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特開2024-166018リチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166018
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】リチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20241121BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241121BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241121BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149668
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】112118463
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519051920
【氏名又は名称】台湾中油股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CPC Corporation,Taiwan
【住所又は居所原語表記】No.2,Zuonan Rd.,Nanzi Dist.,Kaohsiung City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100175064
【弁理士】
【氏名又は名称】相澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】劉世安
(72)【発明者】
【氏名】黄任賢
(72)【発明者】
【氏名】黄瑞雄
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放電率性能を向上させ、サイクルテストの放電容量の安定性を維持するだけでなく、さらなるコスト削減も実現できるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第一リチウムニッケルマンガン酸化物からなるコアと、第二リチウムニッケルマンガン酸化物からなり、かつ前記コアを包むシェルが含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料であって、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物及び前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物にマンガン及びニッケルが含まれ、かつ前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合が、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合とは異なっていることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一リチウムニッケルマンガン酸化物からなるコアと、第二リチウムニッケルマンガン酸化物からなり、かつ前記コアを包むシェルが含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料であって、
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物及び前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物にマンガン及びニッケルが含まれ、かつ前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合が、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合とは異なっていることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項2】
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.3~0.5、yは1.5~1.7であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項3】
前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.5~0.7、yは1.3~1.5であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項4】
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が5~15μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項5】
前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が3~6μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項6】
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が10~12μmであることを特徴とする請求項4に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項7】
前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が4~5μmであることを特徴とする請求項5に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料。
【請求項8】
第一金属溶液、第二金属溶液及びアンモニア溶液を容器の中で混合することにより沈殿物が得られ、前記沈殿物を純水で遠心洗浄し、オーブンで乾燥し、ふるいにかけて反応前駆体を得る、共沈ステップと、
前記反応前駆体にリチウム塩を添加して、焼結してリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を得る、焼結ステップと、が含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法であって、
前記第一金属溶液及び前記第二金属溶液にマンガンとニッケルが含まれ、かつ前記第一金属溶液においてのマンガンとニッケルの割合と前記第二金属溶液においてのマンガンとニッケルの割合が異なっていることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法。
【請求項9】
前記第一金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:3~1:5.6の金属溶液であり、前記第二金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:1.8~1:3の金属溶液であることを特徴とする請求項8に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法。
【請求項10】
前記共沈ステップにおいて、容器に、前記第一金属溶液を入れてから前記第二金属溶液を入れることを特徴とする請求項8に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法。
【請求項11】
前記焼結ステップにおいて、温度を500~1000とし、加熱を1~13時間とすることを特徴とする請求項8に記載のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料及びその製造方法に関し、特にコアとシェルがそれぞれマンガンとニッケルの割合が異なっているリチウムニッケルマンガン酸化物材料が使用されるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料である。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池はエネルギー密度が高いという利点があり、現在、携帯電子製品のエネルギー貯蔵部品の主流となっている。適切な材料選択と改良により、電池の動作電圧と比電気容量を高めることができ、リチウム電池のエネルギー密度をさらに高め、エネルギー貯蔵と電力モバイルキャリアの分野で効果的に応用されている。
【0003】
正極材料がリチウム電池の全体コストの4割を占め、リチウム電池の価格における決定的要因であり、リチウム電池のエネルギー密度、安全性及びサイクル寿命などの性能を左右する重要な指標である。
【0004】
しかしながら、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)がリチウム電池の正極材料として、中に含まれたMn3+がマンガンの溶解につながる不均化反応を誘発する可能性があり、その結果、スピネルの構造が変化し、電気容量が低下するという欠点がある。
【発明の概要】
【0005】
理想なリチウムニッケルマンガン酸化物の化学式はLiNi0.5Mn1.5であり、主に空間群P432のスピネル構造である。LNMOの中のMn3+の存在は、製造条件次第によって引き起こされることが周知されていて、電中性を維持するために、材料の中に「酸素損失」が発生し、LiNi0.5Mn1.54-δを形成し、空間群がFd-3mの構造に変化する。Fd-3mの組成は構造安定性には好ましくないが、より優れた放電率性能を得ることができる。
【0006】
前述のように、LNMO材料の中のMn3+は材料の電気化学的パフォーマンスに影響を与え、それによる利点も制限も存在している。故に、本発明の発明者は、LNMO構造内のMn3+/Mn4+の濃度分布を調整することにより、構造の安定性と優れる充放電性能を兼ね備えたコアシェル構造材料を得ることを考案した。
【0007】
故に、本発明の目的は従来の技術問題を解決するために、リチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料及びその製造方法を提供することである。
【0008】
本発明が従来の技術問題を解決するために、第一リチウムニッケルマンガン酸化物からなるコアと、第二リチウムニッケルマンガン酸化物からなり、かつ前記コアを包むシェルが含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料であって、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物及び前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物にマンガン及びニッケルが含まれ、かつ前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合が、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合とは異なっていることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0009】
本発明の一つの実施形態では、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.3~0.5、yは1.5~1.7であることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0010】
本発明の一つの実施形態では、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.5~0.7、yは1.3~1.5であることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0011】
本発明の一つの実施形態では、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が5~15μmであることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0012】
本発明の一つの実施形態では、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が3~6μmであることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0013】
本発明の一つの実施形態では、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が10~12μmであることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0014】
本発明の一つの実施形態では、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が4~5μmであることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を提供する。
【0015】
本発明の一つの実施形態では、第一金属溶液、第二金属溶液及びアンモニア溶液を容器の中で混合することにより沈殿物が得られ、前記沈殿物を純水で遠心洗浄し、オーブンで乾燥し、ふるいにかけて反応前駆体を得る、共沈ステップと、前記反応前駆体にリチウム塩を添加して、焼結してリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を得る、焼結ステップと、が含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法であって、前記第一金属溶液及び前記第二金属溶液にマンガンとニッケルが含まれ、かつ前記第一金属溶液においてのマンガンとニッケルの割合と前記第二金属溶液においてのマンガンとニッケルの割合が異なっていることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の一つの実施形態では、前記第一金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:3~1:5.6の金属溶液であり、前記第二金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:1.8~1:3の金属溶液であることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の一つの実施形態では、前記共沈ステップにおいて、容器に、前記第一金属溶液を入れてから前記第二金属溶液を入れることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法。
【0018】
本発明の一つの実施形態では、前記焼結ステップにおいて、温度を500~1000とし、加熱を1~13時間とすることを特徴とするリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、リチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料に関し、特にコアとシェルが異なるニッケルマンガン比率で構成されるコアシェル材料に関するものである。また、本発明は、リチウムニッケルマンガン酸化物のコアシェル材料の製造方法に関し、特に共沈法によりコアシェル材料を粒状に製造する方法に関するものである。この製造方法では、共沈の過程において金属のニッケル及びマンガンの濃度変化を利用して、ニッケルマンガン濃度の変化を持つ前駆体を製造し、それをリチウムと混合して焼結することによりリチウムニッケルマンガン酸化物のコアシェル材料を形成する。これにより、放電率性能とサイクル寿命性能を効果的に向上させることができる。また、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料は、一般的なリチウムニッケルマンガン酸化物材料(LiNi0.5Mn1.5)に比べて、コア部分のニッケルがマンガンで置換されている。ニッケル源はマンガン源よりも高価であるため、本発明のコアシェル材料はコストの面でも優位性を持っている。即ち、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料は、放電率性能を向上させ、サイクルテストの放電容量の安定性を維持するだけでなく、さらなるコスト削減も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の構造を示す図である。
図2a】は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図である。
図2b】は本発明のもう一つの実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図である。
図2c】は本発明のもう一つの実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図である。
図2d】は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図である。
図2e】は本発明のもう一つの実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図である。
図2f】は本発明のもう一つの実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図である。
図3】は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を重ねて表示する比較図である。
図4】は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を重ねて表示する比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図1~2fに基づいて、本発明の実施形態について説明する。該当説明は本発明の実施形態の一つの例示にすぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。
【0022】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、第一リチウムニッケルマンガン酸化物からなるコアと、第二リチウムニッケルマンガン酸化物からなり、かつ前記コアを包むシェルが含まれる。
【0023】
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物及び前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物にマンガン及びニッケルが含まれ、かつ前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合が、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合とは異なっている。
【0024】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.3~0.5、yは1.5~1.7である。
【0025】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物がLiNiMnで表される組成物であり、かつx+y=2、xは0.5~0.7、yは1.3~1.5である。
【0026】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が5~15μmである。
【0027】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が3~6μmである。
【0028】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が10~12μmである。
【0029】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料によれば、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子径が4~5μmである。
【0030】
前述の技術特徴が含まれるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料がリチウム電池の電極として使われる場合、放電率性能及びサイクル寿命を効果的に向上させることができる。
【0031】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によれば、第一金属溶液、第二金属溶液及びアンモニア溶液を容器の中で混合することにより沈殿物が得られ、前記沈殿物を純水で遠心洗浄し、オーブンで乾燥し、ふるいにかけて反応前駆体を得る、共沈ステップと、前記反応前駆体にリチウム塩を添加して、焼結してリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を得る焼結ステップと、が含まれる。
【0032】
前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物及び前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物にマンガン及びニッケルが含まれ、かつ前記第一リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合が、前記第二リチウムニッケルマンガン酸化物においてマンガンとニッケルの割合とは異なっている
【0033】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によれば、前記第一金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:3~1:5.6の金属溶液であり、前記第二金属溶液がマンガンとニッケルのモル比が1:1.8~1:3の金属溶液である。
【0034】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によれば、前記共沈ステップにおいて、容器に、前記第一金属溶液を入れてから前記第二金属溶液を入れる。
【0035】
本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によれば、前記焼結ステップにおいて、温度を500~1000とし、加熱を1~13時間とする。
【0036】
以下では、製造例に基づいて本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法を説明をするが、本発明を限定するものではない。
【0037】
(製造例1)
供給金属溶液として硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・HO)及び硫酸アンモニウム((NHOH)SO)を1:3:1のモル比で混合し、キレート剤として18%のアンモニア水溶液を使用そ、沈殿剤として1.2Mの水酸化ナトリウム溶液を使用した。共沈澱反応槽として2Lのガラス反応器を使用し、起始溶液として希釈されたアンモニア水溶液を使用した。供給金属溶液とキレート剤とを蠕動ポンプでガラス反応器に注入し、供給流速がそれぞれ40ml/hrと20ml/hrで共沈ステップを行った。この間、pHコントローラーでpH値を10.2±0.1に設定し、設定値からずれた場合は投与ポンプにより沈殿剤を加えて反応環境を維持した。反応器の温度は40°Cに設定し、攪拌機の回転数は200rpmに設定し、窒素ガスを保護雰囲気として使用した。反応器内の溶液がオーバーフロー口に達したら、プラスチックチューブを介してオーバーフロータンクに共沈澱生成物を収集した。最後に、共沈澱物を純水で遠心洗浄してオーブンで80°Cで乾燥し、ふるいにかけて、反応前駆体を得た。反応前駆体を炭酸リチウム(または水酸化リチウム)とジルコニウムボールと3D混合機で16時間混合し、混合された粉末を管状炉で焼結ステップを行った。空気雰囲気で、室温から1°C/minの昇温速度で710°Cまで加熱し、12時間維持した後、600°Cまで降温し、12時間維持した後、室温まで冷却し、ふるいにかけて、リチウムニッケルマンガンの原型材料を得た。
【0038】
(製造例2)
(コアがLiNi0.3Mn1.7であり、シェルがLiNi0.7Mn1.3であるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料)
製造例1の方法に基づき、供給金属溶液を製造する際に、それぞれ、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・HO)、及び硫酸アンモニウム((NHOH)SO)をそれぞれモル比0.3:1.7:1に配合した第一金属溶液と、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・HO)、及び硫酸アンモニウム((NHOH)SO)をモル比0.7:1.3:1に配合した第二金属溶液を製造した。共沈ステップでは、最初に容器に第一金属溶液を加えてから、第二金属溶液を加えて、製造例2のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を製造した。
【0039】
(製造例3)
(コアがLiNi0.3Mn1.7であり、シェルがLiNi0.5Mn1.5であるリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料)
製造例1の方法に基づき、供給金属溶液を製造する際に、それぞれ、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・HO)、及び硫酸アンモニウム((NHOH)SO)をそれぞれモル比0.3:1.7:1に配合した第一金属溶液と、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・HO)、及び硫酸アンモニウム((NHOH)SO)をモル比0.5:1.5:1に配合した第二金属溶液を製造した。共沈ステップでは、最初に容器に第一金属溶液を加えてから、第二金属溶液を加えて、製造例3のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を製造した。
【0040】
(元素分析)
製造されたリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の性質を詳細に理解するため、製造例1および製造例2で得た材料を誘導結合プラズマ発光分光計(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometer, ICP-OES)で分析した。分析結果は表1に示される。
【0041】
【表1】
【0042】
(電性テスト)
本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料を電池に応用した場合に、電池の充放電性能に及ぼす影響を理解するために、以下の方法で電池を製造し、充放電テストを行いました。
【0043】
まず、1.5gのポリビニリデンフルオライド(Po1yvinylidene f1uoride)を24.75gのN-メチルピロリドン(N-Methylpyrrolidone,NMP)に加えて混合し、ポリビニリデンフルオライドが完全に溶解した後、製造例1~3のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料12gと導電性カーボン材料1.5gとを加えてよく混合した後、このペーストを120μmのスクレーパーで厚さ18μmのアルミホイルに塗布し、120°Cのオーブンで焼成することで電池の電極板を完成した。この場合、活性物質が導電性カーボン材料であり、接着剤の重量比は80:10:10。電池の組み立てる前に、電極板を120°Cの真空環境下で12時間焼成し、その後手袋箱に電極板を入れ、リチウム金属を対電極とし、電解液には1MのLiPF6をエチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)とジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)の1:1体積比で混合したものを使用する。リチウム金属、セパレータ、電解液、および電極板を使用してボタン型の半セルを組み立て、その後の電性テストを行った。結果は図2a~2fに示されており、図2a~2cは製造例1から3の材料を使用して作成した電極板の電池を0.2C、0.5C、1C、2C、4C、6C、8C、10Cの放電率で放電し、放電容量を測定した結果を示すものである。図2d~2fは製造例1から3の材料を使用して作成した電極板の電池を200サイクルの放電サイクルを行い、各サイクルの放電容量を測定した結果を示すものである。
【0044】
図2a~2cおよび図3が示すように、図2aは本発明の製造例1のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図であり、図2bは本発明の製造例2のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図であり、図2cは本発明の製造例3のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を示す図であり、図3は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の放電率テストの結果を重ねて表示する比較図である。図示される結果から、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法に基づいて製造された材料は、リチウム電池の放電テストにおいて、10Cの高率放電でも、製造例2および製造例3の放電容量の変動結果が製造例1よりも優れていることが分かる。即ち、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によって製造された材料が未改質の材料よりも優れていることが示される。
【0045】
図2a~2cおよび図3が示すように、図2dは本発明の製造例1のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図であり、図2eは本発明の製造例2のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図であり、図2fは本発明の製造例3のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を示すグラフ図であり、図4は本発明の実施形態のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料のサイクルテストの結果を重ねて表示する比較図である。図示された結果から、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によって製造された材料は、リチウム電池の放電テストにおいて、200サイクルの高サイクル数の放電においても、製造例2および製造例3の放電容量の変動結果が製造例1とは同等以上であることが分かる。即ち、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物コアシェル材料の製造方法によって製造された材料は、未改質の材料と同様にサイクル構造の安定性を維持することができる。
【0046】
本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
1 コア
2 シェル
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4