(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165958
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20241121BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241121BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20241121BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20241121BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20241121BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N35/02 G
G01N30/88 Q
G01N30/26 A
G01N30/32 A
G01N30/86 Q
G01N33/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082579
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出村 友裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊一
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
【Fターム(参考)】
2G045DA48
2G045FB06
2G058GA14
2G058GC02
2G058GC05
2G058GE05
2G058HA04
(57)【要約】
【課題】複数の測定モードを有する分析装置を用いて検体を分析する構成において、検査内容の異なる検体が混在していても、検査作業従事者の負担の増大を抑制可能な分析システムを提供する。
【解決手段】分析システムは、検体がセットされ、セットされた検体の測定モードとして第一の測定モードと第一の測定モードよりも測定時間が長い第二の測定モードとを有し、第一の測定モードが設定される第一分析装置と、第一の測定モードと第二の測定モードとを有し、第二の測定モードが設定される第二分析装置と、第一分析装置から第二分析装置へ検体を搬送する搬送部と、検体に設定される検査内容に関する情報に基づいて、測定モードを選択し、第一の測定モードを選択した場合は検体を第一分析装置に分析させ、第二の測定モードを選択した場合は搬送部を用いて検体を第一分析装置から第二分析装置へ搬送させた後で第二分析装置に分析させる管理部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体がセットされ、セットされた検体の測定モードとして第一の測定モードと、前記第一の測定モードよりも検体の測定時間が長い第二の測定モードとを有し、前記第一の測定モードが設定される第一分析装置と、
前記第一分析装置よりも検体の搬送方向下流に配置され、前記第一の測定モードと前記第二の測定モードとを有し、前記第二の測定モードが設定される第二分析装置と、
前記第一分析装置と前記第二分析装置とをつなぎ、前記第一分析装置から前記第二分析装置へ検体を搬送する搬送部と、
前記検体に設定される検査内容に関する情報に基づいて、前記検体の測定モードを選択し、前記第一の測定モードを選択した場合には前記検体を前記第一分析装置に分析させ、前記第二の測定モードを選択した場合には前記搬送部を用いて前記検体を前記第一分析装置から前記第二分析装置へ搬送させた後で前記第二分析装置に分析させる管理部と、
を有する分析システム。
【請求項2】
前記検体から前記検査内容に関する情報を読み取るための情報読取装置が前記第一分析装置よりも検体の搬送方向上流に設けられている、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記第一分析装置は、セットされた前記検体から前記検査内容に関する情報を読み取るための情報読取装置を備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記検査内容に関する情報には、前記検体の測定項目に関する情報、前記検体の検査を依頼した診療科の情報、又は前記検体の測定モードを指定する情報のいずれかが含まれる、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記第一の測定モードにおける前記検体の測定結果に基づいて、前記検体を前記第二の測定モードで分析させるか否かを判定する判定部を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項6】
前記第一分析装置と前記第二分析装置は、それぞれ液体クロマトグラフィ法により前記検体を分析する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記第一の測定モードでは、前記検体中のヘモグロビンA1cを測定し、
前記第二の測定モードでは、前記検体中の変異ヘモグロビンを測定する、請求項6に記載の分析システム。
【請求項8】
前記第一の測定モードでは、前記第二の測定モードよりも溶出力の高い溶媒を用いる、請求項6に記載の分析システム。
【請求項9】
前記第一の測定モードでは、前記第二の測定モードよりも溶媒の送液スピードを速くする、請求項6に記載の分析システム。
【請求項10】
前記第一の測定モードでは、対象となる成分を検出した場合、溶媒を溶出力の高い溶媒に切り替えて測定を継続し、
前記第二の測定モードでは、対象となる成分を検出しても、溶媒を切り替えずに測定を継続する、請求項6に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のヘモグロビンを分析する装置として液体クロマトグラフィ法を用いる分析装置が知られている(特許文献1~特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-198666号公報
【特許文献2】特開2019-60655号公報
【特許文献3】特開2019-60654号公報
【特許文献4】特開2015-127700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液を含む検体の検査内容は、検査を依頼する診療科によって異なることが多い。そして、検体を検査する検査室には、検査内容の異なる検体が混在して届く。検査室の作業従事者は、検体の検査内容に応じて分析装置の測定モードを設定している。このように検体の検査内容に応じて測定モードを設定する場合、設定間違いが起きないよう注意を払う必要がある。また、測定モードに応じた装置環境の整備を行う必要がある。このため作業従事者の負担が増大する傾向がある。
【0005】
本開示は、複数の測定モードを有する分析装置を用いて検体を分析する構成において、検査内容の異なる検体が混在していても、検査作業従事者の負担の増大を抑制可能な分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の分析システムは、
検体がセットされ、セットされた検体の測定モードとして第一の測定モードと、前記第一の測定モードよりも検体の測定時間が長い第二の測定モードとを有し、前記第一の測定モードが設定される第一分析装置と、
前記第一分析装置よりも検体の搬送方向下流に配置され、前記第一の測定モードと前記第二の測定モードとを有し、前記第二の測定モードが設定される第二分析装置と、
前記第一分析装置と前記第二分析装置とをつなぎ、前記第一分析装置から前記第二分析装置へ検体を搬送する搬送部と、
前記検体に設定される検査内容に関する情報に基づいて、前記検体の測定モードを選択し、前記第一の測定モードを選択した場合には前記検体を前記第一分析装置に分析させ、前記第二の測定モードを選択した場合には前記搬送部を用いて前記検体を前記第一分析装置から前記第二分析装置へ搬送させた後で前記第二分析装置に分析させる管理部と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の分析システムによれば、複数の測定モードを有する分析装置を用いて検体を分析する構成において、検査内容の異なる検体が混在していても、検査作業従事者の負担の増大を抑制可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の分析システムの概略構成図である。
【
図3】実施形態の分析システムの制御系の構成図である。
【
図4】第一分析装置に設定されるファストモードの液体クロマトグラフィ測定プログラムのフローチャートである。
【
図5】第二分析装置に設定されるバリアントモードの液体クロマトグラフィ測定プログラムのフローチャートである。
【
図6】管理装置で実行される検体測定モード選択プログラムのフローチャートである。
【
図7】管理装置で実行される検体測定モード選択プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態の分析システムについて説明する。なお、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
本実施形態の分析システム20は、
図1に示されるように、第一分析装置30Aと、第二分析装置30Bと、搬送部62と、管理装置80とを有する。
【0011】
(分析装置30)
第一分析装置30Aは、第二分析装置30Bよりも検体の搬送方向上流に位置する。なお、検体の搬送方向は、
図1において矢印Rで示す方向である。また、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bは、同様の機能を有する装置である。本実施形態では、一例として、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bは同一構成の装置である。そのため、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bを分析装置30と総称し、その構成について説明する。
【0012】
図2には、分析装置30の概略構成が示されている。
分析装置30は、検体の成分を分析する装置である。具体的には、分析装置30は、高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)を利用して、血液中のHbA1cの濃度を測定する装置である。なお、分析装置30は、検体(生体試料)の他の成分分析を行う装置であってもよい。
【0013】
図2に示されるように、分析装置30は、一例として、複数の溶離液ボトル32A、32B、32C、32D、32E(
図2では5個)を備える。
【0014】
各溶離液ボトル32A、32B、32C、32D、32Eは、後述する分析カラム44に供給すべき溶離液A、B、C、D、Eを各々保持したボトルである。各溶離液は、用途に応じて例えば組成、成分比、pH、浸透圧等が異なる。
【0015】
また、分析装置30は、一例として、試料調製ユニット34と、分析ユニット36と、測光ユニット38とを備える。
【0016】
試料調製ユニット34は、採血管100から採取した血液試料102から、分析カラム44に導入する試料を調製する機能を有するユニットである。この試料調製ユニット34は、例えば、ノズル40と、希釈槽42とを備える。ノズル40は採血管100から血液試料102をはじめとする各種の液体を採取するためのものである。希釈槽42は、血液試料102を希釈するための槽であり、ノズル40によって採取された血液試料102が供給される。
【0017】
分析ユニット36は、分析カラム44の充填剤に対する生体成分の吸着・脱着をコントロールし、各種の生体成分を測光ユニット38に供する機能を有するユニットである。この分析ユニット36は、分析カラム44と、マニホールド46と、送液ポンプ48と、インジェクションバルブ50とを備える。
【0018】
分析カラム44は、血液試料102中のヘモグロビンを選択的に吸着させるための充填剤を保持した器具である。
【0019】
マニホールド46は、複数の溶離液ボトル32A、32B、32C、32D、32Eのうちの特定の溶離液ボトルから、分析カラム44に選択的に溶離液を供給させる部品である。このマニホールド46は、配管52A、52B、52C、52Eを介して溶離液ボトル32A、32B、32C、32D、32Eに各々接続され、配管54を介してインジェクションバルブ50に接続される。
【0020】
送液ポンプ48は、溶離液をインジェクションバルブ50に移動させるための動力を付与するためのポンプである。この送液ポンプ48は、配管54の途中に設けられる。
【0021】
インジェクションバルブ50は、一定量の導入用試料を採取するとともに、その導入用試料を分析カラム44に導入可能とするバルブである。このインジェクションバルブ50は、複数の導入ポート及び排出ポート(図示省略)を備える。またインジェクションバルブ50には、インジェクションループ56が接続される。このインジェクションループ56は、一定量の液体を保持可能なものである。インジェクションバルブ50を適宜切り替えることにより、インジェクションループ56が希釈槽42と連通して希釈槽42からインジェクションループ56に導入用試料が供給される状態と、インジェクションループ56がプレフィルターPF及び配管58を介して分析カラム44と連通してインジェクションループ56から導入用試料が分析カラム44に導入される状態を選択することができる。
【0022】
測光ユニット38は、分析カラム44からの脱着液に含まれるヘモグロビンを光学的に検出するための機器である。この測光ユニット38は、配管58を介して、分析カラム44からの脱着液を排出するための廃液槽60に接続される。
【0023】
図3には、分析装置30の制御系のブロック図が示されている。
図3に示されるように、分析装置30は、制御部70を備えている。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)70Aと、ROM(Read Only Memory)70Bと、RAM(Random Access Memory)70Cと、不揮発性メモリ70Dと、入出力インターフェース(I/O)70Eと、バス70Fとを備える。CPU70A、ROM70B、RAM70C、不揮発性メモリ70D及び入出力インターフェース70Eは、バス70Fを介して各々接続された構成となっている。
【0024】
入出力インターフェース70Eには、試料調製ユニット34と、分析ユニット36と、測光ユニット38とがそれぞれ接続されている。
【0025】
なお、後述する液体クロマトグラフィ測定プログラムは、本実施形態では一例として不揮発性メモリ70Dに予め記憶される。CPU70Aは、不揮発性メモリ70Dに記憶された液体クロマトグラフィ測定プログラムを読み込んで実行する。また、例えば、CD-ROM等の記録媒体に液体クロマトグラフィ測定プログラムを記録し、これをCD-ROMドライブ等で読み込むことにより実行するようにしてもよい。
【0026】
また制御部70には、外部通信部72、バーコードリーダ74、操作部76、表示部78がそれぞれ接続されている。
【0027】
外部通信部72は、外部とネットワーク回線を介して通信するための機器である。
【0028】
バーコードリーダ74は、検体としての血液試料102が収容された採血管100に付されたバーコードを読み取る装置である。バーコードリーダ74によって読み取られたバーコード情報は、外部通信部72を通して後述する管理装置80に送信される。なお、バーコードリーダ74は、本開示の情報読取装置の一例である。
バーコード情報とは、検体固有の情報であり、例えば検体IDである。
【0029】
操作部76は、検査作業従事者からの入力を受け付ける部位である。
【0030】
表示部78は、操作部76での操作内容や後述する測定モード等が表示される。また、測光ユニット38での検出結果に基づいて描画されたクロマトグラムが表示されてもよい。
【0031】
また分析装置30は、少なくとも2つの測定モードを有する。具体的には、分析装置30は、第一の測定モードと第二の測定モードを有しており、第一の測定モードと第二の測定モードを切り替えられるように構成されている。
【0032】
第一の測定モードとは、第二の測定モードに比べ、検体を迅速に測定するモードである。ここで迅速に測定するとは、例えば、第二の測定モードに比べ、測定結果を取得するまでの時間(測定時間)が短い等が挙げられる。検体の測定時間が短くなる要因としては、測定結果を簡易な情報(測定結果が数値データである場合には、数値データの小数点以下の桁数が少ない等)として取得すること、又は測定項目数が少ないことなどが挙げられる。
【0033】
第二の測定モードとは、第一の測定モードに比べ、検体を詳細に測定するモードである。ここで詳細に測定するとは、例えば、第一の測定モードと異なる測定項目を含んでいること、又は第一の測定モードに比べ、検体の測定時間長いこと等が挙げられる。測定結果を取得するまでの時間が長くなる要因としては、測定結果を詳細な情報(測定結果が数値データである場合には、数値データの小数点以下の桁数が多い等)として取得することなどが挙げられる。
【0034】
なお、本実施形態の分析装置30には、第一の測定モードの一例としてファストモードが設定され、第二の測定モードの一例としてバリアントモードが設定されている。
【0035】
ここで、バリアントモードとは、液体クロマトグラフィ法を用いて、後述する複数種類の溶離液を分析カラム44に予め定めた順序で順次送液することにより、測定項目として血液試料102のHbA1c及び変異ヘモグロビンを測定する詳細測定のモードである。本実施形態のバリアントモードでは、例えば、HbA1c、HbA0、HbF、HbS、HbCを測定可能である。
【0036】
また、ファストモードとは、複数種類の溶離液のうちバリアントモードで使用する溶離液と共通の複数の共通溶離液を分析カラム44に予め定めた順序で順次送液することによりHbA1cを測定するモードであり、測定項目としてHbA1cを主として測定することに特化した迅速測定のモードである。本実施形態のファストモードでは、例えば、HbA1c、HbA0、HbFを測定可能である。
【0037】
すなわち、バリアントモードは、ファストモードと異なる測定項目を含む詳細測定モードである。具体的には、バリアントモードは、ファストモードよりも測定項目が多いため、測定時間が長くなる。
【0038】
また本実施形態では、第一分析装置30Aにおける検体の測定モードがファストモードに設定されている。また、第二分析装置30Bにおける検体の測定モードがバリアントモードに設定されている。第一分析装置30A、及び第二分析装置30Bにおける測定モードの設定は、後述する管理装置80から第一分析装置30A、及び第二分析装置30Bに指示を出すことにより行うことができる。なお、第二の測定モードよりも検体の測定時間が短い第一の測定モードを検体の搬送方向上流、すなわち第一分析装置に設定する方が、第一分析装置における分析が律速にならずに、第二分析装置へ検体を搬送することができる。
【0039】
(搬送部62)
搬送部62は、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bとをつなぎ、第一分析装置30Aから第二分析装置30Bへ検体としての血液試料102を搬送する機能を有する。具体的には、搬送部62は、採血管100を収容したラック104を第一分析装置30Aから第二分析装置30Bへ搬送する。この搬送部62は、例えば、載置されたラック104を検体の搬送方向下流へ向けて搬送するための駆動部(図示省略)を備えている。
【0040】
(管理装置80)
図3には、管理装置80の概略構成が示されている。
管理装置80は、少なくとも2つの分析装置30を管理可能な装置である。なお、本実施形態では、管理装置80が2つの分析装置30を管理するが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、管理装置80が3つ以上の分析装置を管理してもよい。なお、管理装置80は、本開示の管理部の一例である。
【0041】
図3には、管理装置80の制御系のブロック図が示されている。
図3に示されるように、管理装置80は、CPU(Central Processing Unit)80Aと、ROM(Read Only Memory)80Bと、RAM(Random Access Memory)80Cと、不揮発性メモリ80Dと、バス80Eとを備えるコンピュータである。CPU80A、ROM80B、RAM80C及び不揮発性メモリ80Dは、バス80Eを介して各々接続された構成となっている。
【0042】
なお、後述する検体測定モード選択プログラムは、本実施形態では一例として不揮発性メモリ80Dに予め記憶される。CPU80Aは、不揮発性メモリ80Dに記憶された検体測定モード選択を読み込んで実行する。また、例えば、CD-ROM等の記録媒体に検体測定モード選択を記録し、これをCD-ROMドライブ等で読み込むことにより実行するようにしてもよい。
【0043】
また管理装置80には、外部通信部82、操作部84、表示部86、データベース88がそれぞれ接続されている。
【0044】
外部通信部82は、外部とネットワーク回線を介して通信するための機器である。この外部通信部82を通して管理装置80は、各分析装置30と通信することができる。なお、ここでいうネットワーク回線は、2つの分析装置30及び管理装置80が設置される医療機関内に構築された構内情報通信網(LAN)でもよいし、インターネットなどの通信回線でもよい。
【0045】
操作部84は、オペレータからの入力を受け付ける部位である。
【0046】
表示部86は、操作部84での操作内容や測定モード等が表示される。
【0047】
データベース88は、血液試料102の検査内容に関する情報(以下、適宜(検査情報)という)が記憶されている。なお、ここでいう血液試料102の検査内容とは、測定対象とする血液試料102に含まれる成分を指す(測定項目という)。また血液試料102の検査情報は、血液試料102に対応するバーコード情報(採血管100に付されたバーコードの情報)と紐づけられて記憶されている。
【0048】
血液試料102の検査情報には、例えば、検体(ここでは血液試料102)の測定項目に関する情報、病院内の採血室に患者の採血検査を依頼した診療科の情報(以下適宜「診療科情報」という)、又は測定モードを指定する情報が含まれてもよい。なお、診療科情報には、同一病院内の診療科だけでなく、分院など異なる病院の診療科情報も含まれてもよい。
【0049】
なお、血液試料102の検査情報は、採血検査を依頼した診療科に属する従事者が、外部装置190によって提供されるラボ情報管理システム等のサポートシステムを介して入力することで管理装置80に送られ、データベース88に記憶される。
【0050】
またデータベース88には、診療科情報と測定モードを紐づけた情報が記憶されている。例えば、診療科情報が糖尿病内科の場合にはバリアンドモードで測定すること、診療科情報が健診科の場合にはファストモードで測定することが記憶されている。診療科情報と測定モードを紐づけた情報は、操作部84からユーザーが任意で入力してもよい。
【0051】
また本実施形態では、管理装置80からの指示に基づいて第一分析装置30Aの測定モードがファストモードに設定され、第二分析装置30Bの測定モードがバリアントモードに設定される。この管理装置80における各分析装置に対する測定モードの設定(割り当て)は、操作部84からユーザーが任意で入力してもよい。
【0052】
CPU80Aは、各分析装置30から血液試料102の測定モードの問い合わせを受ける(言い換えると、血液試料102のバーコード情報を受信する)と、血液試料102のバーコード情報に紐づけられた血液試料102の検査情報をデータベース88から読み出す。そして、CPU80Aは、血液試料102の検査情報に基づいて、血液試料102の測定モードを、ファストモードとバリアントモードの中から選択する。そして、選択した測定モードを、問い合わせを行った分析装置30へ送信する。具体的には、CPU80Aは、検査情報に含まれる検体の測定項目に関する情報、診療科情報、又は測定モードを指定する情報に基づいて、測定モードを選択する。一態様として、測定項目に関する情報に基づく場合においては、例えば、HbA1c、HbA0、HbFのいずれかが指定されている場合にファストモードを選択し、HbS、HbCのいずれかが指定されている場合にバリアントモードを選択する。別の態様としては、データベース88に記憶された診療科情報と測定モードを紐づけた情報に基づいて、血液試料102の測定モードをファストモードとバリアントモードの中から選択してもよい。
【0053】
ここで、CPU80Aは、第一分析装置30Aからの問い合わせで測定モードをファストモードに選択した場合は、ファストモードが選択された血液試料102を分析するよう第一分析装置30Aに指示を送信する。一方、CPU80Aは、第一分析装置30Aからの問い合わせで測定モードをバリアントモードに選択した場合は、対象となる血液試料102の分析を行わないよう第一分析装置30Aに指示を送信する。指示を受け取った第一分析装置30Aは対象となる血液試料102の次の血液試料102の測定モードをCPU80Aに問い合わせる。そして、CPU80Aは、ラック104に収容された複数の採血管100のうち、ファストモードが選択された血液試料102の分析が全て終了すると、搬送部62を用いてラック104を第二分析装置30Bへ搬送する。
第二分析装置30Bへ搬送されたラック104に収容された複数の採血管100は再度バーコードリーダ74でバーコード情報が読み取られる。そして、CPU80Aは、第二分析装置30Bからの問い合わせで測定モードをファストモードに選択した場合は、対象となる血液試料102の分析を行わないよう第二分析装置30Bに指示を送信する。指示を受け取った第二分析装置30Bは対象となる血液試料102の次の血液試料102の測定モードをCPU80Aに問い合わせる。一方、CPU80Aは、第二分析装置30Bからの問い合わせで測定モードをバリアントモードに選択した場合は、バリアントモードが選択された血液試料102を第二分析装置30Bで分析する。なお、血液試料102に対して紐づけられた検査情報に、ファストモードとバリアントモードの両方を行う指示が含まれる場合、第一分析装置30Aでファストモードでの測定を行い、第二分析装置30Bでバリアントモードでの測定が行われる。また、血液試料102に対して紐づけられた検査情報に誤りがあった場合、CPU80Aは、ファストモード及びバリアントモードのどちらも行わない選択をしてもよい。
【0054】
次に、第一分析装置30Aによる血液試料102の分析動作について説明する。
【0055】
図4には、第一分析装置30Aの制御部70のCPU70Aで実行される液体クロマトグラフィ測定処理のフローチャートの一例を示している。
【0056】
まず検査作業従事者は、第一分析装置30Aに血液試料102が入った採血管100を設置する(以下、適宜セットするという)。具体的には、分析装置30に、複数(例えば10本)の採血管100を収容したラック104をセットする。セットされたラック104は、分析装置30が備える搬送装置(図示省略)によって、採血管100から血液試料102を採取する採取位置まで搬送される。
【0057】
検査作業従事者が第一分析装置30Aに測定開始を指示すると、CPU70Aは、不揮発性メモリ70Dに記憶された液体クロマトグラフィ測定プログラムを読み込んで実行する。
【0058】
ステップS200では、バーコードリーダ74によって採血管100のバーコードから読み取ったバーコード情報を管理装置80に送信する。なお、本実施形態では全ての採血管100のバーコードをバーコードリーダ74によって連続的に読み取り、読み取った各情報を管理装置80に送信しているが、血液試料102の分析毎に採血管100のバーコードをバーコードリーダ74で読み取ってもよい。
【0059】
ステップS202では、管理装置80から血液試料102の測定モードを取得する。なお本実施形態では全ての血液試料102の測定モードを管理装置80から取得しているが、血液試料102の分析毎に測定モードを管理装置80から取得してもよい。
【0060】
ステップS204では、管理装置80から取得した測定モードがファストモードか否かを判定する。ファストモードの場合はステップS206へ移行する。一方、管理装置80から取得した測定モードがファストモードでない場合、その血液試料102は分析せずに、ステップS218へ移行する。
【0061】
本実施形態で用いられる複数種類の溶離液は、A液、B液、C液である。A液は、例えば、HbA1cを溶出するため及び分析カラム44を平衡化するための溶離液である。B液は、例えば、分析カラム44に残ったヘモグロビンを全て溶出するための溶離液、すなわち、分析カラム44を洗浄するための溶離液である。C液は、例えば、HbA1cが溶出された後にHbA1c以外のヘモグロビンを溶出するための溶離液である。なお、ヘモグロビンの溶出力が高い順にB液、C液、A液となる。
【0062】
バリアントモードでは、A液、B液、及びC液を予め定めた順序で分析カラム44に送液して測定する。ファストモードでは、A液及びB液を予め定めた順序で分析カラム44に送液して測定する。すなわち、A液及びB液はバリアントモード及びファストモードで共通に使用する共通溶離液であり、C液は、バリアントモードでのみ使用する非共通溶離液である。
なお、第一分析装置30Aは、ファストモードに設定されているため、ファストモードが選択された血液試料102のみ分析を行う。したがって、第一分析装置30Aでは、A液及びB液が主に使用される。
【0063】
ステップS206では、血液試料102を導入する。具体的には、ノズル40を動作させることによって採血管100から血液試料102を採取する。ノズル40によって採取された血液試料102は、ノズル40を動作させることによって希釈槽42に供給される。
【0064】
そして、インジェクションバルブ50を切り替えることによりインジェクションループ56に保持された試料は、プレフィルターPFによって濾過され、分析カラム44に導入される。分析カラム44に試料が導入されると、充填剤にHbA1c及び変異Hb等が吸着される。
【0065】
ステップS208では、A液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44からHbA1cが溶出される。
【0066】
ステップS210では、B液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44に残ったヘモグロビンが全て溶出され、分析カラム44が洗浄される。
【0067】
ステップS212では、A液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44が平衡化される。
【0068】
このように、ファストモードでは、A液→B液→A液の順序で分析カラム44へ送液する。
【0069】
分析カラム44から排出される各種ヘモグロビンを含む脱着液は、配管58を介して測光ユニット38に供給される。この脱着液は、配管58を介して廃液槽60に導かれる。
【0070】
測光ユニット38においては、脱着液に対して連続的に光が照射され、その受光結果(吸光度)が制御部70に出力される。そして、制御部70においてクロマトグラムが演算される。
【0071】
クロマトグラムは、測定を開始してからの経過時間と受光結果としての吸光度との関係を表すグラフである。このクロマトグラムのピークがどの位置に現れるかによって、どのヘモグロビンが検出されたかを知ることができると共に、ピーク部分(山なりの部分)における吸光度の積算値、すなわちピーク部分の面積の大きさによってヘモグロビンの濃度を知ることができる。
【0072】
ステップS214では、演算されたクロマトグラムに基づいて、HbA1cを測定する。
【0073】
ステップS216では、測定結果を不揮発性メモリ70Dに記憶させる。すなわち、HbA1cの濃度及び変異ヘモグロビンの検知の有無を不揮発性メモリ70Dに記憶する。
【0074】
ステップS218では、全ての採血管100について上記の測定が終了したか否かを判断し、全ての採血管100について測定が終了した場合は本ルーチンを終了し、測定が終了していない採血管100が存在する場合には、ステップS204へ戻り、測定対象の血液試料102に対する管理装置80から取得した測定モードがファストモードか否かを判定する。
【0075】
全ての採血管100について測定が終了すると、第一分析装置30Aは、搬送部62を用いてラック104を第二分析装置30Bへ送り出す。
【0076】
次に、第二分析装置30Bによる血液試料102の分析動作について説明する。
【0077】
図5には、第二分析装置30Bの制御部70のCPU70Aで実行される液体クロマトグラフィ測定処理のフローチャートの一例を示している。
【0078】
第一分析装置30Aから搬送されたラック104は、第二分析装置30Bにセットされる。セットされたラック104は、第二分析装置30Bが備える搬送装置(図示省略)によって、採血管100から血液試料102を採取する採取位置まで搬送される。
【0079】
検査作業従事者が第二分析装置30Bに測定開始を指示すると、CPU70Aは、不揮発性メモリ70Dに記憶された液体クロマトグラフィ測定プログラムを読み込んで実行する。なお、第二分析装置30Bは、第一分析装置30Aに連動して、液体クロマトグラフィ測定プログラムを読み込んでもよい。
【0080】
ステップS250では、バーコードリーダ74によって採血管100のバーコードから読み取ったバーコード情報を管理装置80に送信する。なお、本実施形態では全ての採血管100のバーコードをバーコードリーダ74によって連続的に読み取り、読み取った各情報を管理装置80に送信しているが、血液試料102の分析毎に採血管100のバーコードをバーコードリーダ74で読み取ってもよい。
【0081】
ステップS252では、管理装置80から血液試料102の測定モードを取得する。なお本実施形態では全ての血液試料102の測定モードを管理装置80から取得しているが、血液試料102の分析毎に測定モードを管理装置80から取得してもよい。
【0082】
ステップS254では、管理装置80から取得した測定モードがバリアントモードか否かを判定する。バリアントモードの場合はステップS260へ移行する。一方、管理装置80から取得した測定モードがバリアントモードでない場合、その血液試料102は分析せずに、ステップS278へ移行する。
【0083】
ステップS254においてバリアントモードで測定すると判定された場合は、ステップS260へ移行する。
【0084】
ステップS260では、ステップS206と同様に血液試料102を導入する。
【0085】
ステップS262では、A液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44からHbA1cが溶出される。
【0086】
ステップS264では、C液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44からHbA1cが溶出された後にHbA1c以外のヘモグロビンが溶出される。
【0087】
ステップS266では、A液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44が平衡化される。
【0088】
ステップS268では、B液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44に残ったヘモグロビンが全て溶出され、分析カラム44が洗浄される。
【0089】
ステップS270では、A液を分析カラム44に予め定めた時間供給する。これにより、分析カラム44が平衡化される。
【0090】
このように、バリアントモードでは、A液→C液→A液→B液→A液の順序で分析カラム44へ送液する。
【0091】
ステップS272では、ステップS214と同様にHbA1cを測定する。
【0092】
ステップS274では、変異ヘモグロビンを測定する。
【0093】
ステップS276では、測定結果を不揮発性メモリ70Dに記憶させる。すなわち、HbA1cの濃度及び変異ヘモグロビンの濃度を不揮発性メモリ70Dに記憶する。
【0094】
ステップS278では、全ての採血管100について上記の測定が終了したか否かを判断し、全ての採血管100について測定が終了した場合は本ルーチンを終了し、測定が終了していない採血管100が存在する場合には、ステップS254へ戻り、測定対象の血液試料102に対する管理装置80から取得した測定モードがバリアントモードか否かを判定する。
【0095】
全ての採血管100について測定が終了すると、第二分析装置30Bは、ラック104を検体搬送方向の下流へ送り出す。
【0096】
次に、管理装置80による血液試料102の測定モードの選択フローについて説明する
【0097】
図6には、管理装置80のCPU80Aで実行される検体測定モード選択処理のフローチャートの一例を示している。
【0098】
第一分析装置30Aから血液試料102に関するバーコード情報を受信すると、CPU80Aは、不揮発性メモリ80Dに記憶された検体測定モード選択プログラムを読み込んで実行する。
【0099】
ステップS300では、CPU80Aは、血液試料102に関するバーコード情報からデータベース88にアクセスし、バーコード情報に対応する検査情報(一例として診療科情報)を特定する。
【0100】
ステップS302では、CPU80Aは、検査情報に基づいて血液試料102の測定モードをファストモードか否かを判定する。例えば、検査情報が診療科情報である場合には、データベース88に記憶された診療科情報と測定モードを紐づけた情報に基づいて血液試料102の測定モードをファストモードか否か判定する。血液試料102の測定モードをファストモードと判定した場合は、ステップS304へ移行する。一方、血液試料102の測定モードをファストモードではないと判定した場合は、ステップS306へ移行する。
【0101】
ステップS304では、CPU80Aは、外部通信部82を通して第一分析装置30Aへファストモードで測定する指示を送信する。
【0102】
ステップS306では、CPU80Aは、外部通信部82を通して第一分析装置30Aへファストモードで測定しない指示、言い換えると分析しない指示を送信する。
【0103】
このようにして、本実施形態では、管理装置80から第一分析装置30Aへ選択した測定モードで測定するよう指示が送信される。
【0104】
また、
図7には、管理装置80のCPU80Aで実行される検体測定モード選択処理のフローチャートの一例を示している。
【0105】
第二分析装置30Bから血液試料102に関するバーコード情報を受信すると、CPU80Aは、不揮発性メモリ80Dに記憶された検体測定モード選択プログラムを読み込んで実行する。
【0106】
ステップS350では、CPU80Aは、血液試料102に関するバーコード情報からデータベース88にアクセスし、バーコード情報に対応する検査情報(一例として診療科情報)を特定する。
【0107】
ステップS352では、CPU80Aは、検査情報に基づいて血液試料102の測定モードをバリアントモードか否かを判定する。例えば、検査情報が診療科情報である場合には、データベース88に記憶された診療科情報と測定モードを紐づけた情報に基づいて血液試料102の測定モードをバリアントトモードか否か判定する。血液試料102の測定モードをバリアントモードと判定した場合は、ステップS354へ移行する。一方、血液試料102の測定モードをバリアントモードではないと判定した場合は、ステップS356へ移行する。
【0108】
ステップS354では、CPU80Aは、外部通信部82を通して第二分析装置30Bへバリアントモードで測定する指示を送信する。
【0109】
ステップS356では、CPU80Aは、外部通信部82を通して第一分析装置30Aへバリアントモードで測定しない指示、言い換えると分析しない指示を送信する。
【0110】
このようにして、本実施形態では、管理装置80から第二分析装置30Bへ選択した測定モードで測定するよう指示が送信される。
【0111】
次に本実施形態の作用について説明する。
医療機関においては、血中のヘモグロビン分析などの検体検査は、種々の分析装置が設置された検体分析を専門に行う臨床検査科において実施される場合がある。そのような医療機関においては、検査依頼元となる各診療科(内科、糖尿病内科、健診科など)で、検査内容(測定項目)が定まっている場合がある。すなわち、血液中のヘモグロビン分析においては、ファストモードで測定するか、バリアントモードで測定するかは診療科(来院する患者の種類)によって定まっている場合がある。例えば、糖尿病内科では、糖尿病の診断・治療において、HbA1cの測定値が重要である。しかし、患者が変異ヘモグロビンを有している場合には、HbA1cの測定結果が影響を受ける可能性があるため、HbA1cと変異ヘモグロビンを分離し、HbA1cの測定値が影響を受けにくいバリアントモードで測定を行うことが多い。一方、健診科では、HbA1cの測定値が必要とされるため、スクリーニング検査として、ファストモードで測定を行い、ファストモードでの測定結果から、バリアントモードでの詳細な測定が必要となった場合には、専門科で再検査を行うため、ファストモードでの使用のみとなることが多い。そして、検体を検査する検査室には、検査内容の異なる検体が混在して届く。検査室の作業従事者は、検体の検査内容に応じて分析装置の測定モードを設定している。このように検体の検査内容に応じて測定モードを設定する場合、設定間違いが起きないよう注意を払う必要があり、作業従事者の負担が増大する傾向がある。
これに対して本実施形態の分析システム20では、検査内容の異なる検体が混在していても、検体に設定される検査情報に基づいて、管理装置80が検体の測定モードを自動で選択し、選択された測定モードに対応するそれぞれの分析装置30で検体を分析させる、すなわち、検査情報に含まれる診療科情報が糖尿病内科である場合にはバリアントモードを選択し、分析させ、又は診療科情報が健診科である場合にはファストモードを選択し、分析させるため、例えば、検査作業従事者が検体の検査内容に応じて測定モードを設定して分析させる場合と比べて、検査作業従事者の負担の増大が抑制される。なお、検査情報は、診療科情報に限定されず、検体の測定項目に関する情報や測定モードを指定する情報等、管理装置80において測定モードを自動で選択するために有用な情報であってもよい。
【0112】
また、上記分析システム20では、第一分析装置30Aにセットされた検体は、管理装置80がバリアントモードを選択した場合、第一分析装置30Aから第二分析装置30Bへ搬送された後で分析される。このため、例えば、検査作業従事者が各測定モードに設定された分析装置にそれぞれ検体をセットする場合と比べて、検査作業従事者の負担の増大が抑制される。
【0113】
また、上記分析システム20では、検体がセットされる第一分析装置30Aをファストモードに設定していることから、例えば、第一分析装置30Aをバリアントモードに設定する場合と比べて、検体の検査効率が向上する。
【0114】
前述の実施形態では、管理装置80と2つの分析装置30がネットワーク回線を通じて接続されているが、本開示はこの構成に限定されない。一方の分析装置30の制御部70が管理装置80の機能を備えてもよい。この場合、分析装置30にデータベース88を設けることが好ましい。
【0115】
前述の実施形態のファストモードでは、A液→B液→A液の順序で分析カラム44へ送液し、バリアントモードでは、A液→C液→A液→B液→A液の順序で分析カラム44へ送液しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、ファストモードでは、バリアントモードよりも溶出力の高い溶媒を用いてもよい。これにより、ファストモードによる測定時間を短縮することができる。
また、例えば、ファストモードでは、バリアントモードよりも溶媒の送液スピードを速くしてもよい。具体的には、ファストモード実行時には、バリアントモード実行時と比べて、送液ポンプ48の回転を速めることで送液スピードを速くしてもよい。これにより、ファストモードによる測定時間を短縮することができる。
また、例えば、ファストモードでは、対象となる成分を検出した場合、溶離液を溶出力の高い溶離液に切り替えて測定を継続し、バリアントモードでは、対象となる成分を検出しても、溶離液を切り替えずに測定を継続してもよい。これにより、ファストモードによる測定時間を短縮することができる。
【0116】
前述の実施形態では、高速液体クロマトグラフィを利用する分析装置30を管理装置80で管理しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、血液中の細胞種を計測する血球計測装置を管理装置80で管理してもよい。すなわち、本開示の分析システムは、血液中の細胞種を計測する装置に適用してもよい。なお、血球計測装置の第一の測定モードでは、測定項目として血液中の細胞種のうち、通常の細胞種のみを測定し、第二の測定モードでは、測定項目として血液中の細胞種のうち、通常の細胞種に加え、異常細胞種をさらに測定する。そのため第二の測定モードでは、第一の測定モードに比べ、測定する細胞種の増加に伴い、検体の測定時間が長くなっている。すなわち、検査情報が測定項目に関する情報に基づく場合であって、例えば、通常細胞種が指定されている場合には、第一の測定モードを選択し、異常細胞種が指定されている場合には、第二の測定モードを選択する。
【0117】
前述の実施形態では、管理装置80は、血液試料102の測定モードの選択を実行したが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、管理装置80は、第一分析装置30Aのファストモードにおける血液試料102の測定結果に基づいて、血液試料102を第二分析装置30Bのバリアントモードで分析させるか否かを判定する判定部を有してもよい。なお、ファストモードの測定結果からバリアントモードを行うための判定基準は、例えば、患者が過去にバリアントモードで測定した記録がない場合、HbE検出、HbD検出、HbC検出、HbS検出、重複ピーク、A1c保持時間、#C異常高値、#Cテール異常、HbA0ボトム異常、HbA0保持時間異常、保持時間異常、ピーク数異常、HbA1cテール異常、HbA1cピーク検出不能、HbA1c保持時間変動、HbF異常高値といった、検体に由来する事象が発生した場合等が挙げられる。
【0118】
また、前述の実施形態では、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bが検体搬送方向に隣接しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、
図8に示されるように、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bとの間に他の装置が配置されてもよい。
図8に示す例では、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bとの間にグルコース測定装置22が配置されている。この場合、グルコース測定装置22を介して第一分析装置30Aと第二分析装置30Bが連結される。すなわち、第一分析装置30Aとグルコース測定装置22をつなぎラック104を搬送する搬送部62Aと、グルコース測定装置22と第二分析装置30Bをつなぎラック104を搬送する搬送部62Bと、グルコース測定装置22が有する搬送装置(図示省略)によって搬送部62が構成される。
【0119】
また、前述の実施形態では、第一分析装置30Aに検体がセットされるが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、
図9に示されるように、第一分析装置30Aよりも検体搬送方向上流にグルコース測定装置22が配置され、グルコース測定装置22に検体がセットされてもよい。
【0120】
また、前述の実施形態では、第一分析装置30Aと第二分析装置30Bの双方でバーコード情報を取得しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第一分析装置30Aでバーコード情報を取得し、第二分析装置30Bではバーコード情報を取得しない構成(バーコードを読み取らない構成)としてもよい。その場合、CPU80Aは第一分析装置30Aで取得したバーコード情報に基づき、第二分析装置30Bに対し、バリアントモードでの血液試料102の分析の要否の指示を送信する。
【0121】
また前述の実施形態では、検体から検査情報を読み取るための情報読取装置としてのバーコードリーダ74を第一分析装置30Aが備える構成としているが、本開示はこの構成に限定されない。情報読取装置としてのバーコードリーダを第一分析装置30Aよりも検体搬送方向上流に設けてもよい。なお、検体搬送方向上流にバーコードリーダを設けた場合、第一分析装置30Aからバーコードリーダ74を外してもよいし、第一分析装置30Aにバーコードリーダ74を備えさせたままとしてもよい。さらに、第一分析装置30Aよりも検体搬送方向上流にグルコース測定装置22を配置して、グルコース測定装置22が備えるバーコードリーダを第一分析装置30Aよりも検体搬送方向上流に設けられるバーコードリーダとしてもよい。
【0122】
さらに、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0123】
以下次の付記を開示する。
(付記1)
検体がセットされ、セットされた検体の測定モードとして第一の測定モードと、前記第一の測定モードよりも検体の測定時間が長い第二の測定モードとを有し、前記第一の測定モードが設定される第一分析装置と、
前記第一分析装置よりも検体の搬送方向下流に配置され、前記第一の測定モードと前記第二の測定モードとを有し、前記第二の測定モードが設定される第二分析装置と、
前記第一分析装置と前記第二分析装置とをつなぎ、前記第一分析装置から前記第二分析装置へ検体を搬送する搬送部と、
前記検体に設定される検査内容に関する情報に基づいて、前記検体の測定モードを選択し、前記第一の測定モードを選択した場合には前記検体を前記第一分析装置に分析させ、前記第二の測定モードを選択した場合には前記搬送部を用いて前記検体を前記第一分析装置から前記第二分析装置へ搬送させた後で前記第二分析装置に分析させる管理部と、
を有する分析システム。
【0124】
(付記2)
前記検体から前記検査内容に関する情報を読み取るための情報読取装置が前記第一分析装置よりも検体の搬送方向上流に設けられている、付記1に記載の分析システム。
【0125】
(付記3)
前記第一分析装置は、セットされた前記検体から前記検査内容に関する情報を読み取るための情報読取装置を備える、付記1に記載の分析システム。
【0126】
(付記4)
前記検査内容に関する情報には、前記検体の測定項目に関する情報、前記検体の検査を依頼した診療科の情報、又は前記検体の測定モードを指定する情報のいずれかが含まれる、付記1~付記3のいずれか1項に記載の分析システム。
【0127】
(付記5)
前記第一の測定モードにおける前記検体の測定結果に基づいて、前記検体を前記第二の測定モードで分析させるか否かを判定する判定部を有する、付記1~付記4のいずれか1項に記載の分析システム。
【0128】
(付記6)
前記第一分析装置と前記第二分析装置は、それぞれ液体クロマトグラフィ法により前記検体を分析する、付記1~付記5のいずれか1項に記載の分析システム。
【0129】
(付記7)
前記第一の測定モードでは、前記検体中のヘモグロビンA1cを測定し、
前記第二の測定モードでは、前記検体中の変異ヘモグロビンを測定する、付記6に記載の分析システム。
【0130】
(付記8)
前記第一の測定モードでは、前記第二の測定モードよりも溶出力の高い溶媒を用いる、付記6又は付記7に記載の分析システム。
【0131】
(付記9)
前記第一の測定モードでは、前記第二の測定モードよりも溶媒の送液スピードを速くする、付記6~付記8のいずれか1項に記載の分析システム。
【0132】
(付記10)
前記第一の測定モードでは、対象となる成分を検出した場合、溶媒を溶出力の高い溶媒に切り替えて測定を継続し、
前記第二の測定モードでは、対象となる成分を検出しても、溶媒を切り替えずに測定を継続する、付記6~付記9のいずれか1項に記載の分析システム。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示は、液体クロマトグラフィ装置によるヘモグロビン分析に利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
20 分析システム
30A 第一分析装置
30B 第二分析装置
62 搬送部
80 管理装置(管理部の一例)
102 血液試料(検体の一例)