IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子制御装置 図1
  • 特開-電子制御装置 図2
  • 特開-電子制御装置 図3
  • 特開-電子制御装置 図4
  • 特開-電子制御装置 図5
  • 特開-電子制御装置 図6
  • 特開-電子制御装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165971
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20241121BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L23/40 A
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082606
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 勇作
(72)【発明者】
【氏名】寺西 美波
(72)【発明者】
【氏名】市川 英司
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AB01
5E322EA10
5E322EA11
5E322FA04
5F136BC03
5F136BC07
5F136DA27
5F136DA41
5F136EA12
5F136EA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体モジュールの変更に伴い放熱性を可変する電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置1は、冷却器7、半導体素子2、基板3、コネクタ4及び第1熱伝導部材5を備える半導体モジュールと冷却器とを、熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダ8を備え、一方の面において、第1固定部11を用いて半導体モジュールをヒートスプレッダに固定する第1突起部13と、他方の面において、第2固定部12を用いて冷却器をヒートスプレッダに固定する第2突起部14と、半導体素子に対して第1熱伝導部材5を間に介して接する第1凸部9と、冷却器に対して第2熱伝導部材6を間に介して接する第2凸部10とを有する。第1固定部は、基板と半導体素子の接触面から水平方向に離間した位置で、基板と第1突起部を着脱可能に固定し、第2固定部は、第2凸部と冷却器の接触面から水平方向に離間した位置で、冷却器と第2突起部を着脱可能に固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に半導体素子が配置された半導体モジュールと、
前記半導体モジュールを冷却する冷却器と、
前記半導体モジュールと前記冷却器とを熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダと、を備え、
前記ヒートスプレッダは、一方の面において、第1固定部を用いて前記半導体モジュールを前記ヒートスプレッダに固定する第1突起部と、他方の面において、第2固定部を用いて前記冷却器を前記ヒートスプレッダに固定する第2突起部と、前記半導体素子に対して第1熱伝導部材を間に介して接する第1凸部と、前記冷却器に対して第2熱伝導部材を間に介して接する第2凸部と、を有し、
前記第1固定部は、前記基板と前記半導体素子との接触面から水平方向に離間した位置で、前記基板と前記第1突起部を着脱可能に固定し、
前記第2固定部は、前記第2凸部と前記冷却器との接触面から水平方向に離間した位置で、前記冷却器と前記第2突起部を着脱可能に固定する
電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記ヒートスプレッダは、前記第1凸部の周囲を囲うように形成される第1の壁と、前記第2凸部の周囲を囲うように形成される第2の壁を有し、
前記第1の壁の垂直方向の長さは、前記第1突起部の長さ以下であり、
前記第2の壁の垂直方向の長さは、前記第2突起部の長さ以下である
電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記冷却器は、前記第2固定部を挿通する複数の冷却器ネジ穴を有し、
前記第2凸部は、前記他方の面と平行な平面上において、前記複数の冷却器ネジ穴の形成位置とは重ならず、
前記複数の冷却器ネジ穴は、前記冷却器の前記平面上で放射形状に設けられる
電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部は、前記第1固定部を挿通する複数の第1ボス部を有し、
前記半導体モジュールは、前記基板において、前記半導体素子と接触する面とは反対側の面にコネクタを有し、
前記第1ボス部の長さは、前記半導体素子の厚さと前記第1凸部の厚さを合計した厚さ以上の長さであり、
前記第1凸部は、前記半導体素子の平面部分に対向する平面部を有する
電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第2突起部は、前記第2固定部を挿通する第2ボス部を有し、
前記第2ボス部の長さは、前記第2凸部の厚さ以上の長さであり、
前記第2凸部の面積は、前記第1凸部の面積より大きい
電子制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部は、前記第1固定部を挿通する複数の第1ボス部を有し、
前記第1凸部は、前記一方の面において、前記複数の第1ボス部の位置に重ならず、
前記複数の第1ボス部は、前記一方の面において前記第1凸部から放射形状に設けられる
電子制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記基板は、板バネによって前記第1突起部に対して圧力固定され、
前記第1突起部は、前記ヒートスプレッダの平面上で放射形状を有し、
前記板バネは、前記基板において、前記第1突起部と接触する面とは反対側の面で前記基板を押さえる形状を有する
電子制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記ヒートスプレッダと着脱可能なスペーサである
電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載の電子制御ユニットは、ハードウェアアップデート等の高性能化に伴い発熱量が増大するため、放熱性の向上が求められる。例えば、特許文献1には、ヒートスプレッダ4に溝4gを設け、そこにOリング8を設置し放熱グリス9を保持し、また、Oリング8には切り欠き8nを持たせ、ネジ7締め付け時に通気口として機能させ、チップ2は樹脂5で封止することで、放熱性に優れた電力用半導体装置の構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-251473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ヒートスプレッダと基板ははんだや樹脂で固定されているため、アップデートに伴う半導体モジュールの変更が要求されても取り外せない課題が生じる。また、変更後の半導体モジュールのサイズや発熱量に合わせた冷却器も必要になる。これを鑑みて本発明は、冷却器を変更せずに半導体モジュールの変更に伴った放熱性の可変を実現する電子制御装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電子制御装置は、基板に半導体素子が配置された半導体モジュールと、前記半導体モジュールを冷却する冷却器と、前記半導体モジュールと前記冷却器とを熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダと、を備え、前記ヒートスプレッダは、一方の面において、第1固定部を用いて前記半導体モジュールを前記ヒートスプレッダに固定する第1突起部と、他方の面において、第2固定部を用いて前記冷却器を前記ヒートスプレッダに固定する第2突起部と、前記半導体素子に対して第1熱伝導部材を間に介して接する第1凸部と、前記冷却器に対して第2熱伝導部材を間に介して接する第2凸部と、を有し、前記第1固定部は、前記基板と前記半導体素子との接触面から水平方向に離間した位置で、前記基板と前記第1突起部を着脱可能に固定し、前記第2固定部は、前記第2凸部と前記冷却器との接触面から水平方向に離間した位置で、前記冷却器と前記第2突起部を着脱可能に固定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冷却器を変更せずに半導体モジュールの変更に伴った放熱性の可変を実現する電子制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
図2】本発明の第2の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
図3】本発明の第3の実施形態に係る、半導体モジュールの変更に伴った電子制御装置の平面図
図4】本発明の第4の実施形態に係る、冷却器を示す図
図5】本発明の第5の実施形態に係る、ヒートスプレッダを示す図
図6】本発明の第6の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
図7】本発明の第7の実施形態に係る、電子制御装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0009】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、電子制御装置1の断面図である。電子制御装置1は、車両に搭載される制御装置であり、半導体モジュール、ヒートスプレッダ8、冷却器7を備える。半導体モジュールは、半導体素子2、基板3、コネクタ4、第1熱伝導部材5、を備える。半導体素子2は基板3上に配置されている。冷却器7はヒートスプレッダ8を介して半導体モジュールを冷却する。ヒートスプレッダ8は熱伝導性である。コネクタ4は、基板3において半導体素子2が配置される面とは反対側の面に配置されている。
【0011】
ヒートスプレッダ8は、第1突起部13、第2突起部14を有する。第1突起部13は、半導体モジュールをヒートスプレッダ8に固定するため、ヒートスプレッダ8の一方の面において、ネジ等の締結部材である第1固定部11を用いる。また第1突起部13は、第1固定部11を挿通するネジ穴等である第1ボス部16を有する。第2突起部14は、ヒートスプレッダ8を冷却器7に固定するため、ヒートスプレッダ8の他方の面に固定するため、ネジ等の締結部材である第2固定部12を用いる。第2突起部14は、第2固定部12を挿通するネジ穴等である第2ボス部141を有する。
【0012】
また、ヒートスプレッダ8は、第1凸部9、第2凸部10を備える。第1凸部9は、第1熱伝導部材5を間に介して半導体素子2と熱的に接続している。第2凸部10は、第2熱伝導部材6を間に介して冷却器7と熱的に接続している。ヒートスプレッダ8は、このような構成を有することで、半導体モジュールと冷却器7とを熱的に接続し、半導体モジュールの熱を冷却器7に拡散している。第1凸部9は、ヒートスプレッダ8の半導体モジュールに対する積層方向の位置を調整する機能を有する。
【0013】
また、第1凸部9は、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールとの間に介する第1熱伝導部材5の塗布面の面積を調整する機能を有する。第2凸部10は、ヒートスプレッダ8の冷却器7に対する積層方向の位置を調整する機能を有する。また、第2凸部10は、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールとの間に介する第1熱伝導部材6の塗布面の面積を調整する機能を有する。
【0014】
基板3は、第1固定部11を挿通するネジ穴を有している。冷却器7は、第2固定部12を挿通するネジ穴等である冷却器ボス部を有している。第1固定部11は、基板3と半導体素子2との接触面から水平方向に離間した位置で、基板3と第1突起部13を着脱可能に固定している。また、第2固定部12は、第2凸部10と冷却器7との接触面から水平方向に離間した位置で、冷却器7と第2突起部14を着脱可能に固定している。
【0015】
このような構成を有することで、変更後の半導体モジュールの寸法や発熱量が変更前の半導体モジュールと異なる場合であっても、ヒートスプレッダ8のみの変更で半導体モジュールを冷却器7に熱的に接続し固定できるため、半導体モジュールの変更前後で冷却器7の共有化が実現できる。
【0016】
第1熱伝導部材5は、第1凸部9に接触していることで、半導体モジュールに対しての厚さ調整が実現されている。また、第2熱伝導部材6は、第2凸部10に接触していることで、冷却器7に対しての厚さ調整が実現されている。このようにすることで、熱抵抗を変更できる。そのため、冷却器7を変更することなく、変更後の異なるサイズの半導体モジュールに対応できる放熱性の変更を実現できる。また、第2凸部10の面積を第1凸部9の面積より大きくすることで、ヒートスプレッダ8で拡散された半導体素子2の熱を、第1凸部9の面積より広い面積を有する第2凸部10を介して冷却器7に放熱することができる。これにより、熱抵抗が下がり放熱性を向上させることが可能となる。
【0017】
また、第1凸部9は、半導体モジュールの半導体素子2に対して接触する第1熱伝導部材5の塗布面積を規定している。同様に、第2凸部10は、冷却器7に対して接触する第2熱伝導部材6の塗布面積を規定している。これにより、第1熱伝導部材5は、第1凸部9によって半導体素子2に対しての放熱面積の調整がされている。また第2熱伝導部材6は、第2凸部10によって冷却器7に対しての放熱面積の調整がされている。よって、半導体モジュールから冷却器7に対しての放熱の可変が実現できる。
【0018】
半導体モジュールへの接続に必要な第1熱伝導部材5の厚さ・面積と、冷却器7に接続する第2熱伝導部材6の厚さ・面積をそれぞれ独立に設定する。これにより、半導体モジュールが変更されても、変更後の半導体モジュールに合わせた第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6の塗布面積と厚さを調整して、放熱量を可変できるため、設計変更に対応できる。
【0019】
また、ヒートスプレッダ8が有する第1突起部13、第2突起部14により、ヒートスプレッダ8から半導体モジュールに対して、またヒートスプレッダ8から冷却器7に対して積層方向に高さ調節機能を有する。これにより、第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6の厚さを調節して熱抵抗を可変できるだけではなく、第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6に接触する構造体の熱や振動などの変形により、熱伝導部材の代わりに空気が入り込むことで放熱性能の低下につながるポンプアウトを抑制することができる。換言すると、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールが互いに過度に接触することを防止できる。
【0020】
第1凸部9が第1熱伝導部材5を介して半導体素子2へ接続した状態で固定する際に、第1凸部9から半導体素子2へ大きな応力がかかると、半導体素子2が破損する可能性がある。そこで、第1固定部11が挿通する第1ボス部16の長さを、第1凸部9が半導体素子2に対して半導体素子2が破損しない程度の応力に長さを調整する。具体的には、第1ボス部16の長さを、半導体素子2の厚さと第1凸部9の厚さを合計した厚さ以上の長さにする。このようにすることで、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性が向上する。
【0021】
また第2突起部14において第2ボス部141の長さは、第2凸部10の厚さ以上の長さにする。第2凸部10の面積は、第1凸部9の面積より大きくする。このようにすることで、同様に半導体モジュールの交換および実装時の信頼性向上が実現できる。
【0022】
また、第1凸部9は半導体素子2の平面部分に対向する平面部を有する。この構造により、半導体モジュールの変更時において、第1凸部9に塗布する接着剤が多ければ第1凸部9から水平方向に接着剤がはみ出るため、接着部分の接着剤の塗布面積と厚さを維持できる。すなわち、接着剤を適した量に調整でき、半導体モジュールの交換および実装時の第1熱伝導部材5の塗布面積と厚さを最適化できる。またこれにより、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性向上を実現できる。
【実施例0023】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電子制御装置1の断面図である。実施例1から変更のある構成について以下に示す。ヒートスプレッダ8は、第1の壁17、第2の壁18を有する。第1の壁17は、第1凸部9の周囲を囲うように立設し、半導体素子2から離間して形成される。第2の壁18は、第2凸部10の周囲を囲うように立設し、第2凸部から離間して形成される。第1の壁17は、垂直方向において、第1突起部13の長さ以下である。また、第2の壁は、垂直方向において、第2突起部14の長さ以下である。
【0024】
このようにすることで、第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6について、以下のような作用効果を実現できる。
【0025】
熱によって第1熱伝導部材5が変形してしまい、第1熱伝導部材5が第1凸部9から水平方向に拡がる場合、第1の壁17により水平方向への拡がりが阻まれるため、第1熱伝導部材5は半導体素子2と第1の壁17との隙間に流れる。ここで、図2の鉛直下向きの方向が重力方向と仮定すると、熱により広がった熱伝導部材5は重力により元の位置に戻ろうとするため、空気が入り込むポンプアウトが発生することを抑制でき、放熱性能の低下を回避できる。
【0026】
また、熱によって第2熱伝導部材6が変形してしまい、第2熱伝導部材6が第2凸部10から水平方向に拡がる場合、第2の壁18により水平方向への拡がりが阻まれるため、第2熱伝導部材6は第2凸部10と第2の壁18の隙間に流れる。ここで、図2の鉛直下向きの方向が重力方向と仮定すると、熱により広がった熱伝導部材6は重力により元の位置に戻ろうとするため、空気が入り込むポンプアウトが発生することを抑制でき、放熱性能の低下を回避できる。
【実施例0027】
図3(a)は図1および図2に図示した電子制御装置1の平面図、図3(b)は図3(a)から半導体モジュールを変更した場合のヒートスプレッダ8の構造を示す平面図である。実施例1ないし2から変更のある構成について以下に示す。図3(b)のヒートスプレッダ8の形状は、図3(a)の半導体モジュールが変更されてサイズや発熱量が小さくなった半導体モジュールに対応して、放熱量を調整した形状のヒートスプレッダ8を配置して冷却器7に接続している。
【0028】
また、サイズや発熱量が異なる変更後の半導体モジュールに対応して、半導体モジュールの固定をヒートスプレッダ8の一方の面に設け、第1突起部13、第2突起部14(図1)および第1凸部9、第2凸部10のサイズ等を変更したヒートスプレッダ8を適用する。ここで、冷却器7に対する第2固定部12の固定位置について、図3(a)と図3(b)は冷却器7に対して同じ位置にする。したがって、冷却器7は、半導体モジュールの変更に伴い、ヒートスプレッダ8と冷却器7を固定するための変更対応が不要になる。
【0029】
また、第1突起部13、第2突起部14および第1凸部9、第2凸部10を用いることで、変更後の半導体モジュールに対応して冷却器7の放熱範囲を可変して調整できる。また、図3(b)のヒートスプレッダ8の形状は、平面で見た場合の第2凸部10の角からそれぞれ第2固定部12に向けて放射状に延びる足部100を持つ。このようにすることで、図3(a)のヒートスプレッダ8の面積に対し、図3(b)のヒートスプレッダ8は足部100以外の外周部分の面積が削減できるため、コスト低減が可能となる。したがって、冷却器7を変更することなく半導体モジュールを固定でき、変更後の半導体モジュールの放熱性も従来に比べて向上させることができるため、冷却器7の変更に伴うコストは発生せず、ヒートスプレッダ8のコストも低減が可能となる。
【実施例0030】
図4はヒートスプレッダ8のサイズ変更があった場合に対応できる冷却器7および第2凸部10を示す図である。実施例1ないし3から変更のある構成について以下に示す。
【0031】
冷却器7は、第2固定部12(図1)を挿通するネジ穴である複数の冷却器ネジ穴15を有する。冷却器ネジ穴15は、ヒートスプレッダ8において第2凸部10が設けられる面と平行な平面上において、第2凸部10とは重ならない。また、冷却器ネジ穴15は、その平面上で放射形状に設けられている。なお、図4では、放射形状に設けられている複数の冷却器ネジ穴15に対して、第2凸部10はそれと重ならないように十字形状に形成されている。
【0032】
このようにすることで、変更対応に伴う異なるヒートスプレッダ8のサイズごとに第2固定部12の挿通位置が異なる場合であっても、冷却器7は予め異なる位置の冷却器ボス部15を複数有しているため、異なるサイズのヒートスプレッダ8間で冷却器7を共有化できる。
【実施例0033】
図5は、半導体モジュールのサイズ変更があった場合に対応できるヒートスプレッダ8および第1突起部13を示す図である。実施例1ないし4から変更のある構成について以下に示す。ヒートスプレッダ8は、半導体モジュールを設置する側の面において、第1凸部9と第1突起部13を有している。第1突起部13は、挿通する第1固定部11(図2)に対応する複数の第1ボス部16を有する。第1凸部9は、ヒートスプレッダ8の一方の面において、複数の第1ボス部16の位置に重ならない。図5では、複数の第1ボス部16は、その面において、ヒートスプレッダ8の中心側に設けられている第1凸部9から放射形状に設けられている。このようにすることで、変更後の半導体モジュールのサイズ変更により、基板3の第1固定部11を挿通する穴の位置が変更前と異なっていたとしても対応できる。
【実施例0034】
図6は、1つのヒートスプレッダ8に対して2個の半導体モジュールを搭載した、本発明の第6の実施形態を示す図である。実施例1ないし5から変更のある構成について以下に示す。
【0035】
半導体素子2a、基板3a、コネクタ4a、第一熱伝導部材5a、を備えた第一の半導体モジュールと、半導体素子2b、基板3b、コネクタ4b、第一熱伝導部材5b、を備えた第二の半導体モジュールとが、一つのヒートスプレッダ8に固定されている。ヒートスプレッダ8は、実施例1と同様に、第1突起部13a,13bにおいて第1固定部11により半導体モジュールを固定し、第2突起部14a,14bにおいて第2固定部により冷却器7を固定している。また、ヒートスプレッダ8は、第1凸部9a,9bを備え、第1熱伝導部材5a,5bそれぞれを間に介して半導体素子2a,2bとそれぞれ熱的に接続している。さらに、ヒートスプレッダ8は、第2凸部10a,10bを備え、第2熱伝導部材6a,6bそれぞれを間に介して冷却器7とそれぞれ熱的に接続している。
【0036】
図1図5に示す本発明の構成は、図6に示すように1つの冷却器7およびヒートスプレッダ8に対して、2個の半導体モジュールを搭載する場合であっても、同様に実現できる。このため、冷却器とヒートスプレッダを2個の半導体モジュールで共用化できることで、低コスト化が可能となる。なお、2個の半導体モジュールのそれぞれのサイズは、異なっていてもよく、1つの冷却器7とヒートスプレッダ8に対して、半導体モジュールを2個以上搭載した形態も同様に可能である。
【実施例0037】
図7(a)および図7(b)は、図3(a)および図3(b)の構造をそれぞれ2個の半導体モジュールに適用した本発明の第7の実施の形態を示す図である。実施例1ないし6から変更のある構成について以下に示す。
【0038】
図7(a)は1つのヒートスプレッダ8にサイズの異なる2個の半導体モジュールを搭載した平面図である。図7(b)は図7(a)の2個の半導体モジュールよりもサイズの小さい半導体モジュールを搭載した場合のヒートスプレッダ8を示した平面図である。また、図7(b)に示したヒートスプレッダ8は、第2凸部10aおよび10bの角部分からそれぞれ第2固定部12に向けて延びる足部100を有する。これにより、図7(a)に示したヒートスプレッダ8の面積に対して、図7(b)に示したヒートスプレッダ8は足部100以外の外周部分の面積を削減することができる。したがって、冷却器7を変更することなく半導体モジュールを変更することができ、変更後の半導体モジュールの放熱性を従来に比べて向上させつつ、コストを低減することができる。
【0039】
以上のように、本発明の第7の実施の形態によれば、2個の半導体モジュールをヒートスプレッダ8に搭載する場合であっても、半導体モジュールのサイズ変更に対応してヒートスプレッダ8を変更できるため、放熱可変の実現だけでなく、省資源化に貢献できる。なお、半導体モジュールの数は2個に限定されるものでなく任意の個数を採用でき、ヒートスプレッダ8の形状もこれに限定されるものではなく任意の形状を採用できる。
【0040】
以上、本発明の構成を説明したが、例えば、ヒートスプレッダ8に半導体モジュールを固定する場合に、第1固定部11を用いないで、板バネを用いてもよい。この場合の板バネは、基板3において第1突起部13と接触する面とは反対側の面で基板3を押さえる形状を有する。基板3を押さえる板バネの形状は、例えば、第1突起部13それぞれに対して凸形状であってもよいし、複数形成される第1突起部13すべてを同時に抑えられる面形状であってもよい。これにより、基板3を板バネの応力によって第1突起部13に対して圧力固定できるため、第1固定部11を用いないことで部品の低減に貢献し、省資源化できる。なお、この形態に伴い、第1突起部13は、図5に示すようなヒートスプレッダ8の平面上で放射形状であってもよく、このような形状を有することにより、異なるサイズの半導体モジュールの基板3であっても、固定できる。
【0041】
また、第1突起部13および第2突起部14は、ヒートスプレッダ8とは着脱可能なスペーサである場合、変更前と変更後で異なる高さの半導体モジュールに対し、第1突起部13および第2突起部14のみの変更で対応できる。つまり、半導体モジュールがヒートスプレッダ8にぶつからないように、第1突起部13および第2突起部14を好適な高さに合わせられることで、ヒートスプレッダ8に変更後の半導体モジュールを搭載できる。
【0042】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0043】
(1)電子制御装置1は、基板3に半導体素子2が配置された半導体モジュールと、半導体モジュールを冷却する冷却器7と、半導体モジュールと冷却器7とを熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダ8と、を備える。ヒートスプレッダ8は、一方の面において、第1固定部11を用いて半導体モジュールをヒートスプレッダ8に固定する第1突起部13と、他方の面において、第2固定部12を用いて冷却器7をヒートスプレッダ8に固定する第2突起部14と、半導体素子2に対して第1熱伝導部材5を間に介して接する第1凸部9と、冷却器7に対して第2熱伝導部材6を間に介して接する第2凸部10と、を有する。第1固定部11は、基板3と半導体素子2との接触面から水平方向に離間した位置で、基板3と第1突起部13を着脱可能に固定し、第2固定部12は、第2凸部10と冷却器7との接触面から水平方向に離間した位置で、冷却器7と第2突起部14を着脱可能に固定する。このようにしたことで、冷却器7を変更せずに半導体モジュールの変更に伴った放熱性の可変を実現する電子制御装置1を提供できる。
【0044】
(2)ヒートスプレッダ8は、第1凸部9の周囲を囲うように形成される第1の壁17と、第2凸部10の周囲を囲うように形成される第2の壁18を有する。第1の壁17の垂直方向の長さは、第1突起部13の長さ以下であり、第2の壁18の垂直方向の長さは、第2突起部14の長さ以下である。このようにしたことで、ポンプアウトを抑制し、放熱性能の低下を回避できる。
【0045】
(3)冷却器7は、第2固定部12を挿通する複数の冷却器ネジ穴15を有し、第2凸部10は、他方の面と平行な平面上において、複数の冷却器ネジ穴15の形成位置とは重ならず、複数の冷却器ネジ穴15は、冷却器7の平面上で放射形状に設けられる。このようにしたことで、異なるサイズのヒートスプレッダ8間で冷却器7を共有化できる。
【0046】
(4)第1突起部13は、第1固定部11を挿通する複数の第1ボス部16を有し、半導体モジュールは、基板3において、半導体素子2と接触する面とは反対側の面にコネクタ4を有し、第1ボス部16の長さは、半導体素子2の厚さと第1凸部9の厚さを合計した厚さ以上の長さであり、第1凸部9は、半導体素子2の平面部分に対向する平面部を有する。このようにしたことで、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性が向上する。
【0047】
(5)第2突起部14は、第2固定部12を挿通する第2ボス部141を有し、第2ボス部141の長さは、第2凸部10の厚さ以上の長さであり、第2凸部10の面積は、第1凸部9の面積より大きい。このようにしたことで、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性が向上する。
【0048】
(6)第1突起部13は、第1固定部11を挿通する複数の第1ボス部16を有し、第1凸部9は、一方の面において、複数の第1ボス部16の位置に重ならず、複数の第1ボス部16は、一方の面において第1凸部9から放射形状に設けられる。このようにしたことで、変更後の半導体モジュールのサイズ変更により、基板3の第1固定部11を挿通する穴の位置が変更前と異なっていたとしても対応できる。
【0049】
(7)基板3は、板バネによって第1突起部13に対して圧力固定され、第1突起部13は、ヒートスプレッダ8の平面上で放射形状を有し、板バネは、基板3において、第1突起部13と接触する面とは反対側の面で基板3を押さえる形状を有する。このようにしたことで、第1固定部11を用いないでも、異なるサイズの半導体モジュールの基板3に対応できる。
【0050】
(8)第1突起部13および第2突起部14は、ヒートスプレッダ8と着脱可能なスペーサである。このようにしたことで、第1突起部13および第2突起部14のみの変更でヒートスプレッダ8に変更後の半導体モジュールを搭載できる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 電子制御装置
2 半導体素子
3 基板
4 コネクタ
5 第1熱伝導部材
6 第2熱伝導部材
7 冷却器
8 ヒートスプレッダ
9 第1凸部
10 第2凸部
11 第1固定部
12 第2固定部
13 第1突起部
14 第2突起部
15 冷却器ネジ穴
16 第1ボス部
17 第1の壁
18 第2の壁
100 足部
141 第2ボス部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7