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特開2024-165987インターリーブ方式高電圧比双方向DC-DCコンバータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165987
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】インターリーブ方式高電圧比双方向DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082639
(22)【出願日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 2022 4th International Conference on Electrical,Control and Instrumentation Engineering(ICECIE) 発行日 2022年11月1日 発行所 米国電気電子学会(IEEE)
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】三島 智和
(72)【発明者】
【氏名】頼 慶明
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB81
5H730BB88
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG05
5H730FG10
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】放電モードでの電圧ダブラー特性と、充電モードでの分圧器特性を広範囲に拡張し、広い入力/出力範囲の用途のための電圧変換比の向上という点で優れた性能を有する双方向DC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】インターリーブ方式双方向DC-DCコンバータにおいて、各相のインダクタ電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となる一部のスイッチの駆動パルスのオン時比率の上限又は下限のリミットが非対称に設けられ、スイッチングされる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターリーブ方式双方向DC-DCコンバータにおいて、
各相のインダクタ電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となる一部のスイッチの駆動パルスのオン時比率の上限又は下限のリミットが非対称に設けられ、スイッチングされることを特徴とする双方向DC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記DC-DCコンバータの回路は、
第1の低圧DC電源と第2の高圧DC電源の間に設けられ、
第1の低圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と、
第2の高圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と、
第1の低圧DC電源の正端子側に並列接続された2つの第1及び第2のインダクタ(L,L)と、
第1のインダクタ(L)に直列接続された第2のスイッチ(Q)と、
第2のスイッチ(Q)と第2の高圧DC電源の正端子の間に接続された第1のスイッチ(Q)と、
第1のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第3のスイッチ(Q)と、
第2のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第4のスイッチ(Q)と、
第1及び第2のスイッチ(Q,Q)の接続点と、第2のインダクタ(L)と第4のスイッチ(Q)の接続点の間に接続されたチャージポンプ(C)と、
第1乃至第4のスイッチを制御する駆動回路、
を備え、
前記駆動回路は、
第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットとが設けられる、請求項1に記載の双方向DC-DCコンバータ。
【請求項3】
第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ1)と第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ4)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1≦0.5,0<DQ4≦0.5であり、
第2のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ2)と第3のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ3)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1<1,0<DQ4<1である、請求項2に記載の双方向DC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記駆動回路は、
第1のスイッチ(Q)と第4のスイッチ(Q)、及び、第2のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)を、それぞれ相補的に動作し、
第1のスイッチ(Q)のオン時比率と第4のスイッチ(Q)のオン時比率の合計、及び、第2のスイッチ(Q)のオン時比率と第3のスイッチ(Q)のオン時比率の合計は、共に1であり、
充電モード時、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第1のスイッチ(Q)と第2のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とし、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第1のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定する、
及び、
放電モード時、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第4のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定し、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第4のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とする、請求項2に記載の双方向DC-DCコンバータ。
【請求項5】
第2の高圧DC電圧に対する第1の低圧DC電圧比は、充電モード時、第1のスイッチ(Q)のオン時比率と第2のスイッチ(Q)のオン時比率の積である、請求項3又は4に記載の双方向DC-DCコンバータ。
【請求項6】
第2の高圧DC電圧に対する第1の低圧DC電圧比は、放電モード時、値1から第3のスイッチ(Q)のオン時比率を減算した値と、値1から第4のスイッチ(Q)のオン時比率を減算した値との積の逆数である、請求項3又は4に記載の双方向DC-DCコンバータ。
【請求項7】
第1の低圧DC電源と第2の高圧DC電源の間に設けられ、
第1の低圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と、
第2の高圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と、
第1の低圧DC電源の正端子側に並列接続された2つの第1及び第2のインダクタ(L,L)と、
第1のインダクタ(L)に直列接続された第2のスイッチ(Q)と、
第2のスイッチ(Q)と第2の高圧DC電源の正端子の間に接続された第1のスイッチ(Q)と、
第1のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第3のスイッチ(Q)と、
第2のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第4のスイッチ(Q)と、
第1及び第2のスイッチ(Q,Q)の接続点と、第2のインダクタ(L)と第4のスイッチ(Q)の接続点の間に接続されたチャージポンプ(C)と、
第1乃至第4のスイッチを制御する駆動回路、
を備えるインターリーブ方式双方向DC-DCコンバータの回路の制御方法であって、
第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットとが設けられ、充電モード時に制御対象となる第1及び第2のスイッチ(Q,Q)と放電モード時に制御対象となる第3及び第4のスイッチ(Q,Q)をスイッチングする、双方向DC-DCコンバータの制御方法。
【請求項8】
前記駆動回路の制御は、
第1のスイッチ(Q)と第4のスイッチ(Q)、及び、第2のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)を、それぞれ相補的に動作するステップと、
第1のスイッチ(Q)のオン時比率と第4のスイッチ(Q)のオン時比率の合計、及び、第2のスイッチ(Q)のオン時比率と第3のスイッチ(Q)のオン時比率の合計は、共に1とするステップと、
充電モード時に、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第1のスイッチ(Q)と第2のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とし、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第1のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定するステップと、
放電モード時に、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第4のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定し、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第4のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とするステップを備える、請求項7に記載の双方向DC-DCコンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターリーブ方式の双方向DC-DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年アジア諸国では深刻な電力トラブルに見舞われており、消費者は、電気自動車(EV;Electric Vehicle)を接続する直流マイクログリッド(DC Micro-Grid)を停電時の潜在的な電源として用いている。この実現には、広範囲の電圧変換比を有する双方向DC-DCコンバータが必要である。
図12に示すような、太陽光発電(PV)用パワーコンディショナーや電力系統に電気自動車(EV)をつなげるV2Gシステムには、電位差の激しい2つの直流電圧源間で、双方向に電力を伝送できる双方向DC-DCコンバータが不可欠である。一般に、直流電圧源間の電位差が大きい場合、DC-DCコンバータを構成する半導体スイッチの耐圧が増加する傾向にあり、高耐圧のパワー半導体素子は電流導通損失が大きいことから、高効率な電力変換効率が達成し難い技術課題がある。
【0003】
また、双方向DC-DCコンバータの電力容量(動作電流)を向上させるため、2相の変換器を間欠駆動(インターリーブ)する回路方式がよく利用されるが、パワー半導体素子の動作責務や回路部品のパラメータのわずかな差異により電流の不均衡が起こりやすく、そのための電流バランス制御を必要とする。ここで、パワー半導体素子のオン時比率が50%以下という従来技術の制約を受ければ、電流不平衡は解消せず、昇降圧比の制限も受けることから、双方向DC-DCコンバータの応用先が限定的となる問題がある。
このような状況下、パワー半導体素子のオン時比率の制約が少なく、かつ、高昇降圧比を実現する双方向DC-DCコンバータの実用的回路トポロジーを確立することが求められている。
【0004】
燃料電池や太陽光発電(PV)のバッテリなど低電圧のクリーンエネルギー源に、一般的に使用されるコンバータの1つは、インターリーブ方式のバックブースト双方向DC/DCコンバータ(IBDC)である。あるシナリオでは、インターリーブ方式の昇降圧双方向DC/DCコンバータの高電圧変換比の要件が満たされない可能性があり、そのため、低電圧のクリーンエネルギー源は、AC主電源または高電圧のDCバスに接続された家電製品への電力供給には適していないと言われている。
【0005】
また、インターリーブ方式のチャージポンプ双方向DC/DCコンバータ(ICPBDC;Interleaved Charge-Pump Bidirectional DC-DC Converter)が知られている(非特許文献1)。ICPBDCは、従来のIBDC(Interleaved Bidirectional DC-DC Converter)と比較して、優れた電圧変換比を備えているが、動作中のアンバランスな電流条件により、分圧器特性および電圧ダブラー特性が失われるという重大な問題がある。すなわち、入力電流リプルを効果的に低減し装置容量増にも対応できるメリットを持つ一方、2相スイッチのオン時比率のリミット値がともに0.5であることが条件となる(降圧動作は0.5以下、昇圧動作は0.5以上)。本明細書では、このオン時比率の条件をFDCL(Fixed Duty Cycle Limit )と称す。このため、降圧動作では主となるスイッチのオン時比率が0.5以上の領域となり、昇圧動作では0.5以下の領域では2相電流のバランスが崩れ、高降圧および高昇圧特性が失われてしまう。
【0006】
かかる問題に対処するために、広範囲のDCバス電圧動作とインダクタ電流の平衡化を可能にするICPBDCの新たな提案が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2011-504356号公報
【特許文献2】再表2018/066444号公報
【0008】
【非特許文献1】C. M. Lai, “Development of a Novel BidirectionalDC/DC Converter Topology with High Voltage Conversion Ratio for ElectricVehicles and DC-Microgrids”, Energies, Vol. 9, No. 6, pp.410:1-25, June 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる状況に鑑みて、本発明は、降圧,昇圧の各動作に応じて2つの主スイッチのオン時比率を非対称かつ調整範囲に制限をつけることにより、2相インダクタ電流のバランスをとって、その結果、電圧変換比を改善することを図る。
すなわち、本発明は、ICPBDCにおける動作中のアンバランスな電流条件により、分圧器特性および電圧ダブラー特性が失われるといった問題を解決すべく、放電モードでの電圧ダブラー特性と、充電モードでの分圧器特性を広範囲に拡張し、広い入力/出力範囲の用途のための電圧変換比の向上という点で優れた性能を有する双方向DC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の双方向DC-DCコンバータは、インターリーブ方式双方向DC-DCコンバータにおいて、各相のインダクタ電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となる一部のスイッチの駆動パルスのオン時比率の上限又は下限のリミットが非対称に設けられ、スイッチングされることを特徴とする。
【0011】
各相のインダクタ電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となる一部のスイッチの駆動パルスのオン時比率の上限又は下限のリミットを設けることにより、放電モードでの電圧ダブラー特性と、充電モードでの分圧器特性を広範囲に拡張し、広い入力/出力範囲の用途のための電圧変換比を向上する。
すなわち、本発明は、ICPBDCにおいて、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となる一部のスイッチの駆動パルスのオン時比率の上限又は下限のリミットを設けるといったシンプルなデューティ制限制御を提案する。これにより、自動電流バランス、低導通損失、低スイッチストレス、高速過渡応答、および高電力密度が実現できることから、理想的なソリューションを提供することになる。
【0012】
本発明は、ICPBDCにおけるパワー半導体素子のスイッチ駆動の制御ロジックを工夫するものであるため、電源工場による大量生産に適したICPBDCに、さらなる追加のハードウェアは必要なく、低コストのアナログ制御回路またはデジタル制御プロセッサを用いて、シンプルなデューティ制限制御ロジックを実装することができる。
【0013】
本発明の双方向DC-DCコンバータでは、上記のDC-DCコンバータの回路は、第1の低圧DC電源と第2の高圧DC電源の間に設けられ、下記a)~i)を備える。そして、駆動回路が、第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットとが設けられる。
【0014】
a)第1の低圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)。
b)第2の高圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)。
c)第1の低圧DC電源の正端子側に並列接続された2つの第1及び第2のインダクタ(L,L)。
d)第1のインダクタ(L)に直列接続された第2のスイッチ(Q)。
e)第2のスイッチ(Q)と第2の高圧DC電源の正端子の間に接続された第1のスイッチ(Q)。
f)第1のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第3のスイッチ(Q)。
g)第2のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続された第4のスイッチ(Q)。
h)第1及び第2のスイッチ(Q,Q)の接続点と、第2のインダクタ(L)と第4のスイッチ(Q)の接続点の間に接続されたチャージポンプ(C)。
i)第1乃至第4のスイッチを制御する駆動回路。
【0015】
ここで、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となるスイッチは、充電モードでは第1及び第2のスイッチ(Q,Q)であり、放電モードでは第3及び第4のスイッチ(Q,Q)である。
【0016】
本発明の双方向DC-DCコンバータにおいて、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ1)と第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ4)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1≦0.5,0<DQ4≦0.5であり、また、第2のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ2)と第3のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ3)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1<1,0<DQ4<1である。
【0017】
本発明の双方向DC-DCコンバータにおける駆動回路は、第1のスイッチ(Q)と第4のスイッチ(Q)、及び、第2のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)を、それぞれ相補的に動作し、第1のスイッチ(Q)のオン時比率と第4のスイッチ(Q)のオン時比率の合計、及び、第2のスイッチ(Q)のオン時比率と第3のスイッチ(Q)のオン時比率の合計は、共に1である。そして、充電モード時は、下記1)とし、かつ、放電モード時は、下記2)とする。
1)充電モード時、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第1のスイッチ(Q)と第2のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とし、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第1のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定する。
2)放電モード時、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第4のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定し、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第4のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とする。
【0018】
本発明の双方向DC-DCコンバータにおいて、第2の高圧DC電圧に対する第1の低圧DC電圧比は、充電モード時、第1のスイッチ(Q)のオン時比率(DQ1)と第2のスイッチ(Q)のオン時比率(DQ2)の積である。すなわち、電圧比=第1の低圧DC電圧/第2の高圧DC電圧=DQ1×DQ2である。
【0019】
本発明の双方向DC-DCコンバータにおいて、第2の高圧DC電圧に対する第1の低圧DC電圧比は、放電モード時、値1から第3のスイッチ(Q)のオン時比率を減算した値と、値1から第4のスイッチ(Q)のオン時比率を減算した値との積の逆数である。すなわち、電圧比=第1の低圧DC電圧/第2の高圧DC電圧=1/(1-DQ3)・(1-DQ4)である。
【0020】
次に、本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法について説明する。
本発明の双方向DC-DCコンバータは、上記a)~i)を備えるインターリーブ方式双方向DC-DCコンバータの回路の制御方法であって、第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットとが設けられ、充電モード時に制御対象となる第1のスイッチ(Q)と放電モード時に制御対象となる第4のスイッチ(Q)をスイッチングする。
【0021】
ここで、本発明の双方向DC-DCコンバータにおける駆動回路の制御は、以下のS1~S4のステップを備える。
S1)第1のスイッチ(Q)と第4のスイッチ(Q)、及び、第2のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)を、それぞれ相補的に動作するステップ。
S2)第1のスイッチ(Q)のオン時比率と第4のスイッチ(Q)のオン時比率の合計、及び、第2のスイッチ(Q)のオン時比率と第3のスイッチ(Q)のオン時比率の合計は、共に1とするステップ。
S3)充電モード時に、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第1のスイッチ(Q)と第2のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とし、第2のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第1のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定するステップ。
S4)放電モード時に、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5未満である場合には、第4のスイッチ(Q)のオン時比率は0.5に固定し、第3のスイッチ(Q)のオン時比率が0.5以上である場合には、第4のスイッチ(Q)と第3のスイッチ(Q)のオン時比率は同一とするステップ。
【発明の効果】
【0022】
本発明の双方向DC-DCコンバータによれば、放電モードでの電圧ダブラー特性と、充電モードでの分圧器特性を広範囲に拡張し、広い入力/出力範囲の用途のための電圧変換比の向上という点で優れた性能を有するといった効果がある。
また、本発明の双方向DC-DCコンバータによれば、自動電流バランス、低導通損失、低スイッチストレス、高速過渡応答、および高電力密度を実現できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】双方向DC-DCコンバータの概要図
図2】双方向DC-DCコンバータの回路構成図
図3】本発明の双方向DC-DCコンバータの駆動回路の制御ブロック図
図4-1】従来のIBDCおよびICPBDCの降圧/昇圧の電圧変換比を示すグラフ
図4-2】本発明の双方向DC-DCコンバータの降圧/昇圧の電圧変換比を示すグラフ
図5】充電モードでのICPBDCの遷移等価回路図
図6】放電モードでのICPBDCの遷移等価回路図
図7】本発明の双方向DC-DCコンバータの典型的なスイッチ駆動パルスのパターン
図8-1】充電モードにおけるスイッチ駆動パルスのパターン1
図8-2】充電モードにおけるスイッチ駆動パルスのパターン2
図9-1】放電モードにおけるスイッチ駆動パルスのパターン1
図9-2】放電モードにおけるスイッチ駆動パルスのパターン2
図10】従来のICPBDCの制御方法と本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法を用いた降圧動作の実測波形を示すグラフ
図11】本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法の電圧変換効率を示すグラフ
図12】電気自動車(EV)や太陽光発電(PV)を接続する直流マイクログリッドシステムの構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0025】
双方向DC-DCコンバータ1の概要図を図1に示す。ここでは、バッテリVbatを低圧側、DCバスVbusを高圧側とし、VbusからVbatへの電力伝送を充電モード(降圧動作)とし、VbatからVbusへの電力伝送を放電モード(昇圧動作)とする。
双方向DC-DCコンバータ1は、電気自動車(Electric Vehicle)が接続される直流マイクログリッド(Direct
Current Micro-Grid)用のチャージポンプ双方向DC/DCコンバータ(ICPBDC)のトポロジーの回路で構成される。図2は、本発明の双方向DC-DCコンバータの回路構成を示す。
【0026】
本発明の双方向DC-DCコンバータは、図2に示すように、第1の低圧DC電源と第2の高圧DC電源の間に設けられ、第1の低圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と第2の高圧DC電源側フィルタキャパシタ(C)と、第1の低圧DC電源の正端子側に並列接続された2つの第1及び第2のインダクタ(L,L)と、第1~第4のスイッチ(Q~Q)と、チャージポンプ(C)と、第1~第4のスイッチを制御する駆動回路で構成される。
第2のスイッチ(Q)は、第1のインダクタ(L)に直列接続され、第1のスイッチ(Q)は、第2のスイッチ(Q)と第2の高圧DC電源の正端子の間に接続される。
第3のスイッチ(Q)は、第1のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続され、第4のスイッチ(Q)は、第2のインダクタ(L)と第2の高圧DC電源の負端子との間に接続される。
チャージポンプ(C)は、第1及び第2のスイッチ(Q,Q)の接続点と、第2のインダクタ(L)と第4のスイッチ(Q)の接続点の間に接続される。
ここで、充電モードと放電モードのモード毎にそれぞれ制御対象となるスイッチは、充電モードでは第1及び第2のスイッチ(Q,Q)であり、放電モードでは第3及び第4のスイッチ(Q,Q)である。
【0027】
本発明の双方向DC-DCコンバータにおける駆動回路は、第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットとが設けられる。より具体的には、駆動回路は、図3に示す制御ロジックで動作する。
すなわち、第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ1)と第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ4)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1≦0.5,0<DQ4≦0.5であり、第2のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ2)と第3のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率(DQ3)は、充電モードと放電モードによらず共通で、それぞれ、0<DQ1<1,0<DQ4<1である。
下記表1は、駆動回路の動作モードの各スイッチのスイッチ駆動パルスのオン時比率の範囲を纏めたものである。また、下記表2は、動作モード毎の制御対象のスイッチの制御スキームを纏めたものである。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
本発明の双方向DC-DCコンバータでは、従来のIBDCおよびICPBDCの降圧および昇圧の電圧変換比(VCR;Voltage Conversion Ratio)を改善するものである。図4-1に従来のIBDCおよびICPBDCの降圧および昇圧の電圧変換比(VCR)を示す。上述のオン時比率の条件であるFDCLを適用したICPBDCの重要な技術課題は、パワー半導体スイッチのオン時比率が制限されることで、DCバス電圧の制御範囲が大きく制限されることである。
すなわち、充電モード(降圧動作)ではオン時比率が0.5以下,放電モード(昇圧動作)ではオン時比率が0.5以上の領域に限定されるため、その結果、ICPBDCが広いDCバス電圧に対応した動作が制限されることになる。
【0031】
この対策として、本発明の双方向DC-DCコンバータでは、ICPBDCを構成するパワー半導体スイッチの駆動回路において、デューティサイクル制限値制御(Duty Limit Control;以下、「DLC」という。)を実装することによって、広範囲のDCバス電圧制御を実現する。上述のDLCの実装により、ICPBDCのインダクタ電流は平衡を実現することができ、放電モードでの高昇圧比特性および充電モードでの高降圧比特性を、図4-2に示す降圧および昇圧の電圧変換比(VCR)のように改善し、理論上、全範囲に拡大することができる。
【0032】
次に、本発明の双方向DC-DCコンバータの動作モードについて説明する。
本発明の双方向DC-DCコンバータでは、図2の回路構成に示すとおり、アクティブスイッチ(Q~Q),チャージポンプ(C),低圧DC電源側フィルタキャパシタ(C),及び高圧DC電源側フィルキャパシタ(C)を含む。これらはすべて理想素子であるとし、2つのインダクタンス電流(iL1,iL2)は連続電流モードで動作すると仮定する。さらに、すべてのキャパシタの容量は十分大きく、電圧変動を無視できるものとする。
以下の解析は、本発明の双方向DC-DCコンバータの駆動回路においてDLCを実装することにより、充電モード(降圧動作)におけるスイッチQのオン時比率DQ2 > 0.5、放電モード(昇圧動作)においてはスイッチQのオン時比率DQ3
> 0.5に焦点を当てる。
【0033】
<充電モード(降圧動作)>
充電モードでのICPBDCの遷移等価回路を、図5(1)~(4)を参照して説明する。
(1-1)CM1:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図5(1)参照)。2相のインダクタL,L電圧とポンプキャパシタC電流は、それぞれ下記の式1で表される。
【0034】
【数1】
【0035】
(1-2)CM2:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図5(2)参照)。インダクタL,L電圧と、C電流はそれぞれ下記の式2で表される。
【0036】
【数2】
【0037】
(1-3)CM3:上述のCM1と同様に、スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図5(3)参照)。2相のインダクタL,L電圧とポンプキャパシタC電流は、それぞれ上記の式1で表される。
【0038】
(1-4)CM4:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図5(4)参照)。電圧とコンデンサ電流は下記の式3で表される。
【0039】
【数3】
【0040】
充電モードでは、電圧-時間積の平衡条件に基づき、電圧変換比とチャージポンプ電圧は下記の式4で定義され、また、電流-時間積の平衡条件に基づき、インダクタンス電流(iL1,iL2)は下記の式5で定義される。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
<放電モード(昇圧動作)>
放電モードでのICPBDCの遷移等価回路を、図6(1)~(4)を参照して説明する。
(2-1)DM1:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図6(1)参照)。インダクタンス電圧とコンデンサ電流は、それぞれ下記の式6で表される。
【0044】
【数6】
【0045】
(2-2)DM2:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図6(2)参照)。インダクタンス電圧とコンデンサ電流は、それぞれ下記の式7で表される。
【0046】
【数7】
【0047】
(2-3)DM3:スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図6(3)参照)。インダクタンス電圧とコンデンサ電流は、それぞれ下記の式8で表される。
【0048】
【数8】
【0049】
(2-4)DM4:上述のDM2と同様に、スイッチQとQが開き、スイッチQとQが閉じる(図6(4)参照)。インダクタンス電圧とコンデンサ電流は、それぞれ上記の式7で表される。
【0050】
放電モードでは、電圧-時間積の平衡条件に基づき、電圧変換比とチャージポンプ電圧は下記の式9で定義され、また、電流-時間積の平衡条件に基づき、インダクタンス電流(iL1,iL2)は下記の式10で定義される。
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
次に、本発明の双方向DC-DCコンバータにおける駆動回路に実装する制御ロジックについて説明する。前述したとおり、第1のインダクタ(L)電流と第2のインダクタ(L)電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、第1のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の上限リミットと、第4のスイッチ(Q)のスイッチ駆動パルスのオン時比率の下限リミットと設定する。
すなわち、図3に示したように、2相インダクタ電流の合成電流を検出し、その基準値と付き合わせした後に、比例・積分(PI)器を通し、リミット回路を介した後に、降圧・昇圧に応じてスイッチQ~Qへのスイッチ駆動パルスのオン時比率を決定する。2相インダクタ電流の合成値と基準値との誤差の増幅値に対して、充電モードと放電モードのオン時比率を非対称に制御することにより、2相インダクタ電流の平衡が実現し、かつオン時比率の幅を広げることで、より広い電圧変動にも対応することができる。
基準値は動作モードに応じて、VとVo,refで切り替わる。iLt,refは電圧誤差のPI制御により生成される。iLt,refの値と入力電流iLt(2相インダクタ電流の合成値)との誤差をPI制御器により演算し、PI制御器を経てモード別に決まるスイッチのオン時比率を決定する。ここで、Vconは電圧・電流制御ループから算出されるスイッチオン時比率制御量であり、また、Vcon,cは充電モードのときのスイッチオン時比率制御量、Vcon,dは放電モードのときのスイッチオン時比率制御量である。Vtri,cとVtri,dは同一三角波、Vtri,cJとVtri,dJは同一の三角波である。互いに位相が180°異なる。モードセレクタにより、充電モードと放電モードに対応したスイッチ駆動パルスパターンを生成する。
【0054】
本発明の双方向DC-DCコンバータの典型的なスイッチ駆動パルスのパターンを図7に示す。図7(1)は充電モードのスイッチ駆動パルスのパターンであり、図7(2)は放電モードのスイッチ駆動パルスのパターンである。充電モードにおいて、オン時比率DQ1, DQ2は上限値を非対称に制御する。一方、放電モードでは、オン時比率DQ3, DQ4は上限値を非対称に制御する。いずれのモードもスイッチQとQは相補的に、また、スイッチQとQは相補的に動作する。
図8-1は、充電モードでスイッチQ,Qのオン時比率0.5以下の場合の各部の動作波形を示す。インダクタ電流iL1はスイッチQのオン区間で線形上昇の特性を有し、インダクタ電流iL2はスイッチQのオン区間で線形上昇の特性を有する。各スイッチのオフ電圧は、別途式で定義したとおりのオフ電圧である。
また、図8-2は、充電モードでスイッチQのオン時比率が0.5を超える場合の動作波形である。本発明の双方向DC-DCコンバータの駆動回路におけるデューティ制限制御方法に従い、スイッチQは0.5に制限されており、非対称のオン時比率となる。
図9-1は、放電モードでの各部の動作波形であり、スイッチQ,Qはオン時比率0.5を超えたと共に同一のオン時比率を持つ。インダクタ電流iL2はスイッチQがオン時に電流が線形上昇し、インダクタ電流iL1はスイッチQがオン時に電流が線形上昇し、各インダクタにエネルギーが蓄積する。スイッチQと相補的に動作するスイッチQがオン時のインダクタ電流iL2は線形下降し、インダクタLに蓄積された電磁エネルギーをVbus側へ放出して昇圧動作となる。スイッチQと相補的に動作するスイッチQがオン時のインダクタ電流iL1は線形下降し、インダクタLに蓄積された電磁エネルギーをVbus側へ放出して昇圧動作となる。
また、図9-2は、放電モードでの各部の動作波形であり、スイッチQはオン時比率0.5より小さく、スイッチQはオン時比率0.5に制限されているパターンである。インダクタ電流iL2はスイッチQがオン時に電流が線形上昇し、インダクタ電流iL1はスイッチQがオン時に電流が線形上昇しており、各インダクタにエネルギーが蓄積する。スイッチQと相補的に動作するスイッチQがオン時のインダクタ電流iL2は線形下降し、インダクタLに蓄積された電磁エネルギーをVbus側へ放出して昇圧動作となる。スイッチQと相補的に動作するスイッチQがオン時のインダクタ電流iL1は線形下降し、インダクタLに蓄積された電磁エネルギーをVbus側へ放出して昇圧動作となる。各スイッチのオフ電圧は別途式で定義したとおりのオフ電圧である。
【0055】
<充電モード>
制御出力がDQ2<0.5である場合、スイッチ制御信号DQ1=DQ2となり、制御出力がDQ2>0.5である場合、制御信号DQ1=0.5となる。すなわち、下記の式11に、上記の式4と式5をそれぞれ代入し、電圧利得は、下記の式12のとおり表される。
【0056】
【数11】
【0057】
【数12】
【0058】
また、チャージポンプキャパシタ電圧VCBは、下記の式13のとおり定義され、インダクタンス電流(iL1,iL2)は、下記の式14のとおり定義される。また、各スイッチの電圧ストレスは、下記の式15のとおり定義される。
【0059】
【数13】
【0060】
【数14】
【0061】
【数15】
【0062】
<放電モード>
制御出力がDQ3<0.5である場合、スイッチ制御信号DQ4=0.5となり、制御出力がDQ3>0.5である場合、制御信号DQ4=DQ3となる。すなわち、下記の式16に、上記の式9と式10をそれぞれ代入し、DC電圧比は、下記の式17のとおり表される。
【0063】
【数16】
【0064】
【数17】
【0065】
また、チャージポンプキャパシタ電圧VCBは、下記の式18のとおり定義され、インダクタンス電流(iL1,iL2)は、下記の式19のとおり定義される。また、各スイッチの電圧ストレスは、下記の式20のとおり定義される。
【0066】
【数18】
【0067】
【数19】
【0068】
【数20】
【0069】
次に、本発明の双方向DC-DCコンバータの駆動回路に実装するDLCの有効性を示すため、500WのICPBDCプロトタイプを用いた評価結果について説明する。
入力電圧60Vに対する従来のICPBDCの制御方法と本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法を用いた降圧動作の実測波形を図10に比較して示す。オン時比率の上限値を固定した図10(1)では、2つのインダクタ電流の平均値が不均衡となるのに対して、本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法による動作波形の図10(2)では、2つのインダクタ電流の平均値は、ほぼ等しく平衡が保たれることがわかる。
【0070】
DCバス電圧が200Vおよび380Vの場合における本発明の双方向DC-DCコンバータの電圧変換効率について、充電モードでの実測結果を図11(1)、放電モードでの実測結果を図11(2)にそれぞれ示す。200VのDCバス電圧では、充電モードと放電モードでのコンバータの最高効率はそれぞれ97.51%と97.5%が得られる結果となった。一方、380VのDCバス電圧においては、充電モードと放電モードでのコンバータの最大効率はそれぞれ96.74%と96.87%となった。これにより、DCバスラインの変動に対しても、高効率の電力変換を実現することが明らかとなった。なお、効率測定時のVbatはすべて60V一定としている。
本発明の双方向DC-DCコンバータの制御方法は、インダクタ電流のバランス化、動作範囲全体にわたって出力電圧を調整できることがわかった。
【0071】
(その他の実施例)
上述の実施例1では、2相のインターリーブ方式双方向DC-DCコンバータを例に挙げて説明したが、2相に限定されず、インダクタを介して3相へ拡張可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、太陽光発電、燃料電池、電池の用途、ならびに、電源および無停電電源装置(UPS)システムの統合を含む、クリーンエネルギー産業において有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 双方向DC-DCコンバータ
2 駆動回路
3 モードセレクタ
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12