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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166219
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241121BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241121BHJP
【FI】
B41J2/01 129
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H01L33/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152102
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2021551718の分割
【原出願日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2019188235
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩明
(57)【要約】
【課題】搬送方向にエアを排気することなく、複数のLEDを均一に冷却することが可能な構成を有する、小型の光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置が、基板と、基板の表面に配置された複数の光源とを有する光源部と、複数の放熱フィンを有し基板の裏面側に熱的に結合された放熱部と、放熱部を収容する筐体と、筐体内に放熱部を冷却する冷却風を生成する冷却ファンと、を備え、筐体は、筐体内の空間を区画し、放熱部が配置される第1空間と、第2空間とを形成する仕切板と、複数の放熱フィンの基端部が第2空間に露出するように、第1空間と第2空間を連通する連通口と、第1空間と連通するように、筐体の上面に形成された吸気口と、第2空間と連通するように、筐体の側面に形成された排気口と、を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に搬送される印刷媒体上にインクを付与する記録ヘッドの前記第1方向下流側に配置され、前記印刷媒体上のインクを硬化させる光照射装置であって、
前記第1方向と直交する第2方向と前記第1方向で規定される基板と、前記基板の表面に前記第2方向に沿って並べて配置され、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に光を出射する複数の光源と、を有し、前記印刷媒体上にライン状の光を照射する光源部と、
前記第2方向に沿って所定の間隔をおいて立設された複数の放熱フィンを有し、前記基板の裏面側に熱的に結合された放熱部と、
前記放熱部を収容する筐体と、
前記筐体内に、前記放熱部を冷却する冷却風を生成する冷却ファンと、
を備え、
前記筐体は、
前記筐体内の空間を前記第1方向に区画し、前記放熱部が配置される第1空間と、第2空間と、を形成する仕切板と、
前記複数の放熱フィンの基端部が前記第2空間に露出するように、前記第1空間と前記第2空間を連通し、かつ前記第2方向に延びる連通口と、
前記第1空間と連通するように、前記筐体の前記第3方向と相反する方向の端面に形成された吸気口と、
前記第2空間と連通するように、前記筐体の前記第2方向と相反する方向の端面に形成された排気口と、
を有することを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷媒体上にインクを付与する記録ヘッドの下流側に配置され、印刷媒体上のインクを硬化させる光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光の照射によって硬化するUVインクを用いて印刷を行なう印刷装置が知られている。このような印刷装置では、ヘッドのノズルから媒体にインクを付与した後、媒体に形成されたドットに紫外光を照射する。紫外光の照射により、ドットが硬化して媒体に定着するので、液体を吸収しにくい媒体に対しても良好な印刷を行うことができる。
【0003】
このような印刷装置に用いられる紫外光照射装置においては、近年、消費電力の削減、長寿命化、装置サイズのコンパクト化の要請から、従来の放電ランプに替えて、LED(Light Emitting Diode)素子を光源として利用したものが実用に供されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、印刷媒体を搬送する搬送ユニットと、搬送方向に並び、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、オレンジ、グリーンのカラーインクをそれぞれ付与する6つのヘッドと、各ヘッド間の搬送方向下流側に配置され、各ヘッドから印刷媒体上に付与されたドットインクを仮硬化(ピニング)させる6つの仮硬化用照射部(光照射装置)と、ドットインクを本硬化させて印刷媒体に定着させる本硬化用照射部とを備えた印刷装置が記載されている。そして、仮硬化用照射部には、印刷装置自体の軽量化、及びコンパクト化の要請から、光源としてLEDが用いられており、印刷媒体の幅方向に沿って複数のLEDが並んで配置されている。
【0005】
また、特許文献1に記載の光照射装置のように、光源としてLEDを用いる場合、投入した電力の大半が熱となることから、LED自身が発熱する熱によって発光効率と寿命が低下するといった問題が発生する。また、LEDの発熱によって、光照射装置自身(つまり、筐体)も熱くなるため、光照射装置の周辺の部品を近接して配置することができず、装置全体が大型化してしまうといった問題もある。このため、このような光照射装置においては、ヒートシンクや冷却ファン等を有する冷却装置を用いてLEDを効率よく冷却している。
【0006】
例えば、特許文献2には、印刷媒体の幅方向に沿って基板上に配置された複数のLED、基板の裏面に配置されてLEDの熱を放出する複数の放熱フィン、冷却ファン等を備えた光照射装置が記載されている。そして、冷却ファンによって生成される冷却風が複数のフィンの間を通るように構成することによってLEDを効率よく冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-252720号公報
【特許文献2】特開2019-057471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、LEDの発熱を抑えるためには、ヒートシンク等の放熱部材を用いるのが効果的である。しかしながら、特許文献2の光照射装置のように、複数のLEDが並んで配置される構成において、LEDの並び方向に沿って冷却風を流すと、冷却風(つまり、エア)の移動に従ってエアの温度が上昇してしまうため、エアの吸気口側のヒートシンクと排気口側のヒートシンクとでは冷却効率が異なってしまい、各LEDを均一に冷却することができなくなる。そして、各LEDが均一に冷却されないと(つまり、温度を略均一にしないと)、各LED間の温度差によって光量にばらつきが生じ、印刷媒体上の紫外線硬化型インクの硬化にもばらつきが発生することとなる。
【0009】
また、特許文献1に記載の光照射装置のように、印刷装置に組み込まれる場合には、光照射装置が搬送方向に並ぶ各記録ヘッド間に配置されるため、光照射装置はできる限り小型であることが望ましく、また光照射装置から排気される高温のエアが隣接する記録ヘッドに当たると、記録ヘッド内のインクの粘度を変化させてしまうため、搬送方向にエアを排気しない光照射装置が求められている。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送方向にエアを排気することなく、複数のLEDを均一に冷却することが可能な構成を有する、小型の光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の光照射装置は、第1方向に搬送される印刷媒体上にインクを付与する記録ヘッドの第1方向下流側に配置され、印刷媒体上のインクを硬化させる光照射装置であって、第1方向と直交する第2方向と第1方向で規定される基板と、基板の表面に第2方向に沿って並べて配置され、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に光を出射する複数の光源と、を有し、印刷媒体上にライン状の光を照射する光源部と、第2方向に沿って所定の間隔をおいて立設された複数の放熱フィンを有し、基板の裏面側に熱的に結合された放熱部と、放熱部を収容する筐体と、筐体内に、放熱部を冷却する冷却風を生成する冷却ファンと、を備え、筐体は、筐体内の空間を第1方向に区画し、放熱部が配置される第1空間と、第2空間と、を形成する仕切板と、複数の放熱フィンの基端部が第2空間に露出するように、第1空間と第2空間を連通し、かつ第2方向に延びる連通口と、第1空間と連通するように、筐体の第3方向と相反する方向の端面に形成された吸気口と、第2空間と連通するように、筐体の第2方向と相反する方向の端面に形成された排気口と、を有することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、第1空間内に配置された放熱フィンが、冷却ファンからの冷却風によって一様に冷却されるため、各光源間の光量のばらつきが抑えられる。また、排気口が、筐体の第2方向の端面に形成されているので、印刷媒体の搬送方向に高温の空気を排気することがない。また、吸気口が排気口と異なる面(つまり、筐体の第3方向と相反する方向の端面)に形成されているため、高温の空気を吸気することもなく、第1空間内に配置された放熱フィンを安定して冷却することができる。
【0013】
また、別の観点からは、本発明の光照射装置は、第1方向に搬送される印刷媒体上にインクを付与する記録ヘッドの第1方向下流側に配置され、印刷媒体上のインクを硬化させる光照射装置であって、第1方向と直交する第2方向と第1方向で規定される基板と、基板の表面に第2方向に沿って並べて配置され、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に光を出射する複数の光源と、を有し、印刷媒体上にライン状の光を照射する光源部と、第2方向に沿って所定の間隔をおいて立設された複数の放熱フィンを有し、基板の裏面側に熱的に結合された放熱部と、放熱部を収容する筐体と、筐体内に、放熱部を冷却する冷却風を生成する冷却ファンと、を備え、筐体は、筐体内の空間を第1方向に区画し、放熱部が配置される第1空間と、第2空間と、を形成する仕切板と、複数の放熱フィンの基端部が第2空間に露出するように、第1空間と第2空間を連通し、かつ第2方向に延びる連通口と、第2空間と連通するように、筐体の第2方向と相反する方向の端面に形成された吸気口と、第1空間と連通するように、筐体の第3方向と相反する方向の端面に形成された排気口と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、冷却ファンは、複数の放熱フィンと第3方向に相対するように、第2方向に沿ってN個(Nは2以上の整数)設けられていることが望ましい。
【0015】
また、仕切板は、放熱部を第1方向から挟むように配置された一対のプレートからなり、筐体内には第1空間を挟んで2つの第2空間が形成されていることが望ましい。
【0016】
また、第2空間において、連通口を第2方向に沿って複数の領域に区画するように配置され、連通口を通る冷却風を整流する隔壁板を備えることができる。また、この場合、隔壁板は、連通口がN個の冷却ファンに対応するN個の領域に区画されるように、(N-1)個設けられていることが望ましい。
【0017】
また、照射対象物の搬送路を第3方向から挟むように筐体に連結され、光源部から照射された光が外部に漏れないように遮光する遮光ユニットを備えることができる。また、この場合、遮光ユニットは、光源部と対向する位置に遮光面が形成された中空箱形の本体部を有することが望ましい。また、この場合、筐体は、第3方向の端面の第2方向の端部に第2空間と連通する第1開口を有し、本体部は、第1開口と対向する位置に、本体部の内部空間と連通する第2開口を有し、本体部の第2方向の端面に、内部空間と連通するように形成された第3開口と、を有することが望ましい。また、この場合、内部空間に遮光面に熱的に結合されたヒートシンクを有することが望ましい。
【0018】
また、吸気口を覆うように配置され、インキミストを吸着するフィルタを備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、搬送方向にエアを排気することなく、複数のLEDを均一に冷却することが可能な小型の光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の内部構成を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に備わる光源ユニットと放熱部材の構成を説明する概略図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る光照射装置の内部構成を説明する図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る光照射装置の内部構成を説明する図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る光照射装置の内部構成を説明する図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る光照射装置の内部構成を説明する図である。
図11】本発明の第6の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置1の構成を示す図であり、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は正面図である。また、図2(a)は、光照射装置1の平面図であり、図2(b)は底面図であり、図2(c)は左側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態の光照射装置1は、印刷装置等に組み込まれて、紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を硬化させる光源装置であり、一方向に搬送される照射対象物P(例えば、記録媒体等)の上方に配置され、照射対象物Pに対してライン状の紫外光を出射する。なお、図1(a)においては、説明の便宜のため、光照射装置1のみを示しているが、実際の印刷装置等においては、異なる色のインクをそれぞれ付与する、複数の記録ヘッドが照射対象物Pの搬送方向に並び、各記録ヘッドの下流側の狭い空間に光照射装置1が配置される。また、本明細書においては、照射対象物Pの搬送方向をX軸方向(第1方向)、後述するLED(Light Emitting Diode)素子210の配列方向をY軸方向(第2方向)、LED素子210が紫外光を出射する方向をZ軸方向と定義して説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態の光照射装置1は、内部に光源ユニット200等を収容するY軸方向に長い箱形の筐体100を備えている。筐体100は、底面に紫外光が出射されるガラス製の窓部105を備えている。また、筐体100の左側面には、筐体100内の空気を排気する、複数の小穴で形成された排気口101が形成され、筐体100の上面には、筐体100内に空気を供給する6個の吸気口103が形成され、各吸気口103に対応して冷却ファン300が配置されている。光照射装置1は、不図示の電源装置と電気的に接続され、電源装置から電力が供給されるようになっている。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る光照射装置1の内部構成を説明する図であり、図3(a)は、図2(a)のB-B線断面図であり、図3(b)は、図2(b)のC-C線断面図であり、図3(c)は、図1(b)のA-A線断面図である。なお、図3においては、図面を見易くするために、光照射装置1の内部の配線ケーブル等、一部構成を省略して示している。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の光照射装置1は、Y軸方向に並べて配置された6つの光源ユニット200と、Y軸方向に並べて配置された6つの放熱部材400、6つのLED駆動回路500等を筐体100内部に備えている。なお、各光源ユニット200、各放熱部材400、各LED駆動回路500は、それぞれ全く同一の構成となっている。
【0026】
図4は、本実施形態の光源ユニット200と放熱部材400の構成を説明する概略図であり、図4(a)は、Z軸方向から見た図であり、図3(b)はX軸方向から見た図である。図4に示すように、光源ユニット200は、X軸方向及びY軸方向で規定される矩形板状の基板205と、同じ特性を有する複数(例えば、10個)のLED素子210とを備えており、放熱部材400の放熱板410の一端面(Z軸方向の端面)上に固定されている。
【0027】
複数のLED素子210は、Z軸方向に光軸が揃えられた状態で、Y軸方向に所定の間隔をおいて基板205の表面に一列に配置され、基板205と電気的に接続されている。また、基板205は、LED駆動回路500から延びる配線ケーブル(不図示)によって電気的に接続されており、各LED素子210には、LED駆動回路500からの駆動電流が供給されるようになっている。各LED素子210に駆動電流が供給されると、各LED素子210からは駆動電流に応じた光量の紫外光(例えば、波長365nm)が出射され、光源ユニット200からはY軸方向に延び、かつ、X軸方向に所定の線幅を有するライン状の紫外光が出射される。図4に示すように、本実施形態においては、6つの光源ユニット200がY軸方向に並べて配置されており、各光源ユニット200から出射されたライン状の紫外光は、Y軸方向に連続するようになっている。
【0028】
放熱部材400は、光源ユニット200から発せられた熱を放熱する部材である。本実施形態の放熱部材400は、矩形板状の金属製(例えば、銅、アルミニウム)の放熱板410と、放熱板410の他端面(光源ユニット200が載置される面とは反対側の面)にロウ付けされた複数の放熱フィン420とで構成されている(図4(b))。放熱フィン420は、放熱板410からZ軸方向と相反する方向に突出するように、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて立設し、放熱板410に伝わった熱を空気中に放熱する、矩形板状の金属(例えば、銅、アルミニウム、鉄、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金等)の部材である。なお、詳細は後述するが、本実施形態においては、冷却ファン300によって筐体100内に外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気が冷却風として各放熱フィン420の間を流れ、放熱フィン420によって加熱された空気が、排気口101を通って速やかに排気されるようになっている。
【0029】
なお、図3(c)に示すように、本実施形態の筐体100は、筐体100内の空間をX軸方向に区画し、放熱部材400、LED駆動回路500及び冷却ファン300が配置される第1空間αと、第1空間αに隣接する第2空間βと、を形成する仕切板110を備え、仕切板110のZ軸方向側には、複数の放熱フィン420の基端部側(Z軸方向側)が第2空間βに露出するように、第1空間αと第2空間βを連通する連通口120が形成されている。図3(a)に示すように、本実施形態の連通口120は、6つの放熱部材400に対応して、Y軸方向に沿って6個形成されているが、これらを連続させて、Y軸方向に延びる1個の連通口120とすることもできる。なお、詳細は後述するが、本実施形態の第1空間αと第2空間βは、放熱フィン420を冷却するための冷却風が流れる風洞として機能するようになっている。
【0030】
本実施形態の各LED素子210は、略一様な光量の紫外光を出射するように各LED素子210に供給される駆動電流が調整されており、光源ユニット200から出射されるライン状の紫外光は、Y軸方向において略均一な光量分布を有している。
【0031】
各LED素子210に駆動電流が流れ、各LED素子210から紫外光が出射されると、LED素子210の自己発熱により温度が上昇するが、各LED素子210で発生した熱は、基板205及び放熱板410を介して、放熱フィン420に速やかに伝導(移動)し、各放熱フィン420から周辺の空気中に放熱される。そして、放熱フィン420によって加熱された空気は、各放熱フィン420の表面を流れる冷却風によって排気口101を通って速やかに排気されるようになっている。
【0032】
ここで、本実施形態の構成においては、6つの光源ユニット200と放熱部材400がY軸方向に並べて配置されているところ、各光源ユニット200のLED素子210の温度が異なると、光量にばらつきが生じてしまうため、光量を均一にするためには6つの放熱部材400を均一に冷却しなければならないという課題があった。また、光照射装置1が印刷装置等に組み込まれた場合、各記録ヘッド間の非常に狭い空間に配置される上、光照射装置1から排気される高温の空気が記録ヘッドに当たってしまうと、記録ヘッド内のインクの粘度を変化させてしまうため、搬送方向に空気を排気できないという課題があった。そこで、かかる課題を解決するため、本実施形態においては、第1空間αにおいて6つの放熱部材400と対向するように、6個の冷却ファン300を配置すると共に、第1空間αと第2空間βとで冷却風の流れる向きを変更し、筐体100の左側面(つまり、Y軸方向と相反する方向)に設けられた排気口101から排気するように構成している。
【0033】
以下、本発明の特徴部分である、筐体100内で流れる冷却風と放熱部材400の冷却作用について説明する。図3の各実線矢印は、筐体100内の冷却風の向きを示している。
【0034】
図3(b)に示すように、本実施形態の光照射装置1は、6つの放熱部材400と対向するように、筐体100の上面(Z軸方向と相反する側の面)に形成された吸気口103に、6個の冷却ファン300を備えている。また、図3(a)に示すように、筐体100の左側面には、排気口101が形成されている。6個の冷却ファン300が回ると、筐体100の外側の空気が冷却ファン300から取り込まれて、筐体100の第1空間αにZ軸方向の冷却風が発生する。そして、冷却風は、第1空間αに配置されたLED駆動回路500を冷却しながらZ軸方向に流れ、各冷却ファン300に対向する放熱部材400の放熱フィン420間に供給される(図3(b)、図3(c))。放熱フィン420に到達した冷却風は、放熱フィン420の基端部(つまり、放熱板410)でX軸方向と相反する方向に偏向され、連通口120を通って、第2空間βに流れ込む。そして、冷却風が第2空間βに流れ込むと、第2空間β内が正圧となるため、排気口101からは筐体100の内部の空気が排気される(図3(a))。つまり、筐体100内には、図3の実線の矢印で示す冷却風が発生する。
【0035】
このように、本実施形態においては、6つの放熱部材400と対向するように6個の冷却ファン300が設けられているため、各放熱フィン420間に流入する空気の量は、略均一となり、各放熱部材400が略均一に冷却されることとなる。また、本実施形態においては、第2空間βによって冷却風の向きを変更し、筐体100の左側面(つまり、Y軸方向と相反する方向の面)に設けられた排気口101から排気するように構成されているため、光照射装置1が印刷装置の狭い空間内に配置されたとしても、搬送方向に近接する記録ヘッド等に向けて高温の空気が排気されることはない。また、吸気口103が形成されている面(Z軸方向と相反する側の面)と、排気口101が形成されている面(Y軸方向と相反する方向の面)とが異なるため、筐体100内に高温の空気を吸気することもなく、第1空間α内に配置された放熱フィン420を安定して冷却することができる。なお、第2空間β内の空気が排気口101から効率よく排気されるように、排気口101の開口面積が、連通口120の開口面積に比較して大きくなるように構成されていることが望ましい。
【0036】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0037】
例えば、本実施形態の光照射装置1は、Y軸方向に並べて配置された6つの光源ユニット200と放熱部材400とを備えるものとして説明したが、光源ユニット200と放熱部材400の数は、要求される仕様に応じて適宜設定される。また、複数の光源ユニット200と放熱部材400を備える構成に代えて、Y軸方向に延びる1つの光源ユニット200と放熱部材400とを備える構成とすることもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、6つの放熱部材400と対向するように6個の冷却ファン300を設けたが、全ての放熱部材400を均等に冷却できればよく、冷却ファン300の個数は、LED素子210の発熱量や冷却ファン300の能力に応じて適宜設定される。また、筐体100の上面付近において、筐体100の第1空間αの断面積を大きくして、吸気口103の開口面積の総和を更に大きくしてもよい。例えば、筐体100の上面付近において仕切板110を屈曲させて、筐体100の上面全体に吸気口103を配置可能にしてもよい。
【0039】
また、本実施形態の冷却ファン300は、筐体100内に空気を供給するものとして説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、冷却ファン300を排気ファンとすることもできる。なお、この場合、本実施形態の排気口101は吸気口として機能し、図3の冷却風の向きは反対となる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る光照射装置2の内部構成を説明する断面図である。図5(a)は、第1の実施形態の図3(a)に対応する断面図であり、図5(b)は第1の実施形態の図3(c)に対応する断面図である。図5に示すように、本実施形態の光照射装置2は、第2空間βにおいて、複数の連通口120をそれぞれ区画するように(つまり、第2方向に沿って複数の領域に区画するように)配置され、連通口120を通る冷却風を整流する5枚の隔壁板112を備える点で、第1の実施形態の光照射装置1と異なる。このように、第2空間βに隔壁板112が配置されると、放熱フィン420に到達した冷却風は、連通口120を通って、第2空間βに流れ込み、隔壁板112によってZ軸方向と相反する方向に一旦偏向される(図5(b))。従って、各連通口120から第2空間βに流れ込む冷却風の流れが、隣接する連通口120からの冷却風に影響されることはなく、第2空間βの冷却風の流れが安定する。
【0041】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光照射装置3の内部構成を説明する断面図である。図6(a)は、第1の実施形態の図3(a)に対応する断面図であり、図6(b)は第1の実施形態の図3(c)に対応する断面図である。図6(b)に示すように、本実施形態の光照射装置3においては、仕切板110が放熱部材400をX軸方向から挟むように配置された一対のプレート110a、110bからなり、筐体100内に第1空間αを挟んで2つの第2空間βが形成され、冷却ファン300が放熱部材400に近接して配置されている点で、第1の実施形態の光照射装置1と異なる。このように、筐体100内に一対のプレート110a、110bが配置されると、筐体100の外側の空気が吸気口103から取り込まれて、筐体100の第1空間αをZ軸方向に流れ、各冷却ファン300に対向する放熱部材400の放熱フィン420間に供給される。そして、放熱フィン420に到達した冷却風は、放熱フィン420の基端部でX軸方向及びX軸方向と相反する方向に偏向され、連通口120を通って、2つの第2空間βに流れ込む(図6(b))。そして、冷却風が各第2空間βに流れ込むと、各第2空間β内が正圧となるため、各第2空間βと連通した排気口101から筐体100の内部の空気が排気される(図6(a))。つまり、筐体100内には、図6の実線の矢印で示す冷却風が発生する。
【0042】
このように、本実施形態においては、第1空間αを挟んで2つの第2空間βが形成されている。このため、連通口120の開口面積(開口面積の総和)が第1の実施形態に比較して大きくなる。従って、第1の実施形態に比較して冷却風の風量を増やすことができ、第1空間α内に配置された放熱フィン420をより安定して冷却することができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図7および図8は、本発明の第4の実施形態に係る光照射装置4の構成を示す図であり、図7(a)は斜視図であり、図7(b)は正面図である。また、図8(a)は、光照射装置4の平面図であり、図8(b)は底面図であり、図8(c)は左側面図である。また、図9は、光照射装置4の内部構成を説明する図であり、図9(a)は、図8(a)のL-L線断面図であり、図9(b)は、図8(b)のM-M線断面図であり、図9(c)は、図7(b)のK-K線断面図である。図7乃至図9に示すように、本実施形態の光照射装置4は、照射対象物Pの搬送路50を挟んで筐体100と対向して配置される遮光ユニット600を備える点で、第2の実施形態の光照射装置2と異なる。また、本実施形態の光照射装置4は、筐体100の底面(Z軸方向の端面)のY軸方向両端部に、第2空間βと連通する開口108(第1開口)を備える点で、第2の実施形態の光照射装置2と異なる。
【0044】
図7乃至図9に示すように、遮光ユニット600は、搬送路50を挟んで筐体100と対向して配置され、光源ユニット200から出射された紫外光が外部に漏れないように遮光する装置である。また、図8に示すように、遮光ユニット600と筐体100は、Y軸方向一端部に設けられたヒンジ150によって接続されており、遮光ユニット600のY軸方向他端部は、一端部を中心として回転方向に移動可能に構成されている。このように、本実施形態においては、遮光ユニット600が回転方向に移動することによって、遮光ユニット600と筐体100の間が開いた状態となるため、連続紙等の照射対象物Pを搬送路50に容易に設置することが可能となっている。
【0045】
図7乃至図9に示すように、遮光ユニット600は、中空箱形の金属製の本体部601を有し、本体部601の光源ユニット200と対向する位置には、光源ユニット200からの紫外光を遮光する遮光面602が形成され、開口108と対向する位置には、本体部601の内部空間γと連通する開口608(第2開口)が形成されている。また、本体部601の左側面には、本体部601内の空気を排気する、複数の小穴で形成された排気口603(第3開口)が形成されている。また、本体部601の内部空間γには、遮光面602に熱的に結合されたヒートシンク620を備えている。ヒートシンク620には、Z軸方向に突出するように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて立設し、ヒートシンク620に伝わった熱を空気中に放熱する、矩形板状の放熱フィン621が形成されている。
【0046】
本実施形態においても、6個の冷却ファン300が回ると、筐体100の外側の空気が冷却ファン300から取り込まれて、筐体100の第1空間αにZ軸方向の冷却風が発生する。そして、冷却風は、第1空間αに配置されたLED駆動回路500を冷却しながらZ軸方向に流れ、各冷却ファン300に対向する放熱部材400の放熱フィン420間に供給される(図9(b)、図9(c))。放熱フィン420に到達した冷却風は、放熱フィン420の基端部(つまり、放熱板410)でX軸方向と相反する方向に偏向され、連通口120を通って、第2空間βに流れ込み、さらに隔壁板112によってZ軸方向と相反する方向に偏向される(図9(c))。そして、冷却風が第2空間βに流れ込むと、第2空間β内が正圧となるため、排気口101からは第2空間β内の空気が排気されると共に、第2空間β内の空気の一部(つまり、冷却風の一部)が、開口108及び開口608を通って内部空間γ内に入る。そして、内部空間γ内に入った冷却風は、ヒートシンク620の放熱フィン621間を流れ、放熱フィン621を冷却して排気口603から排気される(図9(a))。
【0047】
このように、本実施形態の光照射装置4は、光源ユニット200からの紫外光を遮光する遮光ユニット600を備えるが、遮光面602が紫外光を受けることによって高温となるため、筐体100内の冷却風の一部を遮光ユニット600の本体部601の内部空間γに導入し、これによって遮光面602を冷却している。従って、本実施形態の構成によれば、遮光面602が高温になることを防止することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、本体部601の内部空間γに、遮光面602に熱的に結合されたヒートシンク620を備える構成としたが、内部空間γ内を通る冷却風によって遮光面602を十分に冷却することができれば、必ずしもヒートシンク620を設ける必要はない。
【0049】
また、遮光面602の表面に、光源ユニット200からの紫外光を吸収する黒色の無電解ニッケルめっきやクロムめっきなどを施すこともできる。
【0050】
なお、第2空間β内の空気が排気口101及び排気口603から効率よく排気されるように、排気口101と排気口603の開口面積の総和が、連通口120の開口面積に比較して大きくなるように構成されていることが望ましい。
【0051】
また、本実施形態の光照射装置4は、筐体100の底面(Z軸方向の端面)のY軸方向両端部に、第2空間βと連通する開口108(第1開口)を備え、遮光ユニット600の開口108と対向する位置には、本体部601の内部空間γと連通する開口608(第2開口)が形成されているとしたが、開口部108(第1開口)及び開口608(第2開口)は、必ずしもY軸方向の両端に設けられる必要はなく、Y軸方向下流側に1箇所設けられればよい。
【0052】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態に係る光照射装置5の内部構成を説明する断面図である。図10(a)は、第4の実施形態の図9(a)に対応する断面図であり、図10(b)は第4の実施形態の図9(c)に対応する断面図である。図10(b)に示すように、本実施形態の光照射装置5は、第3の実施形態の光照射装置3に、第4の実施形態の遮光ユニット600を取付けた構成になっている。なお、本実施形態の光照射装置5は、開口部108(第1開口)及び開口608(第2開口)がY軸方向下流側に1箇所設けられている点で、第4の実施形態の光照射装置4と異なっている。
【0053】
本実施形態光照射装置5は、第3の実施形態の光照射装置3と同様、放熱部材400をX軸方向から挟むように一対のプレート110a、110bを有しており、筐体100内に第1空間αを挟んで2つの第2空間βが形成されている。そして、各冷却ファン300が回転すると、筐体100の外側の空気が吸気口103から取り込まれて、筐体100の第1空間αをZ軸方向に流れ、各冷却ファン300に対向する放熱部材400の放熱フィン420間に供給される。放熱フィン420に到達した冷却風は、放熱フィン420の基端部でX軸方向及びX軸方向と相反する方向に偏向され、連通口120を通って、2つの第2空間βに流れ込む(図10(b))。そして、冷却風が各第2空間βに流れ込むと、各第2空間β内が正圧となるため、各第2空間βと連通した排気口101から筐体100の内部の空気が排気されると共に、各第2空間β内の空気の一部(つまり、冷却風の一部)が、開口108及び開口608を通って内部空間γ内に入る(図10(a))。そして、内部空間γ内に入った冷却風は、ヒートシンク620の放熱フィン621間を流れ、放熱フィン621を冷却して排気口603から排気される(図10(a))。つまり、筐体100内には、図10の実線の矢印で示す冷却風が発生する。
【0054】
このように、本実施形態の光照射装置5は、光源ユニット200からの紫外光を遮光する遮光ユニット600を備えるが、筐体100内の冷却風の一部が遮光ユニット600の本体部601の内部空間γを流れるため、遮光面602が高温になることを防止することができる。また、本実施形態においては、第3の実施形態と同様、第1空間αを挟んで2つの第2空間βが形成されているため、連通口120の開口面積(開口面積の総和)が第4の実施形態に比較して大きくなる。従って、第4の実施形態に比較して冷却風の風量を増やすことができ、第1空間α内に配置された放熱フィン420及び内部空間γ内に配置された放熱フィン621をより安定して冷却することができる。
【0055】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る光照射装置6の構成を示す図であり、図11(a)は、光照射装置6の平面図であり、図11(b)は左側面図である。図11に示すように、本実施形態の光照射装置6は、筐体100の上面の冷却ファン300及び吸気口103を覆うようにフィルタ700を備える点で、第1の実施形態の光照射装置1と異なる。フィルタ700は、例えば、紙製のフィルタであり、吸気口103の周辺のインキミストを吸着する機能を有している。
【0056】
本実施形態の構成によれば、光照射装置6がインキミストの充満する空間内に配置されたとしても、フィルタ700によってインキミストを吸着することができるため、筐体100内へのインキミストの侵入を防止することができる。
【0057】
なお、第1の実施形態と同様、本実施形態の冷却ファン300は、筐体100内に空気を供給するものとして説明したが、冷却ファン300を排気ファンとすることもできる。この場合、排気口101が吸気口として機能するため、排気口(吸気口)101を覆うようにフィルタ700を配置すればよい。
【0058】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 :光照射装置
2 :光照射装置
3 :光照射装置
4 :光照射装置
5 :光照射装置
6 :光照射装置
50 :搬送路
100 :筐体
101 :排気口
103 :吸気口
105 :窓部
108 :開口
110 :仕切板
110a:プレート
110b:プレート
112 :隔壁板
120 :連通口
150 :ヒンジ
200 :光源ユニット
205 :基板
210 :LED素子
300 :冷却ファン
400 :放熱部材
410 :放熱板
420 :放熱フィン
500 :LED駆動回路
600 :遮光ユニット
601 :本体部
602 :遮光面
603 :排気口
608 :開口
620 :ヒートシンク
621 :放熱フィン
700 :フィルタ
P :照射対象物
α :第1空間
β :第2空間
γ :内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11