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特開2024-166102デューティサイクル送信の枯渇を通知するための無線信号送信方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166102
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】デューティサイクル送信の枯渇を通知するための無線信号送信方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20241121BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241121BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20241121BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W84/12
H04W52/02 111
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074494
(22)【出願日】2024-05-01
(31)【優先権主張番号】2023901522
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】522328389
【氏名又は名称】モース マイクロ ピーティーワイ. リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ウォズワース オリバー サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ポープ ロス アンドリュー
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デューティサイクル制約に適合する無線通信のシグナリング方法及び装置を提供する。
【解決手段】無線通信システムにおいて、シグナリング方法は、デューティサイクル制約および観測ウィンドウ内の累積送信時間に基づいて導出される送信バジェットが枯渇しようとしているかどうかを判定するステップと、送信バジェットが枯渇しようとすると判定したことに応答して、電力管理ビットを搬送する第1データフレームをピア装置に送信し、送信バジェットが枯渇したとマークするステップと、送信バジェットを経時的に更新し、電力管理ビットを搬送する第2データフレームをピア装置に送信し、更新された送信バジェットに従ってピア装置との通信を再開するステップと、を含む。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークに無線接続するピア装置に通知するためのシグナリング方法であって、前記シグナリング方法は、
送信バジェットが枯渇しようとしているかどうかを判定するステップであって、前記送信バジェットは、デューティサイクル制約および観測ウィンドウ内の累積送信時間に基づいて導出されるステップと、
前記送信バジェットが枯渇しようとすると判定されたことに応答して、電力管理ビットを搬送する第1データフレームをピア装置に送信し、前記送信バジェットが枯渇したとマークするステップと、
前記送信バジェットを経時的に更新し、電力管理ビットを搬送する第2データフレームをピア装置に送信し、更新された送信バジェットに従ってピア装置との通信を再開するステップとを含む、ことを特徴とするシグナリング方法。
【請求項2】
電力管理ビットを搬送する前記第1データフレームは、電力管理モードに入ることをピア装置に通知するために使用され、
電力管理ビットを搬送する前記第2データフレームは、電力管理モードを終了することをピア装置に通知するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項3】
電力管理ビットを搬送する前記第1データフレームは、サービス品質ヌル(QOS)[asleep]フレームであり、電力管理ビットを搬送する前記第2データフレームは、サービス品質ヌル[awake]フレームである、ことを特徴とする請求項2に記載のシグナリング方法。
【請求項4】
前記送信バジェットが閾値を下回るとき、前記送信バジェットが枯渇しようとし、前記閾値は、1つまたは1つ以上のフレームを送信するための通信時間に従って設定される、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項5】
前記閾値は、電力管理ビットを搬送する第1データフレームを送信するための通信時間より長く設定される、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項6】
前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判定することと、
前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックある場合にのみ、電力管理ビットを搬送する前記第2データフレームを送信することと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項7】
前記ピア装置からの1つまたは1つ以上のビーコンフレームを受信することと、
前記1つまたは1つ以上のビーコンフレームに従って、前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判定することと、を更に含む、ことを特徴とする請求項6に記載のシグナリング方法。
【請求項8】
前記送信バジェットが枯渇しているとマークされた場合、電力管理モードに入ることを更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項9】
前記ピア装置との通信を再開するために前記送信バジェットが更新される時点を計算することと、
前記時点に対応する情報を第3フレームに挿入することと、
前記第3フレームを前記ピア装置に送信することと、を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項10】
前記第3フレームは、ベンダー固有アクションフレームであり、
前記時点は、時刻同期機能(TSF)の観点から計算される、ことを特徴とする請求項9に記載のシグナリング方法。
【請求項11】
前記送信バジェットが閾値を下回る場合、送信バジェットが枯渇しようとし、
前記閾値は、電力管理ビットを搬送する第1データフレーム及び第3フレームを送信するための通信時間より長く設定される、ことを特徴とする請求項9に記載のシグナリング方法。
【請求項12】
前記ピア装置からビーコンフレームを受信することと、
前記ビーコンフレーム内のベンダーピア枯渇情報要素(IE)を解析することと、
前記ベンダーピア枯渇IEから再開時間を判定することと、
前記再開時間まで電力管理モードに入ることと、を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシグナリング方法。
【請求項13】
無線通信ネットワークに無線接続された1つまたは1つ以上のピア装置に通知するためのシグナリング方法であって、前記シグナリング方法は、
送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定するステップであって、前記送信バジェットは、デューティサイクル制約及び観測ウィンドウ内の累積送信時間に基づいて導出されるステップと、
前記送信バジェットが枯渇しようとすることに応答して、制限されたアクセスウィンドウパラメータセット(RPS)情報要素(IE)をビーコンフレームに挿入して、現在のターゲットビーコン送信時間(TBTT)と次のTBTTとの間のタイムスライスを予約するステップと、
現在のTBTTと次のTBTTとの間の無線チャネルでの1つまたは1つ以上のピア装置の送信が禁止されていることを通知するために、無線チャネルでビーコンフレームを送信するステップと、を含むことを特徴とするシグナリング方法。
【請求項14】
更に、前記送信バジェットが枯渇しようとすることに応答して、非ビーコンフレームをドロップすることを含む、ことを特徴とする請求項13に記載のシグナリング方法。
【請求項15】
前記ビーコンフレーム内の前記RPS IEは、無線通信ネットワーク内のいずれのピア装置にも割り当てられていない未使用のアソシエーションID(AID)を含み、
前記ビーコンフレームを受信する前記ピア装置は、現在のTBTTと次のTBTTとの間の無線チャネルへのアクセスが禁止される、ことを特徴とする請求項13に記載のシグナリング方法。
【請求項16】
前記送信バジェットが閾値を下回るとき、前記送信バジェットが枯渇しようとし、
前記閾値は、1つまたは1つ以上のビーコンフレームを送信するための通信時間より長く設定される、ことを特徴とする請求項13に記載のシグナリング方法。
【請求項17】
前記送信バジェットが次のTBTTにおいてまだ閾値を下回っているかどうかを判定し、次のTBTTにおいて前記送信バジェットがまだ閾値を下回っていることに応答して、RPS IEを次のビーコンフレームに挿入し、別のタイムスライスを予約し、次のビーコンフレームを1つまたは1つ以上のピア装置に送信することを更に含む、ことを特徴とする請求項16に記載のシグナリング方法。
【請求項18】
前記送信バジェットが前記閾値を超える時点を計算することと、
前記時点に対応する情報を前記ビーコンフレームに付加されるベンダーIEに挿入することとを更に含む、ことを特徴とする請求項16に記載のシグナリング方法。
【請求項19】
第1ピア装置から、ピア送信バジェットの枯渇を通知するベンダーアクションフレームを受信して解析することと、
前記ベンダーアクションフレームの受信に応答して、前記第1ピア装置のデータトラフィックをバッファリングし、前記第1ピア装置との通信を一時停止することと、
ベンダーアクションフレームから導出された時点の後に、バッファリングされたデータトラフィックを第1ピア装置に送信することと、を更に含む、ことを特徴とする請求項13に記載のシグナリング方法。
【請求項20】
無線通信ネットワークに無線接続された無線通信装置であって、前記無線通信装置は、受信機、送信機、プロセッサ、1つまたは1つ以上のメモリバンクを含み、
前記プロセッサは、前記受信機および前記送信機に通信可能に結合され、
前記メモリバンクは、前記プロセッサに通信可能に結合され、前記プロセッサが読み取り可能なコードを格納し、前記受信機および前記送信機と連携して前記プロセッサによって実行されると、
送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定するステップであって、前記送信バジェットは、デューティサイクル制約及び観測ウィンドウ内の累積送信時間とに基づいて導出されるステップと、
前記送信バジェットが枯渇しようとすると判定されたことに応答して、電力管理ビットを搬送する第1データフレームをピア装置に送信し、前記送信バジェットが枯渇しているとマークするステップと、
前記送信バジェットを経時的に更新し、電力管理ビットを搬送する第2データフレームを前記ピア装置に送信し、更新された送信バジェットに従って前記ピア装置との通信を再開するステップとを実行するように構成される、ことを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願に対する相互参照>
本出願は、2023年5月17日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2023901522号に基づく優先権を主張し、その内容は相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、無線通信に関する。具体的には、本開示の態様は、デューティサイクル制約に適合する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0003】
無線通信システム、例えば、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)は、典型的には、1つまたは1つ以上のステーション(STA)と通信する少なくともアクセスポイント(AP)を含む複数の無線通信装置を含む。無線通信システムのAPは、インターネット等の別のネットワークに結合されることがあり、STAが双方向通信することを可能にするか、またはSTAがAPを介してネットワーク内の他の装置と通信することを可能にすることがある。利用可能な周波数帯域は、WLAN内の膨大な数の無線通信装置と共有される可能性があり、特定の規制ドメインでは、基本サービスセット(BSS)内のAPとSTAの両方の媒体を使用する送信装置によって使用される通信時間に関するいくつかの周波数帯域の規制制約があり、これはデューティサイクル制約と呼ばれる。欧州や日本などの規制領域で動作する無線通信装置は、任意の観測ウィンドウ(観測ウィンドウ、observation window)において送信比率が所定のデューティサイクル以下になるように送信通信時間を制限する必要がある。観測期間に等しい長さを有する観測ウィンドウは、累積された送信時間を測定するために使用されるが、観測ウィンドウの開始が定義されていないため、パケットを送信するために各APまたはSTAによって使用される通信時間の割合は、任意の時間から始まる観測ウィンドウ内でデューティサイクル制約よりも小さくなければならない。観測期間はパケット送信時間に比べて比較的長く、例えば、いくつかの規制領域における観測期間は1時間に設定されている。このような制限されたチャネル内のオペレータが如何にこのデューティサイクル要件を達成するかは、ベンダーによって異なる。
【0004】
デューティサイクル制約に適合する無線通信装置は、各送信成功後に一定時間待機するように構成される。例えば、10%のデューティサイクル制約の場合、最近1ミリ秒(ms)の間無線チャネルを使用した無線通信装置は、このワイヤレスチャネルが再び利用できるようになるまで、さらに9ms待たなければならない。デューティサイクル制約を導入する目的は、周波数帯域を競合するすべての接続装置の無線メディアへの公平なアクセスを保証することである。多数の接続された装置がリアルタイムで長距離にわたって無線でデータを送信する必要があるリアルタイムモノのインターネット(IoT)システムの設計では、デューティサイクルの制約を考慮する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
以下の要約は、本明細書に開示される1つまたは1つ以上の態様に関連する技術的特徴を提示するものであり、企図されるすべての態様に関連する広範な概要とみなされるべきではなく、また、以下の要約は、企図されるすべての態様に関連する重要な要素または重要な要素を特定するもの、または任意の態様に関連する範囲を画定するものとみなされるべきではない。従って、以下の要約は、以下に提示される詳細な説明に先立ち、簡略化された形態で、本明細書に開示されるシグナリング方法に関連する1つまたは1つ以上の実施例に関連する特定の概念を提示することのみを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線通信ネットワークに無線接続された1つまたは1つ以上のピア装置に送信バジェットの枯渇を通知するためのシグナリング方法を開示する。シグナリング方法の実施例は、送信バジェットが枯渇しようとしているかどうかを判定することと、電力管理ビットを搬送する第1データフレームをピア装置に送信し、前記送信バジェットが枯渇しようとしている場合、前記送信バジェットが枯渇しているとマークすることと、送信バジェットを経時的に更新し、更新された前記送信バジェットに従ってピア装置との通信を再開するために、電力管理ビットを搬送する第2データフレームをピア装置に送信することとを含む。前記送信バジェットは、デューティサイクル制約と、観測ウィンドウ内の累積送信時間とに基づいて導出される。ピア装置の一実施例は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)のアクセスポイント(AP)である。
【0007】
一部の実施例において、電力管理ビットを搬送する前記第1データフレームは、電力管理モードに入ることをピア装置に通知するために使用され、電力管理ビットを搬送する前記第2データフレームは、電力管理モードを終了することをピア装置に通知するために使用される。例えば、電力管理ビットを搬送する前記第1データフレームは、サービス品質ヌル(QOS)[asleep]フレームであり、電力管理ビットを搬送する前記第2データフレームは、サービス品質ヌル[awake]フレームである。一部の実施例において、前記シグナリング方法は、 前記送信バジェットが枯渇しているとマークされた場合、電力管理モードに入ることを更に含む。
【0008】
一部の実施例において、前記送信バジェットが閾値を下回るとき、前記送信バジェットが枯渇しようとし、前記閾値は、1つまたは1つ以上のフレームを送信するための通信時間に従って設定される。例えば、前記閾値は、電力管理ビットを搬送する第1データフレームを送信するための通信時間より長く設定される。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記シグナリング方法は、前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判定することと、前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックある場合にのみ、電力管理ビットを搬送する第2データフレームを送信することと、を更に含む。前記シグナリング方法は、前記ピア装置からの1つまたは1つ以上のビーコンフレームを受信することと、前記1つまたは1つ以上のビーコンフレームに従って、前記ピア装置内にバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判定することと、を更に含む。
【0010】
一実施例において、独自のシグナリング方法は、前記ピア装置との通信を再開するために前記送信バジェットが更新される時点を計算することと、前記時点に対応する情報を第3フレームに挿入することと、前記第3フレームを前記ピア装置に送信することと、を更に含む。本実施例では、前記第3フレームは、ベンダー固有アクションフレームであってもよく、管理フレームの一種であってもよい。前記時点は、時刻同期機能(TSF)の観点から計算される. 前記送信バジェットは、前記第1データフレーム及び前記第3フレームの両方を送信するための通信時間より長い閾値を設定することにより、前記第1データフレーム及び前記第3フレームの送信のために確保され、前記送信バジェットが前記閾値を下回ると、前記送信バジェットが枯渇しようとする。
【0011】
前記シグナリング方法の一実施例では、前記ピア装置からビーコンフレームを受信することと、前記ビーコンフレーム内のベンダーピア枯渇情報要素(IE)を解析することと、前記ベンダーピア枯渇IEから再開時間を判定することと、前記再開時間まで電力管理モードに入ることと、を更に含む。
【0012】
シグナリング方法の他の実施例では、送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定するステップと、前記送信バジェットが枯渇しようとする場合、制限されたアクセスウィンドウパラメータセット(RPS)情報要素(IE)をビーコンフレームに挿入して、現在のターゲットビーコン送信時間(TBTT)と次のTBTTとの間のタイムスライスを予約するステップと、現在のTBTTと次のTBTTとの間の無線チャネルでの1つまたは1つ以上のピア装置の送信が禁止されていることを通知するために、無線チャネルでビーコンフレームを送信するステップと、を含む。前記送信バジェットは、デューティサイクル制約及び観測ウィンドウ内の累積送信時間に基づいて導出される。ピア装置の実施例は、APに関連付けられたSTAである。
【0013】
一部の実施例において、前記シグナリング方法は、前記送信バジェットが枯渇しようとすることに応答して、非ビーコンフレームをドロップすることを含む。一部の実施例では、前記ビーコンフレーム内の前記RPS IEは、無線通信ネットワーク内のいずれのピア装置にも割り当てられていない未使用のアソシエーションID(AID)を含み、前記ビーコンフレームを受信する前記ピア装置は、現在のTBTTと次のTBTTとの間の無線チャネルへのアクセスが禁止される。
【0014】
一部の実施例において、送信バジェットを閾値と比較することによって、送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定し、前記閾値は、1つまたは1つ以上のビーコンフレームの送信に必要な通信時間より長く設定される。場合によっては、次のTBTTで送信バジェットがまだ閾値を下回っている場合、RPS IEが次のビーコンフレームに挿入され、別のタイムスライスを予約する。次のビーコンフレームは、無線チャネルで送信され、RPS IEに従って、無線チャネルでの送信がまだ禁止されていることをピア装置に通知する。独自のシグナリングの一実施例では、前記送信バジェットが前記閾値を超える時点を計算することと、前記時点に対応する情報を前記ビーコンフレームに付加されるベンダーIEに挿入することとを含む。
【0015】
一実施例において、ベンダーアクションフレームが第1ピア装置からピア送信バジェットの枯渇を通知するベンダーアクションフレームを受信し、ベンダーアクションフレームに応答して、第1ピア装置のデータトラフィックがバッファリングされ、第1ピア装置との通信が一時停止される。ベンダーアクションフレームから時点が導出され、その時点の後にバッファリングされたデータトラフィックが第1ピア装置に送信される。
【0016】
本発明の他の観点では、無線通信ネットワークに無線接続された無線通信装置であって、前記無線通信装置は、受信機、送信機、プロセッサ、1つまたは1つ以上のメモリバンクを含み、前記プロセッサは、前記受信機および前記送信機に通信可能に結合され、前記メモリバンクは、前記プロセッサに通信可能に結合され、前記プロセッサが読み取り可能なコードを格納し、前記受信機および前記送信機と連携して前記プロセッサによって実行されると、 送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定するステップであって、前記送信バジェットは、デューティサイクル制約及び観測ウィンドウ内の累積送信時間に基づいて導出されるステップと、 前記送信バジェットが枯渇しようとすると判定されたことに応答して、電力管理ビットを搬送する第1データフレームをピア装置に送信し、前記送信バジェットが枯渇しているとマークするステップと、前記送信バジェットを経時的に更新し、電力管理ビットを搬送する第2データフレームを前記ピア装置に送信し、更新された送信バジェットに従って前記ピア装置との通信を再開するステップとを実行するように構成される、無線通信装置を開示する。
【0017】
本明細書に開示された態様に関連する他の目的および利点は、添付の図面および詳細な説明に基づいて当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本出願の例示的な態様を、以下の図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1】STAが電力管理モードからウェイクアップし、その送信バジェットに基づいてAPからバッファリングされたトラフィックを適応的に受信する動作を示すフローチャートである。
図2A】STAがそのデューティサイクル送信バジェットを使い果たしたときのシグナリング動作の一例を示す。
図2B】APがそのデューティサイクル送信バジェットを使い果たしたときのシグナリング動作の一例を示す。
図3A】本発明の一実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的な標準シグナリング方法を示す。
図3B】本発明の一実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的な独自のシグナリング方法を示す。
図3C】本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的なシグナリング方法を示す。
図3D】本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをAPが1つまたは1つ以上のSTAに通知するための例示的な標準シグナリング方法を示す。
図3E】本発明の一実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをAPが1つまたは1つ以上のSTAに通知するための例示的な独自のシグナリング方法を示す。
図3F】本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをAPが1つまたは1つ以上のSTAに通知するための例示的なシグナリング方法を示す。
図4】本発明の一実施形態による、STAが関連するAPに送信バジェットの枯渇について通知することを示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による、APが関連するAPに送信バジェットの枯渇について通知することを示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態による、関連するAPからその送信バジェットが枯渇したことを示すシグナリングを受信するSTAを示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態による、STAからその送信バジェットが枯渇したことを示すシグナリングを受信するAPを示すフローチャートである。
図8A】本発明の実施例を実施するための概略ブロック図である。
図8B】本発明の実施例を実施するための無線通信装置における受信機データフローアーキテクチャの概略ブロック図である。
図8C】本発明の実施例を実施するための無線通信装置における送信機データフローアーキテクチャの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の特定の態様および実施例を以下に示す。これらの実施例のいくつかは、独立して適用することができ、それらのいくつかは、当業者には明らかであろうように、組み合わせて適用することができる。以下の説明では、説明の目的で、本出願の態様を完全に理解できるように特定の詳細を記載する。しかしながら、これらの特定の詳細がなくても、様々な実施形態を実施できることは明らかであろう。図および説明は、限定することを意図したものではない。以下の実施例の説明は、当業者に例示的な態様を実施するための可能な説明を提供するものである。特許請求の範囲に規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置に変更を加えることができる。
【0020】
無線通信装置は、規制領域のデューティサイクル制約に準拠するために、デューティサイクルモードで動作するように構成される。前記無線通信装置は、常に1つのデューティサイクルモードで動作してもよく、複数のデューティサイクルモードのいずれかで動作するように構成されてもよい。デューティサイクルバーストモードは、従来のデューティサイクル拡散モードとともに開発されており、デューティサイクル拡散モードで連続する各パケット送信を遅延させる代わりに、デューティサイクルバーストモードで動作する無線通信装置は、パケットのバーストを1回のヒットで送信することができる。これは、ビデオドアベルやバッテリー駆動のカメラを使用する場合に非常に重要である。例えば、デューティサイクルが10%に制限されている装置は、送信がブロックされる前に、1時間のウィンドウで最大6分間のバーストトラフィックを発送することができる。1時間のウィンドウが十分に前方にスライドすると、例えば、6分間のバースト送信後に無線通信装置が54分間静止した後、当該無線通信装置は、再び送信できるようになる。デューティサイクルバーストモードで動作する無線通信装置の場合、送信バジェット(Transmission budget)が記録され、経過時間と送信に使用された通信時間に従って定期的に更新され、観測ウィンドウ内の残りの送信通信時間が反映される。また、デューティサイクル制約下で送信バジェットを超過した場合、送信がブロックされる。図1は、STAが電力管理モード(例えば、省電力モードまたはスリープモード)からウェイクアップし、その送信バジェットに基づいてAPからバッファリングされたトラフィックを適応的に受信する例示的な動作を示す。STAは、図1のステップS102において、電力管理モードからウェイクアップして、APから配信トラフィック指示メッセージ(DTIM)ビーコンフレームを受信する。STAは、まず、ステップS104で、受信しDTIMビーコンフレームに従ってAPにバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判断し、STAにバッファリングされたデータトラフィックがある場合、ステップS106で送信バジェットをチェックする。受信したDTIMビーコンフレームがAP内にバッファリングされたデータトラフィックがないことを示す場合、STAはステップS116でスリープに戻る。送信バジェットが枯渇している場合、STAは、更に、ステップS108において、利用可能な送信時間があるように観測ウィンドウが進んだかどうかを判断する。STAが送信を許可するように観測ウィンドウが進んだと判断した場合、ステップS110において、前記観測ウィンドウ及び前記送信バジェットはそれに応じて調整され、そうでない場合、STAは、ステップS116においてスリープに戻り、より多くの送信バジェットを蓄積する。ステップS112において、送信バジェットが送信を許可するように調整されているため、STAはAPに、APが覚醒(Awake)し、データトラフィックを受信する準備ができていることを通知する。ステップS114において、STAは、バッファリングされたデータトラフィックをAPから受信し、トラフィック送信後、ステップS116でスリープに戻る。
【0021】
本発明の実施例によれば、デューティサイクル拡散モードまたはバーストモードでの無線通信装置の送信バジェットを追跡することができる。送信バジェットは、観測ウィンドウ内で使用された総通信時間を追跡する累積カウンタが観測ウィンドウ内で許容される最大送信時間に達したときに枯渇される。例えば、前記最大送信時間は、総期間サイズにデューティサイクル比を乗算して計算され、総期間サイズは、デューティサイクル要件が適用される期間であり、例えば、1時間である。フレームを送信する前に、無線通信装置は、十分な送信バジェットがあるかをチェックし、フレームの送信に費やされた通信時間を考慮して送信バジェットが更新される。送信バジェットは、観測ウィンドウが時間内に進んだときにも更新される。
【0022】
STAの送信バジェットが枯渇している間、STAはAPにフレームを発送できず、さらに重要なことに、STAはAPからデータフレームを受信しても確認応答(ACK)フレームで応答することができない。ACKフレームは、データフレームの送信後にデータフレームの受信を確認するために期待される、送達確認を作成する制御フレームである。STAがAPから受信したデータフレームへの応答を停止すると、APは同じデータフレームを数回再送信するため、通信時間が長くなる。APは、STAが応答しない原因が、STAがBSSから離脱されているためなのか、デューティサイクルの送信バジェットが枯渇したためなのかを把握していない場合、切断を開始することを決定してもよい。しばらくしてSTAがより多くの送信バジェットを獲得すると、APは、すでに切断フレームを発送していてもよい。STAは、APと追加のフレームを交換することで、BSSに再結合(Re-associate)する必要がある。STAがそのデューティサイクル送信バジェットが枯渇したときのシグナリング動作の一例を示す。STAが送信バジェットを使い果たす前に、STAはフレーム AをAPに送信し、APからACKフレームを受信し、その後、STAはAPからフレームBを受信し、ACKフレームで応答する。STAがAPからフレームCを受信した時点で、送信バジェットが枯渇しているためACKフレームで応答することができない。同様に、APは、フレームD、E、FをSTAに発送するが、STAからACKフレームを受信しない。その後、APは、STAがすでにBSSから離脱されていると仮定して、STAと切断するためにフレームGを送信してもよい。
【0023】
同様に、APがそのデューティサイクル送信バジェットが枯渇している場合、APは関連するSTAからフレームを受信した後にACKフレームで応答することができない。STAは、APからACKフレームを受信しない場合、APにフレームの再送を試すが、フレームの送信に失敗するたびに、STAのレート制御アルゴリズムによって変調符号化方式(MCS)レートが低下する。これにより、各フレームの送信時間が長くなり、STAがその送信バジェットをより早く使い果たすことになる。STAは、APにフレームを再送信するために、追加の電力を浪費する。図2Bは、APがそのデューティサイクル送信バジェットを使い果たしたときのシグナリング動作の一例を示す。一般的な設計では、APは、送信バジェットを管理する時に、ビーコンフレームの送信通信時間を予約するため、ビーコンフレームは常に送信される。図2BのAPは、非ビーコンフレームの送信バジェットが枯渇したため、APはビーコンAを送信できるものの、関連するSTAから送信されたMCS=7でコーディングされたフレームAに応答することができない。STAは、その後、MCSレートを4に落とし、同じコンテンツをフレームBで再送信する。APにはフレームBに応答する送信バジェットがまだないため、STAはMCSレートを2に落としてフレームCで再送信を試す。この例では、STAは、フレームA、B、Cを送信した後、APからACKフレーム受信しておらず、その送信バジェットが枯渇していてもよい。
【0024】
APまたはSTAのいずれかで予告されていないデューティサイクル送信バジェットの枯渇による再送信に費やされる電力と通信時間をより適切に管理するために、デューティサイクル送信バジェットが枯渇しようとしていることをWLAN BSS内のピアに通知する新しいシグナリング方法がいくつか提案されている。これらのシグナリング方法は、送信時間がデューティサイクル制約によって支配されるデューティサイクルモードで動作するAPおよびSTAに適用される。シグナリング方法のいくつかの実施例では、標準シグナリングを使用するが、所望の動作を達成するために独自シグナリングを使用することもできる。
【0025】
STA標準シグナリング
デューティサイクルモードで動作するSTAの実施例は、データフレーム内で通信される電力管理ビットを使用してAPからのダウンリンク送信を制御することができる。本実施例では、 電力管理ビットを搬送するこの特定のデータフレームのための通信時間は、デューティサイクル制限が適用される観測ウィンドウ内で予約され、すなわち、STAは、その送信バジェットが枯渇しようとしても、電力管理ビットを搬送するデータフレームを送信することができる。以下の実施例において、送信バジェットが枯渇しようとするとは、デューティサイクルの送信バジェットが所定のまたは適応的な閾値、比率、またはパーセンテージを下回ることを指してもよい。例えば、前記所定のまたは適応的な閾値は、最低の変調符号化方式(MCS)を利用して1つまたは1つ以上のデータ、管理、または制御フレームを送信するための通信時間に対応する。STAの閾値は、APの閾値と異なってもよく、閾値は様々なアプリケーションやユースケースで異なってもよい。STAがそのデューティサイクル送信バジェットが枯渇しようとすることを関連するAPに通知するためのシグナリング方法のいくつかの実施例において、STAは、データフレーム内で通信される電力管理ビットを通じてAPに通知する。STAがその送信バジェットを使い果たそうとすると、例えば、送信バジェットが通常のフレームを送信できない閾値を場合、STAは直ちにサブタイプフィールドがQoS Nullに等しいデータフレームを送信し、APによるダウンリンクフレームの送信をブロックする。QoS Nullデータフレームは、通常データを伝送せずに制御情報を伝送するために使用される。例えば、STAは、QoS Nullデータフレームを利用して、APに電力節約モードに入ることまたはウェイクアップしていることを示す。図3Aは、本発明の一実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的な標準シグナリング方法を示す。STAは、フレームAをAPに送信し、APからACKフレームを受信する。その後、STAは、APからフレームBを受信し、ACKフレームで応答する。この時点で、STAは、そのデューティサイクルの送信バジェットを使い果たそうとするため、STAがしばらくの間応答しないことを通知するサービス品質ヌル[asleep]フレームをAPに送信する。APは、このサービス品質ヌル[asleep]フレームを受信し、ACKフレームで応答する。その後、APは、STA が電力管理モードに入ったものとして扱われるため、STAにすぐにデータトラフィックを送信する代わりに、STAのデータトラフィックをバッファリングする。その結果、このサービス品質ヌル[asleep]フレームを受信した後に、APは枯渇したSTAにさらにフレームを送信しようとすることなく、送信バジェットを無駄にすることはない。この例では、STAはより多くの送信バジェットを獲得し、時刻TSF=45に再び送信することができ、STAは、TSF=45の後に他のQoS NullデータフレームであるQoS Null [awake]をAPに送信し、APとの通信を再開する。時刻同期機能(TSF)は、同じBSS内のすべてのAPとSTAによって維持され、共有される。このサービス品質ヌル[awake]フレームを受信したAPは、STAがフレームを受信する準備ができたことを把握することになる。APは、その後、サービス品質ヌル[awake]フレーム受信について、ACKフレームで応答する。この例では、APは、STAからサービス品質ヌル[awake]フレームを受信した後に、フレームCをSTAに送信する。STAは、フレームCを受信した後に、ACKフレームで応答する。一部の実施例では、STAは、サービス品質ヌル[asleep]フレーム対するACKフレームを受信した後に、電力管理モードに入り、より多くの送信バジェットがあるときにウェイクアップしてもよい。STAが電力管理モードからウェイクアップした後に、STAはサービス品質ヌル[awake]フレームをAPに送信してもよい。一実施例では、STAは、STAに対してバッファリングされたトラフィックがあることを示す1つまたは1つ以上のビーコンを受信した場合にのみ、サービス品質ヌル[awake]フレームを送信する。本実施例では、STAは、APがSTAに対するトラフィックがないことを示す場合、送信バジェットの回復についてAPに通知する必要はない。
【0026】
STA独自のシグナリング
本発明のいくつかの実施例では、STAの送信バジェットが枯渇しようとすることをAPに通知するために、STAによって独自のシグナリング方法が使用される。一部の実施例の独自のシグナリング方法は、STAがいつ再び送信できるようになるかについて、STAがさらにAPに通知することができる。例えば、STAがそのデューティサイクルの送信バジェットを使い果たそうとするときに、管理フレーム、より具体的にはベンダー固有アクションフレームがAPに発送される。このベンダー固有アクションフレームを送信するための通信時間は予約されているため、STAは送信バジェットが枯渇しようとするときでも、このベンダー固有アクションフレームを送信することができる。ベンダー固有アクションフレームは、STAがいつ送信バジェットを再び有するようになるかに関連する情報を搬送してもよい。APは、このベンダー固有アクションフレームをデコードしてSTAの送信バジェットが枯渇したことを把握し、共有BSS TSFに基づいてSTAがいつ再び送信できるかを把握してもよい。APは、この知識を利用して、しばらくの間BSS上で非アクティブであったSTAを切断するかどうかを決定することができる。図3Bは、本発明の一実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的な独自のシグナリング方法を示す。この例では、STAはフレームAをAPに送信し、APからACKフレームを受信し、その後、STAはAPからフレームBを受信し、APにACKフレームを送信する。STAは、デューティサイクルの制限によりその送信バジェットが枯渇しようとする時、TSF=45になるまで送信バジェットが枯渇したことを指定するベンダーアクションフレームを送信する。APは、STAからこのベンダーアクションフレームを受信し、ACKフレームで応答する。APは、ベンダーアクションフレームによって、STAがTSF=45になるまで送信できないことを通知されているため、この情報に基づいて、TSF=45になる前に切断ロジックを防ぐことができる。この例では、APは、ベンダーアクションフレームに従ってTSF=45になるまでSTAとの通信を停止し、TSF=45になった後にSTAへのフレーム送信を再開する。この独自のシグナリング方法は、ピアのデューティ サイクル送信バジェットに関する知識が不足しているために、APの枯渇したSTAとの切断を防止する。一実施例では、STAは、送信バジェットが枯渇したときに電力管理モードに入ることによって、より電力効率が高くなるように構成することができる。例えば、STAは、電力管理モードに入ることができる時間を計算し、ベンダーアクションフレームでAPに通知し、ベンダーアクションフレームのACKフレームを受信した後に電力管理モードに入り、計算された時間に従ってウェイクアップする。
【0027】
STA 標準および独自のシグナリング
APに通知するためのシグナリング方法のいくつかの実施例では、STAは、送信バジェットが枯渇しようとする時に、電力管理ビットを搬送するデータフレーム及びベンダー固有アクションフレームの両方をAPに発送する。これらの実施例では、電力管理ビットを搬送するデータフレーム及びベンダーアクションフレームの両方を送信するための通信時間が送信バジェット内に予約されているため、STAの送信バジェットが枯渇しようとする時に、これら2つのフレームをAPに送信することができる。図3Cは、本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをSTAがAPに通知するための例示的なシグナリング方法を示す。STAは、その送信バジェットが枯渇しようとする前に、定期的にフレームを送受信し、送信バジェットが枯渇しようとすると判断した直後に、STAは、APにサービス品質ヌル[asleep]フレームに送信してAPがフレームを送信することをブロックする。STAは、更に、TSF=45になるまで送信バジェットが枯渇したことを示すベンダーアクションフレームをAPに送信する。APは、TSF=45になった後、またはSTAからサービス品質ヌル[awake]フレームを受信するまで、STAのためにデータトラフィックをバッファリングする。一実施例では、STAは、STAのためにデータトラフィックがバッファリングされていることを示すAPからのビーコンフレームを受信した場合にのみ、このサービス品質ヌル[awake]フレームを送信する。
【0028】
AP標準シグナリング
APがそのデューティサイクル送信バジェットを使い果たそうとすることを関連するSTAに通知するためのシグナリング方法の様々な実施例において、ビーコン送信のための通信時間は、デューティサイクル制限が適用される観測ウィンドウ内に予約されるため、ユーザの観点からは、送信バジェットが枯渇した後もAPがビーコンフレームを送信できるようになる。本発明の一部の実施例によれば、アクセス制限ウィンドウ(Restricted Access Window、RAW)パラメータセット(Parameter Set、RPS)情報要素(Information Element、IE)をビーコン送信と組み合わせることで、APは、2つのビーコンフレーム間のタイムスライス全体を予約し、ネットワーク上の他のステーションがAPに送信することを防止する。このシグナリング方法は、独自のものではなく、全てのベンダーと相互運用する必要がある。図3Dは、本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをAPが1つまたは1つ以上のSTAに通知するための例示的な標準シグナリング方法を示す。本実施例において、APの送信バジェットが枯渇しようとすることは、APが非ビーコンフレームの送信バジェットを使い果たしたことを意味する。共有BSS時刻同期機能(Time Synchronization Function、TSF)時間スケールとして使用される。APは、ビーコンAのRPS IEを使用して、TSF=15とTSF=30の間の媒体を予約するために、TSF=15に等しいTSFでビーコンAを発送する。ビーコンAで示されるRAW機能は、TSF=15とTSF=30の間のすべてのSTAからのアップリンク送信をブロックする。ビーコAを受信するSTAは、RAW機能を尊重するために、RPS IEに従ってTSF=15からTSF=30まで期間中に、いかなるフレームも送信しない。この例では、APはTSFが35になった後に送信バジェットを有するため、ビーコンBをTSFが30になる前に送信し、ビーコンBのRPS IEを使用してTSF= 30からTSF=35までの間の媒体を予約する。このRAW機能により、関連するすべてのステーションがこの期間中にフレームを送信することを再度防止する。STAは、APが正常に受信したフレームに応答する送信バジェットを有するため、TSF=35の後にアップリンクデータをAPに発送することができる。例えば、STAは、MCSが7のフレームAを送信し、APからACKフレームを受信し、その後、フレームB及びCを発送してそれぞれACKフレームを受信する。標準シグナリング方法を実施することによって、STAは、送信バジェットが枯渇したAPにフレームを送信しようとしないため、枯渇したAPが正常に受信したフレームに応答しないことによるデータ損失は発生しない。さらに、STAのレート制御アルゴリズムが崩壊することもない。このシグナリング方法を利用しない場合、送信バジェットが枯渇したAPに送信するSTAは、ACKの応答がないことをリンク不良と解釈し、送信レートを継続的に低下させる可能性があり、このSTAが再送信を試すと、自身のデューティサイクルの送信バジェットを使い果たしてしまう可能性がある。
【0029】
AP独自のシグナリング
本発明の一実施例では、ビーコンフレーム内のベンダーIEの形式で独自のものである。ビーコンフレーム内のこのベンダーIEは、共有BSS TSFを時間スケールとして使用して、APが非ビーコンフレームを送信できないこと、及びAPがいつ再び送信バジェットを有するようになるかをSTAに通知する。このベンダーIEをデコードした装置は、指定されたタイムスタンプまで電力管理モードに入ることを決定し、より省電力になることができる。例えば、図3EのAPは、すべてのSTAがTSF=35まで再送信できないことを関連する STA に通知するために、ビーコンA内のベンダーIEをシグナリングし、STAは、ビーコンA内のこのベンダーIEを受信して解析し、電力管理モードに入り、TSF=35でウェイクアップする。STA は、TSF=35になる前に APが応答できないことを把握している。独自のシグナリング方法により、STAは、APがSTAにトラフィックを送信するための送信バジェットを有していないことを把握すると、すぐに電力管理モードに入ることができる。STAは、APがより多くの送信バジェットを有していると通知されるため、消費電力がより効率的になり、それまでスリープできるようになる。
【0030】
APの標準及び独自のシグナリング
APが非ビーコンフレームの送信バジェットが枯渇したことをSTAに通知するための他のシグナリング方法では、ビーコンフレームは、RPS IE及びベンダーIEを含む。図3Fは、本発明の別の実施例による、送信バジェットが枯渇しようとすることをAPが1つまたは1つ以上のSTAに通知するための例示的なシグナリング方法を示す。この例では、APは、TSF=10からTSF=35になるまで、非ビーコンフレームの送信バジェットを使い果たしている。APは、TSF=15とTSF=30との間で媒体を予約するRPS IEを含むビーコンAを発送し、その後、TSF=30とTSF=35との間で媒体を予約するRPS IEを有するビーコンBを発送する。STAは、ビーコンA及びビーコンBで定義されたこれらのRAW期間中は送信しない。ビーコンA及びビーコンBは、TSF=35の後に、APが応答できることを示すベンダーIEを含んでもよい。ベンダーIEをデコード可能なSTAは、ビーコンAを受信し解析した後、電力管理モードに入ることができる。一実施例では、電力管理モードに入るこれらのSTAは、ビーコンBの受信をスキップし、TSF=35で電力管理モードを終了してもよい。ベンダーIEをデコードできないSTAも、ビーコンA及びビーコンBを受信し解析した後に、TSF=15からTSF=30までの間、及びTSF=30からTSF=35までの間で、送信停止のメッセージを取得することができる。
【0031】
図4Aは、本発明の一実施形態による、STAが関連するAPに送信バジェットの枯渇について通知することを示すフローチャートである。本実施例では、STAは、送信バジェットが枯渇しようとすると、サービス品質ヌルフレーム及びベンダーアクションフレームの両方をAPに送信するが、他の実施例では、STAは、送信バジェットが枯渇しようとすることをそのピア装置に通知するために、サービス品質ヌルフレーム又はベンダーアクションフレームのいずれかの一方のみを送信してもよい。ステップS402において、STAの送信バジェットがチェックされ、現在送信バジェットが枯渇しているとマークされている場合にはステップS404に進む。STAは、ステップS404において、STAがデューティサイクル制約に従って再び送信バジェットを有するような十分な時間が経過したどうかを判定し、STAがより多くの送信バジェットを獲得した場合、ステップS406において、STAはトラフィックキューの一時停止を解除する。送信バジェットは、観測ウィンドウ内で送信のためにSTAによって使用された累積通信時間に従って計算されてもよい。例えば、STAが任意の60分の観測ウィンドウにおいて10%のデューティサイクル制約を遵守している場合、STAが過去60分間にフレームを送信していなければ、送信バジェットは6分である。STAが過去60分間に5分間の累積通信時間を送信に使用した場合、送信バジェットは1分である。STAは、ステップS412において、STAがまだ十分な送信バジェットを獲得していない場合、例えば、時間の経過に伴い、最新の観測ウィンドウ内の蓄積された通信時間に従って計算された送信バジェットがまだ安全閾値を下回っている場合、電力管理モードに入る。ステップS408において、STAは、例えば、APから受信した1つまたは1つ以上のDTIMビーコンフレームに基づいて、APにバッファリングされたデータトラフィックがあるかどうかを判定する。ステップS410において、STAは、サービス品質ヌル[awake]フレームを送信し、STAのためにバッファリングされたデータトラフィックがある場合、受信及び応答する準備ができていることをAPに通知する。そうでない場合、STAは、データトラフィックがある場合、ステップS412において電力管理モードに入る。STAは、ステップS410においてサービス品質ヌル[awake]フレームを発送した後に、ステップS422において、APからバッファリングされたトラフィックを受信する。本実施例では、STAは、APがデータトラフィックをバッファリングしている場合にのみフレームを受信及び応答できることをAPに通知するために、サービス品質ヌル[awake]フレームを送信する。他の実施例では、STAは、APにバッファリングされているデータトラフィックがあるかどうかに関係なく、より多くの送信バジェットを獲得した時にAPに通知するためにサービス品質ヌルawake]フレームを送信する。
【0032】
図4のステップS414において、STAは、ステップS402で送信バジェットが枯渇しているとまだマークされていない場合、送信バジェットが枯渇しようとするかどうかを判定する。送信バジェットが枯渇しようとしているどうかを判定する一例は、送信バジェットを所定の閾値に比較することを含み、所定の閾値は、本実施形態では、サービス品質ヌル[asleep]フレーム及びベンダーアクションフレームの両方の送信に必要な通信時間よりも長く設定される。他の実施例では、サービス品質ヌル[asleep]フレームまたはベンダーアクションフレームのみを使用してAPに通知する場合、所定の閾値は、それぞれサービス品質ヌル[asleep]フレームまたはベンダーアクションフレームの送信に必要な通信時間よりも長く設定されてもよい。STAは、ステップS412に進んでもよく、または送信バジェットが枯渇しようとしていない場合は、アウェイク状態を維持してもよい。STAは、S416でサービス品質ヌル[asleep]フレームを送信してSTAの送信バジェットが枯渇しようとした場合にAPに通知する。サービス品質ヌル[asleep]フレームを送信した後、STAは、ステップS418において、STAが再びフレームを送信するための送信バジェットを有するTSFの観点からの時点を計算する。STAは、その後、ステップS418において、このTSF情報をベンダーアクションフレームに挿入してAPに送信する。他の実施例では、STAは、サービス品質ヌル[asleep]フレームを発送する前に、最初に時点を計算してベンダーアクションフレームを送信してもよい。ステップS420において、STAは、送信バジェットが枯渇していることをマークし、トラフィックキューを一時停止し、その後、ステップS412において、電力管理モードに入る。本実施例では、送信バジェットが所定の閾値を下回り、STAがサービス品質ヌル[asleep]フレーム及びベンダーアクションフレームの両方を送信する場合、送信バジェットが枯渇しているとマークされる。所定の閾値は、アプリケーションの用途または設計に応じて、トラフィックキューの一時停止を解除するのに十分であるかどうかを確認するために使用される安全閾値と同じであっても異なってもよい。
【0033】
図5は、本発明の一実施形態による、APが関連するAPに送信バジェットの枯渇について通知することを示すフローチャートである。本実施例では、APは、非ビーコンフレームの送信バジェットを使い果たしたときに、標準および独自のシグナリング方法の両方を使用してSTAに通知する。いくつかの実施例では、APは、標準シグナリング方法のみを採用する。他のいくつかの実施例では、APは、全ての関連するSTAがビーコンフレームで搬送されるベンダーIEから再開時間を計算できるように構成されるため、APは、独自のシグナリング方法のみを採用する。ここで、再開時間は、APが非ビーコンフレームを送信するための送信バジェットを有するようになる時刻である。図5のステップS502において、APは、送信すべきフレームを待機し、送信すべきフレームがある場合、APは、ステップS504において、非ビーコンフレームの送信バジェットが枯渇しているどうかを判定する。例えば、非ビーコンフレームの送信バジェットは、送信バジェットがビーコン送信用に確保された閾値よりも低い場合に枯渇する。送信バジェットが非ビーコンフレームに対して十分である場合、APはステップS514においてフレームを送信する。そうでない場合、APは、ステップS504において、非ビーコンフレームの送信バジェットが枯渇した場合、ステップS506において、このフレームがビーコンフレームであるか否かを判定する。本実施例では、APは、このフレームがビーコンフレームでない場合に、ステップS508において、フレームをドロップする。APがビーコンフレームを送信している場合、APは、ステップS510において、未使用のアソシエーションID(Association ID、AID)を有するRPS IEを挿入して、このターゲットビーコン送信時間(Target Beacon Transmission Time、TBTT)と次のTBTTとの間のタイムスライスを予約する。本実施例では、ステップS512において、APは、更にAPが非ビーコンフレームの送信バジェットを有することになるTSFの観点から再開時間計算し、この情報を送信予定のビーコンフレームに付加されるベンダーIEに挿入する。このベンダーIEをデコードできるSTAは、APがいつ送信バジェットを有するかの情報を有するが、このベンダーIEをデコードできないSTAは、次のTBTTで次のビーコンフレームを受信することを待機するだけである。いくつかの他の実施例では、APは、STFを計算し、再開時間情報をベンダーIEに挿入するこのステップS512をスキップするため、全てのSTAは、この受信ビーコンを受信した後、次のビーコンフレームをリッスンする必要がある。これら2つのステップS510およびS512の順番は切り替え可能であり、またはこれら2つのステップは同時に実行されてもよい。APは、ステップS514でフレームを送信し、ステップS502に戻って他のフレームの送信を待機してもよい。
【0034】
図6は、本発明の実施例に係る、関連するAPからその送信バジェットが枯渇していることを示す通知を受信するSTAを示すフローチャートである。本実施例では、STAは、APが再び送信バジェットを有するときを示すビーコンフレーム中のベンダーピア枯渇IEをデコードすることができる。STAは、ステップS602においてビーコンフレームを受信し、ステップS604において、このビーコンフレームがRPS IEを含むかどうかを判定し、ビーコンフレームがRPS IEを有する場合、ステップS606においてRPS IEを解析する。RPS IEを解析することにより、RPS IE内のAIDがSTAのAIDとマッチしない場合、媒体が一定期間予約されていることを示し、STAは、RPSによって定義されたこのRAW内のフレームの送信を禁止される。STAは、更に、ステップS608において、受信したビーコンフレームにベンダーピア枯渇IEが含まれているかどうかを判定する。STAは、ステップS608において、ビーコンフレームにベンダーピア枯渇IEが含まれていない場合、ステップS614において、次のビーコンフレームの受信を待機する。一実施例において、STAは、次のビーコンフレームを受信する前に、電力管理モードに入る。ステップS610において、STAは、ベンダーピア枯渇IEをデコードし、APが送信バジェットを有するTSFを判定し、ステップS612において、STAは、判定されたTSFまで電力管理モードに入ってもよい。本実施例では、STAは、これらのビーコンフレームが決定されたTSFの前に送信される場合、1つまたは1つ以上の後続のビーコンフレームの受信をスキップしてもよい。STAがベンダーピア枯渇IEをデコードできない他の実施例では、AIDがAIDとマッチしないと解析した後、 STAは、スケジュールされたRAW全体の送信を停止し、次のビーコンフレームの受信を待機する。STAは、2つのビーコンフレーム間に電力管理モードに入ってもよい。
【0035】
図7は、本発明の実施例による、関連するSTAからその送信バジェットが枯渇していることを示す通知を受信するAPを示すフローチャートである。本実施例では、APは、STAが再び送信バジェットを有するときを示すベンダーピア枯渇通知をデコードすることができる。例えば、ベンダーピア枯渇通知は、ベンダーアクションフレームを通じて伝達され、ベンダーピア枯渇通知には、TSFの観点からの再開時間の情報も含まれる。APは、ステップS702において、STAからフレームを受信し、ステップS704において、この受信したフレームがサービス品質ヌル[asleep]フレームであるかどうかを判定する。APは、STAが電力管理モードにあると仮定して、STAからサービス品質ヌル[asleep]フレームを受信した後、ステップS706において、このSTAのデータトラフィックをバッファリングする。APは、ステップS708において、受信したフレームがサービス品質ヌル[awake]フレームであるかどうかを判定し、STAからサービス品質ヌル[awake]フレームを受信すると、ステップS710において、バッファリングされたデータトラフィックをこのSTA送信する。APは、ステップS712において、STAから受信したフレームがベンダーピア枯渇通知を含むフレームであるかどうかをチェックし、そうである場合、APは、ステップS714において、ベンダーピア枯渇通知に従ってSTAがより多くの送信バジェットを獲得すると予想されるかについての情報を保存する。図7は、送信バジェット枯渇通知に関連するこれら3種類のフレームを受信した場合にAPがどのように反応するかを示しており、APが受信した他の種類のフレームの処理および反応に関する説明は簡潔にするために省略されている。他の実施例では、独自のシグナリングをサポートしないAPは、電力管理ビットを搬送するデータフレームにのみ応答し、STAとの通信を一時停止または再開する。
【0036】
図8Aは、本発明の実施例を実装するために使用することができる無線通信装置800の高レベルのブロック図を示す。無線通信装置800の実施例は、デューティサイクル制約を有するIEEE 802.11規格に準拠して、メディアアクセス制御(Media Access Control、MAC)層および物理(Physical、PHY)層を管理する。無線通信装置800は、無線ネットワークのステーション(STA)またはアクセスポイント(AP)であってもよい。例えば、無線通信装置800は、モバイル装置、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モノのインターネット(IoT)装置、ウェアラブル装置、拡張現実装置、ビデオサーバ、カメラ、または車両上の通信装置に実装してもよい。無線通信装置800は、無線周波数(Radio Frequency、RF)送信モジュール802、RF受信モジュール804、アンテナユニット806、1つまたは1つ以上のメモリバンク808、入出力インターフェース810及び通信バス812を含む。RF送信モジュール802及びRF受信モジュール804は、モデム(変調復調器)としても知られており、1つまたは1つ以上の搬送波信号を符号化されたデジタル情報に変調することによってフレームを送信するとともに、信号を復調して元のデジタル情報を再作成することによってフレームを受信する。更に、無線通信装置800は、MACプロセッサ814、PHYプロセッサ816、ホストプロセッサ818を含む。これらのプロセッサは、GPU(General Processing Unit)、ASIC(APplication Specific Integrated Circuit)、またはRISC-V(Reduced Instruction Set Computer-Five)ベースのIC等を含む任意のタイプの集積回路(IC)であってもよい。メモリ808は、無線通信装置800のプロセッサ用のソフトウェアを記憶する。各プロセッサは、それぞれの通信/アプリケーション層の機能を実装するためのソフトウェアを実行する。特に、PHYプロセッサ816は、送信信号処理ユニットおよび受信信号処理ユニットを含み、ワイヤレス媒体(WM)とのインターフェースを管理する。PHYプロセッサ816は、RF送信機802、デジタルアナログコンバータ(DAC)、RF受信機804、アナログデジタルコンバータ(DAC)を備えるラジオモジュールとデジタルサンプルを交換することによって、物理プロトコルデータユニット(Physical Protocol Data Units、PPDU)上で動作する。MACプロセッサ814は、MACレベルの命令を実行し、PHYプロセッサ816を介してアプリケーションソフトウェアとWMとの間のインターフェースを管理する。MACプロセッサ814は、範囲内のAPとSTAが効果的に通信できるように、WMへのアクセスを調整する役割を担う。MACプロセッサ814は、上位レベルにより提供されたデータ単位にヘッダとテールバイトを付加し、送信のためにPHY層に送る。PHY層からデータを受信する場合は、その逆である。無線フレームが誤って受信された場合、MACプロセッサ814は無線フレームの再送信を管理する。ホストプロセッサ818は、MAC層とインターフェースし、無線通信装置800の高レベルの機能を実行する役割を担う。
【0037】
ペリフェラルバス820は、タイマー、割り込み、無線/フィルタ/システムレジスタ、カウンタ、ユニバーサル非同期受信送信機(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter、UART)および汎用入出力(General Purpose Input Output、GPIO)を含む、無線通信装置800のコア機能をサポートする多数の周辺機器に接続する。PHYプロセッサ816、MACプロセッサ814、ホストプロセッサ818、ペリフェラルバス820、メモリ808及び入出力インターフェース810は、システムバス812を介して互いに通信する。メモリ808は、更にオペレーティングシステムおよびアプリケーションを格納してもよい。いくつかの実施例では、メモリ808は、キャプチャされたフレームおよびパケットに関する記録情報を格納してもよい。入出力インターフェースユニット810は、ユーザとの情報の交換を可能にする。アンテナユニット806は、単一のアンテナまたは複数のアンテナを含んでもよい。
【0038】
図8Bは、無線通信装置800に送信された無線信号を受信するために使用される受信機データフローアーキテクチャの概略ブロック図である。無線信号は、WMを介して受信され、受信アンテナ852によって電気信号に変換される。受信信号は、ADC856を使用してデジタル信号に変換される前に、一連のアナログRF受信(Rx)フィルタ854を使用して調整される。ADC856からのデジタル信号出力は、デジタル信号内のサンプルが非同期受信先入れ先出し(FIFO)データ構造860に収集される前に、1つまたは1つ以上のデジタルRFフィルタおよび/またはファローフィルタを含むことができるデジタルフィルタバンク258を使用して再び調整される。非同期受信FIFOデータ構造860内のサンプルは、パケット検出モジュールおよびサブバンドモジュールによってアクセスすることができ、両方のモジュールは下位レベルのPHY部分862に含まれてもよい。いくつかの実施例では、下位レベルのPHY部分862は、上位レベルのPHY部分264とともに、図8Aに示されるPHYプロセッサ816に含まれる。下位レベルPHY部分862に含まれるパケット検出モジュールは、PHYプロトコルデータユニット(PPDU)の初期セクションを時間領域で解析するために使用できるハードウェア及び/又は実装アルゴリズムを有する。解析に基づいて、パケット検出モジュールは、受信した802.11フレームを認識し、無線通信装置の周波数とタイミングを受信中のパケットに同期させる。サブバンドモジュールは、割り当てられた周波数帯域内のどのサブチャネルが受信中のパケットの送信に使用されているかを検出するために使用できるハードウェアおよび/または実装アルゴリズムを備えている。パケットが検出され、関連するサブチャネルが確立されると、サンプルが上位レベルのPHY部分864に搬送される。上位レベルPHY部分864のいくつかの実施例では、直交周波数分割多重方式(OFDM)シンボルを処理およびデコードして、完全なPPDUを再構成する。再構成されたPPDUは、その後、MACモジュール866によって処理され、データペイロードを抽出し、関連情報を消費するためにホストモジュール868に提供される。
【0039】
図8Cは、WMを介して無線信号を送信するために使用される送信機データフローアーキテクチャ880の簡略化された概略ブロック図を示す。データは、ホストモジュール882から生成され、MAC管理モジュール884によって無線ネットワーク上でルーティングされるようにMACレベルプロトコルデータユニット(MPDU)にパッケージ化される。PHYモジュール886は、WMとインターフェースし、PHYプリアンブルおよびテールをMPDUに追加することによって、PHYレベルのプロトコルデータユニット(PPDU)をコンパイルする。通常、媒体を介してパケットを送信するための変調符号化方式(MCS)は、MACモジュール884またはPHYモジュール886によるレート制御アルゴリズムを使用して確立される。選択された変調方式は、WM上のデータ伝送に使用される変調技術と符号化速度を定義する。選択された変調方式、例えば直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation、QAM)64に基づいて、PPDUはWM上で送信されるように変調される。エンコーダモジュール888は、極座標(r-θ)またはデカルト座標(Q-I)を使用して符号化できるQAMコンスタレーションシンボル(PPDUのビットのグループ)の点に対応する信号を生成する。変調は、エンコーダモジュール888をデジタル位相ロックループ(Digital Phase Lock Loop、DPLL)890にリンクすることによって行われる。変調された信号は、アナログフィルタ892によってフィルタリングされ、送信アンテナ894を用いて送信される。
【0040】
本発明は、特定の実施例を参照して本明細書に図示および説明されているが、本発明を図示された詳細に限定することを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲および均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、細部において様々な変更を加えてもよい。上記の説明は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるものではないことを理解されたい。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態の様々な修正、応用、および/または組み合わせをすることができる。周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技法は、態様を不明瞭にすることを避けるために不必要な詳細を省いて示されている場合がある。
【0041】
上述の例によるプロセスおよび方法は、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納されているか、またはコンピュータ実行可能命令を用いて実施することができる。このような命令には、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または処理装置に特定の機能または機能群を実行させるか、または別の方法で構成する命令およびデータが含まれてもよい。使用されるコンピュータリソースの一部は、ネットワークを介してアクセス可能であってもよい。コンピュータ実行可能命令は、例えば、バイナリ、アセンブリ言語等の中間フォーマット命令、ファームウェア、ソースコード等であってもよい。これらの開示によるプロセスおよび方法を実施する装置は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよく、様々なフォームファクタのいずれかを採用してもよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、またはマイクロコードで実施される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントは、コンピュータ読み取り可能なまたは機械読み取り可能な媒体に格納されてもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic Random-Access Memory)等のRAM(Random-Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random-Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、FLASHメモリ、磁気データ記憶媒体または光学データ記憶媒体等のメモリまたはデータ記憶媒体を含んでもよい。追加的に、または代替的に、本技術は、命令またはデータ構造の形態のプログラムコードを搬送または通信し、コンピュータによってアクセス、読み取り、および/または実行可能な、伝播信号または伝搬波などのコンピュータ読み取り可能な通信媒体によって、少なくとも部分的に実現され得る。プログラムコードは、プロセッサによって実行されてもよく、当該プロセッサは、1つまたは1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、または他の同等の統合またはディスクリート論理回路等を含む1つまたは1つ以上のプロセッサを含んでもよい。このようなプロセッサは、本開示で説明されるステップのいずれかを実行するように構成されてもよい。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよく、代替的に、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。プロセッサは、コンピューティング装置の組み合わせとして実装されてもよい。
【0042】
上記のように、ハードウェアとソフトウェアの互換性を明確に説明するために、様々な例示的コンポーネント、ブロック、モジュール、エンジン、回路、およびステップを、その機能性の観点から説明した。このような機能がハードウェアとして実装されるか、ソフトウェアとして実装されるかは、アプリケーションや全体のシステムに課せられた設計上の制約に依存する。当業者であれば、それぞれのアプリケーションに対して異なる方法で述べられた機能を実装することができるが、そのような実装の決定は、本願の範囲からの逸脱と解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C