(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166064
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】バックグラウンドを取り除いた特性曲線を求める方法
(51)【国際特許分類】
G06F 17/10 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008113
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023080549
(32)【優先日】2023-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】柳生 進二郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 明善
(72)【発明者】
【氏名】長田 貴弘
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB55
5B056BB61
5B056HH00
(57)【要約】
【課題】人為に左右されず、簡便にバックグラウンド除去精度の高いべき乗則、指数則特性曲線を求める方法の提供。
【解決手段】特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用して情報量基準により区分および区分数を求めるステップと、区分毎の特性関数の曲線の傾きa[i]を求めるステップと、特性関数の平均的な傾きaveSを求めるステップと、全区分を通してのデータの値の平均値と中央値から非対称性指標ASYを求めるステップと、判定基準DSを平均的な傾きaveSと非対称性指標ASYを用いて求めるステップと、傾きa[i]の線形成分がa[i]<DSの場合はバックグラウンド成分、a[i]≧DSの場合は非バックグラウンド成分として選別判定するステップと、F(0)とバックグラウンド成分を特性関数から減ずるステップからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値、BP[m]はxの最大値)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾きa[i]およびF(0)を求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Ymax、最小値Ymin、前記xの最大値xmaxおよび最小値xminを用いて、(Ymax-Ymin)/(xmax-xmin)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(Dave)と中央値(Dcnt)の比から非対称性指標(ASY=Dcnt/Dave)を求めるステップと、
判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて
0≦ASY<Lの場合 DS=aveS×ASY、
ASY≧Lの場合 DS=aveS
として求めるステップと、
前記傾きa[i](iは1からnまでの整数)の線形成分が、
a[i]<DSの場合はバックグラウンド成分
a[i]≧DSの場合は非バックグラウンド成分として選別判定するステップと、
F(0)および前記バックグラウンド成分を前記特性関数Y=F(x)から減ずるステップ、を含むステップからなる、特性曲線を求める方法。
【請求項2】
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値、BP[m]はxの最大値)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から、下記(式2)で与えられる非対称性指標(ASY)を計算するステップと、
判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて、0≦ASY<Lの場合は下記(式3)、ASY≧Lの場合は下記(式4)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記判定基準(DS)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSとなるiがある場合はa[i]≧DSを満たす最小のiをt、a[i]<DSの場合はt=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tを求めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Y´を下記(式5)から(式7)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式1)
ASY=D
cnt/D
ave ・・・(式2)
DS=aveS×ASY ・・・(式3)
DS=aveS ・・・(式4)
Y´=F(x)-F
background ・・・(式5)
【数1】
【請求項3】
前記情報量基準は、ベイズ情報量基準(Bayesian Information Criterion;BIC)または赤池情報量基準(Akaike Information Criterion;AIC)である、請求項1または2記載の特性曲線を求める方法。
【請求項4】
前記基準値Lは0.9である、請求項1から3の何れか一項に記載の特性曲線を求める方法。
【請求項5】
前記特性関数は、超電導材料の臨界電流密度関数である、請求項1から4の何れか一項に記載の特性曲線を求める方法。
【請求項6】
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1aの指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、下記(式1a)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2aの指標として、前記x
minを0、前記x
maxを1、F(x
min)を0、F(x
max)を1として(x、Y)を規格化しローレンツ曲線から求めたジニ係数(GiNi)より計算される(1-GiNi)を求めるステップと、
判定基準(DSa)を、前記平均的な傾き(aveS)と前記第2aの指標である(1-GiNi)を用いて、下記(式2a)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記判定基準(DSa)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSaとなるiがある場合はa[i]≧DSaを満たす最小のiをt
a、a[i]<DSaの場合はt
a=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
aを求めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Ya´を下記(式3a)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式1a)
DSa=aveS×(1-GiNi) ・・・(式2a)
Ya´=F(x)-F
background,a ・・・(式3a)
【数2】
【請求項7】
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
隣接する前記区分境界点(BP[j])間の距離ΔBP[j
b]=BP[j+1]-BP[j](j
bは1からnまでの整数、jは0からn‐1まで)を求めるステップと、
前記ΔBP[j
b]に対してK-means法を適用して前記ΔBP[j
b]を前記距離の短いグループG
aと長いグループG
bの2グループに分類するステップと、
幅ΔBP[j
b]が前記グループGaに属するときは0を、前記グループGbに属するときは1を区分BD[j
b]の値として割り当てるステップと、
ΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]の値として、ΔBP[n]と同じ値を割り当てた仮想のΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]を作成するステップと、
ΔBP[j
b]の値が、ΔBP[j
b+1]の値およびΔBP[j
b+2]の値と同じ値になる最小のj
bを求め、該値をj
b、Gamaxとするステップと、
線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
bをt
b=j
b、Gamaxとして計算するステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Yb´を下記(式1b)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
Y
b´=F(x)-F
background,b ・・・(式1b)
【数3】
【請求項8】
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、xの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、下記(式11)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から、下記(式12)で与えられる非対称性指標(ASY)を計算するステップと、
第1の判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて、0≦ASY<Lの場合は下記(式13)、ASY≧Lの場合は下記(式14)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記第1の判定基準(DS)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSとなるiがある場合はa[i]≧DSを満たす最小のiをt、a[i]<DSの場合はt=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tを求めるステップと、
第3の指標として、前記x
minを0、前記x
maxを1、F(x
min)を0、F(x
max)を1として(x、Y)を規格化しローレンツ曲線からジニ係数(GiNi)より計算される(1-GiNi)を求めるステップと、
第2の判定基準(DSa)を、前記平均的な傾き(aveS)と前記第3の指標である(1-GiNi)を用いて、下記(式15)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記第2の判定基準(DSa)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSaとなるiがある場合はa[i]≧DSaを満たす最小のiをt
a、a[i]<DSaの場合はt
a=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
aを求めるステップと、
隣接する前記区分境界点(BP[j])間の距離ΔBP[j
b]=BP[j+1]-BP[j](j
bは1からnまでの整数、jは0からn‐1まで)を求めるステップと、
前記ΔBP[j
b]に対してK-means法を適用して前記ΔBP[j
b]を前記距離の短いグループG
aと長いグループG
bの2グループに分類するステップと、
ΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]の値として、ΔBP[n]と同じ値を割り当てた仮想のΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]を作成するステップと、
ΔBP[j
b]の値が、ΔBP[j
b+1]の値およびΔBP[j
b+2]の値と同じ値になる最小のj
bを求め、該値をj
b、Gamaxとするステップと、
線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
bをt
b=j
b、Gamaxとして計算するステップと、
前記最大区間区分t、t
aおよびt
bの内の最頻値をt
c、またはt、t
aおよびt
bの値が3つとも異なる場合は、t、t
aおよびt
bの中の2番目に大きい値をt
cとして定めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Yc´を下記(式16)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式11)
ASY=D
cnt/D
ave ・・・(式12)
DS=aveS×ASY ・・・(式13)
DS=aveS ・・・(式14)
DSa=aveS×(1-GiNi) ・・・(式15)
Y
c´=F(x)-F
background,c ・・・(式16)
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラウンドを取り除いた特性曲線を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
べき乗則あるいは指数則に即した物理現象は多い。そして、その法則にしたがった特性関数から導き出される特性指標は、物性評価やそれの産業利用に大変有用である。
ここで、べき乗則に即した特性の指標としては、超電導材料の臨界電流密度Jc、光電子放出(光電効果)閾値、バンドギャップ、指数則に即した特性の指標としては半導体のショットキー閾値を挙げることができる。また、べき乗則の活用としては、特許文献1に開示があるトランジスタの特性劣化予測、および特許文献2に開示がある粘度測定への適用などを挙げることができる。
このため、べき乗則や指数則に従った特性関数は重要であるが、その算出にあたっては、重畳されているバックグラウンド成分の除去と、人為に左右されない自動化された算出方法の確立という2つの課題があった。
【0003】
測定されたデータには様々なバックグラウンド成分が本来の特性曲線に乗っている。バックグラウンドは、その多くが線形成分であるが、それを取り除くことが重要である。従来は、その算出作業を人手で行っていた。しかし、人手では効率が悪いとともに、人為による不確実性、曖昧性が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-352059号公報
【特許文献2】特開2022-185568号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Piligrim.C,Picewise-regression(aka segmented regression) in Python,Journal of Open Source Software,6(68),3859(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特性関数を算出する際の上記従来の問題を解決し、人為に左右されずに安定に算出され、簡便な方法でありながら、バックグラウンド除去精度の高い特性曲線を求める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値、BP[m]はxの最大値)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾きa[i]およびF(0)を求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から非対称性指標(ASY=D
cnt/D
ave)を求めるステップと、
判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて
0≦ASY<Lの場合 DS=aveS×ASY、
ASY≧Lの場合 DS=aveS
として求めるステップと、
前記傾きa[i](iは1からnまでの整数)の線形成分が、
a[i]<DSの場合はバックグラウンド成分
a[i]≧DSの場合は非バックグラウンド成分として選別判定するステップと、
F(0)および前記バックグラウンド成分を前記特性関数Y=F(x)から減ずるステップ、を含むステップからなる、特性曲線を求める方法。
(構成2)
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値、BP[m]はxの最大値)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から、下記(式2)で与えられる非対称性指標(ASY)を計算するステップと、
判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて、0≦ASY<Lの場合は下記(式3)、ASY≧Lの場合は下記(式4)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記判定基準(DS)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSとなるiがある場合はa[i]≧DSを満たす最小のiをt、a[i]<DSの場合はt=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tを求めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Y´を下記(式5)から(式7)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式1)
ASY=D
cnt/D
ave ・・・(式2)
DS=aveS×ASY ・・・(式3)
DS=aveS ・・・(式4)
Y´=F(x)-F
background ・・・(式5)
【数1】
(構成3)
前記情報量基準は、ベイズ情報量基準(Bayesian Information Criterion;BIC)または赤池情報量基準(Akaike Information Criterion;AIC)である、構成1または2記載の特性曲線を求める方法。
(構成4)
前記基準値Lは0.9である、構成1から3の何れか一項に記載の特性曲線を求める方法。
(構成5)
前記特性関数は、超電導材料の臨界電流密度関数である、構成1から4の何れか一項に記載の特性曲線を求める方法。
【0008】
(構成6)
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1aの指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、下記(式1a)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2aの指標として、前記x
minを0、前記x
maxを1、F(x
min)を0、F(x
max)を1として(x、Y)を規格化しローレンツ曲線から求めたジニ係数(GiNi)より計算される(1-GiNi)を求めるステップと、
判定基準(DSa)を、前記平均的な傾き(aveS)と前記第2aの指標である(1-GiNi)を用いて、下記(式2a)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記判定基準(DSa)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSaとなるiがある場合はa[i]≧DSaを満たす最小のiをt
a、a[i]<DSaの場合はt
a=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
aを求めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Ya´を下記(式3a)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式1a)
DSa=aveS×(1-GiNi) ・・・(式2a)
Ya´=F(x)-F
background,a ・・・(式3a)
【数2】
(構成7)
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、BP[0]はxの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
隣接する前記区分境界点(BP[j])間の距離ΔBP[j
b]=BP[j+1]-BP[j](j
bは1からnまでの整数、jは0からn‐1まで)を求めるステップと、
前記ΔBP[j
b]に対してK-means法を適用して前記ΔBP[j
b]を前記距離の短いグループG
aと長いグループG
bの2グループに分類するステップと、
幅ΔBP[j
b]が前記グループGaに属するときは0を、前記グループGbに属するときは1を区分BD[j
b]の値として割り当てるステップと、
ΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]の値として、ΔBP[n]と同じ値を割り当てた仮想のΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]を作成するステップと、
ΔBP[j
b]の値が、ΔBP[j
b+1]の値およびΔBP[j
b+2]の値と同じ値になる最小のj
bを求め、該値をj
b、Gamaxとするステップと、
線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
bをt
b=j
b、Gamaxとして計算するステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Yb´を下記(式1b)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
Y
b´=F(x)-F
background,b ・・・(式1b)
【数3】
(構成8)
バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点(BP[j])(ここでjは0からmまでの整数、xの最小値x
min、BP[m]はxの最大値x
max)を求めるステップと、
前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を前記各区分の始点と終点間の傾きとして求めるステップと、
a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、前記iの最小値をnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求めるステップと、
第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、前記Yの最大値Y
max、最小値Y
min、前記xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、下記(式11)で定義される前記特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求めるステップと、
第2の指標として、前記区分の1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から、下記(式12)で与えられる非対称性指標(ASY)を計算するステップと、
第1の判定基準(DS)を前記平均的な傾き(aveS)と前記非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて、0≦ASY<Lの場合は下記(式13)、ASY≧Lの場合は下記(式14)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記第1の判定基準(DS)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSとなるiがある場合はa[i]≧DSを満たす最小のiをt、a[i]<DSの場合はt=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tを求めるステップと、
第3の指標として、前記x
minを0、前記x
maxを1、F(x
min)を0、F(x
max)を1として(x、Y)を規格化しローレンツ曲線からジニ係数(GiNi)より計算される(1-GiNi)を求めるステップと、
第2の判定基準(DSa)を、前記平均的な傾き(aveS)と前記第3の指標である(1-GiNi)を用いて、下記(式15)により求めるステップと、
前記a[i](iは1からnまでの整数)と前記第2の判定基準(DSa)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSaとなるiがある場合はa[i]≧DSaを満たす最小のiをt
a、a[i]<DSaの場合はt
a=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
aを求めるステップと、
隣接する前記区分境界点(BP[j])間の距離ΔBP[j
b]=BP[j+1]-BP[j](j
bは1からnまでの整数、jは0からn‐1まで)を求めるステップと、
前記ΔBP[j
b]に対してK-means法を適用して前記ΔBP[j
b]を前記距離の短いグループG
aと長いグループG
bの2グループに分類するステップと、
ΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]の値として、ΔBP[n]と同じ値を割り当てた仮想のΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]を作成するステップと、
ΔBP[j
b]の値が、ΔBP[j
b+1]の値およびΔBP[j
b+2]の値と同じ値になる最小のj
bを求め、該値をj
b、Gamaxとするステップと、
線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
bをt
b=j
b、Gamaxとして計算するステップと、
前記最大区間区分t、t
aおよびt
bの内の最頻値をt
c、またはt、t
aおよびt
bの値が3つとも異なる場合は、t、t
aおよびt
bの中の2番目に大きい値をt
cとして定めるステップと、
線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Yc´を下記(式16)より求めるステップからなる、特性曲線を求める方法。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式11)
ASY=D
cnt/D
ave ・・・(式12)
DS=aveS×ASY ・・・(式13)
DS=aveS ・・・(式14)
DSa=aveS×(1-GiNi) ・・・(式15)
Y
c´=F(x)-F
background,c ・・・(式16)
【数4】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人為に左右されずに安定に算出され、簡便な方法でありながら、バックグラウンド除去精度の高い特性曲線を求める方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図2】本発明で使用する処理装置の構成を示す構成図である。
【
図3】本発明の第2の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図4】臨界電流密度関数に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用して区分を行った例を示す特性図である。
【
図5】臨界電流密度測定データに対して本発明の方法を適用してバックグラウンド成分を除去した例である。
【
図6】本発明の第3の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図7】本発明の第4の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図8】実施例3による臨界電流密度測定データに対して本発明の方法を適用してバックグラウンド成分を除去した例である。
【
図9】臨界電流密度測定データに対してバックグラウンド成分を、(a)はBP[1]区分境界点まで、(b)はBP[2]区分境界点まで除去した例で、(c)は両者を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
<概要>
本発明の特性曲線から一次関数からなるバックグラウンド成分(線形のバックグラウンド成分)を除去する方法は、
(1)バックグラウンドの除去を受ける特性曲線Y=F(x)を、複数の区間に分けてその区間内を一次関数で近似し、区間毎に傾きを求めること。すなわち、区間区分と区間毎の特性曲線の傾き算出と、
(2)バックグラウンドかどうかの判定を行う評価指標、判定基準を基に選別判定し、バックグラウンドを除去した本来の特性関数導出を行うことを特徴にする。
【0012】
<<区間区分>>
本発明では、特性曲線を区分して、各区分に対して適当な線形のバックグラウンド成分を除去する。この実施に当たっては、曲面の近似などに用いられるセグメント回帰区分線形関数法を用いる(Segmented linear regression法)。
一般に、区分数は多いほど近似値と測定データとの乖離が少なくなる、すなわち区分数が多いほど高いデータフィッティングが得られる。一方で、その場合は処理が重くなるという問題が生じる。情報処理基準を用いることで、十分なフィッティングが得られる最適な区分数を得ることができる。
【0013】
有用な情報処理基準としては、ベイズ情報量基準(Bayesian Information Criterion;BIC)または赤池情報量基準(Akaike Information Criterion;AIC)がある。
【0014】
BICは、最尤法によって推定されたパラメータ数や観測データの数を考慮してモデルの複雑さと適合度を評価する統計量で、以下の式で表される。
BIC=-2×log(L)+k×log(n)
ここで、Lは最尤法によって推定された尤度関数、kはモデルのパラメータ数、nは観測データの数である。
【0015】
AICは、BICと同様に最尤法によって推定されたパラメータ数や観測データの数を考慮してモデルの複雑さと適合度を評価する統計量であり、以下の式で表される。
AIC=-2×log(L)+2×k
ここで、Lは最尤法によって推定された尤度関数、kはモデルのパラメータ数である。
【0016】
BICとAICは、どちらもモデルの複雑さと適合度を考慮してモデルの適合度を評価する指標であるが、BICは、モデルの複雑さによりペナルティを課すため、よりシンプルなモデルを好む傾向がある。一方、AICはペナルティが小さく、より複雑なモデルを好む傾向がある。したがって、特性曲線の性質やデータの性質によってBICを選ぶかAICを選ぶかの選択をすることが好ましい。例えば、比較的ノイズの少ない特性曲線においてはBICが適しており、ノイズ成分が多い特性曲線においてはAICが適している。
【0017】
<<評価区間>>
本発明は、加速度的に右肩上がりの特性曲線部分に対して線形のバックグラウンドを除去する方法を提供する。特性曲線Y=F(x)が途中の区間で極大値をもつ場合は、その極大値をもつ区間までで線形のバックグラウンドを除去する。
その処理を行うために、前記情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を各区分の始点と終点間の傾きとして求め、a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、この関係を満たした上で最小のiをnとし、iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求める。
【0018】
<<評価指標>>
発明者は、べき乗や指数関数に則る曲線は、バックグラウンド成分に比べて、曲線部分の傾きが大きくなる傾向があることに着目して、バックグラウンド判定用の評価指標を導出した。その評価指標は、平均的な傾き(aveS)と非対称性指標(ASY)の2つからなる。
【0019】
平均的な傾き(aveS)は、特性関数Y=F(x)のYの最大値Ymax、最小値Ymin、xの最大値xmaxおよび最小値xminを用いて、(Ymax-Ymin)/(xmax-xmin)で定義される傾きである。
【0020】
非対称性指標(ASY)は、全ての区間区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(Dave)と中央値(Dcnt)の比(Dcnt/Dave)として定義される。
1次関数的な直線であれば平均値と中央値は一致し、この直線からずれていくと平均値と中央値の値はずれていく。加速度的に右肩が上がっていく特性曲線では、中央値に対して、平均値は必ず大きくなる。そこで、平均値と中央値の比を取ると、1の場合は平均的な傾きと同じになり、べき乗や指数項が大きくなると0に近づくことになる。この性質を利用して本来の特性を表す曲線かバックグラウンドかを判定する指標の1つとする。
【0021】
<<判定基準>>
判定基準(DS)は、平均的な傾き(aveS)と非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて
0≦ASY<Lの場合 DS=aveS×ASY、
ASY≧Lの場合 DS=aveS
として求める。
【0022】
<<選別判定>>
そして、情報基準により求められた各区分i(iは1からnまでの整数)に対して特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を求め、区分i毎に傾きa[i]と判定基準DSを比較して、
a[i]<DSの場合は、バックグラウンド成分、
a[i]≧DSの場合は、非バックグラウンド成分として選別判定する。
【0023】
<<バックグラウンド成分を排除した特性曲線導出>>
ここでは、Y(0)および前記バックグラウンド成分を前記特性関数Y=F(x)から減ずる。具体的には、前述の(式5)から(式7)を用いてバックグラウンド成分を排除した特性曲線Y´を導出する。ここで、CMax(x-BP[i])は、x―BP[i]≦0を満たすときは0、x―BP[i]>0を満たすときはx-BP[i]である関数である。
本方法により導出された特性曲線Y´は、人為に左右されずに安定に算出され、簡便な方法でありながら、バックグラウンド除去精度の高いものである。
【0024】
<手順、アルゴリズム>
本発明の手順(アルゴリズム)を、フローチャート図である
図1と使用する処理装置101の構成図である
図2を参照しながら、下記に示す。
【0025】
処理装置101は、入力設備11、演算設備14、記憶設備15および出力設備17を具備し、入力設備11から出力設備17までの各設備は、情報路(情報パス)16を介して情報伝達できるように配置されている。測定データ(入力データ)12は入力設備11に入力され、情報路(情報パス)16を介して演算設備14および記憶設備15により情報が処理される。情報処理の結果は出力設備17に送られ、出力データ(バックグラウンド除去特性曲線)18が出力される。
【0026】
ここで、演算設備14はCPU、MPU、GPUなど主に半導体演算デバイスによって構成される演算装置であり、記憶設備15はDRAM、SRAMなどの一時記憶装置、FLASHメモリ、FRAM(登録商標)、EPROM、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープなどの長期記憶装置(ストレッジ)などからなる記憶装置からなる。長期記憶装置は必ずしも備えておく必要はないが、オプションとしてデータ参照機能など閾値データの高度な解析を行う際に役立つ。また、一時記憶装置をもたず長期記憶装置のみで記憶設備15を構成することも可能ではあるが、その場合はデータ転送に時間がかかる。よって、一時記憶装置と長期記憶装置の両者を備えておくことが好ましい。
情報路16は、入力設備11、演算設備14、記憶設備15および出力設備17間を結んでデータ、情報を伝える設備で、一般には配線からなる(光インターコネクトでもよい)。
【0027】
コンピュータを用いた処理装置101により下記に示す一連のステップが完全自動で処理されるため、人為に左右されずに安定的に線形バックグラウンド成分が排除された特性曲線を導出できるシステムになっている。
【0028】
次に、各手順(ステップ)を説明する。
最初に、データを入力設備11に入力する(
図1のステップS10)。ここで、データはバッチ式にため込んですべて入力してもよいし、測定装置と閾値算出解析装置101をオンライン接続して測定ごとに逐次入力してもよい。
次に、バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点BP[i]を求める(ステップS11)。ここで、情報基準としてはAICまたはBICを好んで用いることができる。
その後、情報基準により求められた各区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を求める(ステップS12)。
しかる後、a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、その最小のiをnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求める(ステップS13)。
次に、第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、特性関数Yの最大値Y
max、最小値Y
min、xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求める(ステップS14)。
また、第2の指標として、1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から非対称性指標(ASY=D
cnt/D
ave)を求める(ステップS15)。
【0029】
その後、判定基準(DS)を、平均的な傾き(aveS)と非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて
0≦ASY<Lの場合 DS=aveS×ASY(前述の(式3))、
ASY≧Lの場合 DS=aveS(前述の(式4))
として求める(ステップS16)。
【0030】
しかる後、傾きa[i](iは1からnまでの整数)の線形成分がバックグラウンド成分か否かを、
a[i]<DSの場合は、バックグラウンド成分
a[i]≧DSの場合は、非バックグラウンド成分として選別判定する(ステップS17)。
その後、F(0)および前記バックグラウンド成分を特性関数Y=F(x)から減じ(ステップS18)、最後に、結果を出力設備17から出力して終了する(ステップS20)。
本方法により、人為に左右されずに安定的かつ簡便に、線形のバックグラウンド成分が除かれた特性曲線Y´算出することが可能になる。
【0031】
なお、ステップS14の後、ステップS15の前に、ステップS14で求めた計算対象範囲の中で再度区分と傾きを求めて再度計算を行う、すなわち、ステップS14の後、計算対象区間をx=0からx=BP[t]に限って、ステップS11に戻ってステップS20まで再度計算を行うことも有効である。
【0032】
<手順2>
本発明の第2の手順(アルゴリズム)を、フローチャート図である
図3を参照しながら下記に示す。
最初に、データを入力設備11に入力する(
図3のステップS50)。ここで、データはバッチ式にため込んですべて入力してもよいし、測定装置と閾値算出解析装置101をオンライン接続して測定ごとに逐次入力してもよい。
次に、バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点BP[i]を求める(ステップS51)。ここで、情報基準としてはAICまたはBICを好んで用いることができる。
その後、情報基準により求められた各区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を求める(ステップS52)。
しかる後、a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、その条件を満たす最小のiをnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求める(ステップS53)。
次に、第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、特性関数Yの最大値Y
max、最小値Y
min、xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求める(ステップS54)。
また、第2の指標として、1からnまでの区分を通してのデータ(Y)の値の平均値(D
ave)と中央値(D
cnt)の比から非対称性指標(ASY=D
cnt/D
ave)を求める(ステップS55)。
【0033】
その後、判定基準(DS)を平均的な傾き(aveS)と非対称性指標(ASY)および0.80以上0.95以下の値の中からあらかじめ定めた基準値Lを用いて
0≦ASY<Lの場合 DS=aveS×ASY、
ASY≧Lの場合 DS=aveS
として求める(ステップS56)。
【0034】
しかる後、a[i](iは1からnまでの整数)と判定基準(DS)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSとなるiがある場合はa[i]≧DSを満たす最小のiをt、a[i]<DSの場合はt=nとして、線形バックグラウンド区間範囲を示す最大区間区分tを求める(ステップS57)。
【0035】
その後、バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Y´を(式5)から(式7)を使って求め(ステップS58)、最後に、結果を出力設備17から出力して終了する(ステップS60)。
Y´=F(x)-Fbackground ・・・(式5)
【0036】
【0037】
本方法により、人為に左右されずに安定的かつ簡便に、線形のバックグラウンド成分が除かれた特性曲線Y´算出することが可能になる。
【0038】
なお、本発明では、上述のように、セグメント回帰区分線形関数法を用いることにより特性曲線Y=F(x)の極大位置を把握して極大以降の区間を解析対象から外している。このステップを行っているため、本発明の方法で閾値の初期値の推定を行うことも可能になっている。すなわち、傾きがバックグラウンドと判定されたところの区分点が閾値の初期値を表すことになる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態2のバックグラウンドを取り除いた特性曲線を求める方法は、第2の指標として、実施の形態1で用いた非対称性指標(ASY=Dcnt/Dave)に代えて、(1-GiNi)としたことを特徴とし、その他のステップは実施の形態1に準拠した方法である。ここで、GiNiはジニ係数である。
【0040】
詳細な手順を、フローチャート図である
図6を参照しながら下記に示す。
最初に、データを入力設備11に入力する(
図6のステップS150)。ここで、データはバッチ式にため込んですべて入力してもよいし、測定装置と閾値算出解析装置101をオンライン接続して測定ごとに逐次入力してもよいことは実施の形態1と同様である。
次に、バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点BP[i]を求める(ステップS151)。ここで、情報基準としてはAICまたはBICを好んで用いることができる。
その後、情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を求める(ステップS152)。
しかる後、a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、その条件を満たす最小のiをnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求める(ステップS153)。
次に、第1の指標として、前記区分の1からnまでの区間で、特性関数Yの最大値Y
max、最小値Y
min、xの最大値x
maxおよび最小値x
minを用いて、下記式1aに示される(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)で定義される特性関数Y=F(x)の平均的な傾き(aveS)を求める(ステップS154)。
また、第2の指標として、xの最小値x
minを0、xの最大値x
maxを1、F(x
min)を0、F(x
max)を1として(x、Y)を規格化し、ローレンツ曲線から求めたジニ係数(GiNi)より計算される(1-GiNi)を求める(ステップS155)。
その後、判定基準(DSa)を、前記平均的な傾き(aveS)と前記第2aの指標である(1-GiNi)を用いて、下記(式2a)により求める(ステップS156)。
しかる後、a[i](iは1からnまでの整数)と判定基準(DSa)を比較して、iが1からnまでの範囲で、a[i]≧DSaとなるiがある場合はa[i]≧DSaを満たす最小のiをt
a、a[i]<DSaの場合はt
a=nとして、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
aを求める(ステップS157)。
最後に、線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Ya´を下記(式3a)より求め(ステップS157)、結果を出力して終了する(ステップS160)。
aveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min) ・・・(式1a)
DSa=aveS×(1-GiNi) ・・・(式2a)
Ya´=F(x)-F
background,a ・・・(式3a)
【数6】
【0041】
GiNi係数を用いた実施の形態2の方法は、非対称性指数を面積比で表現するという特徴があり、人為に左右されずに安定的かつ簡便に、線形のバックグラウンド成分が除かれた特性曲線Ya´を算出することが可能になる。
【0042】
(実施の形態3)
実施の形態3のバックグラウンドを取り除いた特性曲線を求める方法は、べき乗や指数関数などのxの増加とともに急激にYが大きくなる特性曲線の場合、急激に変化を始める時点から隣接するBP間の間隔が小さくなることに着目した方法で、急激に変化が大きくなる特性曲線に対して好適な方法である。
【0043】
詳細な手順を、フローチャート図である
図7を参照しながら下記に示す。
最初に、データを入力設備11に入力する(
図7のステップS250)。ここで、データはバッチ式にため込んですべて入力してもよいし、測定装置と閾値算出解析装置101をオンライン接続して測定ごとに逐次入力してもよいことは実施の形態1と同様である。
次に、バックグラウンド除去対象の特性関数Y=F(x)に対してセグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分、区分数mおよび区分境界点BP[i]を求める(ステップS251)。ここで、情報基準としてはAICまたはBICを好んで用いることができる。
その後、情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の前記特性関数Y=F(x)の曲線の傾き(a[i])を求める(ステップS252)。
しかる後、a[i]≧a[i+1]を満たすa[i]がある場合は、その条件を満たす最小のiをnとし、前記iが1からmまでa[i]<a[i+1]を満たす場合は、n=mとして、計算対象の区間を区分nまでの区間として求める(ステップS253)。
【0044】
次に、隣接する前記区分境界点(BP[j])間の距離ΔBP[jb]=BP[j+1]-BP[j](jbは1からnまでの整数、jは0からn-1まで)を求め(ステップS254)、ΔBP[jb]に対してK-means法を適用してΔBP[jb]を距離の短いグループGaと長いグループGbの2グループに分類する(ステップS255)。
【0045】
ここで、K-means法とは、データの集合をデータの類似性に基づいていくつかのグループに分類する手法であり、単純で計算量が比較的少ないため、実用的なクラスタリング手法として広く用いられている。
K-means法は、クラスタ数kを適切に設定することが重要であり、クラスタ数が多すぎると、データの類似性が低下し、クラスタ数が少なすぎるとデータの類似性が高くなりすぎる傾向がある。
K-means法では、次のような手順でクラスタリングを行う。
(1)与えられたデータの中から、任意のk個の点をクラスタの中心(重心)として設定する。
(2)各データ点を、最も近い重心のクラスタに割り当てる。
(3)各クラスタの中心を、そのクラスタに属するデータの平均値として再計算する。
(4)各データ点を、新たに計算された各クラスタの中心の最も近いクラスタに再割り当てする。
(5)クラスタの中心の位置が変化しなくなるまで、(3)(4)の処理を繰り返す。
本願では、k=2として2グループに分類している。
【0046】
しかる後、幅ΔBP[jb]がグループGaに属するときは0を、グループGbに属するときは1を区分BD[jb]の値として割り当て(ステップS256)、その上で、ΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]の値として、ΔBP[n]と同じ値を割り当てた仮想のΔBP[n+1]およびΔBP[n+2]を作成する(ステップS257)。
さらに、ΔBP[jb]の値が、ΔBP[jb+1]の値およびΔBP[jb+2]の値と同じ値になる最小のjbを求め、該値をjb、Gamaxとし(ステップS258)、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tbをtb=jb、Gamaxとして計算する(ステップS259)。
【0047】
最後に、線形バックグラウンドが取り除かれた特性曲線Yb´を下記(式1b)より求め(ステップS260)、結果を出力して終了する(ステップS270)。
Y
b´=F(x)-F
background,b ・・・(式1b)
【数7】
実施の形態3の方法は、指数関数など急激に変化が大きくなる特性曲線に対して好適な方法であり、本方法により、人為に左右されずに安定的かつ簡便に、線形のバックグラウンド成分が除かれた特性曲線Yb´を算出することが可能になる。
【0048】
(実施の形態4)
実施の形態4のバックグラウンドを取り除いた特性曲線を求める方法は、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分tcを、実施の形態1から3における最大区間区分t、taおよびtbの多数決により決めるものであり、工数はかかるが、汎用性の高い方法である。なお、最大区間区分tcを決める多数決でt、taおよびtbの値が3つとも異なる場合は、t、taおよびtbの中の2番目に大きい値をtcとして定める。
実施の形態4の方法の詳細な手順は、前述の構成8に準拠する。
実施の形態4の方法は、推定の信頼性が評価できる方法で、t、taおよびtbの全ての値が一致した場合は信頼性が高く、2つが一致する場合は中程度の信頼性で、すべて異なる場合は信頼性が低いと判断することができる。
本方法により、人為に左右されずに安定的かつ簡便に、線形のバックグラウンド成分が除かれた特性曲線Yc´を算出することが可能になる。
【実施例0049】
(実施例1)
実施例1では、超電導材料の臨界電流密度Jcの測定データに対して、実施の形態1で示した本発明の方法を適用して線形のバックグラウンド成分を除いた電流―電圧特性曲線を算出した結果について述べる。
但し、当然ながら、本発明はこのような特定の形式に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲により規定されるものであることに注意されたい。
【0050】
超電導材料の臨界電流密度Jcの測定データは下記のようにして取得した。
使用した超電導材料はMgB2であり、温度4.2Kの下、自社開発の測定装置を使用して電流Jと電圧Eの関係を示す測定データを得た。
【0051】
その測定データを
図2に示す入力設備11に入力し、セグメント回帰区分線形関数法を適用し、情報量基準により区分および区分数mを求めた。ここで、情報基準としてはBICを使用した。具体的には、非特許文献1の手法に準拠させて区分および区分数mを求めた。
図4は、その測定データと区分を示した図である。同図の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ区分点(Breakpoints)を1,2,3,4,5および6としたときの結果を示す。測定データとのフィッティングは、区分点数が1,2,3,4,5,6に対して各々BICは1482,1013,751,538,318および223で区分数mが7の場合のBICが最も小さく、最も適合性が高かった。
【0052】
次に、情報基準により求められた区分i(iは1からmまでの整数)毎の測定データ曲線の傾き(a[i])を求めた。その結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
また、第1の指標として、平均的な傾きであるaveS=(Y
max-Y
min)/(x
max-x
min)を求めた。その結果、aveSは84.24であった。
さらに、第2の指標として、非対称性指標ASY=D
cnt/D
aveを求めた。その結果、ASYは0.38であった。
判定基準DSは、
DS=aveS×ASY=84.24×0.38=31.864
であった。
この結果、傾きが31.864より小さなa[1]の区分領域で導出される線形成分を線形バックグラウンド成分と見なして測定データから除去した。除去後の結果を測定データと比較して
図5に示す。線形バックグラウンドが除去された補正後の特性曲線は立ち上がりのポイントが明確であり、臨界電流密度Jcの導出に適していた。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で開示した超電導材料の臨界電流密度Jcの測定データに対して、実施の形態2で示した方法を適用した。
ジニ係数法で求めたGINIの値は0.409であり、したがって1-GINIは0.591であった。実施例1に示されているようにaveSは84.24であり、判定基準DSaは、式2aより、49.797と求められた。この結果、傾きが49.797より小さなa[2]までの区分領域で導出される線形成分を線形バックグラウンド成分と見なし、式4aおよび式5aにより、バックグラウンド成分が除去された特性曲線を得た。その結果を
図8に示す。
【0056】
(実施例3)
実施例3では、実施例1で開示した超電導材料の臨界電流密度Jcの測定データに対して、実施の形態3で示した方法を適用した。
BPの値を表2に、BP間の間隔ΔBPの値を表3に示す。
【0057】
【0058】
実施の形態3で述べた方法に準拠させて、BP間の間隔データに基づいてK-means法を適用して、BP間の間隔の狭いグループGaと広いGbにBPを分け、0または1のBD[Jb]を割り当てた。その結果、グループGaに属するのはGP[0]―GP[1]間で、他はグループGbに属した。この結果を受けて、a[1]の区分領域で導出される線形成分を線形バックグラウンド成分と見なして測定データから除去した。したがって、実施例3で導出された線形バックグラウンド成分除去後の特性曲線Yb´は実施例1で導出された線形バックグラウンド成分除去後の特性関数と同じものになった。
【0059】
(実施例4)
実施例4では、実施例1で開示した超電導材料の臨界電流密度Jcの測定データに対して、実施の形態4で示した方法を適用した。
最初に、実施例1から3における最大区間区分t、t
aおよびt
bを求め、線形バックグラウンド区分区間範囲を示す最大区間区分t
cをその結果の多数決により決めた。その結果、tは1,t
aは2、そしてt
bは1であった。この結果、実施例4で導出された線形バックグラウンド成分除去後の特性曲線Yb´は、実施例1および実施例3で導出された線形バックグラウンド成分除去後の特性関数と同じものになった。
なお、参考までに、臨界電流密度測定データに対してバックグラウンド成分を、BP[1]区分境界点およびBP[2]区分境界点まで除去し、両者を比較した図を
図9に示す。実施例1および3の結果は
図9(a)、実施例2の結果は
図9(b)、両者の比較が
図9(c)に表されている。
本発明の方法は、超電導材料の臨界電流密度Jcなどのべき乗則や指数則に従う物理現象に適用できる。べき乗則に従う物理現象としては、紫外線照射による光電子放出(光電効果)閾値の導出、光学吸収の立ち上がりからのバンドギャップの導出、指数則では、半導体のショットキー閾値の導出などがあり、これらのバックグラウンド除去に利用することができる。
本発明の方法の適用により、これらの物理状態の解析およびその状態を利用して材料やデバイスの状態、品質を管理する上での重要な指標を、人為に左右されずに安定に、しかも簡便な方法で得ることができる。したがって、本方法は、科学技術の発展に寄与するとともに、製品の品質向上、性能向上、すなわち産業の発展に寄与するものと考える。