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特開2024-166015超音波探査方法及び超音波探査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166015
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】超音波探査方法及び超音波探査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/48 20060101AFI20241121BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N29/48
G01N29/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137372
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2023082072
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年7月17日-20日に、Bridge Engineering Institute開催のBEI-2023にて発表(同BEI-2023で発表された論文の予稿集配布は令和5年7月1日)
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(71)【出願人】
【識別番号】594179177
【氏名又は名称】株式会社エッチアンドビーシステム
(71)【出願人】
【識別番号】595059377
【氏名又は名称】株式会社日本ピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉武 勇
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼岡 弘二
(72)【発明者】
【氏名】原 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚宜
(72)【発明者】
【氏名】福島 邦治
(72)【発明者】
【氏名】天谷 公彦
(72)【発明者】
【氏名】角田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】迫 美乃
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BA03
2G047BC03
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
2G047GG38
(57)【要約】
【課題】従来の技術に比べて判断制度を向上させた超音波探査方法を提供する。
【解決手段】この超音波探査方法は、被検体内に超音波を放射する過程と、前記被検体内で反射する前記超音波の反射波を捕捉する過程と、該捕捉した反射波の振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程と、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探査方法であって、
被検体内に探査部位で超音波を放射する過程と、
前記被検体内で反射する該超音波の反射波を探査用反射波として捕捉する過程と、
該捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程と、を含む超音波探査方法。
【請求項2】
前記捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程は、
前記捕捉した探査用反射波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、
該累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程と、を含む、請求項1に記載の超音波探査方法。
【請求項3】
前記被検体内に基準部位で超音波を放射する過程と、
前記被検体内で伝播する該超音波帯域相当の弾性波を基準用弾性波として捕捉する過程と、
該捕捉した基準用弾性波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、をさらに含み、
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程において、前記探査用反射波に係る累積振幅値と前記基準用弾性波に係る累積振幅値とを比較して前記被検体の内部状態を判断することを含む、請求項2に記載の超音波探査方法。
【請求項4】
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程は、
前記探査用反射波に係る累積振幅値及び前記基準用弾性波に係る累積振幅値からそれぞれの平均振幅値を算出し、これら平均振幅値を比較して前記被検体の内部状態を判断することを含む、請求項3に記載の超音波探査方法。
【請求項5】
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程において、
前記探査用反射波に係る累積振幅値又は平均振幅値と前記基準用弾性波に係る累積振幅値又は平均振幅値との差分が所定の基準値よりも低い場合に、グラウトが充填されていると判断する、請求項3又は4に記載の超音波探査方法。
【請求項6】
前記被検体がコンクリート構造物であり、前記探査部位が、該コンクリート構造物に埋め込まれたシースを探査する位置に該当する、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波探査方法。
【請求項7】
前記探査部位における超音波の放射開始から、前記シースの裏側部分で反射した反射波が捕らえられるまでの期間において、前記捕捉した探査用反射波の時系列データを積分し、前記累積振幅値を求める、請求項6に記載の超音波探査方法。
【請求項8】
超音波探査システムであって、
被検体内へ超音波を放射する発信子と、
前記被検体内で反射した前記超音波の反射波を捕捉する受信子と、
前記発信子から前記超音波を発生し、前記受信子から前記反射波の信号を入力するように構成された超音波装置と、
該超音波装置から前記反射波のデータを取得するコンピュータと、を含み、
前記コンピュータは、前記被検体の内部状態を判断するために前記反射波のデータから振幅値を算出するように構成される、超音波探査システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、
前記超音波装置から前記反射波の時系列データを取得し、
該時系列データから累積振幅値を算出するように構成される、請求項8に記載の超音波探査システム。
【請求項10】
前記コンピュータは、さらに、前記算出した累積振幅値の平均振幅値を算出するように構成される、請求項9に記載の超音波探査システム。
【請求項11】
前記発信子と前記受信子とは、互いに接近又は接触させて前記被検体の所定の部位に配置される、請求項8~10のいずれか1項に記載の超音波探査システム。
【請求項12】
コンピュータに、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波探査方法の各過程を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探査に関する。具体的には、例えば、コンクリート構造物内のグラウト充填状態の非破壊検査に適した超音波探査の方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や鉄道の橋梁などのコンクリート構造物は、予め応力を付与したプレストレストコンクリート(PC)構造物とされ、緊張したPC鋼材を内部に通してある。PC鋼材は、コンクリートに埋設したシースを通して設置され、このシース内が、PC鋼材の密着と腐食防止のためにグラウト(セメントミルク)で充填される。
【0003】
シース内のグラウト充填状態が不十分であると、後年、PC鋼材に腐食・破断などの影響が出る可能性があるので、施工後にグラウト充填状態の検査を行う必要がある。グラウト充填状態の検査には非破壊検査を用いるのが好ましく、例えば特許文献1に開示されているような超音波探査方法が使用される。この超音波探査方法は、広帯域超音波法(WUT:Wide-range Ultrasonic Testing)と呼ばれる方法で、図1に示すように、解析ソフトをインストールしてあるコンピュータ1と、超音波装置2と、超音波を発信する発信子(発信探触子)3と、反射波を受信する受信子(受信探触子)4と、を用いて、発信子3及び受信子4を被検体であるコンクリート構造物の表面に接触させて実施される。超音波装置2により発生された超音波が発信子3からコンクリート構造物内に放射され、コンクリート構造物内を弾性波として伝播する。そして、伝播中にシースで反射した反射波が受信子4で受信され、超音波装置2へ入力される。受信された反射波のデータが超音波装置2からコンピュータ1へ送られ、解析ソフトを実行するコンピュータ1において解析が行われる。
【0004】
図2に、この方法における探査工程に関して説明する図を示す。発信子3と受信子4(図中、受信子は×を付けて示す)は、コンクリート構造物の内部を通っているシースをなぞるように、コンクリート構造物の表面に当てられる。このとき、発信子3と受信子4とは、特許文献1の示唆によると、両探触子の間隔α(両探触子の中心と中心の間隔)をシースかぶりの2倍長程度(スターラップ間隔を基に決定)、具体的には375mm以上、好適には500mm、に設定して配置される。この間隔αは、例えば図2(A)に示すように、板状の間隔設定具5を発信子3と受信子4との間に組み入れることで設定される。また、シースをなぞるように発信子3及び受信子4を当てる構造物表面上の位置については、事前に、ポータブルの電磁波レーダ装置などを用いてコンクリート構造物の内部を走査することで、シースの通っている場所を探り当てておくことができるし、この事前走査で、なるべく鉄筋がかぶっていない場所を選んでおくことができる。
【0005】
探査工程では、間隔設定具5により例えば500mmの間隔αを設定してシースに対応する位置に発信子3と受信子4とを押し当て、図2(B)に示すように、構造物表面において位置A→B→C→D・・・の順に少しずつ位置をずらしながら、各位置で超音波発信/反射波受信/波形データ取得を繰り返していく。得られた波形データは、コンピュータ1でフーリエ変換などの周波数変換を経て周波数解析され、そのピーク周波数から各位置のグラウトの充填状態が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-227072
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術では、時系列で得られる反射波の生データをフーリエ変換して周波数解析し、ピーク周波数に基づいて充填状態を判断する。この判断は、グラウト充填が良好であれば周波数が低くなり、グラウト充填が不十分であると周波数が高くなる、というピーク周波数の特性に注目して実施される。しかし、実際の探査工程で得られた周波数データにおいて、ピーク周波数が1つだけはっきりと検出されれば判断が確実であるが、ピーク周波数が2つ以上検出されるグレーゾーン(判定困難)の発生が無視できない頻度で発生することがある。このグレーゾーンの発生を改善できる手法が望まれる。
【0008】
また、従来技術では、探触子間隔が上述のように広く、また、発信子及び受信子をずらしながら4点測定しているため、判定の結果は比較的広範囲の平均的なものとなる。したがって、例えば、シース内グラウトの充填と未充填の境界を判別することは困難である。これを解決すべく、ピンポイントでグラウトの充填状況の判定ができる手法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する構成や方法を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、被検体の内部を探査する超音波探査方法に関する。この超音波探査方法は、
被検体内に探査部位で超音波を放射する過程と、
被検体内で反射する該超音波の反射波を探査用反射波として捕捉する過程と、
捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断する過程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この超音波探査方法の一態様を例示すると、
上記捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断する過程は、
捕捉した探査用反射波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、
累積振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断する過程と、を含む。
【0011】
この超音波探査方法の一態様を例示すると、
被検体内に基準部位で超音波を放射する過程と、
被検体内で伝播する該超音波帯域相当の弾性波を基準用弾性波として捕捉する過程と、
捕捉した基準用弾性波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、をさらに含み、
上記累積振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断する過程において、探査用反射波に係る累積振幅値と基準用弾性波に係る累積振幅値とを比較して被検体の内部状態を判断することを含む。
なお、探査用反射波には、基準用弾性波に含まれている成分と同様の成分が含まれ得る。
【0012】
この超音波探査方法の一態様を例示すると、
上記累積振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断する過程は、探査用反射波に係る累積振幅値及び基準用弾性波に係る累積振幅値からそれぞれの平均振幅値を算出し、これら平均振幅値を比較して被検体の内部状態を判断することを含む。
【0013】
本願は、被検体の内部を探査する超音波探査システムも開示する。この超音波探査システムは、
被検体内へ超音波を放射する発信子と、
被検体内で反射した該超音波の反射波を捕捉する受信子と、
発信子から超音波を発生し、受信子から反射波の信号を入力するように構成された超音波装置と、
超音波装置から反射波のデータを取得するコンピュータと、を含み、
コンピュータは、被検体の内部状態を判断するために反射波のデータから振幅値を算出するように構成される、ことを特徴とする。
【0014】
この超音波探査システムの一態様を例示すると、
コンピュータは、
超音波装置から反射波の時系列データを取得し、
時系列データから累積振幅値を算出するように構成される。
【0015】
この超音波探査システムの一態様を例示すると、
コンピュータは、さらに、算出した累積振幅値の平均振幅値を算出するように構成される。
【0016】
この超音波探査システムの一態様を例示すると、
発信子と受信子とは、互いに接近又は接触させて被検体の所定の部位に配置される。
【0017】
本願は、さらに、コンピュータにより実行されるプログラムも開示する。このプログラムは、コンピュータにおいて実行されることにより、該コンピュータに、上記超音波探査方法の各過程を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
上記提案に係る方法及びシステムによれば、反射波のデータから得られる振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断するようにしたことにより、周波数に基づく従来技術にあるグレーゾーンを排除することができ、判断精度が向上する。そして、特にシースを埋設したPC桁において、ピンポイントでグラウトの充填状況の判定ができるようになり、充填と未充填の境界を判別できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】超音波探査システムの一例を示した図である。
図2】従来技術に係る超音波探査方法を説明するための図である。
図3】コンクリート内を伝播する弾性波の指向性を調べる実験装置を説明するための図である。
図4図3の実験装置を使用して得られた実験結果を説明するための図である。
図5】本発明の超音波探査方法に係る探査工程の一実施例を説明する図である。
図6】超音波の放射から反射波の受信に関し説明するための図である。
図7】反射波の時系列データを例示する図である。
図8】反射波の時系列データからの振幅値積分を説明するための図である。
図9】発信子と受信子との間の探触子間隔について説明する図である。
図10】探触子間隔と平均振幅値との関係を示す実験結果を説明する図である。
図11】平均振幅値による内部状態判断の検証実験の結果を説明する図である。
図12】平均振幅値による内部状態判断の別の検証実験の結果を説明する図である。
図13】探査部位に係る平均振幅値と基準部位に係る平均振幅値との差分で平均振幅値の変化を示す図である。
図14図12の実験をより細分化して行った結果の平均振幅値の変化について、図13同様の平均振幅値の差分で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施する形態に関し、具体的な実施例を例示して説明する。
【0021】
まず始めに、超音波を用いた探査工程に関し、コンクリート内を伝播する弾性波の指向性について説明する。この指向性を確かめるための検証実験では、まず、高さ400mmで断面半径200mmの半円柱形にしたモルタル製の供試体を準備した。供試体は、粗骨材による弾性波減衰の影響を低減するため、プレミックス材による水セメント比(W/C)36.0%のモルタルを使用した。図3(A)に示すように、半円柱供試体の平坦側面の中央部に超音波を放射する探触子である発信子(図中、「●」に「発」を付して示す)を固定し、弾性波を受信する受信探触子である受信子(図中、「■」で示す)を半円側面において円周方向に一列に並べて設定する。発信子から伝播する弾性波を各受信子で捕捉することで、一定の伝播距離(200mm)における弾性波の指向性を確認することができる。ただし、広帯域超音波法に用いられる大径(例えば直径76mm)の受信子を、半円側面の曲面に直接配置することは難しいことから、図3(B)に示すように、レーザードップラー振動計(Laser Doppler Velocimeter:LDV)を受信子の代替として用い、半円側面の円周方向に位置をずらしながら測定を行い、このLDVによる受信信号をオシロスコープに取り込んで解析した。本実験では、半円側面に対してLDVの照射が垂直且つ一定距離となるように半円柱供試体を回転台座に設置し、指向角θを5°間隔として半円柱供試体を回転させながら、LDVから周波数帯域0.1~300kHzのレーザーを照射し、指向角θ=-50°~+50°の範囲に伝播する弾性波を観測した。この観測では、データ数を1200点、サンプリング周波数を10MHz、平均化回数1024回とするオシロスコープを用い、超音波装置から発信子への発信電圧印加時にトリガ信号を取り出すことで超音波発信と同期させている。同じ実験を、同形状にしたコンクリート製の半円柱供試体でも行った。これらの供試体を使用して得られたLDVによる受信波の最大電圧値を図4に示す。
【0022】
モルタル製供試体の場合、指向角θ=0°で電圧値が約1.9Vと最大値を示し、指向角θが0°から増減するにつれて急峻な勾配で電圧値は低下した。この結果は、発信子から放射されコンクリート中を伝播する弾性波が、直進的に強く伝播する指向性を有することを裏付けるものである。また、コンクリート製供試体の場合、電圧値は、指向角θが-10°から15°の範囲でおおよそ0.4Vであり、最大電圧値がモルタル製供試体の最大電圧値の25%程度である。これは粗骨材が影響して弾性波が散乱、減衰したことが原因である。指向角θが-30°から25°の範囲より外側の電圧値はほぼ一定である一方、-30°から25°の範囲内では電圧値が上がっており、指向角θの-30°から30°の中にほぼ収まっていることから、モルタル製供試体の結果と合わせて、弾性波の直進性を裏付けるものと推察される。
【0023】
上記実験結果を踏まえ、図1に示す超音波探査システムの例における発信子3と受信子4の被検体表面上における配置を設定する。実験により検証された弾性波の指向性を考えれば、発信子3と受信子4とはできるだけ近接させた(直進に近くした)方が、より強く明確に反射波の波形を捕らえられるということが分かる。すなわち、図5(A)に示すように、発信子3と受信子4とは、互いに接触させて探触子間隔αを最小にし、探査部位であるシース上の被検体表面に配置するのが適している。図5(B)に示す例のように、被検体であるコンクリート構造物の表面において、シース上の探査部位に発信子3と受信子4とを互い接触させて配置し、探査用の反射波を取得する。さらに、比較対象としてデータを取得する、シースの無い所の基準部位でも発信子3と受信子4とを互い接触させて配置し、コンクリート構造物内を伝播する基準用の弾性波を取得する。
【0024】
橋梁のPC桁など、シースが埋め込まれているコンクリート構造物を被検体とし、内部状態としてそのシースのグラウト充填状態を判断するために本発明の超音波探査方法を利用する例では、判断に必要な反射波の時系列データの抽出期間として、図6に示すように、発信子3から伝播する弾性波がシース裏面で反射した反射波が受信子4で捕捉されるまでの時間tを選定すべきである。すなわち、発信子3から伝播する弾性波がPC桁内部で反射して受信子4に捕捉される過程において、PC桁の端面からの反射波が含まれていないようにして確実にシースからの反射波を捕捉する、ということが好ましい。この時間tは、次の式1を用いて算出する。式中、Vは弾性波縦波伝播速度、αは探触子間隔、Cdはかぶり厚(構造物表面からシース表面までの距離)、φはシースの直径である。なお、弾性波縦波伝播速度Vは、例えば、コンクリート構造物中の鉄筋及びシース配置箇所を避けながらコンクリート構造物の両側面に発信子3と受信子4を正対設置し、弾性波が伝播する時間と部材厚さから求めることができる。
[式1]
【0025】
図7に、超音波探査システムにより得られた反射波の時系列データの一例を示す。横軸が超音波放射開始からの時間、縦軸が振幅値(本例の場合は電圧値)である。この時系列データにおいて、式1により算出した時間tまでの振幅値を積分する。図8に、当該時系列データから一部波形を抜き出して示し、振幅値の積分につき説明する。
【0026】
サンプリング間隔をdt(例えば0.1μs)とすると、A点から次のB点までの1単位の振幅積分値SA-Bは、式2又は式2’で表される。式中、VはA点の振幅値、VはB点の振幅値である。
[式2]
[式2’]
式2の場合、正負が急激に変わる箇所に関し、VとVが打ち消しあい、積分値の影響を小さくすることができる。一方、式2’の場合は、正負が急激に変わる箇所に関し、VとVのそれぞれの絶対値を取ることで積分値の影響を大きめに評価することができる。
【0027】
式2又は式2’により、超音波放射開始から時間tの抽出期間における累積振幅値SACC(mV・sec)は、次の式3で求められる。式中、dtは0.1μsである。SNj-N(j-0.1)が上記の振幅積分値SA-Bに相当する。
[式3]
【0028】
累積振幅値SACCに基づいてグラウト充填状態を判断することも可能であるが、ここに開示する例では、一つの手法として、SAVE=SACC/tの式により、累積振幅値SACCから平均振幅値SAVE(mV)を算出して、グラウト充填状態の判断に使用する。
【0029】
平均振幅値SAVEによりグラウト充填状態を判断するには、図5(B)に示すように、所定の探査部位としてシース上の探査部位に発信子3及び受信子4を配置し、超音波を放射してその反射波を探査用反射波として捕捉し、この探査用反射波の時系列データを取得すると共に、探査部位とは別の基準部位としてシースの無い基準部位に発信子3及び受信子4を配置し、同じ超音波を放射してコンクリート構造物内を伝播するその弾性波を基準用弾性波として捕捉し、この基準用弾性波の時系列データを取得する。そして、探査用反射波に係る時系列データから上記の計算を行って探査用反射波に係る平均振幅値SAVE _Tを求めると共に、基準用弾性波に係る時系列データから上記の計算を行って基準用弾性波に係る平均振幅値SAVE_Nを求め、両者を比較してその差分Δ(例えば絶対値とする)からグラウト充填状態を判断する。基準用弾性波に含まれているのと同様の成分が探査用反射波にも含まれ得ることから、差分Δをとることにより、シース反射波以外の成分の影響を低減することができる。なお、平均振幅値SAVEを比較するとしているが、累積振幅値SACCを比較することでも判断は可能である。
【0030】
ここで、上述した弾性波の指向性に鑑みて、発信子3と受信子4との探触子間隔αの許容範囲を見出すため、探触子間隔αを変更して平均振幅値SAVEを求める比較実験も行った。図9に示すように、発信子3と受信子4との探触子間隔αを、500mm、200mm、150mm、97mmとして、それぞれで平均振幅値SAVEを求めた。97mmの探触子間隔αは、この実験に使用した発信子3及び受信子4を互いに接触させたときの間隔で、探触子間隔αの最小値である。結果を図10に示す。
【0031】
図10では、横軸が平均振幅値SAVE、縦軸が探触子間隔αである。斜線付きグラフが基準部位で得られた平均振幅値SAVE_N、グレーの色付きグラフがグラウト充填シース上の探査部位で得られた平均振幅値SAVE_T、白抜きのグラフがグラウト未充填シース上の探査部位で得られた平均振幅値SAVE_Tをそれぞれ示す。図10から分かるとおり、探触子間隔αが150mm以下であれば、グラウト未充填シースに係る平均振幅値SAVE_Tが他に比べて判断に有意な差を示している。そして、探触子間隔αが97mm、すなわち、発信子3と受信子4とを互いに接触させた場合に、平均振幅値SAVEに最も差が現れ、グラウトの充填状況を判断するのに十分な情報が得られている。このことから、発信子3と受信子4との探触子間隔αは、互いに接近させて200mmより小さくし、好ましくは150mm以下とし、好適には両者を接触させて配置する。あるいは、可能であれば、発信子3と受信子4とを一体にした送受信一体型探触子とするのもよい。
【0032】
この平均振幅値SAVEの比較による内部状態判断の確実性を検証するため、直径74mmのシースを用いたPC桁において、探触子間隔α=97mmにした発信子3及び受信子4を使用して、4箇所の探査を行った。すなわち、埋め込まれたシース上に4箇所の探査部位を決め、各探査部位においてグラウトを充填する前(グラウト未充填シース)とグラウトを充填して硬化した後(グラウト充填シース)の2回、そして、この探査部位近傍の図5(B)に示すようなシースが通っていない基準部位のそれぞれで、検証を実施した。
【0033】
検証の結果は図11に示すとおりで、図中のNo.1~No.4が4箇所の検証値である。いずれも、斜線付きグラフが基準部位で得られた平均振幅値SAVE_N、グレーの色付きグラフがグラウト充填シース上の探査部位で得られた平均振幅値SAVE_T、白抜きのグラフがグラウト未充填シース上の探査部位で得られた平均振幅値SAVE_Tをそれぞれ示す。同じPC桁内でもコンクリート/鉄筋/シースの状態に左右されて若干の平均振幅値SAVEの差が部位に応じて出ることはある。しかしながら、シース上の探査部位の平均振幅値SAVE_Tと基準部位の平均振幅値SAVE_Nとを比較して差分Δをみると、グラウト充填シースのNo.1~No.4の平均差分Δが1563mVであるのに比べ、グラウト未充填シースのNo.1~No.4の平均差分Δは3410mVと、明らかに大きい有意な差が出ている。このことより、指向性の高い弾性波伝播特性を活用した探触子の近接配置による超音波探査方法を利用して、シース上の探査部位とシースの無い基準部位とで平均振幅値の差分Δを調べれば、PC桁などのコンクリート構造物において内部状態を確実に推定できることがわかる。
【0034】
グラウトの充填不良の判断が確実にできることをさらに検証するため、人為的にグラウト充填不良を作った実験用のPC桁を使用して広帯域超音波法で探査を行った。この実験に用いたPC桁において、緊張PC鋼材を通したシースは、図12(A)及び(B)に示しているように、ハッシュの塗りつぶしで表すグラウト充填部分以外にはグラウトが充填されていない(斜め上方へ抜けている部分)。当該実験用PC桁では、桁中央からグラウト注入し、桁端から10.902mの位置に排出孔を設けてグラウト充填不良シースを作製した。
【0035】
本実験においても、図12(A)に示すとおり、シースをなぞる探査部位とシースの無い部分の基準部位とにおいて、上述した実験と同じように探触子間隔α=97mmにした発信子3及び受信子4を使用して超音波探査方法を実行した。実験した箇所は、図12(B)に1~7の番号で示す7箇所である。なお、シース内のグラウト充填が始まる位置は桁端からおおよそ11.0m(6番の辺り)であった。
【0036】
シース上の探査部位とシースの無い基準部位とにおける平均振幅値SAVEの変化を図12(C)に示す。図12(C)のグラフにおいて、横軸は図12(B)に示す探査箇所の番号1~7であり、「○」がシース上の探査部位の平均振幅値SAVE_T、「□」が基準部位の平均振幅値SAVE_Nである。基準部位に関しては、若干の変化は見られるものの、平均振幅値SAVE_Nは一定と見なして良い程度の値で推移している。一方、探査部位のシース上の平均振幅値SAVE_Tを見ると、1番~5番のグラウト未充填箇所に関しては平均振幅値SAVE_Tに急激な変化は見られないが、5番から6番にかけて、つまりグラウト未充填箇所からグラウト充填箇所にかけては、平均振幅値SAVE_Tが657mV下降するという急激な変化を示しており、その後、6番~7番のグラウト充填箇所において平均振幅値SAVE_Tは、基準部位の平均振幅値SAVE_Nと同等のレベルで推移する。この結果により、シース中のグラウト充填状態に変化があればシース上の探査部位の平均振幅値SAVE_Tに変化が現れ、基準部位の平均振幅値SAVE_Nと比較することでその急変を追跡することが可能であることが分かる。
【0037】
この平均振幅値SAVEの変化について、さらに、探査部位に係る平均振幅値SAVE_Tと基準部位に係る平均振幅値SAVE_Nとの差分Δで図13にグラフにして示す。図中、横軸が図12(B)に示す探査箇所の番号1~7であり、縦軸を平均振幅値SAVEの差分Δにしてある。
【0038】
図13から明らかなとおり、5番から6番にかけて差分Δが810mV(絶対値)の急落を示しており、その他の番号と比べて明瞭な違いを生じている。この差分Δの有意な変化を見れば、グラウトの未充填-充填の状態を判断できることが明らかである。そこで、さらに細かく検証すべく、実験に用いたPC桁において、図14(A)に示すように5番~6番の周辺を細分して超音波探査を行ってみた。
【0039】
図14(A)の実験では、4番と5番の間に4.5番、5番と6番の間に5.5番、そして6番と7番の間に6.5番をそれぞれ設け、4番~7番について上記同様に超音波探査した。結果は図14(B)に示すとおりで、図中、横軸が図14(A)に示す探査箇所の番号4.5~7であり、縦軸は平均振幅値SAVEの差分Δである。5.5番と6番との間でやはり顕著な変化が平均振幅値SAVEの差分Δに現れており、グラウトの充填/未充填を判断するのに有意な変化を示している。この結果から、1番~5.5番がグラウト未充填、6番~7番はグラウト充填、と判断することができる。この判定は、実験に使用したPC桁の仕様とほぼ一致した。
【0040】
上記実施例においては、反射波時系列データの時間tに係る波形全域の振幅値を積分する(図7)ことを例示した。この時間tの期間おける振幅値を積分して累積振幅値SACCとすることは精度的に適切であるが、他にも、波形にある振幅ピークの振幅値を加算して累積振幅値とすることや、起点から一定の間隔で飛び飛びに振幅値を取得して加算することで累積振幅値とすることも可能である。また、これらから平均振幅値を得ることも当然できる。つまり、どのような取得方式であれ、反射波の振幅値に基づいて被検体の内部状態を判断することが可能である。
【0041】
ここに開示した累積振幅値、特に平均振幅値に基づいた超音波探査方法によりグラウト充填状態の判断を行う工程は、例えば次のようになる。
【0042】
図1に示すように、解析ソフトをインストールしてあるコンピュータ1と、超音波装置2と、超音波を発信する発信子3と、反射波を受信する受信子4と、を用いる。発信子3及び受信子4は、被検体であるコンクリート構造物の表面に、探触子間隔αを200mmより小さく、好ましくは150mm以下に設定して、あるいは、発信子3と受信子4とを互いに接触させて配置する。配置する位置は、図5などに示すとおり、構造物内のシースをなぞる探査部位と、シースの無い基準部位と、である。シースをなぞるように発信子3及び受信子4を当てる探査部位については、事前に、ポータブルの電磁波レーダ装置などを用いてコンクリート構造物の内部を探査することで、シースの通っている場所を探り当てておくことができるし、この事前探査で、探査部位及び基準部位の両方でなるべく鉄筋がかぶっていない場所を選んでおくことができる。
【0043】
超音波装置2により発生された超音波が発信子3からコンクリート構造物内に放射され、コンクリート構造物内を弾性波として伝播する。そして、探査用反射波及び基準用弾性波が受信子4で受信され、超音波装置2へ入力される。受信された探査用反射波及び基準用弾性波の時系列データが超音波装置2からコンピュータ1へ送られ、解析ソフトを実行するコンピュータ1において、探査用反射波に係る累積振幅値SACCと基準用弾性波に係る累積振幅値SACCとが求められ、そしてこれら累積振幅値SACCからそれぞれの平均振幅値SAVEが算出され、その差分によって解析が行われる。
【0044】
上述した平均振幅値SAVEの差分Δに基づいてグラウトの状態を判断する例の場合、所定の基準値に対し差分Δが低くなるかどうか見ることでも判断可能である。図13図14の例で説明すると、判断の基準値として例えば250mVをコンピュータの記憶装置等に記憶しておき、算出された差分Δが基準値250mVより低くなる所を見れば、6番、7番が該当するので、6番以降がグラウト充填状態と判断することができる。図の例では平均振幅値SAVEの差分Δで示しているが、累積振幅値SACCの差分でも判断を行うことができる。
【0045】
また、他にも、上述の実験結果を踏まえると、差分Δが最小値となった箇所を充填と判断するグラウト充填状態の判断も可能である。さらには、隣の探査箇所の差分Δの値からの落差が大きく且つ差分Δが小さい値の箇所をグラウト充填状態の境部分と判断することも可能である。この2段階判断を行う場合、例えば、判断の基準値を少なくとも2つ設定する。図13の例でより具体的に例示すると、第1の基準値(差分小の判断基準)として250mV、第2の基準値(落差の判断基準)として700mVを設定する(例えば絶対値として)。図13において、第1の基準値250mVより低い差分Δをもつのが1番、6番、7番である(差分Δの値が小さい)。一方、1番→2番の差分Δの値の落差は440mV-130mV=310mVで第2の基準値700mVには到達していないが、5番→6番の差分Δの値の落差は781mV+29mV=810mVで第2の基準値700mVを越えている(落差が大きい)。したがって、5番→6番、もしくは6番を、グラウト充填状態の境部分(この場合は未充填→充填)と判断できる。
【0046】
以上説明した実施の形態には、次に述べる超音波探査方法、超音波探査システム、そして超音波探査方法をコンピュータに実行させるプログラムが含まれている。
[1]超音波探査方法であって、
被検体内に探査部位で超音波を放射する過程と、
前記被検体内で反射する該超音波の反射波を探査用反射波として捕捉する過程と、
該捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程と、を含む超音波探査方法。
[2]上記[1]の超音波探査方法において、
前記捕捉した探査用反射波の振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程は、
前記捕捉した探査用反射波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、
該累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程と、を含む。
[3]上記[2]の超音波探査方法において、
前記被検体内に基準部位で超音波を放射する過程と、
前記被検体内で伝播する該超音波帯域相当の弾性波を基準用弾性波として捕捉する過程と、
該捕捉した基準用弾性波の時系列データから累積振幅値を求める過程と、をさらに含み、
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程において、前記探査用反射波に係る累積振幅値と前記基準用弾性波に係る累積振幅値とを比較して前記被検体の内部状態を判断することを含む。
[4]上記[3]の超音波探査方法において、
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程は、
前記探査用反射波に係る累積振幅値及び前記基準用弾性波に係る累積振幅値からそれぞれの平均振幅値を算出し、これら平均振幅値を比較して前記被検体の内部状態を判断することを含む。
[5]上記[3]又は[4]の超音波探査方法において、
前記累積振幅値に基づいて前記被検体の内部状態を判断する過程では、
前記探査用反射波に係る累積振幅値又は平均振幅値と前記基準用弾性波に係る累積振幅値又は平均振幅値との差分が所定の基準値よりも低い場合に、グラウトが充填されていると判断する。
[6]上記[1]~[5]のいずれかの超音波探査方法において、
前記被検体がコンクリート構造物であり、前記探査用部位が、該コンクリート構造物に埋め込まれたシースを探査する位置に該当する。
[7]上記[6]の超音波探査方法において、
前記探査部位における超音波の放射開始から、前記シースの裏側部分で反射した反射波が捕らえられるまでの期間において、前記捕捉した探査用反射波の時系列データを積分し、前記累積振幅値を求める。
[8]超音波探査システムであって、
被検体内へ超音波を放射する発信子(3)と、
前記被検体内で反射した前記超音波の反射波を捕捉する受信子(4)と、
前記発信子から前記超音波を発生し、前記受信子から前記反射波の信号を入力するように構成された超音波装置(2)と、
該超音波装置から前記反射波のデータを取得するコンピュータ(1)と、を含み、
前記コンピュータは、前記反射波のデータから振幅値を算出するように構成される、超音波探査システム。
[9]上記[8]の超音波探査システムにおいて、
前記コンピュータは、
前記超音波装置から前記反射波の時系列データを取得し、
該時系列データから累積振幅値を算出するように構成される。
[10]上記[9]の超音波探査システムにおいて、
前記コンピュータは、さらに、前記算出した累積振幅値の平均振幅値を算出するように構成される。
[11]上記[8]~[10]のいずれかの超音波探査システムにおいて、
前記発信子と前記受信子とは、互いに接近又は接触させて前記被検体の所定の部位に配置される。
[12]コンピュータに、上記[1]~[7]のいずれかの超音波探査方法の各過程を実行させる、プログラム。
【0047】
上記実施例を例示して説明した実施の形態によれば、ピーク周波数を求めて判断する従来の手法とは異なる手法、すなわち、反射波から得られる振幅値、特に、反射波の時系列データから得られる累積振幅値又はその平均振幅値に基づいて、被検体の内部状態を判断する手法としたことにより、従来技術の課題であったグレーゾーンが解消し、判断精度が向上する。そして、特にシースを埋設したPC桁において、ピンポイントでグラウトの充填状況の判定ができるようになり、充填と未充填の境界を判別できることとなる。
【0048】
以上、本発明に関し、いくつかの実施例を示し説明した。しかし、当該実施例以外にも、以上の説明で理解される本発明の思想に基づいて種々の実施形態を想到し得る。
【符号の説明】
【0049】
1 コンピュータ
2 超音波装置
3 発信子(発信探触子)
4 受信子(受信探触子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14