IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルーレーザーフュージョン インク.の特許一覧

特開2024-166115高速点火型核融合システムおよび方法
<>
  • 特開-高速点火型核融合システムおよび方法 図1
  • 特開-高速点火型核融合システムおよび方法 図2
  • 特開-高速点火型核融合システムおよび方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166115
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】高速点火型核融合システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/03 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G21B1/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077311
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】18/319,368
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524002599
【氏名又は名称】ブルーレーザーフュージョン インク.
【氏名又は名称原語表記】Blue Laser Fusion Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 修二
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕朗
(57)【要約】      (修正有)
【課題】核融合反応を開始するための核融合リアクターのためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】複数のナノ秒レーザー光源から放出される第1のパルスエネルギー出力密度を有する第1のレーザービームで燃料ペレットを所定時間照射するように構成された第1のレーザービームを含む。システムはまた、複数のピコ秒レーザー光源から放出される第2のパルスエネルギー出力密度を有する第2のレーザービームで燃料ペレットを照射するように構成された第2のレーザービームを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー生成のためにレーザーデバイスを使用する慣性核融合リアクターを使用する方法であって、
リアクターハウジング内を真空に維持し、該リアクターハウジングは内部領域を有し、直径により特徴付けられ、該リアクターハウジングは、該リアクターハウジングの空間的中心領域の近傍内に反応領域を有し、該リアクターハウジングの内部内に周辺領域を形成し、該周辺領域は該リアクター領域を取り囲むことと、
それぞれが一対のミラーデバイスに結合されるように構成され、キャビティ領域の第1の端と第2の端にそれぞれ配置された第1のnsレーザー光源と第2のnsレーザー光源を含むナノ秒(ns)レーザー光源から電磁放射線を発することと、
前記第1のnsレーザー光源から第1のレーザービームを伝搬し、前記第2のnsレーザー光源から第2のレーザービームを伝搬して、前記キャビティ領域でMサイクル(Mは1,000サイクルより大きい)にわたり、第1の強度から、第2の強度、さらにM番目の強度までエネルギー強度を増加させることと、
前記リアクターハウジングに空間的に構成された、1からPまでの番号が付けられた複数のピコ秒レーザー光源を使用し、光学要素に結合された各ピコ秒(ps)レーザー光源から電磁放射線を放出し、光学要素は、少なくともミラーまたはレンズを含み、透明ガラスを通過してリアクターハウジングの内部領域に入り、複数のピコ秒レーザー光源から集光レーザービームを形成して、所定のスポット径を有する燃料ペレットに照射するように構成されることと、そして
前記リアクター領域内に注入された燃料ペレット又は燃料ペレットを備える容器の点火を開始し、前記複数のレーザー領域の交差点で点火のために前記リアクターハウジングの前記反応領域で前記複数のピコ秒レーザー光源に作動可能に結合され、前記キャビティ領域の各々からの前記第1のレーザービーム及び前記第2のレーザービームを用いて核融合反応のため該燃料ペレットを圧縮するのに十分なエネルギーレベルを用いて点火することとを、備える、方法。
【請求項2】
前記nsレーザー光源の各々が、350nmから1070nmの範囲の波長および0.3Hzから3MHzの範囲の周波数で電磁放射線を放出するように構成されたレーザーデバイスを備え、
前記燃料ターゲットが、少なくとも重水素および/またはトリチウム、ホウ素、ホウ素同位体11、または陽子+ホウ素同位体11を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記psレーザー光源の各々が、350nmから1070nmの範囲の波長および1Hzから20Hzの範囲の周波数で電磁放射線を放出するように構成されたレーザーデバイスを備え、
前記nsレーザー光源からのM番目の増強パルスが、10Hzの周波数である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のキャビティ領域が前記リアクターハウジングの前記内部領域内にあり、前記複数のキャビティ領域の各々が前記周辺領域の第1の側から前記周辺領域の第2の側まで延び、該第1の側が該第2の側に対向するように前記周辺領域の周囲に空間的に構成されており、前記複数のキャビティ領域が、前記リアクター領域と同心の中心領域を有し、各キャビティ領域が、前記周辺領域の前記第1の側に結合された第1の端部と、前記第2の側に結合された第2の端部とを有し、Nが1より大きいハブ&スポーク構成を形成するように、前記内部領域の直径に沿って直線経路を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記psレーザー光源の各々は、それぞれ周波数が1~10Hzである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リアクターハウジングに結合された燃料ペレットディスペンサーを使用することをさらに備え、該燃料ペレットディスペンサーは、1~10Hzの速度で該燃料ペレットを注入するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記M番目の増強パルス、前記各psレーザー光源、及び前記ペレットディスペンサーが、10Hzの周波数で同期される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ミラーデバイスの対の各々が、前記キャビティの長さの方向に沿って、10センチメートルから100センチメートルの範囲で縦方向に空間的に調節可能であり、各対の前記ミラー間の空間的長さによって定義される前記キャビティの長さが、前記リアクターハウジングの直径よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のキャビティ領域の各々は、1センチメートルから200メートルの長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のキャビティ領域の各々の長さが150メートルである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記リアクターハウジングの直径が1m~50mの範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記psレーザー光源の各々は、10個の小型psレーザー光源を備え、該小型ps光源の各々は、10Hzの周波数で約1kJのパルスエネルギーを有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記psレーザー光源の各々が、10kHzの周波数で約10kJのパルスエネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
パルスパワー密度が1×1020Wcm-2以上、または1×1021Wcm-2以上、または1×1022Wcm-2以上となるように、前記複数のレーザー光源を前記燃料ペレット上の前記所定のスポット径に集光する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記nsレーザー光源の各々は、1MHzの周波数で約0.1Jのパルスエネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記M番目に増強されたパルスが、周波数10Hzで約10kJのパルスエネルギーを有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
Nが100よりも大きい、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記一対のnsレーザー光源からの前記M番目に増強されたパルスが、前記所定のスポット径が前記燃料ペレットと実質的に同じ寸法になるように前記燃料ペレットに集束される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記所定のスポット径が1mmから5mmの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エネルギーレベルが、前記燃料ペレット上で1×1013Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記エネルギーレベルが、前記燃料ペレット上で1×1014Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記エネルギーレベルが、前記燃料ペレット上の1×1015Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記エネルギーレベルが、前記燃料ペレット上の1×1016Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記nsレーザー光源からの前記M番目に増強されたパルスは、前記燃料ペレットを1ns~20nsの間圧縮するために前記燃料ペレットに照射され、前記燃料ペレットの圧縮の後、前記nsレーザー光源よりも高い出力密度を特徴とする前記psレーザー光源は、前記M番目に増強されたパルスのスポット径よりも小さい所定のスポット径で、前記点火のために前記燃料ペレットに照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
慣性核融合リアクターシステムであって、
内部領域と、外部領域と、内部領域の中心領域内に構成された反応領域とを有するリアクターハウジングと、
1からNまでの番号が付けられた複数のピコ秒レーザー光源であって、該複数のピコ秒レーザー光源の各々が、該反応領域内に注入された燃料ペレットに照準を合わせて該ピコ秒レーザー光源の各々から放出される波長、パルス周波数、パルス幅、及びパルスエネルギーによって特徴付けられるレーザービームを有する、1からNまでの番号が付けられ複数のピコ秒レーザー光源と、
1からMまでの番号が付けられ、前記反応領域に結合された複数のファブリーペローキャビティ領域と、
第一のレーザービームと第二のレーザービームが、第一のミラーデバイスと第二のミラーデバイスの間を伝搬し、エネルギー強度が第一の強度から第二の強度へ、結合されたレーザービームのPサイクルの間、P番目の強度まで増加するように、各ファブリーペローキャビティ領域に結合された第一のミラーデバイスと第二のミラーデバイスにそれぞれ構成された一対のナノ秒レーザー光源(ここで、Pは10,000サイクルより大きい)と、
を有する、システム。
【請求項26】
前記複数のピコ秒レーザー光源は、前記中心領域の周囲にパターン状に配置され、前記複数のファブリーペローキャビティは、前記中心領域の周囲に対称に配置され、前記ハブが前記反応領域と同心であるようなハブとスポークのパターンを形成し、ここで、Nは1から20の範囲であり、Mは50から500の範囲である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
核融合反応を開始する方法であって、
複数のナノ秒レーザー光源から放出される第1のパルスパワー密度を有する第1のレーザービームを燃料ペレットに所定時間照射することと、
複数のピコ秒レーザー光源から放出される第二のパルスパワー密度を有する第二のレーザービームで燃料ペレットを照射し、核融合反応の点火を引き起こすことと、
を備える、方法。
【請求項28】
前記第2のレーザービームの照射が前記所定の時間内に行われ、前記第2のパルスピーク出力密度が前記第1のパルスピーク出力密度よりも大きい、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ秒レーザー光源の各々は、1nsから40nsの範囲のナノ秒パルス時間を有し、前記ピコ秒レーザー光源の各々は、100psから500psの範囲のピコ秒パルス時間を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記psパルスは、変形可能なミラーを用いてレーザー密度分布を改良した後、前記ペレットに集光されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記nsパルスと前記psパルスは、凹面ミラーを用いて前記ペレットに集光されることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人間は太古の昔から、木、石炭、石油、ガスといった天然資源からエネルギー源を開発してきた。しかし、残念ながら、木や石炭を燃やすと、大気中に望ましくない炭素粒子を放出するなど、深刻な環境汚染を引き起こす。石油やガスにも同様の限界があり、地球温暖化の一因となっている。原子力、風力、水力、太陽光などの再生可能エネルギーは有望である。しかし、これらの再生可能エネルギーにも欠点がある。風力発電は風が吹いていなければ機能しない。太陽エネルギーは日が沈めば利用できない。水力発電は水のある地域に限られる。核エネルギーは有望ではあるが、廃棄物の発生やリアクターの信頼性の低さ、危険性といった大きな問題を抱えている。もう一つの有望なエネルギー源として、核融合エネルギーが挙げられる。
【0002】
核融合エネルギーは、2つの原子核が融合し、その過程で大量のエネルギーが放出されることで生成されるエネルギー生産の一種である。核融合反応の燃料(主に水素)は地球上に豊富に存在し、反応によって温室効果ガスやその他の有害な汚染物質が発生しないため、クリーンで豊富なエネルギー源として期待されている。
【0003】
核融合反応を起こすための主な方法には、慣性核融合(inertial confinement fusion:ICF)と磁気閉じ込め型核融合(magnetic confinement fusion:MCF)の2つがある。
【0004】
慣性核融合(ICF)では、高エネルギーレーザーまたは粒子ビームを使用して、小さな水素燃料ペレットを圧縮し加熱し、核融合を起こさせる。燃料は通常、重水素とトリチウムという水素の同位体の混合物である。燃料は、高エネルギーレーザーまたは粒子ビームで満たされたチェンバーの中央に配置された、ホールラウムと呼ばれる小さな球形のカプセルに収容される。レーザーや粒子ビームをホールラウムに照射すると、ホールラウム内の燃料を均一に加熱・圧縮するX線の均一な層が生成される。これにより、燃料は核融合に必要な温度と圧力条件に達する。
【0005】
ICFの主な利点は、比較的少量の燃料と比較的低いコストで核融合反応を起こせる可能性があることである。しかし、このプロセスは依然として実験段階にあり、実用的なエネルギー源として考えられるようになるまでには、技術的に克服すべき大きな課題が残っている。
【0006】
磁気閉じ込め型核融合(MCF)は、水素燃料のプラズマ(高温のイオン化ガス)を強力な磁場によって閉じ込め、加熱し、核融合させるものである。MCFの最も一般的なタイプはトカマク核融合と呼ばれ、ドーナツ型のチェンバーでプラズマを封じ込める。プラズマはチェンバーの中心部に強力な磁場によって保持され、この磁場はチェンバーを取り囲むコイル巻線に通電することで発生させる。プラズマは粒子ビームまたは電磁波によってエネルギーが注入されることで加熱される。
【0007】
MCFの主な利点は、より大規模な核融合反応を起こす可能性があり、発電に適しているという点である。しかし、ICFよりも複雑でコストのかかるプロセスであり、実用的なエネルギー源として認められるまでには、まだ克服すべき技術的な課題が数多くある。
【0008】
ICFとMCFは近年、大きな進歩を遂げ、これらの技術に取り組む実験施設が世界中にいくつかある。しかし、核融合反応を持続させ、正味エネルギー生産(核融合反応によって生成されるエネルギーが、反応を開始し持続させるために必要なエネルギーよりも大きいことを意味する)を実現することは、依然として大きな技術的課題である。
【0009】
磁化標的核融合やミューオン触媒核融合など、核融合エネルギーに関する他のアプローチも研究されている。しかし、これらのアプローチは、まだ開発の初期段階にあり、核融合エネルギーがエネルギー源として実用化されるかどうかは、まだ明らかではない。
【0010】
以上のことから、核融合エネルギーはクリーンで豊富なエネルギー源となる可能性を秘めているが、実用的なエネルギー源として考えられるようになるまでには、技術的な課題を克服しなければならない。
【発明の概要】
【0011】
本発明によれば、一般に核融合エネルギー生成に関連する技術が提供される。特に、本発明は、高強度パルスまたはCWレーザー発生システムを用いた核融合エネルギーのためのシステムおよび方法、ならびに関連する方法を提供する。より詳細には、本発明は、ホウ素または重水素とトリチウム(deuterium and tritium:DT)燃料ターゲットを用いたレーザー核融合のための同期光源を提供する。単なる例として、本発明は、電力、宇宙船、旅行、空、陸、水のための他の乗り物、防衛用途(例えば、衛星、航空宇宙、陸およびミサイル防衛、潜水艦、ボート)、バイオテクノロジー、化学、機械、電気、および通信および/またはデータアプリケーションのためのエネルギー生成を含む様々な用途に適用することができる。
【0012】
一例では、本発明は核融合反応を開始させる方法を提供する。この方法は、複数のナノ秒レーザー光源から放出される第1のパルスパワー密度を有する第1のレーザービームを燃料ペレットに均一かつ対称に所定時間照射して、ペレットのターゲットを均一かつ対称に圧縮することを含む。この方法は、第一のナノ秒レーザー光源でターゲットを圧縮した後、複数のピコ秒レーザー光源から放出される第二のパルスパワー密度を有する第二のレーザービームで燃料ペレットを照射し、核融合反応の点火を引き起こすことを含む。このように2種類のレーザー光源を使用する技術は、点火温度を1桁または2桁以上劇的に低下させる高速点火と呼ばれる。
【0013】
別の例では、本発明は核融合反応を開始するための核融合リアクターシステムを提供する。このシステムは、複数のナノ秒レーザー光源から放出される第1のパルスエネルギーパワー密度を有する第1のレーザービームで燃料ペレットを所定時間照射するように構成された第1のレーザービームを含む。このシステムはまた、核融合反応の点火を引き起こすために、複数のピコ秒レーザー光源から放出される第2のパルスエネルギー密度を有する第2のレーザービームで燃料ペレットを照射するように構成された第2のレーザービームを含む。一例では、第1のレーザービームはファブリーペローの内部に存在する。
【0014】
例によっては、本発明は、これらの利益及び/又は利点の1つ以上を達成することができる。一例では、本発明は、コンパクトで空間的に効率的なシステムにおいてリアクターと共に構成された高強度パルス又は連続波(continuous wave:CW)レーザーシステム及び関連する方法を含む核融合エネルギーシステムを提供する。一例では、高強度パルスまたはCWレーザーシステムは、リアクター内で核融合エネルギーを点火し維持するのに十分なエネルギーを提供する。一例では、本発明は、現在の高強度レーザーを用いて、効率的な寸法、重量、コストを通して核融合出力を生成する利点を提供する。これら及び/又は他の利益及び/又は利点は、本発明のデバイス及び関連方法によって達成可能である。これらの利益及び/又は利点の更なる詳細は、本明細書全体を通して、及びより特に以下に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一例による光学キャビティ群と直接レーザー光源群とを備えるように構成された核融合リアクターシステムの簡略化された上面図を示す図である。
図2】本発明の一例による一対の可動ミラーデバイスを備えるように構成された光学キャビティ領域の簡略図を示す図である。
図3】本発明の一例による一対の可動ミラーを有する光学キャビティを用いて構成された核融合リアクターシステムの簡略化された上面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一例による光学キャビティ群と直接レーザー光源群とを備えて構成された核融合リアクターシステムの簡略上面図である。図示したように、このシステムは慣性核融合リアクターシステムである。このシステムは、内部領域と、外部領域と、内部領域の中心領域内に構成された反応領域とを有するリアクターハウジングを有する。一例として、リアクターハウジングは、機械的、化学的、熱的、及び高強度電磁放射に耐える適切な材料で作られている。図示したように、システムは、1からNまでの番号が付けられた複数のピコ秒レーザー光源を有し、Nは1から20以上の範囲を有する。これらの光源は、中心領域の周囲にパターンをなして配置されている。このパターンは、対称的、同心円状などであり得る。一例として、波長、パルス周波数、パルス幅、パルスエネルギーによって特徴付けられるレーザービームが、ピコ秒レーザー光源の各々から放射される。このレーザービームは集束され、反応領域内に注入された燃料ペレットに向けられる。好ましい例では、複数のレーザービームが燃料ペレットの近傍で組み合わされる。
【0017】
さらに示したように、このシステムは、1からMまでの番号が付けられた複数のファブリーペローキャビティ領域を有し、ここでMは50から500以上である。このキャビティ領域は、中心領域の周りに対称的に配置され、ハブが反応領域と同心であるようなハブとスポークのパターンを形成する。
【0018】
一例として、一対のナノ秒レーザー光源が、各ファブリーペローキャビティ領域に結合された第1のミラーデバイスおよび第2のミラーデバイスにそれぞれ構成される。一例として、一対のナノ秒レーザー光源からの第一のレーザービームと第二のレーザービームは、第一のミラーデバイスと第二のミラーデバイスの間を共に伝搬し、エネルギー強度が第一の強度から第二の強度、そしてP番目の強度へと、組み合わされたレーザービームのPサイクルの間に増加する(ここで、Pは10,000サイクルより大きい)。好ましい例では、複数のファブリーペローキャビティ領域は、中央領域で照射され、結合し、高強度パルスレーザービームを生成する。
【0019】
例えば、融合システムは200以上のファブリペローキャビティ領域を含む。各キャビティ領域は、ナノ秒(ns)レーザー光源のペアで構成される。一例として、このシステムは、1kJのパルスエネルギー(10×1kJ)を持つ100ピコ秒(ps)レーザー光源からなる10個のピコ秒レーザー光源を備える。一例として、10個のpsレーザー光源システムは、10×1kJでパルス幅1psでリアクターを囲むことで、psレーザー光源からの総出力が100kJになるように特徴付けられる。
【0020】
一例では、高強度ピコ秒レーザー光源はモードロックレーザーであり、サチュラブルアブソーバーやパッシブモードロッカーなどの非線形光学素子を使用して短パルスを生成する。モードロックレーザーは、フェムト秒からピコ秒のパルス幅を持つ非常に短いパルスを生成することができる。これらは非常に安定しており、非常に高いピーク出力を発生させることができるため、多くの科学および研究用途に理想的である。
【0021】
ファブリペローキャビティから構成される光学増強キャビティ(optical enhancement cavity:OEC)の例は、以下の文献に記載されており、これらはすべて共通の権利者に譲渡されている。ここでは参照としてその全体がすべての目的のために組み込まれている。2023年4月4日出願の米国特許出願番号18/295,764、2023年2月22日出願の米国特許出願番号18/172,885、2023年1月3日出願の米国特許出願番号18/149,644、2023年1月20日に出願の米国特許出願番号18/157,515、2023年1月30日に出願の米国特許出願番号18/161,717、2023年1月30日に出願の米国特許出願番号18/161,730、そして、2023年1月30日に出願の米国特許出願番号18/161,738。
【0022】
燃料ペレット用のディスペンサー装置も示されている。ディスペンサー装置は、2023年1月20日に出願の米国特許出願番号18/157,515で説明されており、共通の権利者に譲渡されており、ここにすべての目的のために参照として組み込まれている。
【0023】
一例では、本発明は核融合反応を開始する方法を提供する。この方法は、複数のナノ秒レーザー光源から所定の時間、第1パルスエネルギーパワー密度を有するOECを用いて燃料ペレットに第1レーザービームを照射することを含む。OECレーザーは、ファブリペロー(FP)共振器内部のOECレーザービームがターゲットを均一かつ対称的に圧縮するために使用されるため、均一な強度、狭いスペクトル幅、およびレーザービーム品質の他の多くの利点を有する。ほとんど、あるいはすべての従来のレーザーは、ファブリペロー(FP)共振器の外にある。そのため、ファブリペロー共振器の制御が十分でないため、従来のレーザービームの品質は、ファブリペロー共振器を出た後、すぐに悪くなってしまう。これらの点を考慮すると、OECレーザーは、現時点で従来のレーザーの中で最も優れたレーザービーム品質を持つことになる。ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の国立点火施設(NIF)は、2022年12月5日、ホールラウムを用いた初の点火に成功したと発表した。NIFがホールラウムを使用した理由は、レーザービームが均一ではないためである。レーザービームをホールラウムに照射すると、ホールラウムからX線が放出され、放出されたX線がDTペレットに均一に照射される。OECレーザーを使用すると、レーザービームの均一性を含めレーザービームの質が非常に良いため、場合によってはホールラウムが点火に必要ないこともある。OECナノ秒レーザーを使用することで、ターゲットを均一に圧縮し、ターゲットを均一に圧縮した後、第2のピコ秒パルスでホールラウムなしでターゲットを直接点火することができる。この方法は、複数のピコ秒レーザー光源から放出される第2のパルスエネルギー密度を有する第2のレーザービームを燃料ペレットに照射し、核融合反応の点火を引き起こすことを含む。
【0024】
一例では、第2パルスエネルギーパワー密度は第1パルスパワー密度よりも大きい。一例では、第2のレーザービームの照射は所定の時間内に生じる。一例では、ナノ秒レーザー光源の各々は、1nsから20nsの範囲のナノ秒パルス時間によって特徴付けられる。ピコ秒レーザー光源の各々は、一例では0.5psから5psの範囲のピコ秒パルス時間によって特徴付けられる。一例では、変形可能なミラーを用いてレーザーパワー密度の分布を改良した後、ピコ秒パルスをペレットに集光する。一例では、凹面ミラーを用いてnsパルスをペレットに集光する。
【0025】
図2は、本発明の一例での、一対の可動ミラーデバイスで構成された光学キャビティの簡略図である。図示のように、光学キャビティは、一対の可動ミラーデバイス間に形成される。一例では、各ミラーデバイスは、図に示すように、キャビティの長手方向に沿って10センチメートルから100センチメートルの範囲で長手方向に空間調整可能である。用途に応じて、より短い空間調整やより長い空間調整を含む他のバリエーションも可能である。
【0026】
ターゲットまたはペレットの寸法は、発電量に応じて1mmから5mmまで可変である。凹面ミラーを使って、OECレーザーはファブリーペロー(FP)キャビティの中心に集光される。中心部では、特殊な凹面ミラーを一定の曲率にすることで、レーザービームのスポット径を1mm以下に制御している。ターゲットの寸法が2mmや3mmになると、FBキャビティ中央部ではレーザービームのスポット径が1mm以下になり、ターゲット全体を均一に照射することができなくなる。図2に示すように、一対のミラーをキャビティ方向に沿って56.25cmまで移動させると、レーザービーム径は3mmとなり、3mm寸法のターゲットにOECレーザーが均一に照射される。したがって、4~5mmまでのターゲットの寸法に対応するためには、ミラーを1mまで移動させる必要がある。OECレーザーはターゲットを圧縮するために使用される。したがって、OECレーザーはターゲットに均一かつ対称に照射されなければならない。
【0027】
ホウ素を使用する一例では、ホウ素ベースの燃料ペレットの寸法は1mmから3mmの範囲である。一例では、ナノ秒パルスは1~20nsのパルスを特徴とする。一例では、3mm寸法のホウ素系燃料ペレットを用い、ディスペンサーはキャビティ領域の中心領域から56.25cm離れた位置にホウ素系燃料ペレットを注入する。
【0028】
図3は、本発明の一例での一対の可動ミラーを有する光学キャビティ領域を有するように構成された核融合リアクターシステムの簡略化された上面図である。図示のように、核融合リアクターシステムは、一対のミラーデバイスを含む光学キャビティ領域を有する。ミラーデバイスの各々は可動であり、また変形可能な凹面ミラーである。一例では、システムは、ホウ素ベースの燃料ペレットを注入するように構成されたディスペンサー装置を有する。複数の光学キャビティ領域は、核融合反応を促進するために交差領域で高強度エネルギーを生成するために、ハブ&スポーク構成で共に構成される。
【0029】
一例では、本発明は、エネルギー生成のためにレーザーデバイスを使用する慣性核融合リアクターを使用する方法を提供する。このような核融合リアクターは、前述の例のいずれかと同様とすることができる。一例では、この方法は、リアクターハウジング内の真空を維持することを含む。リアクターハウジングは内部領域を有し、内部領域の断面を横切って延びる直径を特徴とする。リアクターハウジングは、リアクターハウジングの空間的中心領域の近傍内に反応領域を有し、リアクターハウジングの内部内に形成された周辺領域を有する。周辺領域はリアクター領域を取り囲み、複数の周辺領域を含む。
【0030】
一例では、本方法は、第1のnsレーザー光源と第2のnsレーザー光源とを備えるナノ秒(ns)レーザー光源から電磁放射線を放出することを含む。第1のnsレーザー光源及び第2のnsレーザー光源は、各々、図示のように、一対のミラーデバイスに結合された電磁放射線を放出するように構成される。一対のミラーは各々、キャビティ領域の第1端と第2端に構成される。キャビティ長は、各対のミラー間の空間的な長さによって定義され、一例ではリアクターハウジングの直径よりも大きい。
【0031】
本方法は、第1のnsレーザー光源から第1のレーザービームを伝搬させ、第2のnsレーザー光源から第2のレーザービームを伝搬させて、キャビティ領域において、Mが1000サイクルより大きいMサイクルの間、第1の強度から第2の強度、そしてM番目の強度へエネルギー強度を増加させるようにまとめて結合させることを含む。一例では、キャビティ領域は、リアクターハウジングの内部領域内に1からNまでの番号が付けられ、周辺領域の周囲に空間的に構成された複数のキャビティ領域で構成される。複数のキャビティ領域の各々は、周辺領域の第1の側から周辺領域の第2の側まで延びている。第1の側面は第2の側面に対向している。キャビティ領域は、内部領域の直径に沿って直線状の経路を形成する。複数のキャビティ領域は、ハブとスポークの構成を形成する。各キャビティ領域は、リアクター領域と同心の中心領域を有し、各キャビティ領域は、第1の側面に結合された第1の端部と、周辺領域の第2の側面に結合された第2の端部とを有する。Nは1より大きい。
【0032】
一例では、本方法は、リアクターハウジングと空間的に構成された1からPまでの番号が付けられた複数のピコ秒レーザー光源を使用して、光学素子に結合された各ピコ秒(ps)レーザー光源から電磁放射を放出することを含む。光学要素は、集光ビームを作るための少なくともミラーまたはレンズを含む。ミラーは変形可能なミラーである。放射線は、透明ガラスを通過してリアクターハウジングの内部領域に入射し、複数のピコ秒レーザー光源から集光レーザービームを形成して、所定のスポット径を有する燃料ペレットに照射するように構成される。
【0033】
一例では、本方法は、燃料ペレット又は燃料ペレットを含む容器内に設けられた少なくともホウ素、ホウ素同位体11、DT、又は陽子+ホウ素同位体11の点火を開始させることを含む。燃料ペレットは、リアクター領域内に注入され、キャビティ領域の各々からの第1のレーザービーム及び第2のレーザービームを用いて核融合反応のために燃料ペレットを圧縮するのに十分なエネルギーレベルを用いて複数のキャビティ領域の交差点で点火するために、リアクターハウジングの反応領域で複数のpsレーザー光源に作動可能に結合される。
【0034】
一例では、nsレーザー光源の各々は、350nmから1070nmの範囲の波長及び0.3MHzから3MHzの範囲の周波数で電磁放射線を放出するように構成されたレーザーデバイスを備える。一例では、psレーザー光源の各々は、350nmから1070nmの範囲の波長及び1Hzから20Hzの範囲の周波数で電磁放射を放出するように構成されたレーザーデバイスから備える。
【0035】
一例では、nsレーザー光源からのM番目に増強されたパルスは、10Hzの周波数を有する。一例では、第M増強パルスは、周波数10Hzで約10kJのパルスエネルギーを有する。一例では、Nは100以上である。一例では、1対のnsレーザー光源からのM番目に増強されたパルスは、所定のスポット径が燃料ペレットと実質的に同じ寸法になるように、燃料ペレットに集光される。
【0036】
一例では、本方法は、リアクターハウジングに結合された燃料ペレットディスペンサーを使用し、燃料ペレットディスペンサーは、10Hzの率で燃料ペレットを注入するように構成される。一例では、M番目に増強されたパルス、各psレーザー光源、及びペレットディスペンサーは、10Hzの周波数で同期している。一例では、各レーザー光源は10Hzの周波数で同期している。
【0037】
一例では、一対のミラーデバイスの各々は、キャビティの長さの方向に沿って、10センチメートルから100センチメートルまでの長手方向に空間的に調節可能である。
【0038】
一例では、複数のキャビティ領域の各々は、100メートルから200メートルの長さを有する。一例では、複数のキャビティ領域の各々は150メートルの長さを有する。
【0039】
一例では、リアクターハウジングは、直径が1mから50mの範囲であることを特徴とする。
【0040】
一例では、psレーザー光源の各々は、10個の小型psレーザー光源を備える。小型ps光源の各々は、10Hzの周波数で約1kJのパルスエネルギーを有する。一例では、レーザー光源の各々は、周波数10Hzで約10kJのパルスエネルギーを有する。
【0041】
一例では、複数のpsレーザー光源は、パルスパワー密度が1×1020Wcm-2以上、または1×1021Wcm-2以上、または1×1022Wcm-2以上となるように、燃料ペレット上の所定のスポット径に集光される。
【0042】
一例では、nsレーザー光源の各々は、1MHzの周波数で約0.1Jのパルスエネルギーを有する。
【0043】
一例では、所定のスポット径は1mmφから5mmφの範囲である。
【0044】
一例では、エネルギーレベルは、燃料ペレット上の1×1013Wcm-2以上のレーザーパルスパワー密度によって特徴付けられる。一例では、エネルギーレベルは、燃料ペレット上の1×1014Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる。一例では、エネルギーパワーレベルは、燃料ペレット上の1×1015Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる。一例では、エネルギーパワーレベルは、燃料ペレット上の1×1016Wcm-2以上のパルスパワー密度によって特徴付けられる。
【0045】
一例では、nsレーザー光源からのM番目に増強されたパルスは、特に1nsから20nsまでの時間、燃料ペレットを圧縮するために燃料ペレットに照射される。燃料ペレットの圧縮後、nsレーザー光源よりも高いパワー密度を有するpsレーザー光源を、ターゲットの寸法よりも小さい所定のスポット径で燃料ペレットに照射して着火させる。例では、ターゲット上の集光psレーザーのスポット径は、要求されるパワー密度にもよるが、100~500ミクロンである。パワー密度が高い場合、集光スポット径はより小さくなる。
【0046】
一例では、システムはキャビティ長を持ち、1MHz、0.1ジュールに設定された光源を使用する。システムはリアクターハウジングを有し、このリアクターハウジングは、真空環境に保たれた内部領域、複数のキャビティを含み、各キャビティは一対のミラーの間に形成されている。各一対のミラーは、一端にレーザー光源、他端に光検出器を有する。システムは、図示のようなペレット供給(又は送出)デバイス又はホールラウム供給(又は送出)デバイスを有する。
【0047】
一例では、リアクターハウジングは真空チェンバーである。一例では、真空チェンバーは密閉された気密容器であり、真空すなわち非常に低い圧力の領域を作るために使用される。キャビティ内は真空(または空)であり、これはパルスまたは連続波(CW)レーザーのパワーの強度を高めるために望ましい条件である。一例では、空気や他の不純物がキャビティ内にあると、空気中の粒子や水がレーザー光を吸収または散乱し、レーザー光がキャビティ内を伝搬する際に、レーザー光の強度が低下する。好ましい例では、共振器は真空に保たれている。
【0048】
真空チェンバーは通常、ステンレススティール、アルミニウムなどの真空、高温、放射線に耐性のある材料で作られている。これは、核融合反応中に発生する高放射線と高温、および核融合生成物から放出される強い放射線に耐えるように設計されている。
【0049】
一例では、真空チェンバーは核融合リアクターの構成要素であり、本発明においてレーザーパワーを増加させるのに必要な条件を作り出すのに役立つ。また、反応やレーザー伝搬を妨害する空気やその他の汚染物質などの外部影響から核融合反応を保護するのにも役立つ。一例では、真空環境は10-5torr未満から10-3torrの範囲とすることができる。もちろん、他の変形、修正、代替もあり得る。
【0050】
リアクターハウジング内に真空を形成するために、大容量ポンプを用いて真空チェンバーを排気し、これにより空気や他のガスを全てチェンバーから除去する。このプロセスはチェンバーのポンピングダウンと呼ばれ、所望の真空レベルを達成するためには、チェンバーの寸法にもよるが、通常数時間からそれ以上かかる。真空が達成されると、レーザー光源のスイッチが入れられ、パルスレーザーまたはCWレーザーのパワーが、合計Nの各キャビティで増加される。燃料ペレットまたは燃料ペレットを含む容器が管を通して注入され、核融合反応が開始される。N組のファブリーペローキャビティにより、本発明ではリアクターハウジング内のパルスレーザーまたはCWレーザーが増強される。
【0051】
一例では、システムはリアクターハウジングの空間的に中心領域の近傍内に反応領域を有する。反応領域は、図示のように中心領域内にある。中心領域は複数のキャビティ領域の間の交差点を示す。また、中心領域は、キャビティ領域のない複数のレーザー光源からの複数のレーザービームのスポットを形成するように構成されている。
【0052】
システムは、図示のように、リアクターハウジングの内部領域に形成された周辺領域を有する。周辺領域はリアクター領域を取り囲み、好ましくはリアクターハウジングの内部の最大直径に沿って配置される。システムは、リアクターハウジングの内部領域内に1からNまでの番号が付けられた複数のキャビティ領域を有し、複数のキャビティ領域の各々が周辺領域の第1の側から周辺領域の第2の側まで延びるように周辺領域の周囲に空間的に構成されている。好ましくは、第1の側は、直線に沿って第2の側に対向し、内部領域の直径に沿った直線経路を形成する。一例では、複数のキャビティ領域は、ハブとスポークの構成を形成する。各キャビティ領域はリアクター領域と同心の中心領域を有し、各キャビティ領域は周辺領域の第1の側に結合された第1の端部と第2の側に結合された第2の端部を有する。一例では、Nは10より大きく、100、200、または数千とすることができるが、他の実施例ではキャビティはもっと少なくてもよい。一つ一つのレーザー光源は、高出力パルスレーザーが反応領域の燃料ペレット又は容器に当たるように、他のレーザー光源、燃料ペレット供給システム、及び光検出器と同期している。
【0053】
キャビティ領域の第1端と第2端には、それぞれ一対のミラーが構成されている。各対のミラーはリアクターハウジング内の周辺領域に沿って空間的に配置されている。示されるように、システムは、99.99%以上または99.999%以上の反射率を有する高反射フラットミラーおよび湾曲光ミラーデバイスの任意の組み合わせを使用して、光損失を最小化する。一例では、高反射光学ミラーは特定の方向に光を反射するデバイスである。このデバイスは、誘電体材料などの高反射材料でコーティングされた平面または曲面を有する。好ましい高反射光学ミラーは、誘電体分布ブラッグ反射鏡(DBR)である。一例では、ミラーの形状と曲率によって反射光の方向と強度が決まる。
【0054】
本発明では、全ての高強度レーザービームをリアクター又は反応領域の中心の小さなスポットに集光し、各キャビティでレーザー強度をM倍した後、多数のN個の高強度レーザービームの全てを集めることにより、中心で最高のレーザー出力密度を達成する。一対のミラーで構成される各キャビティでは、少なくとも一方に結合された電磁放射線を放出するように構成されたレーザー光源が配置され、そのレーザービームがミラーデバイス間を伝搬する際にエネルギー強度が第一の強度から第二の強度、そしてMサイクルの間にM番目の強度へと増加する。
【0055】
一例では、電磁放射線を放出し、リアクター内部の各ファブリーペローキャビティを通して高出力レーザービームを形成するように構成されたレーザー光源を使用する。一例では、本システムは、高出力パルスまたはCWレーザーシステムを核融合リアクターに結合し、核融合反応を開始し、永続させるための高出力エネルギー源を形成する。一例では、レーザー核融合は、原子核の融合によってエネルギーが生成されるプロセスである。このプロセスは、2つ以上の原子の原子核が引き合わされ、高温・高圧で衝突することで核融合が起こり、大量のエネルギーが放出される。一例のレーザー核融合プロセスでは、重水素とトリチウム(水素の2つの同位体)の混合物である小さな燃料ペレットを圧縮・加熱するために、高エネルギーのレーザービームが使われる。レーザービームは衝撃波を発生させ、爆縮によって燃料を圧縮し、核融合に十分な温度と圧力に到達させる。核融合プロセスでは、燃料原子の原子核が結合してより重い原子核を形成し、光、運動量、熱の形で大量のエネルギーを放出する。このエネルギーを利用し、発電機を使用して電気を発生させることができる。
【0056】
一例では、高出力レーザーは、高いレベルのパワーで、高度に集中され、集束された光ビームを生成するデバイスである。高出力レーザーによって生成される光は、波長、強度、コヒーレンスなど、レーザーの特定の設計と構造に依存する様々な特性を有することができる。
【0057】
高出力レーザーの一種に固体レーザーがあり、これはフラッシュランプや他のレーザーなどの外部エネルギー源によって励起される固体利得媒質でできている。固体利得媒質は、通常、レーザービームを増幅するためにネオジムやイッテルビウムなどの希土類元素がドープされた結晶、セラミックス、ガラス棒である。固体レーザーは高効率で高出力が得られるため、多くの産業用途や科学用途に最適である。
【0058】
高出力レーザーのもう一つのタイプはガスレーザーであり、これは利得媒質としてガスを使用する。ガスレーザは、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザ、アルゴンレーザなど、使用するガスの種類によってさらに分類することができる。ガスレーザは信頼性が高く、寿命が長いので連続動作に適している。
【0059】
高出力レーザーは、利得媒質としてドープファイバーを使用するファイバーレーザーのように、前述の2つのタイプのハイブリッドとすることもできる。ファイバーレーザーは高効率で、非常に高い出力が得られるため、多くの産業用途や科学用途に最適である。
【0060】
高出力レーザの性能と効率には、利得媒体、ポンプ光源、共振器設計、冷却システムなど多くの要因がある。高出力レーザーの設計と構造は、その性能と特定の用途への適合性に大きな影響を与える可能性がある。一例では、高出力レーザーは、高出力の光ビームを高度に集中させ、集束させたもので、幅広い用途に使用される。
【0061】
一例では、本発明は高強度パルスまたはCWレーザー発生システムを提供する。一例では、高強度パルスまたはCWレーザーは、高レベルの出力で高度に集中された光ビームを生成するレーザーの一種である。高強度パルスレーザーの短いパルス時間により、高いピークパワーと、非常に短時間で高いピークエネルギーをターゲットに供給する能力が可能になる。
【0062】
一例では、高強度パルスレーザーの一種にQスイッチレーザーを挙げることができる。Qスイッチレーザーは、機械的または電気光学的変調器を使用して、レーザービームのオンとオフを急速に切り替える。これにより、ナノ秒からピコ秒のパルス幅の非常に短いパルスを生成することができる。Qスイッチレーザーは高効率で、非常に高いピークパワーを発生させることができるため、多くの産業用途や科学用途に最適である。高強度パルスレーザーのもう一つのタイプはモードロックレーザーで、可飽和吸収体や受動モードロッカーなどの非線形光学要素を用いて短パルスを発生させる。モードロックレーザーは非常に短いパルスを発生させることができ、パルス幅はフェムト秒からピコ秒である。安定性が高く、非常に高いピークパワーを発生できるため、多くの科学・研究用途に最適である。
【0063】
高強度パルスレーザーやCWレーザーの性能と効率には、利得媒質、ポンプ光源、共振器設計、パルス発生方法など多くの要因が関わっている。高強度パルスレーザーやCWレーザーの設計や構造は、その性能や特定の用途への適合性に大きな影響を与える可能性がある。一例では、高強度パルスレーザーは、高出力でパルス幅が非常に短く、高集光された集束レーザービームを生成するレーザーである。幅広い用途で使用されている。一例では、本発明は、本明細書全体を通して、より具体的には以下のように、高強度パルスまたはCWレーザー発生システムおよび関連する方法を提供する。
【0064】
一例では、いくつかのタイプの高反射光ミラーがあり、それぞれ特定の特性と用途を有する。平面ミラーとしても知られるフラットミラーは、平らな反射面を有し、光を直線状に反射するために使用される。一例では、凹面ミラーは内側に湾曲した反射面を持ち、光を一点に集光するために使用される。本発明では、nsレーザー光源、psレーザー光源ともに、高出力レーザーをリアクターの中心に集光するために凹面ミラーを含む。一例では、凸面ミラーは、湾曲した外向きの反射面を持ち、より広い範囲に光を広げて、ミラー表面でのレーザーパワーの集中を減らし、光学的損傷を避けるために使用される。一例では、光学ミラーは、誘電体コーティングや金属コーティングなどの特殊なコーティングを施すことで、反射特性を向上させ、光学的損傷の原因となる光吸収を引き起こす表面欠陥を減らすこともできる。これらのコーティングはミラーの効率と性能を向上させ、特定の用途に適したものにすることができる。
【0065】
一例では、システムは、リアクター領域内に配置された燃料ペレット又は燃料ペレットを内部に備える容器を有し、複数のキャビティ領域の各々がリアクター領域内で空間的に交差するように複数のキャビティ領域に結合され、核融合反応のために燃料ペレットを点火するのに十分なエネルギーレベルを提供する。チューブ又は他の燃料供給誘導要素は、燃料ペレット又は容器供給デバイスから反応領域まで構成される。一例では、容器はホールラウムであり、これについては以下に詳述する。本発明では、OECレーザーを用いてターゲットを均一かつ対称的に圧縮する。上述したように、OECレーザーを使用することでホールラウムは必要ではない。
【0066】
一例では、ペレットまたは容器の位置は、LIDARとビデオカメラでモニターされ、レーザー光源、ミラー裏面のフォトダイオードの信号、および燃料ペレットまたは容器のデリバリーデバイスのすべてと同期するようにコンピュータにフィードバックされる。
【0067】
一例では、本システムは、真空チェンバー内に構成された複数の高エネルギーパルスまたはCWレーザーを使用して、合計1メガジュール(MJ)~20MJ、10テラワット(TW)~10ペタワット(PW)、またはそれ以上のエネルギーを達成する。キャビティ長は20メートル~10Kメートルとすることができるが、他の例ではもっと小さくても大きくてもよい。反応領域へのペレットまたは容器の搬入周波数は、一例では約1Hz~50Hzおよびそれ以上またはそれ以下とすることができる。レーザー光源はそれぞれ、0.01ジュール~100Jのパワー、100KHz~100メガヘルツの周波数を有することができる。
【0068】
一例では、ファブリーペローキャビティは、互いに向き合った高反射率の2枚の平行ミラーから備える光学共振器である。これらのミラーは、光を互いに前後に反射し、建設的干渉と破壊的干渉を発生させる干渉パターンを作り出す。光はキャビティに入射すると、キャビティを透過するか、ミラーのどちらかで反射する。ミラーに反射した光は、それ自身と建設的に干渉し、キャビティ内の光を強化する。空洞を透過する光は、反射光と破壊的に干渉し、打ち消す。ミラー間の距離によってキャビティの共振が決まり、キャビティ内で共振する光の波長が決まる。この共振は、ミラー間の距離を変えることで微調整することができ、反射・透過する光の周波数を正確に制御することができる。もちろん、当業者であれば、他の変形、修正、および代替を認識するであろう。
【0069】
上記は具体例の完全な説明であるが、様々な修正、代替、及び等価を使用することができる。一例では、システム及び方法は、上述した要素の任意の組み合わせや、本明細書外を含むことができる。一例では、高強度レーザーは、各レーザービームの建設的干渉を利用して、一対のミラーデバイス間に共振器を形成する。一例では、高強度パルスレーザーによる第一経路は共振器デバイスに設けられる。一例では、本発明は、リアクターの中心にレーザー光を集光するために、反応領域内に同心円状または球状の共振器を生成するシステムおよび方法を提供する。さらに、第1、第2、第3および最終という用語は、本例の1つまたは複数における順序を意味するものではない。好ましい例では、レーザー光は、光学的損傷を低減する緑色光によって特徴付けられる。したがって、上記の説明及び図示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではない。
図1
図2
図3
【外国語明細書】