(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166095
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】レーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241121BHJP
G01N 29/12 20060101ALI20241121BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20241121BHJP
G01M 7/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01N29/12
G01N29/46
G01M7/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071897
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】202310566451.0
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】張学朋
(72)【発明者】
【氏名】蘇航
(72)【発明者】
【氏名】蒋宇静
【テーマコード(参考)】
2G024
2G047
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA11
2G024CA13
2G024CA21
2G024DA22
2G024FA04
2G024FA06
2G047AA10
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC05
2G047BC09
2G047CA04
2G047GD01
2G047GG12
2G047GG32
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】レーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法及び装置を開示する。該方法は、対応するサイズに基づいて建物の壁に塗られた断熱層の表面に等間隔な測定グリッドを模して分割するステップと、分割された各測定グリッドに基づいて、断熱層の裏面を異なる面積サイズの未粘着領域に分割し、断熱層の異なる空洞コンポーネントを真似するステップと、レーザードップラー非破壊振動計を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの振動特性を検出し、異なる空洞コンポーネントの中の空洞の位置決めと空洞の大きさを検出して判定するステップと、を含む。
【効果】レーザードップラー振動測定システムは重量が軽く、携帯に便利で、測定精度が高く、空間分解能が高く、動的応答が速く、非接触測定などの利点があり、複雑な環境における振動測定に適する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するサイズに基づいて建物の壁に塗られた断熱層の表面に等間隔な測定グリッドを模して分割するステップ1と、
分割された各測定グリッドに基づいて、断熱層の裏面を異なる面積サイズの未粘着領域に分割し、断熱層の異なる空洞コンポーネントを真似するステップ2と、
レーザードップラー非破壊振動計(1)を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの振動特性を検出するステップ3と、
収集システムを通じてコンピュータ上でデータを収集し、検出データを整理、分析し、異なる空洞コンポーネントの中の空洞の位置決めと空洞の大きさを判定するステップ4と、
を含むことを特徴とするレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項2】
ステップ1において、等間隔な測定グリッドを模して分割するのは、必要に応じてΔx,Δyを取って測定グリッドを分割することを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項3】
ステップ2において、異なる空洞コンポーネントには、異常なしのコンポーネント及び複数の空洞ができたコンポーネントが含まれることを特徴とする請求項1に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項4】
ステップ3において、レーザードップラー非破壊振動計(1)を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行う際には、さらに、
レーザードップラー非破壊振動計(1)の光学遮断板を回転させて、ヘリウムネオンレーザービームを検出サンプルにアライメントし、信号強度指示バーに基づいてフォーカスリングを調整してピントを合わせ、速度レンジとローパスフィルタレンジを選択し、光電検出器に高周波搬送波信号が発生し、検出対象に照射すると同時に、反射光を収集し、レーザドップラー効果に基づく周波数シフト信号を復調することにより、検出対象の振動速度量が得られることを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項5】
ステップ3において、異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行うのは、さらに、
異なる空洞コンポーネントの空洞の大きさを変え、マトリックス式点を打ち、分割された異なる測定グリッド中の各グリッドを測定し、振動時刻歴波形を収集することを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項6】
振動時刻歴波形を収集するのは、振動時刻歴波形を高速フーリエ変換して対応する振動スペクトル波形を得ることであり、具体的には、
任意の外界励起力F(t)は周期Tが無限大となる外界励起力であり、隣接周波数の間隔Δω=2π/Tは無限小量であり、周波数は区間(-∞,∞)上で連続型分布に近づき、当Δω→0の場合、離散型変数ω
nが連続変換の周波数変数ωに変換し、スペクトル関数の式は以下によって表れ、
【数6】
式中において、F(t)は外界励起力であり、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり、ωは角周波数変数であり、tは時間変数であり、iは複素関数の中の虚数単位であり、e
iωtはネイピア数eを底とする指数関数であり、
上下限における周期Tを無限大にし、外界励起力F(t)のフーリエ変換式は以下によって表れ、
【数7】
式中において、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり
フーリエ変換式をVibSoftソフトウェアに埋め込み、VibSoftソフトウェアによるデータ分析処理を行い、異なる空洞コンポーネントの振動基本周波数を50Hzに制御し、異なる空洞コンポーネントの1次、2次、3次周波数を記録することを特徴とする請求項5に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項7】
VibSoftソフトウェアによるデータ分析処理を行うのは、異常なしのコンポーネント、複数の空洞ができたコンポーネントによる測定された1次、2次、3次周波数を介して、空洞の大きさがEPS板全体の振動周波数に与える影響を分析し、さらに断熱層の空洞の位置と空洞面積の大きさを分析することを含むこと特徴とする請求項6に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項8】
前記異常なしのコンポーネントの各単位グリッドはA
0(i,j)であり、iは横軸、jは縦軸、異なる作業モードにおける断熱層の単位グリッドをそれぞれA
1(i、j)、A
2(i、j)、A
3(i、j)に設定し、異常なしのコンポーネントA
0(i、j)でそれぞれ作業モードにおける断熱層の単位グリッドA
n(i,j)を減算し、以下の式によって表れ、
【数8】
異常なしのコンポーネントと異なる空洞サイズにおける各測定単位グリッドの1次振動周波数との差を分析することによって空洞の位置を決定すること特徴とする請求項7に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法を実行するレーザードップラー振動計を用いた外壁断熱層の空洞検出装置であって、該装置は、
異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの固有振動特性を比較、分析を行い、異なる空洞コンポーネントにおける空洞の位置決め及び空洞の大きさを検出して判定するためのレーザードップラー非破壊振動計(1)を含むことを特徴とするレーザードップラー振動計を用いた外壁断熱層の空洞検出装置。
【請求項10】
前記レーザードップラー非破壊振動計(1)は組立プラットフォームに取り付られ、前記レーザードップラー非破壊振動計(1)には、デジタルオーディオケーブル(3)を介してそれぞれVib20データ収集装置(2)とACアダプタ(6)がそれぞれ接続され、前記ACアダプタ(6)にはリチウム電池電源がさらに接続されていることを特徴とする請求項9に記載のレーザードップラー振動計を用いた外壁断熱層の空洞検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動力学、損傷力学及びレーザー検出技術分野に関し、特にレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市化の進展に伴い、現在の既存建築物では、ほとんどの部屋には外壁外断熱工法を使っているが、ただし、建築の外壁外断熱層は異なる地域の気候環境、工事条件、材料品質などの要素を受けて、断熱層に異なる程度の空洞、裂開、浸水、脱落などの問題が発生し、建築などの構造が設計時の断熱効果に達しず、深刻な場合は大面積の断熱材の脱落をもたらし、人員の死傷及び経済的損失を招く。そのため、断熱材の定期的な健康監視は環境保全産業の高度な重視を引き起こしている。
【0003】
上記分析により、従来技術に存在する問題及び欠陥は以下の通り、従来技術における手動検出誤差が大きく、効率が遅く、高所作業は危険であり、また従来技術の赤外線熱イメージング測定は検出環境と気候の影響を受けやすく、しかも断熱材の空洞を正確に識別することが難しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
関連技術に存在する問題を解決するために、本発明の開示された実施例は、レーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法及び装置を提供する。具体的にはレーザードップラー振動測定システムに基づく外壁断熱層空洞の非破壊検出技術に関する。
【0005】
前記技術的案は以下の通り、レーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法は、以下のステップを含み、
対応するサイズに基づいて建物の壁に塗られた断熱層の表面に等間隔な測定グリッドを模して分割するステップ1と、
分割された各測定グリッドに基づいて、断熱層の裏面を異なる面積サイズの未粘着領域に分割し、断熱層の異なる空洞コンポーネントを真似するステップ2と、
レーザードップラー非破壊振動計を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの振動特性を検出するステップ3と、
収集システムを通じてコンピュータ上でデータを収集し、検出データを整理、分析し、異なる空洞コンポーネントの中の空洞の位置決めと空洞の大きさを判定するステップ4。
【0006】
ステップ1において、等間隔な測定グリッドを模して分割するのは、必要に応じてΔx,Δyを取って測定グリッドを分割することを含む。
【0007】
ステップ2において、異なる空洞コンポーネントには、異常なしのコンポーネント及び複数の空洞ができたコンポーネントが含まれる。
【0008】
ステップ3において、レーザードップラー非破壊振動計を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行う際には、さらに、
レーザードップラー非破壊振動計の光学遮断板を回転させて、ヘリウムネオンレーザービームを検出サンプルにアライメントし、信号強度指示バーに基づいてフォーカスリングを調整してピントを合わせ、速度レンジとローパスフィルタレンジを選択し、光電検出器に高周波搬送波信号が発生し、検出対象に照射すると同時に、反射光を収集し、レーザドップラー効果に基づく周波数シフト信号を復調することにより、検出対象の振動速度量が得られる。
【0009】
ステップ3において、異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行うのは、さらに、
異なる空洞コンポーネントの空洞の大きさを変え、マトリックス式点を打ち、分割された異なる測定グリッド中の各グリッドを測定し、振動時刻歴波形を収集することを含む。
【0010】
一つの実施例において、振動時刻歴波形を収集するのは、振動時刻歴波形を高速フーリエ変換して対応する振動スペクトル波形を得ることであり、具体的には、
任意の外界励起力F(t)は周期Tが無限大となる外界励起力であり、隣接周波数の間隔Δω=2π/Tは無限小量であり、周波数は区間(-∞,∞)上で連続型分布に近づき、当Δω→0の場合、離散型変数ωnが連続変換の周波数変数ωに変換し、スペクトル関数の式は以下によって表れ、
【0011】
【0012】
式中において、F(t)は外界励起力であり、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり、ωは角周波数変数であり、tは時間変数であり、iは複素関数の中の虚数単位であり、eiωtはネイピア数eを底とする指数関数であり、
上下限における周期Tを無限大にし、外界励起力F(t)のフーリエ変換式は以下によって表れ、
【0013】
【0014】
式中において、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり、
フーリエ変換式をVibSoftソフトウェアに埋め込み、VibSoftソフトウェアによるデータ分析処理を行い、異なる空洞コンポーネントの振動基本周波数を50Hzに制御し、異なる空洞コンポーネントの1次、2次、3次周波数を記録する。
【0015】
一つの実施例において、VibSoftソフトウェアによるデータ分析処理を行うのは、異常なしのコンポーネント、複数の空洞ができたコンポーネントによる測定された1次、2次、3次周波数を介して、空洞の大きさがEPS板全体の振動周波数に与える影響を分析し、さらに断熱層の空洞の位置と空洞面積の大きさを分析することを含む。
【0016】
一つの実施例において、前記異常なしのコンポーネントの各単位グリッドはA0(i,j)であり、iは横軸、jは縦軸、異なる作業モードにおける断熱層の単位グリッドをそれぞれA1(i、j)、A2(i、j)、A3(i、j)に設定し、異常なしのコンポーネントA0(i、j)でそれぞれ作業モードにおける断熱層の単位グリッドAn(i,j)を減算し、以下の式によって表れ、
【0017】
【0018】
異常なしのコンポーネントと異なる空洞サイズにおける各測定単位グリッドの1次振動周波数との差を分析することによって空洞の位置を決定する。
【0019】
本発明の別の目的は、レーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法を実行するレーザードップラー振動計を用いた外壁断熱層の空洞検出装置を提供することにあり、該装置は、
異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの固有振動特性を比較、分析を行い、異なる空洞コンポーネントにおける空洞の位置決め及び空洞の大きさを検出して判定するためのレーザードップラー非破壊振動計を含む。
【0020】
前記レーザードップラー非破壊振動計は組立プラットフォームに取り付けられ、前記レーザードップラー非破壊振動計には、デジタルオーディオケーブルを介してそれぞれVib20データ収集装置とACアダプタがそれぞれ接続され、前記ACアダプタにはリチウム電池電源がさらに接続されている。
【0021】
上述したすべての技術案を結合して、本発明が備える利点及び積極的な効果は、本発明が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法は、1面の建築壁を選択し、同じビーズ法ポリスチレンフォーム3枚をセメントモルタルを使って壁に貼り付け、断熱層の空洞を異なる面積の未粘着領域に近似仮定し、外壁断熱層の異なる空洞の作業モードを模し、レーザードップラー非破壊振動計を用いてマトリックス式測定点を打って検出対象の振動特性を取得し、その検出位置のモーダルデータを分析し、空洞解消による構造モーダルデータに与える影響のルールを分析し、さらに検出対象モーダルデータの変化ルールを介して壁体断熱層材料の空洞解消検出及び定量的評価を実現し、実際工事のために、検出が便利で、実際に有効で、実行可能性が高い断熱層材料の非破壊検出技術を提供することができる。
【0022】
従来技術に比べて、レーザードップラー振動測定システムは重量が軽く、携帯に便利で、測定精度が高く、空間分解能が高く、動的応答が速く、非接触測定などの利点があり、複雑な環境における振動測定に適している。室内類似材料の断熱層脱落モデル試験を行い、VibSoftソフトウェアによりデータ分析処理を行い、収集されたサンプルの振動時刻歴波形をフーリエ変換してサンプルの振動スペクトル波形を得、スペクトル波形によりサンプルが低周波振動状態にあることを明らかにし、各グループのサンプルの振動基本周波数値はすべて50Hz以内に制御し、その1次、2次、3次の周波数を記録し、異常なしのコンポーネント(空洞を含まない)と空洞を含むコンポーネントに対してその固有振動特性を比較分析し、さらに断熱層空洞の位置決め及び空洞の大きさの定量分析を初歩的に検出して判定する。異常なしのコンポーネントに比較して、空洞を含むサンプルの振動周波数は下降傾向を呈し、空洞面積とその振動周波数は逆比を呈したことが発見し、
図8に示すように、本実験の分析結果により、外壁外断熱層の品質に対して迅速かつ有効な検出と評価を行うことができ、大きな社会的意義がある。
【0023】
本発明の積極的な効果として、以下のいくつかの重要な点にも表れ、
レーザードップラー振動測定は最適な変位と速度解像度を得ることができる遠隔振動測定方法であり、物体固有振動数を測定しやすく、非接触式、高精度検出、高空間解像度、動作応答が速く、検出プログラムが簡易軽便であるなどの利点がある。人力、物力、時間を大幅に減らすことができる。振動に基づく損傷識別技術は振動信号の測定と収集が容易であるため、検出装置は簡便に持ち運ぶことができ、しかも検出過程は構造の正常な運行を中断する必要がなく、あるいは特定の励起装置が必要であるため、高い応用価値がある。
レーザードップラー振動測定は現在、ビーム構造、複合材料、送油管などの損傷測定、斜張橋のケーブル張力テスト、地盤土区分、震害予測、斜面スロープ防護、機械分野及び不安定な岩屑安全監視と地すべりの安全安定性評価などの方面に応用されているが、レーザードップラー振動測定方法の断熱層構造への応用による非破壊検出はまだ報告されていない。
現在、国内外でよく使われている伝統的な建築外壁断熱層の検出方法は引き抜き法、手動ノック法、赤外線熱イメージング測定法を含み、その中で引き抜き法を採用して検出する時、構造の全体性を破壊し、構造に一定の損傷を与え、マイクロダメージ検出方式であり、しかもこの方法の検出効率が低く、検出が困難である。手動ノック法は検出員の主観的な判断に依存しすぎて、検出時に機械設備に接触する必要があり、検出プログラムが複雑で、しかも検出結果が不完全で漏れがあり、危険性が高い。赤外線熱イメージング測定法は大面積の一般調査断熱材料の健康検出を実現することができるが、この検出方法は検出環境と気候の影響を受けやすく、断熱材料の損傷を正確に識別することが難しいため、実際の応用には大きな限界がある。以上の伝統的な断熱層材料の健康検出方法はある程度表面の損傷或いは発見しやすい損傷しか検出できず、断熱層材料の裏面の空洞損傷を検出しにくい。損傷力学、振動力学に基づいて、工事構造は剛性、質量、減衰などの物理的なパラメータからなる力学システムと見なすことができ、構造に損傷が発生すると、構造剛性特性はそれに伴って変化する。レーザードップラー振動測定は固有振動数の変化に基づいて、断熱層の裏面の損傷状態を測定し、断熱層材料の空洞の位置決めと空洞の大きさの定量分析と評価を初歩的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
ここで図面は明細書に組み込まれ明細書の一部を構成し、本開示に適合する実施形態を示し、明細書とともに本開示の原理を説明するために使用され、
【
図1】本発明の実施例が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出装置の概略図である。
【
図3】本発明の実施例3が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例3が提供するビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS,Electronic PowerSteering)を選択して検出実験に用いられる検出コンポーネントの概略図である。
【
図5】本発明の実施例3が提供する振動時刻歴波形概略図である。
【
図6】本発明の実施例3が提供するMATLAB(登録商標)により振動時刻歴波形を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transformation)して得られた対応する振動スペクトル波形である。
【
図7】本発明の実施例3が提供する空洞含有サンプルは、その振動周波数が低下傾向になり、空洞面積とその振動周波数は逆比を呈する概略図である。
【
図8】本発明の実施例3が提供する異常なしのコンポーネントと異なる空洞サイズにおける各測定単位グリッドの1次振動周波数との差を分析することによって空洞の位置を決定する概略図である。
【
図9】本発明の実施例2が提供するレーザドップラー非破壊振動計の組立て図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明確にわかりやすくするために、以下に添付図面を用いて本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、本発明を十分に理解するために、多くの具体的な詳細を説明する。しかし、本発明は、本明細書に記載されたものとは異なる多くの他の態様で実施することができ、当業者は、本発明の内包に違反することなく同様の改良を行うことができるので、本発明は、以下に開示される特定の実施に限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施例がレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法は、以下のステップを含み、
対応するサイズに基づいて建物の壁に塗られた断熱層の表面に等間隔な測定グリッドを模して分割するステップ1と、
分割された各測定グリッドに基づいて、断熱層の裏面を異なる面積サイズの未粘着領域に分割し、断熱層の異なる空洞コンポーネントを真似するステップ2と、
レーザードップラー非破壊振動計1を用いて異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの振動特性を検出するステップ3と、
収集システムを通じてコンピュータ上でデータを収集し、検出データを整理、分析し、異なる空洞コンポーネントの中の空洞の位置決めと空洞の大きさを判定するステップ4。
【0027】
(実施例1)
図1に示すように、本発明の実施例が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法は、以下のステップを含み、
一面の建築壁を選択し、平らにするように研磨するS101と、
セメントモルタルを断熱層表面に塗布して現実の作業モードを模し、グリッドを分けて、それぞれ実験対象一、実験対象二、実験対象三と命名したS102と、
各断熱層の裏面に異なる面積の未粘着領域を設け、外壁断熱層の異なる空洞の作業モードを模し、セメントモルタルで壁面に貼り付けて固定するS103と、
レーザードップラー非破壊振動計1を組み立て、電源を入れ、実験対象をアライメントし、フォーカスリングを調整してピントを合わせ、相応の入力パラメータを調整し、マトリックス式点を打つS104と、
収集システムを通じてコンピュータ上でデータを収集し、その振動特性を整理し、分析するS105。
【0028】
本発明の実施例S101において、建築壁は建物の壁を選択し、S102における断熱層はビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS、Electronic Power Steering)を選択して分析対象とし、新型、軽量屋根の断熱材である。
【0029】
ビーズ法ポリスチレンフォームのパラメータは面積が600mm×600mm、厚さ50mmと面積1200mm×600mm、厚さ50mmの2種類の規格の断熱層材料である。
【0030】
本発明の実施例S104において、レーザードップラー非破壊振動計1による非接触非破壊検出を行い、室内類似材料の断熱層脱落モデル試験を行い、異常なしのコンポーネント(空洞を含まない)と空洞を含むコンポーネントによるその固有振動特性の比較分析、さらに断熱層材料の空洞の位置決めと空洞の大きさの定量分析を初歩的に検出して判定することができる。
【0031】
前記レーザードップラー非破壊振動計1は重量が軽く、携帯に便利で、測定精度が高く、空間分解能が高く、動的応答が速く、非接触測定などの利点があり、複雑な環境における振動測定に適している。
【0032】
本発明の実施例S104において、断熱層の空洞を異なる面積の未粘着領域に近似仮定し、外壁断熱層の異なる空洞の作業モードを模し、レーザードップラー非破壊振動計1を用いてマトリックス式測定点を打ってその検出データを分析することで、レーザドップラー振動測定技術による断熱層の空洞解消に対する有効性を決定する。
【0033】
例として、断熱層の空洞を異なる面積の未粘着領域に近似仮定し、外壁断熱層の異なる空洞の作業モードを模し、レーザードップラー非破壊振動計1を用いてマトリックス式測定点を打ってその振動特性を分析することで、レーザドップラー振動測定技術による断熱層の空洞解消に対する有効性を決定する。
【0034】
(実施例2)
図2と
図9に示すように、本発明の実施例が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出装置は、異なる空洞コンポーネントに対してマトリックス式点測定を行い、異なる空洞コンポーネントの固有振動特性を比較、分析を行い、異なる空洞コンポーネントにおける空洞の位置決め及び空洞の大きさを検出して判定するためのレーザードップラー非破壊振動計1を含む。前記レーザードップラー非破壊振動計1を組立プラットフォーム4に取り付けて、前記組立プラットフォーム4の下端には三脚8が取り付けられ、前記レーザードップラー非破壊振動計1には、デジタルオーディオケーブル3を介してそれぞれVib20データ収集装置2とACアダプタ6がそれぞれ接続され、前記ACアダプタ6にはリチウム電池電源5がさらに接続されている。
【0035】
(実施例3)
本発明の別の実施形態として、本発明の実施例が提供するレーザードップラー振動測定に基づく外壁断熱層の空洞検出方法のフローを
図3に示す。
【0036】
現在、建築外壁断熱層の検出作業には多くの困難が存在している。一つは検出が難しく、各地の建設工事プロジェクトが多く、工事量が多く、特に一部の高層建築物は検出が難しく、危険性が高く、早期検出早期修復の実行がなかなか難しい。そこで本発明が開示した検出方法はレーザーを用いて非接触式遠隔検出を実施することができ、大面積検出に適し、検出の自由度が大きく、測定精度が高く、空間分解能が高く、動的応答が速く、人員と環境に危害がなく、複雑な環境中の振動測定に適し、検出時間が短く、費用が低く、労働力消費が小さく、定期的な検出を行うことができる。第二に、現在の測定方法、例えばレーダー測定、赤外線熱イメージング測定などの方法は、環境、気候などの要素の影響も受けやすく、リアルタイム測定が不可能で、測定条件が限られており、本発明が開示した測定方法は随時測定することができ、環境の影響が小さく、建築外壁断熱層の脱落に対するトラブルシューティングやメンテナンスをタイムリーに行うことができ、外壁脱落の品質上の危険性を取り除き、生命財産の安全を守る。
【0037】
実験サンプルの準備、
本実験はビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS、Electronic Power Steering)を実験対象とし、新型、軽量屋根の断熱材料であり、本検出実験で選択された検出コンポーネントのパラメータは面積600mm×600mm、厚さ50mm仕様の断熱層材料である。
図4に示すように、EPSの片面に15mm厚のセメントモルタルを塗布し、室温で自然に凝固させた。
実験方法、
一面の建築壁を選択し、平らにするように研磨し、EPS板をセメントモルタルで壁面に固定するステップ1と、
必要に応じてΔx,Δyを取って測定グリッドを分割し、今回の実験ではΔx=6cm、Δy=6cmを取って、すなわち実験コンポーネントを100個のグリッドに分割するステップ2と、
開梱して機器を検査し、サンプルを検出する時、まずレーザードップラー振動測定システムの接続装置を完成し、PDV-100電源のスイッチを開き、レーザードップラー非破壊振動計1の光学遮断板を回転させて、ヘリウムネオンレーザービームを検出サンプルにアライメントし、信号強度指示バーに基づいてフォーカスリングを調整してピントを合わせ、速度レンジとローパスフィルタレンジを選択し、PDV-100レーザードップラー非破壊振動計1はヘテロダイン干渉法により、構造の振動特性が得られる。ブラッグセルの補助により、光検出器に高周波搬送波信号が発生し、PDV?100光学ヘッドから出射されたヘリウムネオンレーザーは、検出対象に照射すると同時に、反射光を収集し、レーザドップラー効果に基づく周波数シフト信号を復調することにより、検出対象の振動速度量が得られるステップ3と、
続いて、
図5に示すように、その空洞の大きさを順次変更し、本実験では4種類のモードを設置し、異常なしのコンポーネント、空洞面積120*120mm、240*240mm、360*360mmに分けた。マトリックス式点測定を行い、グリッドごとに40秒測定し、その振動時刻歴波形を収集するステップ4と、
振動信号の時間領域は信号の振幅が時間とともに変化したことだけに反応し、振動時刻歴波形は高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation、FFT)を行い、対応する振動スペクトル波形が得られ、
図6に示す。任意の外界励起力F(t)は周期Tが無限大となる外界励起力であり、隣接周波数の間隔Δω=2π/Tは無限小量であり、周波数は区間(-∞,∞)上で連続型分布に近づき、当Δω→0の場合、離散型変数ω
nが連続変換の周波数変数ωに変換し、スペクトル関数の式は以下によって表れ、
【0038】
【0039】
式中において、F(t)は外界励起力であり、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり、ωは周波数変数であり、tは時間変数であり、iは複素関数の中の虚数単位であり、eiωtはネイピア数を底とする指数関数であり、
上下限における周期Tを無限大にし、外界励起力F(t)のフーリエ変換式は以下によって表れ、
【0040】
【0041】
式中において、Φ(ω)は外界励起力F(t)の連続スペクトル関数であり、その測定結果の分析を簡便にするために、VibSoftソフトウェアによるデータ分析処理を行い、スペクトル波形からサンプルが低周波振動状態にあり、各グループのサンプルの振動基本周波数値はすべて50 Hz以内に制御されていることが分かって、その1次、2次、3次周波数を記録するステップ5と、
図7に示すように、異常なしのコンポーネント、空洞面積120*120 mm、240*240mm、360*360mmで測定した1次、2次、3次の周波数により、まずその空洞の大きさが全体EPS板の振動周波数に与えた影響を分析し、さらにその断熱層の損傷度を大まかに分析した。その中に空洞含有サンプルはその振動周波数が低下傾向にあり、空洞面積がその振動周波数に逆比を呈するステップ6と、
異常なしのコンポーネントと異なる空洞サイズモードにおける各測定単位グリッドの1次振動周波数との差を通じて、さらにその空洞の位置を分析して確定し、
図8に示すように、人為的ミスなどの要素を除いて、それは空洞の位置をよく反映することができ、検出結果は設定した空洞の位置とほぼ同じであるため、本検出方法の有効性を証明した。
【0042】
上記実施例では、各実施例の説明にそれぞれ重点が置かれており、ある実施例には詳細または記載されている部分はなく、他の実施例の説明を参照することができる。
【0043】
上述の装置/ユニット間の情報インタラクション、実行プロセスなどの内容は、本発明の方法の実施例と同じ構想、その具体的な機能及びもたらす技術的効果に基づいているので、具体的には方法に関する実施例の部分を参照することができ、ここではこれ以上説明しない。
【0044】
当業者は、説明の便利と簡潔のために、上述した各機能ユニット、モジュールの区分のみを例に挙げて説明することができ、実際の応用では、必要に応じて上述した機能の分配を異なる機能ユニット、モジュール、すなわち装置の内部構造を異なる機能ユニットまたはモジュールに分割して、上述したすべてまたは一部の機能を完成することができる。実施形態における各機能ユニット、モジュールは、1つの処理ユニットに統合されていてもよいし、個々のユニットが単独で物理的に存在していてもよいし、2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されていてもよい。上記統合されたユニットは、ハードウェアの形態で実現されてもよいし、ソフトウェア機能ユニットの形態で実現されてもよい。また、各機能ユニット、モジュールの具体的な名称も相互に区別しやすいようにするためだけであり、本発明の保護範囲を制限するためには使用されない。上記システムにおけるユニット、モジュールの具体的な動作過程は、上記方法の実施形態における対応過程を参照することができる。
【0045】
上記本発明の実施例に記載の技術的態様に基づいて、さらに以下の応用例を提案することができる。
【0046】
本発明はコンピュータをさらに提供し、該コンピュータは、少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、前記メモリに記憶されておりかつ前記少なくとも1つのプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムとを含み、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する際に、前記任意の方法の実施例におけるステップを実現することができる。
【0047】
本発明の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ可読記憶媒体には、プロセッサによって実行されるときに上述の各方法の実施形例におけるステップを実現することができるコンピュータプログラムが格納されている。
【0048】
本発明の実施例は、情報データ処理端末をさらに提供し、前記情報データ処理端末は、
電子装置上で実行する際に、上記各方法の実施例におけるステップを実施するためのユーザ入力インタフェースを提供するために用いられ、前記情報データ処理端末は、携帯電話、コンピュータ、スイッチに限定されない。
【0049】
本発明の実施例は、サーバをさらに提供し、前記サーバは、電子デバイス上で実行する際に、上記の各方法の実施例におけるステップを実施するためのユーザ入力インタフェースを提供するために用いられる。
【0050】
本発明の実施例は、コンピュータプログラム製品をさらに提供し、コンピュータプログラム製品が電子機器上で動作しているときに、電子機器を実行させると、上述の各方法の実施例におけるステップを実現することができる。
【0051】
前記統合されたユニットは、ソフトウェア機能ユニットとして実装され、独立した製品として販売または使用される場合、コンピュータ可読記憶媒体に格納することができる。このような理解に基づいて、本願は、上述の実施例の方法のすべてまたは一部のフローを実現するには、コンピュータプログラムを介して関連するハードウェアを命令して完成することができ、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に格納され、プロセッサによって実行されると、上述した各方法の実施例におけるステップを実現することができる。ここで、前記コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムコードを含み、前記コンピュータプログラムコードはソースコード形式、オブジェクトコード形式、実行可能なファイル、またはいくつかの中間形式などであることができる。前記コンピュータ可読記憶媒体は、少なくとも、コンピュータプログラムコードを写真撮影装置/端末装置に持ち運ぶことができる任意のエンティティまたは装置、記録媒体、コンピュータメモリ、読み取り専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random AccessMemory、RAM)、電気搬送波信号、電気信号、およびソフトウェア配布媒体を含む。例えば、Uディスク、リムーバブルハードディスク、磁気ディスク、光ディスクなど。
【0052】
上記実施例では、各実施例の説明にそれぞれ重点が置かれており、ある実施例には詳細または記載されている部分はなく、他の実施例の説明を参照することができる。
【0053】
上記実施例の積極的な効果をさらに証明するために、本発明は上記技術方案に基づく実験結果は以下の通り、本発明は常時微動技術に基づいて、レーザードップラー振動測定システムを通じて非接触無損失検出を行い、室内類似材料の断熱層脱落モデル試験を行い、異常なしのコンポーネント(空洞を含まない)と空洞を含むコンポーネントによるその固有振動特性を比較、分析し、さらに断熱層空洞の位置決め及び空洞の大きさの定量分析を初歩的に検出して判定する。本実験の成果は建築外壁外断熱層の品質に対して迅速かつ有効な検査と評価を行うことができ、大きな社会的意義がある。
【0054】
以上述べたのは、本発明の好ましい具体的な実施形態にすぎないが、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者が本発明の開示された技術範囲内で、本発明の精神と原則内で行われたいかなる修正、同等置換、改良などは、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0055】
1、レーザードップラー非破壊振動計;2、Vib20データ収集装置;3、デジタルオーディオケーブル;4、組み立てプラットフォーム;5、リチウム電池電源;6、ACアダプタ;7、三脚。