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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166028
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】身体温度調整被服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20241121BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20241121BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A41D13/005
A41D1/00 D
A41D1/00 E
A41D27/28 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176885
(22)【出願日】2023-10-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2023082379
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517312135
【氏名又は名称】株式会社リブレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 邦彦
【テーマコード(参考)】
3B030
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA02
3B030AA03
3B030AB06
3B030AB08
3B030AB12
3B035AA02
3B035AA03
3B035AB01
3B035AB03
3B035AD16
3B211AA01
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC01
3B211AC18
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】所望とする身体の特定部位だけを局所的に、効率良く冷やす、または温めることができる身体温度調整被服を提供する。
【解決手段】温調ベスト1は、吸熱下になる冷却面と、発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子ユニット40を、ベスト本体10の服地11に装着可能に形成された身体温度調整被服において、裏側服地11Bには、ペルチェ素子ユニット40を装着可能な素子取付部20が、複数の部位に配設され、3つのペルチェ素子ユニット40が、複数の部位のうち、選択された特定素子取付部で、冷却面または加熱面のいずれか片面である放熱面を、着用者の身体表面に対向させて接触可能とした状態で、装着でき、ペルチェ素子ユニット40を制御可能な制御部を備え、制御部は、一条状にまとめた本線56から分割して延びる支線56A、56B、56Cにより、各ペルチェ素子ユニット40と電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットを、被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、
前記服地には、前記ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上の前記ペルチェ素子ユニットが、前記複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する前記素子取付部で、前記冷却面または前記加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、
前記ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、
前記ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、前記制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上の前記ペルチェ素子ユニット内の前記ペルチェ素子と電気的に接続可能であること、
前記服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、前記素子取付部は、前記裏側服地に設けられ、前記素子取付部に装着した前記ペルチェ素子ユニットは、前記表側服地により被覆されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項2】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記ペルチェ素子ユニットは、第1のフランジと第2のフランジからなる一対のフランジにより、前記素子取付部を挟んで装着され、
前記一対のフランジは、前記放熱面に沿う仮想基準線との相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、前記放熱面の反対側へ遠のく側に傾いて形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項3】
請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、冷熱または温熱として、前記放熱面に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御できること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、前記被服に装着された状態にある前記2以上のペルチェ素子に対し、前記ペルチェ素子毎に、前記放熱面に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項6】
請求項4に記載する身体温度調整被服において、
前記放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相は、各前記ペルチェ素子とも同じであり、前記制御手段は、設定された特定温度の前記放熱を生ずる前記ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、前記2以上のペルチェ素子の間で変化させることにより、
前記2以上のペルチェ素子全体では、前記特定温度の前記放熱が、各前記ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各前記ペルチェ素子の前記放熱面から放たれること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記服地のうち、少なくとも前記表側服地は、メッシュ構造で形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記放熱面で、前記冷却面と前記加熱面との切り替えが可能であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記被服は、着用者上体に装着するベストであること、
を特徴とする身体温度調整被服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、上着、ベスト、ズボン等、身にまとう被服に対し、選択された着用者の特定部位を、局部的に冷やす、または温める身体温度調整被服に関する。
【背景技術】
【0002】
人にとって不快な猛暑日は近年、年間を通じて数多くあり、このような猛暑日には、熱中症の防止策として、小まめな水分補給をはじめ、適度な冷房装置の使用が、奨励されている。しかしながら、冷房装置の設備がない、または冷房の効きが十分でない等の理由により、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人は、冷房装置で涼を取ることはできない。そこで、避暑を求める人向けに、空調機能を備えた衣服が普及し、近年では、ペルチェ素子を利用した空調ユニットを装着した空調衣服も開発されている。その一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、着用者の腰に配置される吸入口から空気を流路に取り込み、流路に取り込んだ空気をペルチェ素子で冷却し、冷却した空気を帯状の排出口に誘導して、着用者の背の中央や首周りに排出する空調ユニットを有した機能服である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-70215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の空調機能服は、取入れた空気をペルチェ素子に接触させて冷風を発生させ、排出口から冷風を排気する構成となっているため、ペルチェ素子により温度調節した冷気を、首の周囲に設けた排出口から装着者に向けて放散する。すなわち、特許文献1のような空調機能服では、放散した冷気は、排出口周辺を漂いながら、比較的広範囲に装着者を冷やすため、例えば、頚椎だけ、脇腹だけ等のように、所望とする身体の特定部位だけを局所的に特化して冷却したい場合に、特許文献1のような空調機能服は、このような身体の特定部位だけを、効果良く冷やすことができない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、所望とする身体の特定部位だけを局所的に、効率良く冷やす、または温めることができる身体温度調整被服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る身体温度調整被服は、以下の構成を有する。
(1)吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットを、被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、前記服地には、前記ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上の前記ペルチェ素子ユニットが、前記複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する前記素子取付部で、前記冷却面または前記加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、前記ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、前記ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、前記制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上の前記ペルチェ素子ユニット内の前記ペルチェ素子と電気的に接続可能であること、前記服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、前記素子取付部は、前記裏側服地に設けられ、前記素子取付部に装着した前記ペルチェ素子ユニットは、前記表側服地により被覆されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する身体温度調整被服において、前記ペルチェ素子ユニットは、第1のフランジと第2のフランジからなる一対のフランジにより、前記素子取付部を挟んで装着され、前記一対のフランジは、前記放熱面に沿う仮想基準線との相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、前記放熱面の反対側へ遠のく側に傾いて形成されていること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する身体温度調整被服において、前記傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する身体温度調整被服において、前記制御手段は、冷熱または温熱として、前記放熱面に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御できること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する身体温度調整被服において、前記制御手段は、前記被服に装着された状態にある前記2以上のペルチェ素子に対し、前記ペルチェ素子毎に、前記放熱面に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、を特徴とする。
(6)(4)に記載する身体温度調整被服において、前記放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相は、各前記ペルチェ素子とも同じであり、前記制御手段は、設定された特定温度の前記放熱を生ずる前記ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、前記2以上のペルチェ素子の間で変化させることにより、前記2以上のペルチェ素子全体では、前記特定温度の前記放熱が、各前記ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各前記ペルチェ素子の前記放熱面から放たれること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する身体温度調整被服において、前記服地のうち、少なくとも前記表側服地は、メッシュ構造で形成されていること、を特徴とする。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する身体温度調整被服において、前記制御手段は、前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記放熱面で、前記冷却面と前記加熱面との切り替えが可能であること、を特徴とする。
(9)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する身体温度調整被服において、前記被服は、着用者上体に装着するベストであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する本発明に係る身体温度調整被服の作用・効果について説明する。
【0009】
(1)吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットを、被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、服地には、ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上のペルチェ素子ユニットが、複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する素子取付部で、冷却面または加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上のペルチェ素子ユニット内のペルチェ素子と電気的に接続可能であること、服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、素子取付部は、裏側服地に設けられ、素子取付部に装着したペルチェ素子ユニットは、表側服地により被覆されていること、を特徴とする。
【0010】
この特徴により、ペルチェ素子の放熱面が冷却面として設定されている場合、本発明に係る身体温度調整被服は、素子取付部に装着したペルチェ素子の放熱面を、着用者の身体表面に、直接または肌着等を介して間接的に当接させて、この放熱面から放たれる冷熱により、例えば、特に暑さを感じている部位や、スポット的に蒸れた部位等、着用者の所望とする身体表面の特定部位だけを局所的に特化して、効率良く冷やすことができる。その反対に、ペルチェ素子の放熱面が加熱面として設定されている場合、本発明に係る身体温度調整被服は、素子取付部に装着したペルチェ素子の放熱面を、着用者の身体表面に、直接または肌着等を介して間接的に当接させて、この放熱面から放たれる温熱により、例えば、特に冷えを感じている部位や、ちょうど灸のように、スポット的に温めたい部位等、着用者の所望とする身体表面の特定部位だけを局所的に特化して、効率良く温めることができる。
【0011】
また、ペルチェ素子ユニットは、服地の裏側服地の素子取付部(特定素子取付部)に装着されていても、表側服地で被覆されているため、表側服地が、ペルチェ素子ユニットに対し、フィルタの機能を果たすようになる。そのため、例えば、発熱したペルチェ素子を空冷するにあたり、例えば、埃、粉塵、黄砂、雨や雪等、ペルチェ素子ユニットの作動で阻害要因となる異物が、ペルチェ素子ユニット内に入り込むのを抑止することができる。それ故に、ペルチェ素子ユニットやそのペルチェ素子が、このような異物に起因して損傷するのを、効果的に防ぐことができる。
【0012】
従って、本発明に係る身体温度調整被服によれば、所望とする身体の特定部位だけを局所的に、効率良く冷やす、または温めることができる、という優れた効果を奏する。
【0013】
(2)に記載する身体温度調整被服において、ペルチェ素子ユニットは、第1のフランジと第2のフランジからなる一対のフランジにより、素子取付部を挟んで装着され、一対のフランジは、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、放熱面の反対側へ遠のく側に傾いて形成されていること、を特徴とする。また、(3)に記載する身体温度調整被服において、傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、を特徴とする。
【0014】
このような特徴により、傾斜角度θの大きさが、服地に装着するペルチェ素子ユニットの厚み(明細書中、図12中、左右方向の距離に相当)の大きさに対応して設定されると、ペルチェ素子ユニットのうち、放熱面と反対側の一部で、服地の裏側服地から表側服地側に出っ張るはみ出し量が、より小さく抑えることができるようになる。
【0015】
すなわち、ペルチェ素子ユニットが、例えば、数~10mm未満の厚みで、比較的薄く形成されている場合には、傾斜角度θが0≦θ<15(deg)であれば、ペルチェ素子ユニットによるはみ出し量は、服地の裏側服地から表側服地側に、概ね5mm以内等となる。ペルチェ素子ユニットのはみ出し量が、概ね5mm以内であれば、外部から判別し難い状態となり、本発明に係る身体温度調整被服の見栄えを損なうこともない。
【0016】
その一方で、ペルチェ素子ユニットが、例えば、10mm超えでかつ数十mm程の厚みで、比較的厚く形成されている場合、傾斜角度θが15≦θ≦30(deg)になっていれば、ペルチェ素子ユニットのはみ出し量を、傾斜角度θ=0(deg)との対比で、数mm程、減少させて抑えることができる。そのため、ペルチェ素子ユニットが、比較的厚く形成されていても、放熱面とは反対側のはみ出し量を抑制して服地に装着できているため、ペルチェ素子ユニットによる出っ張りが、外部から判別し難い状態となり、本発明に係る身体温度調整被服の見栄えを損なうこともない。
【0017】
しかも、本発明に係る身体温度調整被服は、何らかの理由により、ペルチェ素子ユニットと、表側服地を介した外部の障害物との接触や衝突等を回避し易くなるほか、ペルチェ素子ユニットの出っ張りに起因して、本発明に係る身体温度調整被服の着用者の周囲にいる人の邪魔となってしまうのを防ぐことができる。
【0018】
(4)に記載する身体温度調整被服において、制御手段は、冷熱または温熱として、放熱面に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御できること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、ペルチェ素子の放熱面が冷却面として設定されている場合、着用者の身体表面のうち、例えば、首筋、特に頚椎付近、脇の下等にある動脈を冷やす場合のほか、重装な作業服を着た作業者で、ズボンのベルト締結等に起因して蒸れた状態になり易い腹部、脇腹、腰部周辺を冷やす場合等のように、冷やす部位に応じて、着用者は、冷やす温度を変化させて選択することができる。また、着用者は冷やしたい所望の温度に応じて、適切な冷却温度を選択することができる。また、ペルチェ素子の放熱面が加熱面として設定されている場合、着用者の身体表面のうち、温める部位に応じて、着用者は、温める温度を変化させて選択することができる。また、着用者は、温めたい所望の温度に応じて、適切な加熱温度を選択することができる。
【0020】
(5)に記載する身体温度調整被服において、制御手段は、被服に装着された状態にある2以上のペルチェ素子に対し、ペルチェ素子毎に、放熱面に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、着用者は、本発明に係る身体温度調整被服を着用している間、1つのペルチェ素子の放熱面から放熱を身体表面に受け続ける場合と比べ、冷やされている、あるいは温められているという知覚を、保ち続け易くなる。
【0022】
(6)に記載する身体温度調整被服において、放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相は、各ペルチェ素子とも同じであり、制御手段は、設定された特定温度の放熱を生ずるペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、2以上のペルチェ素子の間で変化させることにより、2以上のペルチェ素子全体では、特定温度の放熱が、各ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各ペルチェ素子の放熱面から放たれること、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、電源からペルチェ素子に供給する電力の消費が抑制できるため、電源部からペルチェ素子に電力を、より長い時間、供給することができるようになる。
【0024】
(7)に記載する身体温度調整被服において、服地のうち、少なくとも表側服地は、メッシュ構造で形成されていること、を特徴とする。
【0025】
この特徴により、本発明に係る身体温度調整被服全体が可撓性を有するようになるため、着用者が、例えば、作業着や種々の上着と、肌着との間に、本発明に係る身体温度調整被服を着衣した状態であっても、着用者の身動きに与える影響を抑制することができている。また、服地がメッシュ構造になっているため、本発明に係る身体温度調整被服全体の軽量化に寄与すると共に、特にペルチェ素子の放熱面が冷却面として設定されている場合には、暑さを感じている着用者の身体表面と外部との間で、通気性が確保し易くなる。それ故に、本発明に係る身体温度調整被服は、着用者とって快適性の高い衣服となり得る。
【0026】
(8)に記載する身体温度調整被服において、制御手段は、ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、放熱面で、冷却面と加熱面との切り替えが可能であること、を特徴とする。
【0027】
この特徴により、本発明に係る身体温度調整被服は、ペルチェ素子の放熱面を冷却面とした場合には、着用者の身体表面を局部的に冷やす冷却用被服に、ペルチェ素子の放熱面を加熱面とした場合には、着用者の身体表面を局部的に温める加熱用被服に、可逆的に変化させて使用することができるようになる。それ故に、本発明に係る身体温度調整被服は、着用者にとって使い勝手の良い被服となり得る。
【0028】
(9)に記載する身体温度調整被服において、被服は、着用者上体に装着するベストであること、を特徴とする。
【0029】
この特徴により、本発明に係る身体温度調整被服で、ペルチェ素子の放熱面を冷却面とした場合には、その着用者の体格が個人毎に異なっていても、選択された素子取付部に装着したペルチェ素子の放熱面(冷却面)の冷熱により、暑さを感じる首筋や頚椎付近、及び脇の下にある動脈等を、局部的かつ効果的に冷やすことができる。また、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者等、重装な作業服を着て暑い環境下で働く作業者等で、ズボンのベルト付近で蒸れ易くなる腹部から脇腹、腰部周辺で暑いと感じ、このような脇腹付近を、スポット的に冷やしたいと感じている人もいる。本発明に係る身体温度調整被服は、このような人に対しても、選択された素子取付部に装着したペルチェ素子の放熱面(冷却面)により、着用者の腹部、脇腹、及び腰部周辺を、効果的に冷やすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態1,2に係る温調ベストの外面を前見項側から見た正面図である。
図2図1に示す温調ベストの外面を後見項側から見た背面図である。
図3】実施形態1,2に係る温調ベストの内面を前見項側から見た正面図である。
図4図3に示す温調ベストの内面を後見項側から見た背面図である。
図5】実施形態1,2に係る温調ベストで、ペルチェ素子ユニットがベスト本体部に装着された状態を、一部に断面図を用いて示す説明図である。
図6】実施形態1,2に係る温調ベストに装着するペルチェ素子ユニットを吸気口側から示す説明図である。
図7図6に示すペルチェ素子ユニットを放熱面側から示す説明図である。
図8】実施形態1,2に係る温調ベストに具備する操作ユニットの構成を示すブロック図である。
図9】実施形態1,2に係る温調ベストで、3つのペルチェ素子ユニットに対し、各々の温度制御を、第1の場合として例示するタイミングチャートである。
図10図9と同様、3つのペルチェ素子ユニットに対し、各々の温度制御を、第2の場合として例示するタイミングチャートである。
図11】実施形態2に係る温調ベストで、ベスト本体部の素子取付部(特定素子取付部)にペルチェ素子ユニットを装着される要領を示す分解斜視図であり、実施例1として、内側フランジと外側フランジとも、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を0°とした場合の図である。
図12】実施形態2に係る温調ベストで、ベスト本体部の特定素子取付部(素子取付部)に装着されたペルチェ素子ユニットを、一部に断面図を用いて示す説明図である。
図13図12中、A部の拡大図であり、実施例2として、内側フランジと外側フランジとも、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を20°とした場合の図である。
図14図12中、A部の拡大図であり、実施例3として、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を、内側フランジで15°、外側フランジで20°とした場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る身体温度調整被服について、実施形態1,2を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る身体温度調整被服は、吸熱下になる冷却面と、この冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を、例えば、上着・ベスト・ズボン等、身にまとう被服の服地に装着可能に形成され、着用者自身で選択した身体の特定部位を、局部的に冷やしたい場合や、温めたい場合に着用される。以下、本発明に係る身体温度調整被服について、被服を、本実施形態では、着用者上体に着衣するベストである場合を挙げて、説明する。
【0032】
(実施形態1)
図1は、実施形態1,2に係る温調ベストの外面を前見項側から見た正面図であり、その後見項側から見た背面図を、図2に示す。図3は、実施形態1,2に係る温調ベストの内面を前見項側から見た正面図であり、その後見項側から見た背面図を、図4に示す。なお、本発明に係る身体温度調整被服は、実施形態1では、温調ベスト1と称し、後述する実施形態2では、温調ベスト101と称す。
【0033】
図1図4に示すように、温調ベスト1(身体温度調整被服)は、ベスト本体10(被服、ベスト)と、ペルチェ素子ユニット40と、操作ユニット50(制御手段)と、電源部54等を備えている。ペルチェ素子ユニット40は、本実施形態では、一例として、3つ有している。なお、ベスト本体10に装着するペルチェ素子ユニット40の数は、4つ以上の場合や、1つの場合であっても良く、実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0034】
<ベスト本体10について>
はじめに、ベスト本体10について、図1図4を用いて説明する。ベスト本体10は、図1図4に示すように、左右に分割された前身頃12と、後身頃13とを肩部14で接続したベストの形態に形成されている。ベスト本体10では、その服地11が、表側服地11A(服地)と裏側服地11B(服地)により、略層状に重ねられた態様で形成されている。表側服地11Aと裏側服地11Bは双方とも、例えば、ナイロン(nylon)、ポリエステル(polyester)等、耐熱性、耐強度、蒸散性に優れた合成樹脂繊維により、メッシュ構造で構成されている。ベスト本体10の輪郭をなす縁部33は、表側服地11Aの縁と裏側服地11Bの縁とを重ね合わせ、これらにパイピング処理を施して固着されている。
【0035】
また、服地11の裏側服地11Bには、ペルチェ素子ユニット40を装着可能な素子取付部20が、複数の部位に配設され、本実施形態では、前身頃12片側に5箇所、左右両側で10箇所、後身頃13に12箇所、全22箇所に設けられている。前身頃12では、図1及び図3に示すように、左右両側とも、素子取付部20は、肩部14から下方の腹部15に向けて略一列状に配置されている。また、後身頃13では、図2及び図4に示すように、素子取付部20は、頚椎下部16に4箇所、背中中央部17と腰部18に8箇所配置されている。
【0036】
素子取付部20は、裏側服地11Bに形成された開口21と、この開口21の周囲に外周縁部22を有し、外周縁部22は、ある程度の柔軟性を有したメッシュ構造の裏側服地11Bに比べて、剛性の高い材質(例えば、皮製、ゴム製、樹脂製等)で形成されている。
【0037】
また、図1及び図3に示すように、ベスト本体10は、左側の前身頃12と右側の前身頃12との間には、双方から延出された一対のベルト(ベルト34A、ベルト34B)を2組有し、2組とも、ベルト34A、ベルト34B同士が、移動カン35を介して長さ調整を可能に連結されている。これにより、左側の前身頃12と右側の前身頃12とは、一対のベルト(ベルト34A、ベルト34B)は、着脱自在に連結することができている。また、前身頃12の腹部15と後身頃13の腰部18との間は、長さ調整可能なベルト37により、連結されている。
【0038】
図1図4に示すように、ベスト本体10は、その外面側で、左右両側とも前身頃12の胸部付近に、ファスナで開閉可能な第1開閉部31を、後身頃13の背中中央部に、ファスナで開閉可能な第2開閉部32を、それぞれ具備している。第1開閉部31と第2開閉部32はいずれも、表側服地11Aと裏側服地11Bとの間に形成される内部空間に、ペルチェ素子ユニット40、このペルチェ素子ユニット40に接続する配線55、操作ユニット50や、所定位置に配したポケットに収容される電源部54を出し入れするために設けられている。
【0039】
また、ベスト本体10には、配線用開口部19が、前身頃12の腹部15、後身頃13の腰部18、肩部14等で、複数箇所に設けられている。配線用開口部19は、前身頃12、後身頃13とも、パイピングで重ね合わされた表側服地11Aの縁と裏側服地11Bの縁との間で、配線55を挿通できるよう、表側服地11Aの縁と裏側服地11Bの縁とを部分的に固着せず開口した部分である。これにより、配線55が、電源部54側にある一端側で、前身頃12において、表側服地11Aと裏側服地11Bとの間の内部空間に収められた状態にあっても、一の配線用開口部19を通じて外部に露出でき、ペルチェ素子ユニット40側の他端側を、他の配線用開口部19を通じて、後身頃13における表側服地11Aと裏側服地11Bとの間の内部空間に収めた状態にして、ペルチェ素子ユニット40と接続できるようになる。
【0040】
<ペルチェ素子ユニット40について>
次に、ペルチェ素子ユニット40について、図5図7を用いて説明する。図5は、実施形態1,2に係る温調ベストで、ペルチェ素子ユニットがベスト本体部に装着された状態を、一部に断面図を用いて示す説明図である。図6は、実施形態1,2に係る温調ベストに装着するペルチェ素子ユニットを吸気口側から示す説明図であり、図6に示すペルチェ素子ユニットを放熱面側から示す説明図を、図7に示す。
【0041】
図5図7に示すように、ペルチェ素子ユニット40は、ペルチェ素子をカバー部材に内蔵してなる。ペルチェ素子は、板状の半導体熱電素子の一種である。ペルチェ素子に直流電流が供給されると、ペルチェ素子の平板部では、ペルチェ効果により、一面が、例えば、十℃程度に吸熱して吸熱下の状態(冷却面)になると同時に、その反対側の他面が、例えば、三十数℃程度に発熱して発熱下の状態(加熱面)となる。ペルチェ素子ユニット40は、その一面である放熱面41と、ペルチェ素子に向けて吸気する吸気部42と、カバー部材に形成された内側フランジ43と、吸気部42を形成する凸部44と、外側フランジ46を形成した締結具45等を有する。
【0042】
放熱面41は、外部に露出した状態になっており、ペルチェ素子ユニット40では、放熱面41と吸気部42とが、互いに反対側に配置されている。締結具45は、凸部44と自在に締結または、その解除可能に形成されている。温調ベスト1では、図1図5に示すように、3つのペルチェ素子ユニット40(第1ペルチェ素子ユニット40A,第2ペルチェ素子ユニット,第3ペルチェ素子ユニット40C)は、ベスト本体10にある全22箇所の素子取付部20のうち、温調ベスト1の着用者HM自身で選択される特定素子取付部20X(特定部位の素子取付部)に装着される。
【0043】
具体的には、ペルチェ素子ユニット40を素子取付部20に装着するにあたり、図5に示すように、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)を、温調ベスト1の着用者HM自身の身体表面BSに対向させて接触可能な状態として、着用者HM自身の身体表面BSに、直接または肌着等を介して間接的に当接させた状態で、凸部44が、裏側服地11Bの外側から素子取付部20の開口21に挿入され、内側フランジ43を、開口21に外周にある外周縁部22に当接させる。次に、締結具45を、表側服地11Aと裏側服地11Bとの間の内部空間に入れて、凸部44の内側フランジ43と締結具45の外側フランジ46により、外周縁部22を挟む込んだ状態にして、この内部空間に入った凸部44と締結具45とを、締結させる。かくして、ペルチェ素子ユニット40は、素子取付部20に固着した状態で装着される。
【0044】
ペルチェ素子ユニット40では、ペルチェ素子は、図1図4に示すように、配線55により、操作ユニット50を介して、電源部54と電気的に接続される。電源部54は、ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子に電力を供給する一次電池や二次電池等の蓄電池である。電源部54と配線55とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)接続等、コネクタを介した接続により、自在に着脱可能となっている。電源部54の電力は、配線55を通じて制御部51に供給される。
【0045】
温調ベスト1では、装着するペルチェ素子ユニット40が、本実施形態のように、3つの場合、配線55は、一条状にまとめた本線56から分岐部57で分割して延びる3本の支線56A、56B、56Cの態様となっている。すなわち、支線56A、56B、56C等の本数は、ペルチェ素子ユニット40の数と一致している。配線55の本線56は、電源部54に接続される。一例として、支線56Aは第1ペルチェ素子ユニット40Aに、支線56Bはペルチェ素子ユニット40Bに、支線56Cは第3ペルチェ素子ユニット40Cに、それぞれ接続されるが、支線56A、56B、56Cは、3つのペルチェ素子ユニット40(第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40C)と、1対1の接続関係であれば、着用者HMによる判断の下、特に配線経路をシンプル化して、任意に接続されれば良い。
【0046】
図8は、実施形態1,2に係る温調ベストに具備する操作ユニットの構成を示すブロック図である。図8に示すように、操作ユニット50は、制御部51と、操作部52と、表示部53等を有する。操作ユニット50内では、操作部52と表示部53が、制御部51と電気的に接続されている。
【0047】
操作部52は、操作ユニット50上面にある押下部を、所定の操作モードに基づいて、指で軽く押すことにより、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cに対し、ペルチェ素子への通電のオン/オフの切替え操作と、各放熱面41での放熱の温度を制御部51で制御するための操作を可能とした態様で構成されている。表示部53は、操作ユニット50上面にある表示部で、複数種の色から選択的に発光可能とした態様で構成されている。
【0048】
なお、操作ユニット50において、制御部51が、電源部54からペルチェ素子に供給する直流電流の向きを逆転させる制御を有する場合には、操作部52は、操作ユニット50上面にある押下部を、通電のオン/オフの切替え操作とは異なった所定の操作モードに基づいて、指で軽く押すことにより、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cに対し、ペルチェ素子に通電する電流の極性を切替える。
【0049】
ペルチェ素子ユニット40では、ペルチェ素子において、供給する直流電流の向きが逆方向になると、一面の機能と他面の機能が相互に反転する。そのため、制御部51が、ペルチェ素子に供給する電流の極性を逆転可能に構成されている場合、放熱面41は、制御部51により、吸熱によって冷却された冷却面41Aと、発熱によって加熱された加熱面41Bを、選択的に可変できるようになり、放熱面41では、冷却面41Aと加熱面41Bとが相互に入れ替わる。なお、制御部51が、ペルチェ素子に対し、電流の向きを切替える機能を有していない場合、放熱面41は、冷却面41Aまたは加熱面41Bのいずれか一方である。
【0050】
また、制御部51は、冷熱または温熱として、放熱面41に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御可能であり、ベスト本体10に装着された状態にある3つのペルチェ素子ユニット40に対し、ペルチェ素子毎に、放熱の温度を周期的に可変できる。具体的には、制御部51は、例えば、第1~第3ペルチェ素子への通電時の電流制御、第1~第3ペルチェ素子に印加する電圧制御、デューティ制御等により、第1~第3ペルチェ素子での吸熱を制御して、放熱面41での放熱の温度を調整・可変させている。
【0051】
図9は、実施形態1,2に係る温調ベストで、3つのペルチェ素子ユニットに対し、各々の温度制御を、第1の場合として例示するタイミングチャートであり、第2の場合として例示するタイミングチャートを、図10に示す。
【0052】
具体的には、実施形態1に係る温調ベスト1の場合、図9及び図10に例示するように、3つのペルチェ素子ユニット40(第1ペルチェ素子ユニット40A、第2ペルチェ素子ユニット40B、第3ペルチェ素子ユニット40C)に対し、放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相tx(一例として、多くとも数十秒、数分程度)は、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子とも同じである。
【0053】
第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子では、放熱面41に呈する放熱の特定温度Tは、高温状態、中温状態、そして低温状態と、本実施形態では、3段階で制御可能となっている。高温状態は、ペルチェ素子においてフルに出力して放熱可能な100%の状態であり、放熱面41からの放熱は、3段階の中で最も高い温度となっている。低温状態は、ペルチェ素子において、高温状態と比べ、例えば、半分程の出力で放熱可能な50%の状態であり、放熱面41からの放熱は、3段階の中で最も低い温度となっている。中温状態は、ペルチェ素子において、高温状態と低温状態との間にあり、例えば、放熱可能な出力のうち、70~90%程の状態であり、放熱面41からの放熱は、3段階のうち中間の温度となっている。なお、第1~第3ペルチェ素子での放熱の温度制御は、3段階に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0054】
制御部51は、設定された特定温度Tの放熱を生ずる第1~第3ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、これら第1~第3ペルチェ素子の間で変化させる。これにより、第1~第3ペルチェ素子全体では、特定温度Tの放熱が、第1~第3ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、第1~第3ペルチェ素子のうち、重複しない1つのペルチェ素子の放熱面から放たれる。
【0055】
図9で例示する第1の場合には、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子とも、放熱面41に呈する放熱の特定温度Tは、低温状態になっている。また、図10で例示する第2の場合には、放熱面41に呈する放熱の特定温度Tは、第1ペルチェ素子ユニット40Aの第1ペルチェ素子のみ、低温状態になっているが、第2,第3ペルチェ素子ユニット40B,40Cの各第2,第3ペルチェ素子では、中温状態になっている。
【0056】
このように、3つのペルチェ素子ユニット40に対し、放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相txは、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子で同じである。しかしながら、放熱の特定温度Tは、図9に例示するように、第1~第3ペルチェ素子とも同じである場合や、図10に例示するように、第1~第3ペルチェ素子のそれぞれの間で変化させても良い。なお、3つのペルチェ素子ユニット40に対し、放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相txは、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子で、勿論、差異を持たせて変化させても良い。
【0057】
次に、素子取付部20に装着するペルチェ素子ユニット40の配置位置について、放熱面41を冷却面41Aとした温調ベスト1で、図5に示すように、着用者HMの身体表面BSを冷やす場合を挙げて、簡単に説明する。温調ベスト1では、図1図4に示すように、複数の素子取付部20が、ベスト本体10全体に亘って配設されており、1または2以上のペルチェ素子ユニット40が、これら全ての素子取付部20の中から、着用者HMによって選択された特定素子取付部20Xに装着することができている。
【0058】
ところで、暑い環境下に晒された人体は、暑さによって熱中症になるリスクや、自律神経に多大な悪影響も及ぼしてしまう。そのため、そのような防止策として、まず脳に流れる動脈の血液を冷やすことが要となり、発汗作用を促して体温調整の働きを正常に保つことが求められる。脳に流れる血液を効果的に冷やすためには、首筋、特に頚椎付近、脇の下等にある動脈を冷やすことが良いとされている。首筋や頚椎付近の場合、首の後ろの髪の生え際付近のほか、特に喉の左右の辺りには、頸動脈があり、動脈に触れる部分を冷風等で冷して、血液が冷やされると、冷えた血液が全身を回る。これにより、体温を下げることができるようになるからである。
【0059】
また、脇の下は、ちょうど体温計を挟む部位であり、動脈のある部分である。脇の下の動脈は、腕に向けて存在しており、脇の下にある動脈や、上腕の内側に近い柔らかい部分にある動脈の血液が冷やされると、冷えた血液が全身を回る。これにより、体温を下げることができるようになるからである。しかも、脇の下を冷やすことにより、脇の下にかいた汗による気化熱で、肌の表面温度が低下することにより、清涼感を得ることもできる。
【0060】
このような医学的な知見の下、温調ベスト1では、その着用者HMの体格が個人毎に異なっていても、選択された特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41(冷却面41A)で、首筋や頚椎付近、及び脇の下にある動脈等を局部的に冷やすことができる。
【0061】
また、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者等、重装な作業服を着て暑い環境下で働く作業者の中には、ズボンのベルト付近で蒸れ易くなる腹部から脇腹、腰部周辺で暑いと感じ、このような脇腹付近を、スポット的に冷やしたいと感じている人も多くいる。特にこのような場合でも、温調ベスト1は、選択された特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41(冷却面41A)により、着用者HMの腹部、脇腹、及び腰部周辺を、効果的に冷やすことが可能である。
【0062】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る温調ベストについて、図11図14を用いて説明する。実施形態2に係る温調ベストは、ペルチェ素子ユニットを、外部から視認し難い態様で、ベスト本体10の服地11に装着する点と、ベスト本体10の素子取付部20(特定素子取付部20X)を挟み込むフランジの形態の点で、実施形態1に係る温調ベスト1と異なるが、それ以外の部分については、実施形態1に係る温調ベスト1と同じである。従って、実施形態2では、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、実施形態1と共通する部分の説明は、同じ符号を用いて簡略、または省略する。
【0063】
図11は、実施形態2に係る温調ベストで、ベスト本体部の素子取付部(特定素子取付部)にペルチェ素子ユニットを装着される要領を示す分解斜視図であり、実施例1として、内側フランジと外側フランジとも、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を0°とした場合の図である。
【0064】
図11に示すように、ペルチェ素子ユニット40と同様、ペルチェ素子ユニット140は、ファン148と共にペルチェ素子140Xを、本体部147のカバー部材に内蔵してなる。ペルチェ素子ユニット140では、ペルチェ素子140Xに直流電流が供給されると、ペルチェ素子140Xの平板部では、ペルチェ効果により、一面が、例えば、十℃程度に吸熱して吸熱下の状態(冷却面)になると同時に、その反対側の他面が、例えば、三十数℃程度に発熱して発熱下の状態(加熱面)となる。ペルチェ素子ユニット140は、その一面である放熱面41と、発熱したペルチェ素子140Xを空冷するにあたり、吸気を行う吸気部42と、吸気部42で導入した吸気をペルチェ素子140Xに向けて送風するファン148と、本体部147のカバー部材に形成された内側フランジ143と、吸気部42を形成する凸部44と、外側フランジ146を形成した締結具145等を有する。
【0065】
本実施形態2に係る温調ベスト101では、服地11は、実施形態1に係る温調ベスト1と同様、最も外側に配置される表側服地11Aと、最も着用者の身体側に配置される裏側服地11Bとを含み、2層状に重ね合わせた態様で形成されている。また、服地11の裏側服地11Bには、実施形態1と同様、素子取付部20が全22箇所に設けられている。ペルチェ素子ユニット140は、全22箇所の素子取付部20の中で、選択された特定素子取付部20Xに装着されるが、いずれの素子取付部20でも、素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着したペルチェ素子ユニット140は、服地11の表側服地11Aにより、被覆される。
【0066】
具体的に説明する。服地11は、表側服地11Aと裏側服地11Bを対にして形成されている。裏側服地11Bは、例えば、ナイロン(nylon)、ポリエステル(polyester)等、耐熱性、耐強度、蒸散性に優れた合成樹脂繊維や、布等からなり、裏側服地11Bの材質は、特に限定されず、適宜変更可能である。実施形態2の場合、裏側服地11Bは、メッシュ構造で構成されている。
【0067】
表側服地11Aは、例えば、ナイロン(nylon)、ポリエステル(polyester)等、耐熱性、耐強度、蒸散性に優れた合成樹脂繊維や、布等からなる。表側服地11Aは、裏側服地11Bの厚みに比べ、一例として、1/4~3/4の厚みで薄くしたメッシュ構造で形成されている。なお、表側服地11Aは、裏側服地11Bに比べて薄くなっていれば良く、表側服地11Aと裏側服地11Bとの厚みの割合は、例示した比率に限定されるものではない。
【0068】
また、温調ベスト101では、図11に示すように、服地11の表側服地11Aが、服地11の表側服地11Aの素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着したペルチェ素子ユニット140を覆っている。これにより、表側服地11Aは、裏側服地11Bより薄く、例えば、インチ当たりの開口数で、数~数百メッシュ等、比較的細かいメッシュ構造であるため、温調ベスト101は、ペルチェ素子ユニット140に対し、外部から視認し難い態様となっている。
【0069】
それ故に、温調ベスト101は、装着されるペルチェ素子ユニット140の存在に起因して、意匠上、特に外観を損なわない態様で構成できている。しかも、表側服地11Aは、メッシュ構造で構成されているため、ファン148に供給する吸気が、当該温調ベスト101の外側からペルチェ素子ユニット140の吸気部42に通過し易い。加えて、表側服地11Aは、裏側服地11Bより薄く、メッシュ構造で構成されているため、温調ベスト101の軽量化を図ることができている。
【0070】
図12は、実施形態2に係る温調ベストで、ベスト本体部の特定素子取付部(素子取付部)に装着されたペルチェ素子ユニットを、一部に断面図を用いて示す説明図である。本実施形態2に係る温調ベスト101では、図11及び図12に示すように、ペルチェ素子ユニット140は、内側フランジ143(第1のフランジ)と外側フランジ146(第2のフランジ)からなる一対のフランジで、服地11の表側服地11Aの素子取付部20(特定素子取付部20X)を挟んで装着される。内側フランジ143と外側フランジ146はそれぞれ、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)に沿う仮想基準線VLとの相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、放熱面41の反対側へ遠のく側(吸気部42側)に傾いて形成され、より好ましくは、傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)である。
【0071】
(実施例1)
具体的に説明する。図11に示すように、実施例1に係る温調ベスト101の場合、内側フランジ143と外側フランジ146はそれぞれ、傾斜角度θ=0(deg)の場合で、放熱面41の面方向に沿う方向(軸心AXに直交する方向)に延びて形成されている。ペルチェ素子ユニット140は、内側フランジ143と外側フランジ146で、服地11の表側服地11Aの素子取付部20(特定素子取付部20X)を面接触で挟み込み、凸部44の雄ネジと締結具145の雌ネジとの螺合により、ベスト本体10に装着できている。
【0072】
(実施例2)
図13は、図12中、A部の拡大図であり、実施例2として、内側フランジと外側フランジとも、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を20°とした場合の図である。実施例2に係る温調ベスト101の場合、参照する図11図12、及び図13に示すように、内側フランジ143は、その両面(一面143a、他面143b)とも、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)と平行な仮想基準線VLに対し、傾斜角度θ=20(deg)で吸気部42側へ傾いて形成されている。
【0073】
外側フランジ146も、その両面(一面146a、他面146b)で、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)と平行な仮想基準線VLに対し、傾斜角度θ=20(deg)で吸気部42側へ傾いて形成されている。これにより、ペルチェ素子ユニット140が、服地11の表側服地11Aの素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着された状態では、素子取付部20の外周縁部22が、内側フランジ143の一面143aと外側フランジ146の一面146aと、それぞれ全面で面接触して、凸部44の雄ネジと締結具145の雌ネジとの螺合により、ベスト本体10に装着できている。
【0074】
(実施例3)
図14は、図12中、A部の拡大図であり、実施例3として、放熱面に沿う仮想基準線との相対的な傾斜角度を、内側フランジで15°、外側フランジで20°とした場合の図である。実施例3に係る温調ベスト101の場合、参照する図11図12、及び図14に示すように、内側フランジ143は、その両面(一面143a、他面143b)とも、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)と平行な仮想基準線VLに対し、傾斜角度θ=15(deg)で吸気部42側へ傾いて形成されている。
【0075】
外側フランジ146は、その両面(一面146a、他面146b)で、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)と平行な仮想基準線VLに対し、傾斜角度θ=20(deg)で吸気部42側へ傾いて形成されている。すなわち、ペルチェ素子ユニット140は、内側フランジ143と外側フランジ146との間で、双方の傾斜角度θの差5(deg)を有した状態となっている。ペルチェ素子ユニット140が、服地11の表側服地11Aの素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着された状態では、素子取付部20の外周縁部22が、内側フランジ143の一面143aと外側フランジ146の一面146aに対し、それぞれ部分的に面接触して、凸部44の雄ネジと締結具145の雌ネジとの螺合により、ベスト本体10に装着されている。
【0076】
次に、実施形態1,2に係る温調ベスト1,101の作用・効果について説明する。
【0077】
本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101は、吸熱下になる冷却面41Aと、冷却面41Aの反対側で発熱下になる加熱面41Bを有するペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子を、ベスト本体10の服地11に装着可能に形成された身体温度調整被服において、裏側服地11B(服地11)には、ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子を装着可能な素子取付部20が、複数の部位(本実施形態では22箇所)に配設され、2以上(本実施形態では3つ)のペルチェ素子ユニット40の各ペルチェ素子が、複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する特定素子取付部20Xで、冷却面41Aまたは加熱面41Bのいずれか片面である放熱面41を、着用者HMの身体表面BSに対向させて接触可能とした状態で、装着できること、ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子を電気的に制御可能な制御部51を備え、ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子が3つの場合、制御部51は、一条状にまとめた本線56から分割して延びる各支線56A、56B、56Cにより、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40C毎のペルチェ素子と電気的に接続可能であること、服地11は、最も外側に配置される表側服地11Aと、最も着用者の身体側に配置される裏側服地11Bとを含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、素子取付部20は、裏側服地11Bに設けられ、素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着したペルチェ素子ユニット40,140は、表側服地11Aにより被覆されていること、を特徴とする。
【0078】
この特徴により、ペルチェ素子の放熱面41が冷却面41Aとして設定されている場合、温調ベスト1は、特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41を、着用者HMの身体表面BSに、直接または肌着等を介して間接的に当接させて、この放熱面41から放たれる冷熱により、例えば、特に暑さを感じている部位や、スポット的に蒸れた部位等、着用者HMの所望とする身体表面BSの特定部位だけを局所的に特化して、効率良く冷やすことができる。その反対に、ペルチェ素子の放熱面41が加熱面41Bとして設定されている場合、温調ベスト1,101は、特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41を、着用者HMの身体表面BSに、直接または肌着等を介して間接的に当接させて、この放熱面41から放たれる温熱により、例えば、特に冷えを感じている部位や、ちょうど灸のように、スポット的に温めたい部位等、着用者HMの所望とする身体表面BSの特定部位だけを局所的に特化して、効率良く温めることができる。
【0079】
加えて、ペルチェ素子ユニット40,140は、服地11の裏側服地11Bの素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着されていても、表側服地11Aで被覆されているため、表側服地11Aが、ペルチェ素子ユニット40,140の吸気部42に導入する吸気に対し、フィルタの機能を果たすようになる。そのため、発熱したペルチェ素子140X等(ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子を含む)を空冷するにあたり、例えば、埃、粉塵、黄砂、雨や雪等、ペルチェ素子ユニット40,140の作動で阻害要因となる異物が、吸気部42からペルチェ素子ユニット40,140内に入り込むのを抑止することができる。それ故に、ペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子、ペルチェ素子ユニット140のペルチェ素子140Xが、このような異物に起因して損傷するのを、効果的に防ぐことができる。
【0080】
さらに、服地11の表側服地11Aは、服地11の裏側服地11Bの素子取付部20(特定素子取付部20X)に装着したペルチェ素子ユニット40,140を、外部から視認し難い態様で被覆している。そのため、温調ベスト1,101は、装着されるペルチェ素子ユニット40,140の存在に起因して、意匠上、外観を損なわない形態となっている。
【0081】
従って、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101によれば、所望とする身体の特定部位だけを局所的に、効率良く冷やす、または温めることができている、という優れた効果を奏する。
【0082】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、制御部51は、冷熱または温熱として、放熱面41に呈する放熱の温度を、複数の段階(本実施形態1,2では3段階)に分けて制御できること、を特徴とする。
【0083】
この特徴により、ペルチェ素子の放熱面41が冷却面41Aとして設定されている場合、着用者HMの身体表面BSのうち、例えば、首筋、特に頚椎付近、脇の下等にある動脈を冷やす場合のほか、重装な作業服を着た作業者で、ズボンのベルト締結等に起因して蒸れた状態になり易い腹部、脇腹、腰部周辺を冷やす場合等のように、冷やす部位に応じて、着用者HMは、冷やす温度を変化させて選択することができる。また、着用者HMは、冷やしたい所望の温度に応じて、適切な冷却温度を選択することができる。また、ペルチェ素子の放熱面41が加熱面41Bとして設定されている場合、着用者HMの身体表面BSのうち、温める部位に応じて、着用者HMは、温める温度を変化させて選択することができる。また、着用者HMは、温めたい所望の温度に応じて、適切な加熱温度を選択することができる。
【0084】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、制御部51は、ベスト本体10に装着された状態にある3つのペルチェ素子ユニット40の各ペルチェ素子に対し、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの第1~第3ペルチェ素子毎に、放熱面41に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、を特徴とする。
【0085】
この特徴により、着用者HMは、温調ベスト1,101を着用している間、1つのペルチェ素子ユニット40の放熱面41から放熱を身体表面BSに受け続ける場合と比べ、冷やされている、あるいは温められているという知覚を、保ち続け易くなる。すなわち、放熱が、一定の挙動で身体表面BSに伝播し続けていると、人は、身体表面BSに及ぼす放熱の影響に対し、感覚的に次第に鈍化していく傾向にある。
【0086】
しかしながら、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、図9及び図10に示すように、ペルチェ素子ユニット40は、3つとも、それぞれ電源OFF状態を断続的に行っているため、1つのペルチェ素子ユニット40の放熱面41につき、放熱(冷熱または温熱)が、断続的に身体表面BSへと授与されている。これにより、着用者HMは、身体表面BSのうち、放熱面41に対向した部位に、受ける放熱の影響で慢性的な知覚を覚え難くなり、装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41に対向した部位では、持続的に放熱により温度調整されている感覚を抱き続けることができるようになるからである。
【0087】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相txは、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子とも同じであり、制御部51は、設定された特定温度Tの放熱を生ずる第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの各第1~第3ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、これら第1~第3ペルチェ素子の間で変化させることにより、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの第1~第3ペルチェ素子全体では、特定温度Tの放熱が、各第1~第3ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各第1~第3ペルチェ素子の放熱面41から放たれること、を特徴とする。
【0088】
この特徴により、3つのペルチェ素子ユニット40が、配線55により、1つの電源部54と並列に接続されているため、3つのペルチェ素子ユニット40の間で、ペルチェ素子の電源ON状態を1つずつ交替することで、電源部54からペルチェ素子ユニット40のペルチェ素子に供給する電力の消費を抑えることができる。これにより、電源部54からペルチェ素子ユニット40に電力を、より長い時間、供給することができるようになる。
【0089】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、服地11(表側服地11A、裏側服地11B)は、いずれもメッシュ構造で形成されていること、を特徴とする。
【0090】
この特徴により、温調ベスト1全体が可撓性を有するようになるため、着用者HMが、例えば、作業着や種々の上着と、肌着との間に温調ベスト1を着衣した状態であっても、着用者HMの身動きに与える影響を抑制することができている。また、服地11がメッシュ構造になっているため、温調ベスト1全体の軽量化に寄与すると共に、特にペルチェ素子の放熱面41が冷却面41Aとして設定されている場合には、暑さを感じている着用者HMの身体表面BSと外部との間で、通気性が確保し易くなる。それ故に、温調ベスト1は、着用者HMにとって快適性の高い衣服となり得る。
【0091】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、制御部51は、第1~第3ペルチェ素子ユニット40A,40B,40Cの第1~第3ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、放熱面41で、冷却面41Aと加熱面41Bとの切り替えが可能であること、を特徴とする。
【0092】
この特徴により、温調ベスト1,101は、ペルチェ素子の放熱面41を冷却面41Aとした場合には、着用者HMの身体表面BSを局部的に冷やす冷却用ベストに、ペルチェ素子の放熱面41を加熱面41Bとした場合には、着用者HMの身体表面BSを局部的に温める加熱用ベストに、可逆的に変化させて使用することができるようになる。それ故に、温調ベスト1,101は、着用者HMにとって使い勝手の良い衣服となり得る。
【0093】
また、本実施形態1,2に係る温調ベスト1,101では、ベスト本体10は、着用者HM上体に装着するベストであること、を特徴とする。
【0094】
この特徴により、ペルチェ素子の放熱面41を冷却面41Aとした場合の温調ベスト1,101では、その着用者HMの体格が個人毎に異なっていても、選択された特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41(冷却面41A)の冷熱により、暑さを感じる首筋や頚椎付近、及び脇の下にある動脈等を、局部的かつ効果的に冷やすことができる。また、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者等、重装な作業服を着て暑い環境下で働く作業者等で、ズボンのベルト付近で蒸れ易くなる腹部から脇腹、腰部周辺で暑いと感じ、このような脇腹付近を、スポット的に冷やしたいと感じている人もいる。温調ベスト1,101は、このような人に対しても、選択された特定素子取付部20Xに装着したペルチェ素子ユニット40の放熱面41(冷却面41A)により、着用者HMの腹部、脇腹、及び腰部周辺を、効果的に冷やすことが可能である。
【0095】
また、本実施形態2に係る温調ベスト101では、ペルチェ素子ユニット140は、内側フランジ143と外側フランジ146からなる一対のフランジにより、素子取付部20(特定素子取付部20X)を挟んで装着され、内側フランジ143と外側フランジ146はそれぞれ、放熱面41(冷却面41Aまたは加熱面41B)に沿う仮想基準線VLとの相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、放熱面41の反対側へ遠のく側(吸気部42側)に傾いて形成されていること、を特徴とする。また、本実施形態2に係る温調ベスト101では、傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、を特徴とする。
【0096】
このような特徴により、傾斜角度θの大きさが、ベスト本体10に装着するペルチェ素子ユニット140の厚み(図12中、左右方向の距離)の大きさに対応して設定されると、ペルチェ素子ユニット140のうち、吸気部42側の一部が、服地11の裏側服地11Bから表側服地11A側に出っ張るはみ出し量を、より小さく抑えることができるようになる。すなわち、ペルチェ素子ユニット140が、例えば、数~10mm未満の厚みで、比較的薄く形成されている場合には、傾斜角度θが0≦θ<15(deg)であれば、吸気部42側の一部によるはみ出し量は、服地11の裏側服地11Bから表側服地11A側に、概ね5mm以内等となる。しかも、ペルチェ素子ユニット140は、柔軟性を有した表側服地11Aで被覆されているため、ペルチェ素子ユニット140の出っ張りが、概ね5mm以内であれば、外部から判別し難い状態となり、温調ベスト101の見栄えを損なうこともない。
【0097】
他方、ペルチェ素子ユニット140が、例えば、10mm超えでかつ数十mm程の厚みで、比較的厚く形成されている場合、傾斜角度θが15≦θ≦30(deg)になっていれば、吸気部42側の一部によるはみ出し量が、傾斜角度θ=0(deg)との対比で、数~十数mm、場合によっては20mm程減少させて抑えることができる。そのため、ペルチェ素子ユニット140が、比較的厚く形成されていても、吸気部42側の一部によるはみ出し量を抑制してベスト本体10に装着できているため、柔軟性を有した表側服地11Aによる被覆と共に、外部から判別し難い状態となり、温調ベスト101の見栄えを損なうこともない。
【0098】
なお、傾斜角度θが30(deg)を超えると、素子取付部20の外周縁部22が、内側フランジ143及び外側フランジ146の径外側にある端部付近で、過度に屈曲して応力集中を招いてしまうため、機械的強度上、耐久性が低下して、外周縁部22の破損や、裏側服地11Bの破れ等の原因にもなるため、好ましくない。
【0099】
さらに、温調ベスト101は、何らかの理由により、ペルチェ素子ユニット140と、表側服地11Aを介した外部の障害物との接触や衝突等を回避し易くなるほか、ペルチェ素子ユニット140の出っ張りに起因して、温調ベスト101の着用者の周囲にいる人の邪魔となってしまうのを防ぐことができる。
【0100】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0101】
例えば、実施形態1,2では、素子取付部20を服地11の裏側服地11Bに全22箇所設けたベスト本体10を挙げたが、服地に設ける素子取付部の数、配置位置、並び方は、実施形態に限定されるものではなく、本発明に係る身体温度調整被服(製品)の用途、着用者の体格等、製品の仕様に応じて、適宜変更可能である。
【0102】
また、実施形態1,2では、3つのペルチェ素子ユニット40をベスト本体10に装着する温調ベスト1を挙げたが、装着するペルチェ素子の数は、実施形態に限定されるものではなく、本発明に係る身体温度調整被服(製品)の用途、着用者の体格等、製品の仕様に応じて、適宜変更可能である。
【0103】
また、実施形態1,2では、ペルチェ素子において、吸熱下の冷却面の温度は、一例として挙げた十℃程度としたが、このような温度に限定されず、例えば、零℃より高く、十℃近傍までの温度域であっても良く、ペルチェ素子での吸熱特性は、適宜変更可能である。同様に、発熱下の加熱面の温度は、一例として挙げた三十数℃程度としたが、このような温度に限定されず、例えば、体温より少し高く、火傷をしない四十℃前後の温度であっても良く、ペルチェ素子での発熱特性は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0104】
1,101 温調ベスト(身体温度調整被服)
10 ベスト本体(被服、ベスト)
11 服地
11A 表側服地
11B 裏側服地
20 素子取付部
20X 特定素子取付部(特定部位の素子取付部)
40,140 ペルチェ素子ユニット
41 放熱面
41A 冷却面
41B 加熱面
50 操作ユニット(制御手段)
51 制御手段
55 配線
56 本線
56A,56B,56C 支線
140X ペルチェ素子
143 内側フランジ(第1のフランジ)
146 外側フランジ(第2のフランジ)
tx 時間の位相
T 特定温度
θ 傾斜角度
HM 着用者
BS 身体表面
VL 仮想基準線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットと、被服と有し、該ペルチェ素子ユニットが該被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、
前記服地には、前記ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上の前記ペルチェ素子ユニットが、前記複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する前記素子取付部で、前記冷却面または前記加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、
前記ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、
前記ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、前記制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上の前記ペルチェ素子ユニット内の前記ペルチェ素子と電気的に接続されていること、
前記服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを同じ形状をなして含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、前記素子取付部は、前記裏側服地に設けられ、前記素子取付部に装着した前記ペルチェ素子ユニットは、前記表側服地により被覆されていること、
前記表側服地は、前記複数の部位にある全ての前記素子取付部のうち、前記ペルチェ素子ユニットが装着されていない部位をも含んで覆う態様で、形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項2】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記ペルチェ素子ユニットは、第1のフランジと第2のフランジからなる一対のフランジにより、前記素子取付部を挟んで装着され、
前記一対のフランジは、前記放熱面に沿う仮想基準線との相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、前記放熱面の反対側へ遠のく側に傾いて形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項3】
請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、冷熱または温熱として、前記放熱面に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御できること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、前記被服に装着された状態にある前記2以上のペルチェ素子に対し、前記ペルチェ素子毎に、前記放熱面に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項6】
請求項4に記載する身体温度調整被服において、
前記放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相は、各前記ペルチェ素子とも同じであり、前記制御手段は、設定された特定温度の前記放熱を生ずる前記ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、前記2以上のペルチェ素子の間で変化させることにより、
前記2以上のペルチェ素子全体では、前記特定温度の前記放熱が、各前記ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各前記ペルチェ素子の前記放熱面から放たれること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記服地のうち、少なくとも前記表側服地は、メッシュ構造で形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記放熱面で、前記冷却面と前記加熱面との切り替えが可能であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載する身体温度調整被服において、
前記被服は、着用者上体に装着するベストであること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットと、被服とを有し、該ペルチェ素子ユニットが該被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、
前記服地には、前記ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上の前記ペルチェ素子ユニットが、前記複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する前記素子取付部で、前記冷却面または前記加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、
前記ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、
前記ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、前記制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上の前記ペルチェ素子ユニット内の前記ペルチェ素子と電気的に接続されていること、
前記服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを同じ形状をなして含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、前記素子取付部は、前記裏側服地に設けられ、前記素子取付部に装着した前記ペルチェ素子ユニットは、前記表側服地により被覆されていること、
前記表側服地は、前記複数の部位にある全ての前記素子取付部のうち、前記ペルチェ素子ユニットが装着されていない部位をも含んで覆う態様で、形成されていること、
前記ペルチェ素子ユニットは、第1のフランジと第2のフランジからなる一対のフランジにより、前記素子取付部を挟んで装着され、
前記一対のフランジは、前記放熱面に沿う仮想基準線との相対的な角度として、0≦θ≦30(deg)の傾斜角度θで、前記放熱面の反対側へ遠のく側に傾いて形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項2】
請求項に記載する身体温度調整被服において、
前記傾斜角度θは、15≦θ≦30(deg)であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項3】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、冷熱または温熱として、前記放熱面に呈する放熱の温度を、複数の段階に分けて制御できること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項4】
吸熱下になる冷却面と、該冷却面の反対側で発熱下になる加熱面を有するペルチェ素子を具備したペルチェ素子ユニットと、被服とを有し、該ペルチェ素子ユニットが該被服の服地に装着可能に形成された身体温度調整被服において、
前記服地には、前記ペルチェ素子ユニットを装着可能な素子取付部が、複数の部位に配設され、1または2以上の前記ペルチェ素子ユニットが、前記複数の部位のうち、選択的な特定の部位に位置する前記素子取付部で、前記冷却面または前記加熱面のいずれか片面である放熱面を、当該身体温度調整被服の着用者身体の表面に対向させて接触可能とした状態で装着できること、
前記ペルチェ素子を電気的に制御可能な制御手段を備え、
前記ペルチェ素子ユニットが2以上の場合、前記制御手段は、独立した一本の本線でそれぞれ、または一条状にまとめた本線から分割して延びる各支線により、2以上の前記ペルチェ素子ユニット内の前記ペルチェ素子と電気的に接続されていること、
前記服地は、最も外側に配置される表側服地と、最も着用者の身体側に配置される裏側服地とを同じ形状をなして含み、少なくとも2層状に重ね合わせた態様で形成され、前記素子取付部は、前記裏側服地に設けられ、前記素子取付部に装着した前記ペルチェ素子ユニットは、前記表側服地により被覆されていること、
前記表側服地は、前記複数の部位にある全ての前記素子取付部のうち、前記ペルチェ素子ユニットが装着されていない部位をも含んで覆う態様で、形成されていること、
前記制御手段は、前記被服に装着された状態にある前記2以上のペルチェ素子に対し、前記ペルチェ素子毎に、前記放熱面に呈する放熱の温度を周期的に可変できること、
前記放熱の温度を周期的に可変させる時間の位相は、各前記ペルチェ素子とも同じであり、前記制御手段は、設定された特定温度の前記放熱を生ずる前記ペルチェ素子を、規則性を有した交替に基づいて、前記2以上のペルチェ素子の間で変化させることにより、
前記2以上のペルチェ素子全体では、前記特定温度の前記放熱が、各前記ペルチェ素子の間で揺らぎをなす態様で、各前記ペルチェ素子の前記放熱面から放たれること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項5】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記服地のうち、少なくとも前記表側服地は、メッシュ構造で形成されていること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項6】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記放熱面で、前記冷却面と前記加熱面との切り替えが可能であること、
を特徴とする身体温度調整被服。
【請求項7】
請求項1に記載する身体温度調整被服において、
前記被服は、着用者上体に装着するベストであること、
を特徴とする身体温度調整被服。