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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016624
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118879
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直明
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA08
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD16
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF27
3E013BF37
3E013BF62
3E013BG15
(57)【要約】
【課題】加熱により内容物から発生した蒸気を、パウチの側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置から排出することが可能なスタンディングパウチを提供する。
【解決手段】本発明のスタンディングパウチは、
前面シート11、背面シート、及び底面シートがヒートシールされて、内容物を収容する収容部14を形成している、スタンディングパウチであって、
前記前面シート11及び前記背面シートの少なくとも一方は、少なくとも、複合フィルム10からなり、
前記複合フィルム10のハーフカットHは、前記スタンディングパウチ100の収容部側から外周部側に到達するように配置されており、
前記側部シール部13の少なくとも一部が、前記ハーフカットHが存在していない部分において、前記側部シール部13の他の部分よりも幅が広い幅広側部シール部13aを構成している、
スタンディングパウチである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面シート、背面シート、及び底面シートが、少なくとも上部シール部及び側部シール部においてヒートシールされて、内容物を収容する収容部を形成している、スタンディングパウチであって、
前記前面シート及び前記背面シートの少なくとも一方は、少なくとも、外層と、接着層と、内層と、がこの順で積層された複合フィルムからなり、前記内層を介して、対向する前記前面シート及び前記背面シートとがヒートシールされて、前記上部シール部及び前記側部シール部を形成しており、
前記複合フィルムは、前記内層の側から施されて前記接着層に到達しているハーフカットを備え、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するようにして、前記側部シール部を横断するようにして配置されており、
前記側部シール部の一部が、前記ハーフカットが存在していない部分において、前記側部シール部の他の部分よりも幅が広い幅広側部シール部を構成している、
スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記幅広側部シール部が、前記側部シール部の両方に存在している、請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項3】
前記幅広側部シール部が、前記底面シートに接している、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記側部シール部及び/又は前記上部シール部は、前記前面シートと前記背面シートとがヒートシールされていない未シール部、切り込み、及び切り欠きからなる群より選ばれる少なくとも1種を有し、
前記未シール部、前記切り込み、及び/又は前記切り欠きは、前記スタンディングパウチの側縁及び/又は上縁を起点として前記スタンディングパウチの収容部側に突出しており、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記未シール部、前記切り込み、及び/又は前記切り欠きを横断して、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するように配置されている、
請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記側部シール部及び/又は前記上部シール部は、前記スタンディングパウチの収容部側に向かって突出している凸シール部を備え、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記凸シール部を横断して、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するように配置されている、
請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記前面シート、前記背面シート、及び前記底面シートが、少なくとも底部シール部及び前記側部シール部においてヒートシールされている、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項7】
前記接着層は熱軟化性樹脂であり、
前記外層と前記内層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm以上であり、
前記外層と前記内層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm未満であり、
前記ラミネート強度は、JIS K6854-3:1999に準拠するT形剥離により、300mm/minの条件で、変位20~50mmの区間平均を求めることにより測定されるものである、
請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項8】
前記接着層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上である、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項9】
電子レンジ用である、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチに関する。更に詳しくは、加熱により内容物から発生した蒸気、特に水蒸気を、パウチの側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置から排出することが可能なスタンディングパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、意図した位置から蒸気抜き可能な、電子レンジ用パウチが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子レンジによる加熱調理において、内容物から発生する水蒸気を外部に排出することが可能な、自動蒸気抜き機構を備えたスタンディングパウチが提案されている。特許文献1においては、スタンディングパウチ胴部の少なくとも一方の側端部に、パウチ内側に向けて屈曲して張り出した張り出しシール部を設けられており、当該張り出しシール部が材破することで、蒸気抜きが可能となる。
【0004】
特許文献2には、パウチの包装材料として、基材層、熱軟化性層、及びシーラント層が、この順で積層された積層体が提案されている。そして、積層体のシーラント層側からハーフカットを施し、電子レンジで加熱調理したときに、シーラント層同士がヒートシールされたヒートシール部において、当該ハーフカットを通して蒸気を通過させることで、パウチから蒸気抜きするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-200048号公報
【特許文献2】特開2017-124859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたスタンディングパウチは、自動蒸気抜き機構を機能させるために、張り出しシール部のシール強度を側端部のシール強度に比べて脆弱にしたり、張り出しシール部のシール幅を細く形成したりする必要があった。このため、スタンディングパウチの製造工程が複雑になるばかりか、得られるスタンディングパウチの強度にも問題が生じる場合があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された包装材料は、基材層とシーラント層との間に、熱軟化性樹脂層以外にも、接着層を必要としている。そして、熱軟化性樹脂層は、接着層の中に点在して埋め込まれる状態となっており、ハーフカットが施された領域のみに配置されていた。このため、特許文献2に記載された包装材料は、積層体の製造工程が複雑になるばかりか、コストも大きくなるという問題があった。
【0008】
更に、特許文献2に記載された包装材料からスタンディングパウチを作製した場合には、スタンディングパウチが有する内容物を収納するための空間の形状に起因して、意図した位置からの蒸気抜きが困難な状況となることがある。
【0009】
具体的には、スタンディングパウチは一般に、パウチ下部を折り込みシールして形成されることから、パウチ下部の空間が広く、パウチ上部の空間が狭い構造となっている。そして、加熱により発生する蒸気、例えば水蒸気の圧力による剥離力は、より狭い空間であるパウチの上端シール部に最も大きく加わることとなる。このため、パウチの胴部に蒸気抜き機構を設けても、当該剥離力差が存在することによって、蒸気抜き機構を機能させることが難しく、場合によっては、パウチの上端シール部が破裂して、破袋することがある。
【0010】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、加熱により内容物から発生した蒸気を、パウチの側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置から排出することが可能なスタンディングパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉前面シート、背面シート、及び底面シートが、少なくとも上部シール部及び側部シール部においてヒートシールされて、内容物を収容する収容部を形成している、スタンディングパウチであって、
前記前面シート及び前記背面シートの少なくとも一方は、少なくとも、外層と、接着層と、内層と、がこの順で積層された複合フィルムからなり、前記内層を介して、対向する前記前面シート及び前記背面シートとがヒートシールされて、前記上部シール部及び前記側部シール部を形成しており、
前記複合フィルムは、前記内層の側から施されて前記接着層に到達しているハーフカットを備え、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するようにして、前記側部シール部を横断するようにして配置されており、
前記側部シール部の一部が、前記ハーフカットが存在していない部分において、前記側部シール部の他の部分よりも幅が広い幅広側部シール部を構成している、
スタンディングパウチ。
〈態様2〉前記幅広側部シール部が、前記側部シール部の両方に存在している、態様1に記載のスタンディングパウチ。
〈態様3〉前記幅広側部シール部が、前記底面シートに接している、態様1又は2に記載のスタンディングパウチ。
〈態様4〉前記側部シール部及び/又は前記上部シール部は、前記前面シートと前記背面シートとがヒートシールされていない未シール部、切り込み、及び切り欠きからなる群より選ばれる少なくとも1種を有し、
前記未シール部、前記切り込み、及び/又は前記切り欠きは、前記スタンディングパウチの側縁及び/又は上縁を起点として前記スタンディングパウチの収容部側に突出しており、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記未シール部、前記切り込み、及び/又は前記切り欠きを横断して、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するように配置されている、
態様1~3のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
〈態様5〉前記側部シール部及び/又は前記上部シール部は、前記スタンディングパウチの収容部側に向かって突出している凸シール部を備え、
前記ハーフカットは、前記スタンディングパウチの収容部側から、前記凸シール部を横断して、前記スタンディングパウチの外周部側に到達するように配置されている、
態様1~4のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
〈態様6〉前記前面シート、前記背面シート、及び前記底面シートが、少なくとも底部シール部及び前記側部シール部においてヒートシールされている、態様1~5のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
〈態様7〉前記接着層は熱軟化性樹脂であり、
前記外層と前記内層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm以上であり、
前記外層と前記内層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm未満であり、
前記ラミネート強度は、JIS K6854-3:1999に準拠するT形剥離により、300mm/minの条件で、変位20~50mmの区間平均を求めることにより測定されるものである、
態様1~6のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
〈態様8〉前記接着層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上である、態様1~7のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
〈態様9〉電子レンジ用である、態様1~8のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱により内容物から発生した蒸気を、パウチの側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置から排出することが可能なスタンディングパウチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るスタンディングパウチの正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスタンディングパウチを構成する複合フィルムの断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスタンディングパウチに用いた複合フィルムが、蒸気抜きするときの概略図である。
図4】実施例1のスタンディングパウチの正面図である。
図5】実施例2のスタンディングパウチの正面図である。
図6】実施例3のスタンディングパウチの正面図である。
図7】実施例4のスタンディングパウチの正面図である。
図8】実施例5のスタンディングパウチの正面図である。
図9】実施例6のスタンディングパウチの正面図である。
図10】実施例7のスタンディングパウチの正面図である。
図11】実施例8のスタンディングパウチの正面図である。
図12】実施例9のスタンディングパウチの正面図である。
図13】実施例10のスタンディングパウチの正面図である。
図14】実施例11のスタンディングパウチの正面図である。
図15】比較例1のスタンディングパウチの正面図である。
図16】比較例2のスタンディングパウチの正面図である。
図17】比較例3のスタンディングパウチの正面図である。
図18】参考例1のスタンディングパウチの正面図である。
図19】参考例2のスタンディングパウチの正面図である。
図20】参考例3のスタンディングパウチの正面図である。
図21】参考例4のスタンディングパウチの正面図である。
図22】参考例5のスタンディングパウチの正面図である。
図23】参考例6のスタンディングパウチの正面図である。
図24】参考例7のスタンディングパウチの正面図である。
図25】参考例8のスタンディングパウチの正面図である。
図26】参考例9のスタンディングパウチの正面図である。
図27】参考例10のスタンディングパウチの正面図である。
図28】参考例11のスタンディングパウチの正面図である。
図29】参考比較例1のスタンディングパウチの正面図である。
図30】参考比較例2のスタンディングパウチの正面図である。
図31】参考比較例3のスタンディングパウチの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《スタンディングパウチ》
本発明のスタンディングパウチは、図1(a)、図2及び図3に示すように、
前面シート11、背面シート、及び底面シートが、少なくとも上部シール部12及び側部シール部13においてヒートシールされて、内容物を収容する収容部14を形成している、スタンディングパウチであって、
前記前面シート11及び前記背面シートの少なくとも一方は、少なくとも、外層1と、接着層2と、内層3と、がこの順で積層された複合フィルム10からなり、前記内層3を介して、対向する前記前面シート11及び前記背面シートとがヒートシールされて、前記上部シール部12及び前記側部シール部13を形成しており、
前記複合フィルム10は、前記内層3の側から施されて前記接着層2に到達しているハーフカットHを備え、
前記ハーフカットHは、前記スタンディングパウチ100の収容部側から、前記スタンディングパウチ100の外周部側に到達するように配置されており、
前記側部シール部13の少なくとも一部が、前記ハーフカットHが存在していない部分において、前記側部シール部13の他の部分よりも幅が広い幅広側部シール部13aを構成している、
スタンディングパウチである。
【0015】
本発明のスタンディングパウチによれば、加熱により内容物から発生した蒸気を、パウチの側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置から排出することが可能となる。このことを、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1(a)は、上記した複合フィルムを前面シートとして用いて形成したスタンディングパウチの正面図であり、図2は、前面シートとして用いた複合フィルムの断面図である。また、図3は、スタンディングパウチに用いた複合フィルムが、蒸気抜きするときの概略図である。
【0017】
図1(a)に示されるスタンディングパウチ100の前面シート11となる複合フィルム10は、図2に示される、外層1、接着層2、及び内層3からなる積層体である。図1に示されるように、前面シート11となる複合フィルム10は、X方向及びY方向で形成されたX-Y面に、各層が延在し、Z方向(図示せず)が複合フィルム10の厚み方向となる。すなわち、図1は、外層1側から見た、スタンディングパウチ100の正面図である。
【0018】
図1(a)に示されるスタンディングパウチ100を構成する複合フィルム10において、ハーフカットHは、断続的な直線で設けられており、スタンディングパウチ100の収容部14側から側縁まで、スタンディングパウチ100の側部シール部13を横断し、スタンディングパウチ100の外周部側に到達するように配置されている。
【0019】
このようなスタンディングパウチ100が加熱され、スタンディングパウチ100の収容部14に充填された内容物から蒸気が発生した場合には、図1(a)に示されるように、発生した蒸気17は、スタンディングパウチ100の外周部側に達しているハーフカットラインHから、スタンディングパウチ100の外部に排出される。
【0020】
ここで、蒸気17が、側部シール部13の切り欠き15から、スタンディングパウチ100の外部に排出される作用について、図3を用いて説明する。
【0021】
図3には、スタンディングパウチ100の前面シート11である複合フィルム10のZ方向(図示せず)となる断面図が示されており、スタンディングパウチ100が加熱されて、スタンディングパウチ100の内容物から蒸気17が発生した場合に、蒸気17によって、複合フィルム10の接着層2が剥離した状態、特に軟化して剥離した状態が示されている。
【0022】
スタンディングパウチ100の内部で発生した蒸気17は、複合フィルム10の内層3に形成されたハーフカットHから、複合フィルム10の厚み方向(Z方向)に入り込み、接着層2に到達すると、直接、接着層2に熱を与える。これにより、接着層2は軟化し、柔軟になる。
【0023】
スタンディングパウチ100の内部の圧力は、内容物から発生する蒸気17の圧力によって高まり、上昇する。そして、図3に示されるように、内圧の上昇によって、軟化した接着層2と内層3との間で層間剥離が生じ、接着層2は、蒸気17の圧力によってスタンディングパウチ100の外周部側に持ち上がり、当該剥離部分に空間6が形成される。
【0024】
そして、内容物から発生した蒸気17は、ハーフカットHの領域に発現した空間6を通して側部シール部13に移動し、スタンディングパウチ100の外周部に到達すると、この外周部のハーフカットHから、スタンディングパウチ100の外部へと排出される。
【0025】
このとき、内容物から発生した蒸気の圧力は、幅広側部シール部13aの存在により、幅広側部シール部13aが存在していない部分、すなわちハーフカットHが存在している部分に局所的に印加されやすくなることにより、ハーフカットHからの蒸気の排出が促進されることから、意図しない部分からの蒸気の排出が抑制されると考えられる。
【0026】
本発明のスタンディングパウチの用途は、特に限定されるものではない。充填が可能な内容物としては、ジェル、又はゲルであってもよく、またペースト等を含む液状物であってもよい。液状物としては、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、塗料等が挙げられる。
【0027】
医薬品及び医薬部外品としては、例えば、注射薬、点滴薬、輸液薬、灌流薬、煎剤等が挙げられる。化粧品としては、例えば、シャンプー、コンディショナー、整髪料(例えば、ヘアウォーター、ヘアリキッド、グリース等)等が挙げられる。洗剤としては、例えば、中性洗剤、アルカリ性洗剤、及び酸性洗剤が挙げられる。食品としては、例えば、飲料、食用油、スープ、クリーム、液体調味料(例えば、醤油、酢、麺つゆ、割下、みりん、ウスターソース、ドレッシング、ケチャップ、タバスコ、甘味料等)等が挙げられる。塗料としては、例えば、ペンキ、ニス、オイルステイン等が挙げられる。
【0028】
なお、内容物は、ジェル状、ゲル状、又はペースト状の内容物であってもよく、例えば、歯磨き粉、ワサビ、ゼリー、ジャム、味噌等が挙げられる。
【0029】
本発明のスタンディングパウチは、加熱により内容物から発生した蒸気を排出することが可能であるため、この効果を活かして、電子レンジ用のスタンディングパウチとして大変有益である。したがって、スタンディングパウチに内容物を格納した状態で、電子レンジによって加熱に付される食品等に、大変有用である。
【0030】
本発明のスタンディングパウチは、図1(b)に示すように、切り欠き15、及び凸シール部16を更に有していてよい。
【0031】
以下では、本発明のスタンディングパウチの各構成について説明する。
【0032】
〈前面シート、背面シート及び底面シート〉
上記のように、本発明のスタンディングパウチは、前面シート、背面シート、及び底面シートが、少なくとも上部シール部及び側部シール部においてヒートシールされて、内容物を収容する収容部を形成している構造を有する。
【0033】
また、前面シート及び背面シートの少なくとも一方は、少なくとも、外層と、接着層と、内層と、がこの順で積層された複合フィルムからなり、内層を介して、対向する前面シート及び背面シートとがヒートシールされて、上部シール部及び側部シール部を形成している。
【0034】
図1(a)に、本発明の一実施形態に係るスタンディングパウチ100の正面図を示す。本発明のスタンディングパウチは、前面シート11と、背面シート(図示せず)、及び底面シート(図示せず)が、少なくとも上部シール部12及び側部シール部13においてヒートシールされて、内容物を収容する収容部14を形成している。
【0035】
図1(a)に示されるスタンディングパウチ100は、前面シート11、背面シート、及び底面シートが、連続した1枚の複合フィルムで形成されている。このようなスタンディングパウチは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0036】
具体的には、少なくとも、外層と、接着層と、内層とを備える1枚の複合フィルムを用いて、スタンディングパウチの底となる2箇所で、内層が内側となるように山折りし、図1(a)においてFで示される折り返しラインで谷折りすることで、底面シートとなる領域を折り込まれるとともに、前面シート11となる領域と背面シートとなる領域とを形成する。次いで、前面シート11となる領域の両側部、折り込み形成された底面シートの両側部、及び背面シートとなる領域の両側部を、重ねてヒートシールすることで、スタンディングパウチ100の胴部を形成する側部シール部13が、両側部に形成する。
【0037】
前面シート、背面シート、及び底面シートは、上記のように連続した1枚の複合フィルムであってもよいし、それぞれが別個独立となった不連続なシートであってもよく、又は一部が連続したシートと不連続なシートとの組合せであってもよい。
【0038】
また、本発明のスタンディングパウチは、前面シート及び背面シートの少なくとも一方が、少なくとも、外層と、接着層と、内層と、がこの順で積層された複合フィルムから形成されていてよい。前面シート及び背面シートのいずれか一方のみが当該複合フィルムである場合には、他方のシートに、複合フィルムの内層によってヒートシールされることで、上部シール部及び側部シール部が形成される。
【0039】
前面シート及び背面シートの少なくとも一方が、複合フィルムから形成されていない場合には、当該シートについては特に限定されるものではなく、作製されるスタンディングパウチに付与したい性能等に応じて、適宜選択することができる。
【0040】
〈上部シール部及び側部シール部〉
上部シール部及び側部シール部は、前面シートと背面シートとをヒートシールしている層である。
【0041】
〈底部シール部〉
底部シール部は、底面シートが前面シート及び/又は背面シートと別体のシートで構成されている場合に、底面シートと前面シート及び/又は背面シートとをヒートシールしている随意のシール部である。
【0042】
〈幅広側部シール部〉
幅広側部シール部は、ハーフカットが存在していない部分において存在している、側部シール部の一部である。この幅広側部シール部の存在によれば、内容物を加熱した際に生じる蒸気の圧力を、ハーフカットが存在している部分に局所的に印加させやすくすることにより、ハーフカットからの蒸気の排出を促進し、その結果、意図しない部分からの蒸気の排出を抑制することができる。
【0043】
幅広側部シール部は、側部シール部の一方に存在していても両方に存在していてもよいが、両方に存在していることが、蒸気による圧力を局在化する観点から好ましい。
【0044】
幅広側部シール部は、底面シートに接していることが、圧力の分散を抑制する観点から好ましい。特に、本発明のスタンディングパウチが底部シール部を有する場合、幅広側部シール部は、底部シール部に接していることが好ましい。
【0045】
幅広側部シール部は、スタンディングパウチの内容物側の側部シール部の高さの30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上を占めていることが、蒸気による圧力を良好に局在化させ、それにより、ハーフカットラインが存在する位置からの蒸気の排出を促進する観点から好ましい。幅広側部シール部は、スタンディングパウチの内容物側の側部シール部の高さの80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、又は60%以下を占めていてよい。ここで、「幅」及び「高さ」とは、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向及び平行な方向の長さをそれぞれ示すものである。
【0046】
幅広側部シール部の幅は、側部シール部の幅の115%以上、120%以上、125%以上、130%以上、135%以上、140%以上、145%以上、150%以上、155%以上、160%以上、170%以上、又は180%以上を占めていることが、蒸気による圧力を良好に局在化させ、それにより、ハーフカットラインが存在する位置からの蒸気の排出を促進する観点から好ましい。この幅は、側部シール部の幅の300%以下、280%以下、250%以下、240%以下、230%以下、又は220%以下であってよい。
【0047】
〈ハーフカット〉
本発明で用いられる複合フィルムは、内層の側から施されて接着層に到達しているハーフカットを備える。したがって、当該複合フィルムを前面シート及び背面シートの少なくとも一方に用いて作製される本発明のスタンディングパウチは、当該複合フィルムの内層の側から施されて接着層に到達しているハーフカットを備えている。
【0048】
ここで、ハーフカットとは、複合フィルムの厚さ方向に形成され、複合フィルムの厚さ方向に貫通しない切れ目をいう。
【0049】
本発明のスタンディングパウチにおけるハーフカットは、スタンディングパウチの収容部側から、スタンディングパウチの外周部側に到達するように、前記側部シール部を横断するようにして配置されている。これによれば、電子レンジ等による加熱に際して、スタンディングパウチの外周部側に存在しているハーフカットが到達した箇所から蒸気抜きを実施することができ、側部シール部及び/又は上部シール部の意図した位置にこれらを設けることにより、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0050】
本発明のスタンディングパウチは、前面シート及び背面シートの少なくとも一方に、ハーフカットを備えた複合フィルムを用い、複合フィルムの内層が、対向する前面シート及び背面シートとヒートシールされている。このため、内層がスタンディングパウチの内側となり、すなわち、内容物と接する層となる。したがって、加熱によって内容物から発生する蒸気は、ハーフカットを通して、複合フィルムの厚み方向に入り込んでいくこととなる。
【0051】
図2に、本発明で用いられる複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。図2に示される複合フィルム10は、外層1と、外層1の内側に積層配置された接着層2と、接着層2の内側に積層配置された内層3と、を備える。
【0052】
図2に示される複合フィルム10においては、ハーフカットHは、内層3の側から設けられ、接着層2の表面に到達している。
【0053】
なお、ハーフカットは、接着層の表面までであってもよく、接着層の内部までであってもよく、又は、接着層を貫通していてもよい。
【0054】
ハーフカットは、複合フィルムの最外層となる外層には到達していないことが、スタンディングパウチの強度を確保する観点から好ましい。
【0055】
特には、ハーフカットは、内層のみに施されていることが好ましい。内層のみにハーフカットを施すことができれば、スタンディングパウチの強度が最も高くなる状態で、本発明の効果を享受することができる。
【0056】
ハーフカットの形状は、連続的な線であっても、断続的な線であってもいずれでもよい。また、少なくとも1本が施されていればよく、その数は限定されない。複数本のハーフカットを備えさせる場合には、ハーフカット同士は、略並行であることが好ましい。
【0057】
また、ハーフカットの長さは、特に限定されるものではない。蒸気抜きを実施したい箇所のみが備えるような長さであってもよいし、スタンディングパウチの幅全体にわたって設けられていてもよい。
【0058】
ハーフカットを形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、複合フィルムを形成した後に、レーザー等で作製する方法が挙げられる。
【0059】
代替的には、複合フィルムを生産する途中でハーフカットを作製し、ハーフカットを有する層とその他の層とを積層させて、本発明で用いる複合フィルムを形成してもよい。この場合には、例えば、内層に、ロータリーダイカッターを用いて、内層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、内層に、接着層及び外層を積層する(積層工程)する方法が挙げられる。
【0060】
〈凸シール部〉
本発明のスタンディングパウチは、側部シール部及び/又は上部シール部に、スタンディングパウチの収容部側に向かって突出している凸シール部を備えていてもよい。
【0061】
凸シール部を備えている場合には、ハーフカットは、スタンディングパウチの収容部側から側縁まで、凸シール部を横断して、スタンディングパウチの収容部側に到達するように配置されている。特に、スタンディングパウチが、未シール部、切り込み、及び/又は切り欠きを有する場合には、ハーフカットは、未シール部、切り込み、及び/又は切り欠きに到達するように配置されていてよい。
【0062】
凸シール部は、対向する前面シートの内層と、背面シートの内層とが互いにヒートシールされて形成されたシール部である。
【0063】
図1(b)に示されるスタンディングパウチ100は、側部シール部13に、スタンディングパウチ100の側縁(側部シール部13の側端部)を起点として、スタンディングパウチの収容部14側に突出するように形成された、三角形の形状の1個の切り欠き15を備えている。そして、当該切り欠き15の収容部14側において、スタンディングパウチ100の収容部14側に向かって突出している、三角形の凸シール部16を備えている。
【0064】
三角形の凸シール部16は、スタンディングパウチ100の収容部14の側縁(側部シール部13の収容部14側の端部)が底辺となり、スタンディングパウチ100の収容部14の内側に頂点が突出するように、形成されている。
【0065】
また、凸シール部16の三角形の頂点を通過して、凸シール部16を横断し、切り欠き15の三角形の頂点に到達するように、ハーフカットHが配置されている。
【0066】
本発明のスタンディングパウチが凸シール部を備える場合には、内容物から発生する蒸気により、他の部分と比較して凸シール部に大きな圧力がかかるため、より容易に、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0067】
凸シール部の形状は特に限定されるものではなく、例えば、底辺をスタンディングパウチの収容部の側縁(側部シール部の収容部側の端部)及び/又は上縁(上部シール部の収容部側の端部)とする、三角形、四角形、多角形、半円等、種々の形状であってよい。なかでは、蒸気圧力による応力集中を活用できる観点から、角を有する三角形、四角形、多角形が好ましく、更には三角形が好ましい。
【0068】
〈未シール部、切り込み、及び/又は切り欠き〉
本発明のスタンディングパウチは、側部シール部及び/又は上部シール部に、前面シートと背面シートとがヒートシールされていない未シール部、切り込み、及び切り欠きからなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてよい。この場合、未シール部、切り込み、及び/又は切り欠きは、スタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)を起点として、スタンディングパウチの収容部側に突出するように形成されている。
【0069】
本発明のスタンディングパウチが有してもよい、前面シートと背面シートとがヒートシールされていない未シール部とは、前面シートと背面シートとが接着していない部分である。
【0070】
未シール部の作製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、側部シール部及び/又は上部シール部を形成するときに、シール領域の中に、熱を加えない領域を設けることで作製することができる。代替的には、前面シートと背面シートとをヒートシールして側部シール部及び/又は上部シール部を形成した後に、当該側部シール部及び/又は上部シール部の一部を剥離することで、未シール部を作製することができる。
【0071】
本発明のスタンディングパウチが有してもよい切り込みとは、スタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)を起点とする、線状のカットであり、これは直線的又は曲線的なカットであってよい。
【0072】
切り込みの作製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、側部シール部及び/又は上部シール部を形成した後に、スタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)を起点として、側部シール部及び/又は上部シール部の中を、スタンディングパウチの収容部に向かって、カッター、ナイフ、鋏等の切断具を用いて切断することで作製することができる。あるいは、前面シートと背面シートの両方の側部及び/又は上部にそれぞれ、切り込みを作製しておき、当該切れ込みの位置を合わせて前面シートと背面シートとをヒートシールして、切り込みを有する側部シール部及び/又は上部シール部を作製してもよい。また、前面シートと背面シートのうちの少なくとも上記複合フィルムからなるシートの側部及び/又は上部に、切り込みを作製して、切り込みを有する側部シール部及び/又は上部シール部を作製してもよい。
【0073】
本発明のスタンディングパウチが有してもよい切り欠きとは、スタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)を起点とする、ある程度の面積を有する切り抜きである。
【0074】
切り欠きの形状は特に限定されるものではなく、例えば、底辺をスタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)とする、三角形、四角形、多角形、半円等、種々の形状であってよい。
【0075】
切り欠きの作製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、側部シール部及び/又は上部シール部を形成した後に、スタンディングパウチの側縁(側部シール部のスタンディングパウチの外端部)及び/又は上縁(上部シール部のスタンディングパウチの外端部)が底辺となるように、側部シール部及び/又は上部シール部の中を、ナイフや鋏等の切断具を用いて所望の形状を切り抜くことで、作製することができる。代替的には、前面シートと背面シートの側部及び/又は上部にそれぞれ、側縁(シートの外端部)及び/又は上縁(シートの外端部)が底辺となるように、所望の形状の切り抜きを作製しておき、当該切り抜きの位置を合わせて前面シートと背面シートとをヒートシールして、切り欠きを有する側部シール部及び/又は上部シール部を作製してもよい。また、前面シートと背面シートのうちの少なくとも上記複合フィルムからなるシートの側部及び/又は上部に、切り欠きを作製して、切り欠きを有する側部シール部及び/又は上部シール部を作製してもよい。
【0076】
図1(b)に示されるスタンディングパウチ100は、側部シール部13に、三角形の形状の1個の切り欠き15を備えている。切り欠き15は、スタンディングパウチ100の側縁(側部シール部13の側端部)を起点として、スタンディングパウチの収容部14側に突出するように形成されている。具体的には、スタンディングパウチ100の側縁(側部シール部13のスタンディングパウチ100の外端部)が底辺となり、スタンディングパウチ100の収容部14側に頂点が突出するように、側部シール部13が切り欠かれた、三角形の切り欠き15となっている。
【0077】
図1(b)に示されるこの態様のスタンディングパウチ100においては、電子レンジ等による加熱により、切り欠き15の部分から蒸気17を排出させることができる。
【0078】
以下では、前面シート、背面シート及び底面シートを構成する複合フィルムの構造について説明する。
【0079】
〈複合フィルム〉
本発明のスタンディングパウチで用いられる複合フィルムは、少なくとも、外層と、接着層と、内層と、がこの順で積層された複合フィルムである。そして、上記の通り、内層の側から施されて、接着層に到達しているハーフカットを備える。
【0080】
図2に、本発明で用いられる複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。図2に示される複合フィルム10は、外層1と、外層1の内側に積層配置された接着層2と、接着層2の内側に積層配置された内層3と、を備える。
【0081】
図2に示される複合フィルム10においては、ハーフカットHは、内層3の側から設けられ、接着層2の表面に到達している。
【0082】
本発明で用いられる複合フィルムは、外層と、接着層と、内層と、を必須の構成として含み、これらがこの順で積層されていればよい。本発明においては、外層、接着層、及び内層以外に、任意の層を備えていてもよく、任意の層としては、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0083】
任意の層の配置は、特に限定されず、例えば、外層、接着層、内層の間や、これらの層を含む積層体の外側に存在していてもよい。
【0084】
なお、外層と内層との間に、接着層以外の層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0085】
本発明で用いられる複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、形成されるスタンディングパウチの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0086】
(外層)
外層は、本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0087】
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムは、外層、接着層、及び内層が、この順で積層されている。このため、外層は、最内層となる内層をヒートシールしてスタンディングパウチを形成する時の保護層となりうる。また、内容物の表示等のための印刷を施すための印刷層ともなりうる。
【0088】
外層は、基材樹脂層を少なくとも含む層である。
【0089】
(基材樹脂層)
基材樹脂層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。
【0090】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0091】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.925g/m以下)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.925g/m以下)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度0.925g/m超0.942g/m以下)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.942g/m超)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマー、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0092】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0093】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0094】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0095】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0096】
基材樹脂層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、バリア層を良好に保護する観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、又は45μm以下であることが、スタンディングパウチとして用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0097】
基材樹脂層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0098】
なお、基材樹脂層は、予め成形されたフィルムから作製されることが好ましい。基材樹脂層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0099】
(接着層)
接着層は、本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムにおいて、必須の構成層である。接着層は、外層と内層との間に配置される。
【0100】
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムは、外層と内層との間に、接着層以外の層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0101】
接着層の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0102】
(ラミネート強度)
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムの接着層は、特定のラミネート強度となる、熱軟化性樹脂からなる接着層であってもよい。具体的には、接着層は、外層と内層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm以上であり、外層と内層との間の70℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm未満である、熱軟化性樹脂であってよい。このラミネート強度は、JIS K6854-3:1999に準拠するT形剥離により、300mm/minの条件で、変位20~50mmの区間平均を求めることにより測定することができる。
【0103】
外層と内層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm以上であれば、複合フィルムから形成されたスタンディングパウチは、常温付近で十分な強度を有し、保管及び取り扱いに際して外層と内層との間での剥離等が発生しない。
【0104】
外層と内層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.8N/15mm以上、2.0N/15mm以上、2.4N/15mm以上、2.8N/15mm以上、又は3.0N/15mm以上であってよい。
【0105】
一方で、外層と内層との間の25℃におけるラミネート強度は、上記のT形剥離を行った際に、剥離の途中で材料が破壊される程度に強くてもよく、又は6.0N/15mm以下、5.0N/15mm以下、4.5N/15mm以下、4.0N/15mm以下、3.5N/15mm以下、若しくは3.0N/15mm以下であってよい。
【0106】
また、外層と内層との間の70℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm未満であれば、複合フィルムから形成されたスタンディングパウチが加熱された場合に、接着層の中に空間が形成され易くなり、当該空間を通して蒸気を移動させることで、従来と同等の蒸気抜き性能を発揮することができる。
【0107】
外層と内層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.2N/15mm以下、1.0N/15mm以下、0.8N/15mm以下、0.5N/15mm以下、0.2/15mm以下、0.1/15mm以下、又は0.05N/15mm以下であってよい。
【0108】
一方で、外層と内層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.01N/15mm以上、0.05N/15mm以上、0.1N/15mm以上、0.2N/15mm以上、0.3N/15mm以上、0.4N/15mm以上、又は0.5N/15mm以上であってよい。
【0109】
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムの接着層が、上記のラミネート強度を有する場合には、外層と内層との間の25℃におけるラミネート強度が、70℃におけるラミネート強度より大きいものとなっている。すなわち、複合フィルムから形成されたスタンディングパウチが電子レンジ等で加熱されると、温度上昇により、外層と内層との間のラミネート強度は小さくなり、これにより、接着層である軟化性樹脂層の中に空間を形成し易くなる。そして、形成された空間を通して、内容物から発生した蒸気を移動させることができるようになる。
【0110】
また、本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムの接着層が、上記のラミネート強度を有する場合には、外層と内層との間に、熱軟化性樹脂による接着層の1層のみを配置した構成であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を有するスタンディングパウチを実現することができる。
【0111】
上記のラミネート強度を実現することのできる市販の熱軟化性樹脂としては、例えば、LX-500(DIC株式会社)、エリーテル(登録商標)XP-1648-45EA(ユニチカ株式会社)等が挙げられる。また、上記のラミネート強度を実現することのできる熱軟化性樹脂は、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物に由来する、架橋構造を有する熱軟化性樹脂であってよい。この接着剤組成物については、下記で詳細に説明する。
【0112】
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムの接着層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上であってもよい。
【0113】
接着層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が1.0N/25mm以上であれば、隣接する層との十分な接着性を有するため、複合フィルムから形成されたスタンディングパウチの保管時、及び取り扱い時において、剥離等の問題を回避することができる。
【0114】
また、外層と内層との間に、接着を強化するための層を存在させる必要がなくなるため、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができ、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0115】
接着層のJIS Z0237に準じた粘着強度は、1.5N/25mm以上、2.0N/25mm以上、2.5N/25mm以上、3.0N/25mm以上、3.5N/25mm以上、4.0N/25mm以上、又は4.5N/25mm以上であってよい。
【0116】
一方で、接着層のJIS Z0237に準じた粘着強度は、10.0N/25mm以下、9.0N/25mm以下、8.0N/25mm以下、7.0N/25mm以下、6.0/25mm以下、5.0/25mm以下、又は4.0N/25mm以下であってよい。
【0117】
(接着層:接着剤組成物)
接着剤組成物は、主剤及び硬化剤を含有していてよい。
【0118】
接着剤組成物を構成する主剤は、特に限定されるものではないが、基材層へのドライラミネートが容易となる観点から、常温で液状であるものが好ましい。例えば、ポリオールが挙げられ、ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等が挙げられる。主剤は、1種単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0119】
中では、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが好適に用いられ、速硬化の観点からより好ましくは、ポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールであってよい。
【0120】
特には、エーテル系樹脂層を形成することのできるポリエーテルポリオールが好適であり、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリウレタンポリオールであってもよい。
【0121】
{硬化剤}
接着剤組成物を構成する硬化剤は、特に限定されるものではないが、基材層へのドライラミネートが容易となる観点から、常温で液状であるものが好ましい。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。
【0122】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナートベンゼン、2,4,6-トリイソシアナートトルエン等の芳香族又は芳香脂肪族の有機トリイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネート等の芳香脂肪族テトライソシアネートで代表される有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、これら単量体と他の化合物とが反応して得られる誘導体や付加体、又はこれら単量体から誘導された二量体、三量体等の誘導体であってもよい。
【0123】
接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比は、主剤1質量部に対して、硬化剤0.20質量部以下、0.15質量部以下、0.125質量部以下、0.10質量部以下、0.075質量部以下、又は0.05質量部以下であることが、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度を弱くし、得られる複合フィルムの蒸気抜き性能を良好にする観点から好ましい。
【0124】
また、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比は、主剤1質量部に対して、硬化剤0.01質量部以上、0.025質量部以上、0.05質量部以上、0.075質量部以上、0.10質量部以上、0.125質量部以上、又は0.15質量部以上であることが、25℃における十分なラミネート強度を確保する観点から好ましい。
【0125】
中でも、上記の構成は、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比が、主剤1質量部に対して硬化剤が、0.125質量部を超え0.2質量部未満であることが、25℃におけるラミネート強度を高くしつつ、70℃におけるラミネート強度を低くする観点から好ましい。
【0126】
(内層)
内層は、本発明で用いられる複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0127】
内層は、スタンディングパウチの収容部側にシーラント層を少なくとも含む層である。内層は、シーラント層単層であってもよく、又はシーラント層以外の層を接着層側に含む積層体であってもよい。
【0128】
(基材樹脂層)
内層の基材樹脂層としては、外層の基材樹脂層に関して挙げた樹脂を用いることができる。
【0129】
(内層:シーラント層)
シーラント層は、スタンディングパウチを形成する際に、ヒートシールされる層となる。このため、シーラント層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0130】
シーラント層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形されたスタンディングパウチに十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、上記のポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。
【0131】
なお、シーラント層は形成されるスタンディングパウチにおいて、内容物を充填するための空間を形成する層となる。このため、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いて、耐内容物性を付与してもよい。
【0132】
シーラント層は、上記の材料から予め成形されたフィルムを、内層を構成する他の層、例えば基材樹脂層に接着層を介して設けてもよく、又は内層を構成する他の層の表面に、シーラント層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0133】
また、シーラント層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0134】
更に、シーラント層は、単層であっても、複層からなる構成であっていてもよい。
【0135】
(その他の層)
本発明のスタンディングパウチに用いられる複合フィルムは、外層と、接着層と、内層とを、必須の構成層として含んでいれば、これら以外の層が含まれていてもよい。
【0136】
その他の層としては、特に限定されるものではなく、例えば、バリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0137】
バリア層としては、外部からの水分や有機ガス及び無機ガスがガス吸収層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかるバリア層としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等の単体金属箔層、ステンレス箔等の合金箔層、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。これらのバリア層は、バリア層のみで積層させてもよく、又は外層若しくは内層の基材樹脂層に予め積層させた状態で用いてもよい。
【0138】
バリア層として無機物蒸着膜を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、包装袋として用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0139】
バリア層として金属箔層、バリア性樹脂層又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、包装袋として用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0140】
強度を補強するための補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。これらには、隣接する層との接着性を付与するための接着剤が塗布されていてもよい。また、上記の基材樹脂層を構成する材料による層を、基材樹脂層とは別に、補強層として備えさせることも可能である。
【0141】
層と層との間を接着するための接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0142】
また、その他の層は、層と層とをドライラミネート又はホットメルトラミネートする際に使用する、接着剤からなる層であってもよい。
【0143】
その他の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【実施例0144】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0145】
《スタンディングパウチの作製》
〈実施例1〉
以下の層構成を有する、スタンディングパウチを構成する複合フィルムを作製した(なお、以下の層構成で「//」は、ドライラミネート接着剤を意味するものである)。
OPP/熱軟化性樹脂層(2.0g/m)/PET//シーラント層
【0146】
上記の層構成において、「OPP」が本発明の外層に相当し、「熱軟化性樹脂」が、本発明の接着層に相当し、「PET//シーラント層」が、本発明の内層に相当する。
【0147】
具体的な材料としては、以下のものを用いた。
・OPP:二軸延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P2161、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
・熱軟化性樹脂層:TM-396/CAT-22B(東洋モートン株式会社)
・シーラント層:無延伸PP(CPP)フィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:50μm)
・PET:PETフィルム(エステル(登録商標)フィルムE5100、東洋紡株式会社、厚み:12μm)
・ドライラミネート接着剤:LX-500/KR-90S(DIC株式会社)
【0148】
PETフィルムと、シーラント層となるCPPフィルムとを、接着剤により貼り合わせて、内層を作製した。続いて、内層を厚み方向に貫通するようにして、直線状の断続的なカットを内層に施した(ハーフカット作製工程)。
【0149】
カットを有する内層のPETフィルム側に、外層となるOPPフィルムを、熱軟化性接着樹脂によって接着して複合フィルムとなる積層体を作製した。なお、熱軟化性接着樹脂としては、8質量部のTM-396に対し、1質量部のCAT-22Bを混合し、2.0g/mの量で塗工したものを用いた。
【0150】
作製した複合フィルムを、幅140mm、高さ140mmの前面シート及び背面シート、並びに幅140mm、高さ60mmの底面シートに切り分け、これらのヒートシール層同士を対向させ、各シール部を下記に示すように設けて、図4に示す、外寸が、幅140mm、高さ140mm、折り込み幅30mmのスタンディングパウチを作製した。このとき、スタンディングパウチの内部に、キムワイプ(登録商標)L-100(470mm×425mm)と、水20gを充填した。
【0151】
ハーフカットは、スタンディングパウチの片方の側部シール部から、収容部を横断し、他方の側部シール部まで、両方の側部シール部と収容部を横断するように配置した。なお、ヒートシールは、インパルスシーラーを用い、加熱1.0秒、冷却2.0秒の条件で行った。
【0152】
(側部シール部及び幅広側部シール部の作製)
側部シール部、上部シール部及び底部シール部は、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の幅が5mmとなるとなるように作製した。
【0153】
(幅広側部シール部の作製)
また、側部シール部の収容部側の縁に対して幅が5mm、すなわちスタンディングパウチの側縁に対して法線方向の幅が10mm、高さが70mmとなるように、図4に示す幅広側部シール部を作製した。ここで、表1において、「幅」及び「高さ」とは、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向及び平行な方向の長さをそれぞれ示すものである。
【0154】
(凸シール部の作製)
続いて、ハーフカット延長線上となる両方の側部シール部に、スタンディングパウチの収容部側の端部が底辺となり、収容部の内側に頂点が突出するように、三角形の凸シール部を2個形成した。このとき、ハーフカットは、三角形の頂点を通過するように配置し、凸シール部は、側部シール部の収容部側の縁に対して幅が5mm、すなわちスタンディングパウチの側縁に対して法線方向の幅が10mmとなるようにした。
【0155】
〈実施例2~11及び比較例1~3〉
シール部の構成を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~11及び比較例1~3のスタンディングパウチを作製した。
【0156】
(切り欠きの作製)
表1の「切り欠きの有無」において「有」と記載している実施例及び比較例については、ハーフカット延長線上の両方の側部シール部に、側部シール部のスタンディングパウチの外端部が底辺となり、収容部側に頂点が突出するように、正三角形の切り欠きを2個作製した。スタンディングパウチの側縁に対する法線方向の切り欠きの幅は、5mmとした。
【0157】
《評価》
〈蒸気の通過性〉
作製したスタンディングパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、パウチの内側の蒸気が、外層と内層との層間部から排出されたか確認した。なお、それぞれのスタンディングパウチについて、3回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。
◎:3回すべてにおいて、蒸気が排出された。
〇:3回のうち2回、蒸気が排出された。
△:3回のうち1回、蒸気が排出された。
×:3回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0158】
〈蒸気の通過位置〉
作製したスタンディングパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、パウチの内側の蒸気が、ハーフカットの延長線上の側部シール部から排出されたか確認した。なお、それぞれのスタンディングパウチについて、3回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。
〇:蒸気が排出された回すべてにおいて、ハーフカットの延長線上の側部シール部から排出された。
△:蒸気が排出された回のうち、ハーフカットの延長線上の側部シール部から蒸気が排出されない場合があった。
×:蒸気が排出された回のうち、ハーフカットの延長線上の側部シール部から排出された場合はなかった。
【0159】
実施例及び比較例の各構成及び評価結果を、表1及び図4~17に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
表1から、幅広側部シール部を有する実施例のスタンディングパウチは、蒸気透過性及び蒸気透過位置がいずれも良好であり、中でも幅広側部シール部が底部に接している実施例1~8及び11のスタンディングパウチは、蒸気透過性及び蒸気透過位置が特に良好であることが理解できよう。
【0162】
以下では、凸シール部及び切り欠き等の作用等を、参考例を用いて示す。
【0163】
<参考例1~11、参考比較例1~3>
参考例1~11、及び参考比較例1~3においては、幅広側部シール部を有しないスタンディングパウチのバリエーションとなるスタンディングパウチを作製し、電子レンジにより加熱したときの蒸気の通過性及び蒸気の通過位置について評価した。
【0164】
《参考例1》
[スタンディングパウチの作製]
実施例1~11及び比較例1~3で作製したものと同じ複合フィルム、幅140mm、高さ140mmの前面シート及び背面シート、並びに幅140mm、高さ60mmの底面シートに切り分け、これらのヒートシール層同士を対向させ、各シール部を下記に示すように設けて、図18に示す、外寸が、幅140mm、高さ140mm、折り込み幅30mmのスタンディングパウチを作製した。このとき、スタンディングパウチの内部に、キムワイプ(登録商標)L-100(470mm×425mm)と、水20gを充填した。
【0165】
ハーフカットは、スタンディングパウチの片方の側部シール部から、収容部を横断し、他方の側部シール部まで、両方の側部シール部と収容部を横断するように配置した。なお、ヒートシールは、インパルスシーラーを用い、加熱1.0秒、冷却2.0秒の条件で行った。
【0166】
(側部シール部の作製)
参考例1においては、図18に示すスタンディングパウチを作製した。具体的には、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の幅(a)が5mmとなるとなるよう、側部シール部を作製した。
【0167】
(凸シール部の作製)
続いて、ハーフカット延長線上となる両方の側部シール部に、スタンディングパウチの収容部側の端部が底辺となり、収容部の内側に頂点が突出するように、三角形の凸シール部を2個形成した。このとき、ハーフカットは、三角形の頂点を通過するように配置し、凸シール部は、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の幅(b)が5mmとなるとなるようにした。
【0168】
(切り欠きの作製)
続いて、ハーフカット延長線上の両方の側部シール部に、側部シール部のスタンディングパウチの外端部が底辺となり、収容部側に頂点が突出するように、正三角形の切り欠きを2個作製した。スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の切り欠きの幅(c)は、5mmとした。
【0169】
(側部シール部の幅a、凸シール部の幅b、切り欠きの幅cの関係)
したがって、参考例1における下記式(1)の値は、5mmとなる。
a+b-c (1)
(a:スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の、切り欠きを有する側部シール部の幅、
b:スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の凸シール部の幅、
c:スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の切り欠きの幅)
【0170】
《参考例2》
図19に示すように、凸シール部となる正三角形の上辺の略中央をハーフカットが通過するよう変更した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0171】
《参考例3》
図20に示すように、凸シール部となる正三角形の下辺の略中央をハーフカットが通過するよう変更した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0172】
《参考例4》
図21に示すように、凸シール部の形状を鋭角三角形とするとともに、切り欠きの形状を鋭角三角形とした以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0173】
《参考例5》
図22に示すように、凸シール部の形状を鈍角三角形とするとともに、切り欠きの形状を鈍角三角形とした以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0174】
《参考例6》
図23に示すように、凸シール部の形状を鋭角三角形として、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の凸シール部の幅(b)が7mmとなるとなるよう変更した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。この例では、式(1)の値(a+b-c)は、7mmとなる。
【0175】
《参考例7》
図24に示すように、側部シール部の片側のみに、凸シール部及び切り欠きを作製した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0176】
《参考例8》
図25に示すように、凸シール部の形状を四角形とし、四角形の略中央を通過するようハーフカットを配置した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0177】
《参考例9》
図26に示すように、凸シール部の形状を半円形とし、半円の略中央を通過するようハーフカットを配置した以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0178】
《参考例10》
図27に示すように、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の側部シール部の幅(a)を10mmとし、凸シール部を作製しない以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。この例では、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の凸シール部の幅(b)は0mmとなるため、式(1)の値(a+b-c)は、5mmとなる。
【0179】
《参考例11》
[スタンディングパウチの作製]
作製した複合フィルムのヒートシール層同士を対向させて、図28に示す、外寸が、幅140mm、高さ140mm、折り込み幅30mmのスタンディングパウチを作製した。このとき、スタンディングパウチの内部に、キムワイプ(登録商標)L-100(470mm×425mm)と、水20gを充填した。
【0180】
ハーフカットは、スタンディングパウチの上部シール部から、収容部を横断し、スタンディングパウチの底部シール部まで、両方のシール部と収容部を横断するように配置した。なお、スタンディングパウチの作製条件は、インパルスシーラーにより、加熱1.0秒、冷却2.0秒とした。
【0181】
(上部シール部の作製)
参考例11においては、図28に示すスタンディングパウチを作製した。具体的には、スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の幅(a)が5mmとなるとなるよう、上部シール部を作製した。
【0182】
(凸シール部の作製)
続いて、ハーフカット延長線上となる上部シール部に、スタンディングパウチの収容部側の端部が底辺となり、収容部の内側に頂点が突出するように、三角形の凸シール部を1個形成した。このとき、ハーフカットは、三角形の頂点を通過するように配置し、凸シール部は、スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の幅(b)が5mmとなるとなるようにした。
【0183】
(切り欠きの作製)
続いて、ハーフカット延長線上の上部シール部に、上部シール部のスタンディングパウチの外端部が底辺となり、収容部側に頂点が突出するように、正三角形の切り欠きを1個作製した。スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の切り欠きの幅(c)は、5mmとした。
【0184】
(a+b-c)
したがって、参考例11における下記式(1)の値は、5mmとなる。
a+b-c (1)
(a:スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の、切り欠きを有する上部シール部の幅、
b:スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の凸シール部の幅、
c:スタンディングパウチの上縁に対して法線方向の切り欠きの幅)
【0185】
《参考比較例1》
図29に示すように、凸シール部、及び切り欠きを作製しない以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。この例では、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の凸シール部の幅(b)、及びスタンディングパウチの側縁に対して法線方向の切り欠きの幅(c)は0mmとなるため、式(1)の値(a+b-c)は、5mmとなる。
【0186】
《参考比較例2》
図30に示すように、切り欠きを作製しない以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。この例では、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の切り欠きの幅(c)は0mmとなるため、式(1)の値(a+b-c)は、10mmとなる。
【0187】
《参考比較例3》
図31に示すように、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の側部シール部の幅(a)を10mmとし、凸シール部、及び切り欠きを作製しない以外は、参考例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。この例では、スタンディングパウチの側縁に対して法線方向の凸シール部の幅(b)、及びスタンディングパウチの側縁に対して法線方向の切り欠きの幅(c)は0mmとなるため、式(1)の値(a+b-c)は、10mmとなる。
【0188】
《スタンディングパウチの評価》
<蒸気の通過性>
作製したスタンディングパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、パウチの内側の蒸気が、外層と内層との層間部から排出されたか確認した。なお、それぞれのスタンディングパウチについて、3回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:3回すべてにおいて、蒸気が排出された。
〇:3回のうち2回、蒸気が排出された。
△:3回のうち1回、蒸気が排出された。
×:3回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0189】
<蒸気の通過位置>
作製したスタンディングパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、パウチの内側の蒸気が、ハーフカットの延長線上の側部シール部又は上部シール部から排出されたか確認した。なお、それぞれのスタンディングパウチについて、3回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
〇:蒸気が排出された回すべてにおいて、ハーフカットの延長線上の側部シール部又は上部シール部から排出された。
△:蒸気が排出された回のうち、ハーフカットの延長線上の側部シール部又は上部シール部から蒸気が排出されない場合があった。
×:蒸気が排出された回のうち、ハーフカットの延長線上の側部シール部又は上部シール部から排出された場合はなかった。
【0190】
【表2】
【0191】
《考察》
参考例1、4、及び5より、凸シール部の形状が鋭角や鈍角であっても、蒸気の通過性及び蒸気の通過位置に影響はなく、意図した位置から蒸気を排出できたことが判る。また、参考例1、2,及び3より、凸シール部をハーフカットが横断していれば、蒸気の通過性及び蒸気の通過位置に影響はなく、意図した位置から蒸気を排出できたことが判る。また、参考例8より、側部シール部の片側のみに、凸シール部及び切り欠きを作製した場合にも、蒸気の通過性及び蒸気の通過位置に影響はなく、意図した位置から蒸気を排出できたことが判る。
【0192】
参考例1及び参考例7からは、式(1)の値が10mm未満のほうが、より確実に、意図した位置から蒸気を排出できることが判る。
【0193】
参考例1、及び参考比較例1並びに参考比較例2から、側部シール部が切り欠きを有さないスタンディングパウチの場合には、意図した位置から蒸気を排出できないことが判る。
【0194】
<参考例12~15、参考比較例4~8>
参考例12~15、及び参考比較例4~8においては、複合フィルムからピロー袋を作製し、ラミネート強度を測定するとともに、電子レンジにより加熱したときの蒸気の通過性について評価した。
【0195】
[材料]
参考例12~15及び参考比較例4~8においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0196】
(1)外層
・Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)
【0197】
(2)熱軟化性接着樹脂層又は接着剤層
・LX-500(DIC株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1586-45EA
・エリーテル(登録商標)XP-1648-45EA(ユニチカ株式会社)
・LX-500/KW-75(DIC株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1541-45EA(ユニチカ株式会社)
・エリーテル(登録商標)UE-3223(ユニチカ株式会社)
・TM-396/CAT-22B(東洋モートン株式会社)
【0198】
(3)内層
・CPP#30:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:30μm)
・E1901T#50:積層PPフィルム(ディファレン(登録商標)E1901T、DIC株式会社、厚み:50μm)
【0199】
(4)その他
・剥離ニス:ポリコート(登録商標)P-91/P-91レジューサー=3/1(DIC株式会社)
【0200】
《参考例12~15、参考比較例4~7》
[複合フィルムの製造]
表3に記載した材料を用いて、内層となるフィルムと、外層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂又は接着剤によって接着し、積層体を作製した。なお、熱軟化性接着樹脂又は接着剤の塗工量は、それぞれ1.5g/mとした。また、「TM-396/CAT-22B」については、1質量部のTM-396に対して、1質量部のCAT-22Bを添加したものを用いた。
【0201】
積層体における内層となるフィルムには、内層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、内層を含むシートに、外層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0202】
《参考比較例8》
[複合フィルムの製造]
外層となるNy#15ナイロンフィルムフィルムに、剥離ニスであるポリコート(登録商標)P-91/P-91レジューサー=3/1(DIC株式会社)を、塗工量1.5g/m塗工した。剥離ニスが乾燥した後、表3に記載した材料を用いて、参考例12~15、及び参考比較例4~7と同様にして、内層となるフィルムを、剥離ニス塗工面に接着剤によって接着し、積層体を作製した。
【0203】
積層体における内層となるフィルムには、内層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、内層を含むシートに、外層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0204】
《ラミネート強度の測定》
参考例12~15、及び参考比較例4~8で得られた複合フィルムを15mm幅にカットし、外層と内層との層間強度を、25℃雰囲気下と70℃雰囲気下にて測定した。なお、測定は、T字剥離にて、300mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表3に示す。
【0205】
[ピロー袋の作製]
参考例12~15、及び参考比較例4~8で作製した複合フィルムを用いて、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。このとき、ピロー袋の内部に、水10ccを充填したレンジアップ可能な容器を封入した。また、ハーフカットは、ピロー袋のシール部に、ピロー袋の収容部からシール部を横断するように配置した。なお、ピロー袋の作製条件は、インパルスシーラーにより、加熱1.3秒、冷却2.0秒とした。
【0206】
<ピロー袋の蒸気の通過性評価>
作製したピロー袋に対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、ヒートシール部からパウチの内側の蒸気が排出されたか確認した。なお、それぞれのピロー袋について、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:5回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0207】
【表3】
【0208】
《参考例16~19》熱軟化性接着樹脂層の粘着強度の測定
参考例12~13、及び参考比較例5~6で使用した熱軟化性接着樹脂又は接着剤を、Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)の表面に、塗工量1.5g/mにて塗工した。続いて、25mm幅に切り出して、試験板(ステンレス版)に貼り付けることで、評価サンプルを作製した。貼り付けに際しては、圧着ローラー(2kg)を2往復させて、圧着させた。
【0209】
作製した評価サンプルについて、ストログラフを用いて、25℃雰囲気下にて、粘着強度の測定を実施した。測定は、180°剥離にて、500mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表4に示す。
【0210】
【表4】
【0211】
次に、熱軟化性接着性樹脂における主剤と硬化剤との組成比による作用に関し、参考例20~29及び参考比較例9~15を用いて説明する。
【0212】
《参考例20~29及び参考比較例9~15》
参考例20~29及び参考比較例9~15においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0213】
(1)基材層
・PET#12:二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル(登録商標)E5100、東洋紡株式会社、厚み:12μm)
・OPP#20:二軸延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P2161、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
・Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)
【0214】
(2)熱軟化性接着樹脂層
・TM-396(主剤)/CAT-22B(硬化剤)(東洋モートン株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1586(ユニチカ株式会社)
【0215】
(3)ヒートシール層
・CPP#20:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
・CPP#30:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:30μm)
・E1901T#50:積層PPフィルム(ディファレン(登録商標)E1901T、DIC株式会社、厚み:50μm)
【0216】
《参考例20~24及び比較例9~14》
<複合フィルムの製造>
表5又は表6に記載した材料を用いて、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂層を形成する接着剤組成物によって接着し、積層体を作製した。なお、接着剤組成物の塗工量は、それぞれ3.0g/mとした。
【0217】
積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0218】
<ラミネート強度の測定>
参考例20~24及び比較例9~14で得られた複合フィルムを15mm幅にカットし、基材層とヒートシール層との層間強度を、25℃雰囲気下と70℃雰囲気下にて測定した。なお、測定は、T字剥離にて、300mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表1又は表2に示す。なお、表において「材破」とは、ラミネート強度が高すぎて剥離の途中で材料が破壊され、測定不可であった状況を意味する。
【0219】
<パウチの作製>
参考例20~24及び比較例9~14で作製した複合フィルムを用いて、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。このとき、ピロー袋の内部に、水10ccを含浸させた紙ワイパー(キムワイプ(登録商標)、日本製紙クレシア製)を封入した。また、ハーフカットは、ピロー袋のシール部に、包装袋の内側から外側まで、シール部を横断するように配置した。なお、ピロー袋の作製条件は、インパルスシーラーにより、加熱0.9秒、冷却2.0秒とした。
【0220】
<パウチの蒸気の通過性評価>
作製したパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、ヒートシール部からパウチの内側の蒸気が排出されたか確認した。なお、それぞれのパウチについて、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表5又は表6に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:少なくとも1回、蒸気が排出されない場合があった。
【0221】
<パウチのラミ浮き評価>
上記の要領で、それぞれ5個ずつのパウチを作製し、25℃雰囲気下で1日静置した。静置後、目視にてラミ浮きの有無を確認し、以下の評価基準で評価した。結果を表5又は表6に示す。
〇:5個全てのパウチで、ラミ浮きはなかった。
△:1~3個のパウチに、ラミ浮きが見られた。
×:4~5個のパウチに、ラミ浮きが見られた。
【0222】
【表5】
【0223】
【表6】
【0224】
《実施例25~29、参考比較例15》
<複合フィルムの製造>
表7に記載した材料を用いて、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂層を形成する接着剤組成物によって接着し、積層体を作製した。なお、接着剤組成物の塗工量は、表7に記載した量とした。
【0225】
参考例20と同様に、積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0226】
<ラミネート強度の測定>
参考例20と同様にして、基材層とヒートシール層との層間強度を測定した。結果を表7に示す。
【0227】
<パウチの作製>
参考例20と同様にして、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。
【0228】
<パウチの蒸気の通過性評価及びパウチのラミ浮き評価>
参考例20と同様にして、パウチの蒸気の通過性評価及びパウチのラミ浮き評価を実施した。結果を表7に示す。
【0229】
<ハーフカットからの接着剤の漏出評価>
実施例25~29、参考比較例15においては、複合フィルムの各原反を4000m巻きで作製し、エージングを実施後に取り出して、直ちに巻替えを実施した。巻替え時に、ロール等に漏出した接着剤が付着していないか確認し、以下の評価基準で評価した。結果を表7に示す。
〇:接着剤の漏出は見られなかった。
△:かすかに漏出(加工に問題を及ぼさない)
×:接着剤の漏出が見られた。
【0230】
【表7】
【符号の説明】
【0231】
100 スタンディングパウチ
11 前面シート
12 上部シール部
13 側部シール部
13a 幅広側部シール部
14 収容部
15 切り欠き
16 凸シール部
17 蒸気
10 複合フィルム
1 外層
2 接着層
3 内層
H ハーフカット
F 折り返しライン
図1
図2
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