(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166118
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】スピンカラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241121BHJP
C12M 1/10 20060101ALI20241121BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/10
C12M1/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077754
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】112118307
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522480436
【氏名又は名称】ラブターボ バイオテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タイ チ-シェン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シー ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, シー ツン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB15
4B029BB20
4B029GB05
4B029HA06
(57)【要約】
【課題】スピンカラムの提供。
【解決手段】本発明のスピンカラムは、核酸およびタンパク質などの生体分子を濾過および抽出するために使用される。スピンカラムが使用されるとき、それは、収集管内に位置付けられ、その後、遠心分離機のスロット内に位置付けられ、遠心分離機が、作動させられる。本発明のスピンカラムの内部体積は、従来のスピンカラムの内部体積より大きく、それがより大量の試料を収容することを可能にする。加えて、本発明のスピンカラムの内側に位置付けられる濾過膜は、従来のスピンカラムの濾過膜より小さい。濾過膜から生体分子を洗浄するために要求される洗浄液の量は、濾過膜のサイズに比例する。したがって、より少ない洗浄液が、本発明において要求される。本発明のスピンカラムはより大量の試料を収容し得るので、試料に含まれる生体分子の数もより多い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンカラムであって、前記スピンカラムは、
上部区分であって、前記上部区分の頂部は、開口部を形成しており、前記上部区分は、外径および内径を有する、上部区分と、
中間区分であって、前記中間区分は、前記上部区分から続き、外径および内径を有し、前記中間区分の前記外径は、前記上部区分の前記外径より小さく、前記中間区分の前記内径は、前記上部区分の前記内径より小さい、中間区分と、
下部区分であって、前記下部区分は、前記中間区分から続き、外径および内径を有し、前記下部区分の前記内径は、前記中間区分の前記内径より小さく、前記下部区分の底部端は、出口を有する、下部区分と
を含む、スピンカラム。
【請求項2】
キャップが、前記開口部を緊密に覆うために前記上部区分の前記頂部に提供されている、請求項1に記載のスピンカラム。
【請求項3】
前記下部区分の前記外径は、前記中間区分の前記外径と同じである、請求項2に記載のスピンカラム。
【請求項4】
前記下部区分の前記内径は、6.5mm~5.5mmである、請求項2に記載のスピンカラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、核酸およびタンパク質などの生体分子を濾過および抽出するために使用されるデバイスであるスピンカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
試料から核酸およびタンパク質などの生体分子を濾過および抽出するために、試料は、液化させられ得、次いで、スピンカラムとして一般に知られる管内に配置され得る。試料を注入する前に、濾過膜が、管内に挿入される。濾過抽出を実施するとき、管は、収集管内に配置され、次いで、収集管は、遠心分離機のスロット内に配置され、次いで、遠心分離機が、開始される。それにより、遠心力が、管内の試料に及ぼされ、これにより、試料は、濾過膜を収集管内へと通過する。
【0003】
濾過膜の特別な素材および細孔に起因して、試料が濾過膜を通過すると、抽出されるべき試料中の生体分子が、濾過膜上に吸着される。次いで、濾過膜は、膜内の不純物を除去するために洗浄液で洗浄され、次いで、回収溶液は、濾過膜に付着した生体分子を溶解し、それらを回収することにより抽出プロセスを完了するために使用される。
【0004】
上述の遠心分離機は、実験室で30年より長く使用されている小型の卓上遠心分離機である。それらは、通常、24または32スロットを有する。ブランドに関係なく、スロットの仕様は、わずか数ミリメートルの偏差を伴って、概ね同じである。濾過および抽出のプロセスでは、遠心分離機、スピンカラム、および収集管が、相互と連携する必要がある。遠心分離機のスロットの仕様は遠心分離機の間で統一されているので、スピンカラムおよび収集管の仕様および形状も、ブランドに関係なく類似しており、数ミリ未満異なっている。スピンカラムの外径は、通常、開口部から底部へと次第に先が細くなっている。したがって、従来のスピンカラムのサイズは、概ね固定されており、試料の総体積を積み込むその容量も、同様である。操作に対する最大好適体積は、約750μlであり、溶出バッファーは、約60μlである。しかしながら、より正確な試験結果を達成するためには、抽出される生体分子の濃度がより高いほど、よりよい。したがって、より高い濃度の生体分子を得るために、より大量の試料をスピンカラムの中に入れ、溶出バッファーの体積を減らすことが必要である。しかしながら、上述のように、従来の遠心分離機、収集管、およびスピンカラムのサイズは、固定されており、スピンカラム内により大量の試料を位置付けることを不可能にする。したがって、従来の遠心分離機内でも使用され得る、より高濃度の生体分子を得るための新しいスピンカラムを開発することが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明のスピンカラムの体積は、1050μlより大きくあり得、濾過膜を収容する部分は、より小さい直径を有し、それによって、溶出バッファーの体積は、従来のスピンカラムに対する60μlから30μlまで減らされ得る。同じ条件のもとで、計算された濃度は、従来のスピンカラムの濃度の2.8倍(=1050μl/750μl×60μl/30μl)であり、それは、生化学アッセイなどの後続の用途のニーズを満たすように、生体分子の濃度を効果的に増加させ得る。
【0006】
本発明のスピンカラムの具体的な特徴は、それが3つの部分、すなわち、上部区分、中間区分、下部区分を有し、全長は、従来のそれと概ね同じであり、中間区分の外径は、従来のそれと同じであり、上部区分の内径および外径は、中間区分の内径および外径よりそれぞれ大きく、下部区分の内径は、中間区分の内径より小さい。下部区分は、適切な直径の濾過膜を提供されている。さらに、3つの区分の長さの比も、従来のそれとは異なっており、特に上部区分と中間区分との長さの比が、従来のそれより大きい。上部区分の内径が中間部の内径より大きく、上部区分の中間区分に対する長さの比が従来のそれより大きいので、スピンカラム全体は、従来のそれより大きい体積を有する。
【0007】
本発明のスピンカラムの下部区分(濾過膜が位置付けられている)の内径は、従来のスピンカラムの内径より小さい。したがって、同じ濾過膜の厚さのもとでは、本発明のスピンカラム内に位置付けられた濾過膜の体積は、従来のスピンカラムの体積より小さい。濾過膜の体積はより小さいが、吸着される生体分子の数は、変化しない。濾過膜の体積が小さいので、濾過膜に吸収された生体分子を溶解および回収するために要求される溶出バッファーの量もより少なく、それは、回収される生体分子の濃度を効果的に増加させ得、それによって、生化学アッセイなどの後続の用途の精度を向上させる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
スピンカラムであって、前記スピンカラムは、
上部区分であって、前記上部区分の頂部は、開口部を形成しており、前記上部区分は、外径および内径を有する、上部区分と、
中間区分であって、前記中間区分は、前記上部区分から続き、外径および内径を有し、前記中間区分の前記外径は、前記上部区分の前記外径より小さく、前記中間区分の前記内径は、前記上部区分の前記内径より小さい、中間区分と、
下部区分であって、前記下部区分は、前記中間区分から続き、外径および内径を有し、前記下部区分の前記内径は、前記中間区分の前記内径より小さく、前記下部区分の底部端は、出口を有する、下部区分と
を含む、スピンカラム。
(項目2)
キャップが、前記開口部を緊密に覆うために前記上部区分の前記頂部に提供されている、上記項目に記載のスピンカラム。
(項目3)
前記下部区分の前記外径は、前記中間区分の前記外径と同じである、上記項目のいずれかに記載のスピンカラム。
(項目4)
前記下部区分の前記内径は、6.5mm~5.5mmである、上記項目のいずれかに記載のスピンカラム。
(摘要)
本発明のスピンカラムは、核酸およびタンパク質などの生体分子を濾過および抽出するために使用される。スピンカラムが使用されるとき、それは、収集管内に位置付けられ、その後、遠心分離機のスロット内に位置付けられ、遠心分離機が、作動させられる。本発明のスピンカラムの内部体積は、従来のスピンカラムの内部体積より大きく、それがより大量の試料を収容することを可能にする。加えて、本発明のスピンカラムの内側に位置付けられる濾過膜は、従来のスピンカラムの濾過膜より小さい。濾過膜から生体分子を洗浄するために要求される洗浄液の量は、濾過膜のサイズに比例する。したがって、より少ない洗浄液が、本発明において要求される。本発明のスピンカラムはより大量の試料を収容し得るので、試料に含まれる生体分子の数もより多い。より少ない洗浄液が濾過膜から生体分子を溶解および回収するために要求されるので、洗浄液中の回収される生体分子の濃度は、より高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【0009】
【0010】
【
図3】
図3は、従来のスピンカラムが収集管内に挿入されている状態を示している。
【0011】
【0012】
【
図5】
図5は、遠心分離機に挿入されているスピンカラムを伴う収集管の状態を示している。
【0013】
【
図6】
図6は、本発明のスピンカラムのある実施形態を示している。
【0014】
【
図7】
図7は、収集管内に挿入されている本発明のスピンカラムの一実施形態の状態を示している図である。
【0015】
【
図8】
図8は、本発明のスピンカラムの別の実施形態を示している。
【0016】
【
図9】
図9は、収集管内に挿入されている本発明のスピンカラムの実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
以下、本発明のスピンカラムの実施形態が、図面の参照を伴って説明される。
【0018】
本発明のスピンカラムは、従来のスピンカラムの欠点に対処するために改良されているので、本発明のスピンカラムの特性は、まず従来のスピンカラム10の特性をレビューすることによって最もよく理解され得る。
【0019】
図1は、上部区分11、中間区分12、および下部区分13を含む従来のスピンカラム10を示しており、開口部が、上部区分11の頂部に形成されており、開口部は、開口部を緊密に閉じるためのキャップ14をさらに含み得、中間区分12は、真っ直ぐな円形の管であり、試料の大部分を収容し、下部区分13は、底部に出口15を伴う逆円錐形状を有し、下部区分13は、濾過膜16および保持リング17を収容し得る。保持リング17は、濾過膜16を下部区分13に固着させる。
【0020】
図2は、開いた上端と閉じた下端とを伴う従来の収集管20を示している。
図3は、従来のスピンカラム10が収集管20内に挿入されている状態を示しており、スピンカラム10の上部区分11が、収集管20の上方に露出しており、中間区分12および下部区分13は、収集管20内に収容されている。
【0021】
図4は、従来の遠心分離機30を示している。遠心分離機30のローター31は、外縁付近に複数のスロット32を伴って平らに配置されている。
図5は、スピンカラム10を伴う収集管20が遠心分離機30内に挿入されている状態を示している。スピンカラム10の上部区分11のみが、遠心分離機30のスロット32の外側に露出しており、一方、他の部分は、遠心分離機30のスロット32内に隠れている。遠心分離機30が始動させられた後、スピンカラム10に含まれる試料は、遠心力に起因して、濾過膜16を通過し、収集管20によって受け取られる。スピンカラム10内に位置付けられた濾過膜16は、特殊な材料から作製され、試料から抽出されるべき生体分子は、濾過膜16によって吸着され得る。溶出プロセスの後、濾過膜16上の生体分子は、溶解され得、収集管20によって受け取られ得る。溶出バッファー中の生体分子の濃度が高いと、アッセイの精度も高い。溶出プロセス中、濾過膜によって吸着された生体分子の大部分を溶解および回収するために、十分な溶出バッファーが、追加される必要がある。一般的に言えば、追加される溶出バッファーの量は、濾過膜のサイズに比例する必要がある。
【0022】
図6は、本発明のスピンカラム40のある実施形態を示している。
図1の従来のスピンカラム10と
図6に示されている本発明のスピンカラム40との比較から、スピンカラム40も3つの部分、すなわち、上部区分41、中間区分42、および下部区分43に分割され得ることが理解され得る。それらのうち、中間区分42の外径および内径は、従来のスピンカラム10の中間区分12の外径および内径とそれぞれ同等であり、上部区分41の外径及び内径は、中間区分42の外径および内径よりそれぞれ大きく、開口部が、頂部に形成されており、開口部は、開口部を緊密に覆うキャップ44をさらに含み得、下部区分43の外径および内径は、中間区分42の外径および内径よりそれぞれ小さい。出口45が下部区分43の底部にあり、下部区分43は、濾過膜46および保持リング47を収容し得る。保持リング47は、濾過膜46を下部区分43に固着させる。
【0023】
スピンカラム40の上部区分41、中間区分42、および下部区分43の長さの合計は、従来のスピンカラム10の上部区分、中間区分、および下部区分の長さとほぼ同じであり、28.0mm~30.0mmであり、スピンカラム40の上部区分の長さは、従来のスピンカラム10の上部区分の長さより大きく、9.5mm~10.5mmであり、スピンカラム40の中間区分の長さは、従来のスピンカラム10の中間区分の長さ未満であり、11.0mm~12.0mmであり、回転管40の下部区分の長さは、従来のスピンカラム10の下部区分の長さと同様であり、7.5mm~8.5mmである。スピンカラム40の上部区分の長さは従来のスピンカラム10の上部区分の長さより大きいので、スピンカラム40の体積は、従来のスピンカラム10の体積より大きい。例として
図6のスピンカラムをとると、スピンカラムの体積は、750μlから1050μlまで増加させられ得、それは、従来の体積の1.4倍である。
【0024】
図7は、収集管20内に挿入されている本発明のスピンカラム40の実施形態を示しており、上部区分41は、収集管20の上方に露出しており、中間区分42および下部区分43は、収集管20内に含まれている。
【0025】
図8は、本発明のスピンカラム50の別の実施形態を示している。
図6に示されている本発明のスピンカラム40の実施形態との違いは、下部区分の外径にある。中間区分52の外径は、下部区分53の外径と同じであるかまたはそれより若干小さくあり得、スピンカラム40の下部区分43の外径より大きくあり得る。スピンカラム50の下部区分53の内径は、スピンカラム40の下部区分43の内径と依然として同じである。
【0026】
図9は、本発明のスピンカラム50が収集管20内に挿入されている状態を示しており、回転管50の上部区分51は、収集管20の上方に露出しており、中間区分52および下部区分53は、収集管20内に収容されている。
【0027】
本発明のスピンカラム40、50の下部区分43、53の内径は、従来のスピンカラム10の下部区分13の内径より小さい。したがって、下部区分43、53内に位置付けられた濾過膜46,56の直径も、従来のスピンカラム10の下部区分13内に位置付けられた濾過膜16の直径より小さい。従来のスピンカラム10の下部区分13の内径は、約8.2mmであり、本発明のスピンカラム40、50の下部区分43、53の内径は、6.5mm~5.5mmであり得る。同じ濾過膜の厚さのもとでは、濾過膜46、56の体積も、濾過膜16の体積より小さい。スピンカラムに対する回収液の適切な体積は、従来の60μlから30μlまで減らされ得る。
【0028】
生体試料の分析が実施されるとき、取得される生体試料が十分な濃度に達していないので、正しい分析結果が取得されない場合が多い。本発明のスピンカラムを使用することは、より高濃度の生体分子を取得し得、それは、正確な分析結果を得ることにおいて大いに役立つ。
【0029】
上述の内容は、本発明を実施するための特定の可能な方法のみを説明している。上述の実施形態の修正、置き換え、および組み合わせは、本発明の分野の当業者によって容易に完遂されることができ、本発明の概念の範囲内にある。