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  • 特開-かゆみ抑制剤及び洗浄剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166057
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】かゆみ抑制剤及び洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20241121BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241121BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241121BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/44
A61Q19/10
A61Q5/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001284
(22)【出願日】2024-01-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2023081063
(32)【優先日】2023-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592028514
【氏名又は名称】コタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】安 鋼
(72)【発明者】
【氏名】萬代 由莉恵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 修一
(72)【発明者】
【氏名】辻野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】高木 昌宏
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC791
4C083AC792
4C083BB05
4C083BB51
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD45
4C083EE07
4C083EE10
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】洗浄剤組成物により発生するかゆみを抑制する。
【解決手段】洗浄剤組成物に起因するかゆみを抑制するかゆみ抑制剤であって、N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とするかゆみ抑制剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物に起因するかゆみを抑制するかゆみ抑制剤であって、
N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とするかゆみ抑制剤。
【請求項2】
洗浄成分とかゆみ抑制剤とを含有する洗浄剤組成物であって、
前記かゆみ抑制剤が、N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有するものである洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記かゆみ抑制剤の含有量(A)と前記洗浄成分の含有量(B)との比(A/B)が、0.002以上1以下の範囲である、請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄成分としてアミノ酸系界面活性剤を含有する、請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸系界面活性剤が炭素鎖長C12以上C14以下のものである、請求項4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸系界面活性剤がラウロイルグルタミン酸ナトリウムである、請求項4に記載の洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー組成物等の洗浄剤組成物に起因するかゆみを抑制するかゆみ抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー組成物などの洗浄剤組成物には、高い洗浄力だけでなく、保湿性や褪色抑制等の様々な性能が求められるため、従来から種々の化学物質の様々な組み合わせが試されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-140471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが洗浄剤組成物について、より高性能のものを開発するために鋭意検討を続けた結果、特許文献1に記載されたパラベンやアルカリ剤等を含有しない場合であっても、シャンプー組成物などの洗浄剤組成物の組成によっては、例えば洗髪時や洗髪後等に頭皮等にかゆみが生じる場合があることに気が付いた。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、洗浄剤組成物により発生するかゆみを抑制する成分について本発明者が試行錯誤の結果、特定の化合物によって洗浄剤組成物に起因するかゆみを抑制することができることを見出して初めて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係るかゆみ抑制剤は、洗浄剤組成物に起因するかゆみを抑制するかゆみ抑制剤であって、N-デカノイル-プロリンナトリウム(カプロイルプロリンナトリウムともいう。)、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(コカミドプロピルベタインともいう。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とするものである。
前述したかゆみ抑制剤と洗浄成分とを含有する洗浄剤組成物もまた本発明の一部である。
かゆみをより効果的に抑制するには、洗浄剤組成物中の前記かゆみ抑制成分の含有量(A)と前記洗浄成分の含有量(B)との比(A/B)が、0.002以上1以下の範囲であることが好ましい。
前記洗浄剤組成物が、前記洗浄成分としてアミノ酸系界面活性剤を含有するものとすることが好ましい。
前記洗浄成分の具体例としては、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前述したかゆみ抑制剤により、洗浄剤組成物に起因する頭皮等のかゆみを従来よりも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】リポソーム試験におけるリポソームダイナミクスと刺激及びかゆみとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について以下に説明する。
本実施形態に係るかゆみ抑制剤は、洗浄剤組成物により発生するかゆみを抑制するものであるため、例えば、ヒトの肌に触れてかゆみを発生する可能性があるものであり、ヒトの顔や手、体、毛髪などを洗浄する洗浄剤組成物に添加して使用することが好ましい。前記洗浄剤組成物の中でも特にシャンプー組成物などの毛髪用洗浄剤組成物に添加して使用することが好ましい。
そこで、以下では、一例として前記かゆみ抑制成分を含有するシャンプー組成物について説明する。
【0009】
本実施形態に係るシャンプー組成物は、洗浄成分を含有するものである。
【0010】
洗浄成分は、シャンプー組成物に洗浄力を与えることを主な目的として添加されるものであり、具体的にはアニオン性界面活性剤である。洗浄成分として使用することができる界面活性剤としては、アミノ酸を原料として製造されたアミノ酸系界面活性剤と、それ以外の非アミノ酸系界面活性剤とを挙げることができる。
アミノ酸系界面活性剤としては、グルタミン酸系界面活性剤、アラニン系界面活性剤、タウリン系界面活性剤、その他のアミノ酸系界面活性剤が挙げることができる。
【0011】
グルタミン酸系界面活性剤としては、ココイルグルタミン酸塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩等を挙げることができる。ココイルグルタミン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等を挙げることができる。また、ラウロイルグルタミン酸塩としては、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等を挙げることができる。また、ミリストイルグルタミン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
【0012】
アラニン系界面活性剤としては、ココイルアラニン塩、ココイルメチルアラニン塩、ラウロイルメチルアラニン塩、ミリストイルメチルアラニン塩等を挙げることができる。ココイルアラニン塩としては、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等を挙げることができる。また、ココイルメチルアラニン塩としては、ナトリウム塩等を挙げることができる。また、ラウロイルメチルアラニン塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等を挙げることができる。また、ミリストイルメチルアラニン塩としては、ナトリウム塩などを挙げることができる。
【0013】
タウリン系界面活性剤としては、ココイルタウリン塩、ココイルメチルタウリン塩、ココイルメチルタウリンタウリン塩等が挙げられる。ココイルタウリン塩としては、ナトリウム塩等が例示できる。また、ココイルメチルタウリン塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が例示できる。また、ココイルメチルタウリンタウリン塩としては、ナトリウム塩等が例示できる。
【0014】
その他のアミノ酸系界面活性剤としては、ラウロイルアスパラギン酸塩、アシル(C12,14)アスパラギン酸塩、ココイルサルコシン塩、ラウロイルサルコシン塩、ヤシ油脂肪酸サルコシン塩等が挙げられる。ラウロイルアスパラギン酸塩としては、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、アシル(C12,14)アスパラギン酸塩としては、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、ココイルサルコシン塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、ラウロイルサルコシン塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、ヤシ油脂肪酸サルコシン塩としては、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。
【0015】
非アミノ酸系界面活性剤としては、ポリペプチド系界面活性剤、その他の界面活性剤を挙げることができる。
【0016】
ポリペプチド系界面活性剤としては、ラウロイル加水分解シルク塩、ココイル加水分解コラーゲン塩、ココイル加水分解ケラチン塩、ココイル加水分解ダイズタンパク塩等が挙げられる。ラウロイル加水分解シルク塩としては、ナトリウム塩等が例示できる。また、ココイル加水分解コラーゲン塩としては、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、ココイル加水分解ケラチン塩としては、カリウム塩等が例示できる。また、ココイル加水分解ダイズタンパク塩としては、カリウム塩等が例示できる。
【0017】
その他の界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩、POEラウリル硫酸塩等が挙げられる。ラウリル硫酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。また、POEラウリル硫酸塩としては、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できる。
【0018】
前記洗浄成分として、ここに多数列挙した界面活性剤のうちの1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0019】
前記洗浄成分のシャンプー組成物全体に対する含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。なお、洗浄成分として界面活性剤を複数種類の併用する場合には、前記洗浄成分の含有量は、シャンプー組成物に含有されているすべての洗浄成分の合計含有量を意味する。
【0020】
アミノ酸系界面活性剤は非アミノ酸系界面活性剤に比べて洗浄力は多少劣る場合があるものの肌への刺激が少なく、またカラー褪色を抑制できるものが多いために、シャンプー組成物による肌への刺激を低減したり、カラー褪色を抑制するためには、アミノ酸系界面活性剤を使用することが好ましい。
アミノ酸系界面活性剤の中でも、高い洗浄力とその他の性質(低刺激、カラー褪色抑制等)とを両立しているものとして、特にC12以上C14以下鎖長のアミノ酸系界面活性剤を使用することが好ましい。
【0021】
なお、本発明者らが検討したところ、アミノ酸系界面活性剤を使用した場合には、予想通り洗浄成分による刺激やカラー褪色等は低減されるものの、この洗浄成分によって意外にもかゆみが発生する場合があることが今回初めて見出された。
【0022】
しかして、本実施形態に係るシャンプー組成物は、かゆみ抑制剤を含有するものである。
本実施形態に係るかゆみ抑制剤は、N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインのうちの1種類又は2種類以上の化合物を含有するものである。
【0023】
前記かゆみ抑制剤としては、前述したもの以外にもC8プロピルベタイン、C12プロピルベタイン、カプロイルメチルタウリンナトリウム、カプリロイルプロピルベタインなどのアミノ酸系界面活性剤やポリクオタニウム-10等の高分子ポリマーを含有するものとしても良い。
【0024】
前記かゆみ抑制剤を構成する各化合物は、前記洗浄成分に使用されているアミノ酸系界面活性剤とは異なる種類の界面活性剤等である。さらに言えば、その炭素鎖長がC8以上C10以下のもの又はC8以上C18以下の混合物であり、前記洗浄成分として用いられるアミノ酸系界面活性剤よりも短鎖長の両性またはアニオン性アミノ酸系界面活性剤、高分子ポリマー等を含有するものであると言える。
【0025】
なお、前記かゆみ抑制剤を構成する各化合物は、各種化学メーカーから市販されており、容易に入手することが可能である。
【0026】
前記シャンプー組成物の成分によるかゆみをより効果的に抑制するためには、洗浄剤組成物中の前記かゆみ抑制成分の含有量(A、単位:質量%)と前記洗浄成分の含有量(B、単位:質量%)との比(A/B)を0.002以上1以下の範囲とすることが好ましく、0.01以上とすることがより好ましく、0.02以上とすることがさらに好ましい。
【0027】
シャンプー組成物は前述した各成分以外に、両性界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、カチオン化ポリマー、ノニオン性界面活性剤、シリコーン、補修成分、パール化剤、油剤、その他の添加剤をさらに含有することができる。
【0028】
両性界面活性剤は、シャンプー組成物による毛髪の洗浄力をさらに高めることを目的に添加されるものであり、例えば、ココベタイン、ラウリルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、パーム核脂肪酸アミドプロピルベタイン、ババスアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルアミンオキシド、ココアンホ酢酸塩、ラウロアンホ酢酸塩、ココアンホプロピオン酸塩、ラウラミノプロピオン酸塩、ラウリミノジプロピオン酸塩、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン等を挙げることができる。また、ココアンホ酢酸塩、ラウロアンホ酢酸塩、ココアンホプロピオン酸塩、ラウラミノプロピオン酸塩、及びラウリミノジプロピオン酸塩としては、各々のナトリウム塩等を挙げることができる。
【0029】
pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタミン酸等の有機酸、リン酸、塩酸等の無機酸、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を挙げることができる。シャンプー組成物のpHの範囲は、例えば4以上7以下であることが好ましく、5以上6.5以下であることがより好ましい。シャンプー組成物のpHを4以上とすることで、アニオンポリマーの析出を抑制できるので好ましい。また、シャンプー組成物のpHを7以下とすることで、毛髪へのダメージを小さくすることができるので好ましい。
【0030】
キレート剤としては、EDTAもしくはその塩類、フィチン酸もしくはその塩類等を挙げることができる。
【0031】
防腐剤としては、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルイソチアゾリノン、グリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、安息香酸、サリチル酸もしくはその塩類等を挙げることができる。
【0032】
カチオン化ポリマーとしては、例えば、キサンタンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-10、及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-53、ポリクオタニウム-94、ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、コロハヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、等を挙げることができる。
【0033】
ノニオン性界面活性剤としては、セテアレス-60、ミリスチルグリコール、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、コカミドメチルMEA、コカミドMEA、コカミドDEA、ラウリルグルコシド等を挙げることができる。
【0034】
シリコーンとしては、ジメチコン、ジメチコノール、アモジメチコン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコン、アミノプロピルジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(アクリレーツ/ジメチコン)クロスポリマー、PEG/PPG-20/20フェニルイソプロピルカプリリルジメチコン、ビスPEG-15メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/20コポリマー、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン等を挙げることができる。
【0035】
補修成分としては、加水分解ケラチン、加水分解シルク、加水分解コラーゲン、加水分解カゼイン、加水分解ダイズタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメタンパク等のポリペプチド、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、プロリン、グリシン、セリン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、リジン、グルタミン、アスパラギン等のアミノ酸、ヒアルロン酸、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド62、セラミドAG、セラミドAP、セラミドAS、セラミドEOP、セラミドEOS、セラミドNG、セラミドNP、セラミドNS、グルコシルセラミド、ジラウリン酸セラミドNG、ジラウリン酸セラミドNS、ユズ果実エキス、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ソルビトール、トレハロース、マルチトール等を挙げることができる。
【0036】
パール化剤としては、脂肪酸(C14-18)グリコール等が挙げられる。また、油剤としては、脂肪酸、炭化水素油、エステル油、植物油、動物油等を挙げることができる。
その他の添加剤としては、香料、植物・動物抽出物、紫外線吸収剤反射剤、色素、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0037】
上述した成分以外に、シャンプー組成物は水を含有することができる。水の種類については、特に限定されず、例えば、精製水である。水の含有量は、水以外のシャンプー組成物の成分の残部とすることができる。
【0038】
<本実施形態による効果>
前述したようなかゆみ抑制剤及びこのかゆみ抑制剤を含有する洗浄剤組成物によれば、洗浄剤組成物が含有する洗浄成分等に起因するかゆみを従来よりも大幅に低減することができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態においては、具体例としてかゆみ抑制剤を含有するシャンプー組成物について説明したが、本発明に係る洗浄剤組成物は、ヒトの肌に触れることによってかゆみを発生させる可能性があるものであれば良く、例えば、洗顔料、ボディソープ、ハンドソープ等であっても良い。
その他、前述した実施形態のうちの一部を適宜組み合わせても良いし、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【実施例0040】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
まずは、以下の表1に記載された通りの混合液(以下、被検液ともいう。)をそれぞれ調整し、これらについて以下の各試験を行った。なお、これら被検液の溶媒は水である。
【0042】
【表1】
【0043】
<かゆみ評価試験>
(スティンガー選別試験)
まず以降のスティンガー試験を行う対象者を選別した。
サンプルとして以下のA及びBをそれぞれしみ込ませたガーゼを、被験者の首の後ろ側の左右2か所にサージカルテープで貼り付け、Bのサンプルに対して明らかにかゆみや刺激を感じた被験者をスティンガーとして選別した。
A:0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)
B:0.5質量%ラウロイルグルタミン酸Na水溶液(アミノサーファクトALMS-P1、旭化成)
(スティンガー試験)
以降の試験は、特に記載しない限り、前述したようにして選別したスティンガーに対して行ったものである。
表1に記載の各被検液をしみ込ませたガーゼを、被験者の首の後ろ側の左右2か所にサージカルテープで貼り付ける。貼り付けてから10分後まで1分間隔でガーゼを貼り付けた部分の皮膚の感覚と度合いを以下の表2及び表3の表現の中から選んでそれぞれ記録した。
なお、表1に記載の各被検液は全て水溶液であり、これらの濃度はシャンプー組成物を用いて毛髪を洗浄し、水でよくすすいだ後に頭皮の表面に残留する界面活性剤の濃度と同じ程度の濃度(およそ0.5質量%)となるように設定している。また、これら被検液に界面活性剤が2種類以上含有されている場合には、被検液中の各界面活性剤の含有比は洗浄剤組成物における各界面活性剤の含有比と同じものであるとみなすことができる。
各被験者において利き側における1分以降5分後までの記録データの合計値、最大値、平均値を算出した。結果を表1に示す。表1においては、12名の被験者についての各最大値を平均化した最大平均値を記載した。刺激スコアについては、表2中の全ての項目について表3の数値に基づいたスコアを算出している。一方かゆみスコアについては、表2中のd又は刺激なしを選択した場合についてのみ表3の数値に基づいたスコアを算出している。
また、表1中の陽性者数は、表1中の各被検液についてスティンガー試験を行った人数を分母とし、表2中のd(かゆみ、ムズムズ)を選択した人数を分子として示したものである。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
(リポソーム試験)
リポソーム試験は、リポソームを含む試験溶液に表1に記載の各被検液を添加した際の、前記リポソームの形態大きさの変化に基づいて前記被検液による刺激強度(刺激とは痛み及びかゆみを含む概念である)を評価する試験である。
リポソーム試験は具体的には以下の方法で行った。
【0047】
[リポソームの作製]
まず、試験に使用するリポソームを作製した。作製手順としては、先ず、ダーラム管をアセトンで洗浄し、洗浄したダーラム管に、クロロホルム/メタノール=2/1(v/v)で溶かしたDOPC、ローダミンレッド(商品名TMX-DHPE)、及びグルコースをそれぞれ20μl、8μl、12μl加え、ピペッティングにより溶液を混合した。
【0048】
次に、混合溶液に窒素ガスを吹きつけ、クロロホルムとメタノールを揮発させることによってダーラム管底部に脂質フィルムを形成させた。さらに、ダーラム管を真空デシケータ内に入れ、180分以上真空中で静置することにより、残存する有機溶媒を十分に飛ばした。
【0049】
真空デシケータからダーラム管を取り出し、超純水(200μl)を加え、パラフィルムで密閉後、37℃条件下(一定温度)で24時間インキュベーションした。インキュベーション中は、脂質・蛍光色素の酸化を防ぐため、ダーラム管をアルミホイルで覆った。24時間後、インキュベーションを終了し、リポソームの作製を完了(DOPC終濃度0.2mM,グルコース終濃度0.6mM,ローダミンレッド終濃度0.004mM)した。
【0050】
[顕微鏡観察]
前述したようにして作製したリポソーム溶液に超純水を加えた10倍希釈したリポソーム溶液に被検液を添加し、リポソームの状態を顕微鏡で観察した。
顕微鏡観察に使用した機器は、倒立型リサーチ顕微鏡(オリンパス社製、商品名IX71)、共焦点スキャナユニット(横河電気社製、CSU10)、対物レンズ(PlanApoN 60×/1.42)、カメラ(IMPACTRON CCD CAMERA,MODEL ADT-33B FLOVEL)、レコーダー(東芝社製、RD-E-300)である。
【0051】
シリコンラバーとシリコンカバーの間にメンブランフィルタを配置し、これをマイクロカバーガラス上に載置することにより構成した観察チャンバーを用い、観察チャンバーのシリコンカバー側に開けた孔に、超純水で10倍希釈したリポソーム溶液8μlを入れ、マイクロカバーガラスで密閉した。観察チャンバーを顕微鏡ステージに乗せ、レーザー光(波長532nm)をサンプルに照射した。観察対象のリポソームが見つかり次第、録画を開始した。レーザーの出力をオフ(眼を痛めないように)にし、被検液32μlをシリコンラバー側から添加した。
【0052】
被検液添加後、膜ダイナミクス(リポソームの形態変化、膜孔形成)の観察を行った後、画像解析によって定量的な評価を行った。
【0053】
[評価方法]
前記画像解析において、膜孔形成後のリポソームの表面積を縦軸、観察時間を横軸にプロットして、一次反応速度定数を導いた。導き出した速度定数をリポソームの縮小スピードと定義しこれを刺激強度の指標とした。具体的には、リポソームの形状変化を図1に記載の8つのパターンに分類し、これを指標として刺激の存在を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
<考察>
これら試験の結果から、比較的低刺激であり、カラー褪色を抑制できる高性能なシャンプーなどの洗浄剤組成物に洗浄成分として含有されるアミノ酸系界面活性剤の1種であるラウロイルグルタミン酸ナトリウムが、かゆみを誘発していることが分かった。このラウロイルグルタミン酸ナトリウムに対して、N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪鎖長の異なる界面活性剤を添加したところ、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムを単独で使用する場合に比べてかゆみが大きく低減していることが分かる。本実施例においては、刺激スコアについても併せて評価を行ったが、かゆみスコアと刺激スコアとは必ずしも連動しておらず、これらは異なるものであることが分かる。
以上から、N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインによれば、洗浄剤組成物、特に、洗浄成分として添加される脂肪鎖長がC12であるアミノ酸系界面活性剤に起因するかゆみを大きく低減できたことが分かる。
またC8プロピルベタイン、C12プロピルベタイン、カプロイルメチルタウリンナトリウム、カプリロイルプロピルベタインやポリクオタニウム-10等によってもかゆみを低減できることが確認できた。そこで、これらをさらに組み合わせて使用すること等によって、よりかゆみを抑制することができると考えられる。
表1の結果から、洗浄成分に対するかゆみ抑制物質の含有量比(A/B)が0.002以上であればかゆみ抑制成分を添加していない場合に比べてかゆみを抑制できたことが分かる、このかゆみ抑制効果はかゆみ抑制成分の含有量比が大きくなるにつれて大きくなることが確認された。
スティンガー試験の結果においてかゆみが抑制されている条件では、リポソーム試験においても刺激が低減される結果となっており、これら試験により評価したかゆみスコアは十分に信頼性があるものと言える。

図1
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物に含有される洗浄成分であるアミノ酸系界面活性剤(N-デカノイル-プロリンナトリウム及びカプロイルメチルタウリンナトリウムを除く。)に起因するかゆみを抑制するかゆみ抑制剤であって、
N-デカノイル-プロリンナトリウム、カプロイルメチルタウリンナトリウム、(カプリル/カプラミド)プロピルベタイン及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とするかゆみ抑制剤。
【請求項2】
前記アミノ酸系界面活性剤が炭素鎖長C12以上C14以下のものである、請求項に記載のかゆみ抑制剤
【請求項3】
前記アミノ酸系界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である、請求項1に記載のかゆみ抑制剤。
【請求項4】
前記アミノ酸系界面活性剤が、グルタミン酸系界面活性剤である、請求項1に記載のかゆみ抑制剤。
【請求項5】
前記アミノ酸系界面活性剤が炭素鎖長C12のものである、請求項1に記載のかゆみ抑制剤。
【請求項6】
前記アミノ酸系界面活性剤がラウロイルグルタミン酸ナトリウムである、請求項に記載のかゆみ抑制剤。