(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165961
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/032 20160101AFI20241121BHJP
【FI】
H02P29/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082582
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】391008515
【氏名又は名称】株式会社アイエイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 幸司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍馬
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501DD07
5H501HB07
5H501JJ04
5H501JJ18
5H501JJ30
5H501KK05
5H501LL22
5H501LL27
5H501LL52
5H501MM02
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】モータの種別などにかかわらずスイッチング素子の短絡を検出する。
【解決手段】制御装置は、ユニポーラ型のモータを駆動する複数のスイッチング素子のそれぞれに流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部が検出した電流である検出電流と比較することで過電流状態を検出する第1閾値をハードウェア構成で設定する第1閾値設定部と、第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する第2閾値設定部と、第2閾値と検出電流との比較結果に応じて、複数の前記スイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニポーラ型のモータを駆動する複数のスイッチング素子のそれぞれに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した電流である検出電流と比較することで過電流状態を検出する第1閾値をハードウェア構成で設定する第1閾値設定部と、
前記第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する第2閾値設定部と、
前記第2閾値と前記検出電流との比較結果に応じて、複数の前記スイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記短絡検出部は、前記電流検出部が検出可能な電流の上限を示す上限電流と前記モータの巻線抵抗及び電源電圧に基づき前記モータに流れることが想定される電流である想定電流との何れか小さい方に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が超えた場合、前記短絡を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記短絡検出部は、前記第2閾値を、前記検出電流が超えた状態が特定時間継続した場合、前記短絡を検出する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記短絡検出部は、前記モータの駆動が禁止されている状態で、前記モータの回転速度が速度規定値以下のときに、前記モータの種別に応じて定まる定格電流に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が超えた場合、前記短絡を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電流検出部は、前記モータの各相について、対応するスイッチング素子に流れる電流とその逆相の電流との差を前記検出電流として検出し、
前記短絡検出部は、前記モータの電流指令が前記モータの種別に応じて定まる電流規定値よりも大きいときに、前記モータの種別に応じて定まる定格電流から特定の値だけ低い電流に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が下回る場合、前記短絡を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記短絡検出部は、前記第2閾値を、前記検出電流が下回る状態が特定時間継続した場合、前記短絡を検出する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記モータの駆動源から前記モータに供給される電流に基づき、前記駆動源から前記モータに供給される電力である駆動源電力を推定する駆動源電力推定部と、
前記検出電流に基づき、前記モータに前記モータの駆動に使用される電力であるモータ応答電力を推定するモータ応答電力推定部と、
を備え、
前記短絡検出部は、前記駆動源電力と前記モータ応答電力との差が電力閾値以上のとき、前記短絡を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記モータの駆動源から前記モータに供給される電流に基づき、前記駆動源から前記モータに供給される電力である駆動源電力を推定する駆動源電力推定部と、
前記モータの電流指令に基づき、前記モータの駆動に要する電力であるモータ指令電力を推定するモータ指令電力推定部と、
を備え、
前記短絡検出部は、前記駆動源電力と前記モータ指令電力との差が電力閾値以上のとき、前記短絡を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユニポーラ型のモータを駆動する技術を開示している。特許文献2は、モータを駆動するスイッチング素子の短絡を検出する技術を開示している。特許文献2に開示される従来技術は、電流検出部で検出した電流が所定値を超えた場合、過電流が流れたものとしてモータを停止させる(例えば特許文献2の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4652017号公報
【特許文献2】特開2014-143782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来技術では、電流をハードウェア構成で設定された所定値(固定値)である閾値と比較する場合がある。この場合、ユニポーラ型のモータの種別、動作状態などによっては、スイッチング素子が短絡したときに、モータコイル経由で流れる短絡電流を検出することができない場合がある。つまり、ユニポーラ型のモータでは、1つの相に対応するモータコイルに1つのスイッチング素子が接続されているため、短絡電流は、モータコイルを経由して流れることで、モータコイルの抵抗成分により比較的小さな値となるおそれがある。このような短絡電流は、モータコイルを経由せずに流れる大きな値の短絡電流が流れる回路、例えばバイポーラ型モータ用のブリッジ回路におけるスイッチング素子の短絡、又は、モータと制御装置とを接続するケーブルの短絡若しくはモータの焼損を想定して設定される閾値では、検出することができない可能性がある。またモータの種別、動作状態などによっては、検出される短絡電流の値が変わるため、閾値を小さな値に設定しただけでは、短絡が生じていないにもかかわらず、短絡を誤検出し得る。このように従来技術は、モータを駆動するスイッチング素子の短絡を検出する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、モータの種別などにかかわらずスイッチング素子の短絡を検出することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の制御装置は、ユニポーラ型のモータを駆動する複数のスイッチング素子のそれぞれに流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部が検出した電流である検出電流と比較することで過電流状態を検出する第1閾値をハードウェア構成で設定する第1閾値設定部と、前記第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する第2閾値設定部と、前記第2閾値と前記検出電流との比較結果に応じて、前記複数のスイッチング素子の短絡の発生を検出する短絡検出部と、を備える。
【0007】
本開示によれば、モータの種別などにかかわらずスイッチング素子の短絡を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。
【
図2】過電流検出部の構成を説明するための図である。
【
図3】過電流検出部の機能を説明するための図である。
【
図4】A相電流変換部の機能を説明するための図である。
【
図5】A相電流変換部の構成を説明するための図である。
【
図6】しゃ断指令生成部の機能ブロックを示す図である。
【
図7】電流指令変換部の機能を説明するための図である。
【
図8】過電流比較部の機能ブロックを示す図である。
【
図9】スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
【
図10】スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
【
図11】スイッチング素子が短絡していない正常時に流れる電流について説明するための図である。
【
図12】スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
【
図13】第1実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図14】第1実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【
図15】本開示の第2実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。
【
図16】第2実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。
【
図17】サーボオフ時過電流監視部の構成例を示す図である。
【
図18】第2実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図19】第2実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【
図20】本開示の第3実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。
【
図21】第3実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。
【
図22】電流指令応答乖離監視部の構成例を示す図である。
【
図23】第3実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図24】第3実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【
図25】スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
【
図26】スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
【
図27】本開示の第4実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。
【
図28】第4実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。
【
図30】第4実施形態にかかる制御装置の動作を説明するための第1フローチャートである。
【
図31】第4実施形態にかかる制御装置の動作を説明するための第2フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。制御装置100-1は、駆動源300からの電力でモータ200の回転を制御する装置である。
【0011】
駆動源300は、制御装置100-1の外部に設けられている直流電源と解釈してよい。モータ200は、ユニポーラ型のモータと解釈してよい。具体的には、モータ200は、バイファイラ巻きされた一対のコイルを2組有する2相ステッピングモータと解釈してよい。
【0012】
一対のコイルの一方は、A相コイル及び/A相(Abar相)コイルと解釈してよい。一対のコイルの他方は、B相コイル及び/B相コイルと解釈してよい。A相コイル及び/A相コイル、並びにB相コイル及び/B相コイルは、モータ200の巻線であるモータコイル201と解釈してよい。
【0013】
本実施形態では、説明を簡単化するためA相コイル及び/A相コイル以外のコイルに流れる電流を制御する機能に関する説明を省略する。
【0014】
制御装置100-1は、駆動源しゃ断部1、A相電流制御部2、A相駆動FET(Field Effect Transistor)3、/A相駆動FET4、電流検出部5、過電流検出部6、A相電流変換部7、及びしゃ断指令生成部8-1を備える。
【0015】
駆動源しゃ断部1は、しゃ断指令生成部8-1から出力される駆動源しゃ断指令を入力した場合、駆動源300とモータ200との接続をしゃ断する。具体的には、駆動源しゃ断部1は、駆動源しゃ断指令を入力していない場合、駆動源300とモータ200との電気的な接続を維持することで、駆動源300からモータ200への電力の供給を継続する。駆動源しゃ断部1は、駆動源しゃ断部1を入力した場合、即座に駆動源300とモータ200との電気的な接続をしゃ断することで、駆動源300からモータ200への電力の供給を停止する。しゃ断指令生成部8-1の構成の詳細は後述する。
【0016】
A相電流制御部2は、A相駆動FET3及び/A相駆動FET4を駆動する指令を生成する。具体的には、A相電流制御部2は、A相電流変換部7からのA相電流応答が、しゃ断指令生成部8-1からのA相電流指令に追従するよう、A相駆動FET3を駆動する指令であるA相駆動指令を生成し、A相駆動FET3に入力する。A相駆動指令は、ハイレベル又はローレベルの値を示す信号と解釈してよい。同様に、A相電流制御部2は、/A相駆動FET4を駆動する指令である/A相駆動指令を生成して、/A相駆動FET4に入力する。
【0017】
A相駆動FET3は、モータ200を駆動するスイッチング素子と解釈してよい。A相駆動FET3は、ドレインがA相コイルに接続され、ソースがA相電流検出部51に接続され、ゲートがA相電流制御部2に接続されているトランジスタと解釈してよい。A相駆動FET3は、A相駆動指令に基づき、A相コイルに流れる電流を制御する。
【0018】
A相駆動FET3が短絡した場合、A相駆動指令の有無、つまり、A相駆動指令がハイレベルの値を示すかローレベルの値を示すかにかかわらず、A相駆動FET3は常時通電した状態、つまりオン状態になる。
【0019】
/A相駆動FET4は、モータ200を駆動するスイッチング素子と解釈してよい。/A相駆動FET4は、ドレインが/A相コイルに接続され、ソースが/A相電流検出部52に接続され、ゲートが/A相電流制御部2に接続されているトランジスタと解釈してよい。/A相駆動FET4は、/A相駆動指令に基づき、/A相コイルに流れる電流を制御する。
【0020】
A相駆動FET3と同様に、/A相駆動FET4が短絡した場合、/A相駆動指令の有無にかかわらず、/A相駆動FET4はオン状態になる。
【0021】
なお、制御装置100-1は、FETを用いているが、制御装置100-1はFET以外のトランジスタを用いてもよい。
【0022】
電流検出部5は、モータ200を駆動する複数のスイッチング素子のそれぞれに流れる電流を検出し、検出した電流である検出電流に対応する電圧を発生する。
【0023】
具体的には、電流検出部5は、A相電流検出部51及び/A相電流検出部52を備える。A相電流検出部51は、A相駆動FET3に流れる電流を検出し、検出した電流に相当する電圧をA相電流変換部7及び過電流検出部6に入力する。A相電流検出部51は、A相駆動FET3に流れる電流を検出するための小さい抵抗値のシャント抵抗器と解釈してよい。
【0024】
/A相電流検出部52は、/A相駆動FET4に流れる電流を検出し、検出した電流に相当する電圧をA相電流変換部7及び過電流検出部6に入力する。/A相電流検出部52は、/A相駆動FET4に流れる電流を検出するための小さい抵抗値のシャント抵抗器と解釈してよい。
【0025】
過電流検出部6は、電流検出部5で検出された電流と、ハードウェア構成で設定される閾値である第1閾値とを比較し、電流が第1閾値を超えた場合、過電流検出信号を出力する。
図2及び
図3を参照して過電流検出部6の構成を説明する。
【0026】
図2は、過電流検出部の構成を説明するための図である。
図2に示すように、過電流検出部6は、コンパレータ61及び第1閾値設定部62を備える。
【0027】
第1閾値設定部62は、直列接続された抵抗R1及び抵抗R2を含む分圧回路と解釈してよい。第1閾値設定部62は、電源電圧を分圧し、分圧した電圧である第1閾値を、コンパレータ61のプラス入力端子に印加する。第1閾値は、モータ200と制御装置100-1とを接続する図示省略のケーブルの短絡及びモータ200のレアショート(焼損)を検出するためにハードウェア構成で設定される閾値と解釈してよい。
【0028】
コンパレータ61のプラス入力端子は、第1閾値設定部62で設定された第1閾値を入力する。コンパレータ61のマイナス入力端子は、電流検出部5で検出された電流に相当する電圧を入力する。コンパレータ61のマイナス入力端子に入力される電圧について、
図3を参照して具体的に説明する。
【0029】
図3は、過電流検出部の機能を説明するための図である。
図3の左側には、横軸を、A相検出電流応答又は/A相検出電流応答とし、縦軸を、これらに対応する電圧とするグラフが示されている。A相検出電流応答は、
図1に示すA相電流検出部51で検出された電流に相当する電圧と解釈してよい。/A相検出電流応答は、
図1に示す/A相電流検出部52で検出された電流に相当する電圧と解釈してよい。コンパレータ61のマイナス入力端子は、これらのA相検出電流応答及び/A相検出電流応答を合算した電流の絶対値を入力する。
【0030】
図3の右側には、横軸を、A相検出電流応答及び/A相検出電流応答を合算した電流であるA相電流応答とし、縦軸を、A相電流応答に対応する電圧とするグラフが示されている。コンパレータ61は、このようにして合算したA相電流応答を第1閾値と比較することで、電流検出部5で検出された電流が第1閾値を超えているか否かを判定する。当該電流が第1閾値を超えていない場合、コンパレータ61は、ローレベルの信号を出力する。当該電流が第1閾値を超えた場合、コンパレータ61は、ハイレベルの信号である過電流検出信号を出力する。
【0031】
図1に戻り、A相電流変換部7は、電流検出部5で検出された電流に相当する電圧を入力し、A相電流応答を生成する。
図4を参照してA相電流変換部7の機能を具体的に説明する。
【0032】
図4は、A相電流変換部の機能を説明するための図である。
図4の左側には、横軸をA相検出電流応答又は/A相検出電流応答とし、縦軸をこれらに対応する電圧とするグラフが示されている。
図4の右側には、横軸をA相電流応答とし、縦軸をA相電流応答に対応する電圧とするグラフが示されている。
【0033】
図4に示すように、A相電流変換部7は、A相検出電流応答及び/A相検出電流応答のそれぞれに対応する電圧を、これらの電流応答のゼロ部分をAD(Analog to Digital)変換の中心電圧として、縦軸方向にオフセットさせる。中心電圧は例えば1.65Vである。A相電流変換部7は、中心電圧に対してA相の検出電流がプラス側になり、中心電圧に対して/A相の検出電流がマイナス側になるように、A相電流応答を生成する。
図5を参照して、A相電流変換部7の構成を具体的に説明する。
【0034】
図5は、A相電流変換部の構成を説明するための図である。
図5に示すように、A相電流変換部7は、例えば、オペアンプ71を備える。オペアンプ71のプラス入力端子はA相電流検出部51で検出された電流に対応する電圧を入力し、オペアンプ71のマイナス入力端子は/A相電流検出部52で検出された電流に対応する電圧を入力する。オペアンプ71は、これらの電圧のゼロ部分をAD変換の中心電圧(例えば前述した1.65V)として、A相及び/A相の電圧が相殺された場合、つまりA相応答電流及び/A相応答電流の絶対値が等しい場合、A相電流応答をゼロとして出力する。オペアンプ71は、A相検出電流応答及び/A相検出電流応答の差であるA相電流応答を出力する。ただし、A相電流変換部7は、オペアンプ71を備えたものに限るものではなく、A相電流応答としてA相検出電流応答及び/A相検出電流応答の差を出力する電流センサやソフトウェアで計算するものなどであってもよい。
【0035】
図1に戻り、しゃ断指令生成部8-1は、過電流検出信号、及びA相電流応答に基づき、駆動源しゃ断指令を生成する。
図6を参照して、しゃ断指令生成部8-1の構成を具体的に説明する。
【0036】
図6は、しゃ断指令生成部の機能ブロックを示す図である。しゃ断指令生成部8-1は、速度制御部10、電流指令変換部11、A相電流指令操作部12、B相電流指令操作部13、A相電流認識部14、B相電流認識部15、過電流比較部16、過電流検出信号認識部17、過電流信号処理部18、エラー発報部19、及び駆動源しゃ断操作部20を備える。
【0037】
速度制御部10は、モータ200に取り付けられた図示省略のエンコーダからの信号に基づいて得られる速度応答が速度指令に追従するように電流指令を生成する。電流指令変換部11は、ベクトル制御により、電流指令からA相電流指令及びB相電流指令を生成する。
図7は、電流指令変換部の機能を説明するための図である。
図7には、横軸をA相電流指令とし、縦軸をB相電流指令とするグラフが示されている。電流指令変換部11は、電流指令を回転座標変換することで、電流指令をA相と位相がA相の位相と90°異なるB相とに分割した、A相電流指令及びB相電流指令を生成する。
【0038】
図6に戻り、A相電流指令操作部12は、電流指令変換部11からのデジタル値のA相電流指令を、DA(Digital to Analog)変換器でアナログ値に変換する。
【0039】
B相電流指令操作部13は、電流指令変換部11からのデジタル値のB相電流指令を、DA変換器でアナログ値に変換する。
【0040】
A相電流認識部14は、アナログ値のA相電流応答を、AD変換器でデジタル値に変換する。B相電流認識部15は、アナログ値のB相電流応答を、AD変換器でデジタル値に変換する。
【0041】
過電流比較部16は、過大な電流を検出したときエラー通知を行う。
図8は、過電流比較部の機能ブロックを示す図である。過電流比較部16は、第2閾値設定部21-1、短絡検出部22-1、及びエラー通知部23を備える。
【0042】
第2閾値設定部21-1は、前述したハードウェア構成で設定する第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する。第2閾値は、第1閾値と値が異なる閾値と解釈してよい。
【0043】
具体的には、第2閾値設定部21-1は、上限電流と想定電流の何れか小さい方を、第2閾値に設定してよい。上限電流は、
図1に示す電流検出部5が検出可能な電流の上限を示す電流と解釈してよい。想定電流は、モータ200の巻線抵抗及び電源電圧に基づきモータ200に流れることが想定される電流と解釈してよい。具体的には、想定電流をI、駆動電圧をV[V]、モータ200の巻線抵抗をR[Ω]とした場合、想定電流は、I=V÷Rにより算出される電流と解釈してよい。モータ200の巻線抵抗の値は、仕様値(公称値)と解釈してよく、仕様値(公称値)そのものではなくケーブル抵抗、±10%の公差などを考慮した値と解釈してもよい。そのため、第2閾値設定部21-1は、上限電流を記憶しておくと共に、モータ200の種別で決まる巻線抵抗の値及び電源電圧の値を記憶しておく。そして、第2閾値設定部21-1は、記憶した巻線抵抗の値及び電源電圧の値に基づき、制御装置100-1に接続されているモータ200の種別に応じた想定電流を算出する。
【0044】
ここで、上限電流と想定電流の何れか小さい方を選択する理由は以下の通りである。すなわち、短絡発生時の電流に関しては詳細を後述するが、A相駆動FET3等に短絡が発生して電流が流れても巻線抵抗の値によっては比較的小さい電流が流れることがあり、電流検出部5の検出能力(回路構成)で決まる上限電流を超えない場合がある。そのため、第2閾値として上限電流を設定するだけでは、短絡を検出できない場合がある。また、モータ200の巻線抵抗の値によっては想定電流が上限電流よりも比較的大きく、想定電流のみを第2閾値として設定するだけでは短絡を検出できない場合もある。したがって、上限電流と想定電流の何れか小さい方を第2閾値として選択することでより正確に短絡を検出させることが可能になる。
【0045】
短絡検出部22-1は、上限電流と想定電流の何れか小さい方に設定された第2閾値を、検出電流が超えた場合、短絡を検出し、短絡を検出したことを示す検出情報をエラー通知部23に入力する。短絡検出部22-1は、第2閾値と検出電流との比較結果に応じて、複数のスイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部と解釈してよい。
【0046】
エラー通知部23は、検出情報を入力した場合、過大な電流を検出したことを示すエラー通知を
図6に示すエラー発報部19に入力する。
【0047】
図6に戻り、過電流検出信号認識部17は、
図1に示す過電流検出部6からの過電流検出信号の状態を認識する。具体的には、過電流検出信号認識部17は、過電流検出部6からの過電流検出信号がローレベルであるかハイレベルであるかを認識する。過電流検出信号がハイレベルである場合、過電流検出信号認識部17は、
図1に示す電流検出部5で検出された電流が過大であること、つまり、前述したハードウェア構成で設定する第1閾値を超えたことを示すデジタル値の過電流検出信号を生成する。
【0048】
過電流信号処理部18は、過電流検出信号認識部17からの過電流検出信号を入力した場合、過大な電流を検出したことを示すエラー通知を、エラー発報部19に入力する。
【0049】
エラー発報部19は、過電流比較部16及び過電流信号処理部18の何れかのエラー通知を入力した場合、エラー発報を行う。具体的には、エラー発報部19は、
図1に示す駆動源300をしゃ断するための指令を生成し、駆動源しゃ断操作部20に入力する。エラー発報部19は、エラー通知を入力していない場合には、当該指令の生成を停止する。
【0050】
駆動源しゃ断操作部20は、エラー発報部19からの指令を入力した場合、駆動源しゃ断指令を生成して、
図1に示す駆動源しゃ断部1に入力する。
【0051】
次に
図9から
図14を参照して第1実施形態にかかる制御装置の動作を説明する。
図9、
図10、
図12、
図13及び
図14は、スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
図11は、スイッチング素子が短絡していない正常時に流れる電流について説明するための図である。
【0052】
(バイポーラ型:正常時)
図9の上側には、バイポーラ型モータに接続されるスイッチング素子が示されている。バイポーラ型モータでは、少なくとも4つのスイッチング素子がバイポーラ型モータ用のブリッジ回路として利用されており、1つのモータコイルに複数のスイッチング素子が接続される。
【0053】
当該ブリッジ回路では、例えば、A相ハイサイド駆動FET及び/A相ローサイド駆動FETの第1スイッチング素子対と、/A相ハイサイド駆動FET及びA相ローサイド駆動FETの第2スイッチング素子対とが、相補的にオンオフ動作を繰り返す。なお、当該ブリッジ回路の構成例は一例であり、バイポーラ型モータには当該ブリッジ回路以外の回路を適用してもよい。
【0054】
これにより、A相コイルには、特定方向と、当該方向と逆方向とに、交互に電流が流れる。矢印は、特定方向に流れる電流を表す。具体的には、第1スイッチング素子対がオン、かつ、第2スイッチング素子対がオフになることで、A相コイルには特定方向に電流が流れる。当該電流は、A相コイルの巻線抵抗及び電源電圧に基づき規定される値と略等しい値となる。
【0055】
(バイポーラ型:短絡時)
図9の下側には、A相ローサイド駆動FETは正常であるがA相ハイサイド駆動FETが短絡した場合に流れる電流が示されている。A相ハイサイド駆動FETが短絡した状態で、A相ローサイド駆動FETがオンになると、A相ハイサイド駆動FET及びA相ローサイド駆動FETが導通状態になる。この場合、駆動源300からの電流は、A相コイルのインピーダンスよりも低いインピーダンスの経路、つまりA相ハイサイド駆動FET及びA相ローサイド駆動FETを流れる。当該電流は、A相コイルの巻線抵抗で減衰しないため、
図9の上側に示す電流に比べて大きな値になる。当該電流は、
図1に示す過電流検出部6に設定される第1閾値、つまり、モータ200と制御装置100-1とを接続するケーブルの短絡又はモータ200の焼損を想定してハードウェア構成で設定される閾値で検出することが可能である。
【0056】
なお、A相ハイサイド駆動FETに代えて、A相ローサイド駆動FETが短絡した場合において、A相ハイサイド駆動FETがオンになったときも同様の電流が検出される。
【0057】
図9では、バイポーラ型のモータの駆動時に流れる電流について説明したが、以下では、ユニポーラ型のモータ200の駆動時に流れる電流を、
図10から
図14を参照して説明する。
【0058】
(ユニポーラ型:A相駆動FETオンオフ動作、かつ、/A相駆動FETオフ)
図10の上側には、ユニポーラ型モータに接続されるスイッチング素子が示されている。ユニポーラ型モータでは、1つのモータコイルに1つのスイッチング素子が接続される。具体的には、A相コイルにA相駆動FET3が接続され、/A相コイルに/A相駆動FET4が接続される。矢印は、/A相駆動FET4がオフ状態で、A相駆動FET3が短絡せずにオンオフ動作した場合に、A相コイルに流れる電流を表す。当該電流は、A相コイルに対して特定の方向のみに流れる。
図11を参照して当該電流の様子を詳細に説明する。
【0059】
図11の上側には、
図10の上側に示すA相駆動FET3がオンオフ動作時に流れるA相電流、/A相電流、及びA相電流指令が示されている。縦軸は電流、横軸は時間を表す。A相電流指令は太実線で示され、A相電流は普通実線で示され、さらに/A相電流は点線で示されている。
図11の下側には、A相駆動FET3の状態、及び/A相駆動FET4の状態が示されている。
【0060】
時刻t1で、/A相駆動FET4がオフの状態で、A相駆動FET3がオフからオンになると、A相電流は、A相電流指令を目標値として、増加し始める。A相電流は、A相電流応答と解釈してよい。A相電流は、A相コイルのインダクタンス成分により流れが妨げられるため、緩やかに上昇する。なお、/A相駆動FET4がオフの状態を維持しているため、/A相電流は0[A]である。
【0061】
時刻t1から一定時間経過後の時刻t2で、A相電流がA相電流指令に達すると、A相電流がA相電流指令で規定される電流を維持するように、A相駆動FET3がスイッチング動作、つまりオンオフ動作を開始する。
【0062】
時刻t2から一定時間経過後の時刻t3で、A相電流指令が小さくなる方向に変化すると、A相駆動FET3がスイッチング動作を停止し、オフ状態になる。A相コイルの逆起電圧とスイッチング素子のインピーダンスにより、A相コイルが電流の流れを維持しようとするため、A相電流は、緩やかに下降する。
【0063】
時刻t3から一定時間経過後の時刻t4で、A相電流がA相電流指令を下回ると、A相電流指令で規定されるA相電流を維持するように、A相駆動FET3がスイッチング動作を再開する。
【0064】
時刻t4から一定時間経過後の時刻t5で、A相電流指令がさらに小さくなる方向に変化すると、A相駆動FET3がスイッチング動作を停止する。
【0065】
(ユニポーラ型:A相駆動FET短絡、かつ、/A相駆動FETオフ)
図10に戻り、
図10の下側には、A相駆動FET3がオンオフ動作中に短絡した場合に流れる電流が示されている。この場合、A相コイルがA相駆動FET3を介して接地された状態となるため、A相コイルを介して流れる電流は、前述した
図9の下側に示す電流、つまりA相コイルを介さずに流れる電流と比較して、小さい値になる。これは、モータ200の巻線抵抗、つまりA相コイルの抵抗成分で、電流が減衰するためである。
図12を参照して当該電流の様子を詳細に説明する。
【0066】
図12の上側には、
図10の下側に示すA相駆動FET3が短絡する前後に流れるA相電流、/A相電流、及びA相電流指令が示されている。縦軸は電流、横軸は時間を表す。A相電流指令は太実線で示され、A相電流は普通実線で示され、さらに/A相電流は点線で示されている。
図12の下側には、A相駆動FET3の状態、及び/A相駆動FET4の状態が示されている。
【0067】
時刻t1から時刻t4までの動作は、
図11で説明した時刻t1から時刻t4までの動作と同様である。
【0068】
時刻t4から一定時間経過後の時刻t4’でA相駆動FET3が短絡した場合、A相コイルが接地された状態となるため、A相コイルを介して電流が流れる。A相コイルに流れる電流は、時刻t4’から緩やかに上昇し始め、特定の値に達したところで飽和する。特定の値は、A相コイルの巻線抵抗及び電源電圧に基づき規定される値と略等しい値と解釈してよい。
【0069】
この電流は、前述の通り比較的に小さい値になる上に、モータ200の種別、A相コイルの巻線抵抗の値、モータ200の動作状態などによって、飽和する値が変わり得るため、ケーブルの短絡又はモータ200の焼損を想定してハードウェア構成で設定される1つの第1閾値では検出が困難な場合がある。
【0070】
この対策のため、モータ200の種別などに応じて、ハードウェア構成を設定し直すと、制御装置100-1の製造が遅延し得る。また、複数の第1閾値を設定してモータ200の種別などに応じて、特定の第1閾値を選択する構成とした場合、制御装置100-1の構成が複雑になり、制御装置100-1の歩留まりが低下し得る。
【0071】
これに対して、
図8に示す第2閾値設定部21-1に設定される第2閾値、つまりソフトウェア構成で設定される閾値を利用することで、回路構成を複雑にすることなく第2閾値を容易に設定することができ、第1閾値では検出が困難な短絡を検出し得る。
【0072】
図13は、第1実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図14は、第1実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【0073】
過電流比較部16は、電流応答を入力すると(ステップS11)、電流応答が第2閾値を超えたか否かを判定する(ステップS12)。電流応答は、A相検出電流応答及び/A相検出電流応答の差であるA相電流応答と解釈してよい。
図14には、横軸を時間とし、縦軸を電流、つまりA相電流応答とするグラフが示されている。
図14では、第2閾値を超える前の電流応答と、第2閾値を超えた電流応答が特定時間T(例えば200ms)継続した状態とが示されている。
【0074】
過電流比較部16は、電流応答が第2閾値を超えた場合(ステップS12:YES)、電流応答が第1閾値を超えたか否かに関わりなく、ソフトウェア過電流監視カウンタをインクリメントする(ステップS13)。
【0075】
過電流比較部16は、ソフトウェア過電流監視カウンタが規定値以上か否かを判定する(ステップS14)。具体的には、過電流比較部16は、第2閾値を超えた電流応答の継続時間が、規定値である特定時間T(例えば200ms)を超えたか否かを判定する。
【0076】
ステップS14において、ソフトウェア過電流監視カウンタが規定値以上の場合(ステップS14:YES)、過電流比較部16は、エラー通知を行い(ステップS15)、一連の処理を終了する。つまり、電流応答が第2閾値を超えた状態が特定時間T継続した場合、過電流比較部16は、短絡を検出し、エラー通知を行う。
【0077】
ソフトウェア過電流監視カウンタが規定値以上ではない場合(ステップS14:NO)、過電流比較部16は、エラー通知を行わず、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0078】
ステップS12において、過電流比較部16は、電流応答が第2閾値を超えていない場合(ステップS12:NO)、ソフトウェア過電流監視カウンタをクリアし(ステップS16)、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0079】
なお、ソフトウェア構成で設定される第2閾値は、モータ200の種別などに対応した複数の値を制御装置100-1に予め設定しておき、制御装置100-1の利用時に第2閾値を選択して、選択した第2閾値により短絡を検出するようにしてもよい。
【0080】
(作用・効果)
以上に説明したように、第1実施形態にかかる制御装置100-1によれば、ソフトウェア構成で設定される第2閾値を利用することで、ハードウェア閾値である第1閾値では検出が困難な短絡を検出することが可能である。
【0081】
また、制御装置100-1によれば、モータ200の種別などに対応した複数のハードウェア閾値を予め設定して、各ハードウェア閾値を設定しているハードウェア構成を切り替えるという複雑な構成としなくてよい。具体的には、第1の値の抵抗値を有するモータコイルを含む第1モータと、第1の値とは異なる第2の値の抵抗値を有するモータコイルを含む第2モータとのそれぞれに対応するハードウェア構成を切り替える構成としなくてよい。このため、制御装置100-1の構成が簡素化され、制御装置100-1の歩留まりが向上し得る。また特定のハードウェア閾値を設定した後、当該設定を変更せずに、ソフトウェア閾値を変更することで様々なモータ200に対応させることができるため、制御装置100-1の仕様変更が容易になり、制御装置100-1の運用コストを低減し得る。
【0082】
また、制御装置100-1によれば、第2閾値を超えた電流応答の継続時間が、規定値である特定時間Tを超えたか否かを判定することで、駆動源300から供給される電力の変動、モータ200の負荷の変動などにより、突発的に過電流状態となった場合でも、短絡の発生を誤検出することを抑制できる。
【0083】
また、制御装置100-1によれば、ハードウェア閾値のみ設定する場合に比べてスイッチング素子の短絡の検出精度が向上するため、短絡状態でモータ200に電流が流れ続けることでモータ200が焼損することを抑制できる。
【0084】
(第2実施形態)
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0085】
図15は、本開示の第2実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。第1実施形態との相違点は、第2実施形態にかかる制御装置100-2は、
図1に示すしゃ断指令生成部8-1に代えて、エンコーダ202からの位置情報信号とサーボ指令を入力するしゃ断指令生成部8-2を備えていることである。エンコーダ202は、モータ200の回転量、回転方向などを位置情報として検出し、検出した位置情報を電気信号として出力する光電式エンコーダ、静電容量式エンコーダ、又は磁気式エンコーダと解釈してよい。
【0086】
図16は、第2実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。第1実施形態との相違点は、第2実施形態にかかるしゃ断指令生成部8-2は、
図6に示す過電流比較部16に代えて、サーボオフ時過電流監視部31、位置応答認識部32、速度応答生成部33、サーボ指令認識部34、及びサーボ制御判定部35を備えていることである。
【0087】
なお
図16では、
図6の速度制御部10、電流指令変換部11、A相電流指令操作部12、及びB相電流指令操作部13を省略しているが、しゃ断指令生成部8-2は、これらの機能を備えてもよい。
【0088】
位置応答認識部32は、エンコーダ202からの位置情報信号に基づき、モータ200の回転量を示す位置情報である位置応答を生成する。
【0089】
速度応答生成部33は、単位時間あたりの位置応答の変化量に基づき、モータ200の回転速度である速度応答を生成する。
【0090】
サーボ指令認識部34は、上位システムから送信されたサーボ指令をサーボ指令入力として取得する。サーボ指令は、モータ200の駆動を許可するサーボオン指令、モータ200の駆動を禁止するサーボオフ指令などを含み得る。
【0091】
サーボ制御判定部35は、サーボ指令認識部34からのサーボ指令入力、駆動源300からの電力の供給状態、エラー通知の有無などに応じて、サーボ状態を通知する。サーボ状態は、モータ200の駆動を許可し又は禁止する状態を含み得る。
【0092】
サーボオフ時過電流監視部31は、サーボオフ状態にもかかわらず、モータ200に電流が流れ得る、A相駆動FET3又は/A相駆動FET4の短絡を検出してエラー通知を実行し得る。具体的には、サーボオフ時過電流監視部31は、速度応答が速度規定値以下であり、かつ、サーボオフ状態の場合に、電流応答がサーボオフ時の監視閾値を超過したとき、エラー通知を実行し得る。
【0093】
サーボオフ状態は、モータ200の駆動が禁止されている状態と解釈してよく、A相駆動指令及び/A相駆動指令がオフの状態と解釈してよい。
【0094】
速度規定値は、具体的には90rpmと解釈してよい。なお、速度規定値は、モータ200の種別、用途などにより90rpm以外の速度に設定してよい。
【0095】
電流応答がサーボオフ時の監視閾値を超過した場合とは、定格電流を超える電流応答が検出されている状態と解釈してよい。サーボオフ時の監視閾値は、定格電流に設定される第2閾値と解釈してよい。
【0096】
定格電流は、モータコイル201に連続で流すことができる電流値と解釈してよい。具体的には、定格電流は、ユニポーラ型モータ、バイポーラ型モータ、又はこれら以外のモータ(例えば誘導モータ、同期モータ)が定格電圧で定格出力の運転をする際の電流値と解釈してよい。なお、第2閾値は、定格電流に限るものではなく、0以上定格電流未満の範囲の任意の値であってもよい。すなわち、第2実施形態の第2閾値は、0以上定格電流以下の範囲の任意の値と解釈してよい。
【0097】
図17は、サーボオフ時過電流監視部の構成例を示す図である。第1実施形態との相違点は、サーボオフ時過電流監視部31は、
図8に示す第2閾値設定部21-1及び短絡検出部22-1に代えて、第2閾値設定部21-2及び短絡検出部22-2を備えていることである。
【0098】
第2閾値設定部21-2は、前述したハードウェア構成で設定する第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する。第2閾値は、第1閾値よりも値が小さい閾値と解釈してよい。具体的には、第2閾値設定部21-2は、モータ200の種別に応じて定まる定格電流を第2閾値に設定してよい。
【0099】
短絡検出部22-2は、特定条件下で、当該第2閾値を検出電流が超えた場合に、短絡を検出してよい。特定条件は、モータ200の駆動が禁止されている状態かつ、モータ200の速度応答が規定値以下の場合と解釈してよい。短絡検出部22-2は、短絡を検出した場合、短絡を検出したことを示す検出情報をエラー通知部23に入力する。
【0100】
図18は、第2実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図19は、第2実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【0101】
サーボオフ時過電流監視部31は、サーボ状態通知、電流応答、及び速度応答を入力すると(ステップS21)、サーボ状態がサーボオフ状態であり、かつ、速度応答が速度規定値以下であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0102】
図19の左側には、横軸を時間とし、縦軸をモータ200の回転速度、つまり速度応答とするグラフが示されている。当該グラフでは、サーボオフ指令が上位システムから送信されたことで、モータ200の速度応答が特定の時刻taで、速度規定値以下に変化している。速度規定値は例えば90[rpm]である。
【0103】
図18に戻り、ステップS22において、サーボオフ状態、かつ、速度応答が速度規定値以下ではない場合(ステップS22:NO)、サーボオフ時過電流監視部31は、ステップS21以降の処理を実行する。
【0104】
サーボ状態がサーボオフ状態、かつ、速度応答が速度規定値以下の場合(ステップS22:YES)、サーボオフ時過電流監視部31は、電流応答が第2閾値を超えたか否かを判定する(ステップS23)。
図19の右側には、横軸を時間とし、縦軸を電流、つまりA相電流応答とするグラフが示されている。当該グラフでは、定格電流である第2閾値未満の電流応答が、前述した時刻taから一定時間経過後の時刻tbで、第2閾値を超えている。
【0105】
図18に戻り、電流応答が第2閾値を超えた場合(ステップS23:YES)、サーボオフ時過電流監視部31は、エラー通知を行い(ステップS24)、一連の処理を終了する。電流応答が第2閾値を超えていない場合(ステップS23:NO)、サーボオフ時過電流監視部31は、ステップS21以降の処理を実行する。
【0106】
ここで、一般に、モータ200の減速中、モータ200には誘起電圧の影響で電流が流れる。そのため、第2実施形態で電流応答が第2閾値を超えたか否かを判定することのみでは、短絡が発生していないのに短絡が発生したと誤検出してしまうおそれがある。つまり、サーボオン中にモータ200の減速により生じた誘起電圧の影響で電流が流れた場合もあるからである。そこで、ステップS22の処理を行って、サーボオフ状態(電流指令がなくモータ200を駆動していない状態)であり、誘起電圧の影響が比較的小さい速度でモータ200が回転していることを判定することで、モータ200の誘起電圧によって流れる応答電流で、スイッチング素子の短絡を誤検出することを回避し得る。そして、ステップS22の処理を行った上でステップS23の処理を行うことで、モータ200を駆動していない状態かつ誘起電圧の影響により流れる電流も小さくなる状況であるにもかかわらず、スイッチング素子に大きな電流が流れているため、スイッチング素子の短絡を検出することができる。
【0107】
(作用・効果)
以上に説明したように、第2実施形態にかかる制御装置100-2によれば、例えば、サーボオン状態からサーボオフ状態に移行した場合などにおいて、サーボオフ状態であり且つ速度応答が速度規定値以下であることを検出して誘起電圧の影響による短絡の誤検出を抑制しつつ、本来ならスイッチング素子に流れない電流を検出することで、スイッチング素子の短絡を検出することができる。
【0108】
(第3実施形態)
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0109】
図20は、本開示の第3実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。第2実施形態との相違点は、第3実施形態にかかる制御装置100-3は、
図15に示すしゃ断指令生成部8-2に代えて、しゃ断指令生成部8-3を備えていることである。第3実施形態にかかる電流検出部5は、モータ200の各相について、対応するスイッチング素子に流れる電流とその逆相の電流との差を検出電流として検出する。
【0110】
図21は、第3実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。第2実施形態との相違点は、第3実施形態にかかるしゃ断指令生成部8-3は、
図16に示すサーボオフ時過電流監視部31、サーボ指令認識部34、及びサーボ制御判定部35に代えて、電流指令応答乖離監視部36を備えていることである。
【0111】
電流指令応答乖離監視部36は、A相電流応答、B相電流応答、速度応答、A相電流指令、及びB相電流指令に基づき、電流指令が電流規定値よりも大きいにもかかわらず、電流応答である検出電流が、ゼロ電流判定値である第2閾値未満と認識したときに、エラー通知を実行し得る。具体的には、電流指令応答乖離監視部36は、サーボオン中で、かつ、電流指令が電流規定値よりも大きいときに、検出電流が第2閾値を下回る場合、スイッチング素子の短絡を検出して、エラー通知を実行し得る。サーボオン中であるか否かは、電流応答の値により判定することができる。低速か否かは、速度応答の値により判定することができる。
【0112】
電流規定値は、電流リップルにより、電流応答がゼロ近傍まで下がらないような十分に大きな値としてよい。具体的には、モータ200を駆動するための各相駆動FETのスイッチングにより、モータコイルに流れる電流にリップル(変動)が生じる。そのため、電流応答がゼロ近傍まで下がり得る。したがって、電流規定値を上記のように十分に大きな値とする理由は、電流応答と後述のゼロ電流判定値とを比較する際に、各相駆動FETのスイッチングに伴う電流応答のリップル(変動)の影響によりゼロ近傍まで下がってしまい、電流応答がゼロ電流判定値未満となることを抑制するためである。
【0113】
例えば、電流規定値は、リップル電流を2倍した値に定格電流の5%の電流を加算した値(リップル電流×2倍+定格電流×0.05)に設定してよい。
【0114】
リップル電流は、例えば、電源電圧をスイッチング周期の1/2の時間印加したときの電流近似値と解釈してよい。電流指令応答乖離監視部36は、モータ種別毎に算出した当該リップル電流のデータを保持してよい。なお、リップル電流として、モータ内のロータとステータの位置関係で、各相のコイルの間に生じる相互誘導作用により、コイルのインダクタンスが変化することで生じる電流リップルを考慮に入れてもよい。
【0115】
ゼロ電流判定値である第2閾値は、モータ200の種別に応じて定まる定格電流から、特定の値だけ低い電流に設定される閾値と解釈してよい。
【0116】
電流指令応答乖離監視部36は、検出電流が第2閾値を下回る状態が、特定時間継続した場合に短絡を検出してよい。特定時間は、例えば200msである。
【0117】
図22は、電流指令応答乖離監視部の構成例を示す図である。第2実施形態との相違点は、電流指令応答乖離監視部36は、
図17に示す第2閾値設定部21-2及び短絡検出部22-2に代えて、第2閾値設定部21-3及び短絡検出部22-3を備えていることである。
【0118】
第2閾値設定部21-3は、前述したハードウェア構成で設定する第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する。第2閾値は、第1閾値よりも値が小さい閾値と解釈してよい。具体的には、第1閾値が定格電流に相当する場合、第2閾値設定部21-3は、モータ200の種別に応じて定まる定格電流から特定の値だけ低い電流に設定される閾値を、第2閾値に設定してよい。特定の値は、定格電流×0.9、つまり定格電流の90%に相当する電流と解釈してよい。定格電流から特定の値だけ低い電流は、定格電流×0.1、つまり定格電流の10%に相当する電流と解釈してよい。
【0119】
短絡検出部22-3は、サーボオン中で、かつ、電流指令が規定値よりも大きいときに、検出電流が第2閾値を下回る場合、短絡を検出してよい。短絡検出部22-3は、短絡を検出した場合、短絡を検出したことを示す検出情報をエラー通知部23に入力する。
【0120】
図23は、第3実施形態にかかる制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図24は、第3実施形態にかかる制御装置が動作中の電流の変化と閾値との関係を説明するための図である。
【0121】
電流指令応答乖離監視部36は、速度応答及び電流応答を入力すると(ステップS31)、速度応答が速度規定値以下、かつ、電流指令が電流規定値を超えているか否かを判定する(ステップS32)。
【0122】
図24の左側には、横軸を時間とし、縦軸をモータ200の速度応答とするグラフが示されている。当該グラフでは、動作指令が上位システムから送信されたことで、時刻tcでモータ200の速度応答が速度規定値以下に変化している。
【0123】
図24の右側には、横軸を時間とし、縦軸を電流とするグラフが示されている。当該グラフでは、電流指令が電流規定値よりも大きく、電流応答が、前述した時刻tcから一定時間経過後の時刻tdで第2閾値未満に変化している。
【0124】
図23に戻り、速度応答が速度規定値以下、かつ、電流指令が電流規定値を超えている場合(ステップS32:YES)、電流指令応答乖離監視部36は、電流応答がゼロ電流判定値である第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS33)。当該判定を行うことで、電流規定値を超える電流指令が出力されることで、サーボオン状態でモータ200が回転しているとき、第2閾値未満に低下した電流応答を検出し得る。
【0125】
電流応答が第2閾値未満の場合(ステップS33:YES)、ゼロ電流カウンタをインクリメントする(ステップS34)。
【0126】
電流指令応答乖離監視部36は、ゼロ電流カウンタが規定値以上か否かを判定する(ステップS35)。具体的には、電流指令応答乖離監視部36は、電流応答がゼロ電流判定値未満の継続時間が、規定値である特定時間T(例えば200ms)を超えたか否かを判定する。
【0127】
ゼロ電流カウンタが規定値以上の場合(ステップS35:YES)、電流指令応答乖離監視部36は、エラー通知を行い(ステップS36)、一連の処理を終了する。つまり、電流指令応答乖離監視部36は、電流指令が規定値よりも大きにもかかわらず、ゼロ電流判定値未満の電流応答が一定時間継続していることを認識したとき、エラー通知を行う。
【0128】
ゼロ電流カウンタが規定値以上ではない場合(ステップS35:NO)、電流指令応答乖離監視部36は、エラー通知を行わず、ステップS31以降の処理を繰り返す。
【0129】
ステップS32において、速度応答が速度規定値以下ではなく、又は、電流指令が電流規定値を超えていない場合(ステップS32:NO)、電流指令応答乖離監視部36は、ゼロ電流カウンタをクリアし(ステップS37)、ステップS31以降の処理を繰り返す。
【0130】
ステップS33において、電流応答が第2閾値未満ではない場合(ステップS33:NO)、つまり、電流応答がゼロ電流判定値を超えている場合には、電流指令応答乖離監視部36は、ゼロ電流カウンタをクリアし(ステップS37)、ステップS31以降の処理を繰り返す。
【0131】
なお、前述の
図10では、/A相駆動FETをオフした状態でオンオフ動作するA相駆動FETが短絡した場合について説明したが、A相駆動FETがオンオフ動作中に、/A相駆動FETが短絡した場合にも当該短絡を検出することが可能である。以下にその具体例を
図25及び
図26を参照して説明する。
【0132】
(ユニポーラ型:A相駆動FETオンオフ動作、かつ、/A相駆動FET短絡)
図25及び
図26は、スイッチング素子が短絡したときに流れる電流について説明するための図である。
図25には、A相駆動FETがオンオフ動作中に、オフ固定であった/A相駆動FETが短絡した場合に流れる電流が示されている。この場合、A相コイル及び/A相コイルの双方に電流が流れ得る。各コイルに流れる電流は、各コイルを介さずに流れる電流と比較し、モータ200の巻線抵抗、つまりA相コイル又は/A相コイルの抵抗成分により小さい値になる。
図26を参照して当該電流の様子を詳細に説明する。
【0133】
図26の上側には、
図25に示す/A相駆動FET4が短絡する前後に流れるA相電流、/A相電流、及びA相電流指令が示されている。縦軸は電流、横軸は時間を表す。A相電流指令は太実線で示され、/A相電流は普通実線で示され、さらに/A相電流は点線で示されている。
図26の下側には、A相駆動FET3の状態、及び/A相駆動FET4の状態が示されている。
【0134】
時刻t1から時刻t4までの動作は、
図11で説明した時刻t1から時刻t4までの動作と同様である。
【0135】
時刻t4から一定時間経過後の時刻t4’で、それまでオフ固定であった/A相駆動FET4が短絡した場合、/A相コイルが接地された状態となるため、/A相コイルに電流が流れる。また、A相電流応答は、A相電流と/A相電流との差であるため、短絡発生前はA相電流と等しかったA相電流応答が、/A相コイルに電流が流れる影響でA相電流指令に追従しない状態となる。そのため、A相電流応答をA相電流指令に追従させるべく、A相駆動FET3をオンし、双方のコイルに電流が流れる状態となる。双方のコイルに電流が流れると、互いのコイルのインダクタンス成分が打ち消されることで、A相コイルに流れる電流は、時刻t4’から急激に上昇し、特定の値に達したところで飽和する。特定の値は、A相コイルの巻線抵抗及び電源電圧に基づき規定される値と略等しい値と解釈してよい。
【0136】
/A相コイルに流れる電流は、互いのコイルのインダクタンス成分が打ち消されることで、時刻t4’から急激に下降し、特定の値に達したところで飽和する。特定の値は、/A相コイルの巻線抵抗及び電源電圧に基づき規定される値と略等しい値と解釈してよい。
【0137】
短絡が生じた後のこれらの電流の差で表されるA相電流応答は、一点鎖線で示すように、A相電流指令よりも大幅に低い値となる。具体的には、当該A相電流応答は、短絡が生じる前に検出されるA相電流応答に比べて、大幅に低く、略0[A]となる。
図26に示す短絡が生じ、特定の相及びその逆相の両方に電流が流れた場合、当該特定の相の電流応答は、ゼロ近傍の微少な値となるため、前述したハードウェア構成では検出が困難であるが、第2閾値としてゼロ電流判定閾値を利用することで、第1閾値では検出が困難な短絡を検出することが可能である。また、ゼロ電流判定閾値を第2閾値に設定して検出できる短絡は、
図26に示す短絡に限るものではなく、例えば、A相駆動FET3及び/A相駆動FET4の両方が短絡した場合も含む。これは、特定の相の駆動FET及びその逆相の駆動FETの両方が短絡した場合も特定の相の電流応答がゼロ近傍になり得るためである。
【0138】
なお、時刻t4’以降、A相駆動FET3がオンし続けている理由は、時刻t4’でA相電流応答がA相電流指令よりも小さいため、A相電流応答がA相電流指令に達すように、A相電流制御部2がA相駆動FET3をオンし続けるためである。
【0139】
(作用・効果)
以上に説明したように、第3実施形態にかかる制御装置100-3によれば、電流指令が電流規定値よりも大きいにもかかわらず、電流応答がゼロ近傍(第2閾値=ゼロ電流判定値未満)であることを検出することで、スイッチング素子の短絡を検出することができる。つまり、制御装置100-3では、A相コイル及び/A相コイルの両方に電流が流れるスイッチング素子の短絡状態(すなわち、A相駆動FET3及び/A相駆動FET4の両方が短絡、又は一方が短絡して他方がオンのとき)を検出することができる。
【0140】
また、制御装置100-3によれば、電流応答が第2閾値未満となる状態の継続時間が、規定値である特定時間Tを超えたか否かを判定することで、駆動源300から供給される電力の変動、モータ200の負荷の変動などにより、突発的に低電流状態となった場合でも、短絡の発生を誤検出することを抑制できる。
【0141】
(第4実施形態)
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0142】
図27は、本開示の第4実施形態にかかる制御装置の構成を示す図である。第1実施形態との相違点は、第4実施形態にかかる制御装置100-4は、
図1に示すしゃ断指令生成部8-1に代えて、しゃ断指令生成部8-4を備え、さらに駆動源電流検出部9を備えることである。
【0143】
駆動源電流検出部9は、駆動源300からモータ200に供給される電流を検出し、検出した電流である駆動源電流をしゃ断指令生成部8-4に入力する。駆動源電流は、モータ200が消費している電流量と解釈してよい。
【0144】
しゃ断指令生成部8-4は、駆動源電流、A相電流応答、及び過電流検出信号に基づき、駆動源しゃ断指令を生成する。
図28を参照して、しゃ断指令生成部8-4の構成を具体的に説明する。
【0145】
図28は、第4実施形態にかかるしゃ断指令生成部の機能の構成例を示す図である。第1実施形態との相違点は、第4実施形態にかかるしゃ断指令生成部8-4は、
図6に示す過電流比較部16に代えて、駆動源電流認識部37、駆動源電力推定部38、モータ指令電力推定部39、モータ応答電力推定部40、及び電力比較部41を備えていることである。
【0146】
駆動源電流認識部37は、アナログ値の駆動源電流を、AD変換器で駆動源電力推定部38が取り扱い可能なデジタル値の駆動源電流に変換して、駆動源電力推定部38に入力する。アナログ値の駆動源電流は、モータ200が消費しているアナログ値の電流量と解釈してよい。
【0147】
駆動源電力推定部38は、駆動源電流に基づき、モータ200が消費している電力を推定する。具体的には、駆動源電力推定部38は、駆動源300からモータ200に供給される電流に基づき、駆動源300からモータ200に供給される電力である駆動源電力を推定する。
【0148】
モータ指令電力推定部39は、速度制御部10からのモータ200の電流指令に基づき、モータ200の駆動に要する電力であるモータ指令電力を推定する。
【0149】
モータ応答電力推定部40は、検出電流に基づき、モータ200の駆動に使用される電力であるモータ応答電力を推定する。具体的には、モータ応答電力推定部40は、A相電流認識部14からのA相電流応答と、B相電流認識部15からのB相電流応答とを、検出電流として、当該検出電流に基づき、モータ応答電力を推定する。
【0150】
電力比較部41は、駆動源電力推定部38が推定した駆動源電力と、モータ応答電力推定部40が推定した応答電力との電力差分が電力閾値以上のとき、短絡を検出し、エラー通知を実行してよい。当該電力閾値は、駆動源電力から応答電力までの特定の乖離幅を規定する、電力乖離規定値と解釈してよい。電力差分が電力閾値以上のときとは、モータ200に供給される電力に対してモータ応答電力が小さ過ぎることを意味する。この場合、例えば、A相駆動FET3及び/A相駆動FET4の両方が短絡するか、又は、A相駆動FET3及び/A相駆動FET4の一方が短絡した状態で他方がオンされており、応答電力がゼロ近傍となっているおそれがある。すなわち、スイッチング素子の短絡の影響により、モータ200で消費される駆動源電力は大きいが応答電力はゼロ近傍となり得る。このように応答電力がゼロ近傍の場合でも、電力比較部41は、応答電力との電力差分が電力閾値以上であることを判定することで、短絡を検出することができる。
【0151】
電力比較部41は、駆動源電力推定部38が推定した駆動源電力と、モータ指令電力推定部39が推定したモータ指令電力との電力差分が電力閾値以上のとき、短絡を検出し、エラー通知を実行してよい。当該電力閾値は、駆動源電力からモータ指令電力までの特定の乖離幅を規定する、電力乖離規定値と解釈してよい。電力差分が電力閾値以上のときとは、モータ指令電力に対してモータ200に供給される電力が大き過ぎることを意味する。例えば、サーボオフ状態では指令電力はゼロだが、スイッチング素子の短絡の影響によりモータ200で消費される駆動源電力は大きい状態となるため、電力比較部41は、モータ指令電力との電力差分が電力閾値以上であることを判定することで、短絡を検出することができる。また、サーボオン状態において所定の電流指令によってモータ200を制御している際にスイッチング素子が短絡したときも、電流指令に対して比較的大きい電流が流れており、モータ200で消費される電力が大きい状態となるため、電力比較部41は、モータ指令電力との電力差分が電力閾値以上であることを判定することで、短絡を検出することができる。
【0152】
図29は、電力比較部の構成例を示す図である。第1実施形態との相違点は、電力比較部41は、
図8に示す第2閾値設定部21-1及び短絡検出部22-1に代えて、電力閾値設定部21-4及び短絡検出部22-4を備えていることである。
【0153】
電力閾値設定部21-4は、前述したハードウェア構成で設定する第1閾値と値が異なる電力閾値をソフトウェア構成で設定する。
【0154】
具体的には、電力閾値設定部21-4は、駆動源電力から応答電力までの特定の乖離幅を規定する電力乖離規定値を、電力閾値に設定してよい。また、電力閾値設定部21-4は、駆動源電力からモータ指令電力までの特定の乖離幅を規定する電力乖離規定値を、電力閾値に設定してよい。
【0155】
短絡検出部22-4は、駆動源電力推定部38が推定した駆動源電力と、モータ応答電力推定部40が推定した応答電力との電力差分が電力閾値以上のとき、短絡を検出してよい。短絡検出部22-4は、短絡を検出した場合、短絡を検出したことを示す検出情報をエラー通知部23に入力する。
【0156】
また短絡検出部22-4は、駆動源電力推定部38が推定した駆動源電力と、モータ指令電力推定部39が推定したモータ指令電力との電力差分が電力閾値以上のとき、短絡を検出してよい。短絡検出部22-4は、短絡を検出した場合、短絡を検出したことを示す検出情報をエラー通知部23に入力する。
【0157】
図30は、第4実施形態にかかる制御装置の動作を説明するための第1フローチャートである。
【0158】
電力比較部41は、駆動源電力及び応答電力を入力すると(ステップS41)、駆動源電力及び応答電力の電力差分が電力閾値以上か否かを判定する(ステップS42)。
【0159】
電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上の場合(ステップS42:YES)、応答電力不整合カウンタをインクリメントする(ステップS43)。
【0160】
電力比較部41は、応答電力不整合カウンタが規定値以上か否かを判定する(ステップS44)。具体的には、電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上となる時間が、規定値である特定時間(例えば200ms)を超えたか否かを判定する。
【0161】
ステップS44において、応答電力不整合カウンタが規定値以上の場合(ステップS44:YES)、電力比較部41は、エラー通知を行い(ステップS45)、一連の処理を終了する。つまり、電力差分が電力閾値以上の状態が特定時間継続した場合、電力比較部41は、短絡を検出し、エラー通知を行う。
【0162】
応答電力不整合カウンタが規定値以上ではない場合(ステップS44:NO)、電力比較部41は、エラー通知を行わず、ステップS41以降の処理を繰り返す。
【0163】
ステップS42において、電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上ではない場合(ステップS42:NO)、応答電力不整合カウンタをクリアし(ステップS46)、ステップS41以降の処理を繰り返す。
【0164】
図31は、第4実施形態にかかる制御装置の動作を説明するための第2フローチャートである。
【0165】
電力比較部41は、駆動源電力及びモータ指令電力を入力すると(ステップS51)、駆動源電力及びモータ指令電力の電力差分が電力閾値以上か否かを判定する(ステップS52)。
【0166】
電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上の場合(ステップS52:YES)、指令電力不整合カウンタをインクリメントする(ステップS53)。
【0167】
電力比較部41は、指令電力不整合カウンタが規定値以上か否かを判定する(ステップS54)。具体的には、電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上となる時間が、規定値である特定時間(例えば200ms)を超えたか否かを判定する。
【0168】
ステップS54において、指令電力不整合カウンタが規定値以上の場合(ステップS54:YES)、電力比較部41は、エラー通知を行い(ステップS55)、一連の処理を終了する。つまり、電力差分が電力閾値以上の状態が特定時間継続した場合、電力比較部41は、短絡を検出し、エラー通知を行う。
【0169】
指令電力不整合カウンタが規定値以上ではない場合(ステップS54:NO)、電力比較部41は、エラー通知を行わず、ステップS51以降の処理を繰り返す。
【0170】
ステップS52において、電力比較部41は、電力差分が電力閾値以上ではない場合(ステップS52:NO)、指令電力不整合カウンタをクリアし(ステップS56)、ステップS51以降の処理を繰り返す。
【0171】
(作用・効果)
以上に説明したように、第4実施形態にかかる制御装置100-4によれば、駆動源電力と応答電力との差を電力閾値と比較することで、モータ200に供給される電力に対してモータ応答電力がゼロ近傍となる場合でも、スイッチング素子の短絡を検出することができる。
【0172】
また、制御装置100-4によれば、駆動源電力とモータ指令電力との差を電力閾値と比較することで、モータ200の指令電力に対してモータ200で消費される電力が大きい状態のときでも、スイッチング素子の短絡を検出することができる。
【0173】
このように電力差の大きさに応じて短絡を検出した場合、エラー通知を行うことでモータ200への電力供給を停止できるため、短絡状態でモータコイル201に過大な電流が流れ続けることによるモータ200の焼損を抑制し得る。
【0174】
また、第1実施形態から第3実施形態の電流を利用した短絡の検出に加え、第4実施形態の電力を利用した短絡の検出を行うことで、短絡の検出精度が向上し得る。
【0175】
なお第2実施形態から第4実施形態にかかる制御装置は、ユニポーラ型以外のモータにも適用可能である。ユニポーラ型以外のモータは、バイポーラ型モータ、三相交流モータを含み得る。
【0176】
<付記>
本発明の特徴を以下の通り示す。
(付記1)
ユニポーラ型のモータを駆動する複数のスイッチング素子のそれぞれに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した電流である検出電流と比較することで過電流状態を検出する第1閾値をハードウェア構成で設定する第1閾値設定部と、
前記第1閾値と値が異なる第2閾値をソフトウェア構成で設定する第2閾値設定部と、
前記第2閾値と前記検出電流との比較結果に応じて、複数の前記スイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部と、
を備える制御装置。
【0177】
(付記2)
前記短絡検出部は、前記電流検出部が検出可能な電流の上限を示す上限電流と前記モータの巻線抵抗及び電源電圧に基づき前記モータに流れることが想定される電流である想定電流との何れか小さい方に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が超えた場合、前記短絡を検出する、付記1に記載の制御装置。
【0178】
(付記3)
前記短絡検出部は、前記第2閾値を、前記検出電流が超えた状態が特定時間継続した場合、前記短絡を検出する、付記1又は2に記載の制御装置。
【0179】
(付記4)
前記短絡検出部は、前記モータの駆動が禁止されている状態で、前記モータの回転速度が速度規定値以下のときに、前記モータの種別に応じて定まる定格電流に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が超えた場合、前記短絡を検出する、付記1から3の何れか一つに記載の制御装置。
【0180】
(付記5)
前記電流検出部は、前記モータの各相について、対応するスイッチング素子に流れる電流とその逆相の電流との差を前記検出電流として検出し、
前記短絡検出部は、前記モータの電流指令が前記モータの種別に応じて定まる電流規定値よりも大きいときに、前記モータの種別に応じて定まる定格電流から特定の値だけ低い電流に設定される前記第2閾値を、前記検出電流が下回る場合、前記短絡を検出する、付記1から4の何れか一つに記載の制御装置。
【0181】
(付記6)
前記短絡検出部は、前記第2閾値を、前記検出電流が下回る状態が特定時間継続した場合、前記短絡を検出する、付記1から5の何れか一つに記載の制御装置。
【0182】
(付記7)
前記モータの駆動源から前記モータに供給される電流に基づき、前記駆動源から前記モータに供給される電力である駆動源電力を推定する駆動源電力推定部と、
前記検出電流に基づき、前記モータに前記モータの駆動に使用される電力であるモータ応答電力を推定するモータ応答電力推定部と、
を備え、
前記短絡検出部は、前記駆動源電力と前記モータ応答電力との差が電力閾値以上のとき、前記短絡を検出する、付記1から6の何れか一つに記載の制御装置。
【0183】
(付記8)
前記モータの駆動源から前記モータに供給される電流に基づき、前記駆動源から前記モータに供給される電力である駆動源電力を推定する駆動源電力推定部と、
前記モータの電流指令に基づき、前記モータの駆動に要する電力であるモータ指令電力を推定するモータ指令電力推定部と、
を備え、
前記短絡検出部は、前記駆動源電力と前記モータ指令電力との差が電力閾値以上のとき、前記短絡を検出する、付記1から7の何れか一つに記載の制御装置。
【0184】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0185】
2 A相電流制御部
5 電流検出部
6 過電流検出部
7 A相電流変換部
8-1、8-2、8-3、8-4 しゃ断指令生成部
9 駆動源電流検出部
10 速度制御部
11 電流指令変換部
12 A相電流指令操作部
13 B相電流指令操作部
14 A相電流認識部
15 B相電流認識部
16 過電流比較部
17 過電流検出信号認識部
18 過電流信号処理部
19 エラー発報部
20 駆動源しゃ断操作部
21-1、21-2、21-3 第2閾値設定部
22-1、22-2、22-3、22-4 短絡検出部
21-4 電力閾値設定部
23 エラー通知部
31 サーボオフ時過電流監視部
32 位置応答認識部
33 速度応答生成部
34 サーボ指令認識部
35 サーボ制御判定部
36 電流指令応答乖離監視部
37 駆動源電流認識部
38 駆動源電力推定部
39 モータ指令電力推定部
40 モータ応答電力推定部
41 電力比較部
51 A相電流検出部
52 B相電流検出部
61 コンパレータ
62 第1閾値設定部
71 オペアンプ
100-1、100-2、100-3、100-4 制御装置
200 モータ
201 モータコイル
202 エンコーダ
300 駆動源