(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165989
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】2剤式の毛髪処理剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20241121BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241121BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241121BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20241121BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/60
A61K8/49
A61Q5/10
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023091238
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 弘之
(72)【発明者】
【氏名】川上 昌宏
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB312
4C083AB352
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC422
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD642
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC38
4C083DD06
4C083EE03
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】染毛時間が短く、良好な染色効果を発揮させることができる2剤式の毛髪処理剤を提供。
【解決手段】第1処理剤と第2処理剤とからなる2剤式の毛髪処理剤であって、第1処理剤は、タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、アルカリ剤とを含み、第2処理剤は、金属塩を含むことを特徴とする2剤式の毛髪処理剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1処理剤と第2処理剤とからなる2剤式の毛髪処理剤であって、
第1処理剤は、(A)タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、(B)アルカリ剤とを含み、
第2処理剤は、(C)金属塩を含む、ことを特徴とする2剤式の毛髪処理剤。
【請求項2】
前記第1処理剤のpHが5.0~10.0の範囲である請求項1に記載の2剤式の毛髪処理剤。
【請求項3】
前記第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、前記第2処理剤を毛髪に適用することを特徴とする請求項1又は2に記載の2剤式の毛髪処理剤。
【請求項4】
白髪隠し用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2剤式の毛髪処理剤。
【請求項5】
(A)タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、(B)アルカリ剤とを含む第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、(C)金属塩を含む第2処理剤を毛髪に適用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤式の毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
髪を染色する染毛剤には、一時染毛剤、半永久染毛剤、永久染毛剤がある。これら染毛剤の中でも永久染毛剤は、染色性が高く、染毛後の色落ちが抑えられることから、最も幅広く普及している。一般的な永久染毛剤としては、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤からなる酸化染毛剤がある。これら酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを予め混合して使用することから、施術における簡便性にも優れている。
【0003】
しかしながら、酸化染毛剤は、毛髪へのダメージがあるだけでなく、一部の酸化染料によってアレルギー反応を引き起こすリスクがあり安全性に問題があると言われている。そこで従来から、毛髪へのダメージが低く、かつ、アレルギー反応を引き起こさない安全性の高い染毛手段として、タンニン、没食子酸、ラッカイン酸などのポリフェノール類と金属塩との反応を利用して染色することを特徴とする非酸化型の染毛剤が提案されている(例えば、特許文献1~5を参照)。
【0004】
このような非酸化型の染毛剤の多くは、第1剤中に含まれるポリフェノール類と、第2剤中に含まれる金属塩とを毛髪上で反応させることにより発色させるメカニズムを有している。しかしながら、これら非酸化型に染毛剤は、染毛時間が長く、染色力が弱いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-170629号公報
【特許文献2】特開平07-069850号公報
【特許文献3】特開2004-353150号公報
【特許文献4】特開2005-029550号公報
【特許文献5】特開2014-009160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、染毛時間が短く、良好な染色効果を発揮させることができる2剤式の毛髪処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、第1処理剤と第2処理剤とからなる2剤式の毛髪処理剤であって、第1処理剤は、(A)タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、(B)アルカリ剤とを含み、
第2処理剤は、(C)金属塩を含むことを特徴とする2剤式の毛髪処理剤を提供する。
【0008】
上記第1処理剤のpHが5.0~10.0の範囲であることが好ましい。
【0009】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、上記第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、上記第2処理剤を毛髪に適用することが好ましい。
【0010】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、白髪隠し用であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、(A)タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、(B)アルカリ剤とを含む第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、(C)金属塩を含む第2処理剤を毛髪に適用することを特徴とする毛髪処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、染毛時間が短く、良好な染色効果を発揮させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1処理剤と第2処理剤とからなる2剤式の毛髪処理剤は、第1処理剤において、タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種と、アルカリ剤とを含み、第2処理剤において、金属塩を含むことを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の2剤式の毛髪処理剤に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0015】
(第1剤)
本発明の2剤式の毛髪処理剤の第1処理剤は、タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種を含有する。本明細書において、上記タンニン酸、没食子酸、ヘマテインから選ばれる少なくとも1種を「成分A」と称する。これら成分Aは、酸化還元された成分であってもよく、例えば、ヘマテインを還元したヘマトキシリンを使用してもよい。これら成分Aを用いることにより、染毛時間が短く、良好な染色効果を発揮させることができる。
【0016】
上記成分Aの中でも、染毛時間を短くする観点、並びに良好な染色効果を発揮させる観点からタンニン酸を用いることが好ましい。
【0017】
タンニン酸とは、INCI名:TANNIC ACIDと称される成分であり、タンニン酸の市販品としては、例えば、タンニン酸(商品名,富士化学工業株式会社製)などが挙げられる。上記タンニン酸は、タンニン酸を含む抽出物であってもよく、例えば、ゴバイシエキスを使用してもよい。
【0018】
本発明の第1処理剤中の成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、染毛時間を短くする観点、並びに良好な染色効果を発揮させる観点から、第1処理剤100質量%中、0.01~30.0質量%であることが好ましく、0.05~20.0質量%であることがより好ましく、0.1~10.0質量%であることが更に好ましい。
【0019】
本発明の2剤式の毛髪処理剤の第1処理剤は、アルカリ剤を含有する。本明細書において、上記アルカリ剤を「成分B」と称する。これら成分Bを用いることにより、格段に優れた染色効果を発揮させることが可能となる。
【0020】
用いられる成分Bとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、モルホリン、トロメタミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオールなどが挙げられる。これら成分Bは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0021】
本発明の第1処理剤中の成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させる観点から、第1処理剤100質量%中、0.05~6.0質量%であることが好ましく、0.4~4.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は純分に換算した量である。
【0022】
なお、上記第1処理剤のpHは、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させる観点から、5.0~10.0の範囲を満たし調製されることが好ましく、6.0~9.0の範囲を満たし調製されることがより好ましい。また、pHは、10.0を超えても染色性は良好であるが安全性の観点からも6.0~9.0であることが好ましい。
【0023】
本発明においては、上記第1処理剤のpH領域に調整することができるのであれば、pH調整剤を用いても、また用いなくとも構わない。上記pH調整剤を用いる場合、その含有量は目的とするpHに調整できる量であれば特に限定されない。
【0024】
pH調整剤を用いる場合は、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、乳酸、グリオキシル酸などを例示でき、これらの緩衝液として用いても構わない。これら成分の中でも、クエン酸、乳酸、グリオキシル酸を用いることが好ましい。
【0025】
また、上記第1処理剤中には、酸化を防止して製剤安定性を付与する観点から、アスコルビン酸および/又はその誘導体、システインおよび/又はその誘導体などの安定化剤を更に配合させることが好ましい。
【0026】
本発明の第1処理剤中の安定化剤の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、製剤安定性の観点から、第1処理剤100質量%中、0.01~3質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記安定化剤の含有量は純分に換算した量である。
【0027】
上記第1処理剤中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの界面活性剤、カチオン化セルロース、アニオン性ポリマーなどの増粘性高分子、植物抽出液、防腐剤、香料などを目的に応じて適宜配合することができる。また、本発明の2剤式の毛髪処理剤の第1処理剤の残部には精製水が用いられる。
【0028】
上記第1処理剤の剤型は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などが挙げられる。その製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、上記各構成成分を混合し、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0029】
なお、上記第1処理剤は、後述する第2処理剤と組み合わせて処理を施すことで、染毛時間を短くする観点、並びに良好な染色効果を発揮させる観点から、毛根から毛先まで容易に剤を行き渡らせることができるシャンプー等として用いられることが好ましい。
【0030】
次に、本発明の2剤式の毛髪処理剤の第2処理剤について説明する。
【0031】
本発明の2剤式の毛髪処理剤の第2処理剤は、金属塩を含有する。本明細書において、上記金属塩を「成分C」と称する。これら成分Cは、第1処理剤中に含まれる成分Aと反応して発色する成分であり、成分Cを用いることで良好な染色効果を発揮させることができる。
【0032】
用いられる成分Cとしては、例えば、鉄塩、亜鉛塩、銅塩などが挙げられる。これら成分Cは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。本発明においては、良好な染色効果を発揮させる観点から、上記成分Cの中でも、鉄塩を用いることが好ましい。
【0033】
上記鉄塩の具体例としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、酢酸第一鉄、酢酸第二鉄、グルコン酸第一鉄、硝酸第一鉄、乳酸第一鉄などが挙げられる。これら鉄塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。本発明においては、格段に優れた染色効果を発揮させるため、上記した鉄塩の中でも、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄を用いることがより好ましく、汎用性に優れる硫酸第一鉄を用いることが最も好ましい。
【0034】
なお、上記成分Cは市販品を用いることができる。硫酸第一鉄の市販品としては、例えば、硫酸第一鉄(商品名,富士化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
本発明の第2処理剤中の成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させる観点から、第2処理剤100質量%中、0.1~25質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は純分に換算した量である。
【0036】
上記第2処理剤中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの界面活性剤、セルロース、カチオン化セルロース、アニオン性ポリマーなどの増粘性高分子、植物抽出液、防腐剤、香料などを目的に応じて適宜配合することができる。また、本発明の2剤式の毛髪処理剤の第2処理剤の残部には精製水が用いられる。
【0037】
上記第2処理剤の剤型は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などが挙げられる。その製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、上記各構成成分を混合し、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0038】
なお、上記第2処理剤は、上記した第1処理剤と組み合わせて処理を施すことで、毛髪をケアしつつ、染毛時間を短くする観点、更には発色による良好な染色効果を発揮させる観点から、毛根から毛先まで剤を容易に行き渡らせることができるヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス等として用いられることが好ましい。
【0039】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、毛髪にダメージを与えずにケアをしつつ、染毛時間を短くするため、更には発色による染色効果を発揮させるために、上記第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、次いで、上記第2処理剤を毛髪に適用させることが好ましい。当該手順は、処理が容易で染毛時間を短くし、更には発色による良好な染色効果を発揮させることができるようになるという格段に優れた効果をも発揮する。
【0040】
すなわち、本発明の2剤式の毛髪処理剤の毛髪処理方法は、上記成分Aと上記成分Bとを含む第1処理剤を毛髪に適用後、洗い流しを行い、上記成分Cを含む第2処理剤を毛髪に適用することを特徴とする。
【0041】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、染毛処理が容易なので、染毛効果に満足いかない場合は、翌日等に再度染毛するなど連用することにより、更に染毛効果を向上させる特徴がある。
【0042】
より具体的には、上記第1処理剤をシャンプーの形態で毛髪に適用し、毛髪全体に第1処理剤を行き渡らせ、1分間以上放置後、ぬるま湯で洗い流し、次いで、上記第2処理剤をヘアトリートメントの形態で毛髪に適用し、毛髪全体に第2処理剤を行き渡らせ、1分間以上放置後、ぬるま湯で洗い流すという毛髪処理方法を例示することができる。
【実施例0043】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。また、配合量は、特記しない限り「質量%」を表し、評価は全て恒温下(25±2℃)で実施した。
【0044】
<試料の調整>
下記表1に記した組成に従い、実施例1~5および比較例1~2の第1剤(シャンプー)並びに第2剤(ヘアトリートメント)を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0045】
<染色性の評価>
表1の実施例1~5および比較例1~2の第1剤(シャンプー)0.8gを人毛白髪毛束(ビューラックス製)0.8gに塗布後、泡立たせて馴染ませ、恒温下(25±2℃)で5分間放置後、ぬるま湯で水洗いし、表1の実施例1~5および比較例1~2の第2剤(ヘアトリートメント)0.8gを塗布後、馴染ませるように延び広げ、恒温下(25±2℃)で5分間放置後、ぬるま湯で水洗いし、風乾させた。
なお、毛髪の「染色性」については、染色後の毛髪と、未処理の人毛白髪毛束(ビューラックス製)の明度を、カラーリーダー(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、未処理の白髪との明度差を示すΔL値から評価した。
更に、この着色毛束に対し上記工程を繰り返し行った。上記工程を合計5回行った。
【0046】
因みに、明度差が大きいほど染色効果が高いと言え、本発明では、ΔL値が25より大きく(ΔL値>25)なると白髪が目立たないと判断した。また、ΔL値が40より大きく(ΔL値>40)なると非常に良く白髪が染まっていると判断した。
【0047】
【0048】
本発明の2剤式の毛髪処理剤は、染毛時間が短く、優れた染色効果を発揮していることが分かる。また、複数回染毛することにより、より優れた染色効果を発揮していることが分かる。これに対して、本発明の2剤式の毛髪処理剤の構成を充足していない比較例では、優れた染色効果を発揮できていないことがわかる。