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特開2024-166047水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセット及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166047
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセット及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20241121BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241121BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241121BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241121BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20241121BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241121BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C09D11/00
C09D5/02
C09D133/00
C09D7/63
C09D7/20
C09D7/65
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208261
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2023080532
(32)【優先日】2023-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 大樹
【テーマコード(参考)】
2H113
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113BB32
2H113BC01
2H113CA46
2H113DA45
2H113EA08
2H113EA10
2H113FA23
4J038BA212
4J038CG131
4J038JC26
4J038KA06
4J038MA10
4J038MA13
4J038NA11
4J038PB04
4J038PC08
4J038PC10
4J039AD01
4J039AD09
4J039AE04
4J039BC49
4J039BE01
4J039CA06
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、レベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性、及び耐アルコール性に優れた水性インキと水性オーバープリントニスとのインキセットを提供することを目的とする。
【解決手段】
水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセットであって、前記水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含み、前記水性インキが、水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含む、水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセットであって、
前記水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含み、
前記水性インキが、水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含むインキセット。
【請求項2】
高沸点溶媒とリン酸エステル系化合物との質量比率が、5:5~9.9:0.1である、請求項1に記載のインキセット。
【請求項3】
水性オーバープリントニスが、更に、炭化水素系ワックス(B)を含む、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項4】
炭化水素系ワックス(B)が、平均粒子径が1.5μm以上の炭化水素系ワックス(B1)、及び平均粒子径が1.5μm未満の炭化水素系ワックス(B2)を含む、請求項3に記載のインキセット。
【請求項5】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価が、100mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項6】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)が、ガラス転移温度が60℃以上の水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)、及びガラス転移温度が60℃未満の水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)を含む、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項7】
水性インキが、更に、水溶性アクリル樹脂(D)を含み、前記水溶性アクリル樹脂(D)の酸価が、200mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項8】
水性オーバープリントニス及び/又は水性インキが、更に、界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項9】
界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、請求項8に記載のインキセット。
【請求項10】
グラビア印刷用又はフレキソ印刷用である、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項11】
ポリオレフィン基材用である、請求項1又は2に記載のインキセット。
【請求項12】
基材、印刷層、及び表面保護層を有する積層体の製造方法であって、
基材上に水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含む水性インキを印刷して印刷層を形成する工程と、
前記印刷層上に、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含む、水性オーバープリントニスを印刷して表面保護層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセット及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感などの印刷品質のでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上での価値は大きい。
【0003】
一方、有機溶剤による大気汚染等の環境問題、作業環境の安全衛生問題、防災といった観点から、印刷インキや塗料の分野では古くから脱有機溶剤化・水性化が検討されてきた。耐摩擦性等の各種耐性を向上させるため、実用化されている水性インキや水性オーバープリントニスのバインダー成分は、アクリル樹脂エマルションやアルカリ可溶性アクリル樹脂を1種類または2種類を混合して使用している場合が殆どである。
【0004】
水性インキや水性オーバープリントニスとして、特許文献1及び2には、水性アクリル樹脂エマルジョンを含む水性インキの記載がある。特許文献3には、ウレタン樹脂を含む油性インキ、並びに、水性アクリル樹脂エマルジョン及びリン酸エステル系化合物を含む水性オーバープリントニスの記載がある。特許文献4には、水性アクリル樹脂エマルジョンを含む水性インキ、並びに、水性アクリル樹脂エマルジョン及び高沸点溶媒を含む水性オーバープリントニスの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-096161号公報
【特許文献2】特開2016-155965号公報
【特許文献3】特開2023-5160号公報
【特許文献4】特開2021-38022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性及び耐アルコール性に優れた水性インキと水性オーバープリントニスのインキセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセットであって、
前記水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含み、
前記水性インキが、水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含むインキセットに関する。
【0009】
また、本発明は、高沸点溶媒とリン酸エステル系化合物との質量比率が、5:5~9.9:0.1である、上記インキセットに関する。
【0010】
また、本発明は、水性オーバープリントニスが、更に、炭化水素系ワックス(B)を含む、上記インキセットに関する。
【0011】
また、本発明は、炭化水素系ワックス(B)が、平均粒子径が1.5μm以上の炭化水素系ワックス(B1)、及び平均粒子径が1.5μm未満の炭化水素系ワックス(B2)を含む、上記インキセットに関する。
【0012】
また、本発明は、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価が、100mgKOH/g以下である、上記インキセットに関する。
【0013】
また、本発明は、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)が、ガラス転移温度が60℃以上の水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)、及びガラス転移温度が60℃未満の水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)を含む、上記インキセットに関する。
【0014】
また、本発明は、水性インキが、更に、水溶性アクリル樹脂(D)を含み、前記水溶性アクリル樹脂(D)の酸価が、200mgKOH/g以下である、上記インキセットに関する。
【0015】
また、本発明は、水性オーバープリントニス及び/又は水性インキが、更に、界面活性剤を含む、上記インキセットに関する。
【0016】
また、本発明は、界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、上記インキセットに関する。
【0017】
また、本発明は、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用である、上記インキセットに関する。
【0018】
また、本発明は、ポリオレフィン基材用である、上記インキセットに関する。
【0019】
また、本発明は、基材、印刷層、及び表面保護層を有する積層体の製造方法であって、基材上に水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含む水性インキを印刷して印刷層を形成する工程と、
前記印刷層上に、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含む、水性オーバープリントニスを印刷して表面保護層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、レベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性及び耐アルコール性に優れた水性インキと水性オーバープリントニスのインキセットを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態または要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0022】
<インキセット>
水性オーバープリントニスと水性インキとのインキセットは、前記水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含み、前記水性インキが、水性アクリル樹脂エマルジョン(C)、及び/又は水性ウレタン樹脂を含む。
好ましい形態の一例として、水性インキを基材上に印刷して印刷層を形成し、印刷層上に水性オーバープリントニスを印刷して表面保護層を形成した積層体が挙げられる。(1)水性インキが水性アクリル樹脂エマルジョン(A)及び/又は水性ウレタン樹脂を含むことで、塗膜の強靭性及び表面保護層との密着性が向上し、(2)水性オーバープリントニスに含まれる、水性アクリル樹脂エマルジョンとリン酸エステル系化合物のリン酸基が相互作用することで、塗膜の強靭性が向上し、(3)水性オーバープリントニスが、更に高沸点溶媒を含むことで、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)及びリン酸エステル化合物の溶解性が向上し、塗膜の造膜性も向上する。上記(1)~(3)の効果により、優れたレベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性及び耐アルコール性を実現することができたと推察する。なお、上記推察は何ら発明を限定するものでない。
【0023】
<水性オーバープリントニス>
本発明の水性オーバープリントニスは、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)、沸点が105℃以上の高沸点溶媒、及びリン酸エステル系化合物を含む。
【0024】
<水性アクリル樹脂エマルジョン(A)>
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー成分を重合させて得られる重合体又は共重合体であり、以後、水性(メタ)アクリル樹脂と称する場合がある。また、スチレン-アクリル共重合樹脂であることが好ましい。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」との併記を表す。「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」との併記を表す。
【0025】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の重量平均分子量は、10000~600000であることが好ましく、50000~500000であることがより好ましく、100000~400000であることが更に好ましく、200000~300000であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、耐水摩擦性が向上する。水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価は、30~150mgKOH/gであることが好ましく、40~100mgKOH/gであることがより好ましく、50~70mgKOH/gであることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が向上する。
【0026】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の平均粒子径は、10~300nmであることが好ましく、60~100nmであることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
【0027】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)は、ガラス転移温度が60℃以上の水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)、及びガラス転移温度が60℃未満の水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)を含むことが好ましい。
【0028】
<水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)>
水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)は、ガラス転移温度が60℃以上であり、60℃~110℃の範囲であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
【0029】
<水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)>
水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)は、ガラス転移温度が60℃未満であり、0℃~55℃であることが好ましく、40℃~50℃であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。
【0030】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A)は、水性オーバープリントニスの固形分100質量%中、80質量%以上含まれることが好ましく、90~99.5質量%含まれることがより好ましく、95~99質量%含まれることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。また、水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)と水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)の固形分比率は、5:5~9:1であることが好ましく、7:3~8:2であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。
【0031】
水性オーバープリントニスは、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)以外の樹脂を含んでよく、例えば、水性スチレン-マレイン酸樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリ乳酸樹脂、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。上記の樹脂を1種または2種以上含んでも良い。
水性オーバープリントニス中の全樹脂固形分に対し、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)を40質量%以上含むことが好ましく、60質量%含むことがより好ましく、80~100質量%含むことが更に好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐アルコール性が向上する。
【0032】
上記(メタ)アクリレートの一例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベヘニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、及びオキセタン(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;並び(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、等が挙げられる。
【0033】
一実施形態において、水性(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリレートの他に、これらのモノマー以外のエチレン性不飽和モノマーをさらに含んでもよい。
エチレン性不飽和モノマーの一例として、スチレン、α―メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、および酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。なかでも、優れた光沢を得ることが容易となる、スチレン系モノマーを使用することが好ましい。
【0034】
一実施形態において、水性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリレートと、スチレン系モノマーとの共重合体であってよい。より具体的には、水性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリレートと、スチレンとの共重合によって得られる共重合体であってよい。
【0035】
特に限定するものではないが、水性(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの組合せの具体例として、アクリル酸/スチレン/メタクリル酸n-ブチル/アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸/メタクリル酸メチル/1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート/メタクリル酸n-ブチル/アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸/スチレン/メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン、アクリル酸/スチレン/メタクリル酸n-ブチル/アクリル酸2エチルヘキシル、等が挙げられる。
【0036】
エマルジョン樹脂の調製は、当技術分野で公知の方法にしたがって実施することができる。例えば、エマルジョン樹脂は、モノマー成分がミセル状に乳化して水中に分散する条件下で、乳化重合を実施することによって、調製することができる。例えば、乳化重合は、過硫酸アンモニウム、及びメタ重亜硫酸ソーダの存在下で実施することができる。乳化重合後に、必要に応じて、アンモニア水等の塩基性化合物を加えて樹脂の酸価を調整することができる。
【0037】
一実施形態において、水性(メタ)アクリル樹脂は、水系溶剤への溶解性又は分散性を向上させることを目的として中和されてもよい。例えば、樹脂の合成時にカルボキシル基などの酸基を導入した後、その一部又は全てを中和して親水性を高めることができる。カルボキシル基の中和は、トリエチルアミン等のアミン類、又はその他の塩基性化合物を使用して実施することができる。
【0038】
水性アクリル樹脂エマルジョン(A1)は、市販品を使用することができ、例えば、BASF社製ジョンクリルPDX-7538、ジョンクリルPDX-7667、ジョンクリルPDX-7700等が挙げられる。また、水性アクリル樹脂エマルジョン(A2)も、市販品を使用することができ、例えば、BASF社製ジョンクリル537E、ジョンクリルPDX‐7775、ジョンクリルPDX‐7789等が挙げられる。
【0039】
<沸点105℃以上の高沸点溶媒>
本発明において、水性オーバープリントニスは高沸点溶媒を含む。表面保護層は前記オーバープリントニスを塗工、乾燥することで形成することができるが、乾燥時に高沸点溶媒の一部は表面保護層中に残留し、表面保護層の造膜性を向上させる。
高沸点溶媒の沸点は105℃以上であり、140~260℃であることが好ましく、180~250℃であることがより好ましく、220~240℃であることが更に好ましい。上記範囲である場合、表面保護層の造膜性が良好となり、水性オーバープリントニスのレベリング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性が良好となる。
【0040】
高沸点溶媒としては、エチレングリコール(沸点197℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、ブチルセルソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点168℃))、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点193℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)、トリエチレングリコール(沸点177℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点149℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)、ジプロピレングリコール(沸点230℃)、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点189℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点210℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)等からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
水性オーバープリントニス中の高沸点溶媒の含有量は、水性オーバープリントニス100質量%中、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることが更に好ましく、1.5~3.5質量%であることが特に好ましい。上記範囲の場合、表面保護層の造膜性が良好となり、レベリング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性が良好となる。また、水性オーバープリントニス中の水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分と高沸点溶媒との比率は、8:2~9.9:0.1であることが好ましく、9:1~9.9:0.1であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。
【0042】
<リン酸エステル系化合物>
水性オーバープリントニスは、リン酸エステル系化合物を含む。リン酸エステル系化合物として、下記構造式で表されるモノエステル、ジエステル及び微量のトリエステル等を使用することができる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが好ましい。
【0043】
【化1】
【0044】
上記構造式において、nは、1以上の整数であり、好ましくは1~10であってよい。リン酸エステル系化合物として使用できる上記混合物は、市販品として入手することもできる。例えば、東邦化学社製フォスファノールRA-600、フォスファノールRD‐720、フォスファノールML-220が挙げられる。
【0045】
上記実施形態の水性オーバープリントニスにおいて、リン酸エステル系化合物の含有量は、水性オーバープリントニスの固形分100質量%を基準として、0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましく、0.2~2質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、及び耐水摩擦性が良好となる。また、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分とリン酸エステル系化合物の固形分との比率は、9:1~9.9:0.1であることが好ましく、9.5:0.5~9.9:0.1であることがより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。更にまた、高沸点溶媒とリン酸エステル系化合物の固形分との比率は、5:5~9.9:0.1であることが好ましく、7:3~9:1であることが好ましい。上記範囲である場合、レベリング性及び耐水摩擦性が向上する。
【0046】
<水性オーバープリントニスに含まれる添加剤>
上記実施形態の水性オーバープリントニスは、従来から公知の各種添加剤をさらに含んでもよい。例えば、オーバーコート剤の製造において、必要に応じて、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート架橋剤、トラッピング剤、及びブロッキング防止剤等の添加剤、上記以外のワックス、及びシランカップリング剤等を使用することができる。
【0047】
<ワックス>
水性オーバープリントニスは、ワックスを含むことが好ましい。ワックスとして、例えば、アマイド系ワックス、炭化水素系ワックス(B)等が挙げられ、中でも炭化水素系ワックス(B)を含むことがより好ましい。また、炭化水素系ワックス(B)は、ポリエチレンワックスであることが好ましい。
炭化水素系ワックス(B)は、コールターカウンター法で測定した平均粒子径が1.5μm以上の炭化水素系ワックス(B1)及び/又は平均粒子径が1.5μm未満の炭化水素系ワックス(B2)を含むことが好ましく、平均粒子径が1.5μm以上の炭化水素系ワックス(B1)及び平均粒子径が1.5μm未満の炭化水素系ワックス(B2)を含むことがより好ましい。炭化水素系ワックス(B1)の平均粒子径は、1.5~10μmであることが好ましく、2~5μmであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。また、炭化水素系ワックス(B2)の平均粒子径は、0.5~1.4μmであることが好ましく、0.8~1.2μmであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。炭化水素系ワックス(B)のJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)は、1以上であることが好ましく、5~14であることがより好ましく、8~12であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。炭化水素系ワックス(B)のJISK7112(B法)に規定された23℃における密度は、880~990kg/mであることが好ましく、900~940kg/mであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。炭化水素系ワックス(B)のDSC測定における融点は、90~150℃であることが好ましく、100~125℃であることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。なお、炭化水素系ワックス(B)の融点は、DSC昇温曲線における吸熱ピークのピークトップ(極小値)の融点を表す。
【0048】
上記実施形態の水性オーバープリントニスにおいて、炭化水素系ワックス(B)の含有量は、水性オーバープリントニスの全固形分を基準として、好ましくは0.05~10質量%であってよい。上記含有量は、より好ましくは0.1~7質量%であってよく、さらに好ましくは0.2~5質量%であってよい。上記範囲である場合、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が向上する。
【0049】
<沸点が105℃未満の低沸点溶媒>
水性オーバープリントニスは、沸点が105℃未満の低沸点溶媒を含むことが好ましい。低沸点溶媒の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、親水性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、アルコール系有機溶剤等を含有させることができる。低沸点溶媒の含有量は、水性オーバープリントニス全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
ここで、本発明において、主成分が水であるとは、低沸点溶媒中、水の含有量が最も多いことをいう。また、親水性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0050】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、tert-ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
一実施形態において、水と、親水性有機溶剤との重量比率は、90:10~60:40であることが好ましい。
【0051】
<界面活性剤>
水性オーバープリントニスは、レベリング性及び耐アルコール性向上の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤として、例えば、アセチレン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコールアルコキシレート系界面活性剤等が挙げられるが、中でも、アセチレン系界面活性剤が好ましい。
【0052】
<アセチレン系界面活性剤>
アセチレン系界面活性剤はアセチレン基を持つ非イオン性化合物である。アセチレン系界面活性剤は、エチレンオキサイド付加物であることがさらに好ましい。アセチレングリコール系化合物の市販品としては日信化学工業社製オルフィンE1010、オルフィンE1020、エアープロダクツアンドケミカルズ社製サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等が挙げられる。
【0053】
アセチレン系界面活性剤は、HLB値が1~17の範囲であることが好ましく、3~10の範囲であることがより好ましく、4~8の範囲であることが更に好ましい。上記範囲である場合、レベリング性及び耐アルコール性が向上する。
【0054】
水性オーバープリントニス中の界面活性剤の含有量は、水性オーバープリントニス100質量%中に0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性及び耐アルコール性が向上する。
また、水性オーバープリントニスにおいて、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分と界面活性剤の固形分との比率は、7.2:1~72:1であることが好ましく、12:1~36:1であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性及び耐アルコール性が向上する。
【0055】
<水性オーバープリントニスの製造方法>
水性オーバープリントニスは、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を溶剤に溶解又は分散させた樹脂溶液、溶剤、添加剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。オーバープリントニスの取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに水性媒体を適宜追加することもできる。
<表面保護層の形成>
表面保護層は、例えば、ポリオレフィン基材上、又は後述の印刷層上に、水性オーバープリントニスを用いて印刷した後、溶媒を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式等の公知の印刷方法が使用でき、グラビア印刷が好ましい。例えば、水性オーバープリントニスがグラビア印刷やフレキソ印刷に適した粘度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって水性媒体を除去することで表面保護層を形成することができる。
【0056】
(グラビア印刷)
《グラビア版》
グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーによって各色の凹部を形成する。彫刻とレーザーの使用に制限はなく、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
【0057】
《グラビア印刷機》
グラビア印刷機においては、一つの印刷ユニットが、上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキ及び絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0058】
<水性インキ>
本発明の水性インキは、水性アクリル樹脂エマルジョン(C)及び/又は水性ウレタン樹脂を含む。水性アクリル樹脂エマルジョン(C)を含む場合、更に、水溶性アクリル樹脂(D)を含むことが好ましい。
【0059】
<水性アクリル樹脂エマルジョン(C)>
水性アクリル樹脂エマルジョン(C)の酸価は、5~80mgKOH/gであることが好ましく、20~60mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が向上する。水性アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度は、-20~60℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
水性アクリル樹脂エマルジョン(C)の重量平均分子量は、10000~600000であることが好ましく、50000~500000であることがより好ましく、100000~400000であることが更に好ましく、200000~300000であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性、耐水摩擦性が向上する。水性アクリル樹脂エマルジョン(C)のエマルジョン粒子径は、10~300nmであることが好ましく、60~100nmであることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
【0060】
水性アクリル樹脂エマルジョン(C)を構成するモノマーは、水性オーバープリントニスで説明した<水性アクリル樹脂エマルジョン(A)>の態様を援用することができる。
【0061】
水性アクリル樹脂エマルジョン(C)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 HE-1335、X-436、QE-1042等を使用することができる。
【0062】
<水溶性アクリル樹脂(D)>
水溶性アクリル樹脂(D)の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、20~150mgKOH/gであることがより好ましく、更に40~100mgKOH/gであることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が向上する。水溶性アクリル樹脂(D)のガラス転移温度は、40~130℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。水溶性アクリル樹脂(D)の中和剤は、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等が好ましく、アンモニアがより好ましい。上記中和剤を用いた場合、レベリング性及び耐水摩擦性が向上する。水溶性アクリル樹脂(D)の重量平均分子量は、1500~50000であることが好ましく、1500~30000であることがより好ましく、1500~8000であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
【0063】
水溶性アクリル樹脂(D)を構成するモノマーは、水性オーバープリントニスで説明した<水性アクリル樹脂エマルジョン(A)>の態様を援用することができる。
【0064】
本発明に用いられる水溶性アクリル樹脂(D)は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製「Joncryl 67、Joncryl 678、Joncryl 680、Joncryl 819」などがある。
【0065】
水性アクリル樹脂エマルジョン(C)と水溶性アクリル樹脂(D)との固形分比率は、95:5~60:40であることが好ましく、90:10~80:20であることがより好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が向上する。
【0066】
<水性ウレタン樹脂>
本発明で用いられる水性ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(a)、ポリマーポリオール(b)、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、有機ジアミン(d)と反応させて得られる。
【0067】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いるポリイソシアネート(a)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4'-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。反応性等の面から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0068】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いるポリマーポリオール(b)の数平均分子量は3000以下、すなわち、ポリマーポリオール(b)として用いる各々の数平均分子量がそれぞれ3000以下である。上記範囲である場合、耐水性やポリオレフィン基材への密着性が向上する。数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。
【0069】
前記ポリマーポリオール(b)としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールが挙げられ、中でもポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0070】
前記ポリマーポリオール(b)としては、ポリエステルポリオールがより好ましい。ポリマーポリオール(b)が、ポリエステルポリオールである場合、レベリング性及び耐アルコール性が向上する。
【0071】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、および2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物との脱水縮合体または重合体であり、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールなどの分岐構造を有する低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合体または重合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。ポリエステルポリオールは、分岐構造を有することが好ましく、上記分岐構造を有する低分子ポリオール類を用いることで、ポリエステルポリオールに分岐構造を導入することができる。
【0072】
ポリマーポリオール(b)がポリエステルポリオールを含む場合のポリエステルポリオールの含有量は、ポリマーポリオール100質量%中、30~99質量%であることが好ましく、50~97質量%であることがより好ましく、80~95質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、ポリオレフィン基材への密着性や耐摩擦性が向上する。
【0073】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、製造方法やポリカーボネートポリオールを構成するジオール種により限定されるものではないが、アルキレングリコールからなるジオールとカーボネート化合物とのエステル交換反応による重縮合物が好適に挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは脂環族および/または脂肪族のポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0074】
上記ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが好適であり、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。3-メチル-1,5-ペンタンジオールその他の分岐構造を有するジオール構造を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。当該カーボネート化合物は、特に限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0075】
ポリマーポリオール(b)がポリカーボネートポリオールを含む場合のポリカーボネートポリオールの含有量は、ポリマーポリオール100質量%中、30~99質量%であることが好ましく、50~97質量%であることがより好ましく、80~95質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、ポリオレフィン基材への密着性や耐摩擦性が向上する。
【0076】
本発明の水性ウレタン樹脂における活性水素含有基とは、イソシアネート基と反応するヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素を有する基をいう。
【0077】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いる、分子内にカルボキシル基および少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)としては、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸;グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いる有機ジアミン(d)は、50重量%~100重量%がヒドロキシル基を有する有機ジアミンである。ヒドロキシル基を有する有機ジアミンが50重量%未満であると、水-アルコールへの再溶解性が劣る。
【0079】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いるヒドロキシル基を有する有機ジアミンは、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
本発明の水性ウレタン樹脂で用いる有機ジアミンでヒドロキシル基を有さないものとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'- ジアミン、さらにダイマー酸の
カルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等など各種公知ものが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
本発明で用いる水性ウレタン樹脂の酸価は、25~65mgKOH/gであることが好ましく、25~45mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐水性やポリオレフィン基材への密着性が向上する。水性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、5000~100000であることが好ましく、10000~70000であることがより好ましく。20000~40000であることが更に好ましい。上記範囲である場合、摩擦性及び耐水摩擦性が向上する。
【0082】
本発明で用いる水性ウレタン樹脂は、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等により得ることができる。本発明においては有機溶剤を使用し粘度を低下させ、合成反応を均一にスムーズに行うことができるアセトン法を用いた。
【0083】
ポリイソシアネート(a)とポリマーポリオール(b)と分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る(以下、プレポリマー反応)には、50~100℃で10分~10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ-ク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0084】
また、プレポリマー反応には、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、 2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としてはテトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。これらの触媒はポリマーポリオールに対して0.001~1モル%の範囲で使用される。
【0085】
ウレタンプレポリマーと有機ジアミンを反応させる際(以下、鎖延長反応)は、30~80℃で10分~10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ-ク、滴定によるアミン価測定等により判断される。
【0086】
鎖延長反応には、反応停止剤を使用してもよい。反応停止剤としては、例えばジ-n-ブチルアミンなどのジアルキルアミン類などの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、等の水酸基を有するアミン類も用いることができる。更に、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸類も挙げられる。
【0087】
本発明で用いる水性ウレタン樹脂に組み込まれたカルボキシル基を中和する塩基性化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられるが、印刷物の耐水性、残留臭気等の点から、水溶性であり、かつ熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、特にアンモニアが好ましい。
【0088】
イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられるが、ポリウレタンの水性化は通常減圧蒸留(脱溶剤)により除去されるため、また、脱溶剤しないで使用する場合でも乾燥速度を早めるため、水より低沸点の溶剤の使用が好ましい。脱溶剤する場合には、例えば反応溶液に水及び中和剤である塩基性化合物を添加した後、温度を上げて常圧下、又は減圧下で溶剤を必要量溜去する方法で行うことができる。水性ウレタン樹脂は、エマルジョン樹脂の形態又は水溶性樹脂の形態のいずれであってもよい。
【0089】
<着色剤>
印刷層は、着色剤を含む。前記着色剤の含有量は、印刷層全質量中、1~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。着色剤としては顔料が好ましく、当該顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。
【0090】
(有機顔料)
有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブラック7であり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
(無機顔料)
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウム、シリカ、カオリン、クレー、タルク、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0092】
<水性インキに含まれる添加剤>
本発明の印刷層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤が挙げられる。
具体的には、耐水摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂、酢酸ビニル樹脂、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、グリコール系化合物等の造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0093】
<界面活性剤>
水性インキは、レベリング性及び耐アルコール性向上の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤として、上述の<水性オーバープリントニス>で説明した<界面活性剤>の態様を援用することができる。
【0094】
水性インキ中の界面活性剤の含有量は、水性インキ100質量%中に0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、レベリング性及び耐アルコール性が向上する。
また、水性インキにおいて、水性インキにおける水性アクリル樹脂及び水性ウレタン樹脂の合計量と、界面活性剤の固形分との比率は、2.5:1~65:1であることが好ましく、3.5:1~35:1であることがより好ましく、7.5:1~20:1であることが更に好ましい。
【0095】
<水性インキに含まれる溶剤>
水性インキに含まれる溶剤は、水性オーバープリントニスで説明した<沸点が105℃
以上の高沸点溶媒>及び<沸点が105℃未満の低沸点溶媒>の態様を援用することができ
る。中でも、水を使用することが好ましく、水性インキに含まれる溶剤中、水の比率は、60~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。
【0096】
<水性インキの製造方法> 印刷インキは、例えば、顔料を樹脂等により分散機を用いて水性媒体中に分散させ、得られた顔料分散体に樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から50mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0097】
<印刷層の形成方法>
印刷層は、例えば、ポリオレフィン基材上に、水性インキを用いて印刷した後、溶媒を除去することによって形成することができる。水性インキは、印刷時に、必要に応じて水、水に可溶な有機溶媒からなる希釈溶剤で適宜希釈し、各種基材に印刷することができる。また、利用可能な希釈溶剤は水とアルコール系との混合溶剤が好ましく、重量比率は、インキの貯蔵安定性と乾燥の観点から、好ましくは、50:50~90:10が望ましい。
印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、その他の印刷方法を適用することができ、グラビア印刷が好ましい。
【0098】
<積層体>
上記実施形態の積層体は、ポリオレフィン基材の上に、水性インキと、水性オーバープリントニスとを順に印刷して構成される。印刷方法としては、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷方法、その他の印刷方法を適用することができる。積層体は、包装材料用として好適である。
【0099】
<印刷基材>
印刷基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、中質紙、上質紙、ボール紙、含侵紙などの紙基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材などのフィルム基材、およびこれらの複合材料からなるフィルム基材が挙げられる。プラスチック基材は、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの金属あるいは金属酸化物が蒸着されていても良く、更に蒸着面をポリビニルアルコールなどの塗料でコーティング処理を施されていてもよい。一般的に、印刷される基材表面はコロナ処理などの表面処理が施されている場合が多い。さらに基材は、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどのプラスチックフィルムを加工が施されたフィルムも使用する事が可能である。
また、基材は、単層でもよいし、2つ以上の基材が積層された積層体(基材層)であってもよい。基材層を構成する基材は、同じでも異なっていてもよい。
中でもポリオレフィン基材又は紙基材であることが好ましく、ポリオレフィン基材であることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることが更に好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。当該ポリオレフィン基材はコロナ放電処理がされていることが好ましい。
【実施例0100】
以下、実施例に沿って本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。なお、本発明における「部」および「%」の記載は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
【0101】
<水酸基価>
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
<酸価>
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0102】
<アミン価>
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。試料を0.5~2g精秤し(試料固形分:Sg)、精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式1)によりアミン価を求めた。
(式1)
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0103】
<質量平均分子量>
質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0104】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の
条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースラインシフトの中点(変曲点)をガラス転移温度とした。
【0105】
<各層における塗布量測定>
<印刷層>
積層体における基材/印刷層の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、基材から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの質量を測定し、以下(式2)でアンカーコート層の単位面積当たりの質量を算出した。なお、基材には、厚み30μmのポリエチレンフィルムを使用した。
(式2)
印刷層の単位面積当たりの質量(g/m)=(基材/印刷層の5サンプルの平均質量)-(基材の5サンプルの平均質量)
【0106】
<表面保護層>
積層体における基材/印刷層/表面保護層の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、基材/印刷層の構成部分から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの質量を測定し、以下(式3)で表面保護層の単位面積当たりの質量を算出した。なお、基材には、厚み30μmのポリエチレンフィルムを使用した。
(式3)
表面保護層の単位面積当たりの質量(g/m)=(基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均質量)-(基材/印刷層の5サンプルの平均質量)
【0107】
<合成例1>水性ウレタン樹脂PU1の合成
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000のポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール178.2部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール18.2部、ジメチロールブタン酸33.4部およびイソホロンジイソシアネート116.5部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン16.3部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液646.3部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.76部および脱イオン水500部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分40%、重量平均分子量22000の水性ウレタン樹脂PU1を得た。
【0108】
<合成例2>水性ウレタン樹脂PU2の合成
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、1,6-ヘキサンジオール由来単位からなる数平均分子量2000のポリカーボネートジオール 235.6部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール 10.7部、2,2-ジメチロールプロパン酸 30.0部、及びメチルエチルケトン 250部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート 91.5部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、その後30℃まで冷却してからイソプロパノール 100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマーに対し、2-アミノエチルエタノールアミン 2.7部及びイソプロパノール 150部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水 13.6部及びイオン交換水 851部を上記溶剤型ウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらにメチルエチルケトン及びイソプロパノールを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行い、酸価35mgKOH/g、水酸基価4mgKOH/g、重量平均分子量35,000である、固形分40%の水性ウレタン樹脂溶液PU2を得た。
【0109】
<製造例1>水性オーバープリントニスV1の製造
水14.49部、アクリルエマルジョン1(酸価62mgKOH/g、ガラス転移温度:75℃、固形分45%) 60部、アクリルエマルジョン4(酸価52mgKOH/g、ガラス転移温度:50℃、固形分45%) 20部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部、ポリエチレンワックス1(粒子径(コールターカウンター法):1μm、硬度(針入度):10、固形分40%) 1.5部、ポリエチレンワックス2(粒子径(コールターカウンター法):3μm、硬度(針入度):10、固形分40%) 1.5部、リン酸エステル化合物(東邦化学工業株式会社製 フォスファノールRA-600、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、固形分100%) 0.5部、消泡剤(EVONIC社製 TEGO(登録商標) Foamex1488、固形分100%)0.01部となるように添加、撹拌混合して水性オーバープリントニスV1を得た。
【0110】
<製造例2~16、比較製造例1~4>水性オーバープリントニスV2~19の製造
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法で、水性オーバープリントニスV2~20を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・アクリルエマルジョン2(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度:110℃、固形分45%)
・アクリルエマルジョン3(酸価165mgKOH/g、ガラス転移温度:137℃、固形分45%)
・アクリルエマルジョン5(酸価55mgKOH/g、ガラス転移温度:40℃、固形分45%)
・アクリルエマルジョン6(酸価51mgKOH/g、ガラス転移温度:30℃、固形分45%)
・ウレタンエマルジョン1(大成ファインケミカル株式会社製 WBR-016U、固形分45%)
・水溶性アクリル樹脂1(星光PMC製 YL-1098、酸価240mgKOH/g、ガラス転移温度:126℃、固形分45%)
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)
・PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)
・DEG:ジエチレングリコール(沸点245℃)
・IPA:イソプロピルアルコール(沸点82.5℃)
【0111】
【表1】

【0112】
<製造例26~30>オーバープリントニスV21~25の製造
表1-2に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法で、水性オーバープリントニスV21~25を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・アセチレン系界面活性剤(固形分100%、HLB値=6)
・アルコールアルコキシレート系界面活性剤(固形分100%、HLB値=8)
・シリコン系界面活性剤(固形分100%、HLB値=14)
【0113】
【表1-2】

【0114】
<製造例17>水性インキW1の製造
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4、固形分100%) 10部、水14.5部、水性アクリル樹脂エマルジョン7 50部(酸価35mgKOH/g、ガラス転移温度:25℃、固形分40%)、水溶性アクリル樹脂1 10部(酸価:50mgKOH/g、ガラス転移温度:110℃、固形分40%)、イソプロピルアルコール15部、ポリエチレンワックス2(粒子径(コールターカウンター法):3μm、硬度(針入度):10、固形分40%) 0.5部、シリコーン系消泡剤(固形分100%) 0.01部を混合し、ビーズミルで15分間にわたって分散処理することによって、印刷インキW1を得た。
【0115】
<製造例18~25、比較製造例5及び6>水性インキW2~W11の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例17と同様の方法で、水性インキW2~11を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・水溶性アクリル樹脂2(酸価80mgKOH/g、ガラス転移温度:100℃、固形分40%)
・水溶性アクリル樹脂3(酸価215mgKOH/g、ガラス転移温度:85℃、固形分40%)
・水溶性アクリル樹脂4(酸価41mgKOH/g、ガラス転移温度:90℃、固形分40%)
・水性スチレンマレイン酸樹脂(星光PMC社製、PL-1231)
【0116】
【表2】

【0117】
<製造例31~36>水性インキW12~17の製造
表2-2に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例17と同様の方法で、水性インキW12~17を得た。
【0118】
【表2-2】

【0119】
(積層体の製造)
<実施例1>積層体P1の製造
水性インキW1を、希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=30/70)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈し、水性オーバープリントニスV1を、希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール=30/70)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、厚み30μmのポリエチレンフィルム(PE)のコロナ処理された面上の全面に対し、175 線/ インチヘリオ彫刻のグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、希釈した水性インキW1を印刷して印刷層を形成し、印刷層上対し、版の片側半分に非画像部を有する175 線/ インチヘリオ彫刻のグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、希釈したオーバープリントニスV1を印刷して表面保護層を形成し、基材/印刷層/表面保護層の構成である積層体P1を得た。積層体P1の印刷層の塗布量は1g/m、表面保護層の塗布量は0.5g/mであった。
【0120】
<実施例2~28、比較例1~6>積層体P1~34の製造
表3及び4に記載した原料および印刷方法に変更をした以外は、実施例1と同様の方法で、積層体P2~34を得た。
【0121】
<実施例29~40>積層体P35~48の製造
表5に記載した原料および印刷方法に変更をした以外は、実施例1と同様の方法で、積層体P35~48を得た。
【0122】
<特性評価>
上記実施例および比較例において得た積層体について、以下に記載の評価を行った。評価結果をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0123】
<レベリング性>
上記実施例および比較例で作製した積層体の表面保護層の泳ぎ、塗布ムラの程度を目視にて評価した。なお、実用レベルはAA~Cである。
(評価基準)
AA:泳ぎ、塗布ムラが認められず、かつ、光沢感がある。
A:泳ぎ、塗布ムラが認められないもの、又は、ほとんど泳ぎ、塗布ムラが認められないもの
B:僅かに泳ぎ、塗布ムラが認められるも
C:やや泳ぎ、塗布ムラが認められるもの
D:泳ぎ、塗布ムラが著しいもの
【0124】
<耐摩擦性>
上記実施例および比較例で作製した積層体について、テスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験器を用いて評価した。試験条件は、試験片の幅:20mm、試験片の長さ:300mm、荷重:500g、往復回数:100回とし、当紙として上質紙を用いた。なお、実用レベルはA~Cである。
(評価基準)
A:擦った上質紙に、インキが付着しない、又はインキがほとんど付着しない
B:擦った上質紙に、インキが僅かに付着
C:擦った上質紙に、インキがやや付着
D:擦った上質紙に、インキが全面に付着
【0125】
<耐水摩擦性>
上記実施例および比較例で作製した積層体について、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて耐水摩擦性を評価した。試験条件は、試験片の幅:20mm、試験片の長さ:300mm、荷重:200g、往復回数:100回とし、当紙として綿布に水を5滴滴下したものを用いた。なお、実用レベルはA~Cである。
本発明が、アイス等の低温食品の包装材に利用された場合、結露により印刷表面に水滴が発生し、かつ、運送時等に他の包装材と接触することが想定される。水滴が発生した状態で、接触回数が増えるほど印刷表面の取られが発生しやすくなるため、高い耐水摩擦性が求められる。そのため、本発明における耐水摩擦性試験は、従来にない往復回数で実施した。
(評価基準)
A:擦った綿布に、インキが付着しない、又はインキがほとんど付着しない
B:擦った綿布に、インキが僅かに付着
C:擦った綿布に、インキがやや付着
D:擦った綿布に、インキが全面に付着
【0126】
<耐アルコール性>
上記実施例および比較例で作製した積層体の耐アルコール性を評価した。試験条件は、40wt%エタノール水溶液を滲みこませた綿棒にて表面保護層側から積層体を擦り、インキが取られ始める回数を測定した。1往復擦った場合を1回とした。なお、実用レベルはAA~Cである。
(評価基準)
AA:50回以上
A:30回~49回
B:20回~29回
C:10回~19回
D:10回未満
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
【表5】

【0130】
上記結果から、比較例1は、水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(B)を含まず、水溶性アクリル樹脂を含むため、耐水摩擦性及び耐アルコール性が不良であった。比較例2は、水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)を含まず、水性ウレタン樹脂エマルジョンを含むため、耐摩擦性が不良であった。比較例3は、水性オーバープリントニスが、リン酸エステル化合物を含まないため、レベリング性が不良であった。比較例4は、水性オーバープリントニスが、高沸点溶媒を含まないため、レベリング性及び耐摩擦性が不良であった。比較例5は、水性インキが、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)と水性ウレタン樹脂のどちらも含まないため、耐摩擦性が不良であった。比較例6は、水性アクリル樹脂エマルジョン(A)を含まず、水溶性アクリル樹脂を含むため、レベリング性、耐水摩擦性、及び耐アルコール性が不良であった。
一方実施例は、水性オーバープリントニスが、水性アクリル樹脂エマルジョン(B)、高沸点溶媒、及びリン酸エステル化合物を含むため、レベリング性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐アルコール性が良好であった。