(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166223
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】マクロファージベース療法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0786 20100101AFI20241121BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20241121BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241121BHJP
C12N 5/02 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12N5/0786
A61K35/15
A61P1/16
C12N5/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024152332
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2020549605の分割
【原出願日】2019-03-15
(31)【優先権主張番号】1804255.6
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】501337513
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ エジンバラ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・フォーブス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ニール・ダブリュー・エー・マクゴーワン
(72)【発明者】
【氏名】アラスデア・アール・フレイザー
(57)【要約】
【課題】ヒトにおける非極性化単球由来成熟マクロファージの投与及び肝硬変の治療におけるそれらの効果は、これまでに評価されていない。
【解決手段】本発明は、肝疾患の治療における使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ、及びそれを必要とするヒトの線維症を治療する方法における使用のためのマクロファージに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝疾患の治療における使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項2】
前記マクロファージが単球由来である、請求項1に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項3】
前記マクロファージが成熟マクロファージである、請求項1又は2に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項4】
前記マクロファージが、マクロファージ供給源細胞における発現と比較して少なくとも5倍である少なくとも1つの表面25F9又はCD206の上昇した発現によって特徴付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項5】
前記マクロファージが、CD163及びCD169の1つ又は複数の発現の上昇によって更に特徴付けられる、請求項4に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項6】
前記非極性化マクロファージが、罹患した患者の末梢血から単離されたCD14+単球から調製される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項7】
前記CD14+単球が、100ng/mlの濃度でM-CSFと共に7日間インキュベートされる、請求項6に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ。
【請求項8】
それを必要とするヒトの線維症を治療する方法における使用のためのマクロファージ。
【請求項9】
それを必要とするヒトに前記マクロファージの1回又は複数回用量を投与することによって、線維症を治療するための請求項8に記載のマクロファージ。
【請求項10】
前記マクロファージが、前記ヒト自身のPBMC、健康ドナーPBMC、又は骨髄を含む幹細胞、胚性幹細胞若しくは人工多能性幹細胞に由来する、請求項8又は9に記載のマクロファージ。
【請求項11】
前記マクロファージが極性化されていない、請求項10に記載のマクロファージ。
【請求項12】
前記1回又は複数回用量がおよそ30日の間隔で投与される、請求項11に記載のマクロファージ。
【請求項13】
それを必要とするヒトが肝硬変、好ましくは硬化性肝疾患を有する、請求項8から12のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項14】
それを必要とするヒトが、10から16のMELDスコアを有する罹患した患者である、請求項1から13のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項15】
それを必要とするヒトに3用量を投与することにより線維症を治療する方法における使用のためのマクロファージであって、初回用量が1日目、2回目の用量は30日目、3回目の用量は60日目に投与される、マクロファージ。
【請求項16】
静脈内投与による使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の自家単離非極性化ヒトマクロファージ又は請求項8から15のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項17】
1×107から1×109のマクロファージを含む1回又は複数回用量の投与による使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の自家単離非極性化ヒトマクロファージ又は請求項8から16のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項18】
肝疾患が肝硬変であり、好ましくは肝硬変が、高アルコール消費、肥満、代謝障害、又はウイルス感染、最も好ましくはアルコール誘導性肝硬変、NASH又はHCVのいずれかによって引き起こされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージ又は請求項13に記載のマクロファージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
肝硬変は西欧諸国の主要な健康問題である。英国では、肝疾患が第5位の死亡原因であり、2010年における100万人を超える死は肝硬変の結果であると推定された。この疾患は、進行性組織損傷、線維性瘢痕及び肝機能喪失による高いレベルの罹患率に関連しており、末期疾患の唯一の治療選択肢は肝移植である。しかしながら、ドナー臓器の利用性は需要を満たすことができず、末期肝疾患の患者はしばしば移植に好適ではない。移植を受けた者は、健康リスクの増加を伴う生涯にわたる免疫抑制が必要となる。2015年には、611人の患者が英国の生体肝移植のリストに載っていたと報告されている。患者は、肝移植を受けるまで、最大2年間待機している可能性がある。登録後1年の時点で、患者の17%は依然として肝移植リスト上で待機していた。同様に、米国では、肝移植待機リスト(LTWL)上に、ドナー臓器を特定できない可能性がある多くの患者がいる。約1700人の患者が、毎年待機リスト上で死亡するか、又は健康の悪化によりリストから除外される一方で、約6500人が、6か月以上リストに載っている。末期肝疾患の治療は、世界的に大きな関心事となっている。
【背景技術】
【0002】
肝疾患の非代償性期末への移行を防止又は遅延させる代替療法が緊急に必要である。
【0003】
肝硬変の病理は、高アルコール消費、肥満、代謝障害、ウイルス感染、又は自己免疫疾患等の多数の原因因子によって駆動され、健康な肝細胞組織及び肝臓構造が徐々に失われ、筋線維芽細胞由来の線維性瘢痕に置き換わる。例えば、アルコール、ウイルス等、肝臓の損傷を促進する因子が除外されると、肝線維症は少なくとも部分的に可逆的であり、肝臓の再生が可能となることがますます認識されてきている。
【0004】
実験的肝障害後の肝再生の動物モデルは、マクロファージが線維性肝疾患の制御と修復に重要な役割を果たす可能性があることを示している。肝臓のマクロファージは、常在性クッパー細胞及び補充された造血性由来のマクロファージを含む、細胞の不均一な集団であり、食作用等を含む傷害後の肝臓の再生応答において多様な役割を持ち、免疫寛容、肝星細胞の活性化/サイトカインの産生及び細胞外マトリックスの分解を介する炎症及び線維化の促進と解消の両方を維持する。
【0005】
肝疾患へのマクロファージ指向治療アプローチがいくつか報告されている(例えば、Tackeら、J. Hepatology 2017; 66:1300~1312頁でレビューされるように)が、マクロ病状におけるファージ機能及び相互作用の複雑な性質に起因した様々な課題に直面している。更に、マクロファージサブセットは全く反対の機能が発揮されることがあり、治療的介入のためには、投与するマクロファージの特定の特性、並びにそれらの最適な投与量及びタイミングを慎重に検討し、確立する必要があることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒトにおける非極性化単球由来成熟マクロファージの投与及び肝硬変の治療におけるそれらの効果は、これまでに評価されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、肝疾患の治療における使用のための自家単離非極性化ヒトマクロファージを提供する。
【0008】
一部の実施形態では、本発明の任意の態様又は実施形態に従って使用するための非極性化ヒトマクロファージは、単球由来である。一部の実施形態では、本発明の任意の態様又は実施形態に従って使用するための非極性化ヒトマクロファージは、成熟マクロファージである。適切には、本発明に従って使用するためのマクロファージは、25F9又はCD206等の少なくとも1つのマクロファージ関連表面マーカーの高発現又は上昇発現を特徴とする;一部の実施形態では、発現は、前駆細胞又は新しく単離された末梢血単球等の供給源細胞上のこれらのマーカーの発現レベルと比較して、「高い」又は「上昇」している。他の表面マーカーには、CD163又はCD169の1つ又は複数の存在及び/又は高発現が含まれる。一部の実施形態では、0日目の単離されたCD14+単球と比較して、CD93の欠如及び炎症性サイトカイン受容体CCR2の減少が検出され得る。特定の実施形態では、非極性化マクロファージは、CD45/CD14の陽性発現により特徴付けられ、80%を超える生存率を有し、表面マーカー25F9及びCD206については、0日目の元の単球のMFIよりも5倍以上高いMFI(平均蛍光強度)を有する。
【0009】
一実施形態では、本発明の任意の態様又は実施形態に従って使用するための自家単離非極性化ヒトマクロファージは、罹患患者の末梢血から単離されたCD14+単球から調製される。適切には、これらのCD14+単球をM-CSFと少なくとも48時間、又は3~5日間、又は7日間インキュベートする。一部の実施形態では、M-CSFは、約100ng/mlの濃度で使用されるが、これは、所望の特性を有する非極性化マクロファージを得るために変動し得ることが理解されよう。一実施形態では、本発明の任意の態様又は実施形態に従って使用するための非極性化マクロファージは、本明細書の実施例に記載されているプロセスによって取得されるか、又は取得可能である。特に、本プロセスは、本明細書の実施例4A又は実施例4Bに記載されている通りである。さらなる態様では、本発明は、実施例4A又は実施例4Bに記されるプロセスによって取得されるか、又は取得可能である自家マクロファージを提供する。一部の実施形態では、単球は、本明細書に記載されるように、T細胞培地中でインキュベートされる。
【0010】
一部の実施形態では、本発明に従った自家単離非極性化ヒトマクロファージは、肝硬変における使用のためのものであり、好ましくは、肝硬変は、高アルコール消費、肥満、代謝障害又はウイルス感染のいずれかによって引き起こされ、最も好ましくは、アルコール誘発肝硬変、NASH又はHCVである。
【0011】
他の実施形態では、自家単離非極性化ヒトマクロファージは、静脈内投与用である。適切には、用量はおよそ107から109細胞、適切には少なくとも107細胞、少なくとも108又は少なくとも109細胞である。複数用量を投与してもよい。
【0012】
本発明の別の態様では、1回又は複数回用量の前記マクロファージを、それを必要とするヒトに投与することにより、線維症、好ましくは肝硬変を治療する方法における使用のためのマクロファージが提供される。一実施形態では、前記マクロファージの1、2、3、又はそれ以上の用量が、それを必要とするヒトに投与され、前記用量の各々の間におよそ1か月の間隔がある。一実施形態では、第1の用量は1日目であり、第2の用量は30日目であり、第3の用量は60日目である。一実施形態では、マクロファージは医薬組成物に含まれる。一実施形態では、前記マクロファージの投与は、線維症の減少をもたらす。
【0013】
一部の実施形態では、それを必要とするヒトは、硬化性肝疾患を有する。適切には、ヒトは、10~16のMELDスコアを有する罹患した患者である。
【0014】
各用量におけるマクロファージの数は、治療される個体に応じて変化し得る。一部の実施形態では、各用量は、1用量あたり少なくとも1×107マクロファージ、適切には1×108又は1×109マクロファージを含む。
【0015】
一実施形態では、各用量の投与は静脈内投与による。適切には、静脈内投与は末梢静脈を介する。
【0016】
本発明のこの態様に従った方法における使用のためのマクロファージは、好ましくは非極性化状態にある。適切には、そのようなマクロファージは、それらが由来する単球で見られるものよりも高い25F9又はCD206の発現により特徴付けられる。一部の実施形態では、非極性化マクロファージは、ヒト自身のPBMCに由来する、すなわち自家性である。他の実施形態では、非極性化マクロファージは、例えば、関連する疾患を有する患者に投与するための健康ドナーに由来する同種異系であり得る。他の実施形態では、非極性化マクロファージは、幹細胞骨髄(BM)、胚性幹細胞(ESC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)に由来し得る。適切なマクロファージを生成する方法は、本明細書に記載されている。
【0017】
別の態様では、本発明は、10~16のMELDスコアを有するヒトへ3用量の最大109細胞の静脈内投与による、肝硬変の治療方法における使用のための自家マクロファージを提供する。適切には、これらの用量は、およそ1月間隔又はおよそ30日間隔で提供される。一部の実施形態では、本発明に従った自家マクロファージを含む使用は、肝硬変の治療に使用される別の薬剤又は抗線維症剤と組み合わせることができる。一部の実施形態では、他の薬剤は、組換えヒトG-CSF等のG-CSFであってもよい。
【0018】
本発明の任意の態様の他の態様及び実施形態は、以下に番号付けられた項目に記される:
【0019】
1.自家単離非極性化ヒトマクロファージを調製する方法であって、
a)患者、適切には罹患したヒト患者の末梢血から単球を単離する工程と、
b)単離した単球を50~150ng/mlのM-CSFを含む培地で少なくとも48時間インキュベートする工程と
を含む、方法。
【0020】
2.単離された単球が100ng/mLのM-CSFとインキュベートされる、項目1に記載の方法。
【0021】
3.単離された単球が培養バッグ中でインキュベートされる、項目1又は項目2に記載の方法。
【0022】
4.単離された単球がM-CSFと共に7日間インキュベートされる、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0023】
5.単離された単球が、1cm2あたり及び1mlあたり2×106単球の密度でインキュベートされる、項目1~4のいずれかに記載の方法。
【0024】
6.単球がCD14の表面発現を特徴とする、項目1~5のいずれかに記載の方法。
【0025】
7.CD14マイクロビーズ選択を使用して単球が単離される、項目1から6のいずれかに記載の方法。
【0026】
8.M-CSFとのインキュベーションの後、自家単離非極性化ヒトマクロファージが、CD45/CD14の陽性発現を特徴とし、80%を超える生存率を有し、0日目の元の単球のMFIより5倍以上高い表面マーカー25F9及びCD206についてのMFI(平均蛍光強度)を有する、項目1から7のいずれかに記載の方法。
【0027】
9.罹患した患者が肝硬変を有する、項目1から8のいずれかに記載の方法。
【0028】
10.肝硬変が、高アルコール消費、肥満、代謝障害又はウイルス感染のいずれかにより引き起こされる、項目9に記載の方法。
【0029】
11. 罹患した患者に投与するための自家非極性化ヒトマクロファージの製剤であって、
a)項目1から10のいずれかの方法に従って作製された非極性化ヒトマクロファージと、
b)賦形剤と
を含み、
c)非極性化ヒトマクロファージが、25F9、CD206、CD163、CD169若しくはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの表面マーカーの高発現を示し、及び/又は
d)製剤が少なくとも1×107の非極性化ヒトマクロファージを含み、及び/又は
e)製剤が静脈内若しくは皮下投与用の輸液として製剤化され、及び/又は
f)製剤が4.5%v/v未満の血清を含む、
製剤。
【0030】
12.賦形剤が0.5%v/vのヒト血清アルブミンを有する0.9%v/vの生理食塩水を含む、項目11に記載の製剤。
【0031】
13.自家単離非極性化ヒトマクロファージの投与により、ヒトの肝疾患を治療する方法。
【0032】
14.非極性化ヒトマクロファージが単球由来である、項目13に記載の方法。
【0033】
15.非極性化ヒトマクロファージが、供給源細胞よりも25F9又はCD206の発現が上昇することを特徴とする、項目13から14のいずれかに記載の方法。
【0034】
16.非極性化ヒトマクロファージが、項目1から10のいずれかに記載の方法に従って調製される、項目13から15のいずれかに記載の方法。
【0035】
17.投与が、好ましくは静脈内に注入される、項目13から16のいずれかに記載の方法。
【0036】
18.注入が末梢静脈を介する、項目17に記載の方法。
【0037】
19.投与又は注入が107~109細胞間の用量である、項目13から17のいずれかに記載の方法。
【0038】
20.患者が1か月間隔で3回の注入を受ける、項目19に記載の方法。
【0039】
21.患者が10~16のMELDスコアを有する、項目13から19のいずれかに記載の方法。
【0040】
22. 10から16のMELDスコアを有する患者の肝疾患を治療する方法であって、治療有効量の、a)項目1から10のいずれかに記載の方法に従って調製された自家マクロファージ並びにb)抗線維化剤及び/又はG-CSFを投与する工程を含む、方法。
【0041】
23. 肝臓における肝細胞再生を促進する方法であって、有効量の自家単離非極性化ヒトマクロファージを患者に投与する工程を含む、方法。
【0042】
24.投与が静脈内、好ましくは末梢静脈を介する、項目23に記載の方法。
【0043】
25.患者がアルコール誘導性肝硬変を有する、項目23又は項目24に記載の方法。
【0044】
26. 1用量あたり107から109の自家細胞が投与される、項目23から25のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】通常ドナーからのGMPマクロファージ培養の初期最適化を示す図である。A)LSカラムを使用した単球のCliniMACS CD14ビーズ単離により、高精製されたCD14画分が生成された(n=26)。B)CliniMACS Prodigy CD14選択により、肝硬変ボランティアのアフェレーシス採取物から同等に高濃縮CD14+画分が生産された。C)肝硬変患者は末梢血中のCD14数がより高くなる傾向を示した(n=11、p=0.108)。D)顕著ではないが、TexMACSは最高かつ最も一貫したマクロファージの収率となった(n = 6~10)。E)TexMACS培養からのマクロファージは、AIM-V培地中で培養されたものよりもサイズが顕著に大きかった(p<0.0001、n=5)。F)R&D社からのGMPグレードのM-CSFは、標準のM-CSFと同様のマクロファージ収率を生成したが、マクロファージマーカー25F9の発現がより強力であった(n=6)。G)顕微鏡画像は、定義された培地で生成されたものとは異なり、DMEM+5%ABがマクロファージ培養において凝集及び付着を生じたことを示している。(Fraserら、Cytotherapy 2017; 19(9):1113~1124頁)。
【
図2】GMPマクロファージの新鮮単球と凍結単球の表現型を示すグラフである。バフィーコート単球を単離し、アリコートを凍結してLN2に保存し、残りをマクロファージの生成に使用した。解凍後、単球をマクロファージに培養し、表現型を比較した。解凍した単球から作られたマクロファージでは多くのマーカーに変化はなかったが、CD206及びCD163は顕著に減少し、凍結単球からのマクロファージではCCR2が顕著に増加した(n = 10)。
【
図3】単球及びマクロファージの食作用を示す図である。(A)pHRodoビーズの取り込みを示す明視野/フルオレセインイソチオシアネート蛍光のEVOS画像(倍率×100)。(B)取り込みの定量化は、単球又はマクロファージによるビーズの取り込みに有意差がなく、取り込まれたビーズ数には差異が無いことを示す(n = 4)。データを平均±SDとして表す。
【
図4】極性マクロファージの微視的及び表現型の変化を示す図である。A)角度のあるとがったM1/M(IFNg)と細長い滑らかな紡錘形のM2/M(IL-4)マクロファージの形態の明らかな差異を示す極性マクロファージのEVOS明視野画像(倍率x400)。B)フローサイトメトリー分析は、マクロファージマーカー25F9に有意差が無いことを示すものの、IL-4刺激マクロファージは、CD206発現を有意に増加させるが、IFN-g処理マクロファージでは減少した(n=5、平均+/-sd、p<0.05)。
【
図5】健康ドナーのマクロファージのセクレトーム分析を示すグラフである。7日目のマクロファージ(n=3)を未処理とするか、TNF-α及びポリI:C(PIC)又はIFNg及びLPSで12時間刺激し、BioRadマルチプレックスELISAにより分析した。IL-10(A)及びIL-1Ra(B)の両方は、VEGF(D)と同様に、TNF-α/PICによって顕著に上方制御された。IL-12p40レベル(C)は、TNF-α/PICの影響を受なかったが、LPS/IFN-gによって顕著に増加した。データを平均+sd、* p<0.05として表す。
【
図6】肝硬変患者から採取した臨床グレードのマクロファージの表現型パネル(n=7)を示すグラフである。A)0日目の単球及び7日目のマクロファージの間のMFI増加を示す放出基準。B)2つのさらなるスカベンジャー受容体(CD163/CD169)とマクロファージ遊走のマーカーを含む拡張パネル。CCR2の7日目のデータに1つの異常値があり、Grubb試験の後に分析から除外されたことに留意されたい(●)。データを平均値+/-、p<0.05として表す。
【
図7】GMP肝硬変患者のマクロファージの安定性を示すグラフである。A)生存率は、室温で48時間後でも有意な低下を示さない。B)25F9の発現は経時的に着実に減少するが、48時間でさえ、有効性に必要な5倍の増加をはるかに超えたままである。C)CD206は、収集後およそ24~30時間まで高いままであり、その後、より急速に低下するものの、やはり試験基準で確立された5倍のしきい値をはるかに超えたままである(n=3)。
【
図8-1】
図8。健常なボランティア(n=5)及び肝硬変患者(n=8)における0日目のアフェレーシス由来単球と7日目の分化後の遺伝子変化(ns、非有意、* P<0.05、平均及びSEM)。(Moore JKら、Cytotherapy. 2015; 17(11):1604~16頁)を示すグラフである。
【
図9】MATCH研究における全ての患者の平均ΔMELDを示すグラフである。患者9、患者10及び患者11のd360データは含まれていない。
【
図10】MATCH患者の平均ΔMELD、及び3つの成分:BIL、CRE及びINRの寄与を示すグラフである。患者9、患者10及び患者11のd360データは含まれていない。
【
図11】MATCH研究における全ての患者のELFスコアを示すグラフである。
【
図12】MATCH研究における全ての患者のΔELFを示すグラフである。
【
図13】MATCH研究における全ての患者のHA値を示すグラフである。
【
図14】MATCH研究における全ての患者のPNIIIP値を示すグラフである。
【
図15】MATCH研究における全ての患者のTIMP1値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
マクロファージ
マクロファージは、2つの異なる由来を持つ食細胞である - 胎児細胞に由来し、体内の全ての組織全体に分布が見られる組織常在マクロファージ、並びに、傷害、炎症及び疾病等の信号に応答して分化できる末梢血単球由来マクロファージである。単球由来マクロファージは、状況に依存した幅広い機能を有し、感染性生物の制御、損傷した細胞の除去、組織の修復に関与している。マクロファージのM1(古典的活性化、炎症性)及びM2(代替的活性化、抗炎症性)への早期分類は、単純化されすぎであると考えられており、マクロファージは、例えば、Murrayら(Immunity 2014; 41:14~20頁)及びTackeら(J. Hepatology 2017; 66:1300~1312頁)に記載されるように、活性化方法及びサイトカイン環境に依存して炎症及び消炎症(pro-resolution)の両方の機能を持つことができる。
【0047】
肝臓では、マクロファージは、線維化促進サイトカイントランスフォーミング増殖因子(TGF)-βを活性化することによって、及び血小板由来増殖因子(PDGF)、IL-1β、腫瘍壊死因子-αを介する筋線維芽細胞増殖を刺激することによって、線維形成を促進できる。また、それらは、瘢痕分解マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の豊富な供給源を提供するため、線維症の消散にも重要である。それらは、瘢痕の消散に必要な肝星細胞アポトーシスを促進するMMP-9等の因子を生成する。また、それらは細胞破片を貪食し、潜在的な炎症促進性シグナルを排除する。多種多様な応答が、例えばTackeらによりレビューされている(J. Hepatology 2017; 66:1300~1312頁)。
【0048】
肝硬変ドナーは、一般的には全有核細胞(TNC)の>30%と、循環単球の数が多く、これは健康ドナー又はCD14処理を提供する患者の報告値よりもかなり大きく(Campbellら、Methods Mol Med. 2005; 109:55~70頁)、これと疾病の進行には密接な関連がある(Zimmermannら、PLoS One 2010; 5(6):e11049)。しかしながら、肝硬変患者から単離された単球が、健康ボランティアからのものに匹敵する機能的なマクロファージに分化できることは以前に確立されていない。本明細書に提示されたデータは、肝硬変の患者と健康ボランティアに由来するマクロファージの機能の間に有意な変化が無いことを報告し、これは循環単球のエクスビボ成熟が臨床細胞療法のための治療的成熟マクロファージを生成する技術であり得ることを示す。そのため、有利には、細胞療法による生体不適合性及び免疫反応のリスクを最小限に抑える、自家細胞、すなわち肝硬変患者自身の細胞の使用が提供される。更に、始めの標的細胞の数が非常に多いと、試薬と選択カラムの容量が多すぎるため、全体的な選択効率が減少する可能性がある。肝硬変患者の高い単球数にもかかわらず、CliniMACS Prodigyシステムは、驚くべきことに、少なくとも40%のCD14+細胞の収率の製造基準を満たすのに十分な細胞を再現性よく単離することができた。
【0049】
本明細書に記載されるように、単球はGMP準拠の、抗生物質を含まない定義された培地で培養され、およそ45%のマクロファージへの変換率を生成する。培養条件は以前の先行技術とは異なる。
【0050】
非極性化マクロファージ
適切には、本発明に従った「非極性化マクロファージ」は、成熟マクロファージである(すなわち、単球等の供給源マクロファージ前駆細胞又は先駆細胞から完全に分化している)が、極性化されていない(すなわち、特定の機能的能力を誘導するさらなる刺激を受けていない)。非極性化マクロファージはまた、「ナイーブ」又は「非活性化」と記載され得る。
【0051】
本発明の任意の態様の一実施形態では、非極性化マクロファージは単球由来細胞である。したがって、非極性化マクロファージは、例えば、白血球アフェレーシスによって、又は血液サンプルから除去された末梢血単核細胞(PBMC)から、及び単核細胞を単離及び培養することによって由来し得る。適切には、単球細胞は、CD14発現を選択することにより単離できるCD14+細胞である。適切な方法は本明細書に記載されており、磁気マイクロビーズ選択を含み得る。
【0052】
一部の実施形態では、自家非極性化マクロファージを生成することができる患者由来の単球を得るために、治療される患者からPBMCを取り除く。患者からPBMCを除去するための適切な方法は、例えば、本明細書に記載されている。自家細胞を有利に使用することにより、外因性細菌又はウイルスの導入、生体不適合性及び免疫拒絶等の非自家アプローチから直面する問題を回避することができる。他の実施形態では、非極性化マクロファージは同種異系、すなわち健康ドナーから得られた単球に由来するものであり得る。適切には、健康ドナーが適合され、例えばHLAタイプが適合される。手短に言えば、非極性化マクロファージを生成する方法は、成熟マクロファージを生成するためにM-CSFの存在下でPBMCから単離されたCD14+単球を培養することを含む。適切には、単離された単球は、少なくとも48時間以上、例えば3日以上、好ましくは7日間インキュベートされ得る。一部の実施形態では、患者由来PBMCは、処理又は培養する前にある期間、例えば一晩、維持し、成熟非極性化マクロファージを生成してもよい。一部の実施形態では、それらの単離された細胞は、培養バッグで提供され得る。
【0053】
一部の実施形態では、非極性化マクロファージは、本明細書の実施例のセクションに記載されている培養方法及び条件に従って、患者由来の単球から生成される。一部の実施形態では、培養培地は供給源細胞からそれらの非極性化マクロファージを生成するために適した任意の培地である。培地は血清を含まないものであってもよい。適切には、培地は、適切な濃度のM-CSFが添加されたGood Manufacturing Practice(GMP)に準拠した定義された培地等の化学的に定義された培地である。一部の実施形態では、M-CSFは、組換えM-CSF、好ましくは組換えヒトM-CSFであり得る。有利かつ驚くべきことに、培地は、マクロファージのために特に最適化された培地ではなく、T細胞の培養及び増殖のために最適化された培地である。一実施形態では、培地は、TexMAC(Miltenyi社)又はAIM-V(Thermofisher社)である。
【0054】
適切には、M-CSFの濃度は、50~150ng/ml、例えば100ng/mlである。一部の実施形態では、自家非極性化マクロファージを調製する方法は、80%を超える生存率を有する非極性化マクロファージの集団を生成し、生存率は、本明細書に記載のDRAQ7染色等の当業者によく知られている方法によって測定されてもよい。
【0055】
適切には、非極性化成熟マクロファージは、表面マーカー「25F9」及びCD206の少なくとも1つ又は両方の発現の上昇により特徴付けられる。「上昇した」発現とは、単球等の供給源マクロファージ前駆細胞又は先駆細胞(例えば、単離された0日目/未処理の単球)におけるこれらのマーカーの発現と比較して増加する発現を意味する。一部の実施形態では、「上昇した」発現は、供給源細胞と比較した場合に少なくともおよそ5倍である表面マーカーの発現を意味する。マーカーの発現は、本明細書に記載されるような蛍光標識技術を含む当業者に既知の方法により決定することができる。適切には、レベル又は発現は、本明細書に記載の方法を使用して、平均蛍光強度(MFI)により測定されてもよい。25F9は、成熟マクロファージ上のマーカーを認識するが、未成熟マクロファージ若しくは単球、又はその他の血液細胞は認識しないeBioscience/Thermofisher社により提供されるマクロファージマーカー抗体を指す。抗体が結合するマーカーは不明であり;名前は抗体クローンに由来する。詳細については、ここで(https://www.thermofisher.com/antibody/product/Mature-Macrophage-Marker-Antibody-clone-eBio25F9-25F9-Monoclonal/50-0115-41)与えられる。一部の実施形態では、同じ表面マーカーへの結合に対して25F9と競合する抗体等の標識もまた、非極性化マクロファージ表現型を同定するために使用されてもよい。本明細書中で使用される場合、「25F9の発現」は、25F9が結合するマーカーの発現を意味する。
【0056】
一部の実施形態では、供給源単球は、CD45+、CD14+、25F9-、CD206-である。M-CSFを含む培地等の適切な培地でのインキュベーションにより、CD45+、CD14+、25F9+、CD206+の非極性化成熟マクロファージが生成される。さらなる実施形態では、これらの供給源単球もまた、CCR2high、CD163low、CD169lowによって特徴付けられ、CCR2mid、CD163+、CD169+によって特徴付けられる非極性化マクロファージに成熟する。
【0057】
「非極性化マクロファージ」で発現が増加し得る他のマーカーには、CD163及びCD 169のレベルの上昇、CCR2のレベルの低下が含まれる。一部の実施形態では、非極性化マクロファージは、損傷細胞、線維性物質、及び炎症促進性サイトカインの排除及び取り込みに関与する特定の表面マーカー又はスカベンジャー受容体の発現のため、消炎症及び/又は抗線維性として記載され得る。マクロファージの命名法は、例えばMartinez及びGordonにおいてレビューされている(F1000Prime Rep. 2014; 6:13)。
【0058】
一部の実施形態において、非極性化成熟マクロファージは、適切な極性化因子とのインキュベーションにより、M1又はM2様表現型に極性化することができる可能性があり、例えば、M1極性化は、LPS又はポリ(I:C)等のINFガンマ又はTLRアゴニストとのインキュベーションにより得られる可能性がある一方で、M2極性化はIL4で刺激することにより取得できる可能性がある。
【0059】
非極性化成熟マクロファージは、胚性幹細胞(ES細胞)、ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPSC)、骨髄由来造血幹細胞等の幹細胞に由来し得る。
【0060】
ES細胞及びiPSC等の多能性幹細胞からマクロファージを生産する様々な方法が当該技術分野で知られており、例えばvan Wilgenburgらを参照されたい(PLoS One 2013; 8(8):e71098)。発達した細胞株が多能性であり、正常な核型を有することを決定するための方法は、例えば、Yangら(Stem Cells 2017; 35(4):886-897頁)に記載されている。適切なヒト誘導多能性幹細胞株は、例えば同時係属出願PCT/GB2017/052769に記載されているSFCi55を含む。
【0061】
このようなヒトiPS細胞株からマクロファージ前駆細胞を生成する適切な方法は以下の通りである:DMEM/F12にGlutamax(Invitrogen社)をStemProサプリメント(Invitrogen社)、1.8%BSA(Invitrogen社)、0.1mMβ-メルカプトエタノール(Invitrogen社)及び20ng/mlヒト塩基性FGF(Invitrogen社)と共に補充して調製したStemPro培地で維持した。iPSCをマクロファージに分化させる方法は、van Wilgenburgらに文献がある。0日目に、使用済み培地を6ウェルプレートの1つのコンフルエントウェルから除去し、サイトカインミックス1(50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、及び20ng/ml SCF)を補充した2mlのStemPro(ThermoFisher社)に置換した。EZPassage(商標)ツールを使用して細胞を切断し、パスツールピペットで静かに取り外した。5それらを超低付着6ウェルプレート(Corning社)の2つのウェルに等しく分け、サイトカインミックス1を含む2mlのX-VIVO(商標)15培地を各ウェルに加えた。細胞を懸濁液中で3日間培養し(2日目にサイトカインを補給)、胚様体(EB)を作成した。4日目に、EBを持ち上げ、サイトカインミックス2(100ng/ml M-CSF、25ng/ml IL3、2mM Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.055M β-メルカプトエタノール)で補充されたX-VIVO(商標)15培地中、ゼラチンコーティングされた組織培養グレード6ウェルプレートに移した。およそ30個のEBが各ウェルにプレーティングされた。プロトコールの残りの期間、EBはこの培地中に維持され、使用済み培地は3~4日ごとに新しい培地に置換された。約2週間後、EBは培養上清にマクロファージ前駆細胞を生成し、これらを収集して、サイトカインミックス3(100ng/ml M-CSF、2mM Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充したX-VIVO(商標)15培地中、10cm2細菌学的ディッシュに移し、5~7日間でiPSC由来マクロファージ(iPSC-DM)に成熟させた。マクロファージ前駆細胞は、週に2回、およそ2か月間収集できた。
【0062】
マクロファージ前駆細胞を生成する他の方法は、Yeungら、Sci. Rep. 2015; 5: 8908頁、 Zhuangら、J Immunol Methods. 2012; 385 (1-2):1~14頁、 Snejuら、Oncoimmunology 2014; 3(1): e27927、 Haleら、PLoS One 2015; 10(5): e0124307、 Zhangら、Circ Res. 2015;117(1):17~28頁、Mucciら、Stem Cell Reports 2016; 7(2):292~305頁及びvan Wilgenburgら、PLoS One 2013; 8(8): e71098に記載されている。
【0063】
ES細胞由来マクロファージ(ESDM)は、ES細胞をコロニー刺激因子-1(CSF-1)(M-CSFとしても知られる)及びIL-3の存在下で培養して胚様体(EB)を形成することにより生成できる。EBは組織培養プラスチックに付着するが、マクロファージ前駆細胞は非付着性であるため、培地に放出される。その後、マクロファージ前駆細胞を様々な時点で、例えば10又は20日後に収集し、未処理のペトリ皿にプレーティングし、CSF-1のみの存在下で培養してもよい。このプロセスにより、単層を形成させるプラスチックに付着し、ESDMに成熟する単球様細胞を生じさせることができる。
【0064】
ES細胞のESDMへの成熟は、25F9(ヒトマクロファージ特異的)及び/又はCD11bを含む成熟マクロファージ特異的マーカーの存在を検出することによりモニターできる。更に、ヒトマクロファージは、単球マーカーCD93が存在しないことに特徴付けられる場合がある。有利には、記載された方法は、ESDMの実質的に均一な集団をもたらす。
【0065】
肝疾患
一部の態様又は実施形態では、本発明は、患者、特に肝線維症又は肝硬変をもたらす肝障害を患った患者における肝疾患の治療を提供する。慢性肝障害は、瘢痕の沈着と肝細胞の喪失を引き起こす。瘢痕組織の過剰な蓄積は、肝線維症を引き起こす。この段階で、線維症の進行を引き留めることができる。しかしながら、未治療の線維症は最終的に肝硬変をもたらす可能性がある。一部の実施形態では、肝疾患は、肝細胞への損傷によって肝硬変が引き起こされるものであり、例えば、ウイルス起源の疾患(治療された(持続的なウイルス応答)C型肝炎(HCV)、B型肝炎を含む)、アルコール依存症による損傷(アルコール関連肝疾患(ALD))、又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(糖尿病又は肥満によるNASHを含む)、特発性肝硬変、ヘモクロモトーシス又はα-1-アンチトリプシン欠乏症を含む非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)等の肝細胞由来の疾患である。一部の実施形態では、根本的な病因は取り除かれている(例えば、アルコール依存症による損傷を患っている患者はもはや飲酒しない、又はHCVによる損傷を患っている患者はもはやHCVを有していない等)。
【0066】
本発明の任意の態様又は実施形態に従った治療又は使用に適した罹患患者は、関連する疾患及び重症度を有する患者であり得る。
【0067】
治療
本明細書で使用される「治療」という用語は、対象における線維症を軽減し、進行を妨げ、又は肝疾患又は損傷を伴う臨床症状を部分的又は完全に軽減する介入を指す。適切には、治療は、肝臓再生の増加又は加速をもたらし得る。有利には、本発明に従って使用されるマクロファージは、抗線維化細胞及び前再生細胞を提供する。
【0068】
適切には、本発明に従った非極性化ヒトマクロファージの投与は、以下の有利な効果の1つ又は複数をもたらし得る:対象における線維症の軽減又は肝疾患の軽減、壊死の減少、肝細胞増殖の増加、炎症促進性サイトカインのレベルの減少、線維症の部位での食作用の増加。
【0069】
通常、肝疾患は、血清マーカー血液ビリルビン、クレアチニン、及び凝固能に由来するスコアリングシステムであるMELD(Measure of End-stage Liver Disease)スコアによって測定される。このスケールは、元来、死亡率を予測するために開発されたもので、肝移植の患者の優先順位決定に使用される。それは3か月と1年の死亡率を予測し、代償性肝硬変患者の臨床的代償不全を予測する。
【0070】
MELDの変化は、初期MELDのみの場合よりも死の重要な決定因子である。任意の所定のMELDについて、以前30日間のMELDスコアの変化の大きさと方向は、重要な独立した死亡率予測因子である。MELDスコアは、肝移植に関与する全ての主要な西欧規制当局(英国トランスプラント、ユーロトランスプラント、UNOS)によって、肝臓移植の割り当ての優先順位決定の助けとして使用されている。一部の実施形態では、本発明に従った非極性化ヒトマクロファージを用いた治療は、対象におけるMELDの変化をもたらし得る。他の実施形態では、治療は、MELDスコアの肝臓関連成分の1つ、すなわちビリルビン(BIL)及び/又は国際正規化比(INR)の変化をもたらし得る。
【0071】
他の実施形態では、本発明に従った非極性化ヒトマクロファージを用いる治療は、UKELDの変化をもたらし得る。対象における効果を測定するための他の方法には、一過性エラストグラフィによって測定された肝線維症の変化を評価すること、増強肝線維症試験(Enhanced Liver Fibrosis Test)-ELISAを使用することによるもの、標識代謝物と肝臓MRIスキャンを使用して肝臓の代謝と再生活動を測定することによるもの、又はMRIを使用した肝臓容量と血流を測定することが含まれる。他の実施形態では、本発明に従った非極性化ヒトマクロファージによる治療は、ELF又はELFスコアの肝臓関連成分の1つ、すなわち、ヒアルロン酸(HA)、メタロプロテイナーゼ-1(TIMP-1)の組織阻害剤及びIII型プロコラーゲンのプロペプチド(PIIINP)の変化をもたらし得る。他の実施形態では、疾患特異的バイオマーカー及びネオエピトープ等のエピトープを測定してもよい。例えば、本発明に従った非極性化ヒトマクロファージによる治療は、III型コラーゲンの正確に切断されたN末端プロペプチド(PRO-C3)及び/又はらせん状コラーゲンIII型分解のペプチド(C3M)の変化をもたらし得る。原線維アセンブリの間、III型コラーゲンのN末端プロペプチドは、Nプロテアーゼによって切断されるが、プロペプチドの除去が不完全である場合があるため、PIIINPは線維形成と分解の両方のマーカーとなり得る一方で、PRO-C3はN-プロテアーゼ切断部位に特異的であるためPRO-C3は形成のマーカーである。例えば、ELF、ELFの肝臓関連成分、PRO-C3及びC3Mは、任意の以下の文献に従って測定してもよい:Thieleら(Gastroenterology 2018; 154:1369~1379頁)、Irvine Kら(Liver International 2016、370~377 ISSN 1478~3223)、Barascuk Nら(Clinical Biochemistry 34(2010)899~904頁)、及びNielsen MJら(Am J Transl Res 2013; 5(3):303~315頁)。
【0072】
本明細書で使用される「対象」という用語は、肝障害の治療から利益を得る可能性がある任意の個人を指す。対象は、ヒト対象、罹患した患者等の治療を必要とするヒトであってよい。適切には、本発明に従った治療に適したヒトは、硬化性肝疾患を有するもの、好ましくは、10から16の間のMELDスコアを有する患者である。肝疾患を発症しているヒトは、門脈圧亢進症を有するヒト/患者等の治療に適切でもあり得る。
【0073】
用量
非極性化マクロファージの治療有効量又は用量は、治療される対象の体重を含む様々な要因に依存することが理解されよう。例として、治療的有効量は、1×107から1×109の非極性化マクロファージの用量の形態であり得る。一部の実施形態では、用量は、1用量あたり107、108又は109のマクロファージの倍数である。適切には、治療は、毎月ごとに輸液として投与される3回の用量、すなわちおよそ30日間隔でおよそ109までのマクロファージの3回の輸液からなる。有利には、追加の用量は、瘢痕組織のさらなる分解が起こることを可能にし得る。一実施形態では、患者に投与される全ての用量のマクロファージは、単一の白血球アフェレーシス採取によって採取されるであろう。一部の実施形態では、投与される最終用量は、単球の開始数に依存する場合があり、患者に依存して、108の倍数であり得る。
【0074】
一部の実施形態では、本発明に従ったマクロファージは、適切な保管又は移送バッグで提供されてもよい。
【0075】
投与
本発明の任意の態様に従ったマクロファージ産物は、経皮、皮下、筋肉内、非経口、経腸、静脈内、腹腔内、眼窩内、網膜内、組織移植によるものと脳脊髄液中への投与を含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって、レシピエントの体内に投与することができる。有利には、マクロファージ産物は、例えば、静脈内注射又は注入等のように静脈内投与される。
【0076】
以前の研究は、門脈送達が肝臓に送達される細胞数を最大化することを支持しているが、肝硬変患者において門脈投与を繰り返すことは門脈圧亢進症及び凝固障害のリスクがあるため、この送達経路は臨床の場では望ましくない。本発明者らは、静脈内注射後に、肝臓に分布する細胞数がより少ない可能性が高いものの、この送達経路が臨床で有効であることを見出した。
【0077】
一部の実施形態では、本発明に従った使用のための非極性化マクロファージは、薬学的に許容される担体内に調製される。薬学的に許容される担体は、非極性化マクロファージの対象への送達を可能にする任意の物質であり得、任意の適切な希釈剤又は賦形剤又はそれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態では、非極性化マクロファージは、ヒトアルブミン溶液が補充された生理食塩水中で送達され得る。
【0078】
したがって、本発明に従った使用のための非極性化マクロファージは、治療有効量の非極性化マクロファージ及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物内に提供することができる。
【0079】
適切な実施形態では、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、及び適合性のある担体を更に含み得る。組成物はまた、抗酸化剤及び/又は保存剤を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、DMSO、例えば、5~10%のDMSOを含み得る。
【0080】
組み合わせ
一部の実施形態では、本発明に従ったマクロファージ治療は、肝疾患のための別の治療と組み合わせることができる。適切な治療には、G-CSFを用いる治療が含まれる。一部の実施形態では、他の治療は、抗線維化薬治療を含み得る。適切な抗線維化薬は、例えば、Wangら(Front Physiol. 2016; 7:47; doi:10.3389/fphys.2016.00047)及びTackeら(J. Hepatology 2017; 66:1300~1312)によりレビューされている。
【0081】
本発明の様々なさらなる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0082】
この明細書で言及された全ての文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
本明細書で使用される「及び/又は」は、他の有無にかかわらず、各々の2つの特定の特徴又は成分の特定の開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBの各々の特定の開示と、あたかも各々が本明細書で独立に述べられているかのように解釈されるべきである。
【0084】
文脈が他に指示しない限り、上記の特徴の記載及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
【実施例0085】
次に、本発明の特定の態様及び実施形態を、例として、上述の図を参照して説明する。
【0086】
(実施例1)
単球のGMP準拠培養の最適化
健康ドナーからの細胞の単離
健康ドナー単球の供給源としてのドナーバフィーコートは、SNBTSサンプルガバナンス13-12及び14-02のもと、イギリスのエジンバラにあるスコットランド国立輸血サービス(SNBTS)血液ドナーセンターから提供された。PBMCからのCD14選択:PBMCは、Histopaque 1077(Sigma社)を使用した密度遠心分離により、通常のドナーバフィーコートから分離された。洗浄後、CliniMACS GMPグレードCD14マイクロビーズ及びLS分離磁気カラム(Miltenyi Biotec社)を使用して、単核細胞画分からCD14+単球を単離した。手短に言えば、細胞をPEA緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水[PBS]プラス2.5mmol/Lエチレンジアミン四酢酸[EDTA]及びヒト血清アルブミン[0.5%最終容量のAlburex 20%、Octopharma社])で適切な濃度に再懸濁し、製造業者の取扱説明書に従ってCliniMACS CD14ビーズとインキュベートし、その後、洗浄し、磁化LSカラムに通した。洗浄後、精製した単球を消磁したカラムから溶出し、洗浄し、培養の関連培地に再懸濁した。
【0087】
肝硬変患者からの細胞の単離
フルスケールのGMPプロセスの最適化と検証のために、末梢血単核細胞(PBMC)は、エジンバラ王立病院、SNBTS臨床アフェレーシスユニットの白血球アフェレーシスによって採取された。南東スコットランド研究倫理委員会02から倫理的な承認が得られた。ヘルシンキ宣言に従ってアフェレーシス輸血に関するインフォームドコンセントが得られた。白血球アフェレーシスからのCD14+細胞の単離:PBMCは、研究の参加にインフォームドコンセントを認めた肝硬変ドナーから白血球アフェレーシスによって採取された。適格基準は18歳から75歳の年齢範囲であり、肝硬変は以下のいずれかによって定義された:肝硬変の組織学的特徴が確認される以前の肝生検、一過性エラストグラフィ(フィブロスキャン(Fibroscan))>18kPa、及び/又は臨床指揮者の意見における肝硬変の診断と相関した臨床的及び放射線学的特徴。試験の目的のために、除外基準には、ウイルス性肝炎、平均アルコール摂取量>21ユニット/週(男性)又は>14ユニット/週(女性)、過去3か月間に利尿療法で十分に制御されていない腹水、過去3か月間に治療のための入院を必要とする脳疾患、過去3か月間における門脈圧亢進性出血、肝細胞癌、過去5年以内における他の癌、過去の肝移植又は現在待機リスト上にあること、安全な胎位及び妊娠及び/又は母乳育児を損なう可能性がある臨床的に関連する急性疾患の存在等の進行中の抗ウイルス治療を必要とする条件が含まれていた。単核細胞(MNC)の末梢血の白血球アフェレーシスは、Optiaアフェレーシスシステムを使用して、無菌採取によって行われた。MNCの標準的な採取プログラムが使用され、2.5血液量が処理された。CD14細胞の単離は、GMP準拠の機能的に閉じたシステム(CliniMACS Prodigyシステム、Miltenyi Biotec社)を使用して行った。手短に言えば、白血球アフェレーシス産物を細胞計数のためにサンプリングし、アリコートを事前分離フローサイトメトリーのために採取した。単球の割合(CD14+)と絶対細胞数を決定し、必要に応じて、選択のための必要基準を満たすように容量を調整した(≦20×109総白血球;<400×106白血球/mL;≦3.5×109CD14細胞、容量50~300mL)。CD14細胞の単離と分離は、CliniMACS CD14マイクロビーズを用いたCliniMACS Prodigy(医療機器クラスIII)、TS510チューブセット、及びLP-14プログラムを使用して行った。プロセスの最後に、選択したCD14+陽性単球を、医薬品グレードの0.5%ヒトアルブミン(Alburex社)を含むPBS/EDTA緩衝液(CliniMACS緩衝液、Miltenyi社)で洗浄し、培養のためにTexMACS(又は比較)培地に再懸濁した。
【0088】
細胞計数
総MNC及び単離された単球画分の細胞計数は、Sysmex XP-300自動分析装置(Sysmex社)を使用して実行された。Sysmexが一貫してマクロファージ数を過小評価していたため、マクロファージ数の評価は、TruCountチューブ(Becton Dickinson社)を用いたフローサイトメトリーによって行われ、絶対細胞数を決定した。分離の純度は、フローサイトメトリー(FACSCanto II、BD Biosciences社)を使用して、ヒト白血球に対する抗体のパネル(CD45-VioBlue、CD15-FITC、CD14-PE、CD16-APC)を用いて評価し、産物の品質は、好中球汚染の量(CD45int、CD15pos)を決定することにより評価した。
【0089】
細胞収集
通常のドナー由来のマクロファージについては、7日目に、Cell Dissociation緩衝液(Gibco、Thermo Fisher社)及びパステットを使用してウェルから細胞を除去した。細胞をPEA緩衝液に再懸濁して計数し、フローサイトメトリーのために試験ごとにおよそ106の細胞を染色した。白血球アフェレーシス由来マクロファージは、血清からの医薬品グレードの0.5%ヒトアルブミン(HAS; Alburex社)を含むPBS/EDTA緩衝液(CliniMACS緩衝液、Miltenyi社)を使用し、7日目に培養バッグから除去された。収集した細胞を、2つのライセンス製品で構成される賦形剤に再懸濁した:0.9%注入用生理食塩水(Baxter社)を含む0.5%のヒトアルブミン(Alburex社)。
【0090】
細胞の選別効率
CD14 CliniMACSビーズを使用した選別効率は非常に高く、細胞がバフィーコートから供給されたか、肝硬変患者からの白血球アフェレーシスから供給されたかにかかわらず、結果は全ての方法で同等であった;ビーズで標識した細胞を手動で標識し、LSカラムで単離するか、又は完全に自動化されたCliniMACS prodigyシステムを使用して処理した。事前選別及び陽性及び陰性フラクションのフローサイトメトリー分析は、CliniMACS CD14試薬及びLSカラムを使用した26の異なる正常ドナー単離より、20.5%の単球の初期平均から、陽性フラクションが高濃縮され(95.9%)、陰性フラクション(4.1%)の損失が最小であることを示した(
図1A)。CliniMACS Prodigyを使用して分離された肝硬変ドナーサンプルにおいても非常に類似した数値が見られたが(
図1B)、肝硬変ドナーは、採取物内の単球の初期平均パーセンテージが(有意ではないものの)より高かった(
図1C)。
【0091】
健康ドナー試料から単球を培養するための最適培地
マクロファージ分化に最適な培養培地を調査し、バフィーコート単球を使用して3つの候補を試験した;5%AB血清(SNBTS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Life Technologies社) と2つの化学的に定義された無血清培養培地、AIM-V(Thermo Fisher社)及びTexMACS(Miltenyi社)。TexMACs培地は、事前選択されたヒト血清アルブミン、安定グルタミン、及びフェノールレッド(臨床バージョンには存在しない)を含む、ヒト及びマウスT細胞及び制御性T細胞の培養及び増殖用に最適化された最適化無血清細胞培養培地である。実験は、培地ごとに100ng/mLのプレミアムグレードマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF、Miltenyi社)と共に、7日間、37℃、5%CO2の加湿雰囲気中で培養したバフィーコート単球を用いて行った。細胞を4mlの培地中に1.8×107細胞/ウェルの密度で6ウェル組織培養プレートに播種し、3~4日目に再供給した。AIM-V完全培養培地でのマクロファージの製造は以前に報告されている(Moore JKら、Cytotherapy. 2015; 17(11):1604~16頁)。しかしながら、この培地の抗生物質含有量は、細菌増殖の評価による産物無菌性の試験と互換性がなかったため、抗生物質を含まないTexMACS完全培地を比較培地として評価した。GMPグレードのTexMACS培養培地は、AIM Vと比較して、一貫してマクロファージへの変換率がより高いものの、これは統計的有意性には達していない(
図1D)。DMEMプラス5%AB血清における培養もまた同等のマクロファージ変換率をもたらしたものの、DMEM培養マクロファージも基質に強く付着していたため、収集の間に細胞を失う結果となった(
図1G)。更に、TexMACSで培養された単球は、フローサイトメトリーからの前方散乱を使用して計算すると、著しく大きなマクロファージを生成した(
図1E)。初期の開発実験では、以前に使用されたプレミアム研究グレードのM-CSF(Miltenyi社)を使用して培養培地を補充した(Moore JKら、Cytotherapy. 2015; 17(11):1604~16頁)。これをGMPグレードのM-CSF(R&D Systems社)と、両方とも100ng/mlで使用して比較した。どちらの供給源を用いて培養しても、形態やマクロファージ収量に有意差はなかったが、GMPグレードのM-CSFで生成されたマクロファージでは、マクロファージマーカー25F9の発現がより高かった(
図1F)。GMPグレードのM-CSF(R&D Systems社)を補充したTexMACS培地(Miltenyi社)は、GMPグレードのマクロファージの産生に最適な培地であると考えられた。
【0092】
凍結単球からのマクロファージの誘導
新鮮な単球と凍結/解凍した単球からのマクロファージの誘導についても比較した(結果のセクションを参照)。単球をバフィーコートから単離し、次にアリコートを凍結保存培地(Cryostor CS10、Sigma社)中に凍結し、残りを新鮮に培養した。凍結アリコートを数日後に解凍し、以前と同様に培養した。
【0093】
治療用途では、単球のアリコートを凍結して複数のマクロファージ用量を生成することが魅力的である。冷凍ストックの使用を妨げるマクロファージ収量又は表現型に有意差があるか否かを評価した。データは、収量と表現型の両方において差異があることを示した。特に、CD206とCD163の発現において顕著な低下があった(
図2)。CCR2発現の逆の増加もあった(
図2)。これは、凍結単球からのマクロファージが、古典的に活性化された表現型を、よりM1に似たように成長させることを示唆する。更に、これらの実験において、解凍した単球からのマクロファージの平均生存率は、新鮮な単球よりも有意に低かった(生存率45.5%対新鮮なマクロファージの75.2%、n=4~6、P=0.0098)。生存率(したがって収量も)が低く、表現型があまり有利ではないことにより、初期の臨床使用についての凍結細胞からのマクロファージ産物のさらなる開発を除外すると結論付けられた。
【0094】
(実施例2)
拡張機能分析:健康ドナーマクロファージ
単球及びマクロファージの食細胞取り込み
正常なマクロファージの機能的特徴付けは、粒子を取り込む細胞の能力を調査した。酸性エンドソームに取り込まれた場合にのみ蛍光を発するpHRodoビーズを使用して、食細胞の取り込みについて、単球とバフィーコートCD14細胞からのマクロファージの両方を試験した。手短に言えば、単球又はマクロファージを1~2uLのpHRodo大腸菌生体粒子(Life Technologies、Thermo Fisher社)で1時間培養した後、培地を取り除き、細胞を洗浄して非食作用粒子を除去した。EVOS顕微鏡(Thermo Fisher社)を使用して食作用を評価し、画像を取得し、ImageJソフトウェア(NIHフリーウェア、https://imagej.nih.gov/ij)を使用してビーズの細胞取り込みを定量化した。これらの研究でpHRodoビーズを使用すると、貪食され、ファゴリソソームの酸性環境に曝されて蛍光を発するまでビーズが透明であるため、正確な評価が得られる。食作用はEVOS画像(
図3A)から定量化され、1視野あたりの総細胞数、蛍光ビーズを含む総細胞数、そして細胞あたりのビーズ数が評価された。この方法を使用した食作用の定量化により、単球及びマクロファージの取り込みの間に差がないことが実証された(
図3B)。さらなる分析により、TNF-α及びポリI:Cでのマクロファージの刺激は、食作用に有意な影響を及ぼさなかったことが示された(データは示さず)。
【0095】
収集時のマクロファージの極性化
表現型分析は、収集時のマクロファージが極性化されていないことを示したが、それらは代替的に活性化されたマクロファージに特徴的な高いCD206及びCD169発現を実証している(
図6)。IFN-γ及びIL-4刺激を使用して、収集時のマクロファージが極性化サイトカイン曝露に応答できるか否かを決定した。定義された分化マクロファージに極性化する能力を、M1又はM2表現型(又はそれぞれM[IFNγ]対M[IL-4])への極性化を誘導するために7日目のマクロファージをインターフェロン(IFN)-γ(50ng/mL)又はインターロイキン(IL)-4(20ng/mL)で48時間処理することにより調査した。48時間後、細胞をEVOS明視野顕微鏡で可視化し、以前のように収集して表現型を決定した。極性化の2日目では、培養に形態学的差異があり、IFN-γ処理マクロファージは曲線的な角のある形状を示した一方で(
図4A)、IL-4処理マクロファージは特徴的な紡錘形の形態を示した。培養間で25F9マーカー発現に有意差はなかったが、IL-4処理細胞はCD206を顕著に上方制御することができ、これは極性化M2aマクロファージに特徴的なものである(
図4B)。この極性化はインビトロでのマクロファージに特徴的であり、レシピエントの機能的能力を必ずしも予測するものではない。
【0096】
マクロファージのサイトカイン及び成長因子分泌プロファイル
細胞産物評価の最終局面は、安静時及び刺激後のマクロファージ因子分泌プロファイルの決定であった(
図5)。マクロファージは以前と同様に健康ドナーバフィーコートから生成され、未処理のままにするか、炎症を起こした肝臓での存在状態を模倣するために、腫瘍壊死因子(TNF)-α(50ng/mL、Peprotech社)及びポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C、TLR3に結合するウイルスホモログ、1 _g/mL、Sigma社)で刺激するか、又は最大のマクロファージ活性化を生成するために、リポ多糖(LPS、100ng/mL、Sigma社)とIFN-γ(50IU/mL、Peprotech社)で刺激した。7日目のマクロファージを一晩インキュベートし、上清を採取し、破片を取り除くために遠心分離し、試験まで-80℃で保存した。セクレトーム分析は、27-plexヒトサイトカインキット及び9-plexマトリックスメタロプロテアーゼキットを使用して実行し、aMagpixマルチプレックス酵素リンクイムノアッセイプレートリーダー(BioRad社)上で行った。マクロファージは、安静時に、低レベルのIL-1Ra、IL-10及び血管内皮増殖因子(VEGF)を発現した。炎症を起こした環境を模倣するために、TNF-α及びポリI:Cでの刺激を使用したところ、再生促進/抗炎症性因子VEGF、IL-10及びIL-1Raの産生が顕著に増加したが、IL-12においては増加しなかった。LPS/IFN-γ刺激によってIL-10の発現は強く増加しなかったが、逆にIL-12の発現はLPS/IFN-γによって強く増加した。TNF-α/ポリI:C刺激は、CCL3、4及び5の発現を増加させたが、CCL2は顕著に増加しなかった。マクロファージは構成的に高レベルのMMP 7、9及び12を発現し、MMP3の発現は低かった。このMMP発現は刺激又は極性化後に顕著に調節されず、MMP 1、7、8、10及び11の発現は無視できる程度であった(データは示さず)。
【0097】
(実施例3)
肝硬変患者のプロセス検証
患者サンプルからの単球を培養する
【0098】
Prodigy単離からの白血球アフェレーシスから培養された単球は、GMPグレードのTexMACS(Miltenyi社)及び100ng/mL M-CSFを有する培養バッグ(MACS GMP分化バッグ、Miltenyi社)内で、1cm2及び1mLあたり2×106単球で培養された。単球を100ng/mL GMP準拠組換えヒトM-CSF(R&D Systems社)と共に培養した。37℃、5%CO2の加湿雰囲気で7日間、細胞を培養した。培養中に、培養培地の50%を除去して(最終濃度を100ng/mLに復元するために)200ng/mL M-CSFを補充した新鮮な培地を供給する50%容量の培地補充が2回行われた(2日目と4日目)。
【0099】
プロセス検証
細胞培養及び識別データを使用してGMPプロセスを設計し、検証した。一連のマーカーは、細胞識別及び機能マーカーを含む、産物放出基準として使用するために、幅広い表現型パネルから選択された。これらは、系統決定のためのCD45及びCD14の発現と、マクロファージ成熟度のマーカーとしての25F9の発現であった。更に、CD206は、適切な機能性マクロファージの発生を効果的に特定する、食作用及び清浄能力の代理マーカーとして選択された。生存率の染色DRAQ7は、GMP放出基準パネルの最終成分として含まれた。細胞産物のさらなる情報については、CD163、CD169、及びCCR2の発現を評価する、拡張パネルと呼ばれる2番目の表現型セットを使用した。このパネルは、7人の肝硬変ボランティアからの白血球アフェレーシスの提供について検証された。
【0100】
単球及びマクロファージの細胞表面マーカーの発現を、FACSCanto II(BD Biosciences社)又はMACSQuant 10(Miltenyi社)フローサイトメーターのいずれかを使用して分析した。各サンプルでおよそ20000のイベントが取得された。新たに単離された及び7日目の成熟細胞における白血球マーカーの細胞表面発現は、細胞を特異的抗体とインキュベートすることにより行われた(最終希釈1:100)。細胞をFcRブロック(Miltenyi社)と5分間インキュベートした後、抗体カクテルと4℃で20分間インキュベートした。細胞をPEAで洗浄し、死細胞排除色素DRAQ7(BioLegend社)を1:100で加えた。細胞を以下の様々な表面マーカーで染色した:CD45-VioBlue、CD14-PE又はCD14-PerCPVio700、CD163-FITC、CD169-PE及びCD16-APC(全てMiltenyi社)、CCR2-BV421、CD206-FITC、CXCR4- PE及びCD115-APC(全てBioLegend社)、並びに25F9-APC及びCD115-APC(eBioscience社)。単球及びマクロファージの両方は、前方及び側方散乱及びDRAQ7死細胞識別器(BioLegend社)を使用して、破片、ダブレット、死細胞を除外するようにゲート設定し、FlowJoソフトウェア(Tree Star社)を使用して分析した。最初の詳細な表現型から、パネルは、単球からの機能的マクロファージの開発を定義した放出基準(CD45-VB/CD206- FITC/CD14-PE/25F9-APC/DRAQ7)として開発された。マクロファージは、25F9及びCD206の両方について、0日目の単球のレベルよりも5倍高い平均蛍光強度(MFI)を持つと決定された。CCR2-BV421/CD163-FITC/CD169-PE/CD14-PerCP-Vio700/CD16-APC/DRAQ7で構成される、拡張パネルの一部として他のマーカーを評価する第2のパネルが開発されたが、細胞産物の放出基準の一部としては使用されなかった。
【0101】
CliniMACS Prodigyデバイスを使用してCD14+細胞を選択し、上記のように細胞を培養した。各マーカーの発現レベルは、0日目の濃縮単球及び対応する7日目のマクロファージについて
図6に示されている。分化した細胞はCD45+ CD14 +発現を保持し、25F9、CD206、CD169及びCD163はマクロファージで顕著に上昇した。単球と比較すると、CCR2はマクロファージで顕著に下方制御されるようになる。収集後のマクロファージの移動能力もまた、トランスウェル走化性アッセイを使用して評価され、CCR2の下方制御にもかかわらず、インビトロで適切な標的へ遊走する能力を保持していることを確認した(データは示さず)。
【0102】
肝硬変患者からの収集後の単球の安定性
制御された室温(21~22℃)で、プロセス最適化中に決定された最適な賦形剤(0.5%HASを含む臨床グレード0.9%生理食塩水)中に保存されたマクロファージについて、安定性研究を行った。PBS/EDTA緩衝液(0.5%HAS(Alburex社)、0.9%生理食塩水のみ、又は0.5%HASを含む生理食塩水を含むPBS/EDTA緩衝液を含む様々な賦形剤がプロセス開発中に試験された。0.5%HAS賦形剤を含む0.9%生理食塩水(Baxter社)は、最適な細胞生存率及び表現型を維持することが見出された(データは示さず)。収集後の肝硬変ドナーからのマクロファージの安定性は、3つのプロセス最適化実行で調査され、より限定された時点の範囲がプロセス検証実行で評価された(n=3)。収集後及び賦形剤(注入用0.9%生理食塩水、0.5%ヒト血清アルブミン)中に再懸濁した後、バッグを室温(21~22℃)で保存し、サンプルを収集後0、2、4、6、8、12、24、30及び48時間で採取した。放出基準抗体パネルを各サンプルで実行し、生存率及び0日目からの平均倍率変化を25F9とCD206の幾何学的MFIから測定した。各時点でサンプリングした後、細胞を表現型及び生存率について評価した。3つの全てのプロセス最適化実行からのデータは、細胞生存率及び表現型(25F9/CD206 MFI)の両方が収集後48時間、維持されることを示し(
図7)、プロセスが再現性よく非常に安定した細胞産物を生成することを示している。したがって、マクロファージが、CD45/CD14陽性であり、80%を超える生存率であり、25F9及びCD206のMFIが、0日目の元の単球のMFIよりも5倍以上高いという放出基準が確立された。安定性を含む放出基準プロセス検証の最終結果を全てTable 1(表1)に列挙した。
【0103】
【0104】
詳細には、最終産物の放出基準として使用されるパラメーターが含まれる。
【0105】
(実施例4)
ヒト試験のための自家単球由来マクロファージ療法
A.単回上昇用量(SAD)フェーズI臨床試験
患者募集
適格基準は、18~75歳の年齢範囲、10.00~16のMELD範囲であり、肝硬変は、以下:アルコール関連肝疾患(ALD)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、原因不明の肝硬変、ヘモクロモトーシス、α-1-アンチトリプシン欠乏症、治療された(持続的なウイルス反応)C型肝炎の任意の1つにより定義された。除外基準は、過去3か月間での門脈圧亢進性出血、過去3か月間に利尿療法で十分に制御されていない腹水、過去3か月間に治療のための入院を必要とする脳疾患、肝細胞癌(形成不全又は不定結節は除外、再生性結節又は他の結節を含める)、肝細胞癌の既往診断、臓器移植の既往レシピエント又は組織の既往レシピエントとした。その他の除外基準は;アルコールや薬物の乱用、研究現場から離れた居住地、非遵守又は協力が得られないこと、研究への参加に支障を生じる臨床的に関連のある急性疾患、過去5年以内の癌の存在又は病歴、妊娠又は授乳をしていることが含まれる。
【0106】
【0107】
【0108】
自家非極性化マクロファージ産物
CD14+単球は、CliniMACS Prodigy(登録商標)クローズドシステムを利用して、白血球アフェレーシス産物から単離される。上記のように、TexMACS(商標)無血清培地(Miltenyi社)及び100ng/ml M-CSF(R&D Systems社)の存在下で、CD14+単球を低接着性培養バッグ(Miltenyi社)中で7日間培養する。33%の培地交換が3日目と5日目に施される。更に、最終産物は、マクロファージ表現型のマーカー(25F9及びCD14)及び機能マーカー(CD206)について評価される。生存率の評価は、上記のようにDRAQ7染色によって行われる。最終産物を収集し、125mLの0.9%生理食塩水(Baxter社)及び0.5%ヒトアルブミン溶液中に≦1x107;≦1x108又は≦1x109細胞の集団として、注入用に調製する。産物は移送バッグ(Terumo社 150mLトランスファーバッグ)に入れられ、オーバーラップされ、48時間以内の使用のために治験責任医師の場所に送付される。
【0109】
研究設計
研究の第1フェーズは、ヒトにおける細胞安全性及び忍容性を試験するための標準3+3設計として設計される。自家マクロファージは、1回の注入に3つの異なる細胞の用量;107、108、109を用いる用量漸増方式で参加者に投与される。細胞の各用量は3人の参加者に投与される。アフェレーシス後7日目にマクロファージが単球から分化した後、参加者は臨床研究ユニットに戻る。自家マクロファージ産物を投与する前に、10mgのIVクロルフェナミン、100mgのIVヒドロコルチゾン及び250mlの通常の生理食塩水を、静脈内カニューレを介して30分間で参加者に注入する。マクロファージ産物は30分かけて静脈内投与され、その後15~20分かけての250mlの生理食塩水の注入が続く。血液検査は参加者に対して、注入後7日及び14日、その後、30、60、90、180、360日に行われる。
【0110】
肝硬変患者の再生マクロファージ
再生マクロファージが肝硬変患者から由来し得ることが実証されている。健康な患者と肝硬変患者からのエクスビボ分化マクロファージにおいて、CCL2、MMP9、IL10、CCL3を含むいくつかのマーカーの遺伝子発現に有意差は無かった(
図8)。
【0111】
MATCH試験では、MELDが様々な時点で測定された。最初の測定は、初期スクリーニングの3~6か月前に行われた。このデータポイントはd-120と呼ばれるが、各患者の実際の血液検査は3~6か月の期間内の異なる時点で行われた。MELDは、初期スクリーニング、すなわちベースライン(d-14)、そして次に、d7、d14、d30、d60、d90、d180、及びd360でも測定された。d0は、マクロファージ産物の投与日である。
【0112】
MELDは3つの成分からなる;ビリルビン(BIL)、クレアチニン(CRE)、及び国際正規化比(international normalized ratio)(INR)、そしてこれらを以下の式で組み合わせてMELDスコアを生成する。
【0113】
MELD=10*[(0.957*In(CRE(mmol/l)*0.011312217))+(0.378*In(BIL(mmol/l)*0.058479532))+(1.12*In(INR))]+6.43 (Huoら、Journal of hepatology 2005; 42(6):826~32頁)。
【0114】
MELDの成分はいずれも負の寄与を持つことはできず、MELDスコアは最も近い整数に丸められる。Table 3(表3)は、MATCH試験の全ての対象のMELDデータを示す。全ての患者のΔMELDは、ベースライン(d-14)と比較して計算され、負の値は臨床状態の改善を示す。
図9は、全ての患者の平均ΔMELDを示す。最も顕著な反応は、6ポイントのMELDの一時的な減少が観察されたS05からである。マクロファージ療法は、基礎となる病因が肝細胞によって引き起こされる肝硬変患者に対して、より大きな効果があると考えられている。患者S04の病因は肝細胞に起因するとは考えられていない原発性胆汁性胆管炎(PBC)であったため、この患者において治療に対する反応があまり観察されなかったことは驚くべきことではない。応答する。
【0115】
ΔMELDへの非極性化マクロファージ療法の機構的寄与を理解するために、MELDの各成分のΔMELDへの寄与を評価して、
図10に示すように図示した。結果は、MELDスコアが3つの成分のうち2つで減少することを示唆している;ΔMELDの変動の62%を有するBIL及びINRは、BILの寄与及びINRからの残りによって説明された。CRE成分の寄与について、MELDスコアに有意な変化は観察されなかった。これらの結果は、MELDで観察された改善が、肝機能の直接改善によるものであることを示唆している。ビリルビンは赤血球の死滅の結果としてのヘモグロビン代謝の副産物である。循環ビリルビンは肝細胞によってグルクロン酸抱合され、その後胆管を介して排泄される。したがって、BILは肝細胞の健康と機能の尺度である。INRは、ビタミンK由来の凝固因子を合成する肝臓の能力の結果であり、BILよりも直接的な肝細胞機能の測定値ではないが、肝臓の健康状態の改善も示唆している。対照的に、CREは腎臓マーカーであり、肝硬変に関連する多臓器不全の代理である。したがって、本データは、非極性化療法がMELDに有益な効果をもたらすだけでなく、その効果が肝機能の改善によってもたらされることを示しており、提案された治療の作用機序と一致している。
【0116】
【0117】
【0118】
また、MATCH試験では、線維症の非侵襲的測定を提供する強化肝線維症(ELF)が、スクリーニング時(d-14)、d30、d60、d90、d180、及びd360を含む様々な時点で測定された。d0は、マクロファージ産物の投与日である。
図11は、MATCH研究における全ての患者のELFスコアを示し、
図12は、MATCH研究における全ての患者のΔELFを示し、
図13、
図14、及び
図5は、ELFスコアの各成分 - それぞれHA値、PNIIIP及びTIMP1の分析結果を示す。グラフは、測定された360日間にわたる増強された肝線維症の全体的な減少を示している。
【0119】
III型コラーゲンの正確に切断されたN末端プロペプチド(PRO-C3)及びらせんコラーゲンIII型分解(C3M)のペプチドは、スクリーニング時、スクリーニング(d-14)、d30及びd90を含む様々な時点で測定された。
【0120】
【0121】
PRO-C3のデータは、線維症形成の減少を示している。
【0122】
【0123】
B.フェーズII試験
ランダム化比較試験が行われる。28人の参加者は標準的な医療を受けるために無作為化される。28人の参加者は、30日間隔で109マクロファージの合計3回の注入を受ける。
【0124】
自家非極性化マクロファージ産物
Prodigy単離からの白血球アフェレーシスから培養された単球は、GMPグレードのTexMACS(Miltenyi社)及び100ng/mL M-CSFを有する培養バッグ(MACS GMP分化バッグ、Miltenyi社)内で、1cm2及び1mLあたり2×106単球で培養された。単球を100ng/mL GMP準拠組換えヒトM-CSF(R&D Systems社)と共に培養した。細胞は、37℃、5%CO2の加湿雰囲気で7日間培養した。培養中(4日目)に、培養培地の50%を取り除いて、(最終濃度100ng/mLに戻すため)200ng/mL M-CSFを補充した新鮮培地を供給する、50%容量の培地補充を1回行った。有利なことに、この単一の供給は(2回の供給と比較して)細胞操作及び細胞取り扱いステップを低減させ、コストの低減並びに細胞損失の低減をもたらす。
【0125】
上記のように、CD14+単球は白血球アフェレーシス産物から単離され、治験責任医師の場所に送付される前に特徴付けられる。
【0126】
測定結果:
注入を受けた患者は、以下の評価/測定の1つ又は複数によって結果が評価される;MELD及びデルタMELD;UKELD及びデルタUKELD;トランジェントエラストグラフィ(Transient Elastography)(FibroscanTM、Echosens、France)(Fraquelliら、Gut、2007; 56(7):968~73頁)-スクリーニング時、90日目、180日目及び360日目での肝線維症の非侵襲的評価法;マトリックス成分及びその代謝回転に関与する酵素のための増強肝線維症(ELF)試験-ELISAアッセイ(ヒアルロン酸、マトリックスメタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤(TIMP-1)、プロコラーゲンIII型(PIIINP)の肝線維症のレベルに関する計算されたELFスコア;31-P-MRS及び肝MRIスキャン:無作為及び治療90日後の肝臓の代謝及び再生活動の非侵襲的及び定量的測定;肝臓容量及び血流のMRI。結果を評価する他の方法には、CLDQ(慢性肝疾患質問票)(Younossiら、Gut 1999; 45(2); 295~300頁)及びNewsomeら、Gastroenterol Hepatol. 2018; 3:25~36頁によって記載されたものが挙げられる。
【0127】
追加の分析には、タンパク質マーカーの変化の測定が含まれ得る:
細胞外マトリックス(ECM)の代謝回転中に、タンパク質分解的に切断されたマトリックス分解フラグメント、又はネオエピトープが体循環に放出される。特定のMMPによる各ECMタンパク質の切断により、ユニークなネオエピトープが生成される。これらのネオエピトープは、それらの起源タンパク質よりも、個人の線維増殖性疾患についてのより正確な診断及び予後マーカーであるかもしれない。このような特定のタンパク質断片を検出し、疾患を識別及び定量化する方法には、タンパク質フィンガープリント(商標)テクノロジー(Nordic Bioscience社)がある。これらの新しい血清バイオマーカーは、進行性線維症の患者を識別し、抗線維化療法への応答のモニタリングを可能にし、肝硬変患者の門脈圧亢進症とも相関することが示されている。
[参考文献]