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特開2024-166099液体展開用シート、及び液体展開用シートの製造方法
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  • 特開-液体展開用シート、及び液体展開用シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166099
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】液体展開用シート、及び液体展開用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20241121BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N27/12 N
B32B27/18 Z
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072235
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023081279
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 豊
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G046
4F100
【Fターム(参考)】
2G046AA30
2G046BB02
2G046BB04
2G046CA06
2G046EA07
2G046FA01
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA18B
4F100GB66
4F100JD14B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】本発明は、検査チップ部材との接合、液体展開性、及び耐久性に優れた液体展開用シートを提供することをその課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも基材フィルムの片面にポリエステル系樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤を含む液体受容層を有し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが液体受容層の膜厚の10%地点におけるC20H44NO+フラグメントイオンをA、C7H4O+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1以上10以下である液体展開用シートである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材フィルムの片面にポリエステル系樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤を含む液体受容層を有し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをA、CO+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1以上10以下である液体展開用シート。
【請求項2】
飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の90%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをCとしたときにC/Aが0.1以上10.0以下である請求項1に記載の液体展開用シート。
【請求項3】
飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対して、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンが1%以上10%以下である請求項2に記載の液体展開用シート。
【請求項4】
前記液体受容層の厚みが0.5μm以上5.0μm以下である請求項3に記載の液体展開用シート。
【請求項5】
前記基材フィルムがいずれもポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項4に記載の液体展開用シート。
【請求項6】
生体液展開用シートとして用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の液体展開用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体展開用シート、及び液体展開用シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床医療の現場におけるPOCT(Point Of Care Testing)が、幅広い検査項目への広がりを見せている。これらPOCT検査機器においては、迅速に検査結果が得られることが強く求められている。特に、検査シートの親水性は、検査速度に支配的に影響を及ぼす重要な役割を果たすため、これまで様々な試みがなされており、例えば、特許文献1には、検査速度を制御する手法として液体受容層にバインダーと界面活性剤を用いる技術が開示されている。
【0003】
また、このような検査シートは電極シート等と接合されることでPOCT検査機器用検査チップとして用いられるため、その接合方法に関して様々な試みがなされており、例えば、特許文献2には、アクリル系接着剤を用いることで、検査シートとスペーサ、電極シートを積層する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-349860号公報
【特許文献2】特開2005-233917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の技術では、液体展開性に優れるものの、液体受容層表面に界面活性剤が偏在しているため、前述の特許文献2に記載の技術を用いた場合に検査チップ部材との接合が低下する、すなわち、検査シートと検査チップ部材(スペーサおよび電極シートなど)との接合部における接着強度が不十分である点で課題がある。すなわち、従来の液体展開用シートには、優れた液体展開性と、優れた検査チップ部材との接合との、両立ができていないとの課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するため、検査チップ部材との接合と液体展開性に優れた液体展開用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次によって解決することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の液体展開用シートに関する好ましい一態様は以下の構成をとる。
(1)少なくとも基材フィルムの片面にポリエステル系樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤を含む液体受容層を有し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをA、CO+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1以上10以下である液体展開用シート。
(2)飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の90%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをCとしたときにC/Aが0.1以上10.0以下である(1)に記載の液体展開用シート。
(3)飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対して、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンが1%以上10%以下である(2)に記載の液体展開用シート。
(4)前記液体受容層の厚みが0.5μm以上5.0μm以下である(3)に記載の液体展開用シート。
(5)前記保護基材及び前記基材フィルムがいずれもポリエチレンテレフタレートフィルムである、(4)に記載の液体展開用シート。
(6)生体液展開用シートとして用いられる、(1)~(5)のいずれかに記載の液体展開用シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、検査チップ部材との接合、及び液体展開性に優れた液体展開用シートを提供することができる。これにより、本発明の液体展開用シートを用いた検査チップは、検査速度、及び耐久性に優れる。すなわち、本発明の液体展開用シートを用いた検査チップにより安価で迅速な検査が可能となる。なお、液体展開用シートの検査チップ部材との接合に優れるとは、液体展開用シートと検査チップ部材との接合部における接着強度が十分に高いことを意味する。そして、液体展開用シートと検査チップ部材との接合部における接着強度が十分に高いと、液体展開用シートおよび検査チップ部材を備える検査チップの耐久性が優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態の液体展開用シートの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液体展開用シートは、少なくとも基材フィルムの片面にポリエステル系樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤 を含む液体受容層を有し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをA、CO+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1以上10以下である。このような態様とすることにより、本発明の液体展開用シートは、検査チップ部材との接合、液体展開性、及び耐久性に優れる。そして、本発明の液体展開用シートを用いた検査チップは、検査速度、及び耐久性に優れる。以下、本発明の液体展開用シートについて具体的に説明する。
【0011】
なお、液体展開用シートの液体受容層と基材フィルムとの密着性にも優れ、さらに液体展開用シートとして用いる温度領域での液体受容層の硬さにも優れることで、この液体展開用シートを用いた検査チップの耐久性も優れたものとなる。また、液体展開用シートの液体展開性が優れることで、この液体展開用シートを用いた検査チップとして検査速度も優れたものとなる。
【0012】
ここで、図1は、本発明の一実施形態の液体展開用シートの模式的な断面図である。この液体展開用シート3は、液体受容層1、基材フィルム2をこの順に有している。
【0013】
(液体受容層)
本発明の液体展開用シートが備える液体受容層は、ポリエステル系樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤を含み、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをAとし、CO+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1以上10以下である。ここで、上記のAは、C2044NO+フラグメントイオンの検出量が多いこと、すなわち上記の10%地点においての四級アンモニウム塩系界面活性剤の含有量が多いことで大きくなる。一方で、上記のBは、CO+フラグメントイオンの検出量が多いこと、すなわち上記の10%地点においてポリエステル系樹脂の含有量が多いことで大きくなる。つまり、B/Aの値が1以上10以下であるとは、上記の10%地点、すなわち、本発明の液体展開用シートの液体受容層で構成される表面の表面付近においては、四級アンモニウム塩系界面活性剤の含有量とポリエステル系樹脂の含有量が同じであるか、特定の範囲内においてポリエステル系樹脂の含有量が四級アンモニウム塩系界面活性剤の含有量よりも多いことを意味する。このような形態をとることで、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合、液体展開性、及び耐久性に優れたものとなる。
【0014】
上記のポリエステル樹脂は、グリコール成分と二塩基酸成分を共重合したポリエステル樹脂のことをいう。このような形態をとることで、液体受容層と基材フィルムとの密着性が向上する。液体受容層と基材フィルムとの密着性が向上することで、液体受容層が基材フィルムから剥離することが抑制されるため、液体展開用シートとして耐久性に優れたものとなる。また、検査チップ部材間を接合するための接着剤との密着性が向上するため、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。
【0015】
尚、検査チップ部材間を接合するための接着剤としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、及びポリ酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0016】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオ-ル、1,3-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1.3-シクロヘキサンジメタノール、1,2シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールS、ビスフェノ-ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノ-ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノ-ルSのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノ-ルSのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサスイド付加物、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0017】
ポリエステル樹脂の二塩基酸成分としては、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボンル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族や脂環族二塩基酸等が挙げられる。
【0018】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合、及び耐久性をより向上させる観点から40℃以上100℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃以下であることにより、液体受容層と基材フィルムとの密着性が十分となることから、液体展開用シートとして耐久性に優れたものとなる。また、検査チップ部材間を接合するための接着剤との密着性が向上することから、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。同様の観点から、ガラス転移温度を90℃以下とすることがより好ましい。
【0019】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40℃以上であることにより、液体展開用シートとして用いる温度領域での液体受容層の硬さが向上するため、液体展開用シートとして耐久性に優れたものとなる。同様の観点から、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、60℃以上とすることがより好ましい。上記の観点からガラス転移温度は、60℃以上100℃以下とすることがより好ましい。
【0020】
ポリエステル樹脂は液体受容層の基材フィルムへの加工性の観点から溶剤可溶性を有することが好ましい。ここで意味する溶剤可溶性とは、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルの単独またはこれら内の任意の複数種からなる任意の混合比からなる混合溶媒の内のいずれか一種以上に25℃で3質量%以上溶解するものをいう。
【0021】
ポリエステル樹脂の含有量としては、液体受容層100.0質量%中、ポリエステル樹脂を80.0質量%以上含むことが好ましい。ポリエステル樹脂を80.0質量%以上含むことで、液体受容層と基材フィルムとの密着性、及び検査チップ部材間を接合するための接着剤との密着性が向上し、かつ液体受容層の表面硬度が向上するため、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合、及び耐久性に優れるものとなる。同様の観点で、83.0質量%以上含有することがより好ましく、86.5質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0022】
また、ポリエステル樹脂の含有量は98.9質量%以下含むことが好ましい。ポリエステル樹脂を98.9質量%以下含むことで、液体受容層中に四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤の含有量比率を増やすことができるため、液体展開用シートとして液体展開性に優れる。同様の観点で、96.7質量%以下含有することがより好ましく、92.3質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0023】
上記の観点からポリエステル樹脂は、液体受容層100.0質量%中、80.0質量%以上98.9質量%以下含有することが好ましく、83.0質量%以上96.7質量%以下含有することがより好ましく、86.5質量%以上92.3質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0024】
液体受容層は、四級アンモニウム塩系界面活性剤を含むことで液体受容層の表面抵抗値が低下し、液体受容層の濡れ性が向上するため、液体展開用シートとして液体展開性に優れる。また、四級アンモニウム塩系界面活性剤がポリエステル樹脂、及びアセチレングリコール系界面活性剤と相互作用し、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面への析出を制御することができるため、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。上記と同様の観点で、四級アンモニウム塩系界面活性剤としてはポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩がより好ましい。
【0025】
尚、四級アンモニウム塩系界面活性剤としては、アルキルジメチルアンモニウム塩界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩界面活性剤、ジアルキルジメチルアンモニウム塩界面活性剤、塩化ベンゼトリウム界面活性剤、および塩化ベンザルコニウム界面活性剤等が挙げられる。また、これらの四級アンモニウム塩系界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、複数が組み合わされて用いられてもよい。
【0026】
このような態様とすることにより、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面 からの深さが液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをA、CO+フラグメントイオンをBとしたときにB/Aが1.0以上10.0以下となる。
【0027】
B/Aを1.0以上とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が過剰に析出されることが抑制されるので、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。同様の観点でB/Aは3.0以上とすることがより好ましい。
【0028】
また、B/Aを10.0以下とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が十分に析出されるため、液体受容層の濡れ性と基材フィルムと液体受容層との密着性が向上するため、この液体展開用シートとして液体展開性、及び耐久性に優れたものとなる。同様の観点でB/Aは8.0以下とすることがより好ましい。
【0029】
上記と同様の観点で、液体受容層の飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の90%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをCとしたときにC/Aが0.10以上10.00以下であることが好ましい。
【0030】
C/Aが0.10以上とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が過剰に析出されることが抑制されるので、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。
【0031】
また、C/Aが10.00以下とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が十分に析出されるため、液体受容層の濡れ性が向上するとともに基材フィルムと液体受容層の密着性が向上するため、液体展開用シートとして液体展開性、及び耐久性に優れたものとなる。
【0032】
さらに、上記と同様の観点で、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルにおいて、前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対して、前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンが1%以上10%以下であることが好ましい。
【0033】
前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対する、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンが1%以上とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が十分に析出されるため、液体受容層の濡れ性が向上するため、液体展開用シートとして液体展開性に優れたものとなる。
【0034】
また、前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対する、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンが10%以下とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が過剰に析出されることが抑制されるので、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。
【0035】
飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイルを測定方法としては、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF.SIMS 5(ION-TOF社製)を用い、一次イオンをBi3++、二次イオン極性を正、エッヂングイオンをArガスクラスターイオンビームの条件にて実施することができる。
【0036】
四級アンモニウム塩系界面活性剤の含有量としては、液体受容層100.0質量%中、1.0質量%以上とすることで、液体受容層の表面抵抗値を低下させることができるため、液体受容層の濡れ性が向上し、液体展開用シートとして液体展開性に優れたものとなる。同様の観点から、3.0質量%以上含有することがより好ましく、7.0質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0037】
また、四級アンモニウム塩系界面活性剤の含有量を液体受容層100.0質量%中、17.0質量%以下とすることで、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面における四級アンモニウム塩系界面活性剤が過剰に析出されることが抑制されるので、検査チップ部材との接合に優れたものとなる。同様の観点で、15.0質量%以下含有することがより好ましく、12.0質量%以下含有することがさらに好ましい。なお、四級アンモニウム塩系界面活性剤の重量平均分子量は5000以上であることが好ましい。
【0038】
上記の観点から、本発明における四級アンモニウム塩系界面活性剤は、液体受容層100.0質量%中、1.0質量%以上17.0質量%以下含有することが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下含有することがより好ましく、7.0質量%以上12.0質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0039】
本発明に用いるアセチレングリコール系界面活性剤は、それ単独を純水に5質量%含ませると、当該純水の表面張力を30%以上小さくすることができる物質である。液体受容層は、アセチレングリコール系界面活性剤を含むことで液体受容層の濡れ性が向上するため、液体展開用シートとして液体展開性に優れる。また、アセチレングリコール系界面活性剤がポリエステル樹脂、及び四級アンモニウム塩系界面活性剤と相互作用し、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面への四級アンモニウム塩系界面活性剤の析出を制御することができるため、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。上記と同様の観点で、アセチレングリコール系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアセチレニック・グリコールエーテルがより好ましい。
【0040】
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量を液体受容層100.0質量%中、0.1質量%以上とすることで、液体受容層の濡れ性、及び基材フィルムと液体受容層との密着性が向上するため、液体展開用シートとして液体展開性、及び耐久性に優れたものとなる。同様の観点から、0.3質量%以上含有することがより好ましく、0.7質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0041】
また、アセチレングリコール系界面活性剤の含有量を液体受容層100.0質量%中、3.0質量%以下とすることで、四級アンモニウム塩系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤の液体受容層の基材フィルムの反対側の表面への析出を抑制することができるため、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。同様の観点から、2.0質量%以下含有することがより好ましく、1.5質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0042】
上記の観点から本発明におけるアセチレングリコール系界面活性剤は、液体受容層100.0質量%中、0.1質量%以上3.0質量%以下含有することが好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下含有することがより好ましく、0.7質量%以上1.5質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0043】
本発明の液体受容層の厚みは、液体展開用シートとして液体展開性、及び耐久性を優れたものとするとの観点から、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。液体受容層の厚みを0.5μm以上とすることで、液体展開用シート加工時の擦り傷等による液体受容層の滑落や、ピンホールの発生を防ぐことができ、さらに、液体受容層と基材フィルムとの密着性が向上するため、液体展開用シートとして耐久性に優れたものとなる。同様の観点で0.7μm以上とすることがより好ましい。
【0044】
また、液体受容層の厚みを5.0μm以下とすることで、基材フィルムに液体受容層を塗工する工程において液体受容層が安定的に加熱されるため、アセチレングリコール系界面活性剤がポリエステル樹脂、及び四級アンモニウム塩系界面活性剤と相互作用し、液体受容層の基材フィルムの反対側の表面への四級アンモニウム塩系界面活性剤の析出を制御することができることから、液体展開用シートとして検査チップ部材との接合に優れたものとなる。同様の観点で3.0μm以下とするがより好ましい。
【0045】
本発明の液体受容層のポリエステル樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の組成に関し、原料の配合から把握できないときは、定性・定量分析方法として以下のLC/MS/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)、及び熱分解GC/MSを好ましく用いることができる。
【0046】
<分離・抽出>
層0.04gを25mLメスフラスコに秤量する。続いて、メスフラスコにHFIP(1,1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)/クロロホルム(体積比1/1)を1mL加えて層を溶解させ、クロロホルムを2mL加えた後に、アセトニトリルを徐々に加えて、ポリエステル樹脂成分を不溶化させる。
【0047】
アセトニトリルを加え、25mLに定容後、調整した溶液をアセトニトリルで100倍希釈し、PTFEディスクフィルタ(0.45μm)で濾過して得られた濾液を測定溶液とする。
【0048】
<定性分析>
前記測定溶液をLC/MS/MSに供し、クロマトグラムから四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤由来のピークが検出されるリテンションタイム及びピーク面積を確認する。続いて、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤由来のピークについて質量分析を行うことで定性分析する。アセチレングリコール系界面活性剤についてはそれ由来の正イオン及び負イオンの式量を確認して定性する。
【0049】
前記不溶化されたポリエステル樹脂を熱分解GC/MSに供し、ポリエステル樹脂由来のピークについて質量分析を行うことで定性分析する。
【0050】
<標準溶液調整及び検量線作成>
定性済みの四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の標品0.01gを10mLメスフラスコに秤量後、メタノールで溶解して10mLに定容することで標準溶液とする。標準溶液を分取し、メタノールでそれぞれ希釈することで計4種類の任意の濃度の標準溶液を得、LC/MS/MSに供することで、各濃度に対するクロマトグラムのピーク面積を確認する。溶液濃度とピーク面積の関係について直線近似することで検量線を得る。
【0051】
<定量分析>
定性分析で確認したクロマトグラムから四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤由来のピークが検出されるピーク面積を検量線の式に代入し、層に含まれる四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の濃度を算出することで、ポリエステル樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の含有量を得る。
【0052】
上記のLC/MS/MSによる分析は、LC20-A(LCシステム、株式会社島津製作所製)、API4000(MSシステム、株式会社AB SCIEX製)ODS-3(ジーエルサイエンス株式会社製、カラム、“Intersil”(登録商標))を用い、イオン化法APCI(大気圧化学イオン化法)、正イオン検出及び負イオン検出、測定モードSRM(Selected reAction monitoring)、カラム温度50℃、流量0.25mL/min、注入量1μLの条件にて実施することができる。
【0053】
また、熱分解GC/MSは、PY3030D(フロンティア・ラボ株式会社)、及びGCMS-QP2010(株式会社島津製作所製)を用い、加熱温度500℃、昇温速度50℃/minの条件にて実施することができる。
【0054】
(基材フィルム)
本発明の液体展開用シートにおける基材フィルムは、寸法安定性や耐久性の観点からポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート、ポリエチレンα,β-ビス(2-クロルフェノキシ)エタン4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどからなるフィルムが好ましい。これらは共重合体であってもよい。これらの中でも、液体展開用シートの取り扱い性と耐久性に優れる点から、基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム、すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが特に好ましく、同様の観点から二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが最も好ましい。
【0055】
基材フィルムの厚みは寸法安定性や耐久性に優れる観点から10μm以上とすることが好ましい。同様の観点で、20μm以上とすることがより好ましく、30μm以上とすることがさらに好ましい。また、前記基材フィルムの厚みは検査シートとしての取り扱い性に優れる観点から500μm以下とすることが好ましい。同様の観点から300μm以下とすることがより好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。
【0056】
上記の観点から基材フィルムの厚みは、10μm以上500μm以下とすることが好ましく、20μm以上300μm以下とすることがより好ましく、30μm以上200μm以下とすることがより好ましい。
【0057】
(液体展開用シート)
本発明の液体展開用シートは、少なくとも液体受容層、基材フィルムをこの順に有することで、この液体展開用シートを検査チップに用いた場合に、検査速度、及び耐久性に優れる。上記のことにより、例えば、血液や尿等の生体試料や食品工業における原料や製品、果汁等の試料中に含まれる特定成分の検査・定量する液体展開用シートとして、好適に用いることができる。
【0058】
本発明の液体展開用シートの製造方法は、例えば、以下の例示の材料、使用量、処理内容、処理手順等を挙げることができる。
【0059】
本発明の液体展開用シートは、例えば、基材フィルムの片面に、ポリエステル樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤を含む塗料組成物を塗布し、熱処理を施すことで製造することができる。熱処理の加熱温度としては100℃以上150℃以下が好ましい。加熱温度を100℃以上とすることで、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤が液体受容層の基材フィルムの反対面に析出させることができる、液体展開用シートとして液体展開性、及び耐久性に優れたものとなる。また、加熱温度を150℃以下とすることで、基材フィルムの寸法安定性を担保し、液体展開用シートの取り扱い性に優れたものとなる。
【0060】
液体受容層を得るためのポリエステル樹脂、四級アンモニウム塩系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤を含む塗料組成物を得るにあたって、各成分を混合分散する方法については特に制限はなく、マグネチックスターラー、ホモディスパー、超音波照射、振動分散、及び手動による混合分散などの公知の混合分散方法を用いることができる。また、塗布組成物は、基材フィルムに対する塗工性を向上させる観点から有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒としては例えば、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、塗材組成物には、本発明の効果を損なわない限り、フィルムロールに巻き取った際のブロッキング防止や基材フィルムに対する塗工性を向上させる観点で、無機粒子、有機粒子、レベリング剤等を配合することができる。
【0061】
液体受容層を基材フィルムに積層する方法としては例えば、コンマコート法、アプリケーター法、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、リバースコート法、キスコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号参照)などが好ましく、加工性の観点から、ワイヤーバーコート法、リバースコート法、及びグラビアコート法が更に好ましい。
【0062】
また、本発明の液体展開用シートは、生体液展開用シートに好適に用いることができる。ここで、生体液とは、血液や尿等を意味する。
【実施例0063】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0064】
[測定および評価方法]
(1)液体受容層の厚み
液体受容層の厚み(μm)は、手動回転式ミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製、“HistoCore BIOCUT”(登録商標)を用いて液体展開用シートを厚みに対して垂直方向に切削して液体展開用シートの断面を得て、走査型電子顕微鏡(FEI社製、XL30 SFEG)用いて導電層の断面を加速電圧20kV、観察倍率100,000倍で観察し、その断面写真より任意の5ヶ所を測定して得られた値の平均値を算出することにより求めた。
【0065】
(2)飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定されるデプスプロファイル
ロール状に巻き取った液体展開用シートを無作為に抽出した3箇所で100mm×100mmの正方形状に切り出して、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF.SIMS 5(ION-TOF社製)、及び測定ソフトSURFACE LAB 6(ION-TOF社製)を用い、液体展開用シートの液体受容層の基材フィルムの反対面表面から深さ方向に一次イオンをBi3++、二次イオン極性を正、エッヂングイオンをArガスクラスターイオンビームの条件にて測定を行い、液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面からの深さが前記液体受容層の膜厚の10%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをA、CO+フラグメントイオンをB、深さが前記液体受容層の膜厚の90%地点におけるC2044NO+フラグメントイオンをCとして、3箇所の平均値を用いてB/A、及びC/Aを算出した。
【0066】
また、前記液体受容層全体のC2044NO+フラグメントイオンに対する、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンについては、前記液体受容層の膜厚の表面から基材フィルム界面までのC2044NO+フラグメントイオン総数をD、前記液体受容層の前記基材フィルムの反対側の表面におけるC2044NO+フラグメントイオンをEとし、3箇所の平均値を用いてE/Dを算出し、得られた値に100を乗じてE/D×100として算出した。なお、E/D×100の単位は%である。
【0067】
(3)液体受容層の組成分析
ロール状に巻き取った液体展開用シートを無作為に抽出した1箇所で100mm×100mmの正方形状に切り出して、液体展開用シートから液体受容層を剥離し、HFIP(1,1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)/クロロホルム(体積比1/1)で溶解し、クロロホルムを2mL加えた後に、アセトニトリルを徐々に加えて、樹脂成分を不溶化させる。次いで、アセトニトリルを加え、25mLに定容後、調整した溶液をアセトニトリルで100倍希釈し、PTFEディスクフィルタ(0.45μm)で濾過して得られた濾液を測定溶液として得る。得られた測定溶液をLC20-A(LCシステム、株式会社島津製作所製)、API4000(MSシステム、株式会社AB SCIEX製)ODS-3(ジーエルサイエンス株式会社製、カラム、“Intersil”(登録商標))を用い、イオン化法APCI(大気圧化学イオン化法)、正イオン検出及び負イオン検出、測定モードSRM(Selected reAction monitoring)、カラム温度50℃、流量0.25mL/min、注入量1μLの条件にてLC/MS/MSを行い、得られた物質のピークについて質量分析を行うことで、樹脂成分以外の組成を分析した。
【0068】
不溶化された樹脂は、PY3030D(フロンティア・ラボ株式会社)、及びGCMS-QP2010(株式会社島津製作所製)を用い、加熱温度500℃、昇温速度50℃/minの条件で熱分解GC/MSを行い、樹脂由来のピークについて質量分析を行うことで樹脂成分の組成分析を行った。
【0069】
(4)基材フィルムの組成分析
(3)の方法にて、液体受容層を剥離した基材フィルムについて、PY3030D(フロンティア・ラボ株式会社)、及びGCMS-QP2010(株式会社島津製作所製)を用い、加熱温度500℃、昇温速度50℃/minの条件で熱分解GC/MSを行い、基材フィルム由来のピークについて質量分析を行うことで基材フィルム成分の組成分析を行った。
【0070】
(3)液体受容層と基材フィルムとの密着性
ロール状に巻き取った液体展開用シートを無作為に抽出した3箇所で100mm×100mmの正方形状に切り出して、液体受容層と基材フィルムとの密着性をクロスカットガイドCCJ-1(コーテックス株式会社製)を用いて、JIS K5600-5-6(1999)に基づき、液体受容層と基材フィルムとの密着性を以下の基準で評価し、C以上を合格とした。
A:分類0
B:分類1
C:分類2
D:分類3、分類4、分類5
(4)液体受容層の液体展開性
ロール状に巻き取った液体展開用シートをフィルム全長の10%、50%、90%の3箇所において、100mm×100mmの正方形状に切り出して測定用サンプルとし、ブドウ糖注射液(大塚製薬社製「大塚糖液50%」)5μlを測定用サンプルの液体受容層表面に滴下し、滴下30秒後のブドウ糖注射液の拡がりを測定した。拡がりは液の直径を測定し、液が楕円状の場合は短径を直径とみなした。3箇所の平均値を算出し、ブドウ糖注射液の拡がりが5mm以上であるときを合格とした。但し、拡がりが5mm以上であっても液体受容層の裏面側にブドウ糖注射液が流れる場合は、Nとし不合格とした。
【0071】
(5)検査チップ部材との接合性
ロール状に巻き取った液体展開用シートをフィルム全長の10%、50%、90%の3箇所で幅10mm×150mmの矩形に切り出し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)S10)にポリエステル樹脂(東亞合成株式会社製“アロンメルト”(登録商標)PES310S30)を積層したポリエステル樹脂積層フィルムのポリエステル樹脂面と液体受容層面を重ね合わせ、ラミネータ(株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータ)を用いて、ラミネータ温度120℃、ライン速度2m/分、線圧2kgf・cmの条件で熱接着加工を行い、密着力測定用サンプルを作製した。この密着力測定用サンプルのポリエステル樹脂面と液体受容層面との間で、強制的に剥離し、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離100mm、引張速度を100mm/分として、180°剥離試験を行った。剥離長さ130mm(チャック間距離230mm)になるまで測定を行い、剥離長さ25mm~125mmの荷重の平均値を検査チップ部材との接合性の評価とし、以下の基準で評価してC以上を合格とした。
A:6.0N/cm以上
B:4.0N/cm以上6.0N/cm未満
C:2.0N/cm以上4.0N/cm未満
D:2.0N/cm未満
[材料]
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製“ペスレジン”(登録商標)S140)
(界面活性剤A)
ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩(東邦化学工業株式会社製“アンステックス”(登録商標)C-200X)
(界面活性剤B)
ポリオキシエチレンアセチレニック・グリコールエーテル(日信化学工業株式会社製“オルフィン”(登録商標)E1004)
(界面活性剤C)
アルキルトリメチルアンモニウム塩界面活性剤(東邦化学工業株式会社製“カチナール”(登録商標)LTC-35A)
(基材フィルムA)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)S10、厚み75μm)
(基材フィルムB)
ポリブチレンテレフタレートフィルム(大倉工業株式会社製ESRM、厚み75μm)
[実施例1]
液体受容層を得るための原料を表1に示す組成とし、それぞれをエチルメチルケトンに溶解して、ホモディスパー(プライミクス株式会社製)を用いて原料を混合分散し、10質量%調整溶液とした。次いで、厚み75μmの基材フィルム(東レ株式会社製二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(登録商標)S10)の片面に液体受容層を得るための調整溶液をグラビアコート法で塗布し、120℃で乾燥後、厚み1.0μmの液体受容層を積層し、液体展開用シートを得て、これをロール状に巻き取った。
【0072】
[実施例2~10、比較例1~3]
各層の、溶媒を除く組成、基材フィルム、液体受容層塗布後の乾燥温度、液体受容層の厚みを表1~3に記載のとおりとし、液体展開用シートを製造した。評価結果を表1~3に示す。
【0073】
実施例1~10の液体展開用シートはいずれも、液体受容層の検査チップ部材との接合、液体展開性、及び耐久性に優れるものであった。
【0074】
一方で、比較例1の液体展開用シートは実施例の液体展開用シートに比べ、液体受容層と基材フィルムとの密着性、及び液体展開性に劣るものであった。
【0075】
また、比較例2、及び比較例3の液体展開用シートは実施例の液体展開用シートに比べ、検査チップ部材との接合性に劣るものであった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【符号の説明】
【0079】
1:液体受容層
2:基材フィルム
3:液体展開用シート
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の液体展開用シートは、液体、例えば、血液や尿等の生体液成分を検査・定量する際に好ましく用いられ、生体液展開用シートとして好適に用いることができる。
図1