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特開2024-165967予測アルゴリズム生成装置、情報処理装置、基板処理装置、予測アルゴリズム生成方法、予測アルゴリズム生成プログラム、処理条件決定方法、処理条件決定プログラムおよび予測アルゴリズム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165967
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】予測アルゴリズム生成装置、情報処理装置、基板処理装置、予測アルゴリズム生成方法、予測アルゴリズム生成プログラム、処理条件決定方法、処理条件決定プログラムおよび予測アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241121BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/306 R
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082600
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 真裕
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043BB02
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成することが可能な予測アルゴリズム生成装置を提供する。
【解決手段】
予測アルゴリズム生成装置は、処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて被膜を処理する被膜処理を実行するための処理条件を生成する処理条件生成部と、処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、生成された複数の処理条件を変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する分類部と、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件を選定する処理条件選定部と、選定された処理条件に従って基板処理装置が被膜処理を実行する前後の被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理量取得部228と、処理条件と処理条件に関連して取得された処理量とを含むデータセットを用いて、処理条件から処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する予測アルゴリズム生成部230と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理条件生成部と、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件生成部により生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する分類部と、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定する処理条件選定部と、
前記処理条件選定部により選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理量取得部と、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する予測アルゴリズム生成部と、を備える予測アルゴリズム生成装置。
【請求項2】
前記処理条件生成部により生成された複数の前記処理条件を、前記処理条件に含まれる前記ノズルの往復回数に基づいて、複数の回数別グループに分類する回数別分類部を、さらに備え、
前記分類部は、前記複数の回数別グループのそれぞれに含まれる複数の前記処理条件を前記複数のグループに分類する、請求項1に記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項3】
前記変動条件を前記基板の径方向に異なる複数の位置それぞれにおける物理量に変換する変換部を、さらに備え、
前記変数は、前記変換部により変換された前記ノズルの前記基板に対する相対位置における物理量である、請求項1または2記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項4】
前記物理量は、前記ノズルが滞在する滞在時間である、請求項3記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項5】
前記物理量は、基板中心から外周に向かって前記ノズルが滞在する時間を累積した累積滞在時間である、請求項3記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項6】
前記処理量取得部は、前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を前記基板処理装置に与え、前記基板処理装置が前記処理条件に従って前記被膜処理を実行して得られる前記処理量を取得する、請求項1または2に記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項7】
前記処理量取得部は、前記基板処理装置が前記処理条件に従って前記被膜処理を実行した前記処理量と前記処理条件とのデータセットを機械学習した学習モデルに、前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を与え、前記学習モデルの出力を前記処理量として取得する、請求項1または2に記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項8】
前記処理条件と、前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行して得られる前記処理量とを含む実験データセットを取得する実験データセット取得部を、さらに備え、
前記処理量取得部は、前記実験データセット取得部により取得された複数の前記実験データセットのうちから前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を含む前記実験データセットを抽出する、請求項1または2に記載の予測アルゴリズム生成装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の予測アルゴリズム生成装置により生成された予測アルゴリズム。
【請求項10】
請求項9に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する情報処理装置であって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理条件決定部を、備えた情報処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理装置を備えた基板処理装置。
【請求項12】
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成するステップと、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件を生成するステップにより生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類するステップと、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定するステップと、
前記処理条件を選定するステップにより選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得するステップと、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成するステップと、を備える予測アルゴリズム生成方法。
【請求項13】
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理と、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件を生成する処理により生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する処理と、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定する処理と、
前記処理条件を選定する処理により選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理と、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する処理と、をコンピュータに実行させるための予測アルゴリズム生成プログラム。
【請求項14】
請求項9に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定方法であって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定するステップを含む、処理条件決定方法。
【請求項15】
請求項9に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定プログラムであって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理をコンピュータに実行させるための処理条件決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測アルゴリズム生成装置、情報処理装置、基板処理装置、予測アルゴリズム生成方法、予測アルゴリズム生成プログラム、処理条件決定方法、処理条件決定プログラムおよび予測アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つにエッチングプロセスがある。エッチングプロセスでは、基板に薬液を供給するエッチング処理によって、基板に形成されている被膜の膜厚調整が行われる。この膜厚調整においては、基板の面全体について均一にエッチングが進行するようにエッチング処理すること、あるいは、基板の面をエッチング処理によって平坦にすることが重要である。エッチング液をノズルから基板の一部に吐出する場合、ノズルを基板に対して径方向に移動させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、エッチングノズルから基板にエッチング液を吐出することにより、基板に対してエッチング処理が可能な液処理装置が記載されている。基板の中央領域のエッチング処理を行いつつ、ウエハの面内温度分布を均一にするために、吐出されたエッチング液がウエハの中心を通る中央側の第1位置と、この中央側の位置よりもウエハの周縁側の第2位置との間でエッチングノズルを繰り返し往復させながらエッチング液を吐出する例が記載される。
【0004】
エッチング処理は、ノズルを移動させる動作の他に、エッチング液の濃度、温度、基板の回転数等の違いによって被膜が処理される処理量が異なる複雑なプロセスである。このため、人工知能を利用した学習モデルを機械学習して、学習済の学習モデルに処理量を推論させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-103656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
学習モデルの精度は、学習モデルに学習させる学習データに依存することが知られている。一般的に、学習用データは、実際に基板処理装置を駆動するための処理条件と当該処理条件で基板処理装置を駆動して得られる処理結果とが用いられる。
【0007】
しかしながら、実際に基板処理装置に処理を実行させて得られる学習用データとして、ある特性に偏った処理条件とその処理条件で処理された処理結果が用いられる場合がある。このような学習用データを機械学習した学習モデルは汎化性が低く、学習用データと異なる特性の処理条件が与えられる場合に推論精度が低くなる。一方で、特性に偏りがない学習用データを準備するためには、実際に基板処理装置を膨大な数の処理条件で駆動しなければならない。このため、基板処理装置の設定作業と基板処理装置を駆動する時間とが費やされることにより、多大なコストと時間とが必要になるといった問題がある。
【0008】
本発明の目的は、汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成することが可能な予測アルゴリズム生成装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成することが可能な予測アルゴリズム生成方法および予測アルゴリズム生成プログラムを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、汎化性の高い予測アルゴリズムを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる他の目的は、基板を処理する複雑なプロセスの処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、その情報処理装置を備えた基板処理装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる他の目的は、基板を処理する複雑なプロセスの処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能な処理条件決定方法および処理条件決定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の一局面に従う予測アルゴリズム生成装置は、処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理条件生成部と、処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、処理条件生成部により生成された複数の処理条件を変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する分類部と、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件を選定する処理条件選定部と、処理条件選定部により選定された処理条件に従って基板処理装置が被膜処理を実行する前後の被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理量取得部と、処理条件と処理条件に関連して取得された処理量とを含むデータセットを用いて、処理条件から処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する予測アルゴリズム生成部と、を備える。
【0014】
(2)本発明の他の局面に従う予測アルゴリズムは、上記予測アルゴリズム生成装置により生成される。
【0015】
(3)本発明のさらに他の局面に従う情報処理装置は、上記の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する情報処理装置であって、仮の処理条件を予測アルゴリズムに与えて予測アルゴリズムにより予測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の処理条件を、基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理条件決定部を、備える。
【0016】
(4)本発明のさらに他の局面に従う基板処理装置は、上記の情報処理装置を備える。
【0017】
(5)本発明のさらに他の局面に従う予測アルゴリズム生成方法は、処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成するステップと、処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、処理条件を生成するステップにより生成された複数の処理条件を変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類するステップと、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件を選定するステップと、処理条件を選定するステップにより選定された処理条件に従って基板処理装置が被膜処理を実行する前後の被膜の膜厚の差を示す処理量を取得するステップと、処理条件と処理条件に関連して取得された処理量とを含むデータセットを用いて、処理条件から処理量を予測する予測アルゴリズムを生成するステップと、を備える。
【0018】
(6)本発明の他の態様に係る予測アルゴリズム生成プログラムは、処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理と、処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、処理条件を生成する処理により生成された複数の処理条件を変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する処理と、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件を選定する処理と、処理条件を選定する処理により選定された処理条件に従って基板処理装置が被膜処理を実行する前後の被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理と、処理条件と処理条件に関連して取得された処理量とを含むデータセットを用いて、処理条件から処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0019】
(7)本発明の他の局面に従う処理条件決定方法は、上記記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定方法であって、仮の処理条件を予測アルゴリズムに与えて予測アルゴリズムにより予測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の処理条件を、基板処理装置を駆動する処理条件に決定するステップを含む。
【0020】
(8)本発明の他の局面に従う処理条件決定プログラムは、第9項に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定プログラムであって、仮の処理条件を予測アルゴリズムに与えて予測アルゴリズムにより予測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の処理条件を、基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成可能な予測アルゴリズム生成装置、予測アルゴリズム生成方法および予測アルゴリズム生成プログラムを提供することができる。また、汎化性の高い予測アルゴリズムを提供することができる。また、複雑なプロセスを経て得られる処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、処理条件決定方法および処理条件決定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
図2】処理量を説明するための図である。
図3】情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図4】予測アルゴリズム生成装置の構成の一例を示す図である。
図5】一実施の形態に係る基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
図6】被膜処理におけるノズルの基板に対する相対位置の変化を説明するための図である。
図7】ノズルの動作パターンの一例を示す図である。
図8】処理条件生成部が有する機能の一例を示す図である。
図9】分割領域を説明するための図である。
図10】滞在時間分布を説明するための図である。
図11】クラスタリングの結果の一例を説明するための図である。
図12】予測アルゴリズムが実現される学習モデルの構造を説明する図である。
図13】予測アルゴリズム生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】生成用処理条件生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16】実験結果を示す図である。
図17】実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(半導体ウェハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0024】
(1)基板処理システムの全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。図1の基板処理システム1は、情報処理装置100、予測アルゴリズム生成装置200および基板処理装置300を含む。予測アルゴリズム生成装置200は、例えばサーバであり、情報処理装置100は、例えばパーソナルコンピュータである。
【0025】
予測アルゴリズム生成装置200および情報処理装置100は、基板処理装置300を管理するために用いられる。なお、予測アルゴリズム生成装置200および情報処理装置100が管理する基板処理装置300は、1台に限定されるものではなく、基板処理装置300の複数を管理してもよい。
【0026】
本実施の形態に係る基板処理システム1において、情報処理装置100、予測アルゴリズム生成装置200および基板処理装置300は、互いに有線または無線の通信線または通信回線網により接続される。情報処理装置100、予測アルゴリズム生成装置200および基板処理装置300は、それぞれがネットワークに接続され、互いにデータの送受信が可能である。ネットワークは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)が用いられる。また、ネットワークは、インターネットであってもよい。また、情報処理装置100と基板処理装置300とは、専用の通信回線網で接続されてもよい。ネットワークの接続形態は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0027】
なお、予測アルゴリズム生成装置200は、基板処理装置300および情報処理装置100と、必ずしも通信線または通信回線網で接続される必要はない。この場合、基板処理装置300で生成されたデータが記録媒体を介して予測アルゴリズム生成装置200に渡されてもよい。また、予測アルゴリズム生成装置200で生成されたデータが記録媒体を介して情報処理装置100に渡されてもよい。
【0028】
基板処理装置300には、図示しない表示装置、音声出力装置および操作部が設けられる。基板処理装置300は、基板処理装置300の予め定められた処理条件(処理レシピ)に従って運転される。
【0029】
(2)基板処理装置の概要
基板処理装置300は、制御装置10と、複数の基板処理ユニットWUを備える。制御装置10は、複数の基板処理ユニットWUを制御する。複数の基板処理ユニットWUそれぞれは、処理条件に従って被膜が形成された基板Wに処理液を供給することにより基板Wに形成された被膜を処理する。基板処理ユニットWUが処理条件に従って被膜が形成された基板Wに処理液を供給することにより行う処理を被膜処理という。
【0030】
本実施の形態において、処理対象の基板Wは、直径300mmを有するが、本発明は、これに限定されるものではない。処理液はエッチング液を含み、基板処理ユニットWUはエッチング処理を実行する。エッチング液は、薬液である。エッチング液は、例えば、フッ硝酸(フッ酸(HF)と硝酸(HNO)との混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、または、燐酸(HPO)である。
【0031】
基板処理ユニットWUは、スピンチャックSCと、スピンモータSMと、ノズル311と、ノズル移動機構301と、を備える。スピンチャックSCは、基板Wを水平に保持する。基板Wは、スピンモータSMの第1回転軸AX1と基板Wの中心とが一致するようにスピンチャックSCに保持される。スピンモータSMは、第1回転軸AX1を有する。第1回転軸AX1は、上下方向に延びる。スピンチャックSCは、スピンモータSMの第1回転軸AX1の上端部に取り付けられる。スピンモータSMが回転すると、スピンチャックSCが第1回転軸AX1を中心として回転する。スピンモータSMは、ステッピングモータである。スピンチャックSCに保持された基板Wは、第1回転軸AX1を中心として回転する。このため、基板Wの回転速度は、ステッピングモータの回転速度と同じである。なお、スピンモータの回転速度を示す回転速度信号を生成するエンコーダを設ける場合、エンコーダにより生成される回転速度信号から基板Wの回転速度が取得されてもよい。この場合、スピンモータSMは、ステッピングモータ以外のモータを用いることができる。
【0032】
ノズル311は、スピンチャックSCに保持された基板Wの表面(上面)にエッチング液を供給する。ノズル311には、図示しないエッチング液供給部からエッチング液が供給される。ノズル311は、回転中の基板Wの表面に向けてエッチング液を吐出する。
【0033】
ノズル移動機構301は、略水平方向にノズル311を移動させる。具体的には、ノズル移動機構301は、第2回転軸AX2を有するノズルモータ303と、ノズルアーム305と、を有する。ノズルモータ303は、第2回転軸AX2が略鉛直方向に沿うように配置される。ノズルアーム305は、直線状に延びる長手形状を有する。ノズルアーム305の一端は、ノズルアーム305の長手方向が第2回転軸AX2とは異なる方向となるように、第2回転軸AX2の上端に取り付けられる。ノズルアーム305の他端には、エッチング液の吐出口が下方を向くようにノズル311が取り付けられる。
【0034】
ノズルモータ303が動作すると、ノズルアーム305は第2回転軸AX2を中心として水平面内で回転する。これにより、ノズルアーム305の他端に取り付けられたノズル311は、第2回転軸AX2を中心として水平方向に移動する(旋回する)。ノズル311は、水平方向に移動しながら基板Wに向けてエッチング液を吐出する。ノズルモータ303は、例えば、ステッピングモータである。
【0035】
複数の基板処理ユニットWUの機能および構成は同じである。以下、複数の基板処理ユニットWUそれぞれが実行する被膜処理を、総称して基板処理装置300が実行する被膜処理という。基板処理装置300が処理条件に従って被膜処理を実行することにより、基板Wに形成される被膜の膜厚が変化する。被膜処理の前後で変化する被膜の膜厚の変化量が処理量である。処理量は、基板処理装置300が被膜処理を実行する際に用いる処理条件によって異なる。
【0036】
図2は、処理量を説明するための図である。図2において、縦軸が膜厚を示し、横軸が基板の半径方向の位置を示す。なお、横軸の原点が基板の中心を示す。基板処理装置300により被膜処理が実行される前の基板Wに形成された被膜の膜厚が実線で示される。基板処理装置300により処理条件に従って被膜処理が実行されることにより、基板Wに形成される被膜の膜厚が調整される。基板処理装置300により被膜処理が実行された後の基板Wに形成された被膜の膜厚が点線で示される。基板Wの径方向の位置それぞれにおける被膜の膜厚を膜厚特性と呼ぶ。
【0037】
基板処理装置300により被膜処理が実行される前の基板Wに形成された被膜の膜厚と基板処理装置300により被膜処理が実行された後の基板Wに形成された被膜の膜厚との差が処理量(エッチング量)である。換言すれば、処理量は、基板処理装置300の被膜処理により基板Wの径方向における異なる複数の位置それぞれにおいて減少した被膜の厚さを示す。
【0038】
基板処理装置300により実行される被膜処理に対して、目標となる目標膜厚が定められる。目標膜厚は、一点鎖線で示される。乖離特性は、基板処理装置300により被膜処理が実行された後の基板Wに形成された被膜の膜厚と目標膜厚との差分である。乖離特性は、基板Wの径方向における異なる複数の位置それぞれにおける差分を含む。
【0039】
図1に戻って、制御装置10は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含み、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、基板処理装置300の全体を制御する。制御装置10は、スピンモータSMおよびノズルモータ303を制御する。予測アルゴリズム生成装置200は、処理条件から処理量を予測する予測アルゴリズムを生成し、予測アルゴリズムを情報処理装置100に出力する。
【0040】
情報処理装置100は、予測アルゴリズムを用いて、基板処理装置300がこれから処理する予定の基板に対して、被膜処理を実行するための処理条件を決定する。情報処理装置100は、決定された処理条件を基板処理装置300に出力する。
【0041】
図3は、予測アルゴリズム生成装置の構成の一例を示す図である。図3を参照して、予測アルゴリズム生成装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207により構成される。CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207はバス208に接続される。
【0042】
RAM202は、CPU201の作業領域として用いられる。ROM203にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置204は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM203または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。記憶装置204には、CD-ROM209が着脱可能である。
【0043】
操作部205は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。入出力I/F207は、ネットワークに接続される。CPU201が実行するプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM209に限られず、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU201がネットワークに接続されたコンピュータからプログラムをダウンロードして記憶装置204に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピュータがプログラムを記憶装置204に書込みするようにして、記憶装置204に記憶されたプログラムをRAM202にロードしてCPU201で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU201により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0044】
図4は、情報処理装置の構成の一例を示す図である。図4を参照して、情報処理装置100は、CPU101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリメモリ)103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F(インターフェイス)107により構成される。CPU101、RAM102、ROM103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F107はバス108に接続される。
【0045】
RAM102は、CPU101の作業領域として用いられる。ROM103にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置104は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM103または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。
【0046】
記憶装置104には、CD-ROM109が着脱可能である。CPU101が実行するプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM109に限られず、光ディスク、半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU101がネットワークに接続されたコンピュータからプログラムをダウンロードして記憶装置104に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピュータがプログラムを記憶装置104に書込みするようにして、記憶装置104に記憶されたプログラムをRAM102にロードしてCPU101で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU101により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0047】
操作部105は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。使用者は、操作部105を操作することにより、情報処理装置100に所定の指示を与えることができる。表示装置106は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、使用者による指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入出力I/F107は、ネットワークに接続される。
【0048】
(3)基板処理システムの機能構成
図5は、一実施の形態に係る基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。図5を参照して、基板処理装置300が備える制御装置10は、基板処理ユニットWUを制御して、処理時間において、処理条件に従って基板Wに対して被膜処理を行う。処理時間は、基板に対する被膜処理に対して定められる時間である。本実施の形態において、処理時間は、基板Wにノズル311がエッチング液を吐出している間の時間である。本実施の形態において、処理時間は60秒に設定されている。処理条件は、基板処理ユニットWUが被膜処理を実行する際に用いる条件である。
【0049】
処理条件は、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量、基板Wの回転数およびノズル311の位置を含む。エッチング液の濃度は、複数の薬液の混合比で示される。ノズル311の位置は、被膜処理が実行される間の複数の時点それぞれにおけるノズル311と基板Wとの相対位置で示される。ノズル311と基板との相対位置は、ノズルモータ303の回転角度で示される。
【0050】
処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件および時間の経過に伴って変動する変動条件を含む。本実施の形態において、固定条件がエッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量および基板Wの回転数であり、変動条件が、被膜処理が実行される処理時間の間におけるノズル311と基板Wとの相対位置である。本実施の形態においては、変動条件は、被膜処理が実行される処理時間を2000等分した複数の時刻それぞれにおけるノズル311の基板Wに対する相対位置とする。従って、変動条件は、2000個のデータで構成される。
【0051】
予測アルゴリズム生成装置200は、生成用処理条件生成部220と、予測アルゴリズム生成部230と、予測アルゴリズム送信部240と、を含む。予測アルゴリズム生成装置200が備える機能は、予測アルゴリズム生成装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された学習モデル生成プログラムを実行することにより、CPU201により実現される。
【0052】
生成用処理条件生成部220の詳細は、後述するが、予測アルゴリズム生成部230が予測アルゴリズムを生成するために用いるデータセットを生成する。データセットは、処理条件と、基板処理装置300が当該処理条件で基板Wに被膜処理を行った結果を示す処理量とを含む。予測アルゴリズム生成部230には、生成用処理条件生成部220からデータセットが入力される。予測アルゴリズム生成部230は、データセットに基づいて予測アルゴリズムを生成し、生成された予測アルゴリズムを予測アルゴリズム送信部240に出力する。予測アルゴリズム送信部240は、予測アルゴリズム生成部230により生成された予測アルゴリズムを情報処理装置100に送信する。
【0053】
情報処理装置100は、予測アルゴリズム受信部110と、処理条件決定部120と、予測部130と、評価部140と、処理条件送信部150と、を含む。情報処理装置100が備える機能は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実現される。
【0054】
予測アルゴリズム受信部110は、予測アルゴリズム生成装置200から送信される予測アルゴリズムを受信し、受信された予測アルゴリズムを予測部130に出力する。処理条件決定部120は、基板処理装置300がこれから処理の対象とする基板Wに対する処理条件を決定し、処理条件に含まれる変動条件と処理条件に含まれる固定条件とを予測部130に出力する。
【0055】
予測部130は、変動条件と固定条件とから予測アルゴリズムを用いて予測処理量を予測する。予測部130は、処理条件決定部120から入力される変動条件と、固定条件とを予測アルゴリズムに入力し、予測アルゴリズムが出力する予測処理量を評価部140に出力する。
【0056】
評価部140は、予測部130から入力される予測処理量を評価し、評価結果を処理条件決定部120に出力する。詳細には、評価部140は、基板処理装置300が処理対象とする予定の基板Wの処理前の膜厚特性を取得する。評価部140は、予測部130から入力される予測処理量と、基板Wの処理前の膜厚特性とからエッチング処理後に予測される膜厚特性を算出し、目標とする膜厚特性と比較する。比較の結果が評価基準を満たしていれば、処理条件決定部120により決定された処理条件を、基板処理装置300がこれから処理の対象とする基板Wに対する処理条件として処理条件送信部150に出力する。例えば、評価部140は、乖離特性を算出し、乖離特性が評価基準を満たしているか否かが判断される。乖離特性は、エッチング処理後の基板Wの膜厚特性と目標の膜厚特性との差分である。評価基準は、任意に定めることができる。例えば、評価基準は、乖離特性において差分の最大値が閾値以下であるとしてもよいし、差分の平均が閾値以下であるとしてもよい。
【0057】
処理条件送信部150は、処理条件決定部120から入力される処理条件を、基板処理装置300の制御装置10に送信する。基板処理装置300は、処理条件に従って基板Wを処理する。
【0058】
評価部140は、評価結果が評価基準を満たしていない場合は、評価結果を処理条件決定部120に出力する。評価結果は、エッチング処理後に予測される膜厚特性またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分を含む。
【0059】
処理条件決定部120は、評価部140から評価結果が入力されることに応じて、予測部130に予測させるための新たな処理条件を決定する。処理条件決定部120は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の変動条件および複数の固定条件からそれぞれ1つを選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む処理条件を予測部130に予測させるための新たな処理条件として決定する。
【0060】
処理条件決定部120は、ベイズ推定を用いて処理条件を探索してもよい。評価部140により複数の評価結果が出力される場合、処理条件と評価結果との組が複数となる。複数の組それぞれにおける予測処理量の傾向から被膜の膜厚が均一となる処理条件またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分が最小となる処理条件を探索する。
【0061】
具体的には、処理条件決定部120は、目的関数を最小化するように処理条件を探索する。目的関数は、被膜の膜厚の均一性を示す関数または被膜の膜厚特性と目標膜厚特性との一致性を示す関数である。例えば、目的関数は、エッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分をパラメータで示した関数である。ここでのパラメータは、対応する変動条件である。対応する変動条件は、予測アルゴリズムが予測処理量を予測するために用いた変動条件である。処理条件決定部120は、複数の変動条件のうちから探索により決定されたパラメータである変動条件を選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む新たな処理条件を決定する。
【0062】
ここで、変動条件について説明する。図6は、被膜処理におけるノズルの基板に対する相対位置の変化を説明するための図である。図6を参照して、スピンチャックSCに保持された基板Wに対するノズル311の相対位置の変化が示される。ノズル311は、スピンチャックSCに保持された基板Wの上方の領域を移動する。ノズル311は第2回転軸AX2を中心に回転するので、ノズル311が移動する軌跡は円弧である。ノズル311が移動する軌跡は基板の中心である基板中心OPを通る。このため、ノズル311は、基板Wの径方向において基板中心OPから周縁部の全体に渡って移動する。ここでは、ノズル311が移動する軌跡は、その一端が基板Wの周縁部より内側の動作端部EP1で示され、その他端が基板Wの周縁部より内側の動作端部EP2で示される。ノズル311の動作端部EP1から基板中心OPに移動する走査が矢印a1で示され、ノズル311の基板中心OPから動作端部EP2に移動する走査が矢印a2で示され、ノズル311の動作端部EP2から基板中心OPに移動する走査が矢印a3で示され、ノズル311の基板中心OPから動作端部EP1に移動する走査が矢印a4で示される。
【0063】
図7は、ノズルの動作パターンの一例を示す図である。図7において、縦軸に基板Wに対するノズル311の相対位置が示され、横軸に経過時間(秒)が示される。本実施の形態においては、ノズル311を基板Wに対して移動させるノズル動作を開始してから終了するまでの走査期間は、処理時間に等しい。上述したように処理時間が60秒に設定されているので、ノズルの動作パターンは、0~60秒の期間の相対位置が示される。ノズルの相対位置は、基板中心OPをゼロとし、基板中心OPから動作端部EP1までの範囲は負の値で示され、基板中心OPから動作端部EP2までの範囲は正の値で示される。基板Wは、直径300mmを有するので、基板中心OPから動作端部EP1,EP2までの距離は、±150mm以下に設定される。ここでは、基板中心OPから動作端部EP1までの距離は-147mmに設定され、基板中心OPから動作端部EP2までの距離は+147mmに設定される。図7のノズルの動作パターンにおいては、ノズル311が基板中心OPに位置する場合におけるノズル311の相対位置が0で示され、ノズル311が動作端部EP1に位置する場合におけるノズル311の相対位置が-147mmで示され、ノズル311が動作端部EP2に位置する場合におけるノズル311の相対位置が147mmで示される。
【0064】
図7に示すノズル動作パターンは、動作端部EP1と動作端部EP2との間を5回往復する走査として示される。基板処理装置300のノズル311のノズル動作パターンとしては、5回往復する走査に限定されるものではなく、1回以上往復する走査であればよい。ノズル動作パターンにおける最初の1往復の走査について、図6に示した矢印a1~a4で示される走査に対応する相対位置の部分に同じ符号が付されて示される。図7に示したノズル動作パターンの一例においては、わかりやすく説明するためにノズル311が単純に往復する例が記載されているが、実際のノズル311の動作については、ノズル311の変速およびノズル311の停止が行われている。以下、処理時間においてノズル311の変速およびノズル311の停止が行われる基板W上の点を変速点と呼ぶ。変動条件は、変速点の数、基板上の変速点の位置、基板上の変速点の位置におけるノズル311の速度およびノズル311の停止時間を含む。
【0065】
次に、図5の生成用処理条件生成部220の詳細な構成について説明する。図8は、処理条件生成部が有する機能の一例を示す図である。生成用処理条件生成部220は、生成用変動条件決定部221と、変換部222と、回数分類部223と、分類部224と、生成用変動条件選定部225と、生成用固定条件決定部226と、生成用処理条件決定部227と、処理量取得部228とを含む。
【0066】
生成用変動条件決定部221は、変動条件の取りうる範囲の全体に散らばる複数の生成用変動条件を決定する。生成用処理条件は、生成用変動条件と、生成用固定条件とを含む。生成用変動条件は、時間の経過に伴って変化する基板Wに対するノズル311の位置である。ここでは、基板処理装置300が被膜処理を実行する間にノズル311が基板Wを1回以上往復し、ノズル311が1往復する間にノズル311の速度を1回以上変化させる場合を例に説明する。変動条件は、ノズル311の往復回数、ノズル311の変速点の数と、変速点それぞれに設定されるノズル311の速度と、変速点間をノズル311が移動する移動時間と、により定まる。ノズル311の速度は0を含み、ノズル311の速度が0の場合、ノズル311が停止している状態なので、ノズル311の速度が0の移動時間は停止時間ともいう。被膜処理が実行される処理時間が固定されている場合、処理時間を往復回数で除算することにより1往復当たりのスキャン時間Tが定まる。変速点数は変速回数nを示す。スキャン時間Tと距離L(基板直径)とし、スキャン時間Tにおけるノズル311の速度の平均を平均速度Vmとすると、2L=T×Vmである。ノズル311が定速度の期間を移動期間Ti(1≦i≦n)、移動期間Tiにおけるノズル311の速度をViとおけば、次式(1)が成立する。
2L=ΣTi×Vi…(1)
上記式(1)を満たすTiおよびViの組み合わせを定めることにより、往復回数および変速点の数に対する変動条件が定まる。例えば、TiおよびViのいずれか一方を定めれば、式(1)から他方が定まる。Tiを定めてからViを定めてもよいし、Viを定めてからTiを定めてもよい。例えば、1往復当たりのスキャン時間Tを等分することによりTiを定めてもよいし、スキャン時間Tを分割する複数のパターンを予め準備しておいてもよい。複数のパターンは、例えば、Tiが徐々に増加するパターン、Tiが徐々に減少するパターン、Tiが徐々に増加した後に徐々に減少するパターン等を含む。
【0067】
生成用変動条件決定部221は、複数組の往復回数および変速点数それぞれに対して、複数組の移動期間Tiおよび速度Viの組を生成することにより、複数の生成用変動条件を生成する。往復回数および変変速点数それぞれに上限値が設定されている場合、生成用変動条件決定部221は、往復回数および変速点数の全ての組み合わせに対して、複数組の移動期間Tiおよび速度Viの組を生成する。
【0068】
生成用変動条件決定部221により決定される複数の生成用変動条件は、上述したノズルの動作パターンがそれぞれ異なる。例えば、生成用変動条件決定部221により生成される複数の生成用変動条件は、往復回数、変速点数、移動期間および速度の少なくとも1つが異なる。本実施の形態において、生成用変動条件決定部221により決定される生成用変動条件は、18000個である。
【0069】
変換部222は、生成用変動条件決定部221により決定された複数の生成用変動条件を変換データに変換する。変換部222は、生成用変動条件と変換データとの組を回数分類部223に出力する。変換データは、生成用変動条件に関わる変数である。
【0070】
本実施の形態においては、変換データを累積滞在時間分布とする。累積滞在時間分布は、基板Wの径方向の複数の位置ごとにノズルが処理時間内に滞在する時間を、基板Wの中心から周辺に向かって累積した値である。累積滞在時間分布について説明する。
【0071】
図9は、分割領域を説明するための図である。図9を参照して、基板Wの上面を、基板中心OPを中心とする複数の同心円で分割した15の分割領域b1~b15が示される。分割領域b15は円であり、分割領域b1~b14は円環である。複数の分割領域b2~b15それぞれの基板Wの径方向の長さは同じである。分割領域b2~b15それぞれの基板の径方向の長さは、外周の半径と内周の半径との差である。分割領域b1の半径は、複数の分割領域b2~b15それぞれの基板Wの径方向の長さと同じである。ここでは、分割領域b1の半径は10mmであり、分割領域b1~b14それぞれの外周と内周の半径の差は10mmである。分割領域b2~b15それぞれの外周と内周の半径の差および分割領域b1の半径は、ノズル311の内径よりも大きい。分割領域b2~b15それぞれの基板の径方向の長さおよび分割領域b1の半径は、ノズル311の内径以上であることが好ましい。
【0072】
図10は、滞在時間分布を説明するための図である。図10において、横軸は、基板Wの半径方向における位置を示す。基板中心OPの位置が0mmで示され、基板Wの径方向における端部が150mmで示される。横軸の0mm~150mmの間に、分割領域b1~b15が割り当てられる。
【0073】
縦軸は、分割領域b1~b15それぞれにおけるノズル311の滞在時間を示す。ここでは、図7に示された動作パターンでノズル311が移動する場合における分割領域b1~b15それぞれの滞在時間が示される。滞在時間は、複数の分割領域b1~b15それぞれにノズル311が位置する時間の合計である。例えば、図7に示されたノズルの動作パターンでノズル311が移動する場合、ノズル311が分割領域b2を10回横切る。分割領域b2における滞在時間は、ノズル311が分割領域b2を横切る時間の合計である。
【0074】
上述したように、ノズル311の移動範囲が、複数の分割領域b1~b15に分割される。このため、複数の分割領域b1~b15それぞれにおけるノズル311の滞在時間が、基板Wの径方向位置の情報を含む複数の分割領域b1~b15それぞれで算出される。このため、複数の分割領域b1~b15それぞれにおける滞在時間は、基板Wの径方向における位置を含んだ情報である。また、複数の分割領域b1~b15それぞれのノズル311が横切る部分の基板Wの径方向の長さは同じである。このため、複数の分割領域b1~b15それぞれにおけるノズル311の滞在時間は、ノズル311の基板Wに対する相対位置の変化に関して基板Wの径方向で異なる位置間での偏りをなくした時間とすることができる。
【0075】
累積滞在時間分布は、図10に示した滞在時間分布において、基板Wの中心から外周に向けて順に滞在時間を累積することにより求められる。具体的には、分割領域b2の累積滞在時間は分割領域b1の滞在時間と分割領域b2の滞在時間との和であり、分割領域b3の累積滞在時間は分割領域b2の累積時間と分割領域b3の滞在時間との和であり、分割領域b15の累積滞在時間は分割領域b14の累積滞在時間と分割領域b15の滞在時間との和である。
【0076】
本実施の形態においては、変動条件が累積滞在時間である変換データに変換される。累積滞在時間は、基板Wの上面を15個の分割領域b1~b15に分割して求められるため、変換データの数は15個である。分割領域b1~b15それぞれの基板の径方向の長さが大きいほど、変換データの数が小さくなる。分割領域b1~b15それぞれの基板の径方向の長さは、ノズル311の内径以上なので、変換データの数の最大値は、ノズル311の内径により定まる。
【0077】
図8に戻って、回数分類部223は、変換部222から複数組の生成用変動条件と変換データが入力される。回数分類部223は、複数の生成用変動条件をノズル311の往復回数に基づいて、複数の回数別グループに分類する。本実施の形態においては、回数分類部223は、複数の生成用変換データを、ノズル311の往復回数が0~3回の回数別グループと、往復回数が3~6回の回数別グループと、往復回数が6~9回の回数別グループと、往復回数が9回以上の回数別グループとのいずれか分類する。なお、回数別グループを往復回数3回、6回、9回を閾値として分類しているが、これら閾値として他の値をとってもよい。また、回数別グループの数は4つに限定されることなく、1以上であればよい。
【0078】
また、分類部224は、複数の回数別グループそれぞれにおいて、各回数別グループに属する生成用変動条件を変換データに基づいて複数のグループにクラスタリングする。図11は、クラスタリングの結果の一例を説明するための図である。図11には、往復回数が0~3回のクラスタの半径方向の各位置における基板中心OPを基準としたノズル311の累積滞在分布が示される。図11の縦軸には、基板中心OPからのノズルの滞在時間の累積が示され、横軸には、基板Wの半径方向の位置が示される。基板中心OPの位置が0mmで示され、基板Wの径方向における端部が150mmで示される。図11の例の縦軸においては、基板Wの半径方向の各位置における累積滞在時間を累積滞在時間の総計で除算することにより、1に規格化されている。図11に示される基準線SLは、ノズル動作パターンにおいて、基板Wの半径方向の各位置に同じ時間だけノズル311が存在した場合のノズル311の累積滞在分布を表す。生成用変動条件に含まれるノズル動作パターンは、基準線SLを中心として分布するが、図11においては、その図示が省略されている。
【0079】
図11においては、生成用変動条件のノズル動作パターンが領域A1~A4にクラスタリングされる例が示される。領域A1~A4については、領域A1,A2と領域A3,A4とが基準線SLを中心にして対称である例が記載されているが、領域A1~A4については、限定するものではないがk-means法により決定されてもよい。クラスタリングは、k-means法とは別の手法が用いられてもよい。また、ノズル動作パターンは、4つにクラスタリングされる例が記載されているが、クラスタリングされる数は、これに限定されるものではない。
【0080】
図8に戻って、生成用変動条件選定部225は、分類部224によりクラスタリングされたクラスタに属する生成用変動条件から一または複数の生成用変動条件をランダムに選定し、選定した複数の生成用変動条件を生成用処理条件決定部227に出力する。例えば、分類部224により往復回数が0~3回の回数別グループに属する複数の生成用変動条件が領域A1~A4で示される4つのクラスタそれぞれから60個の生成用変動条件をランダムに選定する。これにより、往復回数が0~3回の回数別グループから240個の生成用変動条件が選定される。また、生成用変動条件選定部225は、往復回数が3~6回の回数別グループと、往復回数が6~9回の回数別グループと、往復回数が9回以上の回数別グループとについても同様の手法を用いて生成用変動条件を240個ずつ選定する。したがって、生成用変動条件選定部225は、960個の生成用変動条件を決定する。これにより、生成用変動条件選定部225において、複数の生成用変動条件から累積滞在時間分布の特徴の異なる生成用変動条件が均等に選択されるので、特定の累積滞在時間分布に偏らない複数の変動条件を選択することができる。
【0081】
生成用固定条件決定部226は、固定条件に設定される値が取り得る範囲の全体に散らばる複数の生成用固定条件を生成し、生成用処理条件決定部227に出力する。例えば、生成用固定条件決定部226は、その固定条件が取りうる範囲を3等分した範囲の中央の値の固定条件を生成用固定条件として生成する。本実施の形態においては、3個の基板の回転数と、3個のエッチング液の流量と、3個のエッチング液の温度とを組み合わせた27個の固定条件が生成用固定条件として決定される。
【0082】
生成用処理条件決定部227には、生成用変動条件選定部225から生成用変動条件が入力され、生成用固定条件決定部226から生成用固定条件が入力される。生成用処理条件決定部227は、生成用変動条件と生成用固定条件とを組み合わせることにより複数の処理条件を生成する。また、生成用処理条件決定部227は、複数の生成用処理条件の個数を例えばペアワイズ法により絞ることにより、予測アルゴリズムを生成するための生成用処理条件を決定する。本実施の形態においては、生成用処理条件決定部227には、生成用変動条件選定部225から960個の生成用変動条件が入力され、生成用固定条件決定部226から27個の生成用固定条件が入力される。生成用処理条件決定部227は、960個の生成用変動条件と27個の生成用固定条件とを組み合わせることにより、25920個の生成用処理条件を生成する。また、生成用処理条件決定部227は、ペアワイズ法により25920個の生成用処理条件を2000個の生成用処理条件に絞る。これにより、生成用処理条件決定部227は、2000個の生成用処理条件を、予測アルゴリズムを生成するための生成用処理条件として決定する。生成用処理条件決定部227は、2000個の生成用処理条件を処理量取得部228に出力する。
【0083】
処理量取得部228は、生成用処理条件決定部227から2000個の生成用処理条件が入力される。処理量取得部228は、2000個の生成用処理条件にそれぞれ対応する処理量を取得する。具体的には、処理量取得部228は、2000個の生成用処理条件を順に基板処理装置300の制御装置10に出力する。基板処理装置300が備える制御装置10は、処理量取得部228から生成用処理条件が入力されることに応じて、生成用処理条件に従って被膜処理を実行する。基板処理装置300が被膜処理を実行することにより、処理量が得られる。基板処理装置300の制御装置10は、被膜処理を実行した結果得られる処理量を予測アルゴリズム生成装置200に送信する。処理量取得部228は、基板処理装置300の制御装置10から入力される処理量と、先に送信した生成用処理条件とを含むデータセットを生成し、生成されたデータセットを予測アルゴリズム生成部230に出力する。処理量取得部228は、生成用処理条件決定部227から入力される2000個の生成用処理条件にそれぞれ対応する2000個の処理量を取得し、2000個のデータセットを予測アルゴリズム生成部230に出力する。
【0084】
予測アルゴリズム生成部230には、処理量取得部228から複数組のデータセットが入力される。データセットは、生成用処理条件と処理量とを含む。予測アルゴリズム生成部230は、複数組のデータセットを用いて、予測アルゴリズムを生成する。本実施の形態においては、予測アルゴリズム生成部230は、複数組のデータセットを学習モデルに機械学習させることにより、予測アルゴリズムを生成する。
【0085】
図12は、予測アルゴリズムが実現される学習モデルの構造を説明する図である。図12を参照して、学習モデルは、A1層~C1層が入力側から出力側(上層から下層)に向かってこの順に設けられている。A1層には、第1畳み込みニューラルネットワークCNN1が設けられ、B1層には、第1全結合ニューラルネットワークNN1が設けられ、C1層には、第2畳み込みニューラルネットワークCNN2が設けられる。
【0086】
第1畳み込みニューラルネットワークCNN1には、生成用変動条件を累積滞在時間分布に変換した変換データが入力される。第1全結合ニューラルネットワークNN1には、第1畳み込みニューラルネットワークCNN1の出力と生成用固定条件とが入力される。第2畳み込みニューラルネットワークCNN2には、第1全結合ニューラルネットワークNN1の出力が入力される。なお、変換データに代えて、生成用変動条件が第1畳み込みニューラルネットワークCNN1に入力されてもよい。
【0087】
第1畳み込みニューラルネットワークCNN1は、複数の層を含む。本実施の形態では、第1畳み込みニューラルネットワークCNN1は、3つの層を含む。第1畳み込みニューラルネットワークCNN1内においては、入力側(上層側)から出力側(下層側)に向かって第1層L1a、第2層L1bおよび第3層L1cがこの順に設けられる。なお、本実施の形態では、複数の層として3つの層を含む場合について説明するが、3つ以上の層を含んでいてもよい。
【0088】
第1層L1a、第2層L1bおよび第3層L1cそれぞれは、畳み込み層およびプーリング層を含む。畳み込み層においては、複数のフィルタが適用される。プーリング層は、畳み込み層の出力を圧縮する。第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数は、第1層L1aの畳み込み層のフィルタの数の2倍に設定されている。第3層L1cの畳み込み層のフィルタの数は、第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数の2倍に設定されている。このため、累積滞在時間分布からできるだけ多くの特徴を抽出することができる。ここで、累積滞在時間分布は、ノズルの基板Wに対する相対位置における累積滞在時間を示す。このため、第1畳み込みニューラルネットワークCNN1は、複数のフィルタを用いて特徴を抽出するので、ノズルの基板Wに対する相対位置の変化について時間の要素を含む複数の特徴を抽出する。なお、ここでは第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数が、第1層L1aの畳み込み層のフィルタの数の2倍に設定される例を示しているが、2倍でなくてもよい。第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数は、第1層L1aの畳み込み層のフィルタの数よりも多い数であればよい。また、第3層L1cの畳み込み層のフィルタの数は、第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数の2倍でなくてもよい。第3層L1cの畳み込み層のフィルタの数は、第2層L1bの畳み込み層のフィルタの数よりも多い数であればよい。
【0089】
第1全結合ニューラルネットワークNN1は、複数の層が設けられる。図12の例では、第1全結合ニューラルネットワークNN1は、入力側のb1a層および出力側のb1b層の二つの層が設けられる。図12の例では、各層には、複数のノードが含まれる。図12の例では、b1a層に5つのノード、b1b層に4つのノードが示されるが、ノードの数は、これに限定されるものではない。b1a層のノードの数は、第1畳み込みニューラルネットワークCNN1の出力側のノードの数と固定条件の数との和に等しくなるように設定される。b1b層のノードの数は、第2畳み込みニューラルネットワークCNN2の入力側のノードの数に等しくなるように設定される。b1a層のノードの出力はb1b層のノードの入力に接続される。パラメータは、b1a層のノードの出力に対して重み付けする係数を含む。b1a層とb1b層との間には、1または複数の中間層が設けられてもよい。
【0090】
第2畳み込みニューラルネットワークCNN2は、複数の層を含む。本実施の形態では、第2畳み込みニューラルネットワークCNN2は、3つの層を含む。第2畳み込みニューラルネットワークCNN2においては、入力側(上層側)から出力側(下層側)に向かって第4層L1d、第5層L1eおよび第6層L1fがこの順に設けられる。なお、本実施の形態では、複数の層として3つの層を含む場合について説明するが、3つ以上の層を含んでいてもよい。
【0091】
第4層L1d、第5層L1eおよび第6層L1fそれぞれは、畳み込み層およびプーリング層を含む。畳み込み層においては、複数のフィルタが適用される。プーリング層は、畳み込み層の出力を圧縮する。第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数は、第4層L1dの畳み込み層のフィルタの数の1/2倍に設定されている。また、第6層L1fの畳み込み層のフィルタの数は、第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数の1/2倍に設定されている。このため、処理量からできるだけ多くの特徴を抽出することができる。処理量は、基板Wの径方向における位置が異なる値である。第2畳み込みニューラルネットワークCNN2は、複数のフィルタを用いるので、処理量について基板Wの径方向の位置の要素を含む複数の特徴を抽出する。なお、ここでは第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数が、第4層L1dの畳み込み層のフィルタの数の1/2倍に設定される例を示しているが、1/2倍でなくてもよい。第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数は、第4層L1dの畳み込み層のフィルタの数よりも少ない数であればよい。また、第6層L1fの畳み込み層のフィルタの数は、第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数の1/2倍でなくてもよい。第6層L1fの畳み込み層のフィルタの数は、第5層L1eの畳み込み層のフィルタの数よりも少ない数であればよい。
【0092】
図13は、予測アルゴリズム生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。予測アルゴリズム生成処理は、予測アルゴリズム生成装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された予測アルゴリズム生成プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。
【0093】
図13を参照して、予測アルゴリズム生成装置200が備えるCPU201は、生成用処理条件生成処理を実行する(ステップS01)。ここでは、予測アルゴリズムを生成するための複数の生成用処理条件が生成される。生成用処理条件は、生成用変動条件と、生成用固定条件とを含む。生成用処理条件生成処理の詳細については後述する。続いて、ステップS02において、CPU201は、ステップS01で生成された複数の生成用処理条件のうちから処理対象となる1つを選択し、処理をステップS03に進める。ステップS03においては、処理対象の生成用処理条件に対応する処理量を取得する。本実施の形態においては、生成用処理条件を基板処理装置300に出力し、基板処理装置300が生成用処理条件に従って被膜処理を実行した結果得られる処理量を取得する。ステップS04においては、データセットを生成し、処理をステップS05に進める。ステップS02において処理対象に選択された生成用処理条件とステップS03で取得された処理量とを含むデータセットが生成される。ステップS05においては、処理対象とするべき次の生成用処理条件が存在するか否かが判断される。ステップS01において生成された複数の生成用処理条件のうちに、ステップS02において処理対象に選択されていない生成用処理条件が存在するか否かが判断される。そのような生成用処理条件が存在するならば処理はステップS02に戻るが、そうでなければ処理はステップS06に進む。ステップS02~ステップS05が繰り返されることにより、ステップS01において生成された複数の生成用処理条件それぞれに対応する複数組のデータセットが生成される。
【0094】
次に、ステップS06において、CPU201は、生成された複数組のデータセットを用いて予測アルゴリズムを生成する。データセットは、生成用処理条件と処理量とを含む。ここでは、複数組のデータセットを機械学習して学習モデルを生成することにより予測アルゴリズムを生成する。CPU201は、生成用処理条件を説明変数とし、処理量を目的変数として、機械学習する。学習済の学習モデルが予測アルゴリズムである。CPU201は、複数組のデータセットのすべてを機械学習することにより、予測アルゴリズムを生成する。その後、ステップS07において、CPU201は、生成された予測アルゴリズムを情報処理装置100に送信する。
【0095】
図14は、生成用処理条件生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。図14を参照して、予測アルゴリズム生成装置200が備えるCPU201は、生成用変動条件を決定する(ステップS11)。ここでは、変動条件の取り得る範囲の全体に散らばる複数の変動条件が生成用変動条件として決定される。次のステップS12においては、CPU201は、決定された生成用変動条件を変換データに変換する。ここでは、変換データは累積滞在時間分布である。累積滞在時間分布は、変動条件を基板Wの上面を複数個に分割した複数の分割領域それぞれにおけるノズルの滞在時間に変換し、基板Wの中心から外周に向けて順に滞在時間を累積することにより求められる。
【0096】
ステップS13においてCPU201は、生成用変動条件を複数の回数別グループに分類する。ここでは、複数の生成用変動条件が、ノズル311の往復回数に基づいて、複数の回数別グループに分類される。ステップS14においてCPU201は、一の回数別グループを選択し、選択された回数別グループに含まれる複数の生成用変動条件を変換データでクラスタリングする。複数の生成用変動条件が変換データでクラスタリングされると、1以上のクラスタが特定される。1以上のクラスタそれぞれには、複数の生成用変動条件が属する。続いて、CPU201は、クラスタリングにより特定された複数のクラスタから処理対象となるクラスタを選択し(ステップS15)、選択したクラスタから生成用変動条件を選定する(ステップS16)。ステップS16においてCPU201は、処理対象に選択されたクラスタに属する複数の生成用変動条件から所定数の生成用変動条件をランダムに選定する。所定数は1以上の整数である。
【0097】
ステップS17において、CPU201は、クラスタリングにより特定された1以上のクラスタのうちに未選択のクラスタがあるか否かを判定する。未選択のクラスタがある場合、処理はステップS15に戻る。これにより、クラスタリングにより特定された1以上のクラスタのすべてに対してステップS15,S16の処理が繰り返される。この場合、一の回数別グループにおいてクラスタリングにより特定された1以上のクラスタそれぞれから所定数の生成用変動条件が選定されるので、累積滞在時間分布の特徴の異なる生成用変動条件が均等に選定される。ステップS17において、未選択のクラスタが存在しないと判断する場合、処理はステップS18に進む。
【0098】
ステップS18において、CPU201は、未選択の回数別グループがあるか否かを判定する。未選択の回数別グループがある場合、処理はステップS14に戻る。これにより、複数の回数別グループの全てに対してステップS14~ステップS17の処理が実行される。この場合、ノズル311の往復回数の違いによりクラスタリングの対象となる生成用処理条件を異ならせるので、ノズル311の往復回数の違いにより処理量が異なる場合に有効である。ステップS18において、未選択の回数別グループがないと判断される場合、処理はステップS19に進む。
【0099】
ステップS19においてCPU201は、生成用固定条件を生成し、処理をステップS20に進める。ここでは、固定条件に設定される値が取り得る範囲の全体に散らばる複数の変動条件が生成用変動条件として生成される。ステップS20においてCPU201は、生成用変動条件と生成用固定条件とを組み合わせることにより複数の生成用処理条件を生成する。
【0100】
図15は、処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理条件決定処理は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実行される処理である。
【0101】
図15を参照して、情報処理装置100が備えるCPU101は、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し(ステップS21)、処理をステップS22に進める。実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つが選択される。
【0102】
ステップS22においては、予測アルゴリズムを用いて、変動条件と固定条件とから処理量が予測され、処理はステップS23に進む。予測アルゴリズムには、変動条件を累積滞在時間分布に変換した変換データと固定条件とが入力される。それにより、予測アルゴリズムが出力する処理量が取得される。ステップS23においては、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。基板処理装置300が処理の対象とする基板Wの処理前の膜厚特性と、ステップS22において予測されたエッチングプロファイルとから基板Wを処理した後の膜厚特性が算出される。そして、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。ここでは、基板Wを処理した後の膜厚特性と目標膜厚特性との差分が算出される。
【0103】
ステップS24においては、比較結果が評価基準を満たすか否かが判断される。比較結果が評価基準を満たすならば(ステップS24でYES)、処理はステップS25に進むが、そうでなければ処理はステップS21に戻る。例えば、差分の最大値が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。また、差分の平均が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。
【0104】
ステップS25においては、基板処理装置300を駆動するための処理条件の候補に、ステップS21において選択された変動条件を含む処理条件が設定され、処理はステップS26に進む。ステップS26においては、探索の終了指示が受け付けられたか否かが判断される。情報処理装置100を操作するユーザーにより終了指示が受け付けられたならば処理はステップS27に進むが、そうでなければ処理はステップS21に戻る。なお、ユーザーにより入力される終了指示に変えて、予め定められた数の処理条件が候補に設定されたか否かが判断されてもよい。
【0105】
ステップS27においては、候補に設定された1以上の処理条件のうちから1つが決定され、処理はステップS28に進む。候補に設定された1以上の処理条件のうちから情報処理装置100を操作するユーザーにより1つが選択されてもよい。したがって、ユーザーの選択の範囲が広がる。また、複数の処理条件に含まれる変動条件のうちからノズル動作が最も簡略な変動条件が自動的に選択されてもよい。ノズル動作が最も簡略な変動条件は、例えば、変速点の数が最少の変動条件とすることができる。これにより、基板Wを処理する複雑なノズル動作に対する処理量に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルの制御が容易な変動条件を選択すれば、基板処理装置300の制御が容易になる。
【0106】
ステップS28においては、ステップS28において決定された変動条件を含む処理条件が基板処理装置300に送信され、処理は終了する。CPU101は、入出力I/F107を制御して、処理条件を基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、情報処理装置100から処理条件を受信する場合、その処理条件に従って基板Wを処理する。
【0107】
(4)実験例
上記実施の形態では、予測アルゴリズムを生成するために変動条件が変換データに変換された後に、変動条件が回数別グループに大別され、回数別グループ内でクラスタリングが行われている。一般的に、基板処理装置300の被膜処理において、処理量に多大な影響を及ぼす因子として被膜処理時の基板W上の液膜挙動が挙げられる。被膜処理時の基板W上の液膜挙動は、被膜処理時のノズル311の動作と相関性が高いことが推測される。発明者は、ノズル311の動作のうちでもノズル311の往復回数が処理量に多大な影響を及ぼすと予測した。この予測を確認するために発明者は、約700個のデータセット(処理条件と処理量との組)を用いて、累積滞在時間分布と処理量との関係を検討した。
【0108】
図16および図17は、実験結果を示す図である。図16および図17においては、約700個のデータセットのうち、ノズル311の往復回数により大別されている。図16では、ノズル311の往復回数が0~3回のグループのデータセットが記載され、図17では、ノズル311の往復回数が6~20回のグループのデータセットが記載される。また、図16および図17の上段においては、変動条件を変換した累積滞在時間分布に基づいてk-means法を用いてクラスタリングすることにより特定されるクラスタ1~4に含まれる累積滞在時間分布が示される。図16および図17においては、上段には変換データが示され、下段には処理量が示される。なお、上段には、基板Wの半径方向の各位置におけるノズル311の滞在時間が同じ変動条件から変換される累積滞在分布を表す基準線SLが表示される。上段のグラフの縦軸は基板中心OPを基準としたノズル311の累積滞在分布が示され、1に規格化されている。上段グラフの横軸は、基板中心OPから径方向の距離が示される。下段のグラフの縦軸には処理量が示され、横軸には基板中心OPから径方向の距離が示される。
【0109】
上段には、クラスタリングにより定められた4つのクラスタにそれぞれ対応するグラフが示される。4つのグラフそれぞれにおいて、複数の累積滞在時間が所定の範囲に含まれることがわかる。4つのクラスタにそれぞれ対応する処理量のグラフが下段に示される。下段に示される4つのグラフそれぞれにおいても複数の処理量が所定の範囲に含まれることが示される。図16および図17に示すように、累積滞在時間分布と処理量とに相関性があることがわかった。
【0110】
一方、図17に示すように、ノズル311の往復回数が6回以上の場合においては、クラスタ1~4間で処理量の範囲が類似している。このため、ノズル311の往復回数が6回以上の場合には、変動条件に係わらず、処理量が類似する傾向がわかった。これらの結果、ノズル311の往復回数によるグループ分けにおいて、往復回数が6回以上の変動条件を往復回数でさらにグループ分けして細分化する必要がなく、6回未満においては、変動条件をグループ分けすることにより、変動条件の取り得る範囲を細分化が必要であることが判る。また、往復回数が6回以上の変動条件において、変動条件を変換データでクラスタリングすることにより、変動条件が異なる場合であっても処理量の差が少ないことを示すデータセットが生成される。この場合には、学習モデルにその傾向を学習させることができる。
【0111】
(5)実施の形態の効果 上記実施の形態の予測アルゴリズム生成装置200によれば、変動条件が取り得る範囲の全体に散らばる複数の生成用変動条件が生成され、複数の生成用変動条件が変換データに基づいてクラスタリングされて複数のクラスタに分類され、複数のクラスタそれぞれから少なくとも1つの生成用変動条件が選定される。このため、生成用処理条件の取りうる範囲の全体をカバーしつつ偏りの少ない複数の生成用処理条件が選定される。さらに、選定された生成用処理条件と生成用処理量とを含むデータセットを用いて予測アルゴリズムが生成される。このため、予測アルゴリズムの汎化性を向上させることができる。また、予測アルゴリズムを生成するために用いるデータセットの数を抑制できるので、データセットを生成するコストをできるだけ小さくすることができる。その結果、汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成することができる。
【0112】
また、予測アルゴリズム生成装置200は、被膜処理において基板に処理液が供給される間に移動するノズル311の往復回数を用いて複数の生成用変動条件を、複数の回数別グループのいずれかに分類した後に、回数別グループごとにクラスタ分析する。処理量に与える影響の大きなノズルの往復回数で生成用処理条件が分類されるので、生成用処理条件の取りうる範囲の全体を細分化した複数のグループに複数の生成用処理条件が分類される。このため、予測アルゴリズムの汎化性をさらに向上させることができる。
【0113】
また、生成用変動条件が基板の径方向に異なる複数の位置それぞれにおけるノズル311の滞在時間を累積した累積滞在時間に変換されるので、複雑な変動条件の次元数を低減することが可能になる。それにより、複数の処理条件を複数のグループに容易に分類することができる。
【0114】
(6)他の実施の形態
(6-1)上記実施の形態において、予測アルゴリズムを生成するために、図12に示されるニューラルネットワークを含む学習モデルが用いられる例が示されるが、本発明はこれに限定されない。学習モデルとしては、ニューラルネットワークを含む他のモデルにより構成されてもよい。また、予測アルゴリズムとしては、例えば回帰式が用いられてもよい。この場合、予め定められた回帰式に複数のデータセットを与えて回帰することにより、予測アルゴリズムが生成されてもよい。
【0115】
(6-2)上記実施の形態において、予測アルゴリズムを生成するために用いられる生成用処理量が、基板処理装置300が生成用処理条件で被膜処理を実行することにより得られる処理量である例が記載されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板処理装置300により被膜処理が実行された過去のデータセットが蓄積されていれば、蓄積されたデータセットにおいて、生成用処理条件と同じまたは近似する処理条件に対応する処理量が生成用処理量として用いられてもよい。また、基板処理装置300により被膜処理が実行された過去のデータセットが蓄積されていれば、過去に蓄積されたデータセットを機械学習した学習モデルが用いられてもよい。この場合、生成用処理条件から学習モデルにより予測される処理量を生成用処理量として用いることができる。
【0116】
(6-3)上記実施の形態において、変動条件としてノズル311の基板Wに対する相対位置とし、変動条件が変換される物理量を累積滞在時間としたが、本発明はこれに限定されない。変動条件としては、ノズル311から吐出されるエッチング液の流量が用いられてもよい。流量は、単位時間当たりのノズル311から吐出されるエッチング液の量である。このため、ノズル311の基板Wに対する相対位置に加えて、エッチング液の流量が時間の経過に伴って変動する。この場合、変動条件が変換される物理量は、基板Wの複数の分割領域それぞれにエッチング液が供給される量の累積値を物理量として用いることができる。また、変動条件としては、経時的に変化すれば、エッチング液の温度等他の条件が用いられてもよい。
【0117】
(6-4)上記の実施の形態においては、情報処理装置100と、予測アルゴリズム生成装置200と、基板処理装置300と、を別体の装置とする例を示したが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置100、予測アルゴリズム生成装置200および基板処理装置300の少なくとも2つ以上が一体の装置であってもよい。例えば、基板処理装置300が、予測アルゴリズム生成装置200および情報処理装置100を備えてもよい。
【0118】
(7)実施の形態の総括
(第1項)本発明の一態様に係る予測アルゴリズム生成装置は、
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理条件生成部と、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件生成部により生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する分類部と、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定する処理条件選定部と、
前記処理条件選定部により選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理量取得部と、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する予測アルゴリズム生成部と、を備える。
【0119】
第1項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、処理条件生成部により生成された処理条件が変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類され、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定される。それにより、変動条件の取り得る範囲に散らばる複数の変動条件をそれぞれ含む複数の処理条件が生成される場合に、処理条件の取り得る範囲に散らばる複数の処理条件が複数のグループに分類される。そして、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定されるので、処理条件の取り得る範囲をカバーしつつ偏りの少ない複数の処理条件が選定される。さらに、選定された処理条件と処理量とを含むデータセットを用いて予測アルゴリズムが生成される。このため、予測アルゴリズムの汎化性を向上させることができる。また、予測アルゴリズムを生成するために用いるデータセットの数を抑制できるので、データセットを生成するコストをできるだけ小さくすることができる。その結果、汎化性の高い予測アルゴリズムを低コストで生成可能な予測アルゴリズム生成装置を提供することができる。
【0120】
(第2項)第1項に記載の予測アルゴリズム生成装置は、
前記処理条件生成部により生成された複数の前記処理条件を、前記処理条件に含まれる前記ノズルの往復回数に基づいて、複数の回数別グループに分類する回数別分類部を、さらに備え、
前記分類部は、前記複数の回数別グループのそれぞれに含まれる複数の前記処理条件を前記複数のグループに分類してもよい。
【0121】
第2項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、被膜処理において基板に処理液が供給される間に移動するノズルの往復回数の回数別に分類された回数別グループに別けられる。さらに、回数別グループの中の処理条件が複数のグループに分類される。処理量に与える影響の大きなノズルの往復回数で処理条件が分類されるので、処理条件の取りうる範囲の全体を細分化した複数のグループに複数の処理条件が分類される。このため、予測アルゴリズムの汎化性をさらに向上させることができる。
【0122】
(第3項)第1項または第2項に記載の予測アルゴリズム生成装置は、
前記変動条件を前記基板の径方向に異なる複数の位置それぞれにおける物理量に変換する変換部を、さらに備え、
前記変数は、前記変換部により変換された前記ノズルの前記基板に対する相対位置における物理量であってもよい。
【0123】
第3項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、変動条件が基板の径方向に異なる複数の位置それぞれにおける物理量に変換されるので、複雑な変動条件の次元数を低減することが可能になる。それにより、複数の処理条件を複数のグループに容易に分類することができる。
【0124】
(第4項)第3項に記載の予測アルゴリズム生成装置において、
前記物理量は、前記ノズルが滞在する滞在時間であってもよい。
【0125】
第4項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、物理量が基板上の任意の位置に滞在する滞在時間であるので、変動条件から物理量への変換が容易になる。
【0126】
(第5項)第3項に記載の予測アルゴリズム生成装置において、
前記物理量は、基板中心から外周に向かって前記ノズルが滞在する時間を累積した累積滞在時間であってもよい。
【0127】
第5項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、基板中心から外周に向かって前記ノズルが滞在する時間を累積した累積滞在時間であるので、変動条件から物理量への変換が容易になる。
【0128】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の予測アルゴリズム生成装置において、
前記処理量取得部は、前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を前記基板処理装置に与え、前記基板処理装置が前記処理条件に従って前記被膜処理を実行して得られる前記処理量を取得してもよい。
【0129】
第6項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、処理条件選定部により選定された処理条件に従って、基板処理装置で被膜処理が実行されるので、正確な処理量を取得することが可能になる。
【0130】
(第7項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の予測アルゴリズム生成装置において、
前記処理量取得部は、前記基板処理装置が前記処理条件に従って前記被膜処理を実行した前記処理量と前記処理条件とのデータセットを機械学習した学習モデルに、前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を与え、前記学習モデルの出力を前記処理量として取得してもよい。
【0131】
第7項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、データセットを生成するために基板処理装置を実際に稼働させる必要がないので、データセットを生成するためのコストを削減することが可能になる。
【0132】
(第8項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の予測アルゴリズム生成装置は、
前記処理条件と、前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行して得られる前記処理量とを含む実験データセットを取得する実験データセット取得部を、さらに備え、
前記処理量取得部は、前記実験データセット取得部により取得された複数の前記実験データセットのうちから前記処理条件選定部により選定された前記処理条件を含む前記実験データセットを抽出してもよい。
【0133】
第8項に記載の予測アルゴリズム生成装置によれば、基板処理装置により過去に実行された被膜処理で得られた実験データセットを用いて、処理条件選定部により選定された処理条件に対応する処理量を取得することができる。したがって、データセットを生成するためのコストを削減することが可能になる。
【0134】
(第9項)本発明の他の態様に係る予測アルゴリズムは、
第1項~第8項のいずれか一項に記載の予測アルゴリズム生成装置により生成されてもよい。
【0135】
第9項に記載の予測アルゴリズムによれば、汎化性の高い予測アルゴリズムを提供することが可能になる。
【0136】
(第10項)本発明の他の態様に係る情報処理装置は、
第9項に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する情報処理装置であって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理条件決定部を、備える。
【0137】
第10項に記載の情報処理装置によれば、予測アルゴリズムに仮の処理条件を与えて予測アルゴリズムにより予測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の処理条件が基板処理装置を駆動するための処理条件に決定される。このため、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の処理条件を決定することができる。その結果、複雑なプロセスを経て得られる処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能になる。
【0138】
(第11項)本発明の他の態様に係る基板処理装置は、第10項に記載の情報処理装置を備える。
【0139】
第11項に記載の基板処理装置によれば、基板を処理する複雑なプロセスの処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能になる。
【0140】
(第12項) 本発明の他の態様に係る予測アルゴリズム生成方法は、
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成するステップと、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件を生成するステップにより生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類するステップと、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定するステップと、
前記処理条件を選定するステップにより選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得するステップと、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成するステップと、を備える。
【0141】
第12項に記載の予測アルゴリズム生成方法によれば、処理条件生成部により生成された処理条件が変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類され、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定される。それにより、変動条件の取り得る範囲に散らばる複数の変動条件をそれぞれ含む複数の処理条件が生成される場合に、処理条件の取り得る範囲に散らばる複数の処理条件が複数のグループに分類される。そして、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定されるので、処理条件の取り得る範囲をカバーしつつ偏りの少ない複数の処理条件が選定される。さらに、選定された処理条件と処理量とを含むデータセットを用いて予測アルゴリズムが生成される。このため、予測アルゴリズムの汎化性を向上させることができる。また、予測アルゴリズムを生成するために用いるデータセットの数を抑制できるので、データセットを生成するコストをできるだけ小さくすることができる。
【0142】
(第13項) 本発明の他の態様に係る予測アルゴリズム生成プログラムは、
処理液を吐出するノズルを被膜が形成された基板上で移動させて前記被膜を処理する被膜処理を基板処理装置が実行するための処理条件を生成する処理と、
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含み、
前記処理条件を生成する処理により生成された複数の前記処理条件を前記変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類する処理と、
前記複数のグループそれぞれから少なくとも1つの前記処理条件を選定する処理と、
前記処理条件を選定する処理により選定された前記処理条件に従って前記基板処理装置が前記被膜処理を実行する前後の前記被膜の膜厚の差を示す処理量を取得する処理と、
前記処理条件と前記処理条件に関連して取得された前記処理量とを含むデータセットを用いて、前記処理条件から前記処理量を予測する予測アルゴリズムを生成する処理と、をコンピュータに実行させる。
【0143】
第13項に記載の予測アルゴリズム生成プログラムによれば、処理条件生成部により生成された処理条件が変動条件に関わる変数に基づいて複数のグループに分類され、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定される。それにより、変動条件の取り得る範囲に散らばる複数の変動条件をそれぞれ含む複数の処理条件が生成される場合に、処理条件の取り得る範囲に散らばる複数の処理条件が複数のグループに分類される。そして、複数のグループそれぞれから少なくとも1つの処理条件が選定されるので、処理条件の取り得る範囲をカバーしつつ偏りの少ない複数の処理条件が選定される。さらに、選定された処理条件と処理量とを含むデータセットを用いて予測アルゴリズムが生成される。このため、予測アルゴリズムの汎化性を向上させることができる。また、予測アルゴリズムを生成するために用いるデータセットの数を抑制できるので、データセットを生成するコストをできるだけ小さくすることができる。
【0144】
(第14項) 本発明の他の態様に係る処理条件決定方法は、
第9項に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定方法であって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定するステップを含む。
【0145】
第14項に記載の処理条件決定方法によれば、複雑なプロセスの処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能な処理条件決定方法を提供することができる。
【0146】
(第15項)本発明の他の態様に係る処理条件決定プログラムは、
第9項に記載の予測アルゴリズムを用いて基板処理装置を管理する処理条件決定プログラムであって、
仮の処理条件を前記予測アルゴリズムに与えて前記予測アルゴリズムにより予測される前記処理量が許容条件を満たす場合に、前記仮の処理条件を、前記基板処理装置を駆動する処理条件に決定する処理をコンピュータに実行させる。
【0147】
第15項に記載の処理条件決定プログラムによれば、複雑なプロセスの処理量に対して複数の処理条件を提示することが可能な処理条件決定プログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0148】
10…制御装置,100…情報処理装置,110…予測アルゴリズム受信部,120…処理条件決定部,130…予測部,140…評価部,150…処理条件送信部,200…予測アルゴリズム生成装置,220…生成用処理条件生成部,221…生成用変動条件決定部,222…変換部,223…回数分類部,224…分類部,225…生成用変動条件選定部,226…生成用固定条件決定部,227…生成用処理条件決定部,228…処理量取得部,230…予測アルゴリズム生成部,240…予測アルゴリズム送信部,300…基板処理装置,301…ノズル移動機構,303…ノズルモータ,305…ノズルアーム,311…ノズル
図1
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