(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016615
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】立坑の構築装置、及び立坑の構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 1/08 20060101AFI20240131BHJP
E21D 5/10 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E21D1/08
E21D5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118865
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521309949
【氏名又は名称】株式会社忠武建基
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森山 智明
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】湊 憲二
(72)【発明者】
【氏名】磯上 武章
(72)【発明者】
【氏名】磯上 章太
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
(57)【要約】
【課題】例えば支障物などによって孔底部の掘削を中断しても、坑内の安全を確保できる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】環状のライナープレート20を高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、ライナープレート20の外径より大きい内径を有して下方に延びる筒状の刃口51と、刃口51の内部における孔底部12を掘削する掘削部53と、既設のライナープレート20を反力として、刃口51を下方に押し付けるジャッキ56と、刃口51の内側に配置されるとともに、ライナープレート20の外径よりも大きい内径を有する筒状で、刃口51に対して相対移動可能にジャッキ56に固定された内側筒部57とが設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、
前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口と、
該刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、
既設の組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮機構部と、
前記刃口の内側に配置されるとともに、前記ライナープレートの外寸よりも大きい内寸を有する筒状で、前記刃口に対して相対移動可能に前記伸縮機構部に固定された内側筒部とが設けられた
立坑の構築装置。
【請求項2】
前記伸縮機構部が、高さ方向に伸縮する伸縮本体部と、該伸縮本体部の先端に設けられ、前記組付済ライナープレートの下端に当接する当接部とを備え、
前記伸縮本体部が前記刃口に固定され、
前記内側筒部が前記当接部に固定された
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項3】
前記内側筒部の外周面が、少なくとも前記刃口の内周面の上部に対向する構成である
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項4】
前記内側筒部の上端が、最下段よりも1つ上段の前記組付済ライナープレートの外面と孔壁との間に充填した裏込め材に当接または近接する構成である
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項5】
前記内側筒部における高さ方向の長さが、1つの前記ライナープレートにおける高さ方向の長さよりも長い構成である
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項6】
前記伸縮機構部が、前記刃口の周方向に所定間隔を隔てて複数設けられた
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項7】
前記内側筒部の下方において、前記刃口に支持された作業床が備えられた
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項8】
既設の前記組付済ライナープレートの下端と孔壁との間とを遮断する遮断部材が脱着可能に設けられた
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項9】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、
前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口の内部において、掘削部が孔底部を掘削する掘削工程と、
既設の組付済ライナープレートを反力として、伸縮機構部が前記刃口を下方に押し付けて前記刃口を下降させる伸長工程と、
前記刃口が前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した状態において、最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを組み付ける組付工程とを繰返し行い、
前記伸長工程において、
前記刃口の内側に配置されるとともに、前記ライナープレートの外寸よりも大きい内寸を有する筒状で、前記刃口に対して相対移動可能に前記伸縮機構部に固定された内側筒部を、前記刃口の下降に伴って前記刃口の上端から上方に突出させる
立坑の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて立坑を構築する立坑の構築装置及び立坑の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて立坑を構築する深礎工法などがある。
具体的には、孔底部を掘削するとともに、掘削された孔壁を環状のライナープレートで保護することを所定深さまで繰り返して、立坑を構築する工法であり、特許文献1に記載の工法もそのひとつである。
【0003】
この特許文献1では、高さ方向に組付けた環状のライナープレートよりも下方に、孔底部を掘削する掘削装置を配置するとともに、掘削装置を支持する支持装置を孔壁に押し付けることで、掘削装置の支持反力を確保している。
【0004】
さらに、1リングに対応する深さの掘削が完了すると、特許文献1では、掘削装置の上方に配置した作業台を支持装置によって降下させ、作業台上の作業員が最下段のライナープレートに新たなライナープレートを組付け、これを所定深さまで繰り返して所定深さの立坑を構築している。
【0005】
ところで、深礎工法では、例えば岩などの支障物によって孔底部の掘削が阻害された場合、孔底部の掘削を中断して支障物を撤去する必要がある。この際、孔底部の掘削を中断したことで、掘削した孔壁の一部がライナープレートで保護されていないことがある。
【0006】
例えば特許文献1の場合、支障物を撤去するために孔底部の掘削を中断すると、既設の組付済ライナープレートと支持装置との間から孔壁が露出した状態で、孔底部の支障物を撤去することになる。そうすると、特許文献1では、意図しない振動などによって孔壁が崩れた際、土砂が坑内に流入するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、例えば支障物などによって孔底部の掘削を中断しても、坑内の安全を確保できる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口と、該刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、既設の組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮機構部と、前記刃口の内側に配置されるとともに、前記ライナープレートの外寸よりも大きい内寸を有する筒状で、前記刃口に対して相対移動可能に前記伸縮機構部に固定された内側筒部とが設けられたことを特徴とする。
【0010】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口の内部において、掘削部が孔底部を掘削する掘削工程と、既設の組付済ライナープレートを反力として、伸縮機構部が前記刃口を下方に押し付けて前記刃口を下降させる伸長工程と、前記刃口が前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した状態において、最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを組み付ける組付工程とを繰返し行い、前記伸長工程において、前記刃口の内側に配置されるとともに、前記ライナープレートの外寸よりも大きい内寸を有する筒状で、前記刃口に対して相対移動可能に前記伸縮機構部に固定された内側筒部を、前記刃口の下降に伴って前記刃口の上端から上方に突出させることを特徴とする。
【0011】
上記外寸及び内寸とは、略円形の筒状の場合、外径及び内径のことをいい、略矩形の筒状の場合、水平方向で対向する外面間の距離及び内面間の距離のことをいう。
上記筒状とは、略円形の筒状、略矩形の筒状などのことをいう。
上記の刃口の下降とは、自重によって沈下することや、自重による沈下に加えて下向きの負荷を作用させて下向きに移動させることをいい、沈降ともいう。
【0012】
この発明によれば、刃口に対して相対移動可能に伸縮機構部に固定され、刃口の上端から上方に突出する内側筒部を備えたことにより、例えば支障物などによって孔底部の掘削を中断しても、坑内の安全を確保することができる。
【0013】
具体的には、内側筒部が刃口に対して相対移動可能に伸縮機構部に固定されるため、伸縮機構部の伸長による刃口の下降に伴って、内側筒部は、刃口の上端よりも上方に突出することができる。
【0014】
さらに、刃口の内側に配置された内側筒部の内寸がライナープレートの外寸よりも大きいため、内側筒部は、刃口の上端から突出した部分が、孔壁に対向することになる。
このため、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、組付済ライナープレートの外周面側に配置された仮設の土留めとして、内側筒部を機能させることができる。
【0015】
これにより、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、孔壁から崩れ落ちた土砂が、刃口の上端と組付済ライナープレートの下端との間から刃口の内部に流入することを内側筒部によって阻止できる。
よって、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、例えば支障物などによって孔底部の掘削を中断しても、土留めを別途設置することなく、坑内の安全を確保することができる。
【0016】
加えて、孔底部の掘削の中断後、坑内に土留めを別途設置することを不要にできるため、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、支障物の撤去を安全、かつ効率よく行うことができる。
【0017】
この発明の態様として、前記伸縮機構部が、高さ方向に伸縮する伸縮本体部と、該伸縮本体部の先端に設けられ、前記組付済ライナープレートの下端に当接する当接部とを備え、前記伸縮本体部が前記刃口に固定され、前記内側筒部が前記当接部に固定されてもよい。
この構成によれば、伸縮本体部と当接部とで構成された伸縮機構部に刃口及び内側筒部が固定されるため、刃口の下降と内側筒部の突出とを簡素な構成で実現することができる。
【0018】
さらに、組付済ライナープレートに当接する伸縮機構部の当接部に内側筒部が固定されるため、内側筒部を組付済ライナープレートに恰も固定されたような状態で、所望される位置に配置することができる。
これにより、立坑の構築装置は、刃口の下降に伴う孔壁の露出をより防止できるとともに、孔壁から崩れ落ちた土砂からの土圧に抗することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記内側筒部の外周面が、少なくとも前記刃口の内周面の上部に対向する構成であってもよい。
この構成によれば、伸縮機構部が伸長した状態において、刃口の上端と内側筒部の下端との間から孔壁が露出することを防止できる。
【0020】
これにより、立坑の構築装置は、孔壁から崩れ落ちた土砂が、刃口の上端を乗り越えて刃口の内部に流入することを阻止できるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記内側筒部の上端が、最下段よりも1つ上段の前記組付済ライナープレートの外面と孔壁との間に充填した裏込め材に当接または近接する構成であってもよい。
この構成によれば、内側筒部の上端と裏込め材の下端との間から孔壁が露出することを抑えられる。
【0022】
これにより、立坑の構築装置は、孔壁から崩れ落ちた土砂が、内側筒部の上端を乗り越えて刃口の内部に流入することを抑えられるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記内側筒部における高さ方向の長さが、1つの前記ライナープレートにおける高さ方向の長さよりも長い構成であってもよい。
この構成によれば、刃口が最下段のライナープレートの下端よりも下方に下降しても、内側筒部の下端と刃口の上端との間に隙間が生じることを防止できる。
【0024】
このため、立坑の構築装置は、刃口よりも上方で孔壁が露出することを、内側筒部によって確実に防止することができる。
これにより、立坑の構築装置は、孔壁から崩れ落ちた土砂が、刃口の上端を乗り越えて刃口の内部に流入することを阻止できるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記伸縮機構部が、前記刃口の周方向に所定間隔を隔てて複数設けられてもよい。
この構成によれば、刃口の内部において、内側筒部を安定した状態で支持できるとともに、刃口に対して内側筒部をバランスよく相対移動させることができる。
これにより、立坑の構築装置は、内側筒部を刃口よりも上方に安定して突出させることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記内側筒部の下方において、前記刃口に支持された作業床が備えられてもよい。
この構成によれば、刃口の外周面及び内側筒部の外周面が孔壁に対向し、孔底部の上方に作業床が位置することになる。
【0027】
このため、立坑の構築装置は、孔底部への土砂の落下を、刃口、内側筒部及び作業床によって防止することができる。これにより、立坑の構築装置は、作業員による支障物の安全な撤去を支援することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、既設の前記組付済ライナープレートの下端と孔壁との間とを遮断する遮断部材が脱着可能に設けられてもよい。
この構成によれば、組付済ライナープレートの外面と孔壁との間に裏込め材を充填するために、内側筒部を刃口の内部に収容した際、組付済ライナープレートと刃口との間に生じる開口を遮断部材によって閉塞することができる。
【0029】
このため、例えば裏込め材を充填する前に孔壁から崩れ落ちた土砂が、組付済ライナープレートと刃口との間の開口を通って刃口の内部に流入することを遮断部材によって阻止できる。
よって、立坑の構築装置は、孔底部の掘削を中断した場合だけでなく、裏込め材の充填前における坑内の安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、例えば支障物などによって孔底部の掘削を中断しても、坑内の安全を確保できる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1中のA-A矢視方向における機械式深礎工法の概略断面図。
【
図6】機械式深礎工法の工程を示すフローチャート。
【
図7】機械式深礎工法の工程を示すフローチャート。
【
図10】機械式深礎工法の概略断面図による説明図。
【
図11】機械式深礎工法の概略断面図による説明図。
【
図12】機械式深礎工法の概略断面図による説明図。
【
図13】機械式深礎工法の概略断面図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
掘削ユニット50を用いた機械式深礎工法の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、
図1は機械式深礎工法の概略断面斜視図を示し、
図2は機械式深礎工法の概略断面図を示し、
図3は掘削ユニット50の底面図を示し、
図4は裏込め箇所の拡大断面図による説明図を示し、
図5は制御ユニット60の概略構成図を示している。
【0033】
さらに、
図4(a)は最下段リング20Aに遮断部材58を取付けた状態の拡大断面図を示し、
図4(b)は最下段リング20Aと孔壁11aとの間に裏込め材30を充填した状態の拡大断面図を示している。
また、
図1中の上側を掘削ユニット50の上方とし、
図1中の下側を掘削ユニット50の下方とする。
【0034】
また、
図1中において、図示を明確にするため、ライナープレート20の手前側を透過状態で図示するとともに、裏込め材30の図示を省略している。さらに、
図1中において、掘削ユニット50の刃口51及び内側筒部57の手前側を透過状態で図示するとともに、作業床54を二点鎖線で図示している。
【0035】
まず、機械式深礎工法で構築される立坑は、
図1及び
図2に示すように、地盤10を掘削した掘削孔11の内部に、掘削孔11より一回り小さな外径を有するリング状のライナープレート20を下方へ向けて順次組付けるとともに、ライナープレート20と掘削孔11の孔壁11aとの間に裏込め材30を充填して構成している。
【0036】
ここで、ライナープレート20について、さらに詳述する。ライナープレート20は、
図1及び
図2に示すように、波付けされた薄鋼板の四辺に組立用のフランジを設けた円弧状のライナープレートセクション(符号省略)を、リング状に複数組み付けて構成されている。
【0037】
さらに、ライナープレート20は、掘削孔11の内部において、既設のライナープレート20における最下段の下側に、掘削孔11の掘削の進行に伴って順次組付けられることで、下方に向けて連結されている。
【0038】
この際、既設のライナープレート20うち、最下段のライナープレート20と新たに組み付けるライナープレート20とは、ライナープレートセクション同士の周方向の連結位置が上下方向に一致しないように、周方向にずらして組み付けている。
【0039】
なお、ライナープレート20には、裏込め材30を充填する充填口201が、波付けされた薄鋼板を貫通するように設けられている(
図4参照)。
加えて、ライナープレートセクションにおける周方向中央には、後述するジャッキ56の反力に抗するための補強リブ(図示省略する)を縦方向に設けている。
【0040】
このようにして下方へ向けて順次組付けられた既設のライナープレート20のうち、本実施形態では、地表面10aから上方に僅かに突出する最上段のライナープレート20を第1リング21とし、第1リング21の下方に組付けられた2段目のライナープレート20を第2リング22とし、3段目のライナープレート20を第3リング23とし、n段目のライナープレート20を第nリング2nとし、最下段のライナープレート20を最下段リング20Aとして説明する(
図1及び
図2参照)。
【0041】
このような立坑を構築する立坑構築装置は、地盤10を掘削する掘削ユニット50(
図1参照)と、掘削ユニット50の動作を制御する制御ユニット60(
図5参照)とで構成されている。
【0042】
立坑構築装置の掘削ユニット50は、
図1及び
図2に示すように、上下方向に延びる筒状の刃口51と、刃口51の内部に配置された支持フレーム52と、支持フレーム52の下側に配置された掘削部53と、支持フレーム52の上側に配置された作業床54とを備えている。
【0043】
さらに、掘削ユニット50は、
図1及び
図2に示すように、作業床54を上下方向に跨ぐように配置された排土ユニット55及び4つのジャッキ56と、作業床54の上方に配置された内側筒部57とを備えている。
なお、掘削ユニット50は、裏込め材30を充填するための部材として、後述する遮断部材58(
図4参照)を有している。
【0044】
より詳しくは、掘削ユニット50の刃口51は、
図1及び
図2に示すように、所定の厚みを有する鋼製の円筒体であり、リング状のライナープレート20よりも一回り大きい外径で形成されている。なお、刃口51は、ライナープレート20の5リング分ぐらいの高さで形成されている。
【0045】
この刃口51は、後述する遮断部材58を既設のライナープレート20に取付けた状態(
図10(a)参照)、または後述するジャッキ56が伸長した状態(
図13参照)において、既設のライナープレート20における最下段リング20Aの下端よりも下方に上端が位置するようにジャッキ56に連結されている。
【0046】
また、掘削ユニット50の支持フレーム52は、
図1及び
図2に示すように、刃口51の上端からライナープレート20の1リングの高さ分下側の位置よりも少し下方において、刃口51の刃口内面51aに取付けられている。
【0047】
この支持フレーム52は、
図3に示すように、刃口51の底面視中央に配置される中央支持部521と、中央支持部521から刃口内面51aへ向けた三方向に延びる3本の梁状支持部522とで構成されている。
【0048】
具体的には、中央支持部521は、底面視略円形状であって、刃口51に対して1/3程度の直径に形成されている。この中央支持部521の下面には、掘削部53が回転自在に連結されている。
一方、梁状支持部522は、中央支持部521における周方向に等間隔を隔てた位置から刃口51へ向けて延びる柱状体で、その端部が刃口内面51aに取付けられている。
【0049】
また、掘削ユニット50の掘削部53は、
図2及び
図3に示すように、支持フレーム52の中央支持部521の下面に回転自在に吊下げ支持されている。この掘削部53は、支持フレーム52に吊下げ支持された状態で、刃口51の内部における孔底部12を掘削可能に構成されている。
【0050】
具体的には、掘削部53は、
図2に示すように、中央支持部521の下方に回転自在に吊下げ支持される掘削部本体531と、掘削部本体531に対して枢動可能な第1アーム532と、第1アーム532に対して枢動可能な第2アーム533と、第2アーム533の先端に枢動可能に設けられた掘削バケツ534とを備えている。
【0051】
この掘削部53は、後述する制御ユニット60からの制御信号に基づいて、掘削部本体531が中央支持部521に対して回転するとともに、第1アーム532、第2アーム533及び掘削バケツ534がそれぞれ枢動することで、刃口51の内部における孔底部12の全体を掘削する。
【0052】
また、掘削ユニット50の作業床54は、
図2に示すように、刃口51の内部で作業員Mがライナープレート20の組付けなどを行うための床面である。この作業床54は、
図1及び
図2に示すように、支持フレーム52の上面に配置された平面視略円形の板材で構成されている。
【0053】
さらに、作業床54には、
図1及び
図3に示すように、後述する排土ユニット55の排土バケツ552が通過する通過孔54aが、外周縁を切り欠いて開口形成されている。
具体的には、通過孔54aは、刃口51の周方向で隣り合う支持フレーム52の梁状支持部522の間に位置する作業床54の部分を、外周縁から径方向中心に向けて切り欠いて開口形成している。
【0054】
また、掘削ユニット50の排土ユニット55は、掘削部53で孔底部12を掘削した掘削土を、作業床54の通過孔54aを介して、孔底部12から外部に搬出するユニットである。
この排土ユニット55は、
図2に示すように、刃口51の下部から上方に向かって第1リング21の上方までの延びる排土レール551と、排土レール551に沿って昇降する排土バケツ552とで構成されている。
【0055】
具体的には、排土レール551は、作業床54の通過孔54aを貫通するように配置され、水平方向で近接する刃口51の刃口内面51a及びライナープレート20に固定されている。さらに、排土レール551は、孔底部12の掘削の進行に伴って延長可能に構成されている。
【0056】
一方、排土バケツ552は、孔底部12を掘削した掘削土が積み込まれる部分であって、排土レール551に対して相対移動可能に連結されている。この排土バケツ552は、地上に設けた吊上げウインチ(図示省略)によって昇降する。
【0057】
また、掘削ユニット50の4つのジャッキ56は、既設のライナープレート20を反力として、刃口51を下方に押し付ける伸縮機構部であって、例えば上下方向に伸縮可能な油圧ジャッキなどで構成されている。
【0058】
この4つのジャッキ56は、
図3に示すように、刃口51の周方向で隣り合う支持フレーム52の梁状支持部522の間に位置するように、刃口51の周方向に等間隔を隔てて配置されている。
このようなジャッキ56は、後述する制御ユニット60からの制御信号に基づいて動作する油圧ポンプ59(
図5参照)に接続され、油圧ポンプ59の作動圧によって伸縮する本体部561と、本体部561の先端に設けられたスプレッダ562とを備えている。
【0059】
具体的には、ジャッキ56の本体部561は、
図2に示すように、作業床54よりも上方の位置で刃口51の刃口内面51aに取付けられたシリンダ561aと、シリンダ561aの上方へ出没可能なピストンロッド561bとで構成されている。
一方、ジャッキ56のスプレッダ562は、
図3に示すように、最下段リング20Aに当接可能な底面視略円弧状に形成され、周方向の略中央がピストンロッド561bの先端に連結されている。
【0060】
また、掘削ユニット50の内側筒部57は、
図1及び
図2に示すように、刃口51と同じ素材の鋼製で刃口51と同じ厚みを有する円筒体であり、刃口51の内部における作業床54の上方に収容されるように配置されている。この内側筒部57は、シリンダ561aに固定された刃口51の移動方向とは逆方向へ向けて相対移動可能にジャッキ56に固定されている。
【0061】
具体的には、内側筒部57は、
図2に示すように、刃口51の内径よりも僅かに大きい外径と、既設のライナープレート20の外径よりも僅かに大きい内径とを有して上下方向に延びる円筒状に形成されている。
【0062】
なお、内側筒部57は、ライナープレート20の1リング分の高さよりも長く、かつ最も下方に相対移動した状態における刃口51の上端近傍の内周面に、下端近傍の外周面が重合可能な上下方向の長さで形成されている。
【0063】
この内側筒部57の内周面は、周方向に沿って配置した4つのジャッキ56にそれぞれ固定されている。
より詳しくは、内側筒部57は、上端からライナープレート20の1リング分だけ下方の位置における内周面が、ジャッキ56のスプレッダ562に固定されている(
図11参照)。
なお、スプレッダ562は、上端からライナープレート20の1リング分だけ下方の位置に、その上面を一致させた状態で内側筒部57の内周面に固定されている。
【0064】
このため、最下段リング20Aの下端にスプレッダ562が当接した状態において、内側筒部57の上端が、最下段リング20Aよりも1つ上段のライナープレート20と孔壁11aとの間に充填された裏込め材30の下端に当接または近接する。
【0065】
また、上述の遮断部材58は、
図4に示すように、最下段リング20Aの下端と掘削孔11の孔壁11aとの間に生じた開口を閉塞する部材であって、最下段リング20Aの下側のフランジに着脱自在に構成されている。
なお、遮断部材58は、最下段リング20Aの下側のフランジに対して、周方向に所定間隔を隔てて配置したクランプCで固定されている。
【0066】
具体的には、遮断部材58は、ライナープレート20の外径よりも大きい外径を有する円環状の平板である間詰リング581と、間詰リング581の外周縁に装着され、孔壁11aに当接する円環状の間詰先端部582とを備えている。
【0067】
また、立坑構築装置の制御ユニット60は、
図5に示すように、カメラ61、センサ62、表示部63、操作部64、記憶部65、及びこれらの動作を制御する制御部66などで構成され、刃口51の内部における孔底部12の掘削状況を検知する機能を有している。
【0068】
さらに、制御ユニット60は、
図5に示すように、掘削部53及び油圧ポンプ59に接続され、作業員Mの操作を受け付けて掘削部53及び油圧ポンプ59の動作を制御する機能を有している。
【0069】
なお、制御ユニット60は、表示部63及び操作部64が、施工現場近くの地上、または施工現場から離れた管理事務所等に配置され、地上の作業員Mが掘削部53及びジャッキ56を遠隔操作可能に構成されている。
【0070】
具体的には、カメラ61は、CCDカメラ等で構成され、撮像箇所を撮像する機能と、撮像した動画データを制御部66に送信する機能とを有している。このカメラ61は、刃口51の内部における孔底部12を撮像するように配置されている。なお、カメラ61は複数台配置してもよく、さらに後述する操作部64によって撮像方向が制御されてもよい。
【0071】
また、センサ62は、刃口51の内部における孔底部12の掘削状況を非接触で検出するよう構成されている。
また、表示部63は、液晶ディスプレイなどで構成され、制御部66からの信号に基づいて、刃口51の内部における孔底部12の掘削状況、及びカメラ61で撮像した動画データなどを表示する機能を有している。
【0072】
また、操作部64は、スイッチ、表示部63に一体的に設けたタッチパネル、及び掘削部53を操作する操作レバーなどで構成され、作業員Mによる各種操作を受け付けて、制御部66に出力する機能を有している。
【0073】
また、記憶部65は、HDDやSSDなど構成され、各種情報を記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この記憶部65には、カメラ61及びセンサ62から取得した各種情報や、各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。
【0074】
また、制御部66は、例えばCPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。この制御部66は、有線または無線で接続された各部との各種信号の授受に係る処理機能と、有線または無線で接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0075】
例えば制御部66は、カメラ61及びセンサ62との各種信号の授受に係る処理機能と、孔底部12の掘削状況の演算に係る各種処理機能と、掘削部53及び油圧ポンプ59との各種情報の授受に係る処理機能と、掘削部53及び油圧ポンプ59の動作を制御する機能とを有している。
【0076】
次に、上述した構成の掘削ユニット50を用いて、地盤10の内部に所定の立坑を構築する機械式深礎工法について、
図6から
図13を用いて説明する。
なお、
図6及び
図7は機械式深礎工法における工程のフローチャートを示し、
図8から
図13は機械式深礎工法の概略断面図による説明図を示している。
また、
図8から
図13は図示を明確にするため
図3中のB-B矢視断面で図示している。
【0077】
より詳しくは、
図8(a)は口元管70を設置した状態の断面図を示し、
図8(b)は掘削ユニット50及び反力枠80を設置した状態の断面図を示し、
図8(c)は反力枠80を反力として刃口51を沈降させた状態の断面図を示し、
図8(d)は1リング分掘削した状態の断面図を示している。
【0078】
また、
図9(a)第1リング21を設置した状態の断面図を示し、
図9(b)は第1リング21を反力として刃口51を1リング分沈降させた状態の断面図を示している。
また、
図10(a)は裏込め工を行う状態の断面図を示し、
図10(b)は裏込め工の完了後に第2リング22を組付けた状態の断面図を示している。
【0079】
また、
図11(a)はジャッキ56を第2リング22に当接させた状態の断面図を示し、
図11(b)は
図11(a)における要部の拡大断面図を示している。
また、
図12(a)は第2リング22を反力として刃口51が下降する状態の断面図を示し、
図12(b)は
図12(a)における要部の拡大断面図を示している。
また、
図13(a)は刃口51を1リング分沈降させた状態の断面図を示し、
図13(b)は
図13(a)における要部の拡大断面図を示している。
【0080】
まず、地盤10の内部に立坑を形成するために、作業員Mは、
図6に示すように、所望される施工場所に口元管70を設置する(ステップS101)。
具体的には、作業員Mは、
図8(a)に示すように、施工場所の地表面10aを掘り下げた箇所に、刃口51より一回り大径であるライナープレート71を設置したのち、ライナープレート71の径外側に固定コンクリート72を打設して口元管70を設置する。
なお、口元管70の内面は、掘削孔11の孔壁11aをなすように構成されている。
【0081】
その後、作業員Mは、
図6に示すように、口元管70の内部に掘削ユニット50を設置するとともに、口元管70の固定コンクリート72に反力枠80を固定する(ステップS102)。
【0082】
なお、反力枠80は、
図8(b)に示すように、下端が固定コンクリート72に固定される柱部81と、柱部81の上端に橋架された梁部82と、梁部82から下方へ垂設され、ジャッキ56の反力を受けるジャッキ受け部83とで櫓形状に構成されている。この反力枠80は、刃口51の下降に伴って、柱部81の長さを変更可能に構成されている。
【0083】
具体的には、作業員Mは、
図8(b)に示すように、口元管70の内周面と刃口51の外周面とが対向するように、重機などを用いて掘削ユニット50を口元管70の内部に配置する。この際、作業員Mは、掘削ユニット50のジャッキ56を最も縮んだ状態にする。
その後、作業員Mは、ジャッキ受け部83がジャッキ56の上方に位置するように、反力枠80を口元管70に組付けて固定する。
【0084】
掘削ユニット50及び反力枠80を設置すると、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作して、刃口51の内部における孔底部12の掘削と、刃口51の沈降とを開始する(ステップS103)。
【0085】
具体的には、制御ユニット60の制御部66からの制御信号に基づいて、掘削ユニット50の掘削部53が、
図8(b)に示すように、刃口51の内部における孔底部12を掘削する。この際、孔底部12を掘削した掘削土は、掘削のたびに排土ユニット55の排土バケツ552に積み込まれる。
【0086】
さらに、制御ユニット60の制御部66からの制御信号に基づいて、油圧ポンプ59がジャッキ56を伸長させて、ジャッキ56のスプレッダ562を反力枠80のジャッキ受け部83に当接させる。そして、反力枠80に当接したジャッキ56がさらに伸長することで、反力枠80を反力として刃口51を下方へ押し付けて下降させる。
【0087】
その後、排土バケツ552が掘削土でいっぱいになるまで(ステップS104:No)、孔底部12の掘削を進め、排土バケツ552が掘削土でいっぱいになった場合(ステップS104:Yes)、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作して、孔底部12の掘削を中断するとともに、排土バケツ552の掘削土を孔外に搬出する(ステップS105)。
【0088】
具体的には、制御部66からの制御信号に基づいて、掘削部53が、第1アーム532に対して第2アーム533を近接方向に枢動させるとともに、掘削バケツ534を第2アーム533に近接する方向に枢動させてコンパクト化し、掘削部本体531を中央支持部521に対して回転させて、通過孔54aの下方位置から待避させる。
【0089】
さらに、排土バケツ552を、地上にセットした吊上げウインチ(図示省略)で巻き上げて、排土レール551に沿って上方に移動させる。この際、排土バケツ552は、作業床54の通過孔54aを通って、内側筒部57よりも上方に移動して、孔外に掘削土を搬出する。
【0090】
そして、空になった排土バケツ552を、吊上げウインチで排土レール551に沿って下方に移動させる。この際、排土レール551に沿って降下する排土バケツ552は、通過孔54aを通って、孔底部12まで降下する。
排土ユニット55による排土が完了すると、掘削部53を通常の掘削位置、及び掘削姿勢に復帰させ、孔底部12の掘削を再開する。
【0091】
このようにして、地表面10aから掘削ユニット50の作業床54までの深さがライナープレート20の1リング分の高さより深くなるまで(ステップS106:No)、掘削土を搬出しながら、孔底部12を掘削する。
なお、刃口51の下降途中でジャッキ56が伸びきった場合、作業員Mは、
図8(c)に示すように、ジャッキ56を縮めるとともに、反力枠80の高さを下げたのち、孔底部12の掘削を再開する。
【0092】
そして、
図8(d)に示すように、地表面10aから掘削ユニット50の作業床54までの深さがライナープレート20の1リング分の高さより深くなるまで孔底部12を掘削すると(ステップS106:Yes)、作業員Mは、第1リング21の組付けを行う(ステップS107)。
具体的には、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作して、掘削部53の動作を停止させるとともに、ジャッキ56をライナープレート20の1リング分の高さだけ縮める。
【0093】
その後、作業員Mは、
図9(a)に示すように、反力枠80とジャッキ56との間にライナープレートセクションを配置するとともに、ライナープレートセクションを環状に組付けて最上段のライナープレート20である第1リング21を構成する。
なお、ここでは、第1リング21以外の既設のライナープレート20が存在しないため、第1リング21が最下段リング20Aとなる。
【0094】
第1リング21を構成すると、作業員Mは、
図7に示すように、制御ユニット60の操作部64を操作して、孔底部12の掘削と、刃口51の沈降とを再開させる(ステップS108)。この際、掘削ユニット50のジャッキ56は、
図9(b)に示すように、第1リング21を反力として刃口51を下方へ押し付けることで、刃口51を下降させる。
【0095】
その後、
図6のステップS104及びステップS105と同様に、排土バケツ552が掘削土でいっぱいになるまで(ステップS109:No)、孔底部12の掘削を進め、排土バケツ552が掘削土でいっぱいになった場合(ステップS109:Yes)、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作して、孔底部12の掘削を中断するとともに、排土バケツ552の掘削土を孔外に排出させる(ステップS110)。
【0096】
そして、刃口51がライナープレート20の1リング分の高さ相当分沈降するだけの掘削ができるまで(ステップS111:No)、掘削土を搬出しながら、孔底部12を掘削する。
【0097】
そして、
図9(b)に示すように、刃口51がライナープレート20の1リング分の高さ相当分沈降するだけの掘削ができると(ステップS111:Yes)、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作して、孔底部12の掘削及び刃口51の下降を停止する。
【0098】
この際、刃口51は、
図4(a)に示すように、その上端が第1リング21の下端よりも下方に位置するとともに、遮断部材58を取付け可能な隙間が得られる位置まで下降している。
【0099】
その後、作業員Mは、最下段リング20Aと掘削孔11の孔壁11aとの間に裏込め材30を充填する裏込め工を行う(ステップS112)。この裏込め工では、まず、作業員Mが、
図4(a)及び
図10(a)に示すように、最下段リング20Aの下側のフランジに対して、遮断部材58をクランプCで取付ける(ステップS113)。
【0100】
具体的には、作業員Mは、
図4(a)及び
図10(a)に示すように、操作部64を操作して、最下段リング20Aからスプレッダ562を離間させるとともに、内側筒部57の上端が刃口51の上端よりも下方に位置するように、内側筒部57を刃口51の内部に収容させる。
【0101】
その後、作業員Mは、最下段リング20Aの下側のフランジに遮断部材58をクランプCで装着して、最下段リング20Aの下端と掘削孔11の孔壁11aとの間を閉塞する。
遮断部材58を装着すると、作業員Mは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、最下段リング20Aと孔壁11aとの間の空間に、充填口201から裏込め材30を充填する(ステップS114)。
【0102】
そして、最下段リング20Aと孔壁11aとの間の空間に充填した裏込め材30が硬化すると、作業員Mは、最下段リング20Aの下側のフランジに取り付けた遮断部材58を取り外して(ステップS115)、裏込め工(ステップS112)を完了する。
【0103】
裏込め工(ステップS112)が完了すると、作業員Mは、
図10(b)に示すように、最下段リング20Aの下方にライナープレートセクションを環状に配置して、新たなライナープレート20である第2リング22を構成する(ステップS116)。この第2リング22が既設のライナープレート20における最下段リング20Aとなる。
【0104】
その後、所望される立坑が構築できる所定深さまで掘削完了していない場合(ステップS117:No)、作業員Mは、制御ユニット60の操作部64を操作し、掘削孔11が所定深さに到達するまで、上述したステップS108からステップS116の工程を繰り返す。
【0105】
この際、刃口51が下降するのに対して、スプレッダ562に固定された内側筒部57は相対移動しない。このため、内側筒部57は、刃口51の上端から突出して、下方へ下降する刃口51の上端から掘削孔11の孔壁11aが露出することを防止する。
【0106】
具体的には、ステップS108において、ジャッキ56のスプレッダ562が最下段リング20Aの下端に当接すると(
図11(a)参照)、スプレッダ562に固定された内側筒部57は、
図11(b)に示すように、刃口51の上端から上方に突出して、孔壁11aに対向するとともに、最下段リング20Aよりも1つ上段のライナープレート20と孔壁11aとの間に充填した裏込め材30の下面に上端が当接する。
【0107】
これにより、内側筒部57は、刃口51の上端と裏込め材30との隙間を閉塞する。
この際、内側筒部57における刃口51の上端よりも下方の部分は、刃口51と重なり合った状態となる。
【0108】
最下段リング20Aに当接したジャッキ56が、最下段リング20Aを反力としてさらに伸長すると(
図12(a)参照)、スプレッダ562に固定された内側筒部57が移動せず、ジャッキ56のシリンダ561aに固定された刃口51が、内側筒部57に一部が重なり合ったまま下方へ移動する。このため、内側筒部57は、
図12(b)に示すように、刃口51の上端からさらに上方に突出する。
【0109】
そして、ステップS111において、刃口51がライナープレート20の1リング分の高さ相当分沈降すると(
図13(a)参照)、内側筒部57の外周面における下部が、
図13(b)に示すように、刃口51における内周面の上部に重なり合った状態となる。
【0110】
これにより、内側筒部57は、最下段リング20Aの組付け後、刃口51の沈降開始からライナープレート20の1リング分の高さ相当分沈降するまでの間、掘削孔11の内部に孔壁11aが露出することを防止している。
【0111】
このように、上述したステップS108からステップS116を繰返して、所望される立坑が構築できる所定深さまで掘削完了した場合(ステップS117:Yes)、作業員Mは、孔底部12の掘削を停止する。
その後、作業員Mは、刃口51設けた支持フレーム52、掘削部53、作業床54、ジャッキ56及び排土ユニット55の撤去や、孔底部12やライナープレート20の内面への吹きつけなど、立坑に求められる仕様に応じた後処理工(ステップS118)を行い、本施工を完了する。
【0112】
以上のように、本実施形態の立坑の構築装置は、環状のライナープレート20を高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する装置である。
この立坑の構築装置は、ライナープレート20の外径より大きい内径を有して下方に延びる筒状の刃口51と、刃口51の内部における孔底部12を掘削する掘削部53とが設けられている。
【0113】
さらに、立坑の構築装置は、既設のライナープレート20を反力として、刃口51を下方に押し付けるジャッキ56と、刃口51の内側に配置されるとともに、ライナープレート20の外径よりも大きい内径を有する筒状で、刃口51に対して相対移動可能にジャッキ56に固定された内側筒部57とが設けられている。
【0114】
また、本実施形態の立坑の構築方法は、環状のライナープレート20を高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する構築方法である。
この立坑の構築方法は、ライナープレート20の外径より大きい内径を有して下方に延びる筒状の刃口51の内部において、掘削部53が孔底部12を掘削する掘削工程(ステップS108)と、既設のライナープレート20を反力として、ジャッキ56が刃口51を下方に押し付けて刃口51を下降させる伸長工程(ステップS108)と、刃口51がライナープレート20の少なくとも一段分下降した状態において、最下段リング20Aの下端にライナープレート20を組み付ける組付工程(ステップS116)とを繰返し行う。
【0115】
そして、立坑の構築方法は、伸長工程において、刃口51の内側に配置されるとともに、ライナープレート20の外径よりも大きい内径を有する筒状で、刃口51に対して相対移動可能にジャッキ56に固定された内側筒部57を、刃口51の下降に伴って刃口51の上端から上方に突出させている。
【0116】
この構成によれば、刃口51に対して相対移動可能にジャッキ56に固定され、刃口51の上端から上方に突出する内側筒部57を備えたことにより、例えば支障物などによって孔底部12の掘削を中断しても、坑内の安全を確保することができる。
【0117】
具体的には、内側筒部57が刃口51に対して相対移動可能にジャッキ56に固定されるため、ジャッキ56の伸長による刃口51の下降に伴って、内側筒部57は、刃口51の上端よりも上方に突出することができる。
【0118】
さらに、刃口51の内側に配置された内側筒部57の内径がライナープレート20の外径よりも大きいため、内側筒部57は、刃口51の上端から突出した部分が、孔壁11aに対向することになる。
このため、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、既設のライナープレート20の外周面側に配置された仮設の土留めとして、内側筒部57を機能させることができる。
【0119】
これにより、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、孔壁11aから崩れ落ちた土砂が、刃口51の上端と既設のライナープレート20の下端との間から刃口51の内部に流入することを内側筒部57によって阻止できる。
よって、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、例えば支障物などによって孔底部12の掘削を中断しても、土留めを別途設置することなく、坑内の安全を確保することができる。
【0120】
加えて、孔底部12の掘削の中断後、坑内に土留めを別途設置することを不要にできるため、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、支障物の撤去を安全、かつ効率よく行うことができる。
【0121】
また、ジャッキ56が、高さ方向に伸縮する本体部561と、本体部561の先端に設けられ、既設のライナープレート20の下端に当接するスプレッダ562とを備えている。
そして、シリンダ561aが刃口51に固定され、内側筒部57がスプレッダ562に固定されているため、立坑の構築装置は、刃口51の下降と内側筒部57の突出とを簡素な構成で実現することができる。
【0122】
さらに、既設のライナープレート20に当接するジャッキ56のスプレッダ562に内側筒部57が固定されるため、内側筒部57を既設のライナープレート20に恰も固定されたような状態で、所望される位置に配置することができる。
これにより、立坑の構築装置は、刃口51の下降に伴う孔壁11aの露出をより防止できるとともに、孔壁11aから崩れ落ちた土砂からの土圧に抗することができる。
【0123】
また、内側筒部57の外周面が、少なくとも刃口51の内周面の上部に対向するため、立坑の構築装置は、ジャッキ56が伸長した状態において、刃口51の上端と内側筒部57の下端との間から孔壁11aが露出することを防止できる。
【0124】
これにより、立坑の構築装置は、孔壁11aから崩れ落ちた土砂が、刃口51の上端を乗り越えて刃口51の内部に流入することを阻止できるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0125】
また、内側筒部57の上端が最下段リング20Aよりも1つ上段のライナープレート20の外面と孔壁11aとの間に充填した裏込め材30に当接または近接するため、立坑の構築装置は、内側筒部57の上端と裏込め材30の下端との間から孔壁11aが露出することを抑えられる。
【0126】
これにより、立坑の構築装置は、孔壁11aから崩れ落ちた土砂が、内側筒部57の上端を乗り越えて刃口51の内部に流入することを抑えられるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0127】
また、内側筒部57における上下方向の長さが、1つのライナープレート20における上下方向の長さよりも長いため、立坑の構築装置は、刃口51が最下段リング20Aの下端よりも下方に下降しても、内側筒部57の下端と刃口51の上端との間に隙間が生じることを防止できる。
【0128】
このため、立坑の構築装置は、刃口51よりも上方で孔壁11aが露出することを、内側筒部57によって確実に防止することができる。
これにより、立坑の構築装置は、孔壁11aから崩れ落ちた土砂が、刃口51の上端を乗り越えて刃口51の内部に流入することを阻止できるため、坑内の安全性をより向上することができる。
【0129】
また、ジャッキ56が刃口51の周方向に所定間隔を隔てて複数設けられているため、立坑の構築装置は、刃口51の内部において、内側筒部57を安定した状態で支持できるとともに、刃口51に対して内側筒部57をバランスよく相対移動させることができる。
これにより、立坑の構築装置は、内側筒部57を刃口51よりも上方に安定して突出させることができる。
【0130】
また、内側筒部57の下方において、刃口51に支持された作業床54が備えられているため、刃口51の外周面及び内側筒部57の外周面が孔壁11aに対向し、孔底部12の上方に作業床54が位置することになる。
【0131】
このため、立坑の構築装置は、孔底部12への土砂の落下を、刃口51、内側筒部57及び作業床54によって防止することができる。これにより、立坑の構築装置は、作業員Mによる支障物の安全な撤去を支援することができる。
【0132】
また、既設のライナープレート20の下端と孔壁11aとの間とを遮断する遮断部材58が脱着可能に設けられたことにより、立坑の構築装置は、既設のライナープレート20の外面と孔壁11aとの間に裏込め材30を充填するために、内側筒部57を刃口51の内部に収容した際、既設のライナープレート20と刃口51との間に生じる開口を遮断部材58によって閉塞することができる。
【0133】
このため、例えば裏込め材30を充填する前に孔壁11aから崩れ落ちた土砂が、既設のライナープレート20と刃口51との間の開口を通って刃口51の内部に流入することを遮断部材58によって阻止できる。
よって、立坑の構築装置は、孔底部12の掘削を中断した場合だけでなく、裏込め材30の充填前における坑内の安全を確保することができる。
【0134】
また、刃口51と内側筒部57とが同じ素材かつ同じ厚みのため、刃口51及び内側筒部57は、孔壁11aが崩れた際、崩れ落ちた土砂からの土圧に確実に抗することができる。これにより、立坑の構築装置は、崩れ落ちた土砂の坑内への流入を阻止して、坑内の安全をより確実に確保することができる。
【0135】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の立坑の構築装置は、実施形態の掘削ユニット50及び制御ユニット60に対応し、
以下同様に、
組付済ライナープレートは、既設のライナープレート20や最下段リング20Aに対応し、
伸縮機構部は、ジャッキ56に対応し、
伸縮本体部は、本体部561に対応し、
当接部は、スプレッダ562に対応し、
掘削工程及び伸長工程は、ステップS108に対応し、
組付工程は、ステップS116に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0136】
例えば、上述した実施形態において、ライナープレート20、刃口51及び内側筒部57を円筒状としたが、これに限定せず、略矩形の筒状などであってもよい。
また、口元管70の内部にライナープレート20を配置したが、これに限定せず、地表面10aよりも上方に露出して配置されるライナープレート20を第1リング21の上側に組付けてもよい。
【0137】
また、刃口51と内側筒部57とを同じ素材の鋼製としたが、これに限定せず、崩れ落ちた土砂からの土圧に抗することができる構成であれば、適宜の素材であってもよい。例えば、内側筒部57と刃口51とを異なる素材で構成してもよい。
また、刃口51と内側筒部57とを同じ厚みとしたが、これに限定せず、崩れ落ちた土砂からの土圧に抗することができる構成であれば、適宜の厚みであってもよい。例えば内側筒部57の厚みを刃口51の厚みよりも薄肉または厚肉に形成してもよい。
【0138】
また支持フレーム52の梁状支持部522を、中央支持部521から刃口内面51aへ向かう三方向に配置したが、これに限定せず、梁状支持部522は中央支持部521を囲む井桁状や格子状に配置されてもよい。
【0139】
また、表示部63及び操作部64を地上に配置し、掘削部53を遠隔操作可能に構成したが、作業床54上で作業する作業員Mによって操作できるように表示部63及び操作部64を作業床54に配置してもよい。
【0140】
また、刃口51と内側筒部57とを相対移動させるジャッキ56を油圧ジャッキで構成したが、これに限定せず、刃口51と内側筒部57とを相対移動可能であれば、適宜の構成の伸縮機構部であってもよい。
【0141】
また、第1リング21と孔壁11aとの間に裏込め材30を充填後、第2リング22を組付けたが、これに限定せず、第2リング22を組付け後、第2リング22と孔壁11aとの間に裏込め材30を充填するのに合わせて、第1リング21と孔壁11aとの間に裏込め材30を充填してもよい。
【0142】
また、孔底部12を掘削しながら刃口51を下降させたが、これに限定せず、孔底部12を掘削後、刃口51を下降させてもよい。
また、操作部64を用いて作業員Mが掘削部53を遠隔操作して孔底部12を掘削したが、これに限定せず、制御部66による制御によって孔底部12を自動掘削してもよい。
【0143】
具体的には、センサ62が検知した孔底部12の掘削状況を示す信号と、カメラ61が孔底部12を撮像した動画像データとに基づいて、制御部66が、孔底部12の掘削状況を自動判定する。そして、制御部66は、判定結果に基づいて、掘削部53の動作を自動制御して、刃口51の内部における孔底部12を掘削部53に行う。
【0144】
さらに、排土バケツ552への掘削土の積み込み状況を検知する排土センサと、排土バケツ552の上下方向の位置を検知する位置センサとを制御部66に接続して設けてもよい。この場合、制御部66は、排土バケツ552への掘削土の積み込み状況、及び排土バケツ552の位置情報に基づいて、吊上げウインチの動作と、掘削部53の動作とを自動制御する。
【0145】
加えて、センサ62で孔底部12の掘削状況を検出するだけでなく、複数台のカメラ61で孔底部12を撮像し、撮像した動画像データに基づいて孔底部12の掘削状況を自動検出して掘削部53の駆動を制御するように構成してもよい。
【0146】
このように掘削部53を制御する制御部66と、掘削部53で掘削する孔底部12の掘削箇所の状況を検出するセンサ62とが設けられ、制御部66が、センサ62の検出結果に基づいて掘削部53の掘削を制御することで、自動運転制御した掘削部53で掘削箇所を掘削することができる。そのため、作業員Mの孔内作業を減らして作業環境を向上するとともに、高効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0147】
12…孔底部
20…ライナープレート
20A…最下段リング
30…裏込め材
50…掘削ユニット
51…刃口
53…掘削部
54…作業床
56…ジャッキ
57…内側筒部
58…遮断部材
60…制御ユニット
561…本体部
562…スプレッダ