(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165971
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20241121BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L23/40 A
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082606
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 勇作
(72)【発明者】
【氏名】寺西 美波
(72)【発明者】
【氏名】市川 英司
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AB01
5E322EA10
5E322EA11
5E322FA04
5F136BC03
5F136BC07
5F136DA27
5F136DA41
5F136EA12
5F136EA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体モジュールの変更に伴い放熱性を可変する電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置1は、冷却器7、半導体素子2、基板3、コネクタ4及び第1熱伝導部材5を備える半導体モジュールと冷却器とを、熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダ8を備え、一方の面において、第1固定部11を用いて半導体モジュールをヒートスプレッダに固定する第1突起部13と、他方の面において、第2固定部12を用いて冷却器をヒートスプレッダに固定する第2突起部14と、半導体素子に対して第1熱伝導部材5を間に介して接する第1凸部9と、冷却器に対して第2熱伝導部材6を間に介して接する第2凸部10とを有する。第1固定部は、基板と半導体素子の接触面から水平方向に離間した位置で、基板と第1突起部を着脱可能に固定し、第2固定部は、第2凸部と冷却器の接触面から水平方向に離間した位置で、冷却器と第2突起部を着脱可能に固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に半導体素子が配置された半導体モジュールと、
前記半導体モジュールを冷却する冷却器と、
前記半導体モジュールと前記冷却器とを熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダと、を備え、
前記ヒートスプレッダは、一方の面において、第1固定部を用いて前記半導体モジュールを前記ヒートスプレッダに固定する第1突起部と、他方の面において、第2固定部を用いて前記冷却器を前記ヒートスプレッダに固定する第2突起部と、前記半導体素子に対して第1熱伝導部材を間に介して接する第1凸部と、前記冷却器に対して第2熱伝導部材を間に介して接する第2凸部と、を有し、
前記第1固定部は、前記基板と前記半導体素子との接触面から水平方向に離間した位置で、前記基板と前記第1突起部を着脱可能に固定し、
前記第2固定部は、前記第2凸部と前記冷却器との接触面から水平方向に離間した位置で、前記冷却器と前記第2突起部を着脱可能に固定する
電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記ヒートスプレッダは、前記第1凸部の周囲を囲うように形成される第1の壁と、前記第2凸部の周囲を囲うように形成される第2の壁を有し、
前記第1の壁の垂直方向の長さは、前記第1突起部の長さ以下であり、
前記第2の壁の垂直方向の長さは、前記第2突起部の長さ以下である
電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記冷却器は、前記第2固定部を挿通する複数の冷却器ネジ穴を有し、
前記第2凸部は、前記他方の面と平行な平面上において、前記複数の冷却器ネジ穴の形成位置とは重ならず、
前記複数の冷却器ネジ穴は、前記冷却器の前記平面上で放射形状に設けられる
電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部は、前記第1固定部を挿通する複数の第1ボス部を有し、
前記半導体モジュールは、前記基板において、前記半導体素子と接触する面とは反対側の面にコネクタを有し、
前記第1ボス部の長さは、前記半導体素子の厚さと前記第1凸部の厚さを合計した厚さ以上の長さであり、
前記第1凸部は、前記半導体素子の平面部分に対向する平面部を有する
電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第2突起部は、前記第2固定部を挿通する第2ボス部を有し、
前記第2ボス部の長さは、前記第2凸部の厚さ以上の長さであり、
前記第2凸部の面積は、前記第1凸部の面積より大きい
電子制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部は、前記第1固定部を挿通する複数の第1ボス部を有し、
前記第1凸部は、前記一方の面において、前記複数の第1ボス部の位置に重ならず、
前記複数の第1ボス部は、前記一方の面において前記第1凸部から放射形状に設けられる
電子制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記基板は、板バネによって前記第1突起部に対して圧力固定され、
前記第1突起部は、前記ヒートスプレッダの平面上で放射形状を有し、
前記板バネは、前記基板において、前記第1突起部と接触する面とは反対側の面で前記基板を押さえる形状を有する
電子制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記ヒートスプレッダと着脱可能なスペーサである
電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載の電子制御ユニットは、ハードウェアアップデート等の高性能化に伴い発熱量が増大するため、放熱性の向上が求められる。例えば、特許文献1には、ヒートスプレッダ4に溝4gを設け、そこにOリング8を設置し放熱グリス9を保持し、また、Oリング8には切り欠き8nを持たせ、ネジ7締め付け時に通気口として機能させ、チップ2は樹脂5で封止することで、放熱性に優れた電力用半導体装置の構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ヒートスプレッダと基板ははんだや樹脂で固定されているため、アップデートに伴う半導体モジュールの変更が要求されても取り外せない課題が生じる。また、変更後の半導体モジュールのサイズや発熱量に合わせた冷却器も必要になる。これを鑑みて本発明は、冷却器を変更せずに半導体モジュールの変更に伴った放熱性の可変を実現する電子制御装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電子制御装置は、基板に半導体素子が配置された半導体モジュールと、前記半導体モジュールを冷却する冷却器と、前記半導体モジュールと前記冷却器とを熱的に接続する熱伝導性のヒートスプレッダと、を備え、前記ヒートスプレッダは、一方の面において、第1固定部を用いて前記半導体モジュールを前記ヒートスプレッダに固定する第1突起部と、他方の面において、第2固定部を用いて前記冷却器を前記ヒートスプレッダに固定する第2突起部と、前記半導体素子に対して第1熱伝導部材を間に介して接する第1凸部と、前記冷却器に対して第2熱伝導部材を間に介して接する第2凸部と、を有し、前記第1固定部は、前記基板と前記半導体素子との接触面から水平方向に離間した位置で、前記基板と前記第1突起部を着脱可能に固定し、前記第2固定部は、前記第2凸部と前記冷却器との接触面から水平方向に離間した位置で、前記冷却器と前記第2突起部を着脱可能に固定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冷却器を変更せずに半導体モジュールの変更に伴った放熱性の可変を実現する電子制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る、半導体モジュールの変更に伴った電子制御装置の平面図
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る、冷却器を示す図
【
図5】本発明の第5の実施形態に係る、ヒートスプレッダを示す図
【
図6】本発明の第6の実施形態に係る、電子制御装置の断面図
【
図7】本発明の第7の実施形態に係る、電子制御装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0009】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、電子制御装置1の断面図である。電子制御装置1は、車両に搭載される制御装置であり、半導体モジュール、ヒートスプレッダ8、冷却器7を備える。半導体モジュールは、半導体素子2、基板3、コネクタ4、第1熱伝導部材5、を備える。半導体素子2は基板3上に配置されている。冷却器7はヒートスプレッダ8を介して半導体モジュールを冷却する。ヒートスプレッダ8は熱伝導性である。コネクタ4は、基板3において半導体素子2が配置される面とは反対側の面に配置されている。
【0011】
ヒートスプレッダ8は、第1突起部13、第2突起部14を有する。第1突起部13は、半導体モジュールをヒートスプレッダ8に固定するため、ヒートスプレッダ8の一方の面において、ネジ等の締結部材である第1固定部11を用いる。また第1突起部13は、第1固定部11を挿通するネジ穴等である第1ボス部16を有する。第2突起部14は、ヒートスプレッダ8を冷却器7に固定するため、ヒートスプレッダ8の他方の面に固定するため、ネジ等の締結部材である第2固定部12を用いる。第2突起部14は、第2固定部12を挿通するネジ穴等である第2ボス部141を有する。
【0012】
また、ヒートスプレッダ8は、第1凸部9、第2凸部10を備える。第1凸部9は、第1熱伝導部材5を間に介して半導体素子2と熱的に接続している。第2凸部10は、第2熱伝導部材6を間に介して冷却器7と熱的に接続している。ヒートスプレッダ8は、このような構成を有することで、半導体モジュールと冷却器7とを熱的に接続し、半導体モジュールの熱を冷却器7に拡散している。第1凸部9は、ヒートスプレッダ8の半導体モジュールに対する積層方向の位置を調整する機能を有する。
【0013】
また、第1凸部9は、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールとの間に介する第1熱伝導部材5の塗布面の面積を調整する機能を有する。第2凸部10は、ヒートスプレッダ8の冷却器7に対する積層方向の位置を調整する機能を有する。また、第2凸部10は、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールとの間に介する第1熱伝導部材6の塗布面の面積を調整する機能を有する。
【0014】
基板3は、第1固定部11を挿通するネジ穴を有している。冷却器7は、第2固定部12を挿通するネジ穴等である冷却器ボス部を有している。第1固定部11は、基板3と半導体素子2との接触面から水平方向に離間した位置で、基板3と第1突起部13を着脱可能に固定している。また、第2固定部12は、第2凸部10と冷却器7との接触面から水平方向に離間した位置で、冷却器7と第2突起部14を着脱可能に固定している。
【0015】
このような構成を有することで、変更後の半導体モジュールの寸法や発熱量が変更前の半導体モジュールと異なる場合であっても、ヒートスプレッダ8のみの変更で半導体モジュールを冷却器7に熱的に接続し固定できるため、半導体モジュールの変更前後で冷却器7の共有化が実現できる。
【0016】
第1熱伝導部材5は、第1凸部9に接触していることで、半導体モジュールに対しての厚さ調整が実現されている。また、第2熱伝導部材6は、第2凸部10に接触していることで、冷却器7に対しての厚さ調整が実現されている。このようにすることで、熱抵抗を変更できる。そのため、冷却器7を変更することなく、変更後の異なるサイズの半導体モジュールに対応できる放熱性の変更を実現できる。また、第2凸部10の面積を第1凸部9の面積より大きくすることで、ヒートスプレッダ8で拡散された半導体素子2の熱を、第1凸部9の面積より広い面積を有する第2凸部10を介して冷却器7に放熱することができる。これにより、熱抵抗が下がり放熱性を向上させることが可能となる。
【0017】
また、第1凸部9は、半導体モジュールの半導体素子2に対して接触する第1熱伝導部材5の塗布面積を規定している。同様に、第2凸部10は、冷却器7に対して接触する第2熱伝導部材6の塗布面積を規定している。これにより、第1熱伝導部材5は、第1凸部9によって半導体素子2に対しての放熱面積の調整がされている。また第2熱伝導部材6は、第2凸部10によって冷却器7に対しての放熱面積の調整がされている。よって、半導体モジュールから冷却器7に対しての放熱の可変が実現できる。
【0018】
半導体モジュールへの接続に必要な第1熱伝導部材5の厚さ・面積と、冷却器7に接続する第2熱伝導部材6の厚さ・面積をそれぞれ独立に設定する。これにより、半導体モジュールが変更されても、変更後の半導体モジュールに合わせた第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6の塗布面積と厚さを調整して、放熱量を可変できるため、設計変更に対応できる。
【0019】
また、ヒートスプレッダ8が有する第1突起部13、第2突起部14により、ヒートスプレッダ8から半導体モジュールに対して、またヒートスプレッダ8から冷却器7に対して積層方向に高さ調節機能を有する。これにより、第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6の厚さを調節して熱抵抗を可変できるだけではなく、第1熱伝導部材5および第2熱伝導部材6に接触する構造体の熱や振動などの変形により、熱伝導部材の代わりに空気が入り込むことで放熱性能の低下につながるポンプアウトを抑制することができる。換言すると、ヒートスプレッダ8と半導体モジュールが互いに過度に接触することを防止できる。
【0020】
第1凸部9が第1熱伝導部材5を介して半導体素子2へ接続した状態で固定する際に、第1凸部9から半導体素子2へ大きな応力がかかると、半導体素子2が破損する可能性がある。そこで、第1固定部11が挿通する第1ボス部16の長さを、第1凸部9が半導体素子2に対して半導体素子2が破損しない程度の応力に長さを調整する。具体的には、第1ボス部16の長さを、半導体素子2の厚さと第1凸部9の厚さを合計した厚さ以上の長さにする。このようにすることで、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性が向上する。
【0021】
また第2突起部14において第2ボス部141の長さは、第2凸部10の厚さ以上の長さにする。第2凸部10の面積は、第1凸部9の面積より大きくする。このようにすることで、同様に半導体モジュールの交換および実装時の信頼性向上が実現できる。
【0022】
また、第1凸部9は半導体素子2の平面部分に対向する平面部を有する。この構造により、半導体モジュールの変更時において、第1凸部9に塗布する接着剤が多ければ第1凸部9から水平方向に接着剤がはみ出るため、接着部分の接着剤の塗布面積と厚さを維持できる。すなわち、接着剤を適した量に調整でき、半導体モジュールの交換および実装時の第1熱伝導部材5の塗布面積と厚さを最適化できる。またこれにより、半導体モジュールの交換および実装時の信頼性向上を実現できる。