(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166152
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】熱ラジエータシャッタならびに熱ラジエータシャッタを使用して熱制御を行うためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/50 20060101AFI20241121BHJP
B64G 1/58 20060101ALI20241121BHJP
B64G 1/16 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
B64G1/50 C
B64G1/50 300
B64G1/58
B64G1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079413
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】63/502,539
(32)【優先日】2023-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524183223
【氏名又は名称】マクドナルド・デトワイラー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファイザン・レマトゥラ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノス・デルメナキス
(57)【要約】
【課題】極端な温度を有する環境での、熱制御のための改善されたシステムを提供する。
【解決手段】熱ラジエータシャッタは、第1のベースプレートと、開位置と閉位置との間で移動可能な第2のベースプレートと、第2のベースプレートを移動させるためのアクチュエータとを含む。第2のベースプレートが閉位置にあるときに、第2のベースプレート上のラジエータは、第1のベースプレート上のラジエータに面し、ベースプレート間の放射結合および熱流を提供する。第2のベースプレートが開位置にあるときに、それぞれのラジエータは、閉位置にあるときよりも周囲環境に対して、より大きいビューファクタ、および閉位置にあるときに比べて互いに対して低減されたビューファクタを有する。それぞれのラジエータは、第2のベースプレートが開位置にあるときに第1および第2のベースプレート上の温度制御コンポーネントから熱を廃棄する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムのアクティブ熱制御のための熱ラジエータシャッタであって、前記熱ラジエータシャッタは、
第1のベースプレートであって、前記第1のベースプレートの底部側に装着される第1の温度制御コンポーネントと、前記第1のベースプレートの頂部側に配設された第1のラジエータとを有する第1のベースプレートと、
第2のベースプレートであって、前記第2のベースプレートの第1の側に装着された第2の温度制御コンポーネントと、前記第1の側に対向する、前記第2のベースプレートの第2の側に配設された第2のラジエータとを有し、閉位置と開位置との間で移動可能である第2のベースプレートと、
前記第2のベースプレートを前記閉位置から前記開位置へ、および前記開位置から前記閉位置へ移動させるために前記第2のベースプレートに接続されているアクチュエータと
を備え、
前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに、前記第2のラジエータは、前記第1のラジエータに面して放射結合を提供し、前記第1のベースプレートと前記第2のベースプレートとの間に熱が流れる熱ループを形成し、
前記第2のベースプレートが前記開位置にあるときに、前記第1および前記第2のベースプレートは、(i)前記第1および前記第2のラジエータが、それぞれ前記第1および前記第2の温度制御コンポーネントから熱を廃棄するために前記閉位置にあるときよりも周囲環境に対して、より大きなビューファクタを有し、(ii)前記第1および前記第2のラジエータが、前記閉位置と比較して互いに対して低減されたビューファクタを有するように分離される、熱ラジエータシャッタ。
【請求項2】
前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに、前記第1および前記第2のラジエータの各々は、前記周囲環境に対して0%のビューファクタを有する、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項3】
前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに、前記第1および前記第2のラジエータは、互いに完全な熱連通状態にある、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項4】
前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに、前記第1および前記第2のラジエータは、互いに物理的に接触せず、前記システムは、前記第1のラジエータと前記第2のラジエータとが接合する縁を覆い、前記縁からの熱漏洩を低減する、断熱材をさらに備える、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項5】
前記第2のベースプレートが前記開位置または前記閉位置のいずれかにあるときに前記周囲環境に曝される前記第1および前記第2のベースプレートの各表面に塗布される断熱材をさらに含む、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項6】
前記第1および前記第2のラジエータはそれぞれ、サイズが等しい第1および第2の放射表面を有する、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項7】
前記第1および前記第2のラジエータは、前記第2のベースプレートが前記開位置にあるときにラジエータとして働き、前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに他方のラジエータに対するビューブロッカーとして働くことを可能にする、それぞれのサイズおよび幾何学的形状を有し、前記第1および前記第2のラジエータは、前記第2のベースプレートが前記開位置にあるときに宇宙に対して少なくとも80%のビューファクタを有し、前記第1および前記第2のラジエータは、前記第2のベースプレートが前記閉位置にあるときに宇宙に対して高々20%のビューファクタを有する、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項8】
前記第1のラジエータおよび前記第2のラジエータのうちの少なくとも一方は、それぞれ、前記第1または前記第2のベースプレートとは別個の材料片である、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項9】
前記第1のベースプレートは、断熱材で覆われ、前記第1のラジエータは、前記断熱材で覆われていない前記第1のベースプレートの一部分であるか、または前記第2のベースプレートは、断熱材で覆われ、前記第2のラジエータは、前記断熱材で覆われていない前記第1のベースプレートの一部分である、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項10】
前記第1のラジエータまたは前記第2のラジエータは、0.1から0.3の範囲内の吸収率対放射率比を有する光学コーティングでコーティングされる、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項11】
前記光学コーティングは、白色塗料または反射テープである、請求項10に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項12】
前記アクチュエータはヒンジメカニズムを備え、前記第2のベースプレートは、前記ヒンジメカニズムを介して前記開位置と前記閉位置との間で移動する、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項13】
前記開位置から前記閉位置へ、または前記閉位置から前記開位置への前記第2のベースプレートの前記移動は、前記周囲環境の環境条件の検出に基づき自動的に実行される、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項14】
前記第1のベースプレートの前記第1の側に装着された第3の温度制御コンポーネントと、前記第3の温度制御コンポーネントと前記第1のベースプレートの前記第1の側との間に配設されたヒートスイッチとをさらに備え、前記ヒートスイッチは前記第3の温度制御コンポーネントと前記第1のベースプレートとの間の熱結合または伝導性を調節するかまたは制御するためのものである、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項15】
前記第3の温度制御コンポーネントは、断熱の層で囲まれるかまたは覆われる、請求項14に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項16】
第3のベースプレートであって、前記第3のベースプレートの第1の側に装着された第3の温度制御コンポーネントと、前記第1の側に対向する、前記第3のベースプレートの第2の側に配設された第3のラジエータとを有し、前記第3のベースプレートは閉位置と開位置との間で移動可能である、第3のベースプレートと、
前記第1のベースプレートの前記第2の側に配設された第4のラジエータと、
前記第3のベースプレートを前記開位置と前記閉位置との間で移動させるための第2のアクチュエータと
をさらに備え、
前記第3のベースプレートが前記開位置にあるときに、前記第1および前記第3のベースプレートは、前記第3および前記第4のラジエータが、それぞれ前記第1および前記第3の温度制御コンポーネントから熱を廃棄するために前記閉位置にあるときよりも周囲環境に対して、より大きなビューファクタを有し、前記第3および前記第4のラジエータが前記閉位置と比較して互いに対して低減されたビューファクタを有するように分離される、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項17】
前記熱ラジエータシャッタは、ロボットシステムの一部として実装され、前記アクチュエータは、前記ロボットシステムの既存のアクチュエータシステムである、請求項1に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項18】
前記ロボットシステムは、前記既存のアクチュエータシステムによって制御されるマストブームを備えるスペースローバーであり、前記第2のベースプレートは、前記マストブーム上にあり、前記第1のベースプレートは、前記マストブームが接続される前記スペースローバーのプラットフォーム上にあり、前記第2のベースプレートは、前記マストブームを介して展開される、請求項17に記載の熱ラジエータシャッタ。
【請求項19】
熱ラジエータシャッタを介して熱制御を行う方法であって、
閉鎖構成にある熱ラジエータシャッタを提供するステップであって、前記熱ラジエータシャッタは、第1の側に第1の熱制御コンポーネント、および第2の対向する側に第1のラジエータを有する第1のベースプレートと、第1の側に第2の熱制御コンポーネント、および第2の対向する側に第2のラジエータを有する第2のベースプレートとを含み、前記第2のベースプレートは収納位置にあり、前記第1および前記第2のラジエータはサイズが等しい、ステップと、
前記熱ラジエータシャッタを前記閉鎖構成から開放構成に切り替えることを決定するステップと、
前記熱ラジエータシャッタの前記閉鎖構成から開放構成への切り替えの前記決定に応答して、前記第2のベースプレートを前記収納位置から展開位置に移動させることによって前記熱ラジエータシャッタを前記開放構成にし、前記第1のラジエータおよび前記第2のラジエータの各々が熱を放散するかまたは廃棄するための適切なビューファクタを有するように前記第1のベースプレートおよび前記第2のベースプレートの平面上の分離を提供するステップと、
前記熱ラジエータシャッタを前記開放構成から前記閉鎖構成に切り替えることを決定するステップと、
前記熱ラジエータシャッタの前記開放構成から前記閉鎖構成への切り替えの前記決定に応答して、前記第2のベースプレートを前記展開位置から前記第1および前記第2のラジエータが向かい合い、熱閉ループを形成する前記収納位置に移動させるステップと
を含む、方法。
【請求項20】
アクティブ熱制御を提供するための熱ラジエータシャッタを製造する方法であって、
第1の温度制御コンポーネントを第1のベースプレートの第1の側に装着するステップであって、前記第1の温度制御コンポーネントを前記第1のベースプレートに熱的に結合するステップを含む、ステップと、
第1のラジエータを前記第1のベースプレートの第2の側に配設するステップであって、前記第2の側は前記第1の側に対向し、前記第1のラジエータは前記第1の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものである、ステップと、
第2の温度制御コンポーネントを第2のベースプレートの第1の側に装着するステップであって、前記第2の温度制御コンポーネントを前記第2のベースプレートに熱的に結合するステップを含む、ステップと、
第2のラジエータを前記第2のベースプレートの第2の側に配設するステップであって、前記第2の側は前記第1の側に対向し、前記第2のラジエータは前記第2の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものであり、前記第1および前記第2のラジエータは各々同じ寸法の放射表面を有する、ステップと、
前記第2のベースプレートが前記第1のベースプレートに関して移動可能であるように、前記第2のベースプレートを前記第1のベースプレートに接続するステップであって、前記第2のベースプレートは、前記第2のラジエータが前記第1のラジエータと平面上で整列し、前記第1のラジエータと前記第2のラジエータとの間に放射結合を提供し、前記第1および前記第2のラジエータのビューファクタを排除する、第1の位置と、前記第2のラジエータが、前記第1および前記第2のラジエータがそれぞれ前記第1および前記第2の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するように前記第1のラジエータから分離される、第2の位置との間で移動可能である、ステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、一般に、熱制御デバイスに関するものであり、より詳細には、宇宙環境、たとえば、訪れる小惑星、ならびに月および火星を含む惑星環境などの極端な温度を有する環境において使用するための熱制御デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱制御システムは、電子機器などのコンポーネントが適切に機能するために必要な範囲内の温度を維持するために使用される。熱制御システムは、宇宙アプリケーションなどのいくつかのアプリケーションにおいて、システム(たとえば、宇宙船、ローバー、ランダー)が宇宙空間の性質に起因する極端な寒さに曝されるか、または宇宙空間のフィルタに通されていない直射日光に見られる激しい暑さに曝されるので、広範囲にわたって変化し得る外部環境に対処しなければならない。熱制御システムは、システムコンポーネントの動作によって発生する内部熱を抑え、管理することも行わなければならない。熱制御は、最適な性能およびミッションの成功を保証するために非常に重要であるが、それはコンポーネントが、高すぎるかまたは低すぎる温度に曝された場合に、コンポーネントが損傷する可能性があるか、またはその性能が重大な影響を受ける可能性があるからである。熱制御はまた、特定のコンポーネント(センサ、電子機器、電池、など)を指定された温度安定性要件内に保ち、可能な限り効率的に実行することを確実にするため必要である。
【0003】
月面などの宇宙空間環境は、熱制御にとって特定の問題を提起し得る。たとえば、月の環境は、最長354時間続く暑い月の昼と寒い月の夜の間の極端な温度に直面する。月の夜間存続は、極端に低い温度、たとえば40~60ケルビンの地表温度に耐え、月の夜間には、4ケルビンの深宇宙と向き合って熱交換する必要があり得る。月の昼間存続は、極端に高い温度、たとえば400ケルビンの地表温度に耐える必要があり得る。月の夜間は最長354時間続き、その時間中、月面の夜部分は暗いままである。月の昼間は最長354時間続き、その時間中、月面の昼部分は太陽に熱せられる。月面の非常に長い昼夜のサイクルは、工学分野およびその下位分野では多くの場合に遭遇しない、月面システムに対する固有の設計空間を提起する。
【0004】
夜間存続を含む、宇宙および月面の非常に厳しい環境における熱制御に対するアプローチは、放射性発熱体、またはポンプ流体ループ(たとえば、Curiosity、Mars 2020)などの高度なアクティブ熱制御システムの使用を含む。このようなアプローチは、システムのコスト、質量、および/または複雑さを増大させる可能性があり、したがって特定のミッションまたはアプリケーション(たとえば、低コスト、低質量のマイクロローバープラットフォームの)には適さないか、または望ましくない場合がある。放射性物質を使用するシステムは、発射台において故障が発生した場合、地上システムおよび乗組員に対して放射能漏れまたは被曝のさらなる危険性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、放射性発熱体または高度な熱制御システムを使用することなく、月面などの、極端な温度変動および長い昼/夜サイクルを伴う環境下で機能することができる熱制御のためのシステム、方法、およびデバイスが望まれている。
【0006】
さらに、いくつかの場合において、ローバーなどのシステムは、異なる最低許容温度を有する同じコンパートメント(たとえば、ローバーの本体または電子機器ボックス)に収納されたコンポーネントを含み得る。コンパートメント内に複数の熱ゾーンを形成することが望ましい場合もある。
【0007】
したがって、特に、惑星および他の宇宙環境などの極端な温度を有する環境において、既存のシステム、方法、およびデバイスの欠点のうちの少なくともいくつかを克服する、熱制御のための改善されたシステム、方法、およびデバイスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
システムのアクティブ熱制御のための熱ラジエータシャッタが提供される。熱ラジエータシャッタは、第1のベースプレートであって、第1のベースプレートの底部側に装着される第1の温度制御コンポーネントと、第1のベースプレートの頂部側に配設された第1のラジエータとを有する第1のベースプレートと、第2のベースプレートであって、第2のベースプレートの第1の側に装着された第2の温度制御コンポーネントと、第1の側に対向する、第2のベースプレートの第2の側に配設された第2のラジエータとを有し、第2のベースプレートは閉位置と開位置との間で移動可能である、第2のベースプレートと、第2のベースプレートを閉位置から開位置へ、および開位置から閉位置へ移動させるために第2のベースプレートに接続されているアクチュエータとを含む。第2のベースプレートが閉位置にあるときに、第2のラジエータは、第1のラジエータに面して放射結合を提供し、第1のベースプレートと第2のベースプレートとの間に熱が流れる熱ループを形成する。第2のベースプレートが開位置にあるときに、第1および第2のベースプレートは、(i)第1および第2のラジエータが、それぞれ第1および第2の温度制御コンポーネントから熱を廃棄するために閉位置にあるときよりも周囲環境に対してより大きなビューファクタを有し、(ii)第1および第2のラジエータが、閉位置と比較して互いに対して低減されたビューファクタを有するように分離される。
【0009】
第2のベースプレートが閉位置にあるときに、第1および第2のラジエータの各々は、周囲環境に対して0%のビューファクタを有し得る。
【0010】
第2のベースプレートが閉位置にあるときに、第1および第2のラジエータは、互いに完全な熱連通状態にあり得る。
【0011】
第2のベースプレートが閉位置にあるときに、第1および第2のラジエータは、互いに物理的に接触し得ず、システムは、第1のラジエータと第2のラジエータとが接合する縁を覆い、縁からの熱漏洩を低減する断熱材をさらに備え得る。
【0012】
熱ラジエータシャッタは、第2のベースプレートが開位置または閉位置のいずれかにあるときに周囲環境に曝される第1および第2のベースプレートの各表面に塗布される断熱材をさらに含み得る。
【0013】
第1および第2のラジエータはそれぞれ、サイズが等しい第1および第2の放射表面を有し得る。
【0014】
第1および第2のラジエータは、第2のベースプレートが開位置にあるときにラジエータとして働き、第2のベースプレートが閉位置にあるときに他方のラジエータに対するビューブロッカーとして働くことを可能にするそれぞれのサイズおよび幾何学的形状を有し得る。第1および第2のラジエータは、第2のベースプレートが開位置にあるときに宇宙に対して少なくとも80%のビューファクタを有し、第2のベースプレートが閉位置にあるときに宇宙に対して高々20%のビューファクタを有し得る。
【0015】
第1のラジエータおよび第2のラジエータのうちの少なくとも一方は、それぞれ、第1または第2のベースプレートとは別個の材料片であってもよい。
【0016】
第1のベースプレートは、断熱材で覆われてよく、第1のラジエータは、断熱材で覆われていない第1のベースプレートの一部分であってもよい。第2のベースプレートは、断熱材で覆われてよく、第2のラジエータは、断熱材で覆われていない第1のベースプレートの一部分であってもよい。
【0017】
第1のラジエータまたは第2のラジエータは、0.1から0.3の範囲内の吸収率対放射率比を有する光学コーティングでコーティングされ得る。
【0018】
光学コーティングは、白色塗料または反射テープであってもよい。
【0019】
アクチュエータはヒンジメカニズムを備えてよく、第2のベースプレートはヒンジメカニズムを介して開位置と閉位置との間にあってよい。
【0020】
開位置から閉位置へ、または閉位置から開位置への第2のベースプレートの移動は、周囲環境の環境条件の検出に基づき自動的に実行され得る。
【0021】
熱ラジエータシャッタは、第1のベースプレートの第1の側に装着された第3の温度制御コンポーネントと、第3の温度制御コンポーネントと第1のベースプレートの第1の側との間に配設されたヒートスイッチとをさらに備え、ヒートスイッチは第3の温度制御コンポーネントと第1のベースプレートとの間の熱結合または伝導性を調節するかまたは制御するためのものである。
【0022】
第3の温度制御コンポーネントは、断熱の層で囲まれるかまたは覆われ得る。
【0023】
請求項1に記載の熱ラジエータシャッタは、第3のベースプレートであって、第3のベースプレートの第1の側に装着された第3の温度制御コンポーネントと、第1の側に対向する第3のベースプレートの第2の側に配設された第3のラジエータとを有し、第3のベースプレートは閉位置と開位置との間で移動可能である、第3のベースプレートと、第1のベースプレートの第2の側に配設された第4のラジエータと、第3のベースプレートを開位置と閉位置との間で移動させるための第2のアクチュエータとをさらに備え得る。第3のベースプレートが開位置にあるときに、第1および第3のベースプレートは、第3および第4のラジエータが、それぞれ第1および第3の温度制御コンポーネントから熱を廃棄するために閉位置にあるときよりも周囲環境に対して、より大きなビューファクタを有し、第3および第4のラジエータが、閉位置と比較して互いに対して低減されたビューファクタを有するように分離され得る。
【0024】
熱ラジエータシャッタは、ロボットシステムの一部として実装され得、アクチュエータは、ロボットシステムの既存のアクチュエータシステムであり得る。
【0025】
ロボットシステムは、既存のアクチュエータシステムによって制御されるマストブームを備えるスペースローバーであってよく、第2のベースプレートは、マストブーム上にあり、第1のベースプレートは、マストブームが接続されたスペースローバーのプラットフォーム上にあり、第2のベースプレートは、マストブームを介して展開される。
【0026】
熱ラジエータシャッタを介して熱制御を行う方法も提供される。この方法は、閉鎖構成にある熱ラジエータシャッタを提供するステップであって、熱ラジエータシャッタは第1の側に第1の熱制御コンポーネントを有し、第2の対向する側に第1のラジエータを有する第1のベースプレートと、第1の側に第2の熱制御コンポーネントを有し、第2の対向する側に第2のラジエータを有する第2のベースプレートとを含み、第2のベースプレートは収納位置にあり、第1および第2のラジエータはサイズが等しい、ステップと、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成から開放構成に切り替えることを決定するステップと、熱ラジエータシャッタの閉鎖構成から開放構成への切り替えの決定に応答して、第2のベースプレートを収納位置から展開位置に移動させることによって熱ラジエータシャッタを開放構成にして、第1のラジエータおよび第2のラジエータの各々が熱を放散するかまたは廃棄するための好適なビューファクタを有するように第1のベースプレートおよび第2のベースプレートの平面上の分離を提供するステップと、熱ラジエータシャッタを開放構成から閉鎖構成に切り替えることを決定するステップと、熱ラジエータシャッタの開放構成から閉鎖構成への切り替えの決定に応答して、第2のベースプレートを展開位置から第1および第2のラジエータが向かい合い、熱閉ループを形成する収納位置に移動させるステップとを含む。
【0027】
アクティブ熱制御を提供するための熱ラジエータシャッタを製造する方法も提供される。この方法は、第1の温度制御コンポーネントを第1のベースプレートの第1の側に装着するステップであって、この装着は第1の温度制御コンポーネントを第1のベースプレートに熱的に結合することを含む、ステップと、第1のラジエータを第1のベースプレートの第2の側に配設するステップであって、第2の側は第1の側に対向しており、第1のラジエータは第1の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものである、ステップと、第2の温度制御コンポーネントを第2のベースプレートの第1の側に装着するステップであって、この装着は第2の温度制御コンポーネントを第2のベースプレートに熱的に結合することを含む、ステップと、第2のラジエータを第2のベースプレートの第2の側に配設するステップであって、第2の側は第1の側に対向しており、第2のラジエータは第2の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものであり、第1および第2のラジエータは各々、同じ寸法の放射表面を有する、ステップと、第2のベースプレートが第1のベースプレートに関して相対的に移動可能であるように、第2のベースプレートを第1のベースプレートに接続するステップであって、第2のベースプレートは、第2のラジエータが第1のラジエータと平面上で整列して、第1のラジエータと第2のラジエータとの間に放射結合を提供し、第1および第2のラジエータのビューファクタを排除する第1の位置と、第1および第2のラジエータがそれぞれ第1および第2の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するように、第2のラジエータが第1のラジエータから分離される第2の位置との間で移動可能である、ステップとを含む。
【0028】
他の態様および特徴は、いくつかの例示的な実施形態の次の説明を検討すれば、当業者に明らかになるであろう。
【0029】
本明細書に含まれる図面は、本明細書の物品、方法、および装置の様々な例を例示するためのものである。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】一実施形態による、2つのベースプレートを有する熱制御システムの側面概略図あって、熱制御システムは宇宙探査システムの動作中に熱を放散するかまたは廃棄するために開放構成にある。
【
図1B】一実施形態による、熱を保存するために閉鎖構成にある
図1Aの熱制御システムの側概略図である。
【
図2A】2つのベースプレートを有する熱制御システムの側断面概略図であり、2つのベースプレートのうちの一方は、2つの独立した熱ゾーンを含むウォームエレクトロニクスボックスまたはハウジングの一部であり、熱制御システムは熱を廃棄するために開放構成にある。
【
図2B】一実施形態による、熱を保存するために閉鎖構成にある
図2Aの熱制御システムの側断面概略図である。
【
図3A】一実施形態による、固定ベースプレートと2つの移動可能ベースプレートとを含む3つのベースプレートを有する熱制御システムの側面概略図であり、熱制御システムは熱を廃棄するために開放構成にある。
【
図3B】一実施形態による、熱を保存するために閉鎖構成にある
図3Aの熱制御システムの側概略図である。
【
図4A】一実施形態による、展開可能マストとウォームエレクトロニクスボックス(またはローバー本体)を含むルナローバー熱制御システムの側断面概略図であり、ルナローバー熱制御システムは熱を廃棄するために開放構成にある。
【
図4B】一実施形態による、熱を保存するために閉鎖構成にある
図4Aのルナローバー熱制御システムの側断面概略図である。
【
図5】一実施形態による、
図4A~
図4Bのルナローバー熱制御システムのウォームエレクトロニクスボックスヒータのアーキテクチャの内部の部分的に透けて見える頂面概略図である。
【
図6】一実施形態による、
図1A~
図1Bの熱制御システムなどの、熱制御システムを動作させる方法の流れ図である。
【
図7】一実施形態による、
図2A~
図2Bの熱制御システムなどの、単一のベースプレート上に複数の熱ゾーンを有する熱制御システムを動作させる方法の流れ図である。
【
図8】一実施形態による、月の夜間存続のために熱ラジエータシャッタを動作させる方法の流れ図である。
【
図9】一実施形態による、
図8の方法における休眠のための準備を行う動作の流れ図である。
【
図10】一実施形態による、
図8の方法において休眠状態に入るローバーの動作の流れ図である。
【
図11】一実施形態による、
図8の方法においてローバーがウェイクアップする動作の流れ図である。
【
図12】一実施形態による、
図1A~
図1Bの熱制御システムなどの、熱制御システムを製造する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
各特許請求される実施形態の一例を提供するために以下で様々な装置またはプロセスが説明される。以下に説明される実施形態は、いっさい、特許請求される実施形態を限定せず、特許請求される実施形態は、どれも、以下で説明されるものと異なるプロセスまたは装置を対象とし得る。特許請求される実施形態は、以下で説明される任意の1つの装置もしくはプロセスの特徴のすべてを有する装置もしくはプロセスに、または以下で説明される装置の複数もしくはすべてに共通する特徴に限定されない。
【0032】
本明細書において説明されている1つまたは複数のシステムは、プログラム可能なコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムで実装されるものとしてよく、各コンピュータは少なくとも1つのプロセッサ、データ記憶システム(揮発性および不揮発性メモリならびに/または記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスを備える。たとえば、限定することなく、プログラム可能なコンピュータは、プログラマブルロジックユニット、メインフレームコンピュータ、サーバ、およびパーソナルコンピュータ、クラウドベースのプログラムもしくはシステム、ラップトップ、携帯情報端末、携帯電話、スマートフォン、またはタブレットデバイスであってもよい。
【0033】
各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、好ましくは高水準の手続き型もしくはオブジェクト指向プログラミング言語および/またはスクリプト言語で実装される。しかしながら、プログラムは、望ましい場合に、アセンブリ言語または機械語で実装され得る。いずれの場合も、言語は、コンパイラ型またはインタープリタ型言語であり得る。このような各コンピュータプログラムは、記憶媒体またはデバイスがコンピュータによって読み取られ本明細書において説明されている手順を実行するときに、コンピュータを構成し、動作させるために汎用もしくは専用のプログラム可能なコンピュータによって可読である記憶媒体またはデバイスに記憶される。
【0034】
互いに通信するいくつかのコンポーネントを有する一実施形態の説明は、すべてのそのようなコンポーネントが必要であることを意味するわけではない。それどころか、様々な任意選択のコンポーネントが、本発明の多種多様な可能な実施形態を例示するために説明されている。
【0035】
さらに、プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズム、または同様のものは、逐次的順序で(本開示および/または特許請求の範囲において)説明され得るが、そのようなプロセス、方法、およびアルゴリズムは、交互する順序で動作するように構成され得る。言い換えれば、説明され得るステップの任意のシーケンスまたは順序は、必ずしもステップがその順序で実行されることの要件であることを示すものではない。本明細書において説明されているプロセスのステップは、実用的である任意の順序で実行され得る。さらに、いくつかのステップは、同時に実行され得る。
【0036】
単一のデバイスまたは物品が本明細書において説明されているときに、2つ以上のデバイス/物品(それらが連携しているか否かにかかわらず)が単一のデバイス/物品の代わりに使用されてもよいことは容易に明らかになる。同様に、本明細書において2つ以上のデバイスまたは物品(それらが連携するか否かにかかわらず)が説明されている場合、単一のデバイス/物品が2つ以上のデバイスまたは物品の代わりに使用されてもよいことは容易に明らかになる。
【0037】
本開示全体を通して、「惑星」は、月、火星、または小惑星などの天然衛星であるかどうかにかかわらず、宇宙空間にある任意の衛星を指すと理解されるべきである。惑星環境における本開示のアプリケーションは、いくつかの実施形態において、人工衛星に関する類似のアプリケーションを有し得る。本開示全体を通して、「宇宙」は、惑星環境の周りのまたは惑星環境に隣接する軌道を含む、宇宙空間内の任意の環境を指すと理解されるべきである。
【0038】
以下は、一般的に、熱制御デバイスに関するものであり、より詳細には、宇宙ベースのアプリケーションおよび極端な温度を有する環境(たとえば、月面)において使用するためのアクティブ熱制御デバイスに関する。
【0039】
熱ラジエータシャッタが提供される。熱ラジエータシャッタは、開放状態では宇宙船(たとえば、ローバーもしくは同様のもの)または他のシステムから熱を廃棄するかもしくは放散し、閉鎖状態ではそれ自体を環境から熱的に隔離するか、もしくは減結合するために使用されるアクティブ熱制御デバイスである。本開示の多くは、2つのベースプレートを有する熱ラジエータシャッタの実施形態(「デュアルベースプレートシャッタ」)に主眼を置くが、2つよりも多いベースプレートを有する実施形態は、本明細書において説明されているもののように、本開示によって明示的に企図される。宇宙船からの熱の廃棄は、熱がラジエータを通して宇宙船から離れる方向に伝えられる受動的プロセスであってもよいことは理解されるであろう。そのようなラジエータは、ラジエータとして専用に製造されるか、設計されるか、または使用されるコンポーネントであり得る。そのようなラジエータは、環境から熱的に隔離されていないコンポーネント(たとえば、ベースプレートの一部は熱的に隔離された材料で覆われていないが、ベースプレートの残り部分は覆われている)であり得る。そのようなラジエータは、ラジエータでない他のコンポーネントに比べて環境からあまり熱的に隔離されていないコンポーネントであり得、ラジエータはそれでも環境から少なくとも部分的に熱的に隔離されている(たとえば、ラジエータは、ベースプレートの残りの部分に比べて熱放射材料が少ないベースプレートの部分であり得る)。
【0040】
一実施形態において、本開示のデュアルベースプレートシャッタは、第1および第2のベースプレートを含む。第1および第2のベースプレートの各々は、温度が制御されるコンポーネント(「温度制御コンポーネント」)を搭載する。温度制御コンポーネントは、それぞれのベースプレートの第1の側に装着され、断熱材で囲まれている。ラジエータは、ベースプレートの第1の側と対向するそれぞれのベースプレートの第2の側に設けられる。ラジエータは、ベースプレートに結合された別個の材料片であり得るか、または断熱材で覆われていないベースプレートの第2の側の露出部分(たとえば、ベースプレートを覆っている断熱材のカットアウト)であってもよい。
【0041】
一実施形態において、第1および第2のベースプレート上のラジエータは、類似または同一の放射表面積を提供するので、サイズが等しい。そのような類似または同一の放射表面積は、ラジエータが放射結合して、熱閉ループを形成し、それにより熱閉ループ内で放射結合されたラジエータから熱がほとんどまたは全く逃げないようにすることを可能にする。
【0042】
一実施形態において、第1および第2のベースプレート上のラジエータはサイズが異なるが、類似または同一の放射表面積を提供する。
【0043】
ラジエータは、白色塗料(たとえば、低吸収率対放射率比を有する)または可撓性反射テープなどの、光学コーティングでコーディングされ、太陽束の吸収を最小にするかまたは低減し、放熱能力を最大にするかまたは増大させ得る。吸収率および放射率などの光学コーティングの特性は、波長依存効果および寿命初期(「BOL」)から寿命末期(「EOL」)までの変化に基づいて変化し得る。一般的に、光学コーティングは、高い赤外(「IR」)放射率および低い日射吸収率を有してよく、これは、表面が赤外範囲において熱を廃棄し、太陽光(平均してより短い波長)からのエネルギーをまだ吸収しないことを可能にする。一実施形態において、吸収率および放射率は、パッシブ熱制御に適したそれぞれの範囲から選択される。一実施形態において、吸収率は、0.1から0.2±0.05の範囲内にあるものとしてよい。一実施形態において、放射率は、0.7から0.9±0.05の範囲内にあるものとしてよい。熱ラジエータシャッタが月面環境において使用される実施形態では、塵汚染がこれらの値を変化させ、ほぼ0.1だけ劣化させ得る(吸収率を高くし、放射率を低くし、放射表面を悪くするという意味で劣化する)。一実施形態において、光学コーティングは、0.1から0.3の範囲内の吸収率対放射率比を有し得る。
【0044】
完全な閉鎖状態では、第1および第2のベースプレートは、2つのラジエータが互いに対向するように接合され、放射結合を提供する。閉鎖状態、および2つのラジエータの対応する位置決めは、熱が一方のベースプレートから別のベースプレートへ放射する熱閉ループを形成する。一実施形態において、2つのラジエータは互いに物理的に接触する。一実施形態において、2つのラジエータは、閉鎖状態で互いに完全に熱連通しているが、物理的接触はしていない。これは、ラジエータに塗布されたコーティングの潜在的な劣化を防ぐという利点を有し得る。一実施形態において、2つのラジエータは、閉鎖状態で互いに100%のビューファクタを有する。2つのラジエータが可能な限り互いに近接し、互いのビューファクタが可能な限り100%に近い場合、ラジエータは、環境との熱交換をブロックされ、熱ラジエータシャッタは、環境から熱的に隔離される。一般的に、閉鎖状態(たとえば、
図1Bに示されているように)では、熱短絡の一形態が、互いに対する100%のビューファクタを形成することによって(または、可能な限り、または許容可能なビューファクタを達成するのに必要なだけ、互いに対するビューファクタを高くすること、および深宇宙に対するビューファクタを低くすることによって)、熱ラジエータを用いて達成される。
【0045】
一般的に、熱ラジエータシャッタは、開いたビューファクタに比べて小さい閉じたビューファクタを有することによって利点を提供するように構成される。鍵となる考え方は、いくつかの実施形態において、熱ラジエータシャッタが、蓄えられたエネルギー(熱、相転移、または電気)の使用率が、「夜」が続いている間のエネルギー散逸率とおおよそ等しくなるように構成されることである。たとえば、存続期間が長いほど、許容され得る熱損失率は小さくなり、提供されるビューファクタの変化は大きくなる。
【0046】
月面アプリケーションは、強力な駆動ケースを提供する。そのような環境は、対流がなく、熱放射損失/利得が強く、昼夜の持続期間が長い。
【0047】
一実施形態において、熱ラジエータシャッタのビューファクタは、シャッタが閉じるにつれて非線形に変化する。たとえば、最初の10度の閉鎖は、最後の10度の閉鎖に比べてかなり小さな効果を有し得る。
【0048】
一実施形態において、熱ラジエータシャッタが開放構成にあるときに、宇宙空間に対するビューファクタは少なくとも80%である。たとえば、ルナローバーに実装された一実施形態では、開放構成における宇宙空間に対するビューファクタは、約80%であってよい。いくつかの実施形態において、開放構成における100%のビューファクタが達成可能であり、実装され得る。開放構成では、ラジエータは、それぞれのビューファクタを深宇宙に対して最大化することによって熱を深宇宙へ伝え、コンポーネントを動作限界温度よりも低い温度に維持する。閉鎖構成では、ラジエータペア間のビューファクタは最大にされ、これは宇宙空間への放射熱損失を最小にする。ラジエータは、ラジエータペア間のビューファクタが100%であることが現実的でない場合があることを認識した上で適切なマージンを与えるようにサイズ設定される(いくつかの実装形態において)。いくつかの実施形態において、ビューファクタは、閉鎖構成では高々20%であり得る(すなわち、シャッタは、ビューファクタが20%を超えないように十分に閉じるように構成される)。
【0049】
一実施形態において、閉鎖状態において、2つのラジエータは、深宇宙に対するビューファクタを減少させ、互いに対するビューファクタを増加させるように接合されるが、互いに物理的に接触しない。一実施形態において、キャップ、スカート、または他の被覆が、一方または両方のラジエータの周囲に設けられ、それにより一方または両方のラジエータの縁を覆い、一方または両方のラジエータの縁からの熱漏洩を低減する。そのようなキャップまたはスカートは、多層断熱材で作られてもよい。
【0050】
開放状態を達成するために、アクチュエータが、第1および第2のベースプレートを分離するために使用され、それによって2つのラジエータを分離し、2つのラジエータが熱を廃棄することを可能にする。一実施形態において、第2のベースプレートは、第2のベースプレートが第1のベースプレートに対して実質的に平行であり、第1のベースプレートの上にある閉位置から、第2のベースプレートが第1のベースプレートに対して実質的に垂直である、たとえば第1のベースプレートに対して90度である開位置まで移動する。一実施形態において、第2のベースプレートは、第2のベースプレートが第1のベースプレートに対して実質的に平行であり、第1のベースプレートの上にある閉位置から、第2のベースプレートが第1のベースプレートに対して90度を超えて、たとえば第1のベースプレートに対して180度回転する開位置まで移動する。一実施形態において、閉位置では、環境に対する各ラジエータのビューファクタは0%である(すなわち、他のラジエータに対する各ラジエータのビューファクタは100%である)。一実施形態において、開位置では、環境に対する各ラジエータのビューファクタは100%である(すなわち、他のラジエータに対する各ラジエータのビューファクタは0%である)。開位置は、閉位置でない任意の位置、たとえば、第2のベースプレートが第1のベースプレートに対して実質的に平行でなく、第1のベースプレートの上にない任意の位置であってよい。そのような場合、第2のベースプレートは移動可能(展開可能)であり、第1のベースプレートは固定される。開位置は、閉位置と比較して各ラジエータの環境に対するビューファクタを増加させる任意の位置であってよい。開位置は、ローバーまたは他の宇宙船の既存のアクチュエータシステムによって決定され得る。たとえば、第2のベースプレートは、マストが装着されるプラットフォームに対して一般的に垂直な位置に展開されるように構成されるローバーマスト上、または収納時にそのラジエータを閉じ、展開時にそのラジエータを開くロボットアーム上に装着され得る。第1および第2のベースプレートが各々移動可能であり、本開示によって企図される実施形態が、1つのベースプレートを固定し、1つの(または複数の)ベースプレートを展開可能にすることで、有利には、簡素化することができ、従来のシステム構成(たとえば、ローバー本体/ウォームエレクトロニクスボックスおよび展開可能なマストを備えるローバー)と互換性があり得る。
【0051】
第2のベースプレートを閉位置から開位置に移動させるために使用されるアクチュエータは、ローバー上にすでに存在する場合がある。すなわち、熱ラジエータシャッタは、既存のローバーもしくは他の宇宙船もしくはシステム上の、またはそれと一体化されたシステム、方法、あるいは装置として実装され得る。したがって、本開示の熱ラジエータシャッタを実装するかまたは一体化するためのシステム、方法、およびデバイスは、本明細書においてさらに明示的に開示されている。さらに、本開示の熱ラジエータシャッタを実現するために、本明細書において説明されているようなラジエータを含むコンポーネントを、ローバーまたは他の宇宙船に後付けする方法が明示的に企図される。そのような方法は、本明細書において説明されているように、第1のベースプレート、第2のベースプレート、および第2のベースプレートを閉位置から開位置へ移動させるためのアクチュエータを含むローバーを提供するステップと、第1および第2のベースプレート上にそれぞれ第1および第2のラジエータを配設するステップとを含み得る。
【0052】
閉状態と開状態との間を移動することによって、デュアルベースプレートシャッタは、第1および第2のベースプレートの各々に1つずつ、2つの熱制御ゾーンの平面上の分離を提供する。これは、ローバーなどのデュアルベースプレートシャッタが実装されたシステムが、関連する動作で必要とされるような熱共有または熱放散のいずれかを促進する構成をとることを可能にする。
【0053】
閉鎖状態では、デュアルベースプレートシャッタは、熱を共有する熱質量を増大させ、それによってデュアルベースプレートシャッタが実装されているローバー、宇宙船、または他のビークルもしくシステムの熱慣性を増大させる。
【0054】
閉鎖状態では、デュアルベースプレートシャッタは、環境に対するラジエータのビューファクタを排除する。一実施形態において、デュアルベースプレートシャッタは、ポンプ流体ループ(PFL)、ループヒートパイプ(LHP)、または可変コンダクタンスヒートパイプ(VCHP)などの高度な熱ハードウェアを使用しない。一実施形態において、デュアルベースプレートシャッタはVCHPを使用する。
【0055】
一実施形態において、アクチュエータはヒンジを含むか、またはヒンジの原理に従って動作する。そのような実施形態において、熱ラジエータシャッタはヒンジ付き熱ラジエータシャッタと称され得る。ヒンジは、第1のベースプレートと第2のベースプレートとを接続し、開放構成と閉鎖構成との間を移動するときに第1のベースプレートに関する第2のベースプレートのヒンジ型移動を促進し得る。
【0056】
一実施形態において、アクチュエータは線形アクチュエータである。
【0057】
ラジエータを互いにできるだけ近づけるための任意の適切なアクチュエータは、本開示によって明示的に企図される。一実施形態において、アクチュエータは、各ラジエータが他方に対して100%のビューファクタを有するようにベースプレートを一緒に移動させる。
【0058】
本開示の熱ラジエータシャッタは、様々な利点を提供し得る。
【0059】
デュアルベースプレートシャッタは、宇宙船(または他のビークルもしくはシステム)において、独立した温度制御ゾーンが確立されることを可能にする。温度に敏感なコンポーネントは、高温動作時に所望の配置または位置に置かれ、低温動作または存続のためにコンパクトなパッケージにまとめられる。
【0060】
デュアルベースプレートシャッタは、敏感なコンポーネントのコンパクトなパッケージを提供し、熱を共有する熱質量を増大させ、したがって冷却プロセスを遅くする。
【0061】
PFL、LHP、またはVCHPがベースプレートとラジエータとの間の可変結合を提供するために使用される既存のソリューションと比較して、本開示の熱ラジエータシャッタは、ラジエータを環境から完全に減結合する。閉鎖状態では、これは完全に断熱されたボックスを形成することができ、熱管理に必要なヒータ電力を最小限に抑えることができる。
【0062】
PFL、LHP、またはVCHPなどの既存のソリューションと比較して、本開示の熱ラジエータシャッタは、より単純で、信頼性がより高く、コストがより低い熱制御ソリューションを提供し得る。
【0063】
本開示は、月面環境、たとえば、月面の夜間存続、月面の昼間存続に向けられた実施形態を含むが、これは、本開示のシステム、方法、およびデバイスの1つの例示的なアプリケーションであることが理解されるべきである。高温もしくは低温の極端な温度および変動、または長時間の高温もしくは低温の期間のいずれかを特徴とする他のアプリケーションが、明示的に明確に開示されている。当業者であれば、月面の夜間存続が、寒い極端な温度と長期間の寒候期の両方の例であることを理解するであろう。
【0064】
本開示のさらなる目的および利点は、信頼性要件を満たしながら、体積、質量、コスト、複雑さ、および電力消費を低減することを含む。それに加えて、本開示が適用されるローバーは、月面環境の極端な温度変化に耐えることができる。
【0065】
さらなる設計上の考慮事項は、質量および体積の制約条件を含む。そのような制約条件は、熱ハードウェアの選択および配置、さらにはラジエータのサイズにも影響する。それに加えて、月の夜間存続のために抵抗ヒータが使用されるときに1つまたは複数の電池のサイズ設定は鍵になる要素である。構造的な観点から、比剛性と比強度の高い軽量なソリューションが好ましい。
【0066】
月面は、特に月極において過酷な熱環境となっている。月には大気が存在しないことから、ローバーは深宇宙の温度に曝され得る。さらに、月面温度は月の昼間と夜間とで300℃も大きく変化する。その結果、そのような変化に対処できる融通性と効率性を有する物理的および熱的アーキテクチャを提供することが、本開示のさらなる目的であり利点である。
【0067】
ローバー上の極端な表面温度の影響は、月の昼間および夜間の長い持続時間によって深刻化する。月の昼間-夜間サイクルは各々約700時間続く。したがって、日中の動作時に高温の定常状態温度に達する一方で、ローバーが長く寒い月の夜を存続するのを助ける熱ラジエータシャッタを提供することが望ましい。電池の質量を最小限度に抑えるために、ヒータエネルギーの使用に対する厳しい要件が、熱ラジエータシャッタに課される。
【0068】
典型的な最低非動作温度が-120℃~-125℃の範囲内にある、火星探査ミッション用の低温電子機器の設計および開発において広範な継承物があるが、そのような低温に対するセンサ、カメラ、および電子機器の適格性評価には、過去に課題があった。
【0069】
許容限界を下げることは、ヒータ電力への需要を低減することによって、月の夜間の電池エネルギーの節約に役立ち得る。しかしながら、このような低温に対するコンポーネントの適格性評価は、コスト、複雑さ、およびスケジューリングに著しい影響を及ぼすことがあり、したがって低温電子機器の適格性評価を回避することが好ましく、したがって、本開示の目的は、夜間存続のために電子機器を約-55℃に維持することである。
【0070】
ポンプ流体ループおよび展開可能ラジエータなどの、アクティブ熱制御システムは、その動作のための電力を必要とし、そのため宇宙船の設計が著しく複雑なものとなる。そのようなシステムは、単一障害点を含み、したがって宇宙船の信頼性を低下させる。したがって、もっぱら受動的な熱アーキテクチャが好ましい。
【0071】
次に、
図1Aおよび
図1Bを参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、デュアルベースプレートシャッタ100である。デュアルベースプレートシャッタ100は、熱制御デバイスであり、熱制御システムの一部として(たとえば、1つまたは複数の他のコンポーネントと共に)使用され得る。デュアルベースプレートシャッタ100は、
図1Aには開放構成102、
図1Bには閉鎖構成122で示されている。
【0072】
一般的に、開放構成102は、システムコンポーネントの動作中(たとえば、宇宙探査システムの動作中)に熱を放散するかまたは廃棄するために使用され得る。熱の正味の発生または吸収があるとき(これは通常、システム動作中に生じる)、熱の廃棄または放散が生じる。閉鎖構成122は、熱の廃棄または放散を最小にするためにシステムの「存続」期間中に使用され得る。
【0073】
デュアルベースプレートシャッタ100は、ローバー(たとえば、ルナローバー)、他の宇宙船、およびそのサブシステムに対して害のない熱環境を提供するために使用され得る。デュアルベースプレートシャッタ100は、極端な温度変化を制御し、温度勾配を最小にし、動作全体を通して構成コンポーネントを許容動作温度範囲内および非動作温度範囲内に維持することによってこの目的を達成する。
【0074】
熱ラジエータシャッタ100は、第1のベースプレート104および第2のベースプレート106を含む。第1および第2のベースプレート104、106は、少なくとも第2のベースプレート106が第1のベースプレート104に関して相対的に移動可能であるように、直接的または間接的に結合される。
図1A~
図1Bの実施形態において、第1のベースプレート104は固定されており、第2のベースプレート106は、収納構成(閉鎖構成122に対応する)と展開構成(開放構成102に対応する)との間で移動可能である。
【0075】
本開示全体を通して、いくつかの実施形態において、第1のベースプレート104は、ウォームエレクトロニクスボックス(WEB)、ローバー、またはローバーの本体を含み得るか、それらに含まれ得るか、またはそれらであり得ることは理解されるべきである。同様に、本図全体を通して、および本出願全体を通して、第2のベースプレート106は、マストを含むか、マストに含まれるか、またはマストであり得ることは理解されるべきである。
【0076】
第1および第2のベースプレート104、106は、必要に応じて、適切な構造、熱、または環境の保護機能を提供する任意の適切な材料から構成され得る。第1および第2のベースプレート104、106はアルミニウムパネルであってもよい。質量および体積を最小にするために、高い比剛性および比強度を有する材料が、アルミニウムハニカムパネルなどの、第1および第2のベースプレート104、106に対して選択され得る。
【0077】
第1および第2のベースプレート104、106は、コンポーネントを装着し、開放構成102と閉鎖構成122との間の移動を可能にする機能を果たし、ラジエータが配設され得る、任意の適切な形状であってよい。そのような形状は、特に限定されない。一実施形態において、ベースプレート104、106は1つまたは複数のフラットパネルである。一実施形態において、ベースプレート104、106は、管状の形状である。一実施形態において、第1および第2のベースプレート104、106は、設計(たとえば、材料、サイズ、形状)が異なる。一実施形態において、第2のベースプレート106は、
図1A、
図1Bに描かれているようなマストであり、第1のベースプレート104は、
図1A、
図1Bに描かれ、
図2A、
図2Bに、より具体的に示されているようなウォームエレクトロニクスボックス(WEB)の一部である。第2のベースプレート106がマストである一実施形態において、マストは、アビオニクスを保持し、打上げ荷重を受けるようにのみ構成され得る。第1のベースプレート104がWEBである一実施形態において、WEBはまた、アビオニクスを保持し、打上げ荷重を受け、さらに、より厳しい構造要件を有し得る。マストは、管状の支柱を含むが、ボックス本体を含まなくてよく、WEBはボックス本体を含み得る。WEBは、科学機器、たとえばカメラおよびアンテナをさらに保持し得る。
【0078】
一実施形態において、第1および第2のベースプレート104、106のうちの1つまたは複数は、ハニカムパネルであり得る。ハニカムパネルは、コアと表面板とを含み得る。コアおよび表面板のうちの一方または両方は、アルミニウムから構成され得る。アルミニウムは、熱伝導率がより高いので、グラファイトまたはケブラー(登録商標)などの他の材料よりも好ましい場合がある。
【0079】
第1のベースプレート104は、第1の側132および第2の側134を有する。第2の側134は、一般的に第1の側132に対向する。
【0080】
第1の側132には、第1の温度制御コンポーネント105が装着されている。この装着は、第1の温度制御コンポーネント105が第1のベースプレート104に熱的に結合されるような装着である。
【0081】
第1の温度制御コンポーネント105は、単一の温度制御コンポーネントまたは温度制御コンポーネントのセットであり得る。第1の温度制御コンポーネント105は、1つまたは複数の電子デバイスを含み得る。たとえば、第1の温度制御コンポーネント105は、アビオニクスコンポーネントであってもよい。第1の温度制御コンポーネント105は、第1の独立した熱ゾーンにあると理解される。
【0082】
第2の側134は、第1の放射表面113を介して、第1の温度制御コンポーネント105によって発生する、熱111を廃棄するまたは放散するための第1のラジエータ108を含む。開放構成102における第1のラジエータ108は、熱111を廃棄するための第1の放射表面113を介する深宇宙へのビューファクタを有する。
【0083】
第2のベースプレート106は、第1の側128および第2の側130を有する。第2の側130は、一般的に第1の側128に対向する。第2のベースプレート106全体は、ローバーまたは他のビークルもしくはシステムプラットフォームのマストであり得る。
【0084】
第2のベースプレート106を収納することは、環境に対するラジエータ108、110のビューファクタを下げる。一実施形態において、第2のベースプレート106を収納することは、ラジエータ108、110のビューファクタを0%に下げる。
【0085】
第1の側128には、第2の温度制御コンポーネント112が装着されている。この装着は、第2の温度制御コンポーネント112が第2のベースプレート106に熱的に結合されるような装着である。第2の温度制御コンポーネント112は、単一の温度制御コンポーネントまたは温度制御コンポーネントのセットであり得る。第2の温度制御コンポーネント112は、1つまたは複数の電子デバイスを含み得る。
【0086】
特に、第2の温度制御コンポーネント112は、動作時に一定の高さまたは位置に配設される必要があり、したがって第2のベースプレート106(たとえば、マスト)上に展開されるデバイスであり得る。有利には、第2のベースプレート106が開放構成102にあるときに、一定の高さまたは位置が達成される。第2の温度制御コンポーネント112の例は、限定はしないが、カメラ、アンテナ、イメージングペイロード、センサ、または同様のものを含む。そのようなコンポーネントは、温度制御、および適切な視野もしくは状況認識、またはパンおよびチルトなどの機能を提供するのに十分な高さの動作位置の両方を必要とする場合がある。したがって、熱ラジエータシャッタ100は、動作時に高度を必要とする温度制御コンポーネントを利用するアプリケーションに特に適している。
【0087】
第2の側130は、第2の放射表面115を介して、第2の温度制御コンポーネント112によって発生する熱111を廃棄するための第2のラジエータ110を含む。開放構成102における第2のラジエータ110は、熱111を廃棄するための第2の放射表面115を介する深宇宙へのビューファクタを有する。
【0088】
第1のラジエータ108および第2のラジエータ110の動作は、熱111を廃棄することに関して説明されてきたが、当業者であれば、第1のラジエータ108および第2のラジエータ110の各々または両方が、熱111を廃棄し、放散し、および/または放射していると考えられることを理解するであろう。
【0089】
第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は、類似もしくは同一であってもなくてもよいことはさらに理解されるであろう。
【0090】
第1および第2のラジエータ108、110は、展開された(すなわち、開放状態の)ときにラジエータとして働き、閉じられた(すなわち、閉鎖状態の)ときに他方のラジエータに対するビューブロッカーとして働くことを可能にするサイズおよび幾何学的形状を有し得る。
【0091】
第1のベースプレート104および第2のベースプレート106は、断熱材116で覆われている。断熱材116は、第1のベースプレート104および第2のベースプレート106の外部表面または露出表面を覆って保護する多層断熱材であってもよい。一般的に言えば、断熱材116は、温度制御コンポーネントおよび他の温度に敏感なコンポーネントが外部環境に直接露出されないように施される。第1の側132がボックスの天板の内部側である場合など、ベースプレートのすべての表面が外部表面でない(すなわち、外部環境に露出されていない)場合、断熱材は、外部に面しているそれらの表面にのみ施され得る。
【0092】
後続の図は、後続の図をわかりやすくするために、断熱材116を描かずに熱ラジエータシャッタ100の実施形態を描いているものとしてよい。熱ラジエータシャッタ100の、描かれた実施形態に断熱材116が存在することは、当業者には理解されるであろう。
【0093】
いくつかの実施形態において、第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は、それぞれのベースプレート(たとえば、それぞれのベースプレート104または106に装着されたパネル)とは別個の材料片であってもよい。このようなラジエータ108または110は、本明細書では「専用ラジエータ」とも称され得る。他の実施形態では、ラジエータ108、110は、断熱材116によって覆われていないか、または断熱材116が取り除かれている、それぞれのベースプレート104、106のセクションであってもよい。そのようなラジエータ108または110は、本明細書では「カットアウト」ラジエータとも称される。
【0094】
ラジエータ108、110は、それぞれの、第1のベースプレート104の第2の側134および第2のベースプレート106の第2の側130に装着されるか、またはそこに設けられる。ラジエータ108、110は、内部で発生した廃熱111を環境内に放出する目的を果たす。
【0095】
ラジエータ108、110は、吸収された太陽束を最小化する一方で、ラジエータ108、110の表面の熱廃棄能力を最大化するために、低吸収率および高放射率のコーティングを使用し得る。前述の熱光学的特性とは別に、ラジエータ108、110の他の利点は、真空、帯電、高放射線および耐紫外線性などの月面環境に対するコーティングの適合性を含む。
【0096】
一実施形態において、第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は両方とも専用ラジエータである、すなわち、各ラジエータ108、110は、それぞれのベースプレート104、106とは別の材料片、たとえば、そこに装着されたパネルを含む。別の実施形態において、第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は両方とも、カットアウトラジエータ、すなわち、断熱材116によって覆われていないか、または断熱材116が取り除かれている、それぞれのベースプレート104、106のセクションである。一実施形態において、第1のラジエータ108は専用ラジエータであり、第2のラジエータ110はカットアウトラジエータである。一実施形態において、第1のラジエータ108はカットアウトラジエータであり、第2のラジエータ110は専用ラジエータであるか、またはその逆である。
【0097】
第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は、閉鎖構成122において熱的に結合し、閉ループを形成するように同じサイズのものであり得る。
【0098】
第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は異なるサイズであるが、閉鎖構成122において熱的に結合し、閉ループを形成するようになおも構成され得る。
【0099】
第1のラジエータ108および第2のラジエータ110は、それぞれのベースプレート104、106上に、第1および第2のベースプレート104、106が閉鎖状態にあるときに第1および第2のラジエータ108、110が互いに整列するように位置決めされる。
【0100】
熱ラジエータシャッタ100は、第2のベースプレート106を作動させて開放構成102から閉鎖構成122に移動させるためのアクチュエータ114をさらに含む。アクチュエータ114は、第2のベースプレート106に接続されている。アクチュエータ114は、第1のベースプレート104または熱ラジエータシャッタ100が実装されるシステムのコンポーネントである何らかの他のプラットフォームに接続され得る。アクチュエータ114は、アーチ形経路117に沿って第2のベースプレート106を第1のベースプレート104から離れる方向、および第1のベースプレート104に向けて、移動させるための任意の適切なメカニズムを含み得る。アクチュエータ114は、熱ラジエータシャッタ100を開閉するのに適したマストアクチュエータであり得る。マストアクチュエータは、電気機械式モータおよびギアボックスアクチュエータを含み得る。
【0101】
別の実施形態では、第1および第2のベースプレート104、106は、マルチブームロボットアームの第1および第2のブームにそれぞれ装着され得る。ブームの移動は、第1および第2のベースプレート104が開放構成および閉鎖構成を占有することを引き起こし、それによってそれぞれのラジエータのビューファクタを制御し得る。一例において、ロボットアームが収納されているときに、第1および第2のベースプレート104、106は、宇宙空間に対する低減されたビューファクタで収納される。ロボットアームが動作しているときに、ラジエータ108、110の放射表面は、環境への廃熱を廃棄する。そのような実施形態では、熱ラジエータシャッタは、それ自身の機械的アクチュエータを有し得るかまたは有し得ない。熱ラジエータシャッタがそれ自身の機械的アクチュエータを有しない場合、熱ラジエータシャッタはアームアクチュエータを利用して、ベースプレートが装着されているブームの1つまたは複数をアームアクチュエータが移動させるときに、ベースプレート104、106を開放状態と閉鎖状態との間で間接的に移動させる。
【0102】
熱ラジエータシャッタ100は、アクチュエータ制御システムまたはアクチュエータコントローラ(図示せず)をさらに含み得る。アクチュエータコントローラは、アクチュエータ114の動作を自動的に制御する。アクチュエータコントローラは、アクチュエータの動作を制御する信号を生成し、アクチュエータ114に送信する。
【0103】
アクチュエータコントローラは、閉鎖状態122から開放状態102への移動に対応する第1の条件を検出するためのセンサを含むか、またはセンサから信号を受信し得、制御信号をアクチュエータ114に送信して、アクチュエータ114が第2のベースプレート106を閉鎖状態122から開放状態102へ作動することを引き起こし得る。
【0104】
アクチュエータコントローラは、開放状態102から閉鎖状態122への移動に対応する第2の条件を検出するためのセンサを含むか、またはセンサから信号を受信し得、センサ信号をアクチュエータ114に送信して、アクチュエータ114が第2のベースプレート106を開放状態102から閉鎖状態122へ作動することを引き起こし得る。
【0105】
開放状態102から閉鎖状態122への移動、または閉鎖状態122から開放状態102への移動は、センサデータが所定の閾値を満たしたという決定に基づき得る。センサデータは、熱ラジエータシャッタ100の周囲または外部環境の環境条件に関係し得る。たとえば、センサデータは、温度センサによって収集された温度データ、または太陽光センサによって収集された太陽光データであり得る。アクチュエータコントローラによって分析されたセンサデータを収集し提供する1つまたは複数のセンサは、熱ラジエータシャッタ100の一コンポーネントであってもよい。1つまたは複数のセンサは、たとえば、既存のシステム(たとえば、ロボットアーム、ローバー、他のロボットシステム)の一部として、熱ラジエータシャッタ100の外部にあってもよく、アクチュエータコントローラは、既存のシステムが収集するセンサデータを受信して処理するように構成され得る。アクチュエータコントローラは、センサデータを受信し、受信されたセンサデータを所定の閾値(たとえば、アクチュエータコントローラのデータ記憶デバイスもしくはメモリに記憶されているか、またはアクチュエータコントローラにアクセス可能な)と比較して、閾値が満たされているかどうかを決定し得る。閾値が満たされた場合、アクチュエータコントローラは、開放状態から閉鎖状態またはその逆に移動させる制御信号を生成してアクチュエータ114に送信し得る。特定の一実施形態において、センサデータは、発電時にソーラーパネルシステムによって平行して収集された太陽光強度データを含む。
【0106】
一実施形態において、開放構成102と閉鎖構成122との間を移動させる、コントローラによる決定は、時計または他の計時デバイスに基づき行われる。一実施形態において、人間または他の外部オペレータが、たとえば、熱ラジエータシャッタ100(および熱ラジエータシャッタ100が実装されているシステム)から離れた場所で、コマンドを入力する、ボタンを押す、またはコンピュータ周辺機器をクリックすることによって、構成を開放構成102から閉鎖構成122に(またはその逆に)変更する信号を制御システムに送信する。入力の受信に応答して、制御システムは制御信号を生成し、制御信号に基づいて第2のベースプレート106を作動するアクチュエータ114に制御信号を送信する。
【0107】
一実施形態において、アクチュエータ114は、外部のアクター、たとえば、ロボットデバイス、人間のオペレータ、または同様のものによって操作されるか、またはそれによって制御される。
【0108】
アクチュエータ114は、第2のベースプレート106を移動させる人間であってもよい。アクチュエータ114は、第2のベースプレート106を移動させるためのロボットコンポーネント(たとえば、ロボットアーム)であってもよい。アクチュエータ114は、自律的であってもよい。
【0109】
図1Bに示されている閉鎖状態122では、外部環境に対する各ラジエータ108、110のビューファクタは完全にブロックされる。
【0110】
さらに、第1のベースプレート104と第2のベースプレート106の各々は、それぞれのラジエータ108、110と共に、独立したベースプレート-ラジエータシステムと考えられ得る。2つのラジエータ108、110が接合されると、そのような独立したベースプレートラジエータシステムは閉じられ、単一の熱閉鎖システムを形成する。
【0111】
さらに、
図1Bに示されているように、ベースプレート104、106の各々の質量が統合されるので、各ベースプレート104、106がそれぞれ他のベースプレート106、104と熱を共有するので閉鎖状態102の結果として得られるシステム100は、より熱効率が高くなる。
【0112】
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、デュアルベースプレートシャッタ200である。デュアルベースプレートシャッタ200は、熱制御デバイスであり、熱制御システムの一部として(たとえば、1つまたは複数の他のコンポーネントと共に)使用され得る。デュアルベースプレートシャッタ200は、
図2Aには開放構成202、
図2Bには閉鎖構成222で示されている。
【0113】
図2Aおよび
図2Bを通して、類似の参照は、
図1Aおよび
図1Bに関して類似のコンポーネントを示す(たとえば、114は214に対応するなど)。
図1A~
図1Bの対応するコンポーネントと共に
図2A~
図2Bに存在するいくつかのコンポーネントは、詳細に説明されないことがある。そのようなコンポーネントは、
図1A~
図1Bの対応するコンポーネントと同じまたは類似の機能を実行すると理解される。
【0114】
熱ラジエータシャッタ200において、第1のベースプレートは、底部パネル223と4つの側部パネルとをさらに含むハウジング233の頂部パネル204として実装される。4つの側部パネルは、第1の側部パネル236a、第2の側部パネル236b、第3の側部パネル236c、および
図2Aの断面の性質上見えない第4の側部パネルを含む。側部パネルは、まとめて側部パネル236、および一般的に側部パネル236と称される。まとめて、パネル204、223、および236は、ハウジング233の内部コンパートメント240を囲む。ハウジング233は、ウォームエレクトロニクスボックス(「WEB」)であってもよい。
【0115】
ハウジング233は、パネル204、223、236の外側表面を覆うように断熱層を施すことによって断熱され得る。
【0116】
ハウジング233は、
図1A~
図1Bに関して説明されている熱的機能に加えて、内部コンパートメント240内に配設されたコンポーネントに構造的および環境的保護機能を提供し得る。ハウジング233はまた、車輪または他のモビリティサブシステム、電力サブシステム用のソーラーパネル、およびマスト(たとえば、ベースプレート206)などの、外部コンポーネントを装着するための構造的支持体となり得る。
【0117】
熱ラジエータシャッタ200は、第1のベースプレート204の第1の側232に装着された第3の温度制御コンポーネント248と、第3の温度制御コンポーネント248と第1のベースプレート204の第1の側232との間に配設されたヒートスイッチ246とをさらに含み、ヒートスイッチ246は第3の温度制御コンポーネント248と第1のベースプレート204との間の熱結合または伝導性を調節するかまたは制御する。ヒートスイッチ246は、第1のベースプレート204への熱の流れを制御する。ヒートスイッチ246を介して第3の温度制御コンポーネント248と第1のベースプレート204との間の熱伝導を調節することによって、ハウジング233の内側に第2の独立した熱ゾーンが形成される。
【0118】
第3の温度制御コンポーネント248は、温度制御コンポーネントのセットであってもよい。
【0119】
第3の温度制御コンポーネント248は、それ自身の断熱層で囲まれるかまたは覆われ得る。
図2A、
図2Bでは、第3の温度制御コンポーネント248に特有の断熱層は、さらなる断熱層216として描かれている。
【0120】
第3の温度制御コンポーネント248は、(第1のベースプレート204にも装着されている)第1の温度制御コンポーネント205とは異なる温度で動作し、ならびに/または、第1の温度制御コンポーネント205とは異なる最高および/もしくは最低存続温度(すなわち、それぞれの温度制御コンポーネントが一時的または永久的に損傷するかまたは機能しなくなり得る温度を超える)を有し得る、デバイスであってよい。一実施形態において、第3の温度制御コンポーネント248は電池である。
【0121】
一実施形態において、ヒートスイッチはアクティブデバイスである。
【0122】
一実施形態において、ヒートスイッチ246は受動的である。一実施形態において、パッシブヒートスイッチは、相変化物質(PCM)を含む。PCMは、第1の条件下(たとえば、月の昼間、設定点に関して熱がより多くなる期間中)で第3の温度制御コンポーネント248を第1のベースプレート204に熱的に結合し、第2の条件下(たとえば、月の夜間、設定点に関して熱がより少なくなる期間中)で第3の温度制御コンポーネント248を第1のベースプレート204から熱的に減結合することによって、温度依存の熱伝導を提供し、別々の温度設定点を有する2つの熱ゾーンを内部コンパートメント240内に形成し得る。そのような熱伝導は、PCMのより暖かい側の温度に応じて達成される。
【0123】
したがって、熱がより少ない期間中、特に第1のベースプレート204によって一般的に達成される熱が第3の温度制御コンポーネント248の最低許容温度より低いときに、PCMは固体のままであり、第1のベースプレート204と第3の温度制御コンポーネントとの間、またはその逆の間で熱を伝達しない。第1のベースプレート204の温度が最低許容温度より高い場合、PCMは、熱を吸収して第1の相から第2の相に(たとえば、固相から液相に)変化し、第3の温度制御コンポーネント248を第1のベースプレート204に熱的に結合する。第1のベースプレート204の温度が最小許容温度より低い場合に、PCMは、第2の相から第1の相に(たとえば、液相から固相に)変化し、第3の温度制御コンポーネントを第1のベースプレート204から熱的に減結合する。
【0124】
一実施形態において、PCMはパラフィンベースである。温度設定点は、適切な相変化点(たとえば、適切な融点)を有するパラフィン蝋を選択することによって調整可能である。
【0125】
有利には、パラフィンヒートスイッチは、他の熱制御ハードウェアと比較して信頼性が高く、完全に受動的であり、複雑さが比較的低い。ON(>1W/K)およびOFF(<0.015W/K)コンダクタンスなどの、熱性能要件は、第3の温度制御コンポーネント248の放散および月の夜間存続中にWEBの残り部分から断熱する必要性に基づき確立される。たとえば、第3の温度制御コンポーネント248が電池である実施形態では、電池は、第1の温度制御コンポーネント205とは異なる放散特性を有し得る。したがって、月の夜間存続期間中に、電池がWEBの残り部分から、および特に第1の温度制御コンポーネント205から熱的に隔離されていることが有利な場合がある。
【0126】
一実施形態において、ヒートスイッチ246は可変コンダクタンスヒートパイプ(VCHP)である。VCHPは、蒸発器と凝縮器とを備える閉ループ二相液体流サイクルを使用し、電力を使用することなく媒体を比較的大量の熱のもとへ輸送し得る。VCHPは、典型的には凝縮器の端部に接続された非凝縮性気体(NCG)で満たされたリザーバを含む。非凝縮性気体は、蒸発器の温度に基づき凝縮器の動作領域を制御する。したがって、VCHPの有効熱伝導率は温度と共に変化する。それに加えて、非凝縮性気体は、月の夜間の間作動流体の凝固を抑制し、VCHPが作動流体の凝固点より低い温度で動作することを可能にする。温度が下がると、VCHP内の蒸気圧が低下し、NCGが膨張して蒸気-ガス界面の圧力平衡を維持し、凝縮器の有効長を短くする。一実施形態において、VCHPは、作動流体が温度限界に達したときに、凝縮器セクション全体がNCGによって占有されるように設計され得る。したがって、作動流体は、パイプの断熱セクションおよび蒸発器セクションに制限される。
【0127】
熱ラジエータシャッタ200は、第1の温度制御コンポーネント205と第1のベースプレート204の第1の側232との間に配設された導電性サーマルフィラー219をさらに含む。
【0128】
熱ラジエータシャッタ200の動作中、ハウジング233内の2つの独立した熱ゾーンは、第3の温度制御コンポーネント248と第1の温度制御コンポーネント205を許容温度範囲内に維持するために設けられる。電池248はより狭い許容温度範囲を有するので、電池248に関する独立した熱ゾーンは、第1の温度制御コンポーネント205に関する熱ゾーンと異なり別個である。ヒートスイッチ246は、電池248と第1のベースプレート204との間の熱結合または熱伝導率を調節するかまたは制御するので、電池248に関する独立した熱ゾーンは、月面の温度が変化し、変動するとき、および第1のベースプレート204の温度が変化し、変動するときであっても維持される。
【0129】
ヒートスイッチ246がパラフィン蝋などのPCMである実施形態では、電池248および第1の温度制御コンポーネント205は、第1のベースプレート204が、たとえば月の昼間に、より高い温度にあるときに、類似の温度を有し得る。ヒートスイッチ246がパラフィン蝋などのPCMである実施形態では、PCMの熱伝導率は、温度が下がるにつれて低下し、電池248をハウジング233の残り部分および、第1の温度制御コンポーネント205などの、その中のコンポーネントから熱的に隔離する。電池248はより低い温度において熱的に隔離されるが、それは、より低い温度では、ヒートスイッチ246内のPCMが熱伝導率の、より低い固体となり、熱が第1のベースプレート204を通して電池248から失われることがないからである。より高い温度では、PCMは融解し、熱伝導率がより高くなり、熱は第1のベースプレート204から(たとえば、月の昼間に)ヒートスイッチ246内のPCMを通って電池に流れる。実施形態において、電池248は、放射断熱のためにさらなる断熱層216でさらに覆われている。
【0130】
熱ラジエータシャッタ200は、月の夜間にそれぞれの最低許容温度を維持するために第1、第2、または第3のそれぞれの温度制御コンポーネント205、212、248上またはその近くに装着された少なくとも1つのヒータ(図示せず)をさらに含み得る。少なくとも1つのヒータは、ベースプレート204、206全体に熱を供給し得る。少なくとも1つのヒータは、抵抗ヒータであってもよい。少なくとも1つのヒータは、内部コンパートメント240に装着され得る。
【0131】
熱ラジエータシャッタ200は、少なくとも1つの温度センサ(図示せず)をさらに含み得る。少なくとも1つの温度センサは、サーミスタであってもよい。温度センサによって登録された温度は、ヒータ制御ユニット(たとえば、内部コンパートメント240に配設されている)によって読み出され得る。ヒータ制御ユニットは、熱センサから読み出された温度に基づき少なくとも1つのヒータの動作を制御し得る(たとえば、出力レベルの変更、オン/オフ)。いくつかの場合において、2つ以上のヒータ制御ユニットが使用され得る。第3の温度制御コンポーネント248が電池である場合、ヒータ制御ユニットは電池管理システムを含み得る。
【0132】
断熱材216は、
図2Aおよび
図2Bの全体については図示されていないが、一実施形態では、断熱材216は、熱ラジエータシャッタ200のすべての外部表面上に配設されている。断熱材216が存在するかどうかにかかわらず、熱ラジエータシャッタは、その間に可能な限り100%に近いビューファクタを作成することによってラジエータ表面211、213を短絡するように動作する。
【0133】
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照すると、そこに示されているのは、一実施形態によるマルチ(トライ)ベースプレート熱ラジエータシャッタ300の概略側面図である。マルチベースプレート熱ラジエータシャッタ300は、マルチラジエータシャッタとも称され得る。
【0134】
マルチベースプレート熱ラジエータシャッタ300は、熱制御デバイスであり、熱制御システムの一部として(たとえば、1つまたは複数の他のコンポーネントと共に)使用され得る。マルチベースプレート熱ラジエータシャッタ300は、
図3Aでは開放構成302、および
図3Bでは閉鎖構成322で示されている。
【0135】
図3Aおよび
図3Bを通して、類似の参照は、
図1Aおよび
図1Bに関して類似のコンポーネントを示す(たとえば、114は314に対応するなど)。
図1A~
図1Bまたは
図2A~
図2Bの対応するコンポーネントと共に
図3A~
図3B内に存在するいくつかのコンポーネントは、詳細に説明されないことがある。そのようなコンポーネントは、それぞれ
図1A~
図1Bまたは
図2A~
図2Bの対応するコンポーネントと同じまたは類似の機能を実行すると理解される。
【0136】
熱ラジエータシャッタ300は、それぞれ第1および第2のベースプレート304、306aに加えて、第3のベースプレート306bを含む。第3のベースプレート306bは、第2のベースプレート306aと構造的および/または機能的に同等であり得る。第2および第3のベースプレート306a、306bは、展開位置(開位置)と収納位置(閉位置)との間で移動可能である。
【0137】
第3のベースプレート306bは、第1のベースプレート304および第3のベースプレート306bに接続されたアクチュエータ314bの動作によって第1のベースプレート304に向かう、また第1のベースプレート304から離れる方向のアーチ形経路317b内で移動する。アクチュエータは、アクチュエータ制御システムまたはアクチュエータコントローラ320bによって制御される。
【0138】
アクチュエータコントローラ320aおよびアクチュエータコントローラ320bは、同じアクチュエータコントローラであってもよい。アクチュエータ314a、314bは、両方とも、単一のオペレータによって、単一のコントローラからなど、同時に制御され得る。
【0139】
第1のベースプレート304は、第2の側334に配設された第3のラジエータ370をさらに含む。開放構成302の第3のラジエータ370は、第3の放射表面317を介して熱311を廃棄するための深宇宙へのビューファクタを有する。この意味で、第3のラジエータ370は、第1のラジエータ308と構造的および機能的に同等であり得る。
【0140】
熱ラジエータシャッタ300は、熱311を放射するかまたは廃棄するために第3のベースプレート306bの第2の側330bに配設された第4のラジエータ372をさらに含む。熱ラジエータシャッタ300が開放構成302にあり、第3のベースプレート306bが展開されているときに、第4のラジエータ372は、第4の放射表面321を介して熱311を廃棄するための深宇宙に対するビューファクタを有する。第4のラジエータ372は、第1のラジエータ308、第2のラジエータ310、または第3のラジエータ370のいずれかと構造的におよび/または機能的に同等であり得る。
【0141】
第3のラジエータ370および第4のラジエータ372は、専用のラジエータまたは別個のコンポーネントであり得る。第3および第4のラジエータ370、372は、断熱材(図示せず)によって覆われていないか、または断熱材が取り除かれているそれぞれの第1および第3のベースプレート304、306bのセクションであってもよい。
【0142】
第3のラジエータ370および第4のラジエータ372は、
図3Bに示されている閉鎖構成322において熱的に結合して閉ループを形成するように同じまたは実質的に類似するサイズのものである。同様に、第1のラジエータ308および第2のラジエータ310は、閉鎖構成322において熱的に結合し、閉ループを形成するように同じまたは実質的に類似するサイズのものである。しかしながら、それぞれの第3および第4のラジエータ370、372ならびに第1および第2のラジエータ308、310の各々は、異なるサイズであるが、閉鎖構成322において熱的に結合し、閉ループを形成するようになおも構成され得ることは理解されるであろう。
【0143】
第3のラジエータ370および第4のラジエータ372は、第1および第3のベースプレート304、306bが閉鎖状態322にあるときに、第3および第4のラジエータ370、372が互いに整列するように、それぞれの第1および第3のベースプレート304、306b上に配設される。第1のラジエータ308および第2のラジエータ310は、第1および第2のベースプレート304、306aが閉鎖状態322にあるときに、第1および第2のラジエータ308、310が互いに整列するように、それぞれの第1および第2のベースプレート304、306a上に配設される。
【0144】
熱ラジエータシャッタ300およびそのアクチュエータ314a、314bは、第2および第3のベースプレート306a、306bが、互いに独立して、または互いに同期して、それぞれのアーチ形経路317a、317bに沿って移動可能であるように構成され得る。
【0145】
たとえば、熱ラジエータシャッタ300の動作中、第2のベースプレート306aは、第3のベースプレート306bがアーチ形経路317bに沿って占有するのとは異なる、アーチ形経路317aに沿った位置にあり得る。さらなる例として、第2のベースプレート306aは、第3のベースプレート306bが同時に閉鎖構成322にある間に、開放構成302にあり得るか、またその逆もあり得る。
【0146】
一実施形態において、アクチュエータコントローラ320は、月の夜間を示す閉鎖条件を識別し、閉鎖構成322が達成されるまでそれぞれのアーチ形経路317a、317bに沿ってそれぞれの第2および第3のベースプレート306a、306bを作動させるようにそれぞれのアクチュエータ314a、314bを制御することによって第2のベースプレート306aおよび第3のベースプレート306bを閉じる。アクチュエータコントローラ320は、月の昼間を示す開放条件をさらに識別し、第2のベースプレート306aおよび第3のベースプレート306bを開く、すなわち、
図3Aに示されている開放構成302が達成されるまでそれぞれのアーチ形経路317a、317bに沿ってそれぞれの第2および第3のベースプレート306a、306bを作動させるようにそれぞれのアクチュエータ314a、314bを制御する。月の昼間および夜間がそれぞれ閉鎖条件および開放条件として説明されているが、前述の内容は単なる一例であり、他の実施態様では、熱ラジエータシャッタ300の開放条件および閉鎖条件は説明されている以外のものであってもよい。
【0147】
一実施形態において、アクチュエータコントローラ320aは、第1の閉鎖条件を識別し、第2のベースプレート306aを閉じ、一方、アクチュエータコントローラ320bは、第2の閉鎖条件を識別し、第3のベースプレート306bを閉じる。同様に、アクチュエータコントローラ320aは、第1の開放条件を識別して第2のベースプレート306aを開き、一方、アクチュエータコントローラ320bは、第2の開放条件を識別して第3のベースプレート306bを開く。したがって、アクチュエータコントローラ320a、320bは、それぞれの第2および第3のベースプレート306a、306bを互いに独立して閉じ、開く。
【0148】
アクチュエータコントローラ320による開閉条件の識別は、受信された信号またはデータに基づく決定であり得る。たとえば、アクチュエータ320は、受信されたセンサデータ、またはコントローラ320と通信している1つまたは複数のセンサによって収集された信号に基づき開放または閉鎖条件が存在するかどうかを決定し得る。別の例では、アクチュエータコントローラ320は、クロックまたは他のタイミングメカニズムに基づき開放または閉鎖条件を決定し得る。さらに別の例では、アクチュエータコントローラ320は、第2のベースプレート306aおよび/または第3のベースプレート306bの状態を(開から閉、閉から開に)変更するようにコントローラ320に指示する入力信号を(たとえば、リモートまたはローカルの人間ユーザまたはロボットから)提供され得る。そのような場合、入力信号は、開放/閉鎖条件とみなされ得る。
【0149】
熱ラジエータシャッタ300を開閉する信号は、ローバーの動作のすべてまたは一部を指令する地上コマンドから受信され得る。
【0150】
一実施形態において、熱ラジエータシャッタ300は、太陽が検出されたとき(すなわち、月の昼間が始まったとき)に開く。具体的には、熱ラジエータシャッタ300は太陽を検出し、これはソーラーパネル(図示せず)の動作によってローバーの電池(図示せず)を充電する。第1の温度制御コンポーネント305が所定の動作温度(たとえば、存続のための最低温度、動作のための最低温度、存続のための最高温度、動作のための最高温度、存続のための好ましい温度、動作のための好ましい温度)まで加熱されたときに、熱ラジエータシャッタ300は、
図3Bに示されているような閉鎖構成322から、
図3Aに示されているような開放構成302に移動する。
【0151】
閉鎖構成322から開放構成302に移動させる決定は、たとえば、搭載された論理システム(図示せず)を通じて、ローバー上で完全にローカルで行われ得る。この決定は、たとえば、リモートコマンドを通じて、たとえば、地上コマンドから、完全にリモートで行われてもよい。決定は、ローカル処理とリモート信号との組合せを通じて行われてもよく、たとえば、熱ラジエータシャッタ300が太陽を検出し、第1の温度制御コンポーネントの現在の温度を決定し、閉鎖構成322から開放構成302に移動させる許可を求める要求と共に現在の温度を地上コマンドに伝送し、地上コマンドは要求された許可を認めるか拒否するかのいずれかの信号で答える。
【0152】
ローカル処理とリモート信号との任意の組合せが、閉鎖構成322から開放構成302に移動させるための熱ラジエータシャッタ300の説明されている動作に含まれることは、当業者には理解されるであろうが、ただし、そのような組合せは本開示の前述の目的の実質的にすべてを大幅に達成することを条件とする。
【0153】
次に、
図4Aおよび
図4Bを参照すると、そこに示されているのは、一実施形態によるルナローバー熱制御システム400の概略側面図である。
【0154】
ルナローバー熱制御システム400は、ルナローバーデュアルベースプレートシャッタである。熱制御システム400は、ルナローバーでの使用のために構成されている。
【0155】
熱制御システム400は、
図4Aでは開放構成402で、
図4Bでは閉鎖構成422で示されている。
【0156】
【0157】
熱制御システム400は、ウォームエレクトロニクスボックス(「WEB」)404と、展開可能収納可能マスト406と、マスト406を展開位置(
図4Aに示されている)と収納位置(
図4Bに示されている)との間で移動させるためのアクチュエータ414とを備える。
【0158】
図4Aのマスト406の展開位置は、熱制御システム400の開放構成402に対応する。
図4Bのマスト406の収納位置は、熱制御システム400の閉鎖構成422に対応する。
【0159】
WEB404は、頂部パネル407、底部パネル423、および4つの側部パネル(
図4A~
図4Bでは断面図であることから3つの側部パネル436a~436cのみが見える)を含む。
【0160】
パネル407、423、436a、436b、436c、および436d(図示せず)は一緒になってWEB404の内部コンパートメント440を囲んでいる。
【0161】
WEB404の6つのパネルの各々は、アルミニウムハニカムパネルである。他の実施形態では、他の適切なパネル材料が使用されてもよい。WEB側部パネル436a~436d、WEB底部パネル423、およびWEB頂部パネル407は、接着された芋継ぎを使用して組み立てられる。側部パネル436a~436d、底部パネル423、および頂部パネル407は、頂部パネル407が取り外し可能で、側部パネル436a~436dの上にボルトで固定され得るように挿入部を有する。
【0162】
熱制御システム400において、WEB404の頂部パネル407は、熱ラジエータシャッタ400の第1の(または固定)ベースプレートとして機能する。
【0163】
頂部パネル407は、WEB404の主装着プレートとして働き得る。底部パネル423は、中性子スペクトロメータ(NSS)センサ452の装着プレート454として働き得る。
【0164】
システム400は、WEB404の外面(すなわち、パネル407、423、436a~436dの外面)に施された多層断熱材(「MLI」)416を含む。
【0165】
MLI416は、WEB404の外側を覆っている。頂部パネル407の一部は、MLI416で覆われておらず(たとえば、切り欠き)、これはWEBラジエータ408として働く(以下で説明されるように)。MLI416は、アビオニクスユニット405a、405b(アビオニクスユニット405と総称され、一般的にアビオニクスユニット405と称される)および電池448を太陽熱および深宇宙冷却から隔離する。MLI416は、環境フラックスおよび放射損失からの保護を提供する。
【0166】
WEB404は、電池448、アビオニクスユニット405、およびNSSセンサ452を含む、内部コンパートメント440内でローバーによって使用される様々な電子コンポーネントを収納する。電池448およびアビオニクスユニット405の各々は、WEB404の頂部パネル407の下側444に装着される。
【0167】
導電性サーマルフィラー419a、419bが、アビオニクスユニット405a、405bそれぞれと、頂部パネル407の下側444との間に配設される。
【0168】
本明細書において説明されているようなヒートスイッチ446が、電池448と頂部パネル407の下側444との間に配設される。ヒートスイッチ446は、アビオニクスユニット405に対応する熱ゾーンから独立した電池448に対応するWEB404の内側の熱ゾーンを形成するように機能する。
【0169】
ヒートスイッチ446は、電池448とWEBラジエータ408との間で使用されるが、それは、電池448の最低許容温度がWEB404の残り部分と比較して異なるからである。
【0170】
ヒートスイッチ446は、温度依存性熱伝導率を提供し、温度がより高い月の昼間での動作のために電池448をラジエータ408に熱的に結合し、温度がより低い月の夜間にこれら2つを減結合して別個のヒータ設定点を有する2つの熱ゾーンを形成する。熱伝導率は、ヒートスイッチ446の暖かい側に基づく。ヒートスイッチ446は、活性化のために相変化材料を使用してもよい。
【0171】
NSSセンサ452は、WEB404の底部パネル423に装着される。WEB底部パネル423は、月面物質中の宇宙線発生中性子を測定するためのNSS452を受けるための装着プレート454として理解され得る。さらなる、他のコンポーネント、たとえば他の電子機器または科学計測機器もしくは装置がWEB404内に装着され得ることは理解されるであろう。
【0172】
WEB404は、WEBラジエータ408を含む。WEBラジエータ408は、頂部パネル407の頂部(外部に面した)表面に配設される。WEBラジエータ408は、+Z方向に面する。この実施形態では、WEBラジエータ408は、多層断熱材416で覆われていない頂部パネル407の一部である。WEBラジエータ408は、WEB404の上に配設され、第1のラジエータ408の深宇宙への視界を最大化し、潜在的な月塵堆積を最小化する。WEBラジエータ408は、内部で発生した廃熱(たとえば、電池448およびアビオニクスコンポーネント405による)を環境内に放出する。
【0173】
マスト406は、マストブーム411を含む。マストブーム411は、第2の(移動可能)ベースプレートとして機能する。マストブーム411は、アルミニウムパネルであってもよい。マストブーム411は、パンおよびチルトを行うように構成され得る。
【0174】
システム400は、マストブーム411に装着された複数の電子機器コンポーネント412a、412b、412c(電子機器412と総称される)を含む。電子機器412は、マストブーム411の第1の側428に装着される。
【0175】
電子機器412は、たとえば、カメラ、アンテナ、照明要素、センサ、または同様のもののうちのいずれか1つもしくは複数を含み得る。一般的に、高い位置および/もしくはパン/チルトする能力を必要とするまたはその恩恵を受け得る電子機器コンポーネントは、マストブーム406上に配置され得る。一実施形態において、電子機器412は、センサ&誘導航法制御システム(GNC)を含む。GNCは、マストパン-チルトユニット装着ステレオ/ドライブカメラ、状況認識カメラ、ならびにナビゲーションソフトウェアおよびファームウェアを含むGNCコンピュータに接続された慣性計測ユニットを含むセンサ一式を含む。
【0176】
システム400は、マストブーム411上に配設されたマストラジエータ410をさらに含む。
【0177】
マストラジエータ410は、マストブーム411の第2の表面430(第1の表面428に対向する)に配設される。
【0178】
マストラジエータ410は、マストブーム411の第2の表面430に装着される別個の材料片である。特に、マストラジエータ410は、アルミニウムハニカムパネルであってもよい。マストラジエータ410は、マスト406上に展開される。マストラジエータ410は、マストブーム411の高い位置を占有し得る(展開構成にあるとき)。この位置は、塵堆積を最小限度に抑え得る。マストラジエータ410は、内部で発生した廃熱(たとえば、電子機器412による)を環境内に放出する。
【0179】
WEBラジエータおよびマストラジエータ408、410は、吸収された太陽束を最小化する一方で、ラジエータ408、410の表面の熱廃棄能力を最大化するために、低吸収率および高放射率のコーティングを使用し得る。熱光学的特性とは別に、他の鍵となる駆動要件は、真空、帯電、高放射線、および耐紫外線性などの、コーティングの月面環境との適合性を含み得る。
【0180】
一実施形態において、コーティングは、白色塗料である。
【0181】
マストラジエータ410は、ボルト締め接合部を介して放散コンポーネント(たとえば、電子機器412)に熱的に結合され得る。一実施形態では、さらに結合力を高めるためにサーマルストラップが使用され得る。マスト406の放散する非ラジエータコンポーネント(たとえば、電子機器412)は、放射損失を最小にするためにMLI416で完全に覆われている。開口部は断熱材で覆われていなくてもよい。たとえば、放散する非ラジエータコンポーネント(たとえば、電子機器412)は、受動的または能動的に作動され月の夜間の放射損失も最小限に抑えるように構成されたシャッタを含み得る。
【0182】
マスト406は、多層断熱材416を含む。MLI416は、マストブーム411および電子機器412の外側に面する表面を含む、マスト406の外側を覆っている。MLI416は、マストラジエータ410を覆わない。
【0183】
システム400が動作しているときに、マスト406は月の夜間にWEBラジエータおよびマストラジエータ408、410が向かい合った状態で収納し、深宇宙に対するビューファクタを排除する。
【0184】
アクチュエータ414は、MLI416によって完全に覆われ、月の夜間の放射損失を最小にし得る。アクチュエータ414は、非常に低いデューティサイクルを有し得、有利には、一度に最長2分間しか使用され得ない。したがって、閉鎖構成422にあるシステム400の大きな熱質量に起因して、システム400は、有利には過熱しない。それに加えて、アクチュエータ414は、WEB404およびマスト406に導電的に結合され得、これはマストアクチュエータ414からの熱がWEB404および/またはマスト406へ逃げることを可能にする。
【0185】
次に、
図5を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、
図4A~
図4Bの熱制御システム400のヒータサブシステムアーキテクチャ500である。
【0186】
図5は、WEB404の頂面図を分離して例示している。WEB404の頂部パネル407の一部は、頂面図からだと他の方法では見えないであろうWEB404の内部コンパートメント440内に収納された特定のコンポーネントを示すために透明である。
【0187】
また、
図5において見ることができるのは、WEBラジエータ408と電池448(内部コンパートメント440内に配設されている)である。ヒートスイッチ446は、電池448を示すために、
図5では同様に透明であるが、その一部または全部は、頂面図からは他の方法では見えない場合がある。
【0188】
ヒータサブシステム500は、電池ヒータ502、WEBヒータ504、電池管理システム506、電池サーミスタ508、およびWEBサーミスタ510を含む。
【0189】
電池ヒータ502は、ヒータ要素512a、512b、および512c(ヒータ要素512と総称され、一般的にヒータ要素512と称される)を含む。一実施形態において、電池ヒータ502は、単一のヒータ要素512を含む。
【0190】
WEBヒータ504は、ヒータ要素514a、514b(ヒータ要素514と総称され、一般的にヒータ要素514と称される)を含む。一実施形態において、WEBヒータは、単一のヒータ要素514を含む。
【0191】
電池サーミスタ518は、サーミスタ518a、518b、518c(サーミスタ518と総称され、一般的にサーミスタ518と称される)を含む。一実施形態において、電池サーミスタ518は、単一のサーミスタ518を含む。
【0192】
WEBサーミスタ510は、サーミスタ520a、520b、520c(サーミスタ520と総称され、一般的にサーミスタ520と称される)を含む。一実施形態において、WEBサーミスタは、単一のサーミスタ520を含む。
【0193】
一実施形態において、サーミスタ518またはサーミスタ520の代わりに、あるいはそれに加えて、サーモスタットスイッチ(たとえば、バイメタルスイッチまたはパラフィンスイッチ)が使用され得る。サーモスタットスイッチは、それぞれ、ヒータ要素512または514と直列に接続される。サーモスタットスイッチは、任意の適切なサーモスタットスイッチであってよい。たとえば、サーモスタットスイッチは、バイメタルスイッチまたはパラフィンスイッチであってもよい。
【0194】
他の実施形態では、ヒータ要素512、514およびサーミスタ518、520の数は異なってもよい。
【0195】
電池ヒータ502および電池サーミスタ508は、電池448の内部に配置される。
【0196】
WEBヒータ504およびWEBサーミスタ520は、電池448の外部に配置されるが、WEB404の内部(すなわち、
図4A~
図4Bの内部コンパートメント440内)に配置される。
【0197】
一実施形態では、電池ヒータ502とWEBヒータ504は、オンボードコンピュータ(「OBC」)(図示せず)によって制御される。OBCは、電池管理システム506とは別のものであってもよい。OBCは、電池448内、またはWEB404内の他の場所、またはWEB404の外部(たとえば、マスト406内)に配設され得る。
【0198】
一実施形態において、ヒータ要素512、514は、抵抗ヒータである。一実施形態において、ヒータ要素512、514は、固体熱伝達または他の流体ベースの熱力学的サイクルを使用する電気ヒータである。一実施形態において、ヒータ要素512、514は、放射性同位体加熱を使用する。一実施形態において、ヒータ要素512、514は、熱回路にトリガされるかまたは切り替えられる相変化材料を含む。
【0199】
電池ヒータ502とWEBヒータ504は、月の夜間に電子機器412およびアビオニクス405を存続温度制限内に保持するために必要な熱を供給する。
【0200】
電池サーミスタ518およびWEBサーミスタ520は、電池管理システム506に通信可能に接続され、電池管理システム506によって監視される。電池管理システム506は、休眠中(たとえば、月の夜間)およびウェイクアップしたとき(たとえば、月の夜が月の昼になり、OBCがオフのとき)に、電池サーミスタ508およびWEBサーミスタ510を監視する。サーミスタ518、520は、それぞれ、電池ヒータ502およびWEBヒータ504の制御に使用される。
【0201】
WEB404は、低温動作時、月の夜間で存続しているとき、およびウェイクアップしているときのヒータ要素512および514に依存する。電池管理システム506は、サーミスタ518、520の温度を読み出すことによってヒータ要素512、514(ならびに、したがって電池ヒータ502およびWEBヒータ504)を制御する。
【0202】
ヒータ要素512は、並列に配設され、電池ヒータ502を形成する。ヒータ要素514は、さらに並列に配設されて、WEBヒータ504を形成する。そのような並列配置構成は、ヒータが故障した場合にホット冗長性を提供する。ヒータ要素512、514の設定点は、電池管理システム506によって動的に変更され得る。
【0203】
サーミスタ518、520は、冗長性スキームを実装してもよい。たとえば、一実施形態において、サーミスタ518、520は各々、主または冗長として指定される。さらなる実施形態において、サーミスタ518、520の各々に対して3サーミスタ多数決スキームが使用される。
【0204】
コールドシャドウ動作および月の夜間における存続に先立ち、電子機器412、アビオニクス405、およびヒータ要素512、514は、WEB404および電池448がそれらの最大許容温度に近い温度に達するまでONである。これは、ローバーが冷めるまでの時間を最大化し、電池448のエネルギーを節約し、ひいては電池448の質量を減らすことで、可能な最良の初期条件を提供し得る。
【0205】
月の夜間における存続のために、マスト406は、次いで、WEBラジエータ408を覆うように収納される。マスト406は、月の夜間に、マストおよびWEBラジエータ410、408が向かい合うように収納して深宇宙へのビューファクタを排除する。
【0206】
ウェイクアップについては、電池448の充電温度は放電時よりも高いので、電力(たとえば、ローバー上のソーラーパネルからの)の送り先は、電池448が最低許容充電温度に達するまで電池管理システム506によって電池ヒータ502およびWEBヒータ504に変更される。一例において、電池448の最低許容充電温度は0℃である。
【0207】
次に、
図6を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、熱ラジエータシャッタを動作させる方法600である。方法600は、たとえば、
図1~
図4の熱ラジエータシャッタを動作させるために使用され得る。
【0208】
602において、方法600は、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成で提供するステップを含む。熱ラジエータシャッタは、第1の側に第1の熱制御コンポーネントを、第2の対向する側に第1のラジエータを有する第1のベースプレートを含む。熱ラジエータシャッタは、第1の側に第2の熱制御コンポーネントを、第2の対向する側に第2のラジエータを有する第2のベースプレートをさらに含む。第2のベースプレートは、第1のベースプレートに関して収納位置にある。収納位置において、第2のベースプレートは、第1のベースプレートに対して実質的に平行であり得る。収納位置は、閉鎖構成とみなされ得る。
【0209】
閉鎖構成において、第1および第2のラジエータは、深宇宙への各ラジエータのビューファクタがブロックされるように熱的に結合される。さらに、第1および第2のラジエータは、閉鎖構成において熱的に結合されるので、熱は、第1または第2のラジエータによってあまり廃棄されないか、または全く廃棄され得ない。
【0210】
604において、方法600は、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成から開放構成に切り替えることを決定するステップを含む。
【0211】
一実施形態において、人間または他の外部オペレータが、たとえば、コマンドを入力する、ボタンを押す、または熱ラジエータシャッタから離れた場所にあるコンピュータ周辺機器をクリックすることによって、熱ラジエータシャッタに信号を送信し、構成を閉鎖構成から開放構成に変更する。
【0212】
一実施形態において、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成から開放構成に切り替えるかどうかの決定は、受信されたセンサデータまたは1つもしくは複数のセンサによって収集された信号に基づき行われる。
【0213】
一実施形態において、決定は、クロックまたは他のタイミングメカニズムに基づき行われる。
【0214】
熱ラジエータシャッタを閉鎖構成から開放構成に切り替えることを決定するステップは、第1の外部環境条件などの第1の条件を感知することを含み得る。
【0215】
606において、方法600は、604での決定に応答して、第1のベースプレートに関して第2のベースプレートを収納位置から展開位置に移動させて、第1のベースプレートと第2のベースプレートとの平面上の分離を生じさせることによって熱ラジエータシャッタを開放構成にするステップを含み、したがって第1および第2のラジエータは熱を廃棄することができる。展開位置において、第2のベースプレートは、第1のベースプレートに対して実質的に垂直であり得る。他の場合において、展開位置では、それぞれのラジエータに対して適切なビューファクタを提供する、第1のベースプレートに関して任意の適切な角度を成す第2のベースプレートを有し得る。
【0216】
昼間の動作時に、マストは展開され、ラジエータは、放散コンポーネントによって発生する内部廃熱を廃棄するために、深宇宙への視界を有する。
【0217】
608において、方法600は、熱ラジエータシャッタを開放構成から閉鎖構成に切り替えることを決定するステップを含む。
【0218】
604のように、一実施形態において、人間または他の外部オペレータが、たとえば、コマンドを入力する、ボタンを押す、または熱ラジエータシャッタから離れた場所にあるコンピュータ周辺機器をクリックすることによって、熱ラジエータシャッタに信号を送信し、構成を開放構成から閉鎖構成に変更する。
【0219】
604のように、一実施形態において、熱ラジエータシャッタを開放構成から閉鎖構成に切り替えるかどうかの決定は、受信されたセンサデータまたは1つもしくは複数のセンサによって収集された信号に基づき行われる。
【0220】
604のように、一実施形態において、決定は、クロックまたは他のタイミングメカニズムに基づき行われる。
【0221】
604のように、熱ラジエータシャッタを開放構成から閉鎖構成に切り替えることを決定するステップは、第2の外部環境条件などの第2の条件を感知するステップを含み得る。
【0222】
610において、方法600は、608の決定に応答して、第1のベースプレートに関して第2のベースプレートを展開位置から収納位置に移動させ、第1および第2のラジエータを所定の位置に持ってきて熱閉ループを形成することによって、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成にするステップを含む。
【0223】
熱的に閉じられたループを形成することは、第1のラジエータおよび第2のラジエータのビューファクタが排除されるように第1のラジエータと第2のラジエータとの間に放射結合をもたらすことを含み得る。
【0224】
次に、
図7を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、単一のベースプレート上に複数の熱制御ゾーンを実装する熱ラジエータシャッタを動作させる方法700である。この方法700は、たとえば、
図2A~
図2Bの熱ラジエータシャッタ200または
図4A~
図4Bの熱ラジエータシャッタ400を動作させるために使用され得る。
【0225】
702において、方法700は、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成で提供するステップを含む。熱ラジエータシャッタは、第1の側に第1および第3の熱制御コンポーネントを、第2の対向する側に第1のラジエータを有する第1のベースプレートを含む。熱ラジエータシャッタは、第1の側に第2の熱制御コンポーネントを、第2の対向する側に第2のラジエータを有する第2のベースプレートをさらに含む。閉鎖構成では、第2のベースプレートは収納位置にある。第3の温度制御コンポーネントは、第1の温度制御コンポーネントを含む、周囲の環境から熱的に絶縁される。そのような断熱は、たとえば、第3の温度制御コンポーネントを断熱材(たとえば、多層断熱材、熱ブランケット)で囲むことによって達成され得る。
【0226】
704において、方法700は、熱ラジエータシャッタを閉鎖構成から開放構成に切り替えることを決定するステップを含む。
【0227】
704において行われる決定は、
図6の方法600の604に関して説明されている実施形態のいずれかにより行われ得る。
【0228】
706において、方法700は、704での決定に応答して、第1および第2のラジエータの各々が熱を放出するかまたは廃棄するために外部環境に対して適切なビューファクタを有するように第1および第2のベースプレートの平面上の分離をもたらすために、第2のベースプレートを収納位置から展開位置に移動させることによって熱ラジエータシャッタを開放構成にすることを含む。
【0229】
708において、方法700は、熱ラジエータシャッタが開放構成にあるときにヒートスイッチをトリガして、第3の温度制御コンポーネントを第1のラジエータに熱的に結合するステップを含む。
【0230】
ヒートスイッチが活性化され、外部温度が所定の最低温度(たとえば、ヒートスイッチの少なくとも一部を形成する相変化材料に関連する凝固点)より上であるときに、ヒートスイッチは、第3の温度制御コンポーネントと第1のラジエータとの間の熱連通を妨げない。具体的には、ヒートスイッチは、第3の温度制御コンポーネントと、第3の温度制御コンポーネントが装着されている第1のベースプレートの一部との間の連通を妨げず、第1のラジエータは常に第1のベースプレートと熱連通している。
【0231】
外部温度が所定の最低温度より低く(たとえば、相変化材料の凝固点より低く)なったときに、ヒートスイッチは前述の熱連通を妨げる(たとえば、相変化材料が固体であるので、第3の温度制御コンポーネント内の熱は、第1のベースプレートを介して第1のラジエータに伝達され得ない)。したがって、ヒートスイッチは、外部温度が最低温度より高いときに、第3の温度制御コンポーネントが第1のラジエータから熱を受け取ることを許す。ヒートスイッチは、さらに、外部温度が最低温度より低いときに、第3の温度制御コンポーネントが第1のラジエータに熱を伝達することを妨げる。
【0232】
ヒートスイッチが相変化材料を含む実施形態では、ヒートスイッチを活性化することは、相変化材料を溶融させることを含む。ヒートスイッチを活性化することは、相変化材料が外部温度に起因して受動的に溶融することを意味すると理解され得る。
【0233】
710において、方法700は、熱ラジエータシャッタを開放構成から閉鎖構成に切り替えることを決定するステップを含む。
【0234】
710において行われる決定は、
図6の方法600の608に関して説明されている実施形態のいずれかにより行われ得る。
【0235】
712において、方法700は、710での決定に応答して、第2のベースプレートを展開位置から、第1および第2のラジエータが向かい合い、熱閉ループを形成する収納位置に移動させることによって熱ラジエータシャッタを閉鎖構成にするステップを含む。
【0236】
714において、方法700は、熱ラジエータシャッタが閉鎖構成にあるときにヒートスイッチを非活性化して、第3の温度制御コンポーネントを第1のラジエータから熱的に減結合し、第1および第2の熱ゾーンを確立するステップを含む。第1および第2の熱ゾーンは独立しており、それぞれ、第1および第3の温度制御コンポーネントに対応する。
【0237】
ヒートスイッチが相変化材料を含む実施形態では、ヒートスイッチを活性化することは、相変化材料を溶融させることを含む。ヒートスイッチを非活性化することは、相変化材料が外部温度に起因して受動的に凝固するかまたは固化することを意味すると理解され得る。
【0238】
716において、方法700は、ヒートスイッチが非活性化されている間、別のヒータ設定点に従って第1および第3の温度制御コンポーネントを加熱するステップを含む。第2の温度制御コンポーネントは、第1の温度制御コンポーネントと同じ温度にある。
【0239】
次に、
図8を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、月の夜間存続のためにルナローバー上で熱ラジエータシャッタを動作させる方法800である。熱ラジエータシャッタは、
図1A~
図1Bのデュアルベースプレートシャッタ100、
図2A~
図2Bのデュアルベースプレートシャッタ200、
図3A~
図3Bのマルチ(トライ)ベースプレート熱ラジエータシャッタ300、または
図4A~
図4Bのルナローバー熱制御システム400であってもよい。
【0240】
802において、方法800は、ルナローバー上に熱ラジエータシャッタを設けるステップであって、シャッタはWEBおよびマストを含み、WEBは電池および存続ヒータを含み、ローバーはソーラーパネルを含む、ステップを含む。
【0241】
804において、方法800は、休眠のための準備するステップを含む。休眠のための準備をするために、ローバーは電池を満充電にする。ローバーはさらに、WEBを温める。ローバーは、休眠のためにそれ自体を配向する。ローバーはマストを畳み込む。ローバーは、ヒータを存続モードに切り替え、休眠およびウェイクアップモジュール(HWM)を使用してウェイクアップタイマーを設定しながら、パワーダウンシーケンスを開始する。HWMおよびヒータは電池から直接給電される。一実施形態において、HWMおよびヒータは、休眠中も給電されたままである唯一のコンポーネントである。地上オペレータは、電源制御ユニット(「PCU」)をオフ状態にし、オンボードコンピュータ/電気通信モジュール(「OBC」/「TCM」)およびトランシーバをオフにして、電池がHWMおよび存続ヒータのみに給電するように指令し得る。一実施形態において、休眠するための準備は、前述の動作を順に実行するOBC上の「休眠準備」機能を実行する単一の地上コマンドを介して実行され得る。
【0242】
806において、方法800は、ローバーが休眠に入り、HWMおよびヒータ以外のすべての電子機器の電源が切られることを含む。ヒータは、HWMを介して電池から給電され、コンポーネントを存続温度限界内に維持するために必要な熱を供給する。休眠中、コマンドがローバーに送信されることはなく、ローバーは自動的アクションを実行しない。ローバーの温度は、低温存続(非動作)レベルまで低下する。
【0243】
808において、方法800はローバーウェイクアップを含む。休眠中、主ローバーシステムはオフであることから、オペレータはローバーと通信してローバーの電源を入れ直すことはできない。太陽が昇り、ウェイクアップタイマーが経過したときに、ローバーは、HWMを使用して存続ヒータを動作温度設定点(たとえば、-20℃)に設定し、WEBおよび電池を温める。ローバーが最初にウェイクアップしようとしているときに、電池はほとんど消耗しており、外部環境は寒すぎて電池の充電を開始できないので、ヒータはHWMを介してソーラーパネルから直接給電される。WEBおよび電池が最低動作/充電温度(たとえば、-20℃)に達すると、HWMはPCUをオンにし、電池から存続ヒータの運転を開始する。マストは、自律的HWMまたはPCUコマンドのいずれかを介して上昇する。電池が充電されると、それの電圧はPCU負荷制限レベルを超え、その時点でPCUは自動的にOBC/TCMおよび通信サブシステムをオンにする。この時点で、地上オペレータはローバーとの通信を確立し得る。地上オペレータは、ローバーの健全性および機能性を確認し、昼間の動作のための準備をするための一連のチェックアウトを引き継ぎ、指令し得る。
【0244】
次に、
図9を参照すると、そこに、より詳細に示されているのは、一実施形態による、月の夜間での存続のためにルナローバー上の熱ラジエータシャッタを動作させるための方法800における休眠のための準備をする動作804である。
【0245】
902において、動作804は、ソーラーパネルを太陽の方向に向けることを含む。
【0246】
904において、動作804は、電池が容量100%に達し、WEBが最高温度になるまで電池を充電することを含む。
【0247】
906において、動作804は、ソーラーパネルを、翌日太陽が昇る方向に向けることを含む。
【0248】
908において、動作804は、マスト上のラジエータがWEB上のラジエータを覆うようにマストを折り畳むことを含む。
【0249】
910において、動作804は、PCU、OBC、およびTCM、ならびに通信サブシステム(「COMS」)を除くすべてのサブシステムの電源を切ることを含む。
【0250】
912において、動作804は、HWMおよび/または存続ヒータの温度設定点を「動作可能」から「夜間休眠」に切り替えることと、ウェイクアップタイマーを設定することとを含む。3つのプリセットされた組合せが利用可能である。
【0251】
914において、動作804は、PCU、OBC/TCM、およびCOMSの電源をOFFにすることを含む。
【0252】
次に、
図10を参照すると、そこに、より詳細に示されているのは、一実施形態による、月の夜間での存続のためにルナローバー上の熱ラジエータシャッタを動作させるための方法800におけるローバーが休眠に入る動作804である。
【0253】
1002において、動作806は、月の夜が始まると、ローバーが休眠することを含む。
【0254】
1004において、動作806は、月の夜間に、HWMおよびヒータ以外のすべての電子機器の電源がOFFのままにされることを含む。
【0255】
1006において、動作806は、月の夜が終わると、ローバーが休眠からウェイクアップする準備をすることを含む。
【0256】
次に、
図11を参照すると、そこに、より詳細に示されているのは、一実施形態による、月の夜間での存続のためにルナローバー上の熱ラジエータシャッタを動作させるための方法800におけるローバーがウェイクアップする動作808である。
【0257】
1102において、動作808は、ソーラーパネルおよびウェイクアップタイマーの終了を介してHWMにより日の出を検出することを含む。
【0258】
1104において、動作808は、HWMがヒータの温度設定点を「夜間休眠」から「動作可能」に切り替えて太陽エネルギーを使用してWEBおよび電池を暖めることを含む。
【0259】
1106において、動作808は、WEBおよび/または電池が動作温度に達し、電池が充電されているときに、HWMがPCUの電源を入れることを含む。
【0260】
1108において、動作808は、自動PCU/HWMコマンドを介してマストを展開することを含む。
【0261】
1110において、動作808は、電池の電圧がPCUの負荷制限閾値を超えたときにOBC/TCMおよびCOMSの電源を入れることを含む。
【0262】
1112において、動作808は、ローバーとの通信を確立することを含む。
【0263】
1114において、動作808は、電池が満充電になったときに、ローバー、航法誘導制御(「GNC」)コンピュータ、センサ、および科学計測器に対して基本ヘルスチェックを実行することを含む。
【0264】
1116において、動作808は、電池が満充電になったときに、部分GNCチェックアウト、モビリティチェックアウト、マストアクチュエータチェックアウト、マストカメラチェックアウト、科学計測器チェックアウト、ならびに最終GNCおよびモビリティチェックアウトを実行することを含む。部分GNCチェックアウトは、ローバーのプレビジョンシステム(pre-vision system)のチェックアウトであってもよい。モビリティチェックアウトは、ローバーの駆動モータの小さな往復運動を通して実行され得る。マストアクチュエータメカニズムは、マストのパンおよびチルトモータの小さな往復運動を通して実行され得る。
【0265】
1118において、動作808は、ステレオカメラのキャリブレーションを実行することを含む。
【0266】
1120において、動作808は、電池が満充電であることを決定することを含む。
【0267】
次に、
図12を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、熱ラジエータシャッタを製造する方法1200である。方法1200は、たとえば、
図1~
図4の熱ラジエータシャッタを製造するために使用され得る。
【0268】
1202において、方法1200は、第1の温度制御コンポーネントを第1のベースプレートの第1の側に装着することを含む。この装着は、第1の温度制御コンポーネントを第1のベースプレートに熱的に結合することを含む。
【0269】
1204において、方法1200は、第1のベースプレートの第2の側に第1のラジエータを配設するステップであって、第2の側は第1の側に対向する、ステップを含む。第1のラジエータは、第1の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものである。第1のラジエータは、第1の寸法を有する放射表面を含む。第1のベースプレートの第2の側に第1のラジエータを配設するステップは、第1のベースプレートの第2の側に第1のラジエータを設けるように、第1のベースプレートの第2の側の領域を高放射率塗料でコーティングし、その領域を断熱材で覆わないことを含み得る。
【0270】
1206において、方法1200は、第2の温度制御コンポーネントを第2のベースプレートの第1の側に装着するステップを含む。この装着は、第2の温度制御コンポーネントを第2のベースプレートに熱的に結合することを含む。
【0271】
1208において、方法1200は、第2のベースプレートの第2の側に第2のラジエータを配設するステップであって、第2の側は第1の側に対向する、ステップを含む。第2のラジエータは、第2の温度制御コンポーネントによって発生した熱を廃棄するためのものである。第2のラジエータは、第2の寸法を有する放射表面を含む。第2のラジエータの放射表面積の第2の寸法および第1のラジエータの放射表面積の第1の寸法は同じである。
【0272】
1210において、方法1200は、第2のベースプレートが第1のベースプレートに関して移動可能であるように第2のベースプレートを第1のベースプレートに接続するステップを含む。第2のベースプレートは、第2のラジエータの放射表面が第1のラジエータの放射表面と実質的に平行であり、第1のラジエータと第2のラジエータとの間に放熱結合を提供し、外部環境に対する第1および第2のラジエータのビューファクタを除去するのに十分に近い第1の位置と、第1および第2のラジエータが熱を廃棄するための環境に対する適切なビューファクタを有するように第2のラジエータが第1のラジエータから分離される第2の位置との間で移動可能であるように接続される。このような熱は、第1および第2の温度制御コンポーネントによって発生され得る。そのような熱は、いずれかのベースプレート上に装着されたヒータによって発生し得る。
【0273】
一実施形態において、第2のベースプレートの第1の固定端部は、第1のベースプレートに接続され、一般的に第2のベースプレートの枢軸として働く。第2のベースプレートの第2の、長手方向に対向する端部は、第1のベースプレートに接続されず、「自由端部」と考えられ得る。開放構成と閉鎖構成との間を移動するときに、第2のベースプレートの自由端部は、アーチ形経路を移動し、一方、第1の端部は固定されたままである。たとえば、第2のベースプレートは、第2のベースプレートが第1のベースプレートと実質的に平行であり、その上にある、位置と、第2のベースプレートが第1のベースプレートと実質的に平行であり、その上にない、位置、たとえば、第2のベースプレートが第1のベースプレートと実質的に平行であるがその上になく、第2のベースプレートが第1のベースプレートに実質的に垂直である位置との間で移動できるように接続され得る。
【0274】
一実施形態において、第2のベースプレートは、展開可能なビークルマスト(たとえば、ローバーマスト)上に装着される。マストは、WEBを含むビークルプラットフォーム上に装着される。マストは、ビークルナビゲーションのためのGN&Cセンサを展開するための別個のサブシステムである。開放構成では、ビークルは動作可能であり、WEBおよびマストは、その上にまたはその中に装着されたコンポーネントを使用して、それぞれのタスクを実行する。ビークルが存続モードに入ると、マストは収納され、そうする際に、マストはWEBラジエータをマストラジエータで覆う。
【0275】
いくつかの実施形態において、第2のベースプレートは、展開/開放位置を越える第2のベースプレートの移動を防止する(たとえば、機械的に防止される)方式で第1のベースプレートに結合され得る。他の実施形態では、結合は、第2のベースプレートが展開/開放位置を越えて移動することができるが、一般的に制御メカニズムまたは同様のものによってそのように移動することを防止されるような結合であり得る。
【0276】
一実施形態において、方法1200は、第1のベースプレート上の第1の熱制御ゾーンと第2のベースプレート上の第2の熱制御ゾーンとの平面上の分離を提供するステップをさらに含み、熱制御ゾーンは互いに独立している。
【0277】
一実施形態において、方法1200は、アクチュエータを少なくとも第2のベースプレートに接続するステップをさらに含み、このアクチュエータは第2のベースプレートが第1のベースプレートに接続されているときに第2のベースプレートを第1の位置と第2の位置との間で移動させるためのものである。
【0278】
一実施形態において、方法900は、第1のベースプレートおよび第2のベースプレートの放散非放射コンポーネントを多層断熱材で覆って放射損失を最小限に抑えるステップをさらに含む。そのよう被覆は、第1のベースプレートおよび第2のベースプレートのいかなる所定の開口にも及ばない。そのような被覆はラジエータにも及ばない。そのような被覆は、所定の開口およびラジエータを除き、第1のベースプレートおよび第2のベースプレートを完全に覆ってもよい。
【0279】
方法900は、独立した熱制御ゾーン内において第1および第2のベースプレートの各々とそれに装着された任意のコンポーネントとの間にサーマルフィラーを配設するステップをさらに含み得る。
【0280】
方法900は、第3のコンポーネントを第1のベースプレートに装着するステップと、第3のコンポーネントと第1のベースプレートとの間にヒートスイッチを配設するステップとをさらに含み得る。ヒートスイッチは、他の熱制御ゾーンから独立した第3の熱制御ゾーンを提供し得る。第3のコンポーネントは、多層断熱材で覆われ得る。第3のコンポーネントは、電池であってもよい。
【0281】
方法900は、第3の熱制御ゾーン内の第3のコンポーネントの最低許容温度を維持するためにヒータを設けるステップを含み得る。サーミスタは、第3の熱制御ゾーン内の第3のコンポーネントの温度を決定するためにさらに設けられ得る。
【0282】
上記の説明は、1つまたは複数の装置、方法、またはシステムの例を挙げているが、他の装置、方法、またはシステムが、当業者によって解釈されるように特許請求の範囲内であり得ることは理解されるであろう。
【0283】
特許請求されるのは、本明細書において一般的に、また具体的に説明されているシステムおよび方法である。
【符号の説明】
【0284】
100 デュアルベースプレートシャッタ
102 開放構成、開放状態
104 第1のベースプレート
105 第1の温度制御コンポーネント
106 第2のベースプレート
108 第1のラジエータ
110 第2のラジエータ
111 熱
112 第2の温度制御コンポーネント
113 第1の放射表面
114 アクチュエータ
115 第2の放射表面
116 断熱材
122 閉鎖構成、閉鎖状態
128 第1の側
130 第2の側
132 第1の側
134 第2の側
200 デュアルベースプレートシャッタ
202 開放構成
204 頂部パネル、第1のベースプレート
205 第1の温度制御コンポーネント
216 断熱層、断熱材
219 導電性サーマルフィラー
222 閉鎖構成
223 底部パネル
232 第1の側
233 ハウジング
236 側部パネル
236a 第1の側部パネル
236b 第2の側部パネル
236c 第3の側部パネル
240 内部コンパートメント
246 ヒートスイッチ
248 第3の温度制御コンポーネント、電池
300 マルチ(トライ)ベースプレート熱ラジエータシャッタ
302 開放構成
304 第1のベースプレート
306a 第2のベースプレート
306b 第3のベースプレート
308 第1のラジエータ
310 第2のラジエータ
311 熱
314a、314b アクチュエータ
317 第3の放射表面
317a アーチ形経路
317b アーチ形経路
320a アクチュエータコントローラ
320b アクチュエータ制御システムまたはアクチュエータコントローラ
321 第4の放射表面
322 閉鎖構成、閉鎖状態
330b 第2の側
334 第2の側
370 第3のラジエータ
372 第4のラジエータ
400 ルナローバー熱制御システム
404 ウォームエレクトロニクスボックス(「WEB」)
405 アビオニクスユニット、アビオニクスコンポーネント
405a、405b アビオニクスユニット
406 展開可能収納可能マスト
407 頂部パネル
408 WEBラジエータ
410 マストラジエータ
411 マストブーム
412 電子機器
412a、412b、412c 電子機器コンポーネント
414 アクチュエータ
416 多層断熱材(「MLI」)
423 底部パネル
428 第1の側、第1の表面
436a~436c、436d 側部パネル
440 内部コンパートメント
444 下側
446 ヒートスイッチ
448 電池
452 中性子スペクトロメータ(NSS)センサ
454 装着プレート
500 ヒータサブシステムアーキテクチャ
502 電池ヒータ
504 WEBヒータ
506 電池管理システム
508 電池サーミスタ
510 WEBサーミスタ
512 ヒータ要素
512a、512b、512c ヒータ要素
514 ヒータ要素
514a、514b ヒータ要素
518 電池サーミスタ
518a、518b、518c サーミスタ
520a、520b、520c サーミスタ
520 サーミスタ
600 方法
700 方法
800 方法
900 方法
1200 方法
【外国語明細書】