数(例えば2つ)の第1分割管を芯材の周囲で接合して他方の第1拘束材を形成し、2つの第1拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0013】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲する拘束材とを有し、
前記拘束材は、合計の長さが前記芯材の長さよりも短い2つの第1拘束材と、該2つの第1拘束材を繋ぐ第2拘束材とを備え、
前記2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態で、該2つの第1拘束材が前記第2拘束材で繋がれていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、第1鋼管からなる芯材を包囲する第2鋼管からなる拘束材が、合計の長さが芯材の長さよりも短い2つの第1拘束材と、2つの第1拘束材を繋ぐ第2拘束材とを備え、2つの第1拘束材が前記第2拘束材で繋がれていることより、芯材の両端と一対の端部接合材との間の一対の接合部を2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に割り込ませた状態の二重管ブレースを形成することができる。このことにより、芯材と端部接合材の接合部が拘束材で包囲され、接合部が構造弱部になることを防止できる。この第2拘束材は、第2鋼管が周方向に分割された複数の第2分割管により形成される形態や、第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成される形態などがある。
【0015】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様において、
前記第2拘束材は、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第2分割管により形成され、
前記2つの第1拘束材の間に、前記複数の第2分割管が相互に接合された状態で介在し、該2つの第1拘束材に接合されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第1鋼管からなる芯材を包囲する第2鋼管からなる拘束材が、合計の長さが芯材の長さよりも短い2つの第1拘束材と、2つの第1拘束材を繋ぐ第2拘束材とを備え、第2拘束材が、第2鋼管が周方向に分割された複数(例えば2つ)の第2分割管により形成されて2つの第1拘束材の間に介在していることにより、芯材の両端と一対の端部接合材との間の一対の接合部を2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に割り込ませた状態の二重管ブレースを形成することができる。本態様の二重管ブレースは、芯材の周囲に2つの第1拘束材を挿通して芯材の中央側へ寄せ、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、2つの第1拘束材の間で複数の第2分割管を相互に接合して第2拘束材を形成し、第2拘束材と2つの第1拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0017】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様において、
前記第2拘束材は、前記第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成され、
前記第2拘束材の両端部の内側に前記2つの第1拘束材の端部が収容され、相互に接合されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、第1鋼管からなる芯材を包囲する第2鋼管からなる拘束材が、合計の長さが芯材の長さよりも短い2つの第1拘束材と、2つの第1拘束材を繋ぐ第2拘束材とを備え、第2拘束材が、第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成されて2つの第1拘束材の端部を収容していることにより、芯材の両端と一対の端部接合材との間の一対の接合部を2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に割り込ませた状態の二重管ブレースを形成することができる。本態様の二重管ブレースは、芯材の周囲に2つの第1拘束材を挿通し、2つの第1拘束材の周囲に第2拘束材を挿通し、2つの第1拘束材を芯材の中央側へ寄せ、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、2つの第1拘束材と第2拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0019】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
第1鋼管により形成される芯材と、
前記芯材の両端部に固定され、他部材と接合される端部接合材と、
前記第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、前記芯材を包囲して、該芯材よりも長い拘束材とを有し、
前記拘束材の両端部の内側に、前記芯材と前記端部接合材の接合部が割り込んだ状態となっており、
前記拘束材の両端部における、前記端部接合材と対応する位置には、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットが設けられ、該第1スリットに前記端部接合材の少なくとも一部が遊嵌されおり、
前記拘束材の両端部のうちの少なくとも一方の端部にある前記第1スリットは、構造上のスリット長さよりも長い第2スリットとされていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、拘束材の両端部の例えば一方における端部接合材と対応する位置に、構造上のスリット長さを備えた第1スリットが設けられ、第1スリットに端部接合材の少なくとも一部が遊嵌されるとともに、拘束材の両端部の他方における端部接合材と対応する位置に、構造上のスリット長さよりも長い第2スリットが設けられて端部接合材の一部が遊嵌されていることにより、芯材よりも長い拘束材を適用しながらも、製作の際には第2スリット内で端部接合材をスライドさせることにより、芯材の両端と一対の端部接合材との間の一対の接合部を2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に割り込ませた状態の二重管ブレースを形成することができる。
【0021】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
前記第2スリットのうち、前記構造上のスリット長さよりも長い前記拘束材の中央側の領域が、鋼材による穴埋め部、もしくは、鋼材カバーにより閉塞されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、製作上の理由から、構造上のスリット長さを備えた第1スリットよりも長く設定している第2スリットに関し、最終的には、第2スリットのうち、第1スリットよりも長い拘束材の中央側の領域が、鋼材による穴埋め部や鋼材カバーによって閉塞されていることで、第2スリットが長過ぎることによる拘束材の端部の剛性低下を抑制することができる。
【0023】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
前記端部接合材が十字ガセットプレートであり、
前記拘束材の両端部における、前記端部接合材と対応する位置には、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットが設けられ、該第1スリットに前記端部接合材の少なくとも一部が遊嵌されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、端部接合材が十字ガセットプレートであることにより、高強度の端部接合材を形成することができる。さらに、拘束材の両端部における端部接合材と対応する位置に、地震時における芯材との干渉を防止する第1スリットが設けられ、第1スリットに端部接合材の一部が遊嵌されていることにより、端部接合材との干渉による拘束材の端部の破損を防止することができる。
【0025】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
前記拘束材の両端部のうちの片方の端部と、該端部に対応する前記端部接合材が、ずれ止め用溶接、もしくは、ずれ止め用鋼材を介した溶接により、相互に位置決め固定されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、拘束材の両端部のうちの片方の端部と対応する端部接合材が、ずれ止め用溶接等によって相互に位置決め固定されていることにより、拘束材の両端部の内側に、芯材と端部接合材の接合部を割り込ませた状態を維持することができる。
【0027】
また、本発明による二重管ブレースの他の態様は、
前記芯材に係合部が設けられ、前記第1分割管もしくは前記第2分割管の内側における該係合部に対応する位置に被係合部が設けられており、
前記被係合部に前記係合部が係合して、前記芯材と前記拘束材のずれ止めが図られている。
【0028】
本態様によれば、芯材に設けられている係合部と第1分割管もしくは第2分割管の内側に設けられている被係合部が係合することにより、拘束材の両端部の内側に、芯材と端部接合材の接合部を割り込ませた状態を維持することができる。
【0029】
また、本発明による二重管ブレースの製作方法の一態様は、
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも長く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材のうちの一方の第1拘束材を挿通し、該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A1工程と、
前記一方の第1拘束材を前記芯材の一方端側へ寄せ、他方の第1拘束材を形成するべく、前記第2鋼管が周方向に分割された複数の第1分割管を前記芯材の周囲で接合し、前記2つの第1拘束材を接合することにより該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B1工程とを有することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、芯材の周囲に一方の第1拘束材を挿通し、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、一方の第1拘束材を芯材の一方端側へ寄せ、例えば2つの第1分割管を芯材の周囲で接合して他方の第1拘束材を形成し、2つの第1拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0031】
また、本発明による二重管ブレースの製作方法の他の態様は、
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも短く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材を挿通し、該芯材の中央側へ該2つの第1拘束材を寄せて該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A2工程と、
前記鋼管2つの第1拘束材を前記芯材の両端部側へ寄せて、該2つの第1拘束材の間に隙間を形成し、該隙間に対して、前記第2が周方向に分割された複数の第2分割管を介在させ、該複数の第2分割管を相互に接合して第2拘束材を形成し、該第2拘束材と該2つの第1拘束材を接合することにより、該第1拘束材と該第2拘束材からなる該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B2工程とを有することを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、芯材の周囲に2つの第1拘束材を挿通して芯材の中央側へ寄せ、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、2つの第1拘束材の間で複数の第2分割管を相互に接合して第2拘束材を形成し、第2拘束材と2つの第1拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0033】
また、本発明による二重管ブレースの製作方法の他の態様は、
第1鋼管により形成される芯材の周囲に、合計の長さが該芯材の長さよりも短く、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成される2つの第1拘束材を挿通し、該2つの第1拘束材の周囲に、該第2鋼管よりも大径の第3鋼管により形成される第2拘束材を挿通し、該芯材の中央側へ該2つの第1拘束材を寄せて該芯材の両端部を露出させ、該両端部に対して、他部材と接合される端部接合材を固定する、A3工程と、
前記2つの第1拘束材を前記芯材の両端部側へ寄せて、該2つの第1拘束材の間に隙間を形成し、該2つの第1拘束材に跨がる位置に前記第2拘束材を位置合わせし、該第2拘束材と該2つの第1拘束材を接合することにより、該第1拘束材と該第2拘束材からなる該芯材を包囲する拘束材を形成し、該2つの第1拘束材のそれぞれの端部の内側に、該芯材と前記端部接合材の接合部を割り込ませた状態とする、B3工程とを有することを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、芯材の周囲に2つの第1拘束材を挿通し、2つの第1拘束材の周囲に第2拘束材を挿通し、2つの第1拘束材を芯材の中央側へ寄せ、芯材の両端部を露出させて端部接合材を固定した後、2つの第1拘束材と第2拘束材を接合することによって拘束材を形成する製作方法により、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【0035】
また、本発明による二重管ブレースの製作方法の他の態様は、
第1鋼管により形成される芯材の一方の端部に、他部材と接合される端部接合材を固定し、該芯材の他方の端部側から拘束材を挿入し、該拘束材は、該第1鋼管よりも大径の第2鋼管により形成され、該芯材よりも長く、両端部における該端部接合材と対応する位置に、地震時における前記芯材の変形の際の前記端部接合材との干渉を防止する、構造上のスリット長さを備えた第1スリットを備え、少なくとも一方の該第1スリットは、他方の該第1スリットよりも長い第2スリットとされている、C工程と、
前記拘束材を前記端部接合材側へ寄せて、該端部接合材を前記第2スリットに挿通させることにより、前記芯材の他方の端部を露出させ、該他方の端部に別途の端部接合材を固定し、該拘束材を該芯材の中央側へ寄せて、該拘束材の両端部にある前記第1スリットと前記第2スリットに対して対応する前記端部接合材を挿通させる、D工程とを有することを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、拘束材の両端部の例えば一方における端部接合材と対応する位置に、構造上のスリット長さを備えた第1スリットを設け、拘束材の両端部の他方における端部接合材と対応する位置に、構造上のスリット長さよりも長い第2スリットを設けておき、一端に端部接合材が固定されている芯材に対して、芯材よりも長い拘束材を挿入して端部接合材を第2スリットに挿通させることで、芯材の他方の端部を露出させ、他方の端部に別途の端部接合材を固定し、拘束材を芯材の中央側へ寄せることにより、芯材と端部接合材の接合部を拘束材の内部に割り込ませた状態の二重管ブレースを比較的簡単に製作することができる。
【発明の効果】
【0037】
以上の説明から理解できるように、本発明の二重管ブレースとその製作方法によれば、芯材が拘束材に包囲される形態の二重管ブレースに関し、芯材と端部接合材の接合部が拘束材で包囲され、接合部が構造弱部になることが防止されている二重管ブレースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第1実施形態に係る二重管ブレースの一例の分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る二重管ブレースの一例の斜視図である。
【
図3A】第1実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図3B】
図3Aに続いて、第1実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図3C】
図3Bに続いて、第1実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図4】第2実施形態に係る二重管ブレースの一例の斜視図である。
【
図5A】第2実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図5B】
図5Aに続いて、第2実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図5C】
図5Bに続いて、第2実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図6】第3実施形態に係る二重管ブレースの一例の斜視図である。
【
図7A】第3実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図7B】
図7Aに続いて、第3実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図8】第4実施形態に係る二重管ブレースの一例の斜視図である。
【
図9A】第4実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【
図9B】
図9Aに続いて、第4実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、各実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0040】
[第1実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、第1実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法の一例について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る二重管ブレースの一例の分解斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る二重管ブレースの一例の斜視図である。また、
図3A、
図3B、及び
図3Cは順に、第1実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【0041】
図1及び
図2に示す二重管ブレース60は、外径がφ1で長さt1の第1鋼管により形成される芯材10と、第1鋼管よりも大径である外径がφ2の第2鋼管により形成され、芯材10を包囲する拘束材30とを有する。
【0042】
芯材10の両端部12,13にはそれぞれ、エンドプレート14が溶接接合されており、それぞれのエンドプレート14に対して、他部材と接合される端部接合材20が接合部15において溶接接合されている。
【0043】
ここで、端部接合材20が接合される不図示の他部材は、例えば、建物架構の対角位置にある一対の隅角部からそれぞれ内側へ張り出すブラケットやガセットプレート等である。
【0044】
芯材10の外周面11には、以下で説明する第1拘束材31を構成する2つの第1分割管35の備えるそれぞれの被係合部38に係合する、2つの係合部18が側方へ張り出すようにして設けられている。尚、
図1と
図2では、そのうちの一方の係合部18のみが図示されている。
【0045】
端部接合材20は十字ガセットプレートにより形成され、十字ガセットプレート20は、芯材10の端部の幅φ1と略同幅の一端と、この一端からテーパー状に広がり、φ1よりも広幅である幅t4を有するガセットプレート21と、ガセットプレート21の一対の広幅面に対して直交し、該広幅面に溶接接合される一対のガセットプレート24とにより形成される。それぞれのガセットプレート21,24には、不図示の他部材とボルト接合される際にボルトが挿通されるボルト孔21a,24aが設けられている。
【0046】
ここで、十字ガセットプレート20の縦横の最大幅t4は、拘束材30の外径φ2よりも大きく設定されている。
【0047】
このように端部接合材20が十字ガセットプレートであることから、端部接合材20の剛性が高くなり、地震時に端部接合材20が先行破壊することが抑制され、地震エネルギーを芯材10の全域に伝達することが可能になる。このことにより、二重管ブレース60の初期の地震エネルギー吸収性を発揮させることができる。
【0048】
拘束材30は、第1鋼管よりも大径である外径がφ2の第2鋼管により形成され、それぞれの長さt2,t3の合計の長さ(t2+t3)が芯材10の長さt1よりも長い2つの第1拘束材31A,31Bを備えている。ここで、2つの第1拘束材31A,31Bの長さt2,t3は、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0049】
一方の第1拘束材31Aは、第2鋼管により形成される1つの部材であるが、他方の第1拘束材31Bは、第2鋼管が周方向に2つに分割された2つの第1分割管35により形成されている。ここで、第1拘束材31Bは、第2鋼管がその周方向に3つ以上に分割された、3つ以上の第1分割管により形成されてもよい。
【0050】
第1拘束材31Aの一方の端部33から内部にかけて、十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24に対応する位置には、第1スリット36Aが開設されている。図示例では、十字ガセットプレート21,24に対応する4つの第1スリット36Aが、90度間隔に設けられている。
【0051】
図2に示すように、各第1スリット36Aには、ガセットプレート21,24の一部が遊嵌されるようになっている。ここで、第1スリット36Aの長さt5は、地震時における芯材10の変形の際の端部接合材20との干渉を防止する、構造上のスリット長さに設定されている。
【0052】
第1拘束材31Aの他方の端部32は、他方の第1拘束材31Bと溶接接合される端部である。
【0053】
一方、他方の第1拘束材31Bを形成する2つの第1分割管35は、第2鋼管の半割管であり、それぞれの周方向端部39同士が溶接接合されることにより、第1拘束材31Bを形成する。
【0054】
第1分割管35の一方の端部33には、十字ガセットプレート20のガセットプレート21,24が遊嵌される第1スリット36Aが設けられている他に、双方の第1分割管35が一体とされた際に第1スリット36Aを形成する、分割スリット37が設けられている。
【0055】
さらに、それぞれの第1分割管35には、芯材10に設けられている2つの係合部18(凸部)の一方が係合される被係合部38(凹部)が開設されている。
【0056】
図2に示すように、芯材10の周囲において、一方の第1拘束材31Aが、その各第1スリット36Aに対して一方の十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌されるようにして配設され、同様に、他方の第1拘束材31Bが、その各第1スリット36Aに対して他方の十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌されるようにして配設され、双方の第1拘束材31A,31Bの端部32同士が溶接接合されることにより、芯材10の周囲を芯材10よりも長い拘束材30が包囲する二重管ブレース60が形成される。
【0057】
二重管ブレース60では、芯材10の各係合部18に対して、各第1分割管35の被係合部38が嵌め込まれることにより、芯材10に対する拘束材30のずれ止めを図ることができる。ここで、被係合部38に係合部18が係合される図示例のずれ止め防止措置に代わり、拘束材30の両端部33のうちの一方の端部33と、端部33に対応する端部接合材20が、ずれ止め用溶接やずれ止め用鋼材を介した溶接により相互に接合されてもよい。
【0058】
二重管ブレース60では、芯材10の両端と一対の端部接合材20を繋ぐ一対の接合部15がいずれも、対応する第1拘束材31の内側に割り込んだ状態とされている。この構成により、接合部15が拘束材30から外部へ露出することに起因して、二重管ブレース60の構造弱部になることを防止できる。
【0059】
すなわち、上記するように、端部接合材20が剛性の高い十字ガセットプレートであることから、端部接合材20が先行破壊することは抑制される一方で、仮に、芯材10と端部接合材20の接合部15が芯材10を包囲する拘束材30の外側に位置して外部に露出する場合に、端部接合材20から芯材10へと剛性が変化する剛性変化点となる接合部15が構造弱部となり易く、剛性の高められた端部接合材20では先行破壊しないものの、接合部15における先行破壊が懸念される。これに対して、図示例のように接合部15を拘束材30の内部に割り込ませることにより、構造弱部となり得る接合部15を拘束材30にて補剛することができ、二重管ブレース60の初期の地震エネルギー吸収性を発揮させることが可能になる。
【0060】
次に、
図3を参照して、二重管ブレース60の製作方法の一例を説明する。
【0061】
はじめに、
図3Aに示すように、第1鋼管により形成される芯材10の周囲に、第2鋼管により形成される一方の第1拘束材31Aを挿通し、第1拘束材31Aを芯材10の中央側へX1方向に移動させておき、芯材10の両端部にある一対のエンドプレート14を露出させ、双方のエンドプレート14に対して端部接合材20を溶接接合することにより、接合部15を形成する(A1工程)。
【0062】
次に、
図3Bに示すように、第1拘束材31Aを端部側へX2方向に移動させ、その第1スリット36Aに対して、端部接合材20の各ガセットプレート21,24の一部を遊嵌させた状態で位置決めする。次いで、一対の第1分割管35を、それぞれの被係合部38に対して対応する芯材10の係合部18が係合するようにしてX3方向に嵌め込む。
【0063】
そして、
図3Cに示すように、それぞれの第1分割管35の周方向端部39同士を溶接接合することにより、第1拘束材31Bを形成する。この際、第1拘束材31Bの備える各第1スリット36Aにも、対応する端部接合材20のガセットプレート21,24の一部が遊嵌されることになる。
【0064】
さらに、第1拘束材31A,31Bのそれぞれの端部32同士を溶接接合することによって拘束材30を形成し、芯材10の周囲に拘束材30が配設され、一対の接合部15をいずれも拘束材30の内側に割り込ませた状態で二重管ブレース60が製作される(以上、B1工程)。
【0065】
図示例の製作方法によれば、芯材10よりも長さの長い拘束材30が芯材10を包囲し、かつ、拘束材30の外径φ2よりも大きな幅t4を備える端部接合材20を有する二重管ブレース60において、芯材10と端部接合材20の接合部15を拘束材30の内部に割り込ませた構造を比較的簡単に製作することができる。
【0066】
[第2実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法]
次に、
図4と
図5を参照して、第2実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法の一例について説明する。ここで、
図4は、第2実施形態に係る二重管ブレースの一例の分解斜視図であり、
図5A、
図5B、及び
図5Cは順に、第2実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【0067】
図4に示す二重管ブレース60Aでは、芯材10とその両端に接合される一対の端部接合材20は二重管ブレース60と同様であるが、芯材10を包囲する拘束材30Aの構成において二重管ブレース60の拘束材30と相違する。具体的には、拘束材30Aは、2つの第1拘束材31Cの長さt6の合計が芯材10の長さt1よりも短く、2つの第1拘束材30Cの間に双方を繋ぐ長さt7の第2拘束材40を備えており、2つの第1拘束材31Cと第2拘束材40が相互に溶接接合されることにより拘束材30Aが形成される。
【0068】
第1拘束材31Cと第2拘束材40はいずれも、第2鋼管により形成され、拘束材30Aの全体の長さ:2×t6+t7は、芯材10の長さt1よりも長くなるように設定されている。ここで、図示例の2つの第1拘束材31Cの長さt6は同じ長さであるが、双方が異なる長さであってもよい。
【0069】
各第1拘束材31Cの一方の端部33には、十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌する4つの第1スリット36Aが開設されている。
【0070】
また、第2拘束材40は、第2鋼管がその周方向に分割された2つの第2分割管41により形成され、それぞれの第2分割管41の周方向端部49同士が溶接接合されることにより第2拘束材40が形成される。そして、第2拘束材40の両側にある2つの第1拘束材31Cの端部32と第2拘束材40の両端部42,43が相互に溶接接合されることにより、拘束材30Aが形成され、芯材10の周囲を芯材10よりも長い拘束材30Aが包囲する二重管ブレース60Aが形成される。
【0071】
二重管ブレース60と同様に、二重管ブレース60Aにおいても、芯材10の両端と一対の端部接合材20を繋ぐ一対の接合部15がいずれも、対応する第1拘束材31の内側に割り込んだ状態とされている。この構成により、接合部15が拘束材30Aから外部へ露出することに起因して、二重管ブレース60Aの構造弱部になることを防止できる。
【0072】
次に、
図5を参照して、二重管ブレース60Aの製作方法の一例を説明する。
【0073】
はじめに、
図5Aに示すように、第1鋼管により形成される芯材10の周囲に、第2鋼管により形成される2つの第1拘束材31Cを挿通し、2つの第1拘束材31Cを芯材10の中央側へX4方向に移動させておき、芯材10の両端部にある一対のエンドプレート14を露出させ、双方のエンドプレート14に対して端部接合材20を溶接接合することにより、接合部15を形成する。
【0074】
ここで、
図5Aに示すように、図示例の芯材10では、
図1,2に示す例と異なり、芯材10の長手方向の中央位置において一対の係合部18が設けられている。本例では、芯材10の長手方向の中央領域に2つの第2分割管41が取り付けられるためである(以上、A2工程)。
【0075】
次に、
図5Bに示すように、2つの第1拘束材31Cを端部側へX5方向に移動させ、それぞれの第1スリット36Aに端部接合材20の各ガセットプレート21,24の一部を遊嵌させた状態で位置決めすることにより、2つの第1拘束材31Cの端部32の間に隙間Gを形成する。次いで、この隙間Gに対して、一対の第2分割管41を、それぞれの被係合部48に対して対応する芯材10の係合部18が係合するようにしてX6方向に嵌め込む。
【0076】
そして、
図5Cに示すように、それぞれの第2分割管41の周方向端部49同士を溶接接合することにより、第2拘束材40を形成する。
【0077】
さらに、2つの第1拘束材31Cのそれぞれの端部32と第2拘束材40の両端部42,43を溶接接合することにより、拘束材30Aを形成し、芯材10の周囲に拘束材30Aが配設され、一対の接合部15をいずれも拘束材30Aの内側に割り込ませた状態で二重管ブレース60Aが製作される(以上、B2工程)。
【0078】
図示例の製作方法によれば、芯材10よりも長さの長い拘束材30Aが芯材10を包囲し、かつ、拘束材30Aの外径φ2よりも大きな幅t4を備える端部接合材20を有する二重管ブレース60Aにおいて、芯材10と端部接合材20の接合部15を拘束材30Aの内部に割り込ませた構造を比較的簡単に製作することができる。
【0079】
[第3実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法]
次に、
図6と
図7を参照して、第3実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法の一例について説明する。ここで、
図6は、第3実施形態に係る二重管ブレースの一例の分解斜視図であり、
図7Aと
図7Bは順に、第3実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【0080】
図6に示す二重管ブレース60Bでは、芯材10とその両端に接合される一対の端部接合材20は二重管ブレース60,60Aと同様であるが、芯材10を包囲する拘束材30Bの構成において二重管ブレース60,60Aの拘束材30,30Aと相違する。具体的には、拘束材30Bは、第2鋼管により形成される2つの第1拘束材31Cの長さt6の合計が芯材10の長さt1よりも短く、2つの第1拘束材30Cの端部32の外周に、第2鋼管の外径φ2よりも大径の外径φ3を備え、長さがt8の第3鋼管により形成される第2拘束材50が配設され、2つの第1拘束材31Cと第2拘束材50が相互に溶接接合されることにより拘束材30Bが形成される。
【0081】
2つの第1拘束材31Cと第2拘束材50の全長:2×t6+t8は、芯材10の長さt1よりも長くなるように設定されている。ここで、図示例の2つの第1拘束材31Cの長さt6は同じ長さであるが、双方が異なる長さであってもよい。
【0082】
各第1拘束材31Cの一方の端部33には、十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌する4つの第1スリット36Aが開設されている。
【0083】
第2拘束材50の両側にある2つの第1拘束材31Cの外周面と第2拘束材50の両端部52,53が相互に溶接接合されることにより、拘束材30Bが形成され、芯材10の周囲を芯材10よりも長い拘束材30Bが包囲する二重管ブレース60Aが形成される。
【0084】
ここで、図示を省略するが、例えば、一方の第1拘束材31Cの端部33と対応する端部接合材20が相互に溶接接合(ずれ止め用溶接)されることにより、芯材10と拘束材30Bのずれ止めを図ることができる。
【0085】
二重管ブレース60,60Aと同様に、二重管ブレース60Bにおいても、芯材10の両端と一対の端部接合材20を繋ぐ一対の接合部15がいずれも、対応する第1拘束材31の内側に割り込んだ状態とされている。この構成により、接合部15が拘束材30Bから外部へ露出することに起因して、二重管ブレース60Bの構造弱部になることを防止できる。
【0086】
次に、
図7を参照して、二重管ブレース60Bの製作方法の一例を説明する。
【0087】
はじめに、
図7Aに示すように、第1鋼管により形成される芯材10の周囲に、第2鋼管により形成される2つの第1拘束材31Cを挿通し、2つの第1拘束材31Cの周囲に、第3鋼管により形成される第2拘束材50を挿通し、2つの第1拘束材31Cを芯材10の中央側へX7方向に移動させておき、芯材10の両端部にある一対のエンドプレート14を露出させ、双方のエンドプレート14に対して端部接合材20を溶接接合することにより、接合部15を形成する(A3工程)。
【0088】
次に、
図7Bに示すように、2つの第1拘束材31Cを端部側へX8方向に移動させ、それぞれの第1スリット36Aに端部接合材20の各ガセットプレート21,24の一部を遊嵌させた状態で位置決めする。次いで、2つの第1拘束材31Cの外周面と第2拘束材50の端部52,53を溶接接合することによって拘束材30Bを形成し、芯材10の周囲に拘束材30Bが配設され、一対の接合部15をいずれも拘束材30Bの内側に割り込ませた状態で二重管ブレース60Bが製作される(以上、B3工程)。
【0089】
図示例の製作方法によれば、芯材10よりも長さの長い拘束材30Bが芯材10を包囲し、かつ、拘束材30Bを構成する第1拘束材31の外径φ2よりも大きな幅t4を備える端部接合材20を有する二重管ブレース60Bにおいて、芯材10と端部接合材20の接合部15を拘束材30Bの内部に割り込ませた構造を比較的簡単に製作することができる。
【0090】
[第4実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法]
次に、
図8と
図9を参照して、第3実施形態に係る二重管ブレースとその製作方法の一例について説明する。ここで、
図8は、第4実施形態に係る二重管ブレースの一例の分解斜視図であり、
図9Aと
図9Bは順に、第4実施形態に係る二重管ブレースの製作方法の一例を説明する説明図である。
【0091】
図8に示す二重管ブレース60Cでは、芯材10とその両端に接合される一対の端部接合材20は二重管ブレース60,60A,60Bと同様であるが、芯材10を包囲する拘束材30Cの構成において二重管ブレース60,60A,60Bの拘束材30,30、30Bと相違する。具体的には、拘束材30Cは、芯材10の長さt1よりも長い長さt9の第2鋼管により形成される1つの拘束材であり、一方の端部33には、十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌する4つの第1スリット36Aが開設されているのに対して、他方の端部32には、第1スリット36Aの長さt5よりも長い長さt9を備える4つの第2スリット36Bが開設されていて、各第2スリット36Bに対して、十字ガセットプレート20の各ガセットプレート21,24の一部が遊嵌するようになっている。
【0092】
構造上のスリット長さt5よりも長い第2スリット36Bが、拘束材30Cの一方の端部32に設けられていることにより、以下で説明するように、製作の際に、芯材10よりも長い拘束材30Cの一方の端部12(のエンドプレート14)に端部接合材20を固定した後、拘束材30Cをスライドさせて各ガセットプレート21,24を各第2スリット36Bに遊嵌させ、スライドさせることにより、他方の端部13(のエンドプレート14)を拘束材30Cの外部に露出させ、当該端部13に対して別途の端部接合材20を固定することが可能になる。
【0093】
尚、芯材10の両端12,13(のエンドプレート14)に一対の端部接合材20を固定した後、第2スリット36Bは、構造上のスリット長さt5よりも長い故に拘束材30Cの端部の強度低下に繋がり得る。そこで、芯材10に一対の端部接合材20を固定した後、
図9Bに示すように、第2スリット36Bのうち、構造上のスリット長さt5よりも長い拘束材30Cの中央側の領域に対して、鋼材による穴埋め部36Cを設けて当該領域を閉塞する、もしくは、不図示の鋼材カバーにより閉塞することにより、第2スリット36Bが第1スリット36Aとなり、芯材10の周囲を芯材10よりも長い拘束材30Cが包囲する二重管ブレース60Cが形成される。
【0094】
二重管ブレース60,60A,60Bと同様に、二重管ブレース60Cにおいても、芯材10の両端と一対の端部接合材20を繋ぐ一対の接合部15がいずれも、第1拘束材30Cの内側に割り込んだ状態とされている。この構成により、接合部15が拘束材30Cから外部へ露出することに起因して、二重管ブレース60Cの構造弱部になることを防止できる。
【0095】
次に、
図9を参照して、二重管ブレース60Cの製作方法の一例を説明する。
【0096】
はじめに、
図9Aに示すように、第1鋼管により形成される芯材10の一方の端部12(のエンドプレート14)に対して、端部接合材20を固定しておき、芯材10の他方の端部13側から拘束材30Cを挿入する。
【0097】
上記するように、拘束材30Cは芯材10よりも長く、既に芯材10に端部接合材20が固定されている側の端部32には第2スリット36Bを備え、他方の端部33には第1スリット36Aを備えている(以上、C工程)。
【0098】
図9Aに示すように、拘束材30Cを端部接合材20側(図示例では左側)へX9方向に寄せて、それぞれの第2スリット36Bに端部接合材20の各ガセットプレート21,24を遊嵌させ、スライドさせることにより、芯材10の他方の端部13(のエンドプレート14)を露出させ、他方の端部13に対して別途の端部接合材20(図示例では右側の端部接合材)を固定する。
【0099】
次いで、
図9Bに示すように、外部に露出した芯材10の端部13(のエンドプレート14)に対して端部接合材20を固定し、拘束材30Cを芯材10の中央側へZ10方向に寄せることで、右側の端部接合材20の各ガセットプレート21,24を拘束材30Cの右側にある各第1スリット36Aに遊嵌させる。
【0100】
最後に、第2スリット36Bのうち、構造上のスリット長さよりも長い第2スリット36Bの中央側の領域に対して、鋼材による穴埋め部36Cを設けて当該領域を閉塞することにより、第2スリット36Bを第1スリット36Aとして、芯材10の周囲を芯材10よりも長い拘束材30Cが包囲する二重管ブレース60Cが製作される(以上、D工程)。
【0101】
図示例の製作方法によれば、芯材10よりも長さの長い拘束材30Cが芯材10を包囲し、かつ、拘束材30Cの外径φ2よりも大きな幅t4を備える端部接合材20を有する二重管ブレース60Cにおいて、芯材10と端部接合材20の接合部15を拘束材30Cの内部に割り込ませた構造を比較的簡単に製作することができる。
【0102】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0103】
10:芯材
11:外周面
12,13:端部
14:エンドプレート
15:接合部
18:係合部(凸部)
20:端部接合材(十字ガセットプレート)
21:第1ガセットプレート
21a:ボルト孔
24:第2ガセットプレート
24a:ボルト孔
30,30A,30B,30C:拘束材
31,31A,31B,31C:第1拘束材
32:33:端部
35:第1分割管
36A:第1スリット
36B:第2スリット
36C:穴埋め部
37:分割スリット
38:被係合部(凹部)
39:周方向端部
40:第2拘束材(第2鋼管)
41:第2分割管
42,43:端部
48:凹部
49:周方向端部
50:第2拘束材(第3鋼管)
52,53:端部
60,60A,60B,60C:二重管ブレース
G:隙間