(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166031
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自動試料調製システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241121BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185579
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】112118274
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516250683
【氏名又は名称】プレックスバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ ディーン
(72)【発明者】
【氏名】ルー フェングカン
(72)【発明者】
【氏名】テン カオ チェン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA23
4B029BB02
4B029BB11
4B029BB12
4B029BB13
4B029BB20
4B029HA07
4B029HA09
4B029HA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】試料前処理、抽出、定量、溶液調製を一つのシステム中に統合した自動試料調製システムを提供する。
【解決手段】試料に前処理を行って試料を抽出する試料調製装置100と、抽出ストリップで試料から遺伝物質を抽出するための抽出装置200と、試料用容器、抽出された遺伝物質用容器、及び抽出用ピペットチップを保持するための試料ホルダ300と、遺伝物質の定量を行うための増幅前定量装置400と、増幅反応に適用する溶液に調製するための増幅試料調製装置500と、非抽出用ピペットチップホルダ600と、液体の混合又は移送を行うためのピペット装置700と、を含み、抽出装置200と試料ホルダ300とは試料調製装置100の両側に相対に設けられ、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500及び非抽出用ピペットチップホルダ600は試料ホルダが試料調製装置100から離れる一側に設けられる、自動試料調製システム10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に前処理を行って前記試料を抽出に用いられる形態にするための試料調製装置と、
抽出ストリップが設けられ、前記抽出ストリップで前記試料から遺伝物質を抽出するための抽出装置と、
試料用容器、抽出された遺伝物質用容器、及び抽出用ピペットチップを保持するための試料ホルダと、
抽出された前記遺伝物質に定量を行うための増幅前定量装置と、
抽出された前記遺伝物質を増幅反応に適用する溶液に調製するための増幅試料調製装置と、
非抽出用ピペットチップを保持するための非抽出用ピペットチップホルダと、
前記試料ホルダに移動され、前記抽出用ピペットチップが設けられて前記試料調製装置、前記抽出装置及び前記試料ホルダにて液体の混合又は移送を行うか、前記非抽出用ピペットチップホルダに移動され、前記非抽出用ピペットチップが設けられて前記試料ホルダ、前記増幅前定量装置及び前記増幅試料調製装置にて液体の混合又は移送を行うためのピペット装置と、を含み、
前記抽出装置と前記試料ホルダとは前記試料調製装置の両側に相対に設けられ、前記増幅前定量装置、前記増幅試料調製装置及び前記非抽出用ピペットチップホルダは前記試料ホルダが前記試料調製装置から離れる一側に設けられる、
自動試料調製システム。
【請求項2】
ハウジングを更に含み、前記ハウジングは開口を含み、前記試料調製装置、前記抽出装置、前記試料ホルダ、前記増幅前定量装置、前記増幅試料調製装置、前記非抽出用ピペットチップホルダ及び前記ピペット装置は前記ハウジング内に設けられ、前記増幅前定量装置、前記増幅試料調製装置及び前記非抽出用ピペットチップホルダは前記試料ホルダと前記開口との間に位置する、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項3】
前記増幅試料調製装置は増幅試薬ホルダと増幅試料ホルダとを含み、前記増幅試薬ホルダは増幅反応に用いられる試薬を保持するために用いられ、前記増幅試料ホルダは調製された増幅反応に適用する溶液を保持するために用いられる、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項4】
前記抽出装置、前記試料調製装置及び前記試料ホルダは第1方向に沿ってこの順で配置され、前記増幅前定量装置、前記増幅試料ホルダ、前記増幅試薬ホルダ及び前記非抽出用ピペットチップホルダは第2方向に沿ってこの順で配置され、前記第1方向は前記第2方向に垂直である、請求項3に記載の自動試料調製システム。
【請求項5】
前記試料はパラフィン、血液、血漿、血清、唾液、ウイルス、病原体、細菌又は細胞を含む、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項6】
前記試料調製装置は加熱領域を含み、前記加熱領域は前記試料を加熱するために用いられる、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項7】
前記ピペット装置はピペッティングを繰り返す方式により液体の混合を行う、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項8】
前記ピペット装置は第1ピペット装置及び第2ピペット装置を含み、前記第1ピペット装置の移動範囲は前記試料調製装置、前記抽出装置、及び前記試料ホルダを含み、前記第2ピペット装置の移動範囲は前記試料ホルダ、前記増幅前定量装置、前記増幅試料調製装置、及び前記非抽出用ピペットチップホルダを含む、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項9】
画像認識装置を更に含み、前記画像認識装置は前記試料用容器、又は前記遺伝物質用容器上のラベルや表記を認識するために用いられる、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【請求項10】
紫外線殺菌器を更に含み、前記紫外線殺菌器は前記試料調製装置、前記抽出装置、前記試料ホルダ、前記増幅前定量装置、前記増幅試料調製装置、前記非抽出用ピペットチップホルダ、及び前記ピペット装置を殺菌するために用いられる、請求項1に記載の自動試料調製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動試料調製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、疾病診断、創薬、環境監視、食品検査、鑑識、学術研究等の分野において、生物活性物質、例えば、細胞、タンパク質、遺伝物質等がよく用いられている。中でも、遺伝物質は、生命の基礎物質の一つであり、リボ核酸(略称:RNA)及びデオキシリボ核酸(略称:DNA)を含み、全ての動植物、微生物、ウイルス内に広く存在する。バイオ技術の発展に伴い、遺伝物質を生物検体から抽出して後の分析と応用を行うことが可能である。自動的に遺伝物質を検体から抽出することが可能な機器は開発されている。しかしながら、生物検体の形式が様々で、サンプリング方式によって、生物検体は、血液、唾液、尿液のような体液、ホルマリン固定パラフィン包埋(Formalin-fixed paraffin-embedding、FFPE)試料のような固形パラフィン、培養細胞、細菌コロニー、鼻腔ぬぐい液(nasal swab)等を含める。これらの様々な生物検体は抽出する前に、自動抽出機器に適用する試料になるように前処理を行ってから抽出する必要がある。抽出した遺伝物質は、通常、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction、PCR)のような増幅反応を行う必要がある。また、後の分析と応用によって、遺伝物質は増幅反応を行う前に定量される場合がある。
【0003】
しかしながら、現在市販の自動抽出機器は、試料の前処理、並びに、後の定量及び溶液調製の機能を含まない。試料前処理、増幅前定量及び溶液調製の過程では、操作するには技術者と追加の機器が必要である。人為的操作は時間、人手を消費するだけでなく、人為的誤差も生じる。さらに重要なことに、人為的操作は汚染のリスクが大幅に高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例である自動試料調製システムは試料前処理、抽出、定量、溶液調製を一つのシステム中に統合する。人為的操作に代えて自動システムは時間と人手のコストを低減し、人為的操作による誤差を低減し、さらに、汚染のリスクを低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は、試料に前処理を行って試料を抽出に用いられる形態にするための試料調製装置と、抽出ストリップが設けられ、抽出ストリップで試料から遺伝物質を抽出するための抽出装置と、試料用容器、抽出された遺伝物質用容器及び抽出用ピペットチップを保持するための試料ホルダと、抽出された遺伝物質に定量を行うための増幅前定量装置と、抽出された遺伝物質を増幅反応に適用する溶液に調製するための増幅試料調製装置と、非抽出用ピペットチップを保持するための非抽出用ピペットチップホルダと、試料ホルダに移動され、抽出用ピペットチップが設けられて試料調製装置、抽出装置及び試料ホルダにて液体の混合又は移送を行うか、非抽出用ピペットチップホルダに移動され、非抽出用ピペットチップが設けられて試料ホルダ、増幅前定量装置及び増幅試料調製装置にて液体の混合又は移送を行うためのピペット装置と、を含み、抽出装置と試料ホルダとは試料調製装置の両側に相対に設けられ、増幅前定量装置、増幅試料調製装置及び非抽出用ピペットチップホルダは試料ホルダが試料調製装置から離れる一側に設けられる、自動試料調製システムを提供する。
【0006】
本発明の実施例である自動試料調製システムによれば、試料前処理、抽出、増幅前定量、増幅溶液調製を一つのシステム中に統合する。自動試料調製装置は液体試料に加えて、パラフィンのような固形試料に前処理を行うことができる。自動試料調製システムにおけるピペット装置はピペッティングを繰り返す方式により液体を全面的に混合でき、撹拌混合と比べて、液体をより均一に混合させ、撹拌による衝突での破損を回避できる。自動試料調製における各装置の配置方式はピペット装置が各装置間での移動距離を短縮することによって、移動の過程で汚染又は衝突による破損のリスクを低減させる。人為的操作に代えて、各手順を自動化させることにより、操作を簡単にし、時間と人手のコストを低減し、効率を向上させる。標準化されたプロセスにより、人為的誤差は低減し、信頼性を向上させる。さらに重要なことに、汚染されるリスクを大幅に低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例による自動試料調製システムを模式的に示す平面図である。
【
図2】抽出装置に設けられた抽出ストリップの一例を示す図である。
【
図3A】10ミリリットル血清又は血漿に適用する試料ホルダを示す図である。
【
図3B】パラフィン(例えば、FFPE)に適用する試料ホルダを示す図である。
【
図3C】ウイルス又は血液に適用する試料ホルダを示す図である。
【
図3D】5ミリリットル血清又は血漿に適用する試料ホルダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態で本発明の詳細な特徴および利点について詳細に説明する。その内容はあらゆる当業者が本発明の技術内容を理解し、これに基づいて実施するに足るものであり、本明細書で開示する内容、特許請求の範囲及び図面によれば、あらゆる当業者は本発明に係る目的及び利点を容易に理解できる。以下の実施例は、本発明の観点についてさらに詳細に説明するが、いかなる観点によっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0009】
図1を参照すると、
図1は本発明の実施例による自動試料調製システムを模式的に示す平面図である。本発明の実施例によれば、自動試料調製システム10は試料調製装置100、抽出装置200、試料ホルダ300、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500、非抽出用ピペットチップホルダ600、及びピペット装置700を含む。抽出装置200と試料ホルダ300とは試料調製装置100の両側に相対に設けられ、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500及び非抽出用ピペットチップホルダ600は試料ホルダ300が試料調製装置100から離れる一側に設けられる。この配置方式は、ピペット装置700が各装置間での移動距離を短縮することによって、移動の過程で汚染又は衝突による破損のリスクを低減させる。
【0010】
試料調製装置100は、試料に前処理を行って試料を抽出に用いられる形態にするように用いられる。抽出に用いられる形態とは、ピペットでピペッティングし、抽出試薬と混合できる液体形態を指す。試料は液体でも固体でもよい。試料はパラフィン、血液、血漿、血清、唾液、ウイルス、病原体、細菌又は細胞を含むことができる。例えば、試料を希釈する必要がある場合、試料は抽出に用いられる形態になるように試料調製装置100内で希釈される。例えば、試料調製装置は希釈緩衝液供給装置を含んでよい。抽出に用いられる試料は、後述するピペット装置700を介して試料調製装置100から抽出装置200に移送され、抽出を行う。
【0011】
試料調製装置100は、置かれた試料を加熱するための加熱領域を含んでよい。例えば、加熱領域はいくつかのヒータを有してよい。加熱領域の範囲は試料調製装置100全体を取り込んでよく、試料調製装置100の一部を取り込んでもよい。例えば、試料がFFPEのようなパラフィンである場合、パラフィンを試料調製装置100の加熱領域に置き、パラフィンを抽出に用いられる形態になるように加熱により液体に融解させる。
【0012】
抽出装置200は、抽出ストリップ210が設けられ、抽出ストリップ210で試料から遺伝物質を抽出するために用いられる。例えば、抽出装置200は抽出ストリップホルダを含んでよい。
図2は抽出装置に設けられた抽出ストリップの一例である。抽出ストリップ210は複数の管が接続された構造を有してよい。一部の管には抽出反応するための試薬、例えば、磁気ビーズ含有緩衝液、溶解液、洗浄液、溶離液が入って、別の一部の管は空管であってよい。抽出ストリップ210における試薬は試料の種類によって異なっている。抽出ストリップ210の一部は試料調製装置100に位置してよい。例えば、
図2に示される抽出ストリップ210は最も外側に試料調製装置100に位置する前処理しようとする試料が入るための2つの空管を有してよい。抽出装置200はフールプルーフ構造を有してよい。例えば、抽出装置200は抽出ストリップ210に対応する構造を有して抽出ストリップ210の位置決めを行うことによって、装着ミスを防止し、抽出プロセスを正しく進行することを確保する。
【0013】
抽出装置200において、後述するピペット装置700により液体の混合又は移送を行ってよい。抽出ストリップ210が設けられた抽出装置200において、磁気ビーズ含有緩衝液の磁気ビーズにより試料中の遺伝物質を吸着して、ピペット装置700により管における溶液を吸い取って、次の管に移動し、試料を順次に抽出ストリップ210における各管にて移送されて抽出させる。抽出過程では、液体の混合はピペット装置700でピペッティングを繰り返す方式により行われる。抽出された遺伝物質はピペット装置700を介して試料ホルダ300に移送される。
【0014】
試料ホルダ300は試料用容器、抽出された遺伝物質用容器及び抽出用ピペットチップを保持するために用いられる。試料用容器は抽出されない原液試料が入ることができる。抽出用ピペットチップは後述するピペット装置700に設けられて抽出に用いられる。試料ホルダ300は抽出装置200に向く方向に沿って、試料用容器、抽出用ピペットチップ及び抽出された遺伝物質用容器をこの順で配置できる。換言すると、抽出された遺伝物質用容器は最も抽出装置200に近くて、抽出された遺伝物質を最短距離で容器に移送させることにより、移送過程で汚染されるリスクを低減させる。試料ホルダ300は試料の種類によって異なる構造を有してよい。例えば、
図3A乃至
図3Dは異なる試料に適用する試料ホルダ300であって、
図3Aは10ミリリットル血清又は血漿に適用する試料ホルダ300Aであり、
図3Bはパラフィン(例えば、FFPE)に適用する試料ホルダ300Bであり、
図3Cはウイルス又は血液に適用する試料ホルダ300Cであり、
図3Dは5ミリリットル血清又は血漿に適用する試料ホルダ300Dである。試料ホルダ300はフールプルーフ構造を有してよい。例えば、試料ホルダ300はピンや容器に対応する構造を有して試料ホルダ300及び容器の位置決めを行うことによって、試料ホルダ300の装着ミス、又は容器の配置ミスを防止する。
【0015】
増幅前定量装置400は抽出された遺伝物質に定量を行うために用いられる。特定の生化学分析又は応用では、増幅反応前に試料における遺伝物質に対して定量する場合がある。増幅前定量装置400は光学定量機器、例えば、分光計であってよい。後述するピペット装置700により試料ホルダ300に置いた抽出された遺伝物質を増幅前定量装置400に移送して光学的に定量することができる。増幅前定量装置400にはLED光源、フィルター及び発光ダイオードが設けられたが、これらに限られない。例えば、増幅前定量装置400は475nmの励起フィルターと525nmの散乱フィルターとを備え、特定の波長で遺伝物質を測定し、組み込みソフトウェアを用いて検量線を作成することにより遺伝物質を定量する。
【0016】
増幅試料調製装置500は抽出された遺伝物質を増幅反応に適用する溶液に調製するために用いられる。増幅試料調製装置500は増幅試薬ホルダ510と増幅試料ホルダ520とを含むことができる。増幅試薬ホルダ510は、増幅反応用の試薬、例えば、ポリメラーゼ、dNTP、プライマー及び緩衝液を保持するために用いられる。増幅試料ホルダ520は調製された増幅反応に適用する溶液を保持するために用いられる。後述するピペット装置700で試料ホルダ300に置いた抽出された遺伝物質を増幅試料ホルダ520に移送してから、ピペット装置700で増幅試薬ホルダ510に置いた試薬を抽出された遺伝物質中に添加して、増幅反応に適用する溶液を調製する。調製された溶液は自動試料調製システム10から取り出されて、次の増幅反応を行ってもよく、保管してされてもよい。
【0017】
非抽出用ピペットチップホルダ600は非抽出用ピペットチップを保持するために用いられる。非抽出用ピペットチップは抽出に関連しない液体の混合又は移送に用いられる。換言すると、試料ホルダ300に置いた抽出用ピペットチップは試料調製装置100と、抽出装置200と、試料ホルダ300における液体の混合又は移送に用いられ、非抽出用ピペットチップホルダ600に置いた非抽出用ピペットチップは試料ホルダ300と、増幅前定量装置400と、増幅試料調製装置500における液体の混合又は移送に用いられる。抽出用ピペットチップを非抽出用ピペットチップと区別して使用することは、単一手順でピペット装置700が移動する距離を短縮させ、ピペット装置700が抽出用チップの装着過程又は移動する過程にて汚染されるリスクを低減させる。
【0018】
ピペット装置700は、試料ホルダ300に移動され、抽出用ピペットチップが設けられて試料調製装置100、抽出装置200及び試料ホルダ300にて液体の混合又は移送を行うか、非抽出用ピペットチップホルダ600に移動され、非抽出用ピペットチップが設けられて試料ホルダ300、増幅前定量装置400及び増幅試料調製装置500にて液体の混合又は移送を行うために用いられる。例えば、ピペット装置700はピペットが設けられたロボットアームであってよい。ピペット装置700はピペッティングを繰り返す方式により液体の混合を行う。ピペット装置700は液体の体積を自動的に検出または手動で設定でき、液体の体積によってピペッティングを繰り返し、液体を全面的に混合させる。撹拌混合と比べて、液体の体積によってピペッティングを繰り返す混合方式は液体をより均一に混合させ、撹拌による衝突での破損を回避できる。
【0019】
ピペット装置700は第1ピペット装置710及び第2ピペット装置720を含むことができる。第1ピペット装置710の移動範囲Aは試料調製装置100、抽出装置200及び試料ホルダ300を含むことができる。第1ピペット装置710は試料ホルダ300に移動され、抽出用ピペットチップが設けられて試料調製装置100、抽出装置200及び試料ホルダ300にて液体の混合又は移送を行う。第2ピペット装置720の移動範囲Bは試料ホルダ300、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500及び非抽出用ピペットチップホルダ600を含むことができる。第2ピペット装置720は非抽出用ピペットチップホルダ600に移動され、非抽出用ピペットチップが設けられて試料ホルダ300、増幅前定量装置400及び増幅試料調製装置500にて液体の混合又は移送を行う。第1ピペット装置710と第2ピペット装置720とはそれぞれ別の領域内に移動でき、単一ピペット装置の移動距離を短縮させることで、抽出用チップの装着過程又は移動する過程にて汚染されるリスクを低減させる。
【0020】
抽出装置200、試料調製装置100及び試料ホルダ300は第1方向に沿ってこの順で配置され、増幅前定量装置400、増幅試料ホルダ520、増幅試薬ホルダ510及び非抽出用ピペットチップホルダ600は第2方向に沿ってこの順で配置され、第1方向は第2方向に垂直である。この配置方式により、ピペット装置700が非抽出用ピペットチップホルダ600から非抽出用ピペットチップを設け、増幅試薬ホルダ510に移動し試薬を吸い取ってから増幅試料ホルダ520に保持された遺伝物質に添加する過程では、移動距離を短縮させることで、ピペット装置700が抽出用チップの装着過程又は移動する過程にて汚染されるリスクを低減させる。
【0021】
自動試料調製システム10は廃棄物収集器800を更に含む。廃棄物収集器800は使用されたピペットチップや廃液を収集するために用いられる。例えば、廃棄物収集器800は、容器や箱であってよく、前記装置やホルダの最も外側に設けられ、装着可能に自動試料調製システム10に設けられる。
【0022】
自動試料調製システム10はハウジング900を更に含み、ハウジング900は開口910を含むことができる。試料調製装置100、抽出装置200、試料ホルダ300、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500、非抽出用ピペットチップホルダ600及びピペット装置700はハウジング900内に設けられ、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500及び非抽出用ピペットチップホルダ600は試料ホルダ300と開口910との間に位置する。ハウジング900は開口910を覆うように扉部を更に含むことができる。この配置方式は開口910から調製された増幅反応に適用する溶液を便宜に取り出し、試料調製装置100、抽出装置200、又は試料ホルダ300に接することを回避できることで、接触による汚染や破損のリスクを低減させる。
【0023】
自動試料調製システム10は画像認識装置920を更に含む。画像認識装置920はハウジング900内に設けられる。画像認識装置920は試料用容器、又は遺伝物質用容器上のラベルや表記を認識できる。例えば、画像認識装置920はカメラであってよい。ラベルや表記は文字、数字、又はバーコードであってよい。例えば、試料用容器が採血管である場合、画像認識装置920はデータ照合及び分析できるように、採血管上のラベルを認識して情報をコンピューターに送信する。画像認識装置920は消耗品の位置や配置を認識することもできる。例えば、画像認識装置920は非抽出用ピペットチップホルダ600において非抽出用ピペットチップの数と、位置と、配置とを認識して、ピペット装置700を正確な位置に移動させてピペットチップを設けるか、ピペットチップ不足の場合に警告信号を発することができる。
【0024】
自動試料調製システム10は紫外線殺菌器930を更に含む。紫外線殺菌器930はハウジング900内に設けられる。紫外線殺菌器930は試料調製装置100、抽出装置200、試料ホルダ300、増幅前定量装置400、増幅試料調製装置500、非抽出用ピペットチップホルダ600及びピペット装置700を殺菌するために用いられる。紫外線殺菌器930は紫外線蛍光灯を含み、ハウジング900内の上部、又は紫外線を各装置に照射させる任意の位置に設けられる。紫外線殺菌器930は試料が投入される時にハウジング900内が無菌状態にあることを確保できる。
【0025】
以下、試料が自動試料調製システム10への投入から取り出すまでの一例を述べる。まず、試料が液体である場合に、試料が入った容器を試料ホルダ300に置き、試料は第1ピペット装置710により試料調製装置100に移送されて希釈又は加熱処理し、抽出に用いられる形態にする。試料が固形である場合に、試料を抽出ストリップ210において試料調製装置100に位置する管に直接に入れて希釈又は加熱処理し、抽出に用いられる形態にする。続いて、試料調製装置100に置いた抽出試料は第1ピペット装置710により抽出装置200に移送され、順次に抽出ストリップ210における各反応試薬と混合して抽出反応を行う。抽出された試料は第1ピペット装置710により試料ホルダ300に置いた容器中に移送される。前記過程では、液体の混合又は移送は、試料ホルダ300に保持された抽出用ピペットチップが設けられた第1ピペット装置710により行われる。
【0026】
続いて、増幅前定量を行う必要がある場合、試料ホルダ300に置いた抽出された試料は第2ピペット装置720により増幅前定量装置400に移送されて定量する。続いて、定量結果に応じて、あるいは増幅前定量が必要ない場合には、試料ホルダ300に置いた抽出された試料は第2ピペット装置720により増幅試料調製装置500の増幅試料ホルダ520に移送される。第2ピペット装置720により増幅試料調製装置500の増幅試薬ホルダ510に保持された試薬を抽出された試料中に添加し、増幅反応に適用する溶液に調製する。調製された溶液は開口910から取り出して、次の増幅反応を行ってもよく、保管してされてもよい。前記過程では、液体の混合又は移送は、非抽出用ピペットチップホルダ600に保持された非抽出用ピペットチップが設けられた第2ピペット装置720により行われる。
【0027】
本発明の実施例である自動試料調製システムによれば、試料前処理、抽出、増幅前定量、増幅溶液調製を一つのシステム中に統合する。自動試料調製装置は液体試料に加えて、パラフィンのような固形試料に前処理を行うことができる。自動試料調製システムにおけるピペット装置はピペッティングを繰り返す方式により液体を全面的に混合でき、撹拌混合と比べて、液体をより均一に混合させ、撹拌による衝突での破損を回避できる。自動試料調製における各装置の配置方式はピペット装置が各装置間での移動距離を短縮することによって、移動の過程で汚染又は衝突による破損のリスクを低減させる。人為的操作に代えて、各手順を自動化させることにより、操作を簡単にし、時間と人手のコストを低減し、効率を向上させる。標準化されたプロセスにより、人為的誤差は低減し、信頼性を向上させる。さらに重要なことに、汚染されるリスクを大幅に低減させる。
【0028】
本発明は上述のように前記の実施例で開示したが、それらは本発明を限定するものではない。本発明の精神と範囲に逸脱せずに行われた変更と修正は、本発明の特許保護の範囲に属する。本発明が定義した保護範囲については、添付の特許請求の範囲を参照できる。
【符号の説明】
【0029】
10:自動試料調製システム
100:試料調製装置
200:抽出装置
210:抽出ストリップ
300、300A、300B、300C、300D:試料ホルダ
400:増幅前定量装置
500:増幅試料調製装置
510:増幅試薬ホルダ
520:増幅試料ホルダ
600:非抽出用ピペットチップホルダ
700:ピペット装置
710:第1ピペット装置
720:第2ピペット装置
800:廃棄物収集器
900:ハウジング
910:開口
920:画像認識装置
930:紫外線殺菌器
A:第1ピペット装置の移動範囲
B:第2ピペット装置の移動範囲