(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166200
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ゲノム編集による遺伝子サイレンシング
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241121BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/09 110
A01H1/00 A ZNA
A01H1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024131763
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021531940の分割
【原出願日】2019-11-26
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/119155
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ルヴ ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シ
(72)【発明者】
【氏名】ユ クン
(72)【発明者】
【氏名】リアン ダウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ホンジュ
(72)【発明者】
【氏名】シュ ジャンピン
(57)【要約】
【課題】本発明は、ゲノム編集による遺伝子サイレンシングのための方法及び組成物を提供すること。
【解決手段】メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ、及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼを提供した。加えて、本発明は、ゲノム編集による遺伝子サイレンシングのための方法及び組成物を提供し、ゲノム編集によって染色体を再配置するための方法及び組成物も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 標的ゲノム部位での部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを細胞内に導入することと;
b) 単一の標的遺伝子において2つ以上の二本鎖切断を作ることと;
c) 前記二本鎖切断が介在DNA逆位で修復された細胞を選択することと;
d) 前記標的遺伝子の発現を減少させることと:
からなる、前記標的遺伝子の発現を減少させる方法。
【請求項2】
前記ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的遺伝子における前記二本鎖切断が、プロモーター、UTR、エキソン、イントロン、又は遺伝子-遺伝子接合領域に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞が、一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体ゲノムを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的遺伝子が劣性又は半優性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上のガイド配列を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のガイド配列が、2つ以上のガイド配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が植物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ゲノム編集によって染色体を再配置する方法であって:
a.部位特異的ヌクレアーゼによって前記染色体に少なくとも1つの破損を生成することと;
b.再配置を有する染色体を選択することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記部位特異的ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記染色体再配置が、欠失、重複、逆位、又は転座を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記染色体再配置が、遺伝子発現の改変を引き起こす、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子発現改変が、前駆体mRNAレベル、又は成熟mRNAレベル、又は翻訳レベルでの調節を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記染色体再配置が、前記染色体が種間雑種のような1つの核に分類され得る場合に、2つの種由来の染色体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記染色体再配置が、少なくとも2つの対立遺伝子又は異なる対立遺伝子からの2つの成分を融合することによって、新たな対立遺伝子生成をもたらす、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
染色体再配置が、プロモーター、エキソン、イントロン、又は転写ターミネーターを標的とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
染色体再配置が、前記再配置された遺伝子と配列類似性を有する異なる遺伝子の遺伝子発現の改変を引き起こす、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記欠失、重複、逆位、又は転座が19塩基対以上である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月4日出願のPCT/CN2018/119155号による利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
2018年11月19日に生成された、「81724_ST25.txt」と題される、37C.F.R.§1.821の下で提出された、47キロバイトのサイズのASCIIテキスト形式の配列表。この配列表は、その開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、ゲノム編集による遺伝子サイレンシング、又はゲノム編集による染色体の再配置のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
遺伝子サイレンシングは、遺伝子機能を研究し、作物に重要な形質を送達するための重要なツールである。植物における遺伝子サイレンシングの伝統的戦略には、(Cold Spring Harb Symp Quant Biol.2006;71:481-5)、センスRNA転写産物のトランスジェニック過剰発現、ヘアピン転写産物のトランスジェニック発現、アンチセンスRNA転写産物のトランスジェニック発現が含まれる。一方、これらの技術には、いくつかの制約がある。過剰産生されたセンス転写産物については、転写産物は未熟な終止コドンを有さない必要があり、そうでない場合、効率は十分ではなく、安定ではない。ヘアピン及びアンチセンス設計では、同じ組織及び同じ発達段階でのサイレンシングRNAの発現を天然の標的mRNAと一致させることが不可能であるため、RNAサイレンシング効果には漏れがある。
【0005】
本開示は、染色体逆位を作り出すためのゲノム編集を用いた新規な遺伝子サイレンシング方法を提供する。ゲノム編集は、例えば国際公開第18057863号、国際公開第2017180915号、及び国際公開第2017023974号のように、サイレンシングされるべき遺伝子のプロモーターに転写調節因子を近づけることを除いて、遺伝子サイレンシングでは用いられてこなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、標的遺伝子の発現を減少させる方法を提供し、該方法は、標的ゲノム部位での部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを細胞内に導入することと、単一の標的遺伝子において2つ以上の二本鎖切断を作ることと、二本鎖切断が介在DNA逆位で修復された細胞を選択することと、標的遺伝子の発現を減少させることとからなる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、標的遺伝子における二本鎖切断は、プロモーター、UTR、エキソン、イントロン、又は遺伝子-遺伝子接合領域に位置する。これらの方法は、細胞が一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体(hexiploid)のゲノムを有する場合に用いられ得る。これらの方法は、標的遺伝子が優性、劣性、又は半優性の場合に用いられ得る。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ、2つ又はそれを超えるガイド配列を利用することができる。この方法は、植物細胞において有用であるが、任意の細胞に適用可能である。
【0007】
本開示は、ゲノム編集によって染色体を再配置する方法を提供し、該方法は、部位特異的ヌクレアーゼによって染色体に少なくとも1つの破損を生成することと、再配置を有する染色体を選択することとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ、及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼを利用することができる。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、欠失、重複、逆位、又は転座を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、遺伝子発現の改変を引き起こす。本方法のいくつかの実施形態では、遺伝子発現の改変は、前駆体mRNAレベル、又は成熟mRNAレベル、又は翻訳レベルでの調節を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、染色体が種間雑種のような1つの核に分類され得る場合に、2つの種由来の染色体を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、少なくとも2つの対立遺伝子又は異なる対立遺伝子由来の2つの成分を融合することによって、新たな対立遺伝子生成をもたらす。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、プロモーター、エキソン、イントロン、又は転写ターミネーターを標的とする。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、再配置された遺伝子と配列類似性を有する異なる遺伝子の遺伝子発現の改変を引き起こす。本方法の更なる実施形態では、欠失、重複、逆位、又は転座は、19塩基対以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】構築物22602(左)を用いた形質転換事象のグラフ表示であり、ここで、エキソン5における2つの編集は、事象RIET142202A130Aにおける欠失又は事象RIET142202A049Aにおける逆位をもたらし、また構築物22604(右)を用いた形質転換事象の表示であり、ここで、エキソン5における2つの編集は、事象RIET142300A014Aにおける欠失又は事象RIET142500B024A049Aにおける逆位をもたらした。
【
図2】内因性遺伝子座からのDEP1の発現を測定するためのワークフローを示す。
【
図3】事象RIET142202A130AからのT1種子の遺伝子型判定からのPCR産物のゲル電気泳動。
【
図4】DEP1に欠失を有する植物の隣の野生型イネ植物。
【
図5】RNA単離のためにサンプリングされた2~3cmのイネ植物。
【
図6】FI植物17SBC500140、17SBC500143、17SBC500146、及び17SBC500149からのrtPCR産物のゲル電気泳動。
【
図7】欠失又は挿入を有するF1植物におけるDEP1のエキソン5のグラフ表示(上)及びゲル電気泳動によって分離されたrtPCR産物(下)であり、DEP1産物は、定量され、イネユビキチン遺伝子OS03g0234200の発現比に対して正規化された。
【
図8】2つの転座で同定されたE0植物、RIET142500A084AからのDEP1のエキソン5のグラフ表示。
【
図9】染色体転座及び重複について選択するために、2つ以上のゲノム編集標的がどのように使用され得るかを示す概略図。
【
図10】逆位がどのように遺伝子サイレンシングに導くことができるかを示す概略図。
【
図11】六倍体又は倍数体ゲノムの遺伝子オルソログをサイレンシングするために、染色体逆位によるサイレンシングがどのように使用され得るかを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
配列表における配列の簡単な説明
配列番号1は、DENSE AND ERECT PANICLE 1のコード配列である
【0010】
配列番号2は、ベクター22603由来のgRNA-B及びgRNA-D発現カセットである
【0011】
配列番号3は、DEP1のエキソン5を標的とするガイドRNA-Bである
【0012】
配列番号4は、同様にエキソン5を標的とするgRNA-Dである
【0013】
配列番号5は、22604 gRNA-A、gRNA-D、gRNA-B、及びgRNA-Cである
【0014】
配列番号6は、ガイドRNA-Aである
【0015】
配列番号7は、ガイドRNA-Cである
【0016】
配列番号8は、CAS9発現カセットである
【0017】
配列番号9は、CAS9 Taqmanアッセイフォワードプライマーである
【0018】
配列番号10は、CAS9 Taqmanアッセイリバースプライマーである
【0019】
配列番号11は、CAS9 Taqmanアッセイプローブである
【0020】
配列番号12は、gRNA-A Taqmanアッセイフォワードプライマーである
【0021】
配列番号13は、gRNA-A Taqmanアッセイリバースプライマーである
【0022】
配列番号14は、gRNA-A Taqmanアッセイプローブである
【0023】
配列番号15は、gRNA-C Taqmanアッセイフォワードプライマーである
【0024】
配列番号16は、gRNA-C Taqmanアッセイリバースプライマーである
【0025】
配列番号17は、gRNA-C Taqmanアッセイプローブである
【0026】
配列番号18は、gRNA-D Taqmanアッセイフォワードプライマーである
【0027】
配列番号19は、gRNA-D Taqmanアッセイリバースプライマーである
【0028】
配列番号20は、gRNA-D Taqmanアッセイプローブである
【0029】
配列番号21は、DEP1 PCRプライマー1である
【0030】
配列番号22は、DEP1 PCRプライマー2である
【0031】
配列番号23は、RNA-AとRNA-Bとの間の逆位である
【0032】
配列番号24は、gRNA-BとgRNA-Dとの間の欠失である
【0033】
配列番号25は、gRNA-AとgRNA-Bとの間の逆位である
【0034】
配列番号26は、発現対照として選択されたRIET142300A014Aである
【0035】
配列番号27は、14SBC500773のセンス遺伝子型判定プライマーである
【0036】
配列番号28は、14SBC500773のアンチセンス遺伝子型判定プライマーである
【0037】
配列番号29は、エキソン1に位置するDEP1 qRT-PCRセンスプライマーである
【0038】
配列番号30は、3’UTRに位置するDEP1 qRT-PCRアンチセンスプライマーである
【0039】
配列番号31は、イネユビキチン(Os03g0234200)qRT-PCRプライマー1である
【0040】
配列番号32は、イネユビキチン(Os03g0234200)qRT-PCRプライマー2である
【0041】
配列番号33は、野生型DEP1 qRT-PCRプライマー1である
【0042】
配列番号34は、野生型DEP1 qRT-PCRプライマー2である
【0043】
配列番号35は、gRNA-AとgRNA-B、gRNA-CとgRNA-Dとの間の転座である
【0044】
この説明は、本発明を実施することができる全ての異なる方法、又は本発明に追加することができる全ての特徴の詳細なカタログであることを意図するものではない。例えば、一実施形態に関連して示される特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよく、特定の実施形態に関連して示される特徴は、その実施形態から削除されてもよい。加えて、本明細書で示唆される様々な実施形態に対する多数のバリエーション及び追加は、本開示に照らして当業者には明らかであり、本発明から逸脱するものではない。従って、以下の説明は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図しており、その全ての置換、組合せ、及びバリエーションを網羅的に特定することを意図していない。
【0045】
別途定義されない限り、本明細書に用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書に言及されている全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0046】
以下の定義及び方法は、本発明をより良く定義し、本発明の実施において当業者を導くために提供される。特に断らない限り、本明細書で使用される用語は、関連技術における当業者による従来の使用に従って理解されるべきである。分子生物学における一般的用語の定義は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1994にも見出すことができる。
【0047】
本発明の実施形態及び添付の特許請求の範囲の記載で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数形も含むことが意図される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての可能な組合せを指し、包含する。
【0049】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の量、用量、時間、温度等の測定可能な値を指す場合、特定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又は更には0.1%の変動を包含することを意味する。
【0050】
「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、工程、操作、エレメント、及び/又は成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、エレメント、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が請求項に記載された特定の材料又は工程、並びに請求項に記載された発明の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されることを意味する。従って、用語「から本質的になる」は、本発明の請求項で使用される場合、「を含む」と同等であると解釈されることを意図しない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「増幅された」という用語は、核酸分子の少なくとも1つを鋳型として使用する、核酸分子の複数のコピー又は核酸分子に相補的な複数のコピーの構築を意味する。例えば、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications,D.H.Persing et al.,Ed.,American Society for Microbiology,Washington,D.C.(1993)を参照されたい。増幅の産物は、アンプリコンと呼ばれる。
【0053】
「コード配列」は、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、センスRNA又はアンチセンスRNA等のRNAに転写される核酸配列である。いくつかの実施形態では、RNAは、次いで、生物において翻訳されて、タンパク質を産生する。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語トランスジェニック「事象」は、異種DNA、例えば、1つ以上の目的の遺伝子(例えば、導入遺伝子)を含む発現カセットを有する単一の植物細胞の形質転換及び再生によって産生される組換え植物を指す。「事象」という用語は、異種DNAを含む形質転換体の元の形質転換体及び/又は子孫を指す。「事象」という用語はまた、形質転換体と別の系統との間の性的異系交配によって産生される子孫を指す。反復親に対して戻し交配を繰り返した後でも、挿入されたDNAと形質転換された親からの隣接するDNAは、同じ染色体上の位置で交配の子孫に存在する。通常、植物組織の形質転換は複数の事象を生じ、事象の各々は、植物細胞のゲノムの異なる位置へのDNA構築物の挿入を表している。導入遺伝子の発現又は他の望ましい特徴に基づいて、特定の事象が選択される。従って、本明細書で使用される「事象MIR604」、「MIR604」又は「MIR604事象」は、MIR604形質転換体の元のMIR604形質転換体及び/又は子孫を意味する(米国特許第7,361,813号明細書、第7,897,748号明細書、第8,354,519号明細書、及び第8,884,102号明細書、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0055】
本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な宿主細胞における特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる核酸分子を意味し、目的のヌクレオチド配列(典型的には、コード領域)に作動可能に連結されたプロモーターを含み、これは終結シグナルに作動可能に連結されている。発現カセットはまた、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。コード領域は、通常、目的のタンパク質をコードするが、目的の機能性RNA、例えばアンチセンスRNA、又は翻訳されないRNAも、センス又はアンチセンス方向にコードしてもよい。発現カセットはまた、目的のヌクレオチド配列の直接発現に必要ではないが、発現ベクターからカセットを除去するための便利な制限部位のために存在する配列を含んでもよい。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであり得、これは、その成分の少なくとも1つが、その他の成分の少なくとも1つに関して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。しかしながら、典型的には、発現カセットは、宿主に対して異種であり、即ち、発現カセットの特定の核酸配列は、宿主細胞内に天然には存在せず、当技術方法で既知の形質転換プロセスによって宿主細胞又は宿主細胞の祖先に導入されていなければならない。発現カセット内のヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターの制御下にあってもよいし、又は宿主細胞が何らかの特定の外部刺激にさらされたときにのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。植物等の多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織、又は器官、又は発生段階に特異的であり得る。発現カセット又はその断片はまた、植物に形質転換される場合、「挿入された配列」又は「挿入配列」と称され得る。
【0056】
「遺伝子」は、ゲノム内に位置し、前述のコード核酸配列に加えて、コード部分の発現、即ち転写及び翻訳の制御に関与する他の主に調節性の核酸配列を含む、規定された領域である。遺伝子は、コード領域及び非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、終結配列、並びに5’及び3’非翻訳領域)の両方を含み得る。遺伝子は、典型的には、mRNA、機能性RNA、又は調節配列を含む特定のタンパク質を発現する。遺伝子は、機能的タンパク質を産生するために使用され得るか、又はされ得ない。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード領域のみを指す。「天然遺伝子」という用語は、天然に見出されるような遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」という用語は、1)天然では、共存して見出されない調節配列及びコード配列を含むDNA配列、又は2)天然には隣接していないタンパク質の一部をコードする配列、又は3)天然には隣接していないプロモーターの一部を含む任意の遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列を含むか、又は同じ供給源に由来するが、天然に見出されるものとは異なる様式で配置される調節配列及びコード配列を含み得る。遺伝子は、「単離」されてもよく、これは天然の状態で核酸分子と関連して通常見出される成分を実質的に又は本質的に含まない核酸分子を意味する。このような成分としては、他の細胞材料、組換え産生由来の培養培地、及び/又は核酸分子を化学的に合成する際に使用される種々の化学物質が挙げられる。
【0057】
ポリヌクレオチドコード配列の「発現する」又は「発現」という用語は、配列が転写され、場合により翻訳されることを意味する。
【0058】
「目的の遺伝子」、「目的のヌクレオチド配列」、又は「目的の配列」は、植物に移入された場合に、抗生物質耐性、ウイルス耐性、昆虫耐性、疾病耐性、又は他の害虫に対する耐性、除草剤耐性、栄養価の改善、工業プロセスにおける性能の改善、又は生殖能力の変化等の所望の特徴を植物に付与する任意の遺伝子を指す。「目的の遺伝子」はまた、植物において商業的に価値のある酵素又は代謝産物を産生するために植物に移入されるものであってもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、「異種」は、それが導入される宿主細胞と天然に関連しない核酸分子又はヌクレオチド配列を指し、これは、別の種に由来するか、又は同じ種若しくは生物に由来するが、その元の形態又は細胞内で主に発現される形態から改変されている(天然に存在する核酸配列の天然に存在しない複数のコピーを含む)。従って、ヌクレオチド配列が導入される細胞のものとは異なる生物又は種に由来するヌクレオチド配列は、その細胞及び細胞の子孫に関して異種である。加えて、異種ヌクレオチド配列は、同じ天然の元の細胞型に由来し、挿入されるが、非天然の状態で存在する(例えば、異なるコピー数で存在する)、及び/又は核酸分子の天然の状態で見出されるものとは異なる調節配列の制御下に存在する、ヌクレオチド配列を含む。核酸配列はまた、例えば、発現ベクターのような核酸構築物において、それが関連し得る他の核酸配列に対して異種であり得る。非限定的な一例として、プロモーターは、その特定のプロモーターと関連して天然には存在しない、即ち、プロモーターに対して異種の1つ以上の調節エレメント及び/又はコード配列と組み合わせて、核酸構築物中に存在し得る。
【0060】
「相同」核酸配列は、それが導入される宿主細胞に天然に関連する核酸配列である。相同核酸配列はまた、例えば核酸構築物中に存在し得る他の核酸配列と天然に関連する核酸配列であり得る。非限定的な一例として、プロモーターは、その特定のプロモーターと関連して天然に存在する、即ち、プロモーターと相同の1つ以上の調節エレメント及び/又はコード配列と組み合わせて、核酸構築物中に存在し得る。
【0061】
「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方の機能に影響を及ぼすような、単一の核酸配列上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列又は機能性RNAの発現に影響を及ぼすことができる場合(即ち、コード配列又は機能性RNAがプロモーターの転写制御下にある場合)、そのコード配列又は機能性RNAと作動可能に連結されている。センス又はアンチセンス配向におけるコード配列は、調節配列に作動可能に連結され得る。従って、ヌクレオチド配列と作動可能に関連する調節配列又は制御配列(例えば、プロモーター)は、ヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことができる。例えば、GFPをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターは、そのGFPヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことができる。
【0062】
制御配列は、それらがその発現を指示するように機能する限り、目的のヌクレオチド配列と連続している必要はない。従って、例えば、介在する非翻訳であるが転写された配列は、プロモーターとコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」と考えることができる。
【0063】
本明細書で使用される「プライマー」は、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖にアニールされて、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッドを形成し、次いで、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼによって標的DNA鎖に沿って伸長される単離された核酸である。プライマー対又はセットは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は他の核酸増幅方法による核酸分子の増幅のために使用され得る。
【0064】
「プローブ」は、標的核酸分子の一部に相補的であり、典型的には、標的核酸分子を検出及び/又は定量するために使用される、単離された核酸分子である。従って、いくつかの実施形態では、プローブは、検出可能な部分又はレポーター分子(例えば、放射性同位体、リガンド、化学発光剤、蛍光剤又は酵素)が結合している単離された核酸分子であり得る。本発明によるプローブは、デオキシリボ核酸又はリボ核酸だけでなく、標的核酸配列に特異的に結合し、その標的核酸配列の存在を検出し及び/又はその量を定量するために使用することができるポリアミド及び他のプローブ材料も含むことができる。
【0065】
TaqManプローブは、特定のプライマーセットによって増幅されたDNA領域内でアニールするように設計される。Taqポリメラーゼがプライマーを伸長し、新生鎖を一本鎖鋳型から相補鎖の3’から5’を合成すると、ポリメラーゼの5’から3’のエキソヌクレアーゼは、プローブを介して新生鎖を伸長し、その結果、鋳型にアニールしたプローブを分解する。プローブの分解は、それからフルオロフォアを放出し、クエンチャーへの近接を破壊し、従って、クエンチング効果を軽減し、フルオロフォアの蛍光を可能にする。従って、定量的PCRサーマルサイクラーで検出される蛍光は、放出されるフルオロフォア及びPCRに存在するDNA鋳型の量に正比例する。
【0066】
プライマー及びプローブは、一般に、5~100ヌクレオチド又はそれを超える長さである。いくつかの実施形態では、プライマー及びプローブは、少なくとも20ヌクレオチド以上の長さ、又は少なくとも25ヌクレオチド以上、又は少なくとも30ヌクレオチド以上の長さであり得る。このようなプライマー及びプローブは、当技術分野で既知の最適なハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。本発明によるプライマー及びプローブは、標的配列と完全な配列相補性を有し得るが、標的配列とは異なり、標的配列にハイブリダイズする能力を保持するプローブは、本発明による従来の方法によって設計され得る。
【0067】
プローブ及びプライマーを調製及び使用する方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989に記載されている。PCR-プライマー対は、例えば、その目的のために意図されるコンピュータープログラムを使用することによって、既知の配列から誘導され得る。
【0068】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNAの特定の断片を「増幅」するための技術である。PCRを行うためには、複製されるDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が既知でなければならない。一般に、増幅されるDNA(既知の配列)の各鎖の3’末端のヌクレオチド配列に相補的(例えば、実質的に相補的又は完全に相補的)なプライマー又は短いオリゴヌクレオチドが使用される。DNAサンプルを加熱してその鎖を分離し、プライマーと混合する。プライマーは、DNAサンプル中のそれらの相補的配列にハイブリダイズする。元のDNA鎖を鋳型として使用して合成が開始する(5’から3’方向)。反応混合物は、4つ全てのデオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)及びDNAポリメラーゼを含有しなければならない。重合は、新たに合成された各鎖が他のプライマーによって認識される配列を含むのに十分に進行するまで続く。これが起こると、元の分子と同一である2つのDNA分子が生成される。これらの2つの分子は、それらの鎖を分離するために加熱され、このプロセスが繰り返される。各サイクルでDNA分子の数が2倍になる。自動化された装置を用いて、複製の各サイクルを5分未満で完了することができる。30サイクル後、DNAの単一分子として開始したものは、10億を超えるコピーに増幅されている(230=1.02×109)。
【0069】
オリゴヌクレオチドプライマー対のオリゴヌクレオチドは、反対のDNA鎖上に位置し、増幅されるべき領域に隣接するDNA配列に相補的である。アニーリングされたプライマーは、新たに合成されたDNA鎖にハイブリダイズする。最初の増幅サイクルは、その5’末端がオリゴヌクレオチドプライマーの位置によって固定されるが、その3’末端が可変である(不規則な(ragged)3’末端)2つの新しいDNA鎖を生じる。2つの新しい鎖は、次に、所望の長さの相補鎖の合成のための鋳型として働くことができる(5’末端はプライマーによって規定され、合成は、対向するプライマーの末端を越えて進行することができないため、3’末端は固定される)。数サイクル後、所望の固定長の産物が優勢になり始める。
【0070】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応とも称される定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、PCR反応からのDNA産物の蓄積をリアルタイムでモニターする。qPCRは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく分子生物学の実験室技術であり、標的DNA分子を増幅し、同時に定量するために使用される。特異的配列の1コピーでさえ、PCRにおいて増幅及び検出することができる。PCR反応は、DNA鋳型のコピーを指数関数的に生成する。これは、出発標的配列の量と任意の特定のサイクルで蓄積されたPCR産物の量との間の定量的関係を生じる。鋳型、試薬制限又はピロリン酸分子の蓄積で見出されるポリメラーゼ反応の阻害剤のために、PCR反応は、最終的に、指数関数的速度(即ち、プラトー相)で鋳型を生成するのを停止し、PCR産物の終点定量を信頼できないものにする。従って、重複反応は、可変量のPCR産物を生成し得る。PCR反応の指数関数相の間のみ、鋳型配列の開始量を決定するために外挿し戻すことが可能である。PCR産物が蓄積するときのPCR産物の測定(即ち、リアルタイム定量PCR)は、反応の指数関数相における定量を可能にし、従って、従来のPCRに関連する変動性を除去する。リアルタイムPCRアッセイにおいて、陽性反応は、蛍光シグナルの蓄積によって検出される。DNAサンプル中の1つ以上の特異的配列について、定量的PCRは、検出及び定量の両方を可能にする。この量は、コピーの絶対数、又はDNAインプットに対して正規化された場合の相対量、又は更なる正規化遺伝子のいずれかであり得る。リアルタイムPCRの最初の記録以来、それは、mRNA発現研究、ゲノム又はウイルスDNAにおけるDNAコピー数測定、対立遺伝子識別アッセイ、遺伝子の特異的スプライスバリアントの発現分析、並びにパラフィン包埋組織及びレーザー捕獲顕微解剖細胞における遺伝子発現を含む、増大する及び多様な数の応用に使用されてきた。
【0071】
本明細書で使用される場合、「Ct値」という表現は、「閾値サイクル」を指し、これは、「増幅された標的の量が固定閾値に達する分数サイクル数」と定義される。いくつかの実施形態では、これは、増幅曲線と閾値線との交点を表す。増幅曲線は、典型的には、所与のサイクル(X軸)での各反応の相対蛍光(Y軸)の変化を示す「S」字形であり、これは、いくつかの実施形態では、リアルタイムPCR機器によってPCR中に記録される。閾値線は、いくつかの実施形態では、反応がバックグラウンドを超える蛍光強度に達する検出のレベルである。Livak & Schmittgen(2001)25 Methods 402-408を参照されたい。これは、PCRにおける標的の濃度の相対的尺度である。一般に、qPCRのような定量アッセイのための良好なCt値は、いくつかの実施形態では、所与の参照遺伝子について10~40の範囲である。Ctレベルは、サンプル中の標的核酸の量に反比例する(即ち、Ctレベルが低いほど、サンプル中の検出可能な標的核酸の量が多い)。加えて、qPCRのような定量アッセイについての良好なCt値は、標的gDNAの比例希釈で線形応答範囲を示す。
【0072】
いくつかの実施形態では、qPCRは、Ct値が定量分析のためにリアルタイムで収集され得る条件下で行われる。例えば、典型的なqPCR実験において、DNA増幅は、伸長段階の間のPCRの各サイクルでモニターされる。DNAが増幅の対数線形相にある場合、蛍光の量は、一般にバックグラウンドを超えて増加する。いくつかの実施形態では、Ct値は、この時点で収集される。
【0073】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、任意の生細胞を指す。細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。細胞は、単離することができる。細胞は、生物に再生することができてもできなくてもよい。細胞は、組織、カルス、培養物、器官、又は部分の状態であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、植物細胞であってもよい。本発明の植物細胞は、単離された単一細胞の形態であり得るか、又は培養された細胞であり得るか、又は例えば植物組織若しくは植物器官のようなより高度に組織化された単位の一部であり得る。植物細胞は、被子植物若しくは裸子植物に由来し得るか、又はその一部であり得る。更なる実施形態では、植物細胞は、単子葉植物細胞、双子葉植物細胞であってもよい。単子葉植物細胞は、例えば、トウモロコシ、イネ、モロコシ、サトウキビ、大麦、小麦、カラス麦、芝草、又は観賞用草細胞であり得る。双子葉植物細胞は、例えば、タバコ、コショウ、ナス、ヒマワリ、アブラナ科、アマ、ジャガイモ、綿、大豆、テンサイ、又はアブラナ細胞であってもよい。
【0074】
「植物部分」という用語は、限定されるものではないが、本明細書で使用される場合、胚、花粉、胚珠、種子、葉、茎、苗条、花、枝、果実、穀粒、穂(ear)、穂軸(cob)、殻、柄、根、根端、葯、植物細胞を含み、植物細胞は、植物及び/又は植物の一部、植物プロトプラスト、植物組織、植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊等において無傷である植物細胞を含む。本明細書で使用される場合、「苗条」は、葉及び茎を含む地上部分を指す。更に、本明細書で使用される場合、「植物細胞」は、細胞壁を含み、プロトプラストとも称され得る、植物の構造的及び生理的単位を指す。
【0075】
細胞、原核細胞、細菌細胞、真核細胞、植物細胞、植物及び/又は植物部分の状況における「導入している」又は「導入する」という用語は、核酸分子が細胞、真核細胞、植物細胞、並びに/又は植物及び/若しくは植物部分の細胞の内部に接近するように、核酸分子を細胞、真核細胞、植物、植物部分及び/又は植物細胞と接触させることを意味する。2つ以上の核酸分子が導入される場合、これらの核酸分子は、単一のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物の一部として、又は別個のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物として組み立てられ得、同じ又は異なる核酸構築物上に位置し得る。従って、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換事象において、別々の形質転換事象において、又は例えば繁殖プロトコルの一部として、植物細胞に導入され得る。
【0076】
「逆位」は、染色体のセグメントが端から端まで反転する染色体再配置である。逆位は、単一の染色体が破損を経て自己内で再配置されると起こる。染色体の「転座」は、非相同染色体間での部分の再配置である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「形質転換された」及び「遺伝子導入」という用語は、少なくとも1つの組換え(例えば、異種)ポリヌクレオチドの全部又は一部を含有する任意の細胞、原核細胞、真核細胞、植物、植物細胞、カルス、植物組織、又は植物部分を指す。いくつかの実施形態では、組換えポリヌクレオチドの全部又は一部は、染色体又は安定な染色体外エレメントに安定的に統合され、その結果、連続した世代に渡される。本発明の目的のために、「組換えポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子工学によって変更され、再配置され、又は改変されたポリヌクレオチドを指す。例としては、異種配列に結合又は連結された任意のクローン化ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドが挙げられる。「組換え」という用語は、自然発生的変異のような天然に存在する事象から、又は非自然発生的変異誘発に続く選択的繁殖から生じるポリヌクレオチドの変化を指すものではない。
【0078】
本明細書で使用される「形質転換」という用語は、異種核酸の細胞への導入を指す。細胞の形質転換は、安定的であっても一過性であってもよい。従って、本発明の遺伝子導入細胞、植物細胞、植物及び/又は植物部分は、安定的に形質転換され得るか、又は一過性に形質転換され得る。形質転換は、宿主細胞のゲノムへの核酸分子の転移を指し得、遺伝的に安定な継承をもたらす。いくつかの実施形態では、植物、植物部分及び/又は植物細胞への導入は、細菌媒介形質転換、粒子衝撃形質転換、リン酸カルシウム媒介形質転換、シクロデキストリン媒介形質転換、エレクトロポレーション、リポソーム媒介形質転換、ナノ粒子媒介形質転換、ポリマー媒介形質転換、ウイルス媒介核酸送達、ウィスカー媒介核酸送達、マイクロインジェクション、超音波処理、浸潤、ポリエチレングリコール媒介形質転換、プロトプラスト形質転換、又は植物、植物部分及び/若しくはその細胞への核酸の導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的及び/若しくは生物学的メカニズム、又はそれらの任意の組合せを介する。
【0079】
植物を形質転換するための手順は、当技術分野で周知且つ日常的であり、文献を通して記載される。植物の形質転換のための方法の非限定的な例としては、細菌媒介核酸送達(例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属からの細菌を介する)、ウイルス媒介核酸送達、炭化ケイ素又は核酸ウィスカー媒介核酸送達、リポソーム媒介核酸送達、マイクロインジェクション、マイクロ粒子衝撃、リン酸カルシウム媒介形質転換、シクロデキストリン媒介形質転換、エレクトロポレーション、ナノ粒子媒介形質転換、超音波処理、浸潤、PEG媒介核酸取り込み、並びに植物細胞への核酸の導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的(機械的)及び/又は生物学的メカニズム(これらの任意の組み合わせを含む)を介する形質転換が挙げられる。当技術分野で既知の種々の植物形質転換法への一般的なガイドとしては、Miki et al.(“Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants”in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology,Glick,B.R.and Thompson,J.E.,Eds.(CRC Press,Inc.,Boca Raton,1993),pages 67-88)及びRakowoczy-Trojanowska(Cell Mol Biol Lett 7:849-858(2002))が挙げられる。
【0080】
アグロバクテリウム媒介形質転換は、形質転換の高い効率のため、及び多くの異なる種とのその広範な有用性のために、植物を形質転換するために一般に使用される方法である。アグロバクテリウム媒介形質転換は、典型的には、目的の外来DNAを担持するバイナリーベクターを、共存するTiプラスミド上又は染色体上のいずれかで宿主アグロバクテリウム(Agrobacterium)株によって担持されるvir遺伝子の補体に依存し得る適切なアグロバクテリウム(Agrobacterium)株に導入することを含む(Uknes et al.1993,Plant Cell 5:159-169)。組換えバイナリーベクターのアグロバクテリウム(Agrobacterium)への導入は、組換えバイナリーベクターを担持する大腸菌(Escherichia coli)、組換えバイナリーベクターを標的アグロバクテリウム(Agrobacterium)株に動員することができるプラスミドを担持するヘルパー大腸菌(E.coli)株を用いる三親交配手順によって達成することができる。或いは、組換えバイナリーベクターは、核酸形質転換によってアグロバクテリウム(Agrobacterium)に導入され得る(Hoefgen and Willmitzer 1988,Nucleic Acids Res 16:9877)。
【0081】
組換えアグロバクテリウム(Agrobacterium)による植物の形質転換は、通常、植物からの外植片とのアグロバクテリウム(Agrobacterium)の共培養を含み、当技術分野で周知の方法に従う。形質転換された組織は、典型的には、バイナリープラスミドT-DNA境界の間に抗生物質又は除草剤耐性マーカーを保有する選択培地上で再生される。
【0082】
植物、植物部分及び植物細胞を形質転換するための別の方法は、植物組織及び細胞において不活性又は生物学的に活性な粒子を推進することを含む。例えば、米国特許第4,945,050号明細書、同第5,036,006号明細書及び同第5,100,792号明細書を参照されたい。一般に、この方法は、細胞の外表面に浸透し、その内部に組み込むのに有効な条件下で、植物細胞において不活性又は生物学的に活性な粒子を推進することを含む。不活性粒子が利用される場合、ベクターは、目的の核酸を含むベクターで粒子をコーティングすることによって、細胞に導入され得る。或いは、1つ以上の細胞をベクターによって取り囲むことができ、その結果、ベクターは、粒子の伴流によって細胞内に運ばれる。生物学的に活性な粒子(例えば、各々が導入されることが求められる1つ以上の核酸を含む、乾燥酵母細胞、乾燥細菌又はバクテリオファージ)もまた、植物組織中に推進され得る。
【0083】
ポリヌクレオチドの状況における「一過性形質転換」は、ポリヌクレオチドが細胞に導入され、細胞のゲノムに統合されないことを意味する。
【0084】
本明細書で使用される場合、細胞に導入されるポリヌクレオチドの状況において、「安定的に導入する」、「安定的に導入される」、「安定な形質転換」、又は「安定的に形質転換される」は、導入されたポリヌクレオチドが細胞のゲノムに安定的に統合され、従って、細胞がポリヌクレオチドで安定的に形質転換されていることを意味する。従って、統合されたポリヌクレオチドは、その子孫によって、より詳細には、複数の連続した世代の子孫によって遺伝され得る。本明細書で使用される「ゲノム」は、核及び/又は色素体ゲノムを含み、従って、例えば、葉緑体ゲノムへのポリヌクレオチドの統合を含む。本明細書で使用される安定な形質転換はまた、染色体外に維持されるポリヌクレオチド(例えば、ミニ染色体)を指す。
【0085】
一過性の形質転換は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はウェスタンブロットによって検出され得、これは、生物に導入された1つ以上の核酸分子によってコードされるペプチド又はポリペプチドの存在を検出し得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、生物(例えば、植物)に導入された核酸分子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出され得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、植物又は他の生物に導入された核酸分子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた細胞のRNAのノーザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。細胞の安定な形質転換はまた、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当技術分野で周知の他の増幅反応によって検出することができ、核酸分子の標的配列とハイブリダイズする特異的プライマー配列を使用し、標的配列の増幅をもたらし、これは、標準的な方法に従って検出され得る。形質転換はまた、当技術分野で周知の直接配列決定及び/又はハイブリダイゼーションプロトコルによって検出することができる。
【0086】
従って、本発明の特定の実施形態において、植物細胞は、当技術分野で既知の任意の方法によって、また本明細書に記載されるように、形質転換され得、無傷の植物は、種々の既知の技術のいずれかを使用して、これらの形質転換細胞から再生され得る。植物細胞、植物組織培養物及び/又は培養プロトプラストからの植物再生は、例えば、Evans et al.(Handbook of Plant Cell Cultures,Vol.1,MacMilan Publishing Co.New York(1983));及びVasil I.R.(ed.)(Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Acad.Press,Orlando,Vol.I(1984),and Vol.II(1986))に記載されている。形質転換された遺伝子導入植物、植物細胞、及び/又は植物組織培養物を選択する方法は、当技術分野で慣用的であり、本明細書に提供される本発明の方法において使用され得る。
【0087】
「形質転換及び再生プロセス」は、植物細胞に導入遺伝子を安定的に導入し、遺伝子導入植物細胞から植物を再生するプロセスを指す。本明細書で使用される場合、形質転換及び再生は、形質転換された細胞が選択剤の存在下で生存し、発達的に繁殖するように、導入遺伝子が選択マーカーを含み、形質転換された細胞が導入遺伝子を組み込んで発現する選択プロセスを含む。「再生」は、植物細胞、植物細胞の群、又は植物片、例えばプロトプラスト、カルス、又は組織部分から植物全体を成長させることを指す。
【0088】
「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸配列」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において、ヌクレオチドのヘテロポリマーを指すために互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNA又はRNA、並びにRNA及びDNAのキメラを含むRNA及びDNAの両方を包含する。核酸分子という用語は、鎖の長さに関係なくヌクレオチドの鎖を指す。ヌクレオチドは、糖、リン酸、及びプリン又はピリミジンのいずれかである塩基を含む。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸分子は、センス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。核酸分子は、オリゴヌクレオチド類似体又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を用いて合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、変化した塩基対合能力又はヌクレアーゼに対する増大した耐性を有する核酸分子を調製するために使用され得る。本明細書に提供される核酸配列は、左から右への5’から3’方向に提示され、米国配列規則、37 CFR§§1.821-1.825及び世界知的所有権機関(WIPO)規格ST.25に記載されているヌクレオチド文字を表すための標準コードを使用して表される。
【0089】
「核酸断片」は、所与の核酸分子の断片である。「RNA断片」は、所与のRNA分子の断片である。「DNA断片」は、所与のDNA分子の断片である。「核酸断片」は、所与の核酸分子の断片であり、分子から単離されていない。「RNA断片」は、所与のRNA分子の断片であり、分子から単離されていない。「DNA断片」は、所与のDNA分子の断片であり、分子から単離されていない。ポリヌクレオチドのセグメントは、任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300又は500以上のヌクレオチド長であり得る。ガイド配列のセグメント又は部分は、ガイド配列の約50%、40%、30%、20%、10%、例えば、ガイド配列の3分の1以下、例えば、7、6、5、4、3、又は2ヌクレオチド長であり得る。
【0090】
分子の状況における「に由来する」という用語は、親分子又はその親分子からの情報を使用して単離又は作製された分子を指す。例えば、Cas9単一変異体ニッカーゼ及びCas9二重変異体ヌル-ヌクレアーゼは、各々、野生型Cas9タンパク質に由来する。
【0091】
高等植物において、デオキシリボ核酸(DNA)は遺伝物質であり、一方、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含まれる情報のタンパク質への転移に関与する。「ゲノム」は、生物の各細胞に含まれる遺伝物質の全体である。他に示されない限り、本発明の特定の核酸配列はまた、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列並びに明示的に示される配列を暗黙に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。核酸分子という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。
【0092】
本明細書で使用される「配列同一性」は、成分(例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸)のアライメントのウィンドウ全体にわたって、2つの最適に整列されたポリヌクレオチド又はペプチド配列が不変である程度を指す。「同一性」は、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,New York(1991)に記載されているものを含むがこれらに限定されない、既知の方法によって容易に計算することができる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「配列同一性パーセント」又は「同一性パーセント」という用語は、2つの配列が最適に整列される場合の試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(又はその相補鎖)と比較した、参照(「問い合わせ」)ポリヌクレオチド分子(又はその相補鎖)の線状ポリヌクレオチド配列中の同一ヌクレオチドの百分率を指す。いくつかの実施形態では、「同一性パーセント」は、アミノ酸配列中の同一アミノ酸の百分率を指すことができる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「実質的に同一」という表現は、2つの核酸分子、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列の状況において、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、又は目視検査によって測定して、最大対応について比較及び整列された場合に、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のヌクレオチド又はアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。本発明のいくつかの実施形態では、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50残基~約150残基である配列の領域にわたって存在する。従って、本発明のいくつかの実施形態では、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、又はそれを超える残基である配列の領域にわたって存在する。いくつかの特定の実施形態では、配列は、少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。更なる実施形態では、配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。更に、代表的な実施形態では、実質的に同一のヌクレオチド又はタンパク質配列は、実質的に同じ機能を行う(例えば、特定のゲノム標的への誘導、特定のゲノム標的部位のエンドヌクレアーゼ切断)。
【0095】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0096】
比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアライメントは、当業者に周知であり、Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズム、Needleman及びWunschの相同性アライメントアルゴリズム、Pearson及びLipmanの類似性方法の検索等のツールによって、及び場合により、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.、San Diego、CA)の一部として入手可能なGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA等のこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって、実施することができる。試験配列及び参照配列の整列されたセグメントについての「同一性分数」は、2つの整列された配列によって共有される同一の成分の数を、参照配列セグメント(即ち、参照配列全体又は参照配列のより小さい規定された部分)中の成分の総数で割ったものである。配列同一性パーセントは、同一性分数に100を掛けたものとして表される。1つ以上のポリヌクレオチド配列の比較は、全長ポリヌクレオチド配列若しくはその一部、又はより長いポリヌクレオチド配列に対するものであり得る。本発明の目的のために、「同一性パーセント」はまた、翻訳されたヌクレオチド配列については、BLASTXバージョン2.0を使用し、ポリヌクレオチド配列については、BLASTNバージョン2.0を使用して決定され得る。
【0097】
BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含み、これは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合に、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するか、又は満たす。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、1990)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。次いで、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(1対のマッチング残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下し、累積スコアが1つ以上の負のスコアリング残基アライメントの累積のためにゼロ以下になるか、又はいずれかの配列の末端に到達した場合に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0098】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸配列は、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率が約0.1未満~約0.001未満である場合、参照配列に類似すると考えられる。従って、本発明のいくつかの実施形態では、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率は、約0.001未満である。
【0099】
2つのヌクレオチド配列はまた、2つの配列がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする場合、実質的に同一であると考えられ得る。いくつかの代表的な実施形態では、実質的に同一であると考えられる2つのヌクレオチド配列は、高度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする。
【0100】
核酸ハイブリダイゼーション実験、例えばサザン及びノーザンハイブリダイゼーションの状況における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、異なる環境パラメーターの下で異なっている。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”Elsevier,New York(1993)に見出される。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、規定されたイオン強度及びpHにおける特異的配列についての熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。
【0101】
Tmとは、標的配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする(規定のイオン強度及びpHの下での)温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブについてのTmに等しくなるように選択される。サザン又はノーザンブロットにおいてフィルター上に100を超える相補的残基を有する相補的ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃での50%ホルムアミドと1mgのヘパリンであり、ハイブリダイゼーションは、一晩行われる。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、72℃で約15分間、0.1 5M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2x SSC洗浄である(SSC緩衝液の記載については、下記のSambrookを参照されたい)。しばしば、バックグラウンドプローブシグナルを除去するために、高ストリンジェンシー洗浄の前に、低ストリンジェンシー洗浄が行われる。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての中程度のストリンジェンシー洗浄の例は、45℃で15分間の1x SSCである。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての低ストリンジェンシー洗浄の例は、40℃で15分間の4~6x SSCである。短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)の場合、ストリンジェントな条件は、典型的には、約1.0M未満のNaイオンの塩濃度、典型的には、pH7.0~8.3で約0.01~1.0MのNaイオン濃度(又は他の塩)を含み、温度は、典型的には、少なくとも約30℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によっても達成することができる。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係なプローブについて観察されるものよりも2倍(又はそれよりも高い)のシグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしないヌクレオチド配列は、それらがコードするタンパク質が実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。これは、例えば、ヌクレオチド配列のコピーが遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重を用いて作製される場合に起こり得る。
【0102】
以下は、本発明の参照ヌクレオチド配列と実質的に同一である相同ヌクレオチド配列をクローニングするために使用され得るハイブリダイゼーション/洗浄条件のセットの例である。一実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で2X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。別の実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で1X SSC、0.1% SDS中で洗浄し、又は50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で0.5X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。なお更なる実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、50℃で0.1X SSC、0.1% SDS中で洗浄し、又は50℃で7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の「試験」ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、65℃で0.1X SSC、0.1% SDS中で洗浄する。
【0103】
「単離された」核酸分子若しくはヌクレオチド配列又は「単離された」ポリペプチドは、ヒトの手によって、その天然の環境とは別に存在し、及び/又はその天然の環境におけるその機能と比較して異なる、改変された、調節された、及び/又は変更された機能を有し、従って天然の産物ではない、核酸分子、ヌクレオチド配列又はポリペプチドである。単離された核酸分子又は単離されたポリペプチドは、精製された形態で存在し得るか、又は非天然環境(例えば、組換え宿主細胞)において存在し得る。従って、例えば、ポリヌクレオチドに関して、単離されるという用語は、それが天然に存在する染色体及び/又は細胞から分離されることを意味する。ポリヌクレオチドはまた、それが天然に存在する染色体及び/又は細胞から分離され、次いで遺伝的状況、染色体、染色体位置、及び/又はそれが天然に存在しない細胞に挿入される場合、単離される。本発明の組換え核酸分子及びヌクレオチド配列は、上記で定義したように「単離された」と考えることができる。
【0104】
従って、「単離された核酸分子」又は「単離されたヌクレオチド配列」は、それが由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて、それが直接隣接している(5’末端に1つ、3’末端に1つ)ヌクレオチド配列に対して直接隣接していない核酸分子又はヌクレオチド配列である。従って、一実施形態では、単離された核酸は、コード配列に直接隣接する5’非コード(例えば、プロモーター)配列のいくつか又は全てを含む。従って、この用語は、例えば、ベクター、自律複製プラスミド若しくはウイルス、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるか、又は他の配列とは無関係に別個の分子(例えば、PCR又は制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されるcDNA又はゲノムDNA断片)として存在する組換え核酸を含む。それはまた、更なるポリペプチド又はペプチド配列をコードするハイブリッド核酸分子の一部である組換え核酸を含む。「単離された核酸分子」又は「単離されたヌクレオチド配列」はまた、同じ天然の元の細胞型に由来し、挿入されるが、非天然の状態で存在する、例えば異なるコピー数で存在する、及び/又は核酸分子の天然の状態で見出されるものとは異なる調節配列の制御下で存在する、ヌクレオチド配列を含み得る。
【0105】
「単離された」という用語は、更に、細胞物質、ウイルス物質、及び/又は培養培地を実質的に含まない核酸分子、ヌクレオチド配列、ポリペプチド、ペプチド、又は断片(例えば、組換えDNA技術によって生成された場合)、又は化学的前駆体若しくは他の化学物質(例えば、化学的に合成された場合)を指すことができる。更に、「単離された断片」は、断片として天然には存在せず、そのようなものとして天然の状態では見出されない核酸分子、ヌクレオチド配列、又はポリペプチドの断片である。「単離された」は、調製物が技術的に純粋(均質)であることを必ずしも意味しないが、意図された目的のために使用することができる形態でポリペプチド又は核酸を提供するのに十分に純粋である。
【0106】
本発明の代表的な実施形態では、「単離された」核酸分子、ヌクレオチド配列、及び/又はポリペプチドは、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%(w/w)又はそれを超える純度である。他の実施形態では、「単離された」核酸、ヌクレオチド配列、及び/又はポリペプチドは、出発物質と比較して、核酸(w/w)の少なくとも約5倍、10倍、25倍、100倍、1000倍、10,000倍、100,000倍又はそれを超える濃縮が達成されていることを示す。
【0107】
「野生型」ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、天然に存在する(「天然」)又は内因性のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を指す。従って、例えば、「野生型mRNA」は、生物内に天然に存在する、又は生物に内因性のmRNAである。「相同」ヌクレオチド配列は、それが導入される宿主細胞に天然に関連するヌクレオチド配列である。
【0108】
「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」という用語は、コード配列の翻訳開始コドンと終結コドンとの間にコードされるアミノ酸配列を指す。「開始コドン」及び「終結コドン」という用語は、各々、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始及び連鎖終結を指定するコード配列中の3つの隣接するヌクレオチド(「コドン」)の単位を指す。
【0109】
「プロモーター」は、通常そのコード配列の上流(5’)にあるヌクレオチド配列を指し、これはRNAポリメラーゼ及び適切な転写に必要な他の因子に対する認識を提供することによってコード配列の発現を制御する。「プロモーター調節配列」は、近位及びより遠位の上流エレメントから成る。プロモーター調節配列は、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング又は安定性、又は翻訳に影響を及ぼす。調節配列には、エンハンサー、プロモーター、非翻訳リーダー配列、イントロン、及びポリアデニル化シグナル配列が含まれる。これらには、天然及び合成配列、並びに天然及び合成配列の組み合わせであり得る配列が含まれる。「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激し得るDNA配列であり、プロモーターの生得的エレメント、又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を高めるために挿入された異種エレメントであり得る。エンハンサーは、両方の配向(通常又は反転)で作動することができ、プロモーターから上流又は下流のいずれかに移動させても機能することができる。「プロモーター」という用語の意味は、「プロモーター調節配列」を含む。
【0110】
「一次形質転換体」及び「T0世代」は、最初に形質転換された(即ち、形質転換から減数分裂及び受精を経ていない)組織と同じ遺伝的世代である遺伝子導入植物を指す。「二次形質転換体」及び「T1、T2、T3等の世代」は、1つ以上の減数分裂及び受精サイクルを経て一次形質転換体に由来する遺伝子導入植物を指す。これらは、一次若しくは二次形質転換体の自家受精、又は一次若しくは二次形質転換体と他の形質転換された若しくは形質転換されていない植物との交配によって誘導され得る。
【0111】
「導入遺伝子」は、形質転換によってゲノムに導入され、安定的に維持されている核酸分子を指す。導入遺伝子は、少なくとも1つの発現カセットを含んでもよく、典型的には、少なくとも2つの発現カセットを含み、10以上の発現カセットを含んでもよい。導入遺伝子には、例えば、形質転換される特定の植物の遺伝子と異種又は同種の遺伝子が含まれ得る。更に、導入遺伝子には、非天然生物に挿入された天然遺伝子、又はキメラ遺伝子が含まれ得る。「内因性遺伝子」という用語は、生物のゲノム中の天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物には通常見られないが、遺伝子導入によって生物に導入される遺伝子を指す。
【0112】
「イントロン」は、ほとんど真核生物の遺伝子内にのみ存在するが、遺伝子産物中のアミノ酸配列には翻訳されないDNAの介在区分を指す。イントロンは、スプライシングと呼ばれるプロセスを経て未熟なmRNAから除去され、スプライシングは、エキソンをそのままに残してmRNAを形成する。本発明の目的のために、「イントロン」という用語の定義は、標的遺伝子に由来するイントロンのヌクレオチド配列に対する改変を含むが、但し、改変されたイントロンは、その関連する5’調節配列の活性を有意に低下させないことを条件とする。
【0113】
「エキソン」は、タンパク質又はその一部のコード配列を有するDNAの部分を指す。エキソンは、介在する非コード配列(イントロン)によって分離されている。本発明の目的のために、「エキソン」という用語の定義は、標的遺伝子に由来するエキソンのヌクレオチド配列に対する改変を含むが、但し、改変されたエキソンは、その関連する5’調節配列の活性を有意に低下させないことを条件とする。
【0114】
「切断」又は「切断している」という用語は、ポリヌクレオチドのリボシルホスホジエステルバックボーンにおける共有結合ホスホジエステル結合の切断を意味する。「切断」又は「切断している」という用語は、一本鎖切断及び二本鎖切断の両方を包含する。二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。切断は、平滑末端又は互い違いの末端のいずれかの生成をもたらすことができる。「ヌクレアーゼ切断部位」又は「ゲノムヌクレアーゼ切断部位」は、特定のヌクレアーゼによって認識されるヌクレアーゼ切断配列を含むヌクレオチドの領域であり、これは、一方又は両方の鎖においてゲノムDNAのヌクレオチド配列を切断するように作用する。ヌクレアーゼ酵素によるこのような切断は、細胞内でDNA修復機構を開始させ、それが相同組換えを起こすための環境を確立する。
【0115】
「ドナー分子」、又は「ドナー配列」は、標的ポリヌクレオチド、典型的には標的ゲノム部位での挿入を意図したヌクレオチドポリマー又はオリゴマーである。ドナー配列は、1つ以上の導入遺伝子、発現カセット、又は目的のヌクレオチド配列であってよい。ドナー分子は、一本鎖、部分的二本鎖、又は二本鎖のいずれかのドナーDNA分子であり得る。ドナーポリヌクレオチドは、天然又は改変ポリヌクレオチド、RNA-DNAキメラ、又はDNA断片(一本鎖又は少なくとも部分的に二本鎖、又は完全に二本鎖のDNA分子のいずれか)、又はPGR増幅ssDNA又は少なくとも部分的にdsDNA断片であり得る。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、環状化DNA分子の一部である。dsDNA断片は一般にssDNAよりもヌクレアーゼ分解に対して耐性があるので、完全二本鎖ドナーDNAは、安定性の増加をもたらし得るため有利である。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチド分子は、少なくとも約100、150、200、250、300、250、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、7500、10000、15,000又は20,000ヌクレオチドを含むことができる(本明細書に明示的に列挙されていないこの範囲内の任意の値を含む)。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、異種核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、少なくとも1つの発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、少なくとも1つの発現カセットを含む導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、標的ゲノムに対して天然である遺伝子の対立遺伝子改変を含む。対立遺伝子改変は、少なくとも1つのヌクレオチド挿入、少なくとも1つのヌクレオチド欠失、及び/又は少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み得る。いくつかの実施形態では、対立遺伝子改変は、INDELを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、標的ゲノム部位に対する相同アームを含む。いくつかの実施形態では、ドナーDNA分子は、ゲノム核酸配列と少なくとも90%同一である少なくとも100個の連続したヌクレオチドを含み、場合により導入遺伝子等の異種核酸配列を更に含み得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、本発明の1つ以上のヌクレオチド配列に関連した用語「近位」又は「の近位」は、すぐ隣(例えば、介在配列を有さない)、又は約1塩基~約500塩基(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100、200、250、300、350、400、450、又は500塩基)(この範囲内に含まれるが本明細書に明示的に列挙されない任意の値を含む)分離されていることを意味する。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「ガイドRNA」又は「gRNA」は、一般に、Cas又はCpf1タンパク質のようなCRISPRシステムエフェクターに結合し、Cas又はCpf1タンパク質を標的ポリヌクレオチド(例えば、DNA)内の特定の位置に標的化することを補助し得るRNA分子(又は集合的にRNA分子の群)を指す。本発明のガイドRNAは、操作された単一RNA分子(sgRNA)であり得、ここで、例えば、sgRNAは、crRNAセグメント及び場合によりtracrRNAセグメントを含む。本発明のガイドRNAはまた、デュアルガイドシステムであり得、ここで、crRNA及びtracrRNA分子は、物理的に異なる分子であり、次いで、相互作用して、Cas9のようなCRISPRシステムエフェクターの動員のため、及び標的ポリヌクレオチドへのそのタンパク質の標的化のための二重鎖を形成する。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「crRNA」又は「crRNAセグメント」は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列、タンパク質結合に関与するステム配列、及び場合により3’-オーバーハング配列を含むRNA分子又はRNA分子の部分を指す。ポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、標的DNA中の配列に相補的な核酸配列である。このポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、「プロトスペーサー」とも称される。換言すれば、本発明のcrRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、ハイブリダイゼーション(即ち、塩基対合)を介して配列特異的方法で標的DNAと相互作用する。従って、crRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列のヌクレオチド配列は、様々であり、DNAガイドRNAと標的DNAが相互作用するであろう標的DNA内の位置を決定し得る。
【0119】
crRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、改変されて(例えば、遺伝子操作により)、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズすることができる。本発明のcrRNA分子のポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約12ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約12ヌクレオチド(nt)~約80nt、約12nt~約50nt、約12nt~約40nt、約12nt~約30nt、約12nt~約25nt、約12nt~約20nt、又は約12nt~約19ntの長さを有し得る。例えば、本発明のcrRNAのDNA標的化セグメントは、約17nt~約27ntの長さを有し得る。例えば、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、約19nt~約20nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約19nt~約70nt、約19nt~約80nt、約19nt~約90nt、約19nt~約100nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、約20nt~約60nt、約20nt~約70nt、約20nt~約80nt、約20nt~約90nt、又は約20nt~約100ntの長さを有し得る。crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列のヌクレオチド配列は、少なくとも約12ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、crRNAのポリヌクレオチド標的化ガイド配列は、19ヌクレオチド長である。
【0120】
本発明はまた、操作されたcrRNAを含むガイドRNAを提供し、ここで、crRNAは、ゲノム標的配列にハイブリダイズすることができるベイトRNAセグメントを含む。この操作されたcrRNAは、デュアルガイドシステムにおけるように、物理的に異なる分子であり得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「tracrRNA」又は「tracrRNAセグメント」は、タンパク質結合セグメントを含むRNA分子又はその部分を指す(例えば、タンパク質結合セグメントは、Cas9等のCRISPR関連タンパク質と相互作用することができる)。本発明はまた、操作されたtracrRNAを含むガイドRNAを提供し、ここで、tracrRNAは、ドナーDNA分子に結合することができるベイトRNAセグメントを更に含む。操作されたtracrRNAは、デュアルガイドシステムにおけるように、物理的に異なる分子であってもよく、又はsgRNA分子のセグメントであってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、sgRNAとして、又は2つ以上のRNA分子としてのいずれかで、いくつかのCRISPR関連ヌクレアーゼ、例えばCpf1(Cas12aとしても公知)が、そのRNA媒介エンドヌクレアーゼ活性のためにtracrRNAを必要としないことが当技術分野で公知であるように、tracrRNAを含まない(Qi et al.,2013,Cell,152:1173-1183;Zetsche et al.,2015,Cell 163:759-771)。本発明のこのようなガイドRNAは、crRNAを含み得、ベイトRNAがcrRNAの5’又は3’末端で作動可能に連結されている。Cpf1はまた、その同族プレcrRNAに対してRNase活性を有する(Fonfara et al.,2016,Nature,doi.org/10.1038/nature17945)。本発明のガイドRNAは、Cpf1が成熟crRNAに対して有する複数のcrRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、これらのcrRNAの各々は、ベイトRNAに作動可能に連結される。他の実施形態では、これらのcrRNAの少なくとも1つは、ベイトRNAに作動可能に連結される。ベイトRNAは、
図1に示され、本明細書の実施例に記載されるように、目的の配列(SOI)に特異的であってもよく、又は、
図2に示され、本明細書の実施例に記載されるように、「普遍的」ベイトであってもよく、これは、対応する「普遍的」プレイ(prey)配列をドナーDNA分子上に有する。
【0123】
本発明はまた、本発明のガイドRNAをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。この核酸分子は、DNA又はRNA分子であり得る。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、環状化されている。他の実施形態では、この核酸分子は、線状である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、一本鎖、部分二本鎖、又は二本鎖である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、少なくとも1つのポリペプチドと複合体化される。ポリペプチドは、核酸認識ドメイン又は核酸結合ドメインを有し得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、例えば、本発明のキメラRNA、ヌクレアーゼ、及び場合によりドナー分子の送達を媒介するためのシャトルである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Feldanシャトル(米国特許出願公開第20160298078号明細書、参照により本明細書に組み込まれる)である。核酸分子は、キメラRNAの発現を駆動することができる発現カセットを含み得る。核酸分子は、例えば、CRISPR関連ヌクレアーゼ等のヌクレアーゼを発現することができる追加の発現カセットを更に含んでもよい。本発明はまた、本発明のキメラRNAをコードする核酸配列を含む発現カセットを提供する。
【0124】
「部位特異的改変ポリペプチド」は、標的DNA(例えば、標的DNAの切断又はメチル化)及び/又は標的DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストン尾部のメチル化又はアセチル化)を改変する。部位特異的改変ポリペプチドは、本明細書では、「部位特異的ポリペプチド」又は「RNA結合部位特異的改変ポリペプチド」とも称される。部位特異的改変ポリペプチドは、単一RNA分子又は少なくとも2つのRNA分子のRNA二重鎖のいずれかであり、且つガイドRNAとの関係により、DNA配列(例えば、染色体配列又は染色体外配列、例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列等)に導かれるガイドRNAと相互作用する。
【0125】
いくつかの場合、部位特異的改変ポリペプチドは、天然に存在する改変ポリペプチドである。他の場合、部位特異的改変ポリペプチドは、天然に存在しないポリペプチド(例えば、キメラポリペプチド又は改変された、例えば、変異、削除、挿入された天然に存在するポリペプチド)である。例示的な天然に存在する部位特異的改変ポリペプチドは、当技術分野で既知である(例えば、Makarova et al.,2017,Cell 168:328-328.e1,及びShmakov et al.,2017,Nat Rev Microbiol 15(3):169-182参照、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。これらの天然に存在するポリペプチドは、DNA標的化RNAに結合し、それにより標的DNA内の特異的配列に誘導され、標的DNAを切断して二本鎖切断を生成する。
【0126】
部位特異的改変ポリペプチドは、2つの部分、RNA結合部分及び活性部分を含む。いくつかの実施形態では、部位特異的改変ポリペプチドは、以下を含む:(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部分、ここでDNA標的化RNAは、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む;及び(ii)部位特異的酵素活性(例えば、DNAメチル化についての活性、DNA切断についての活性、ヒストンアセチル化についての活性、ヒストンメチル化についての活性等)を示す活性部分、ここで酵素活性の部位は、DNA標的化RNAによって決定される。他の実施形態では、部位特異的改変ポリペプチドは、以下を含む:(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部分、ここでDNA標的化RNAは、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む;及び(ii)標的DNA内の転写を調節する(例えば、転写を増加又は低下させるために)活性部分、ここで標的DNA内の調節される転写の部位は、DNA標的化RNAによって決定される。
【0127】
いくつかの場合、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAを改変する酵素活性(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性又はグリコシラーゼ活性)を有する。他の場合、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAに関連したポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性又は脱ミリストイル化活性)を有する。
【0128】
いくつかの場合、異なる部位特異的改変ポリペプチド、例えば異なるCas9タンパク質(即ち、様々な種からのCas9タンパク質)は、本発明の様々な提供される方法において使用して、異なるCas9タンパク質の様々な酵素特性を利用する(例えば、異なるPAM配列優先(傾向)のために;増加又は低下した酵素活性のために;増加又は低下した細胞毒性レベルのために;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断の間のバランスの変更のために等)のに有利であり得る。様々な種からのCas9タンパク質(例えば、Shmakov et al.,2017に開示されているもの、又はそれに由来するポリペプチド)は、標的DNAにおける異なるPAM配列を必要とし得る。従って、選択される特定のCas9酵素について、PAM配列の要件は、Cas9活性に必要であるとして既知の5’-N GG-3’配列(ここでNは、A、T、C、又はGのいずれかである)とは異なり得る。非常に様々な種からの多数のCas9オルソログが本明細書で特定されており、タンパク質は、僅かな同一のアミノ酸を共有する。特定された全Cas9オルソログは同じドメイン構造(architecture)を有し、中央HNHエンドヌクレアーゼドメイン及び分割RuvC/RNaseHドメインを有する。Cas9タンパク質は、保存された構造を有する4つの重要なモチーフを共有する;モチーフ1、2、及び4は、RuvC様モチーフである一方、モチーフ3はHNH-モチーフである。
【0129】
部位特異的改変ポリペプチドはまた、キメラ及び改変Cas9ヌクレアーゼであり得る。例えば、部位特異的改変ポリペプチドは、改変されたCas9「塩基エディタ」であり得る。塩基の編集により、DNA切断又はドナーDNA分子を必要とすることなく、プログラム可能な方法で、1つの標的DNA塩基を別の塩基に直接且つ不可逆的に変換することが可能となる。例えば、Komor et al(2016,Nature,533:420-424)は、Cas9-シチジンデアミナーゼ融合を教示し、ここでCas9も、不活性であり、二本鎖DNA切断を誘導しないように操作されている。加えて、Gaudelli et al(2017,Nature,doi:10.1038/nature24644)は、tRNAアデノシンデアミナーゼに融合した触媒的に障害されたCas9を教示し、これは標的DNA配列におけるA/TからG/Cへの変換を媒介し得る。本発明の方法及び組成物において部位特異的改変ポリペプチドとして作用し得る操作されたCas9ヌクレアーゼの別のクラスは、NG、GAA及びGATを含む幅広いPAM配列を認識できるバリアントである(Hu et al.,2018,Nature,doi:10.1038/nature26155)。
【0130】
天然に存在するもの、及び/又は天然に存在するCas9タンパク質から変異し若しくは改変されたものを含む任意のCas9タンパク質は、本発明の方法及び組成物において部位特異的改変ポリペプチドとして使用することができる。触媒的に活性なCas9ヌクレアーゼは、標的DNAを切断して二本鎖切断を生じる。これらの切断は、次いで、2つの方法:非相同末端連結及び相同組換え修復の1つで、細胞により修復される。
【0131】
非相同末端連結(NHEJ)では、二本鎖切断は、切断された末端を互いに直接連結することによって修復される。従って、新たな核酸材料は部位に挿入されないが、いくつかの核酸材料は損失し、欠失がもたらされる場合がある。相同組換え修復では、切断された標的DNA配列に対する相同性を有するドナーDNA分子が、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用され、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の移動がもたらされる。従って、新たな核酸材料が部位内に挿入/コピーされ得る。いくつかの場合、標的DNAは、ドナー分子、例えばドナーDNA分子と接触する。いくつかの場合、ドナーDNA分子は、細胞内に導入される。いくつかの場合、少なくともドナーDNA分子のセグメントが、細胞のゲノムに統合される。
【0132】
NHEJ及び/又は相同組換え修復による標的DNAの改変は、例えば、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、遺伝子変異等をもたらす。従って、部位特異的改変ポリペプチドによるDNAの切断を用いて、標的DNA配列を切断し、外因的に提供されるドナーポリヌクレオチドの非存在下で、細胞が配列を修復することを可能にすることによって、標的DNA配列から核酸材料を削除することができる(例えば、細胞を感染に感受性にする遺伝子(例えば、T細胞をHIV感染に感受性にするCCR5又はCXCR4遺伝子)を破壊するため、ニューロンにおける疾病の原因となるトリヌクレオチドリピート配列を除去するため、研究において疾病モデルとして遺伝子ノックアウト及び変異を作製するため、等)。従って、主題の方法を用いて、標的DNAにおける遺伝子をノックアウトし(転写又は変更された転写の完全な欠如をもたらす)又は遺伝子材料を選択された遺伝子座にノックインすることができる。或いは、DNA標的化RNA二重鎖及び部位特異的改変ポリペプチドが、標的DNA配列に対する相同性を有する少なくとも1つのセグメントを含むドナー分子を有する細胞に共投与された場合、主題の方法を用いて、核酸材料を標的DNA配列に追加、即ち挿入又は置き換え(例えば、タンパク質をコードする核酸、siRNA、miRNA等を「ノックイン」するために)、タグ(例えば、6xHis、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)、ヘマグルチニン(HA)、FLAG等)を追加し、制御配列を遺伝子(例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、終結コドン、スプライスシグナル、局在化シグナル等)に追加し、核酸配列を改変(例えば、変異を導入)、等することができる。従って、DNA標的化RNA二重鎖及び部位特異的改変ポリペプチドを含む複合体は、例えば、例えば疾病を処置するための遺伝子治療において使用される、又は抗ウイルス、抗病原、若しくは抗癌治療として使用される、農業における遺伝子改変された生物の生成、治療的、診断若しくは研究目的のための細胞によるタンパク質の大規模生産、iPS細胞の誘導、生物学的研究、削除又は置換のための病原体の遺伝子の標的化等において使用される、部位特異的な方法、即ち「標的化された」方法、例えば遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺伝子編集、遺伝子タグ付け等においてDNAを改変することが望ましい、任意のインビトロ又はインビボ適用に有用である。
【0133】
「CRISPR関連タンパク質」、「Casタンパク質」、「CRISPR関連ヌクレアーゼ」又は「Casヌクレアーゼ」という用語は、野生型Casタンパク質、その断片、又はその突然変異体若しくは変異体を指す。「Cas突然変異体」又は「Cas変異体」という用語は、野生型Casタンパク質のタンパク質又はポリペプチド誘導体、例えば、1つ以上の点変異、挿入、欠失、切断、融合タンパク質、又はそれらの組合せを有するタンパク質を指す。特定の実施形態では、Cas突然変異体又はCas変異体は、植物由来の核局在化シグナル(NLS)に作動可能に連結された本明細書に記載のCas9変異体等のCasタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。特定の実施形態では、Casヌクレアーゼは、1つ又は両方のヌクレアーゼドメインが不活性であるように突然変異され、例えば、dCas9と称される触媒的に死んだCas9等であり、これは、依然として特定のゲノム位置を標的とすることができるが、エンドヌクレアーゼ活性を有さない(Qi et al.,2013,Cell,152:1173-1183、本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部又は全てを欠くように突然変異される。Casタンパク質は、Cas9、Cpf1(Zetsche et al.,2015,Cell,163:759-771、本明細書に組み込まれる)又は任意の別のCRISPR関連ヌクレアーゼであってもよい。
【0134】
a.本発明は:標的ゲノム部位での部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを細胞内に導入することと、単一の標的遺伝子において2つ以上の二本鎖切断を作ることと、二本鎖切断が介在DNA逆位で修復された細胞を選択することと、標的遺伝子の発現をサイレンシングすることとからなる、標的遺伝子を遺伝子サイレンシングする方法を提供する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗サイレンシングポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸分子を細胞内に導入することを更に含む、上記の方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗サイレンシングポリペプチドは、細胞に提供され得る。いくつかの実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、ウイルスサイレンシングサプレッサー(VSR)であるか、又はウイルスサイレンシングサプレッサー(VSR)に由来する。更なる実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、植物ウイルスに由来するVSRである。更なる実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、トンブスウイルス、例えばCymRSV、CIRV、又はTBSVに由来するウイルスサイレンシングサプレッサーp19タンパク質である。Zhuらは、最近、ガイドRNA及びCas9ヌクレアーゼと共発現されたトマトブッシースタントウイルスに由来するp19 VSRが、植物における遺伝子標的化効率及び/又はガイドRNA安定性を改善することを示した(米国特許出願公開第2016/0264982号明細書)。いくつかの実施形態では、VSRは、HC-Pro、p14、p38、NS、NS3、CaMV P6、PNS10、P122、2b、Potex p25、ToRSV CP、P0、及びSPMMV P1を含む植物ウイルスタンパク質の群から選択される(参照により本明細書に組み込まれるCsorba et al.,2015,Virology 479-480 p.85-103を参照されたい)。
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明は、第2の核酸分子が部位特異的修飾ポリペプチドをコードする、上記の方法を提供する。更なる実施形態では、部位特異的修飾ポリペプチドは、ヌクレアーゼである。なお更なる実施形態では、部位特異的修飾ポリペプチドは、エンドヌクレアーゼ、例えばメガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、又はTALENであるヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、RNA誘導エンドヌクレアーゼである。更なる実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR関連ヌクレアーゼ、例えばCas9若しくはCpf1、又はCas9若しくはCpf1の突然変異体、例えばヌクレアーゼ不活性化突然変異体、又はCas9若しくはCpfIの少なくとも1つのドメインと異なる部位特異的改変ポリペプチドの少なくとも1つのドメインとの融合物である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗サイレンシングポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸分子を細胞内に導入することを更に含む、上記の方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、ウイルスサイレンシング抑制因子(VSR)であるか又はそれに由来する。更なる実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、植物ウイルスに由来するVSRである。更なる実施形態では、抗サイレンシングタンパク質は、Tombusウイルス、例えばCymRSV、CIRV又はTBSVに由来するウイルスサイレンシング抑制因子p19タンパク質である。Zhu et alは、最近、ガイドRNA及びCas9ヌクレアーゼ(nucleease)と共発現したトマトブッシースタントウイルスに由来するp19 VSRが、植物において遺伝子標的化の効率及び/又はガイドRNA安定性を改善することを示した(米国特許出願公開第2016/0264982号明細書)。いくつかの実施形態では、VSRは、HC-Pro、p14、p38、NS、NS3、CaMV P6、PNS10、P122、2b、Potex p25、ToRSV CP、P0、及びSPMMV P1を含む植物ウイルスタンパク質の群から選択される(Csorba et al.,2015,Virology 479-480 p.85-103を参照、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
本開示は、標的遺伝子の発現を減少させる方法を提供し、該方法は、標的ゲノム部位での部位特異的DNA切断が可能なヌクレアーゼを細胞内に導入することと、単一の標的遺伝子において2つ以上の二本鎖切断を作ることと、二本鎖切断が介在DNA逆位で修復された細胞を選択することと、標的遺伝子の発現を減少させることとからなる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、標的遺伝子における二本鎖切断は、プロモーター、UTR、エキソン、イントロン、又は遺伝子-遺伝子接合領域に位置する。これらの方法は、細胞が一倍体、二倍体、倍数体、又は六倍体のゲノムを有する場合に用いられ得る。これらの方法は、標的遺伝子が優性、劣性、又は半優性の場合に用いられ得る。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ、2つ、又はそれを超えるガイド配列を利用することができる。この方法は、植物細胞において有用であるが、任意の細胞に適用可能である。
【0139】
本開示は、ゲノム編集によって染色体を再配置する方法を提供し、該方法は、部位特異的ヌクレアーゼによって染色体に少なくとも1つの破損を生成することと、再配置を有する染色体を選択することとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ、及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼを利用することができる。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、欠失、重複、逆位、又は転座を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、遺伝子発現の改変を引き起こす。本方法のいくつかの実施形態では、遺伝子発現の改変は、前駆体mRNAレベル、又は成熟mRNAレベル、又は翻訳レベルでの調節を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、染色体が種間雑種のような1つの核に分類され得る場合に、2つの種由来の染色体を含む。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、少なくとも2つの対立遺伝子又は異なる対立遺伝子由来の2つの成分を融合することによって、新たな対立遺伝子生成をもたらす。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、プロモーター、エキソン、イントロン、又は転写ターミネーターを標的とする。本方法のいくつかの実施形態では、染色体再配置は、再配置された遺伝子と配列類似性を有する異なる遺伝子の遺伝子発現の改変を引き起こす。本方法の更なる実施形態では、欠失、重複、逆位、又は転座は、19塩基対以上である。
【0140】
ここで本発明を、以下の実施例を参照して記載する。これらの実施例は、本発明の特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、特定の実施形態の例示を意図することを認識するべきである。当業者が見出す、例示した方法における任意のバリエーションは、本発明の範囲内に含まれる。
【実施例0141】
実施例1:遺伝子編集による遺伝子逆位
遺伝子編集による遺伝子逆位を試験するために、イネ(Oryza sativa)のゲノムにおいて標的を同定した。標的遺伝子は、DENSE AND ERECT PANICLE 1(DEP1、配列番号1)である。ジャポニカ(Japonica)米dep1変異体は、DEP1の3’末端近くに625bpの欠失を含む。変異体は、野生型よりも高い穀粒数及び低い植物高さを有する密で直立した穂(panicle)を有する(Huang et al.,2009,Nat Genet 41:494-497。インディカ(Indica)米は、DEP1遺伝子の野生型コピーを有する。本明細書に記載される実施例について、DEP1はゲノム編集による遺伝子逆位の標的とされた。
【0142】
バイナリーベクター22603は、DEP1のエキソン5を標的とするガイドRNA-B(gRNA-B、gtccaagctgcggatgcaa、配列番号3)を産生する発現カセット(配列番号2)と、同様にエキソン5を標的とするgRNA-Dを有する第2の発現カセット(gtgccctgaatgttcctgt、配列番号4)とを含んでいた。バイナリーベクター22604は、ガイドRNA-A(actgcagtgcgtgctgcgc、配列番号6)を産生する発現カセット(配列番号5)及びgRNA-Dを有する第2の発現カセット、gRNA-Bを産生する第3の発現カセット、及びガイドRNA-C(cccaatgcaaacccgattg、配列番号7)を産生する第4の発現カセットを含んでいた。各バイナリーベクター中の全ての発現カセットは、単一の導入遺伝子の一部である。
【0143】
本明細書に記載される全てのバイナリーベクターは、Cas9エンドヌクレアーゼを発現するための発現カセット(国際公開第16106121号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)及び形質転換のための選択マーカーを発現するための第2の発現カセットを含む。
【0144】
イネ(Oryza sativa)近交系IR58025Bを、Gui et al.2014(Plant Cell Rep 33:1081-1090、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、形質転換、選択、及び再生のためのプロトコルに本質的に従うアグロバクテリウム媒介形質転換実験のために使用した。遺伝子導入イネラインを、16時間明/30℃及び8時間暗/22℃の温室内で成長させた。
【0145】
T0遺伝子導入事象からの葉組織をサンプリングし、ゲノムDNA抽出、続いてTaqMan分析に使用した。TaqMan分析は、本質的に、Ingham et al.(Biotechniques 31(1):132-4,136-40,2001)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように実施された。TaqManを実施して、Cas9遺伝子(表1、配列番号9~10はプライマー;配列番号11はプローブ)、及び一連のDEP1におけるTaqManアッセイ標的化変異(配列番号12~20)の存在を検出した。DEP1における変異を検出するために、フォワードプライマー及びリバースプライマーは、プロトスペーサー標的配列に隣接し、そしてプローブは、Cas9切断部位及びPAMを含むプロトスペーサーの領域にハイブリダイズする。変異(典型的には、indel)がCas9切断部位に導入される場合、プローブは、標的配列に結合せず、従って蛍光を生成しないであろう(シグナル0)。遺伝子型の特徴付けは、DEP1のTaqMan分析に基づく(表2)。
【0146】
【0147】
【0148】
T0事象からの葉組織をサンプリングし、ゲノムDNA抽出に使用した。プライマー5’-AAAGACCAAGGTGCCTCA-3’(配列番号21)及び5’-TGGTTCAACCTCGTCTCATA-3’(配列番号22)を用いて、DEP1遺伝子断片をPCRにより増幅した。PCR産物を標的サイズのゲル電気泳動によって単離し、pCR-Bluntベクター(Invitrogen)にクローニングした。アンプリコン当たり15~30コロニーを、Sanger配列決定法を用いて、pCR-Bluntベクターに位置するM13フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて配列決定した。配列を組み立て、Vector-NTI Advance 11(Invitrogen)及びBLAST分析の両方を使用して、野生型DEP1配列に対するアライメントによって分析した。
【0149】
RIET142202A049A及びRIET142500B024Aは、エキソン5に逆位を有する2つの編集物である(
図1)。RIET142202A049Aでは、gRNA-BとgRNA-Dの間で413bp断片が反転した(ゲノム配列、配列番号23)。以下の発現研究において、同じ構築物22603由来のRIET142202A130Aを、gRNA-BとgRNA-Dとの間に444bpの欠失(ゲノム配列、配列番号24)を有する対照として選択した。22604からの編集物において、RIET142500B024Aは、gRNA-AとgRNA-Bの間の逆位(ゲノム配列、配列番号25)で同定された。同様に、RIET142300A014Aを、更なる発現対照として選択した(ゲノム配列、配列番号26)。
【0150】
実施例2:突然変異DEP1を野生型DEP1と組み合わせる
逆位DEP1が存在する場合の野生型DEP1の発現を調べるために、ワークフローを
図2のように設計した。T1種子を自殖T0植物から回収し、次いで、16時間明/30℃、8時間暗/22℃の温室内で2週間、発芽トレーに播種した。T1植物由来の葉組織をサンプリングし、ゲノムDNA抽出に使用した。14SBC500773(RIET142202A130AのT1種子)の遺伝子型判定プライマーは、5’-TCTTTGCTGCTGTTGCAAGT-3’(センスプライマー、配列番号27)及び5’-TCAACCACTGAGACAGCATGG-3’(アンチセンスプライマー、配列番号28)であった。PCR産物をゲル電気泳動によって単離した(
図3)。同様のプロセスを他の事象の遺伝子型に適用した。
【0151】
選択されたT1植物を、同じ条件下で温室内の大きな鉢に移した(
図4)。一方、58025野生型種子を播種し、平行して大きな鉢に移した。開花段階で、58025B野生型植物の花粉を収集し、ホモ接合削除(homozygous-delated)及び逆位植物に受精させて、F1種子を作製した(表3)。
【0152】
【0153】
実施例3:野生型OsDEP1の発現を比較する
2~3cmの若い穂を初期起動段階でF1植物からサンプリングし(
図5);各遺伝子型から5~6個の若い穂をサンプリングし、RNA単離及びcDNA合成をサンプルごとに扱った。RNAを、Invitrogen TRIzol(商標)によって標準プロトコルに従って単離し、cDNAをSuperscript(商標)III第1鎖合成系(Invitrogen)によって合成した。まず、2つのDEP1対立遺伝子がF1穂で転写されることを確認した。センスプライマー5’-CTGGAGGTGCAGATCCTGAG-3’(センスプライマー、エキソン1に位置する、配列番号29)及び5’-CTTCAATGGTTCAACCTCGTC-3’(アンチセンスプライマー、3’UTRに位置する、配列番号30)を使用した(
図6)。プライマー対を用いて、野生型58025B由来のアンプリコンは、1467bpの大きさであり;17SBC500140のF1植物では、2つのバンドが存在し、1つは野生型DEP1であり、1つは444bp欠失を有するDEP1であった。17SBC500146及び17SBC500149において、アンプリコンは、2つの対立遺伝子からのサイズが類似し、野生型DEP1アンプリコンと比較して102bp欠失を有していた。更に、欠失及び逆位を有するDEP1転写産物の存在を、コロニー配列決定によって確認した。
【0154】
次いで、同一遺伝子型で各サンプルからのcDNAを混合し、セミqRT-PCRを介してWT/欠失とWT/逆位の間で野生型DEP1発現を比較した。イネユビキチン(Os03g0234200)を、プライマー5’-CCAGCAGCGGCTGATCTTC-3’(配列番号31)及び5’-CAGGCGCGCATAGCATGAGAA-3’(配列番号32)を用いた発現対照のために選択した。野生型DEP1特異的プライマーセット、5’-ATGGGCTGCCACCATGGATAA-3’(配列番号33)及び5’-CAGCTTGGAAGGCCACAG-3’(配列番号34)を増幅するように設計した。PCR産物をゲル電気泳動によって単離し、面積サイズに基づいてAlphaImager HPソフトウェアによって定量した。発現比は、逆位を有するF1における野生型DEP1バンドの面積を、欠失を有するF1におけるそれで除算し、次いで、ユビキチン対照の発現比によって調整した(
図7、表4)。両方のタイプの逆位は、野生型DEP1の発現を減少させることができた。
【0155】
【0156】
実施例4:ゲノム編集による転座
実施例1に示したのと同じプロセス、E0植物、RIET142500A084Aを、2つの転座で同定した(
図8、配列番号105、配列番号35)。同じ位置で逆位を生じるかわりに、gRNA-A及び-B領域とgRNA-C及び-D領域から遊離した2つの断片が存在した。遺伝子の一部若しくは遺伝子全体(プロモーター及びターミネーター領域を含む)、又は複数の遺伝子が、近くの新しい位置又は別の染色体に転座することがある。遺伝子全体又は複数の遺伝子の転座の標的化によって、
図9の設計に基づいて重複が達成され得る。遺伝子の発現をより多くのコピーでアップレギュレートすることができる。別の側面では、ゲノムが1つの核に分類された2つの種を形成すれば、ゲノム編集を介して対立遺伝子の交換が達成され得る。多すぎるコピーを用いた重複も、遺伝子サイレンシングをもたらし得;HA412のように、高オレイン酸ヒマワリ近交系は、HaFAD2-1の無傷コピーを3つ有するが、発現はない。
【0157】
遺伝子の一部は、同じ領域又は新しい領域に転座することができる。同じ領域における転座の場合、部分重複又はヘアピンループ構造が生成され得る(
図10)。ヒマワリでは、HaFAD2-1(ODS)の部分重複は、無傷ODS遺伝子をサイレンシングし、核において高オレイン酸を導き(Mol Genet Genomics(2009)281:43-54);これはまた、生成されたハイブリッドにおける他の野生型HaFAD2-1をサイレンシングし得る。同様の設計は、非トランスジェニック遺伝子サイレンシングツールを提供することができる。TaMLOと同様に、編集されたTaMLO-Aは、B及びD対立遺伝子の発現をサイレンシングし得、これは、疾患耐性を達成し得るが、三重突然変異体における成長ペナルティーが軽減される(
図11)。同じ戦略を使用して、パラログも発現において改変され得る。転座はまた、遺伝子を融合させ、新しい遺伝子又は同じ遺伝子の新しい対立遺伝子を生成することができる。
前記ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ(MN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Cas9ヌクレアーゼ、Cfp1ヌクレアーゼ、dCas9-FokI、dCpf1-FokI、キメラCas9/Cpf1-シチジンデアミナーゼ、キメラCas9/Cpf1-アデニンデアミナーゼ、キメラFEN1-FokI、及びMega-TAL、ニッカーゼCas9(nCas9)、キメラdCas9非FokIヌクレアーゼ及びdCpf1非FokIヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。