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特開2024-166056ハゼ締め装置、およびハゼ締め装置の自動動停止装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166056
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ハゼ締め装置、およびハゼ締め装置の自動動停止装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/04 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E04D15/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023223916
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023073821
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523148975
【氏名又は名称】日高 正志
(72)【発明者】
【氏名】日高 正志
(57)【要約】
【課題】 ハゼ折鋼板の表面損傷および作業効率の低下の原因となるハゼ締め装置の駆動カシメローラのスリップを防止する。
【解決手段】 複数個の駆動カシメローラR2…を並列に配置し、これらの駆動カシメローラR2…間に動力伝達ベルトB2を掛けて連動させるとともに、ハゼ締め作業に際しては、動力伝達ベルトB2を外すことなく、駆動カシメローラR2と従動カシメローラR3との間に2枚のハゼ折鋼板M,Mのカシメ連結部分と共に動力伝達ベルトB2を挟み込んでカシメ作業を実施する。動力伝達ベルトB2がハゼ折鋼板M,Mの保護部材、駆動カシメローラR2の摩擦増大部材として機能するとともに、ハゼ締め装置の安定な走行状態を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインベース板と、該メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備え、
前記メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合において加工対象となる山頂部分の稜線位置におけるハゼ締めライン上を走行する複数個の走行ローラと、前記ハゼ締めラインの両側に形成される各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラと、前記ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動カシメローラと、該駆動カシメローラを駆動する駆動機構を搭載するとともに、
前記サブベース板は、前記ハゼ締めラインを挟んで前記複数個の駆動カシメローラに対峙する位置に水平姿勢で配置される従動カシメローラを搭載し、
前記メインベース板における複数個の駆動カシメローラは、前記駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動されるとともに、前記サブベース板における従動カシメローラは、前記サブベース板の往復スライド動作によって前記駆動カシメローラに対して離接動作をし、前記複数個の駆動カシメローラと従動カシメローラとは、前記動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むことを特徴とするハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【請求項2】
前記駆動カシメローラの駆動機構は、2次電池を電源とし、ハゼ折鋼板のハゼ締め作業と異なる用途に供することを目的として市販されている電動回転工具を組み付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【請求項3】
下向きに取り付けられた電動回転工具のグリップに装着されたトリガを押し上げる作動子を備える水平アームと、該水平アームの一方の端部、または両方の端部にリンクアームを介して連結され、ハゼ折鋼板のハゼ締めライン上を走行する重錘ローラとを備え、
該重錘ローラは、ハゼ締めラインから脱落する動作によって前記リンクアームを介して前記水平アームを引き付けて水平アームに取り付けられた前記作動子を電動回転工具のトリガから外すことを特徴とするハゼ締め装置の自動停止装置。
【請求項4】
前記作動子を電動回転工具のトリガを押すことができない不作動位置に保持する手動のロック機構を備えることを特徴とする請求項3に記載のハゼ締め装置の自動停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の車庫や、大小工場等の屋根葺き部材として多用されるハゼ折鋼板のハゼ締め装置、特に、所定の態様で仮に組み合わされるハゼ折鋼板の連結部分に沿って電動で自走しながら連結部分をカシメて締付ける動作、すなわちハゼ締めを実行するハゼ締め装置、およびハゼ締め装置の自動停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハゼ折鋼板の提供初期におけるハゼ折鋼板のカシメ連結作業、つまりハゼ締め作業は、業界でガッチャと呼ばれている大型の刈り込み挟み様の手動工具を用い、多点をカシメて実施されていたが、今日では、ハゼ折鋼板の連結部分に沿って電動で自走しながら連続的にカシメ連結するハゼ締め装置が提供されている。
【0003】
連結作業のために横並びに配置した2枚のハゼ折鋼板のカシメ連結部分は山形の山頂部分である。山頂部分の断面形状は、ハゼ折鋼板の種類や規模等によってやや異なる態様のものもあるが、基本的には、雨切り構造を実現するという共通の目的を有するため、ほぼ共通した構造である。
【0004】
従来提供されている自走方式のハゼ締め装置は、横並びに配置されて山形を形成するように仮組みされた2枚のハゼ折鋼板の山形部分に跨る姿勢で走行しながら山頂部分のカシメ動作を実行するものである。ハゼ締め装置には金属製の駆動カシメローラと従動カシメローラとが組み込まれている。他方、2枚のハゼ折鋼板の山頂部分には、互いに嵌り込む形状に予め形成されている。ハゼ締め装置は、走行しながら駆動カシメローラと従動カシメローラとの間に山頂部分を側方から挟み込んで変形させてカシメ作業を実行するものである。
【0005】
なお、自走方式といっても作業員が不要という趣旨ではなく、ハゼ締め装置の運転開始および停止、その他動作状態の監視等のため作業員の随行は必要条件である。また、ハゼ締め装置における自走動作は、走行ローラを駆動して行うものではなく、2個のカシメローラがカシメ部分を挟み込んで駆動されることによって、反作用的に走行するものである。これによって、走行用の駆動機構が省略されている。ハゼ締め装置の電源には商用電源が用いられる他、バッテリ電源を有する市販のドリル装置等を駆動源として組み込んだユニークなのも知られている。
【0006】
上記のような従来のハゼ締め装置には、幾つかの改善すべき問題点が指摘されている。
【0007】
例えば、屋根葺き部材としてのハゼ折鋼板の普及には、鋼板材料の防錆技術の進歩発展が大きく寄与しているのであるが、ハゼ締め装置を用いた作業の場合においては、錆の発生件数が多いという指摘がある。この問題は、直接的にはハゼ折鋼板の山頂部分を強力に挟み込んだ状態の金属製の駆動カシメローラが不特定箇所で高頻度で空転することによりハゼ折鋼板表面の防錆被膜が失われることに起因する。
【0008】
この問題を検討すると、駆動カシメローラの空転は、ハゼ締め装置の蛇行に起因することが判明するのであるが、この問題は、それでは何故蛇行するのかという問題に帰着する。仮組みされた2枚のハゼ折鋼板の山頂部分は、互いに嵌り合う形状に形成されてはいるが、その部分の形状は非対象であって大きく異なっている。そして、駆動カシメローラは作業負荷の大きい側に配置され、従動カシメローラは、作業負荷の小さい側に配置されている。
【0009】
ハゼ締め装置の蛇行が駆動カシメローラと従動カシメローラとの作業負荷の大小関係によって生じるのであれば、両者を機械的に連動させれば問題を解決することができるように思われるが、事はそんな簡単な問題ではない。なぜなら、駆動カシメローラが負担する負荷は、ハゼ締め装置の進行方向についての負荷であるのに対して、従動カシメローラが負担する負荷は、駆動カシメローラに圧迫されて従動カシメローラ側に変位しようとする山頂部分を受け止める方向に付いての負荷である。すなわち、ハゼ締め装置の進行方向についての従動カシメローラの負担する負荷は、事実上ゼロであり、これがハゼ締め装置蛇行の原因なのである。
【0010】
従来のハゼ締め装置について指摘される他の問題点としては、特にバッテリ電源を有する市販のドリル装置等を駆動源として組み込んだハゼ締め装置について、ハゼ折鋼板の末端におけるハゼ締め装置の停止操作に関する問題がある。
【0011】
この問題は、充電可能なバッテリ電源を有する市販のドリル装置等を駆動源として組み込んだハゼ締め装置について問題になる。商用電源を用いる装置の場合は、ハゼ締め装置は電源コードを引いて自走するのであるから、手元の電源スイッチを切って簡単に装置を停止させることができる。
【0012】
屋根葺き材としてハゼ折鋼板を用いる屋根は、一般的に、緩い勾配の片流れの屋根として構築される。ハゼ締め装置は、通常、屋根の棟側から軒先側に向けてハゼ折鋼板上にセットされる。随行作業員によって電源が投入され、ハゼ締め装置はハゼ締め作業を実行しながら軒先側に向かって走行する。このまま放置すればハゼ締め装置は軒先から転落することとなる。ハゼ締め作業が電動化されるとは言え、作業員は一刻も油断することなく装置停止操作のタイミングに気を配る必要がある。すなわち、これが従来指摘されている装置停止の問題点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術を考慮し、新たな問題点を発生させることなく従来のハゼ締め装置から提出された2つの問題点を解消しようとするものである。そして、問題解決の方向性、条件等を検討した。
【0014】
駆動カシメローラの空転問題については、これがハゼ締め装置の蛇行に起因し、さらに装置の蛇行は、いずれもほぼ円板形である駆動カシメローラと従動カシメローラの間に所定の厚みを有するハゼ折鋼板の山頂部分を挟み込んで駆動カシメローラのみ強制駆動すれば、装置全体が傾いて蛇行する結果となる事は理の当然である。
【0015】
この解決策としては、少なくとも駆動カシメローラが円板形ではなく、所定長さの板状体として機能するような工夫をすべきである。また、空転問題については、ハゼ締め装置の蛇行のみならず、駆動カシメローラとハゼ折鋼板の山頂部分との間に負荷に応じた摩擦力が働かないことにも原因するので、駆動カシメローラの表面の摩擦力を増大させる工夫が必要である。さらに、ハゼ折鋼板の防錆被膜の剥離の問題については、駆動カシメローラとハゼ折鋼板の山頂部分との間に非金属を介在させるような工夫が必要であるとの結論に至った。
【0016】
従来指摘されているハゼ締め装置の停止操作の問題に関しては、例えば、ハゼ締め装置にハゼ折鋼板の末端を検出するセンサを取り付け、センサに基づいて駆動する電磁ソレノイド等の適当なアクチュエータによって、駆動源として搭載したドリル装置等のスイッチをON-OFFすることで簡単に解決することができることのように思われるかもしれない。
【0017】
しかし本発明のハゼ締め装置は、現場作業員によって直ちに手当できない故障要素を有しないことを開発ポリシーとしているとともに、ハゼ締め作業の現場は多種多様な金属部材が混在することが通常であることを考慮すれば、電気的な手段では、センサが誤作動する恐れを払拭することができない。そこで、ハゼ折鋼板の末端の検出は、機械的に実施することが適切であるとの結論に至った。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために本発明が採用する手段を次に説明する。
【0019】
(解決手段1)
本発明のハゼ締め装置は、メインベース板と、メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備える。メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合において加工対象となる山頂部分の稜線位置におけるハゼ締めライン上を走行する複数個の走行ローラと、ハゼ締めラインの両側に形成される各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラと、ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動カシメローラと、駆動カシメローラを駆動する駆動機構を搭載される。また、サブベース板には、ハゼ締めラインを挟んで複数個の駆動カシメローラに対峙する位置に水平姿勢で配置される従動カシメローラを搭載されている。メインベース板における複数個の駆動カシメローラは、駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動されるとともに、サブベース板における従動カシメローラは、サブベース板の往復スライド動作によって駆動カシメローラに対して離接動作をし、複数個の駆動カシメローラと従動カシメローラとは、動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むことを特徴とする。
【0020】
上記解決手段1について説明する。メインベース板およびサブベース板は、ハゼ締め装置の基本的構造部材であり、他の部材の取付に供される。サブベース板は、メインベース板に対して往復スライド動作可能である。この往復スライド動作は、簡単な手動の伸縮リンク機構によって行われる。
【0021】
メインベース板には、ハゼ締め作業用の多く機能部品が取り付けられている。これらの部材は、山形に仮組みした状態のハゼ折鋼板を念頭において配置されている。山形に仮組みされたハゼ折鋼板の山頂部分の稜線位置、および、この近傍は、ハゼ締め作業の対象になる部分であり、この発明ではハゼ締めラインと総称している。
【0022】
メインベース板には、ハゼ締めライン上を走行するための3個の走行ローラが所定間隔離して直立姿勢で直列に配置されているとともに、ハゼ締めラインの両側に形成される各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラとが取り付けられている。これによって、メインベース板およびメインベース板に取り付けられたサブベース板は、山形に仮組みされたハゼ折鋼板上に走行可能に跨ることができる。
【0023】
メインベース板に取り付けられた複数個の駆動カシメローラは、
ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動カシメローラと、駆動カシメローラを駆動する駆動機構を搭載するとともに、サブベース板は、ハゼ締めラインを挟んで複数個の駆動カシメローラに対峙する位置に水平姿勢で配置される従動カシメローラを搭載し、メインベース板における複数個の駆動カシメローラは、駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動されるとともに、サブベース板における従動カシメローラは、サブベース板の往復スライド動作によって駆動カシメローラに対して離接動作をし、複数個の駆動カシメローラと従動カシメローラとは、動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むことを特徴とする。
【0024】
さらに、メインベース板には、仮想センタラインを挟む左右位置にそれぞれ1対のサイドローラが傾斜姿勢で取り付けられる。傾斜姿勢であるのは、傾斜しているハゼ折鋼板の傾斜側面に対して直立姿勢とするためである。
【0025】
ハゼ締め作業用のカシメローラには、メインベース板に搭載された駆動機構によって積極駆動される駆動カシメローラと、従動動作の従動カシメローラとの2種類がある。本ハゼ締め装置においては、駆動カシメローラは複数個使用される。複数個の駆動カシメローラは、動力伝達ベルトによって連結され、同一回転方向に駆動される。なお、この際、動力伝達ベルトの外周面は、ほぼ仮想センタライン上に位置している。ほぼ、というのは、実際にはハゼ折鋼板の厚み分離れているからである。
【0026】
他方、従動カシメローラは、仮想センタラインを挟んでいずれかの駆動カシメローラに対峙させてサブベース板に取り付けられ、サブベース板をスライド動作させることにより仮組みされたハゼ折鋼板の仮想センタライン付近を駆動カシメローラと従動カシメローラとの間に挟み込むことができる。ここで重要なことは、動力伝達ベルトと共にハゼ折鋼板を挟み込むという点である。これによりハゼ締め動作時点のハゼ折鋼板と駆動カシメローラとの接触面積を動力伝達ベルトを介して一定範囲に拡大させることができるとともに、駆動カシメローラとハゼ折鋼板間のスリップも阻止される。動力伝達ベルトには、もとよりスリップを防ぐための素材が選択されているからである。
【0027】
(解決手段2)
ハゼ締め装置におけるサイドローラは、サスペンション機構を介してメインベース板に取り付けることができる。
【0028】
ハゼ締め装置全体が極めて剛性が高く、各部の可動部分の遊びも極少である場合、走行ローラが仮想センタライン上に接地していれば、左右いずれかのサイドローラがハゼ折鋼板の傾斜側面から浮いている可能性があり、逆に、左右のサイドローラのいずれもが左右の傾斜側面に接地していれば、走行ローラが仮想センタラインから浮いている可能性がある。理論的にはこのような不安定な現象を防止する趣旨であると主張することができるが、現実には、ハゼ締め作業が完全に完了する前のハゼ折鋼板の傾斜側面のばたつきをサイドローラのサスペンション機構で無理なく抑え込む趣旨である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のハゼ締め装置は、3角形を構成するように配置された走行ローラと走行ローラの左右位置のサイドローラを備えることにより、走行ローラにハゼ締め作業の前提として山形に仮組みしたハゼ折鋼板の稜線位置を走行させるとともに、左右のサイドローラにハゼ折鋼板の左右の傾斜側面の任意の高さ位置を走行させることができるので、ハゼ折鋼板の折り曲げ角度が同一である限り、ハゼ締め装置に対するなんらの調節作業等を要することなく多様なサイズのハゼ折鋼板のハゼ締め作業簡単に適用することができるという顕著な効果を奏する。
【0030】
高摩擦部材で製造されることが通常である動力伝達ベルトを介してハゼ締め作業を実行するようにしたハゼ締め装置は、金属製の駆動カシメローラが直接接触することがなく、しかも、接触面積も増加するので駆動カシメローラのスリップが確実に防止され、ハゼ折鋼板表面の損傷も効果的に防止される。
【0031】
サスペンション機構付きのサイドローラを備えるものは、強風等によるハゼ締め作業中におけるハゼ折鋼板のばたつきを無理なく抑え込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のハゼ締め装置の動作状態を示す斜視図である。
図2】本発明のハゼ締め装置の斜視図である。
図3】本発明のハゼ締め装置の斜視図である。
図4】本発明のハゼ締め装置のメインベース板を示す斜視図である。
図5】本発明のハゼ締め装置のメインベース板の側面図である。
図6】本発明のハゼ締め装置のメインベース板の裏面図ある。
図7】本発明のハゼ締め装置のサブベース板の斜視図である。
図8】本発明のハゼ締め装置のサブベース板の側面視の断面図である。
図9】本発明のハゼ締め装置の平面図である。
図10】本発明のハゼ締め装置の側面図である。
図11】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の斜視図である。
図12】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の動作説明図である。
図13】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を引用しながら本発明のハゼ締め装置の実施の形態例を説明する。
なお、ここでは、電動工具の技術動向に鑑みて駆動機構を構成する駆動源として既製品の電動工具を利用した例を説明するが、特に図示しなくとも専用の駆動源を搭載してもよいことは自明である。
【0034】
ハゼ締め装置は、基本骨格としてメインベース板10およびサブベース板20を備える(図1図3)。メインベース板10は長方形に形成され、相向かう短辺の幅中央位置には、それぞれローラハウスが切り欠かれ、1対の走行ローラR1,R1が自由回転自在に収納されている(図1図2)。
【0035】
2個の各走行ローラR1は、同径あり、またメインベース板10の板厚みより十分に大径であり、メインベース板10の表面側と裏面側とに突出した状態である。なお、裏面側に突出した1対の走行ローラR1,R1のローラ幅中央位置には、仮想センタラインL1が設定される(図2)。仮想センタラインL1は、ハゼ締め装置の部材配置の決定、およびハゼ締め装置とハゼ折鋼板M1の位置関係を決定する上で重要であるが、それ以上の意味をもつものではない(図2図3)。
【0036】
メインベース板10は、裏面側の4箇所にサイドローラR4…を備える。各サイドローラR4は、薄手のバネ板を組み合わせてなるサスペンション機構15を介してメインベース板10に傾斜姿勢で取り付けられている。この際のサイドローラR4…の姿勢は、仮想センタラインL1を挟んで左右1対をなすサイドローラR4,R4が内すぼみとなる対称傾斜姿勢であり、走行ローラR1を含む位置関係では、2等辺三角形を描く場合の頂点位置の配置とも言える。また、メインベース板10の4隅位置には、各サイドローラR4に添えてハゼ締め装置を静置しておくための脚部材11…が垂設されている。不使用時にサスペンション機構15…が働いてハゼ締め装置が揺らぐのを防止する趣旨である。
【0037】
メインベース板10の裏面側、仮想センタラインL1の一方の側方には、3個の駆動カシメローラR2,R2,R2が一定間隔を保って配置されている(図2)。3個の駆動カシメローラR2…は同一径であり、動力伝達ベルトB2で連結されている。このうち一端側の駆動カシメローラR2は、メインベース板10の表面側に充電方式のインパクトドライバD2を主要部材とする駆動機構12を有し、インパクトドライバD2によって直接駆動される。残り2個の駆動カシメローラR2,R2は、動力伝達ベルトB2を介して駆動される。なお、動力伝達ベトB2には特別な仕様は要求されない。また、駆動機構12には、インパクトドライバD2を操作する作業者の便宜のための間接スイッチ13等が含まれるが、操作ハンドル14等ハゼ締め装置全体を取り扱うような部材は含まれない(図1)。
【0038】
サブベース板20は、長孔と押え板21とによってスライド動作可能にメインベース板10に取り付けられている(図1図3)。メインベース板10とサブベース板20との間には手動の伸縮リンク機構23が組み付けられている。サブベース板20には、仮想センタラインL1を挟み、メインベース板10の裏面における中央位置の駆動カシメローラR2に対峙する位置に従動カシメローラR3が取り付けられている(図1図3)。
【0039】
サブベース板20は、伸縮リンク機構23の操作によって仮想センタラインL1に直交する方向に往復スライド動作をし、従動カシメローラR3はこの操作の結果としてメインベース板10の裏面側において中央位置の駆動カシメローラR2に接近し、および離れる動作をすることができる。
【0040】
上記のような構成のハゼ締め装置は、山形なすように仮組みした2枚のハゼ折鋼板M,Mに跨るように位置決めして使用する(図3)。ハゼ締め装置の走行ローラR1,R1は、この姿勢においてハゼ折鋼板M,Mの稜線位置に接地し、ハゼ締め装置の重量は、この稜線部分で受け止められる。この部分は仮組みのために複雑な断面形状に曲げ加工されて十分な強度を有し、ハゼ締め装置は、安定に走行することが可能である。なお、2枚のハゼ折鋼板M,Mの仮組み構造はメーカやハゼ折鋼板Mのサイズ等によって僅かな違いがあるが殆んど業界スタンダード化されており、走行ローラR1,R1の走行に支障を来す程の違いではない。
【0041】
他方、走行ローラR1,R1が接地した時点における左右位置のサイドローラR4,R4は、対応するハゼ折鋼板M,Mの傾斜側面に接するか、接しないかというような状態である。したがって、ハゼ締め装置が傾こうとした場合にその一方側のサイドローラR4のみがサスペンション機構15を介して弾性的に傾斜側面に接触してハゼ締め装置を押し戻すのである。つまりサイドローラR4にはハゼ締め装置の重量を支える機能は予定されておらず、専らハゼ締め装置の姿勢を一定範囲に維持する機能が求められているのである。
【0042】
仮組みされたハゼ折鋼板M,Mの加工対象となる稜線部分、つまり仮想センタラインL1の直下部分は、作業員による伸縮リンク機構23の操作によってサブベース板20のスライド動作を介して動力伝達ベルトB2と共に駆動カシメローラR2と従動カシメローラR3との間に挟み込まれ、両者間を通過することによってカシメ動作が完了する。
【符号の説明】
【0043】
M ハゼ折鋼板
B2 動力伝達ベルト
R1 走行ローラ
R2 駆動カシメローラ
R3 従動カシメローラ
R4 サイドローラ
10 メインベース板
12 駆動機構
15 サスペンション機構
20 サブベース板
23 伸縮リンク機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13