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特開2024-166215繊維強化複合材料並びに同繊維強化複合材料の形成方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166215
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料並びに同繊維強化複合材料の形成方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20241121BHJP
   D02G 3/16 20060101ALI20241121BHJP
   D02G 3/40 20060101ALI20241121BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20241121BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20241121BHJP
【FI】
D02J1/18 D
D02G3/16
D02G3/40
D04H1/4242
D04H1/736
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151570
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2022086022の分割
【原出願日】2019-02-01
(31)【優先権主張番号】62/639,409
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520345209
【氏名又は名称】アーライト、インコーポレイテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン、クリストファー、セブン
(57)【要約】
【課題】本発明は、繊維強化複合材料並びに同繊維強化複合材料の形成方法及び使用方法を開示する。
【解決手段】1又は複数の炭素繊維束群を垂直方向に分割してそれぞれ1又は複数の高さに配置し、それぞれの群の中の前記炭素繊維束を開繊することと、前記1又は複数の炭素繊維束群をそれぞれの高さで、固定化物質と共に、且つ、商業用炭素繊維製造工程に則して固定化してテープ形態に保持することと、を含む方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の炭素繊維束群を垂直方向に分割してそれぞれ1又は複数の高さに配置し、それぞれの群の中の前記炭素繊維束を開繊することと、
前記1又は複数の炭素繊維束群をそれぞれの高さで、固定化物質と共に、且つ、商業用炭素繊維製造工程に則して固定化してテープ形態に保持することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記炭素繊維製造工程とは別の工程で前記テープ形態にマトリックス樹脂を浸み込ませてプリプレグを形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1又は複数の炭素繊維束群が第1炭素繊維束と第2炭素繊維束を含む第1炭素繊維束群及び第3炭素繊維束と第4炭素繊維束を含む第2炭素繊維束群を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1炭素繊維束と第2炭素繊維束が前記垂直分割工程の前に相互に隣接していない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1炭素繊維束と第2炭素繊維束が前記垂直分割工程の前に相互に隣接している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記垂直分割工程が表面処理の間、又はその前に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記垂直分割工程がサイジング剤塗布の間、又はその前に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固定化物質がサイジング剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1又は複数の結合剤がサイジング剤に組み込まれて前記テープ形態を固定化する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固定化物質が含浸剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
後続の含浸処理で使用するために、前記テープ形態を輸送用に包装することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記固定化物質が1又は複数の熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固定化物質が1又は複数の熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固定化物質が1若しくは複数の添加剤、1若しくは複数の充填剤、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記固定化工程の間に前記固定化物質が粉体、懸濁液、溶液、紡績糸、不織布マット、織布、フィルム、又はそれらが組み合わさった形で投入される固定化樹脂である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は繊維強化複合材料並びに同繊維強化複合材料の形成方法及び使用方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は2018年3月6日に出願された米国特許仮出願番号第62/639409号の利益を要求して2019年2月1日に出願された国際出願番号第PCT/US2019/016280の米国国内移行出願であって、2020年9月2日に出願された米国特許出願番号第16/977562(現在は放棄済)からの継続出願であり、2021年1月15日に出願された米国特許出願番号第17/150572の特許出願の開示全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
繊維強化複合材料は一般的に樹脂と強化用繊維を含む。多くの場合にこの樹脂と強化用繊維は、これらの構成要素が組み合わさったときに繊維強化複合材料がその樹脂と強化用繊維との中間の特性を有するように異なる特質を有する。例えば、この樹脂は強度が比較的に低くてもよいが比較的に高い伸長特性を有してもよく、一方でこの強化用繊維は強度が比較的に高くてもよいが比較的に脆くてもよい。複合材料に由来する部材はこの樹脂よりも高い強度を有し、また一方でこの強化用繊維と比べて比較的に頑丈である場合がある。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では繊維強化複合材料の形成方法を開示する。この方法は2本以上の炭素繊維束を(a)固定化樹脂と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化してテープ半製品を形成すること、及び前記炭素繊維製造工程とは別の工程でこのテープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませてプリプレグを形成することを含む。
【0005】
別の実施形態では繊維強化複合材料の形成方法を開示する。この方法は12K以上のフィラメント数と1,000フィラメント/mm以下のフィラメント密度を有する炭素繊維束を(a)固定化物質と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化してテープ半製品を形成すること、及び前記炭素繊維製造工程とは別の工程でこのテープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませて繊維強化複合材料を形成することを含む。
【0006】
さらに別の実施形態では繊維強化複合材料の形成方法を開示する。この方法は1又は複数の炭素繊維束群を垂直方向に分割してそれぞれ1又は複数の高さに配置すること、前記1又は複数の炭素繊維束群をそれぞれの高さで(a)固定化樹脂と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化して1又は複数のテープ半製品を形成すること、及び前記炭素繊維製造工程とは別の工程で前記1又は複数のテープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませてプリプレグを形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に従う炭素繊維製造工程の模式的側面図を示す図である。
【0008】
図2】第1の実施形態に従う炭素繊維製造工程の模式的上面図を示す図である。
【0009】
図3】第1の実施形態に従う炭素繊維の垂直方向分割工程の模式的で断片的な斜視図を示す図である。
【0010】
図4】第2の実施形態に従う炭素繊維製造工程の模式的側面図を示す図である。
【0011】
図5】第2の実施形態に従う炭素繊維製造工程の模式的上面図を示す図である。
【0012】
図6】第2の実施形態に従う炭素繊維の垂直方向分割工程の模式的で断片的な斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態が本明細書に記載されている。しかしながら、これらの開示される実施形態は単なる例であり、他の実施形態が様々な代替的形態を取り得ることが理解されるべきである。図面は必ずしも実寸通りではなく、特定の構成要素の詳細を示すために幾つかの特徴を強調又は最小化する場合がある。したがって、本明細書において開示されている特定の構造と機能の詳細は限定を意図していると解釈されてはならず、単にこれらの実施形態を様々に用いるために当業者に教示するための代表として解釈されるべきである。当業者が理解するように、前記図面のいずれか1つを参照して例示及び説明されている様々な特徴が他の1又は複数の図面に例示されている特徴と組み合わさることで明示的に例示又は説明されていない実施形態を形成する場合がある。例示されている特徴を組み合わせることで典型的な用途に適した代表的な実施形態が提供される。しかしながら、本開示の教示に一致するこれらの特徴を様々に組み合わせ、且つ、改変することが特定の用途又は実施態様のために望ましい場合がある。
【0014】
「約」という用語は開示又は請求されている実施形態を説明するために本明細書において使用される場合がある。「約」という用語は本開示において開示又は請求されている値を修飾する場合がある。このような例では「約」はこの用語が修飾する値がその値の±0%以内、0.1%以内、0.5%以内、1%以内、2%以内、3%以内、4%以内、5%以内、又は10%以内であることを意味する場合がある。
【0015】
強化用繊維の中では炭素繊維の比強度及び比剛性が一番高い。例えば、広範に使用されている工業用繊維であるEガラスと比較して炭素繊維の比強度は2倍よりも高い場合があり、一方で比弾性率は4倍よりも高い場合がある。燃費、性能、及び/又は温室ガス排出との関連性が高い産業(例えば、航空産業及び自動車産業)にとって炭素繊維複合材料(すなわち炭素繊維からできている繊維強化複合材料)は特に有益であり得る。しかしながら、炭素繊維を部材に転換するコストは高いままであり、炭素繊維複合材料の利用に対するハードルとなっている。その結果、効率を改善し、無駄を排除し、且つ/又はコストを低下させるためのプロセス改善により炭素繊維複合材料の価値と市場が拡大する可能性がある。
【0016】
炭素繊維は部材の生産におけるプリプレグ(繊維強化複合材料の一例)に使用される場合がある。一方向繊維、一方向繊維のトウ織物、又は一方向繊維のパイル織物などの連続体であることが典型的な炭素繊維と樹脂を予め含浸処理してこの樹脂がこれらの繊維に実質的に浸み込み、中間材料を形成しているプリプレグが形成される。このプリプレグを金型に入れて部材が生産され得る。含浸処理はこの繊維の塊の中へのこの樹脂のウェットスルー及び個々のフィラメントのウェットアウトを促進する状況にこの樹脂と繊維を曝す処理といってよい。このウェットアウトはこの樹脂が機械的に個々のフィラメントの表面特徴に結合し、且つ、化学的にこれらのフィラメントの分子的構造に結合するようにこの樹脂がこの繊維のフィラメントに充分に密着することといってよい。樹脂とフィラメントとの間の強固な結合が構造用途に最適な繊維強化複合材料特性を提供する場合がある。
【0017】
フィラメントの厚さを減少させるために炭素繊維を開繊して薄いフィラメントの層にし
てよく、樹脂がそれを通過して各フィラメントに到達する。この開繊処理には含浸処理と同時のボビンからの繊維の引き出しが含まれてよい。しかしながら、含浸処理と同時に炭素繊維を開繊することによりプリプレグを生産するための炭素繊維の転換に追加の転換コストが加わる場合がある。
【0018】
炭素繊維は、トウバンドを形成するために平面上に広げられている複数の前駆繊維ストランドである出発材料のフィラメントの比較的に幅広だが薄いバンドとして作製され得る。トウバンドは科学ライン向けに約1,000フィラメント以下からマイクロライン向けに最大で約100mm、パイロットライン向けに約300~1,000mm、及び商業生産ライン向けに約1m~5m又は6m以上まで様々な長さであり得る。それぞれの前駆繊維ストランドは特定のフィラメント数から構成されてよく、それをトウサイズと呼んでもよい。このトウサイズは約3K以下~約60K以上の範囲であってよく、ここでK=1,000である。特定のサイズの非限定的な例には約1K、約3K、約6K、約12K、約15K、約24K、及び約50Kが挙げられる。50Kのトウが幅方向に約20mm毎の間隔で配置されていると仮定するとフィラメント密度は約2,500フィラメント/mmになる。このフィラメント密度は他の形状、フィラメント径、及びトウサイズによって高くなったり低くなったりする場合がある。例えば、ラインの能力を増加させるために約3,500フィラメント/mm又はそれ以上のフィラメント密度が望ましい場合がある。
【0019】
前記前駆繊維は繊維の分子構造に配向性を付与するために最初に繊維を伸ばす多段階転換処理を受け、続いて高温の空気に繊維を曝露する固定化(熱硬化)処理を受けることが典型的である。次に固定化した繊維は一連の炉に沿って不活性環境内で一連の高温に曝される。この工程は炭化処理として知られている。生じた炭素繊維はこの炉を抜け出すと表面処理とその後のサイジング剤の塗布を受けてもよい。典型的にはこれらの工程の実施後に炭素繊維が円筒状パッケージ又はボビン状に巻かれ、フィルムで包まれ、そして出荷のために箱詰めされる。
【0020】
前記表面処理は炭素繊維の樹脂との機械的及び/又は化学的結合を改善するために炉を抜け出した炭素繊維のフィラメントの物理的性質及び/又は化学的性質を改変する。この表面処理は繊維の物理的表面を変更、例えば表面をエッチングしてフィラメントと樹脂との間の機械的結合を促進する場合がある。この表面処理は各フィラメントの表面上の化学的反応性部位の数を増加させて樹脂との化学的結合を促進する場合もある。この表面処理は樹脂によるフィラメントのウェッティング(例えば、含浸又はウェットアウト又は被覆)を改善する場合もある。この表面処理はこれらの効果のうちの1又は複数をもたらし得る。
【0021】
サイジング剤は様々な構成要素を含むフィラメントに塗布される複雑な化学混合物、例えば、フィルム形成剤、カップリング剤、樹脂、及び/又は他の化合物であることが典型的である。典型的にはサイジング剤は有機溶媒を使用した分散液若しくは溶液として、又は水性の溶液若しくは分散液として塗布され得る。サイジング剤の非限定的な機能には(1)以後の製織などの操作の間における摩滅からのフィラメントの保護、(2)静電気の制御、及び(3)フィラメントと後続の処理の間に塗布される樹脂との間の化学的結合の促進が含まれる。サイジングはマトリックス樹脂とはマトリックス樹脂の主要な機能が繊維と繊維の間での負荷の転移を容易にすること、及び外力又は環境劣化から繊維を保護することであるという点で異なる。また、マトリックス樹脂は炭素繊維よりも高い破損歪みを示す場合があり、且つ、本複合材料の剛性に寄与する場合がある。一旦乾燥するとこのサイジングは個々のフィラメントをまとめる力が弱くなる傾向がある。
【0022】
炭素繊維を(例えば連続繊維又は樹脂を予め浸み込ませた繊維として)利用する方法にはボビンから引き出された炭素繊維束を開繊するための処理が含まれることが典型的であ
る。この開繊処理は1又は複数の機能を担う。第1に、含浸を促進するため、又は樹脂による各フィラメントの被覆を促進するためにサイジング剤が塗布されている場合、個々のフィラメントは相互に分離されてよい。サイジングによりフィラメントがまとまる場合があるため、個々のフィラメントを被覆する樹脂の能力がこのサイジングにより阻害される場合がある。第2に、表面積を増加させて、又は塗布される樹脂に対してより多くのフィラメントを曝露させて個々のフィラメントの含浸処理が促進されるように前記開繊処理は前記トウのプロファイルを複数のフィラメントからなるより薄く、且つ、より幅広のバンドに改変することができる。
【0023】
前記開繊処理は1又は複数の欠点を有し得る。一連の開繊バーを使用して張力をかけて開繊が行われることが多い。これらのバーは加熱されてもよく、静止、回転、揺動、又はこれらのアプローチの組合せを使用してよい。これらのバーは互い違いになっていてよく、それにより前記トウがそれぞれのバーの周りを部分的に取り囲み、且つ、その表面で引きずられることになる。これによりそれぞれの後続のバーで張力が上昇することになり得る。サイジングの作用に打ち勝つためにフィラメントを分離させる張力をかけた状態で生じるこれらのトウとバーとの間の相互作用によって複合材料又は部材として応力がかかったときにこれらのフィラメントを弱化する破損又は微小亀裂の原因となる損傷がこれらのフィラメントに生じる場合がある。この開繊処理のため、煩雑さと費用が前記炭素繊維束を中間材形態に転換する処理に加わる場合もある。この開繊処理が律速性であることによりこの処理にボトルネックが加わる場合がある。このようなボトルネックは含浸などの下流処理の製造コストの高騰に寄与する場合がある。
【0024】
別の開繊方法は開繊挙動に影響するようにトウに当てられる空気流を利用する。このような技術は繊維の機械的操作により受ける損傷を減少させる場合があるが、この処理に煩雑さと出費を加え、且つ、下流処理の速度を限定する。
【0025】
これらの欠点のうちの1又は複数を考慮して1又は複数の実施形態を提案する。これらの提案された処理は、前記含浸工程からトウの開繊を切り離し、且つ、開繊トウの製造と後の利用のための開繊トウの固定化を炭素繊維の商業生産の上流に置くことにより前記繊維強化複合材料(例えば、プリプレグ又はフィラメントワインディング)を生産する転換コストを減少させる。1又は複数の実施形態では炭素繊維の商業生産に則して炭素繊維束をテープ半製品に転換する第1工程、及び炭素繊維の商業生産とは別に前記テープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませる第2工程が処理に含まれる。
【0026】
1又は複数の実施形態に従うテープ半製品は様々な方法で製造可能である。約3K、約6K、約12K、約24K、及び約50Kの炭素繊維束などの炭素繊維束を使用して直接的にテープ半製品に固定化してもよい。トウとトウとの間のギャップを除くため、又は追加の開繊を必要としない含浸処理に適切なレベルまでフィラメント密度を低下させるために炭素繊維製造工程に則して炭素繊維束をさらに開繊して所望のテープ形態又はテープ構造にした後で固定化してもよい。
【0027】
例えば、50K炭素繊維束は2,500フィラメント/mmのフィラメント密度で製造されてよく、前記含浸処理は固定化の前にトウの追加の開繊を必要とする約833フィラメント/mmのフィラメント密度を必要としてよい。1つの実施形態では前記炭素繊維束は3つの異なる高さに分けられてよい。均一なテープ形態又はシート形態にするため、これらの異なる高さに分けられたトウを第1の幅(例えば20mm)から第2の幅(例えば60mm)に広げてよい。この方法を利用することにより前記トウの中央線の水平方向の配置が変わらず、それにより繊維にかかる張力の乱れが本繊維製造工程を通して最小限になる。各セットのトウを異なる高さで開繊し、且つ、組み合わせることができ、それにより同時に3本のテープ構造体が製造可能になる。開繊度を低くするために1本毎にトウを
分割してよく、同時に2本のテープ構造体が製造される。開繊度を高くするために4本毎又は5本毎にトウを分割してよく、同時に対応する数のテープ構造体が製造される。1つの実施形態では選択されたトウから1本のテープ構造体だけが製造される場合があり、利用されなかったトウは通常の条件下で処理されてボビンにパッケージされ得る。
【0028】
1又は複数の方法を使用して炭素繊維を固定化することができる。1つの方法はサイジング剤などの固定化物質を充分な濃度で利用することであり、これによりそのサイジングが乾燥すると前記繊維がテープ形態に保持され、スプールへの巻き取りとスプールからの巻き出しが容易になる。その代わりにサイジングの塗布を除外する、又は塗布されるサイジングの量の最小限にすることが有利である場合もある。このような場合では前記固定化物質は前記繊維に塗布される結合剤などの樹脂であってもよい。この結合剤(固定化樹脂の一例)の塗布は前記サイジング剤の塗布と同時であってよく、別々に塗布されてもよい。熱硬化性結合剤を利用する場合、塗布後のこの結合剤の硬化、部分硬化、又は溶融と冷却により前記繊維がテープ半製品形態で固定化する。前記固定化剤として熱可塑性結合剤を使用する場合、この結合剤を溶融及び冷却して前記繊維を固定化してテープ半製品の形態にしてもよい。この熱可塑性結合剤は前記含浸工程の間にフィラメントに浸み込む全てのマトリックス樹脂の一部となってもよく、又はこの結合剤が前記含浸工程後のマトリックス樹脂の全体を構成してもよい。
【0029】
前記サイジング及び/若しくは結合剤に代えて、又は前記サイジング及び/若しくは結合剤に加えて炭素繊維に適切な形態の固定化樹脂の別段の塗布を組み合わせることができ、それによりスプールへの巻き取りとスプールからの巻き出しのために前記繊維が固定化及び/又は保護される。この固定化樹脂は前記結合剤と組成及び物性の点で類似していても異なっていてもよい。熱可塑性結合剤の場合、この結合剤は前記樹脂と異なる融点を有してよい。この固定化樹脂は炭素繊維の片側又は両側に塗布されてよい。この固定化樹脂は前記含浸工程の間にフィラメントに浸み込むマトリックス樹脂の一部又は全体になることができる。この固定化樹脂は例えば不織布又はフィルムの形態であってよく、且つ、単純にスプールへの巻き取り又はコアへの巻き取りを容易にするための前記第1工程における仕切りとして作用してよく、これにより間隔が疎らな複数の繊維からなる隣接する層が相互に作用せず、後続の処理のために損傷を与えずに前記テープ半製品を巻き出すことが可能になる。前記含浸工程の間にこの不織布又はフィルムは前記マトリックス樹脂の一部又は全体になる。前記繊維を固定化させる別の可能性は、前記樹脂よりも低い融点を有し、且つ、低い粘性を有するので融解するとフィラメントに容易に浸透し、且つ、冷却されると不織布などの前記固定化樹脂とフィラメントの両方に密着するマイクロクリスタリンワックスをあるいは含有する含浸剤を使用することを含む。
【0030】
サイジング剤が前記繊維に塗布されている場合、このサイジングの濃度は前記繊維の10重量%であることが典型的であり、約5%未満であることがさらに典型的であり、約3%未満であることが通常である。固定化樹脂が前記テープ半製品の製造に利用され、後続の含浸を介して前記複合材料のマトリックス樹脂の一部又は全体になる場合、この固定化樹脂は前記完全含浸プリプレグ基準で最大約80体積%の濃度で、又は前記完全含浸プリプレグ基準で約40体積%と60体積%との間の濃度で塗布可能である。完全含浸プリプレグを基準とする樹脂体積分率は前記繊維の体積を含むがあらゆる空隙(空気が占める空間)を除外する前記複合材料の総体積に対する樹脂体積のパーセンテージの理論的計算結果である。
【0031】
固定化樹脂がテープ半製品の製造に利用される場合、この固定化樹脂を炭素繊維の近傍に近づけるために適切な形態にこの固定化樹脂を別段の処理又はオフサイト処理で転換させることができる。この樹脂は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂又はこれらの2種類の樹脂の組合せであってよく、且つ、後続の処理や意中の用途での使用に必要な所望の特性に寄
与する添加材、充填剤、又は他の化合物を含んでよい。このような形態には粉体、懸濁液、溶液、前記樹脂から製造されるフィラメントから形成される連続トウ又は紡績糸、前記フィラメントに由来する、又はスパンボンドとしての不織布マット、又は前記フィラメント若しくは紡績糸の製織若しくは縫合により製造される織布が含まれ得る。別の形態は前記樹脂から製造される1又は複数のフィルムを含んでよく、又は複数の形態の組合せを適用することもできる。
【0032】
炭素繊維がテープ半製品として固定化されたところでこのテープ半製品を後続の含浸処理で使用するためにこのテープ半製品を輸送用に包装する。このテープ半製品の包装はこのテープ半製品が巻かれているスプールの形態であってよい。このテープ半製品が単一の開繊トウの形態である場合、この包装はボビンの形態であってよい。必要であればこの包装は、スプール又はパッケージ又はボビンを取り囲み、且つ、前記樹脂若しくは繊維、又は後続の処理に対する前記樹脂若しくは繊維の適合性に悪影響を与える可能性がある水分又は他の混入汚染物質に対して障壁を形成する保護層又はバッグを含むことができる。
【0033】
前記第2工程において前記テープ半製品は、マトリックス樹脂を前記繊維に浸透させ、且つ、前記樹脂をフィラメントの所望の部分に浸み込ませるか、又はフィラメントの所望の部分を前記樹脂で被覆するために適切な状況に前記テープ半製品を曝すことにより含浸を施される。前記プリプレグ又は部材製品に目標の繊維濃度をもたらすために前記テープ半製品が充分な固定化樹脂を使用せずに調製される場合、適切な形態及び組成の追加マトリックス樹脂を塗布することができる。熱可塑性プリプレグが製造されている場合、これらの形態には粉体、不織布、溶液、懸濁液、フィルム、及び溶融樹脂流が含まれ得る。熱硬化性プリプレグが製造されている場合、これらの形態には粉体、フィルム、液体、溶液、懸濁液、及びペーストが含まれ得る。
【0034】
前記第2工程はプリプレグの製造に関連する工程、例えば溶融重合体を前記繊維に塗布する溶融含浸、重合体を溶媒に溶解してその中に前記繊維を通して引き出す溶液塗工、溶液中に重合体粒子を懸濁してその中に前記繊維を通して引き出すスラリー塗工、非溶融重合体からなる隣り合う層を最初に付け加えるフィルム積層、樹脂浴の中に繊維を通して引き出すフィラメントワインディング、樹脂の乾燥粒子を直接的に前記繊維に塗布する粉体含浸、又は他の適切な含浸処理を利用してよい。
【0035】
1又は複数の実施形態では炭素繊維の商業生産に則して炭素繊維をテープ半製品に転換する第1工程、及び炭素繊維の生産とは別に前記テープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませる第2工程が処理に含まれる。この処理は含浸処理と同時に前記炭素繊維を開繊する処理と比べて幾つかの利点を有する。
【0036】
第1に、一つの生産ラインに炭素繊維のテープ半製品への転換を加えることを容易にする比較的に遅い速度で炭素繊維が製造される。炭素繊維を製造するための典型的なライン速度は約6~12m/分の範囲内である。様々な開繊技術が同様の処理速度を有している。炭素繊維をテープ形態に固定化するための処理速度もこの範囲内であることが典型的である。この固定化工程によって加わる煩雑さと費用は比較的に少なく、したがってこのような一体化によってわずかな費用が加わるだけである。
【0037】
第2に、本製造工程に由来するフィラメントは緩みなく並んでいるわけではないがそれでも隣接するフィラメントとは独立しており、それにより前記含浸処理が目標とするフィラメント密度に応じて必要であれば開繊しやすくなっているため、トウの開繊の問題が減少する。あるいは、フィラメント密度が申し分なく本製造工程から外れている場合、追加の開繊を必要とせずに前記繊維を直接的にテープ形態に固定化することができる。
【0038】
第3に、サイジング剤を塗っていない形態を利用する場合、サイジング剤の塗布を回避する可能性が考えられる。ある特定のマトリックス樹脂にとって、サイジング剤を塗っていない繊維がサイジング剤を塗ってある繊維よりも良好にこの樹脂に結合するように、サイジング剤を塗っていない繊維が性能上の利点をもたらす場合もある。例えば、炭素繊維に加えられる表面処理が炭素繊維フィラメントと前記マトリックス樹脂との間の結合の促進に関して非常に有効な場合がある。しかしながら、製織などの正統的な工程の中で炭素繊維の製造後処理を活用することには操作上の問題が付随するため、経済的な処理能力からサイジングが必要とされることが多い。サイジングが結合を促進し、且つ、操作を容易にする場合があるが、サイジングはサイジング剤が塗られていないが表面処理されている繊維と比較して性能を低下させることがある。別の利益としてはサイジングの使用を排除することでそれに関連する費用が除外される。あるいは、サイジングを是認する場合、前記繊維の製造及びこのサイジング剤の塗布と同時に前記繊維をテープ半製品に転換することにより前記繊維はこのサイジングが乾燥すると優先的なテープ形態又はフィラメント密度で保持され得る。ある特定の開繊技術、例えば水性溶液又は他の溶液中での超音波処理などが前記サイジング処理及び/又は表面処理と適合する場合もある。炭素繊維の形態をテープ又はシートに固定化するために結合剤が前記サイジングに組み込まれる場合もある。
【0039】
前記含浸処理により前記マトリックス樹脂は各フィラメントと直接的に接触し、理想としては各フィラメントを被覆し、これらの2つの構成要素の結合が促進される。この結合は結果生じる複合材料の望ましい特性と互いに関係がある。しかしながら、前記含浸処理は費用が掛かり、且つ、煩雑である場合がある。前記炭素繊維の製造と同時に含浸を試みることによってこのような煩雑性が持続しない場合もある。このような含浸は後続の処理工程において前記炭素繊維製造工程とは別に実施される方がよい場合もある。
【0040】
部材に転換される前に含浸がフィラメントにかなり施されている中間材料であるプリプレグを製造する場合、繊維張力、繊維温度、樹脂温度、印加圧力又は剪断力、加熱及び加圧時間、冷却時間、及び他の処理変数などの処理パラメーターが正確な制御を必要とすることがある。このような制御を達成するために必要な装備はかなりの投資である場合があり、したがって償却コストを最小限にするために前記炭素繊維の製造で達成可能な速度よりも速い速度(メートル/分又はフィート/分)で作動するように設計されている場合がある。例えば、約12m/分を超える速度が望ましい場合がある。加えて、このようなプリプレグラインは大半の既存の炭素繊維プラントでは、又は高額の追加投資無しでは一つの生産ラインの中に含めることが難しい広大な空間を占めることが典型的である。また、前記炭素繊維の製造に則してこのような系を運用する上での煩雑さも前記炭素繊維製造工程の正確で一貫した制御を妨げることがあり、生じた製品の性質とリスクがスクラップ、廃棄物、及び/又は動作不能時間を増加させた。例えば、炭素繊維の製造工程時の張力の正確な制御は前記繊維の一貫した機械的特性の確立にとって重要である。張力の正確な制御が損なわれる場合があり、又は前記炭素繊維の製造に最適な張力が前記繊維の含浸に最適な張力とは異なる場合がある。
【0041】
1又は複数の実施形態では前記炭素繊維製造工程に則した前記炭素繊維のテープ半製品への転換、及び前記含浸処理に適切な制御と処理量による別の処理でのこのテープ半製品の含浸の完遂が開示される。前記テープ半製品の1つの利点は、より経済的に、且つ、前記繊維に対して過度の応力をかけずに含浸が起こるようにする最適な構成に原料を事前に配置して含浸を容易にすることである。このような状況下において、熱及び圧力及び剪断力を加えて個々のフィラメントを樹脂でウェットアウトする様々な方法で含浸が起こり得る。加熱は様々な機序、例えば赤外線利用、対流、伝導、マイクロウェーブなどの電磁波、又は他のソース、又は方法の組合せに由来するものであってよく、その加熱により前記繊維又は前記樹脂が加熱され、それが次に熱を他方に伝える場合があり、又は同時に前記
樹脂と繊維の両方が加熱される場合がある。圧力と剪断力も様々な方法、例えばニップローラーの使用、ダブルベルトプレスの使用、ニーディングローラーの使用、前記テープに張力をかけて引っ張る含浸ローラーの使用、前記テープのねじり加工、超音波処理などの揺動、及び他の手段で印加可能である。
【0042】
トウバンドは複数のトウを含んでよく、あらゆる数のこれらのトウを前記テープ半製品に転換することができる。全てのトウが利用されるわけではない場合、残りのトウは正統的な手法で処理され、且つ、例えば乾燥した繊維又はサイジング処理された繊維のボビンとして包装されてよい。これらのトウのうちの1本又は2本又は数本を利用して前記テープ半製品を作製する場合、その結果は幅狭のテープである。かなりの数のトウ又は全てのトウが利用される場合、その結果は幅広のテープ又はシートである。これらのテープ又はシートはそのまま包装されても包装前に切り目を入れて、又は他の手段により細分されてもよい。前記テープ半製品の幅は利用されているトウの数とこのトウバンドの幅に応じて数ミリメートルから数メートルもの範囲であり得る。
【0043】
図1図6は固定化工程を含む炭素繊維製造工程の実施形態を説明している。図1図3は第1の実施形態に従う炭素繊維製造工程を開示している。図4図6は第2の実施形態に従う炭素繊維製造工程を開示している。図1図3の炭素繊維製造工程10及び図4図6の炭素繊維製造工程100には共通の処理工程が存在する。処理10と処理100はそれぞれスプール12によって示されるようにポリアクリロニトリル(PAN)などの前駆材料のスプールからの巻き出しから始まる。前記前駆材料の分子構造に配向性を付与するためにこの前駆繊維14が伸長装置16に供給される。これらの前駆繊維は配向性を付与されてトウバンドになり、熱硬化工程20を施され、その後で炭化処理工程22と黒鉛化工程24を施される。
【0044】
これらの図に模式的に示されているように、トウバンド26を形成する12本のトウ18a~18lが存在する。それぞれのトウは例えば約1K、約3K、約6K、約12K、約15K、約24K、及び約50Kのトウサイズを有してよい。トウバンド26の全幅28は約1m~6mであり得、又はトウとトウとの間の増分が約0.25mであり得る。一例として、トウバンド内に100本の50Kの炭素繊維束が存在し、且つ、それぞれのトウが炭素繊維束と炭素繊維束との間に20mmの間隔を空けている場合、このトウバンドバンドの全幅は約2mであり得る。
【0045】
これらの図に示されているように、トウバンド26にまず表面処理30を施し、その後でサイジング剤32を施す。この処理され、且つ、サイジングを塗布されたトウバンドがローラー間又は静止バー36間に供給される。この表面処理30はこのトウバンド26を引っ張って表面処理材を含む溶液槽に出入りさせることを含む。前記サイジング32はこのトウバンド26を引っ張ってサイジング剤の溶液槽に出入りさせることを含む。これらの図に示されているように、これらの溶液槽を通過するトウバンド26の引張はこれらのトウバンドが多数の接触点に接触することを含む。開繊領域37及び39の接触点と同様の様々な高さへのこれらの接触点の配置を利用することで前記炭素繊維束を開繊領域37及び39の位置で、又は開繊領域37及び39に代えて開繊することができる。
【0046】
前記ローラー又は静止バー36からの出力物は開繊領域37又は39で垂直方向に間隔を空けられる。図1図3に関し、ローラー38a、38b、及び38cはトウバンド26由来の各炭素束をそれぞれ第1、第2、又は第3の高さ40a、40b、及び40cに配置する。図1図3に示されているように、第1の炭素繊維束42aは第1の最も高い高さ40aに配置され、第2の炭素繊維束42bは第2の真ん中の高さ40bに配置され、第3の炭素繊維束42cは第3の最も低い高さ40cに配置される。この分割順序をそれぞれ後続の炭素束について反復することができる。図1図3に示されているように、
第1、第4、第7、及び第10の炭素繊維束が第1の最も高い高さ40aに配置され、第2、第5、第8、及び第11の炭素繊維束が第2の真ん中の高さ40bに配置され、第3、第6、第9、及び第12の炭素繊維束が第3の最も低い高さ40cに配置される。隣り合う炭素繊維束の分割が図1図3に示されているが、隣接していない炭素繊維束を異なる高さに配置してもよい。分割された炭素繊維束43a~cがそれぞれスプレッダー44a~cとスプレッダー46a~c上で開繊され、水平方向の装置中央線66と同じ、又はほぼ同じ平行性を維持しつつ、異なる高さで配置されている個々のトウとトウとの間に生じたギャップを埋める。図1図3に示されている実施形態ではフィラメント密度は前記ローラー又は静止バー36に侵入した炭素繊維束のフィラメント密度の3分の2まで低下してよい。
【0047】
別の実施形態が図4図6に示されている。図4図6では1本毎にトウを使用し、且つ、これらの炭素繊維束を第1の高さと第2の高さ50a及び50bに配置することによりフィラメント密度が半分にまで低下し得る。図4図6に示されているように、ローラー54a及び54bをそれぞれ使用することで第1の炭素繊維束52aを第1の高い方の高さ50aに配置し、第2の炭素繊維束52bを第2の低い方の高さ50bに配置する。この分割順序をそれぞれ後続の炭素束について反復することができる。図4図6に示されているように、第1、第3、第5、第7、第9、及び第11の炭素繊維束が第1の高い方の高さ50aに配置され、第2、第4、第6、第8、第10、及び第12の炭素繊維束が第2の低い方の高さ50bに配置される。隣り合う炭素繊維束の分割が図4図6に示されているが、隣接していない炭素繊維束を異なる高さに配置してもよい。分割された炭素繊維束53a及び53bがそれぞれスプレッダー56a及び56bとスプレッダー58a及び58b上で開繊され、水平方向の装置中央線66と同じ、又はほぼ同じ平行性を維持しつつ、異なる高さで配置されている個々のトウとトウとの間に生じたギャップを埋める。
【0048】
分割され、開繊された炭素繊維束をボックス60に示されるように固定化樹脂又は固定化物質で固定化してテープ半製品62を作製する。この固定化樹脂又は固定化物質は前記テープ半製品を含浸処理するために使用される前記マトリックス樹脂と同じ物質でも異なる物質でもよい。この固定化樹脂は1若しくは複数の結合剤、1若しくは複数の含浸剤、又はそれらの組合せを含んでよい。この固定化樹脂は1若しくは複数の添加剤、1若しくは複数の充填剤、又はそれらの組合せを含んでもよい。この固定化樹脂は前記固定化工程の間に粉体、懸濁液、溶液、紡績糸、不織布マット、織布、フィルム、又はそれらが組み合わさった形で投入され得る。この固定化物質は1若しくは複数の樹脂、又は1若しくは複数のサイジング剤であり得る。
【0049】
前記テープ半製品62は1又は複数のコイル64に巻き付けられてよい。1又は複数の実施形態では前記テープ半製品62が巻かれると前記炭素製造工程が終了し、その巻かれたテープ半製品62が巻き出されると前記含浸処理が開始する。その後、前記炭素繊維製造工程とは別の工程でこの巻き出されたテープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませる。
【0050】
例となる実施形態をこれまでに説明してきたが、これらの実施形態は特許請求の範囲に包含される全ての可能性のある形態を説明しているわけではない。本明細書において使用されている言葉は限定よりもむしろ説明のための言葉であり、本開示の主旨と範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることが理解される。これまでに説明してきたように様々な実施形態の特徴を組み合わせることで明示的に説明又は例示されていない場合がある本発明のその他の実施形態を形成することができる。様々な実施形態を1又は複数の望ましい特質に関して他の実施形態又は先行技術実施態様よりも利点を提供するものとして、又は好ましいものとして説明してきたかもしれないが、当業者は望ましい全体的な系
統的特性を達成するために1又は複数の特徴又は特質を犠牲にできることを理解しており、それは特定の用途及び実施態様に依存する。これらの特性は費用、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、保守性、重量、製造可能性、組立性等を含み得るがこれらに限定されない。したがって、どの実施形態も1又は複数の特質に関して他の実施形態又は先行技術実施態様ほど望ましくないと説明されている限り、これらの実施形態は本開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましい場合がある。
本開示は以下の態様を含む。
<1>
2本以上の炭素繊維束を(a)固定化樹脂と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化して炭素繊維のテープ半製品を形成すること、及び
前記商業用炭素繊維製造工程とは別の工程で前記テープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませてプリプレグを形成すること
を含む、方法。
<2>
前記2本以上の炭素繊維束が同じ高さに存在する、<1>に記載の方法。
<3>
前記2本以上の炭素繊維束が相互に隣接する第1炭素繊維束と第2炭素繊維束を含む、<2>に記載の方法。
<4>
前記2本以上の炭素繊維束が相互に隣接しない第1炭素繊維束と第2炭素繊維束を含む、<2>に記載の方法。
<5>
前記固定化樹脂と前記マトリックス樹脂の材料が同じである、<1>に記載の方法。
<6>
前記固定化樹脂と前記マトリックス樹脂の材料が異なる、<1>に記載の方法。
<7>
前記固定化樹脂が1若しくは複数の熱硬化性樹脂、1若しくは複数の熱可塑性樹脂、又はそれらの組合せを含む、<1>に記載の方法。
<8>
前記マトリックス樹脂が1若しくは複数の熱硬化性樹脂、1若しくは複数の熱可塑性樹脂、又はそれらの組合せを含む、<1>に記載の方法。
<9>
前記テープ半製品の炭素繊維を開繊せずに前記全含浸工程を実施する、<1>に記載の方法。
<10>
前記固定化樹脂が1若しくは複数の結合剤、1若しくは複数の含浸剤、又はそれらの組合せを含む、<1>に記載の方法。
<11>
前記固定化樹脂が1若しくは複数の添加剤、1若しくは複数の充填剤、又はそれらの組合せを含む、<1>に記載の方法。
<12>
前記マトリックス樹脂が1若しくは複数の添加剤、1若しくは複数の充填剤、又はそれらの組合せを含む、<1>に記載の方法。
<13>
前記固定化工程の間に前記固定化樹脂が粉体、懸濁液、溶液、紡績糸、不織布マット、織布、フィルム、又はそれらが組み合わさった形で投入される、<1>に記載の方法。
<14>
完全含浸プリプレグの20%以下の体積分率で前記固定化樹脂が塗布され、且つ、前記含浸工程の間に追加のマトリックス樹脂が添加される、<1>に記載の方法。
<15>
前記テープ半製品をスプールに巻き取ることをさらに含む、<1>に記載の方法。
<16>
12K以上のフィラメント数と1,000フィラメント/mm以下のフィラメント密度を有する炭素繊維束を(a)固定化物質と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化してテープ半製品を形成すること、及び
前記炭素繊維製造工程とは別の工程で前記テープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませて繊維強化複合材料を形成すること
を含む、方法。
<17>
前記固定化工程の前に3K以上のフィラメント数を有する前記炭素繊維束を開繊して前記1,000フィラメント/mm以下のフィラメント密度を得ることをさらに含む、<16>に記載の方法。
<18>
前記フィラメント密度が833フィラメント/mm以下である、<16>に記載の方法。
<19>
前記繊維強化複合材料がプリプレグ又はフィラメントワインディングである、<16>に記載の方法。
<20>
前記固定化物質がサイジング剤又は樹脂である、<16>に記載の方法。
<21>
前記フィラメント数が24K以上である、<16>に記載の方法。
<22>
前記固定化物質及び前記マトリックス樹脂の材料が同じである、<16>に記載の方法。
<23>
前記固定化物質及び前記マトリックス材料の材料が異なる、<16>に記載の方法。
<24>
前記テープ半製品をスプールに巻き取ることをさらに含む、<16>に記載の方法。
<25>
1又は複数の炭素繊維束群を垂直方向に分割してそれぞれ1又は複数の高さに配置し、それぞれの群の中の前記炭素繊維束を開繊すること、
前記1又は複数の炭素繊維束群をそれぞれの高さで(a)固定化樹脂と共に、且つ、(b)商業用炭素繊維製造工程に則して固定化して1又は複数のテープ半製品を形成すること、及び
前記炭素繊維製造工程とは別の工程で前記1又は複数のテープ半製品にマトリックス樹脂を浸み込ませてプリプレグを形成すること
を含む、方法。
<26>
前記1又は複数の炭素繊維束群が第1炭素繊維束と第2炭素繊維束を含む第1炭素繊維束群及び第3炭素繊維束と第4炭素繊維束を含む第2炭素繊維束群を含む、<25>に記載の方法。
<27>
前記第1炭素繊維束と第2炭素繊維束が前記垂直分割工程の前に相互に隣接していない、<26>に記載の方法。
<28>
前記第1炭素繊維束と第2炭素繊維束が前記垂直分割工程の前に相互に隣接している、<26>に記載の方法。
<29>
前記垂直分割工程が前記表面処理の間、又はその前に開始される、<25>に記載の方法。
<30>
前記垂直分割工程が前記サイジング剤塗布の間、又はその前に開始される、<25>に記載の方法。

本開示はまた、以下の態様も含む。
<1>
2本以上の第1炭素繊維束を第1のトウバンドから第2の高さに分割して、第2のトウバンドから2本以上の第2炭素繊維束を形成すること、
分割工程後に、第2トウバンドからの2本以上の第2炭素繊維束は、第1のトウバンドから残っている2本以上の第1の炭素繊維束の第1の隣接するトウの間にギャップを残すこと、
前記第1のトウバンドからの第1の隣接するトウは、第2のトウバンドからの2本以上の第2の炭素繊維束の第2の隣接するトウの間にギャップを残すこと、
を含む、方法。
<2>
分割工程により、第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度が少なくとも50%減少する、<1>に記載の方法。
<3>
第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度は、1000フィラメント/mm以下である、<1>に記載の方法。
<4>
さらに、第1および第2のトウバンドの一方または両方のトウを広げて、第1および第2のトウバンドの一方または両方のトウ間のギャップの1つまたは複数を排除することを含む、<1>に記載の方法。
<5>
第1および第2のトウバンドの一方または両方は、分割工程後に安定化および/またはスプールされる、<4>に記載の方法。
<6>
第1および第2のトウバンドの一方または両方は、分割工程の後に樹脂で含浸される、<4>に記載の方法。
<7>
さらに、分割工程に沿って第1のトウバンドを表面処理にかけることを含む、<1>に記載の方法。
<8>
さらに、分割工程に沿って、第1のトウバンドをサイジング剤に供することを含む、<1>に記載の方法。
<9>
炭素繊維ラインの炉から第1のトウバンドを提供することをさらに含み、提供工程は、分割工程に沿って実行される、<1>に記載の方法。
<10>
分割工程は、第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度を低減する、<1>に記載の方法。
<11>
第2のトウバンドのトウの間隔は、分割工程の前の第1のトウバンドのトウの間隔よりも大きい、<1>に記載の方法。
<12>
2本以上の第1の炭素繊維束を第1のトウバンドから第2の高さに分割して、第2のトウバンドから2本以上の第2の炭素繊維束を形成する、分割工程と、
前記分割工程の後、第2のトウバンドからの2本以上の第2の炭素繊維束は、以前に2本以上の第2の炭素繊維束に隣接していた第1のトウとの間にギャップを残し、
前記分割工程の後、第2のトウバンドから2本以上の第2の炭素繊維束に以前に隣接していた第1のトウは、2本以上の第2の炭素繊維束の間にギャップを残すことと、を含む、方法。
<13>
前記分割工程が、第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度を少なくとも50%減少させる、<12>に記載の方法。
<14>
第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度が1000フィラメント/mm以下である、<12>に記載の方法。
<15>
第1および第2のトウバンドの一方または両方のトウの間のギャップの1つまたは複数を排除するために、第1および第2のトウバンドの一方または両方のトウをさらに広げることを含む、<12>に記載の方法。
<16>
前記分割工程の後に、第1および第2のトウバンドの一方または両方が安定化および/またはスプールされる、<15>に記載の方法。
<17>
前記分割工程の後に、第1および第2のトウバンドの一方または両方に樹脂を含浸させる、<15>に記載の方法。
<18>
前記分割工程に沿って第1のトウバンドを表面処理することをさらに含む、<12>に記載の方法。
<19>
前記分割工程に沿って第1のトウバンドをサイジング剤に供することをさらに含む、<12>に記載の方法。
<20>
炭素繊維ラインの炉から第1のトウバンドを提供することをさらに含み、提供工程は、前記分割工程に沿って実行される、<12>に記載の方法。
<21>
前記分割工程が、第1および第2のトウバンドの一方または両方の線形フィラメント密度を低減する、<12>に記載の方法。
<22>
前記第2のトウバンドのトウの間隔が、分割工程前の第1のトウバンドのトウの間隔よりも大きい、<12>に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6