(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166245
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】触覚伝達システム,触覚伝達装置,触覚伝達プログラム及び触覚伝達方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153096
(22)【出願日】2024-09-05
(62)【分割の表示】P 2023525349の分割
【原出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】山口 公輔
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
(57)【要約】
【課題】双方向触覚伝達システムにおける接触信号のハウリング及びループバックを抑制する。
【解決手段】触覚伝達装置3と他の触覚伝達装置3とを有する触覚伝達システム100であって、触覚伝達装置3において発生した振動を計測する振動計測部31と、振動計測部31によって計測された振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、算出部によって算出された知覚情報を維持しながら、振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、変換部によって変換された変換後の信号を、他の触覚伝達装置3の振動子32に出力振動として出力させる信号出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムであって、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測する振動計測部と、
前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させる信号出力部と、
を備え、
前記変換部は、前記振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる、
双方向触覚伝達システム。
【請求項2】
前記変換部は、前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
請求項1に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される包絡線を前記知覚情報として算出し、
前記変換部は、前記算出部によって算出された前記包絡線を維持しながら、前記振動に関する信号を前記所定の周波数がキャリア周波数となるように変換された振幅変調信号として出力し、
前記信号出力部は、前記変換部によって変換された前記振幅変調信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力する、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記振動計測部によって計測された前記振動の波形から、刺激の主観的強度を前記知覚情報として算出し、
前記変換部は、前記算出部によって算出された前記主観的強度を維持するように、所定の等価主観的強度マップを利用して前記振動に関する信号を前記所定の周波数に変換する、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される知覚インテンシティを前記知覚情報として算出し、
前記変換部は、前記算出部によって算出された前記知覚インテンシティを維持しながら、前記振動に関する信号を前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換する、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記振動計測部によって計測された前記振動に関する信号を所定時間毎に分割し、分割された前記所定時間毎に前記知覚インテンシティを算出する、
請求項5に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項7】
前記変換部は、前記信号の周波数成分のうち特定の周波数帯域の信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の周波数帯域以外の信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、
請求項5又は6に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項8】
前記変換部は、前記信号のうち特定の信号特徴量に基づいて抽出された信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の特徴量で抽出されない信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、
請求項5又は6に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項9】
ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置を検出する接触位置検出センサを更に備え、
前記信号出力部は、前記接触位置検出センサによる検出結果に基づき、振動の移動感覚を前記振動子に出力させる、
請求項1~8のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項10】
複数の前記振動計測部を備え、
前記信号出力部は、前記複数の振動計測部それぞれからの入力に基づき、振動の移動感覚を前記振動子に出力させる、
請求項1~8のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項11】
前記信号出力部は、前記振動子における前記変換後の信号の出力と同時に、音、映像又は光を前記他の触覚伝達装置に出力させる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項12】
環境側に設置されると共にユーザの身体が接触することにより振動を伝える接触板において、前記振動計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1~11のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項13】
ユーザの身体に取り付け可能なウェアラブルデバイスに前記振動計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1~11のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項14】
ユーザが把持するデバイスに前記振動計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1~11のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システムに使用される前記触覚伝達装置であって、
前記振動計測部、前記算出部、前記変換部、及び前記信号出力部のうち、前記振動計測部のみの組み合わせと、前記振動計測部及び前記算出部の組み合わせと、前記振動計測部、前記算出部及び前記変換部の組み合わせと、前記振動計測部、前記算出部、前記変換部及び前記信号出力部の組み合わせとのいずれかを備える、
双方向触覚伝達装置。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システムに使用される前記他の触覚伝達装置であって、
前記算出部、前記変換部及び前記信号出力部のうち、前記信号出力部のみの組み合わせと、前記変換部及び前記信号出力部の組み合わせと、前記算出部、前記変換部及び前記信号出力部の組み合わせとのいずれかを備える、
双方向触覚伝達装置。
【請求項17】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおけるコンピュータに、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させ、
前記振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる、
処理を実行させる、双方向触覚伝達プログラム。
【請求項18】
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項17に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項19】
計測された前記振動から特定される包絡線を前記知覚情報として算出し、
算出された前記包絡線を維持しながら、前記振動に関する信号を前記所定の周波数がキャリア周波数となるように変換された双方向振幅変調信号として出力し、
変換された前記振幅変調信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項17又は18に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項20】
計測された前記振動の波形から、刺激の主観的強度を前記知覚情報として算出し、
算出された前記主観的強度を維持するように、所定の等価主観的強度マップを利用して前記振動に関する信号を前記所定の周波数に変換する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項17又は18に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項21】
計測された前記振動から特定される知覚インテンシティを前記知覚情報として算出し、
算出された前記知覚インテンシティを維持しながら、前記振動に関する信号を前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換する、
請求項17又は18に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項22】
計測された前記振動に関する信号を所定時間毎に分割し、分割された前記所定時間毎に前記知覚インテンシティを算出する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項21に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項23】
前記信号の周波数成分のうち特定の周波数帯域の信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の周波数帯域以外の信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、処理を前記コンピュータに実行させる、請求項21又は22に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項24】
前記信号のうち特定の信号特徴量に基づいて抽出された信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の特徴量で抽出されない信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項21又は22に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項25】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおける双方向触覚伝達方法であって、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させ、
前記振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる、
処理を実行させる、双方向触覚伝達方法。
【請求項26】
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
請求項25に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項27】
計測された前記振動から特定される包絡線を前記知覚情報として算出し、
算出された前記包絡線を維持しながら、前記振動に関する信号を前記所定の周波数がキャリア周波数となるように変換された振幅変調信号として出力し、
変換された前記振幅変調信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力する、
請求項25又は26に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項28】
計測された前記振動の波形から、刺激の主観的強度を前記知覚情報として算出し、
算出された前記主観的強度を維持するように、所定の等価主観的強度マップを利用して前記振動に関する信号を前記所定の周波数に変換する、
請求項25又は26に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項29】
計測された前記振動から特定される知覚インテンシティを前記知覚情報として算出し、
算出された前記知覚インテンシティを維持しながら、前記振動に関する信号を前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換する、
請求項27又は28に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項30】
計測された前記振動に関する信号を所定時間毎に分割し、分割された前記所定時間毎に
、前記知覚インテンシティを算出する、
請求項29に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項31】
前記信号の周波数成分のうち特定の周波数帯域の信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の周波数帯域以外の信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、請求項29又は30に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項32】
前記信号のうち特定の信号特徴量に基づいて抽出された信号については前記知覚インテンシティを調整して前記波形の変換を行う一方、前記特定の特徴量で抽出されない信号については前記知覚インテンシティを維持しながら前記信号とは別の周波数をもつ波形に変換を行う、
請求項29又は30に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項33】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムであって、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測する振動計測部と、
前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させる信号出力部と、
を備え、
前記変換部は、前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
双方向触覚伝達システム。
【請求項34】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおけるコンピュータに、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させ、
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
処理を実行させる、双方向触覚伝達プログラム。
【請求項35】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおける双方向触覚伝達方法であって、
前記触覚伝達装置において発生した振動を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させ、
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
処理を実行させる、双方向触覚伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する技術は、触覚伝達システム,触覚伝達装置,触覚伝達プログラム及び触覚伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話やビデオ会議、ソーシャルVirtual Reality(VR)等、遠隔地でも音声や映像でコミュニケーションをとる技術が開発されている。音声や映像に加えて触覚振動を伝達することで今までより高度なコミュニケーションが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】早川裕彦 他“高実在感を伴う遠隔コミュニケーションのための双方向型視聴触覚メディア「公衆触覚伝話」の提案”, TVRSJ Vol.25 No.4 pp.412-421, 2020年12月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが筐体を触った際に発生する振動を双方向に伝達する触覚通信では、振動を計測する振動センサと振動を生成するアクチュエータとを同じ筐体に搭載することが望ましい。このとき、入力として加えるユーザと筐体との接触振動は、筐体の固有振動の振幅変調波を中心として現れる。一方、出力として、触覚提示のためにアクチュエータにより筐体を振動させると、やはり筐体の固有振動付近の振動が発生する。
【0005】
このような触覚の入出力装置を複数、双方向に接続した場合、センサ信号とループバックされてきたアクチュエータの駆動信号とが同じ固有振動付近で駆動されるため、鳴音(ハウリング)現象が生じるおそれがある。
【0006】
このハウリングを抑制するためには音響信号では、固有振動周波数帯域の信号をバンドパスフィルタ等で抑制する手段が用いられるが、触覚の伝達の場合、伝えるべき触覚情報も同じ帯域に存在するため、ゲインを下げると接触情報の質の低下を招く可能性がある。
【0007】
1つの側面では、本明細書に記載する技術は、双方向触覚伝達システムにおける接触信号のハウリング及びループバックを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの側面において、双方向触覚伝達システムは、触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する触覚伝達システムであって、前記触覚伝達装置において発生した振動を計測する振動計測部と、前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させる信号出力部と、を備え、前記変換部は、前記振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる。
また、別の1つの側面において、双方向触覚伝達システムは、触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する触覚伝達システムであって、前記触覚伝達装置において発生した振動を計測する振動計測部と、前記振動計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記他の触覚伝達装置の振動子に出力振動として出力させる信号出力部と、を備え、前記変換部は、前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面として、双方向触覚伝達システムにおける接触信号のハウリング及びループバックを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における双方向触覚伝達システムのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】(a),(b)は
図1に示した双方向触覚伝達システムのソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】(a)は
図2に示した信号入力処理部の第1の例を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部の第1の例を示すブロック図である。
【
図4】(a)は
図2に示した信号入力処理部の第2の例を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部の第2の例を示すブロック図である。
【
図5】(a)は
図2に示した信号入力処理部の第3の例を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部の第3の例を示すブロック図である。
【
図6】(a)~(c)は
図3,
図4に示した周波数変換部による周波数変換処理を説明するためのグラフである。
【
図7】スルーアウトプット(信号を無処理で出力したとき)での振幅の計測結果を例示するグラフである。
【
図8】
図1に示した双方向触覚伝達システムにおいてIntensity Segment Modulation(ISM)を利用した場合のハウリングの抑制結果を例示するテーブルである。
【
図9】(a)はスルーアウトプットの場合の出力振動の計測結果を例示するグラフであり、(b)はISMを利用した場合の出力振動の計測結果を例示するグラフである。
【
図10】環境設置型の振動入出力デバイスの第1の例を示す図である。
【
図11】環境設置型の振動入出力デバイスの第2の例を示す図である。
【
図12】環境設置型の振動入出力デバイスの第3の例を示す図である。
【
図13】リストバンド型の振動入出力デバイスを示す図である。
【
図14】抱き枕型の振動入出力デバイスを示す図である。
【
図15】ツール取り付け型の振動入出力デバイスを示す図である。
【
図16】実施形態としての端末の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図17】(a)~(c)はISM処理を簡単に説明するグラフである。
【
図18】ヒトによる振動の弁別可能性を示すグラフである。
【
図19】
図18に示したグラフで示されている弁別可能性を判断するために実施した強制三選択肢弁別実験で使用した振動のサンプル波形である。
【
図20】
図16に示した端末によるセグメント毎の変換前後の信号の波形を示すグラフである。
【
図21】補正エネルギーの計算に用いられる振幅閾値Tfを表すグラフである。
【
図22】補正エネルギーの計算に用いられる指数閾値bを表すグラフである。
【
図23】
図16に示した端末における窓関数の利用を説明する図である。
【
図24】
図16に示した端末における低周波と高周波との合成例を説明するグラフである。
【
図25】
図16に示した端末による変換前後の信号の波形の具体例を示すグラフである。
【
図26】
図16に示した端末におけるISM部の機能構成例を説明するブロック図である。
【
図27】
図16に示した端末における振動波形の生成処理の第1の実施例を説明するブロック図である。
【
図28】
図26に示したエネルギー制御処理の詳細を説明するブロック図である。
【
図29】
図16に示した端末における振動波形の生成処理の第2の実施例として、
図26に示したエネルギー制御処理における低周波成分の分離処理を説明するブロック図である。
【
図30】(a)~(c)は波形を強調せずにISMに従い振動を生成する例を説明するグラフである。
【
図31】(a)~(c)は音源から3000Hz以上の高周波成分を強調して分離する第1の例を説明するグラフである。
【
図32】(a)~(c)は音源から3000Hz以上の高周波成分を強調して分離する第2の例を説明するグラフである。
【
図33】(a)~(c)は音源から1000Hz以下の低周波成分を強調して分離する例を説明するグラフである。
【
図34】
図26に示したエネルギー制御処理の第1変形例を説明するブロック図である。
【
図35】
図26に示したエネルギー制御処理の第2変形例を説明するブロック図である。
【
図36】
図26に示したエネルギー合成処理の詳細を説明するブロック図である。
【
図37】
図26に示した補正した振動波形の生成処理の詳細を説明するブロック図である。
【
図38】
図1に示した双方向触覚伝達システムにおいて複数の振動装置を用いる場合のDACの構成例を示すブロック図である。
【
図39】
図1に示した双方向触覚伝達システムにおいて単一の振動装置を用いる場合のDACの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0012】
また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の構成要素を含むことができる。以下、図中において、同一の符号を付した部分は特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を示す。
【0013】
〔A〕実施形態
〔A-1〕触覚の双方向伝達処理
【0014】
図1は、実施形態における双方向触覚伝達システム100のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0015】
双方向触覚伝達システム100は、例示的に、2つの端末1(別言すれば、触覚伝達装置),2つのUniversal Serial Bus(USB)オーディオInterface(I/F)2,2つの振動入出力デバイス3(振動入出力デバイス#1,#2)及び2つのアンプ4を備える。2つの振動入出力デバイス3は、それぞれ、振動センサ31(別言すれば、振動計測部)及びバイブレータ32(別言すれば、振動子)を備える。
【0016】
図1において、実線矢印は振動入出力デバイス#2で発生した振動が振動入出力デバイス#1へ伝えられる際の信号の流れを示し、破線矢印は振動入出力デバイス#1で発生した振動が振動入出力デバイス#2へ伝えられる際の信号の流れを示す。
【0017】
振動センサ31は、振動を計測し、USBオーディオI/F2を介して信号を端末1へ伝送する。端末1は、ISM処理又はスルーアウトプット処理を実行して、遠隔地の他の端末1へ信号を伝送する。遠隔地の端末1は、USBオーディオI/F2及びアンプ4を介して、伝送された信号から生成した振動をバイブレータ32へ出力する。なお、3組以上の端末1,USBオーディオI/F2,振動入出力デバイス3及びアンプ4が備えられることにより、3者間以上において触覚が伝達されてもよい。また、触覚の伝達を体感したくないユーザのために、バイブレータ32による振動の出力をオフにするミュート機能が備えられてもよい。
【0018】
なお、ISMの詳細については、
図17~
図39等を用いて後述する。
【0019】
図2の(a),(b)は、
図1に示した双方向触覚伝達システム100のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0020】
双方向触覚伝達システム100は、
図2の(a),(b)に示すように、拠点#1,#2のそれぞれにおいて、振動計測部211,信号増幅部212,信号入力処理部213,信号送信部214,信号受信部215,信号出力処理部216,信号増幅部217及び振動提示部218として機能する。
【0021】
振動計測部211及び信号増幅部212としての機能は
図1に示した振動センサ31によって実現され、信号入力処理部213としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2及び
図16を用いて後述する端末1のCPU11によって実現され、信号送信部214としての機能は
図16を用いて後述する端末1の通信I/F(不図示)によって実現されてよい。また、信号受信部215としての機能は
図16を用いて後述する端末1の通信I/F(不図示)によって実現され、信号出力処理部216としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2及び
図16を用いて後述する端末1のCPU11によって実現され、信号増幅部217としての機能は
図1に示したアンプ4によって実現され、振動提示部218としての機能は
図1に示したバイブレータ32によって実現される。
【0022】
振動計測部211は、ユーザが接触する筐体における振動を計測する。信号増幅部217は、振動計測部211によって計測された信号を増幅させる。信号入力処理部213は、
図3~
図5等を用いて後述する信号処理を実施する。信号送信部214は、信号入力処理部213によって処理が施された信号を他の拠点へ送信する。触覚信号は、映像・音声と同期して送信してもよい。また、触覚信号は、動画等の音声チャンネルに含めて伝達してもよい。
【0023】
信号受信部215は、他の拠点から送信された信号を受信する。信号出力処理部216は、信号受信部215によって受信された信号に対して、
図3~
図5等を用いて後述する信号処理を実施する。信号増幅部217は、信号出力処理部216によって処理が施された信号を増幅させる。振動提示部218は、信号増幅部217によって増幅された信号に応じてユーザが接触する筐体を振動させる。
【0024】
図3の(a)は
図2に示した信号入力処理部213の第1の例を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部216の第1の例を示すブロック図である。
【0025】
信号入力処理部213は、
図3の(a)に示すように、AD変換部2131,バンドストップフィルタ2132,イコライザ2133及び周波数変換部2134としての機能を備える。また、信号出力処理部216は、
図3の(b)に示すように、バッファリング2161及びDA変換部2162としての機能を備える。
【0026】
AD変換部2131としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現され、バンドストップフィルタ2132,イコライザ2133及び周波数変換部2134としての機能は
図16を用いて後述する端末1のCPU11において実現されてよい。バッファリング2161としての機能は
図16を用いて後述する端末1のメモリ12又は通信I/F(不図示)において実現され、DA変換部2162としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現されてよい。
【0027】
送信側において、AD変換部2131によってアナログ信号がデジタル信号に変換され、バンドストップフィルタ2132によって振動提示に利用する周波数帯が除去され、イコライザ2133によって特定の帯域の信号が強調され、周波数変換部2134によって周波数変換が行われた後に、提示振動が受信側へ送信される。なお、イコライザ2133は省略されてよい。
【0028】
受信側において、バッファリング2161によって受信された提示振動がバッファされ、DA変換部2162によって提示振動のデジタル信号がアナログ信号に変換される。
【0029】
図4の(a)は
図2に示した信号入力処理部213の第2の例(符号213a参照)を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部216の第2の例(符号216a参照)を示すブロック図である。
【0030】
信号入力処理部213aは、
図4の(a)に示すように、AD変換部2131,バンドストップフィルタ2132及びイコライザ2133としての機能を備える。また、信号出力処理部216aは、
図4の(b)に示すように、バッファリング2161,DA変換部2162及び周波数変換部2163としての機能を備える。
【0031】
AD変換部2131としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現され、バンドストップフィルタ2132及びイコライザ2133としての機能は
図16を用いて後述する端末1のCPU11において実現されてよい。周波数変換部2163としての機能は
図16を用いて後述する端末1のCPU11において実現され、バッファリング2161としての機能は
図16を用いて後述する端末1のメモリ12において実現され、DA変換部2162としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現されてよい。
【0032】
送信側において、AD変換部2131によってアナログ信号がデジタル信号に変換され、バンドストップフィルタ2132によって振動提示に利用する周波数帯が除去され、イコライザ2133によって特定の帯域の信号が強調されて、信号が受信側へ送信される。なお、イコライザ2133は省略されてよい。
【0033】
受信側において、周波数変換部2163によって受信された信号に対して周波数変換が行われ、バッファリング2161によって周波数変換された提示振動がバッファされ、DA変換部2162によって提示振動のデジタル信号がアナログ信号に変換される。
【0034】
図5の(a)は
図2に示した信号入力処理部213の第3の例(符号213b参照)を示すブロック図であり、(b)は
図2に示した信号出力処理部216の第3の例を(符号216b参照)示すブロック図である。
【0035】
信号入力処理部213bは、
図5の(a)に示すように、AD変換部2131,バンドストップフィルタ2132,イコライザ2133及びインテンシティ算出部2135としての機能を備える。また、信号出力処理部216bは、
図5の(b)に示すように、バッファリング2161,DA変換部2162及び振動波形生成部2164としての機能を備える。
【0036】
AD変換部2131としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現され、バンドストップフィルタ2132,イコライザ2133及びインテンシティ算出部2135としての機能は
図16を用いて後述する端末1のCPU11において実現されてよい。振動波形生成部2164としての機能は
図16を用いて後述する端末1のCPU11において実現され、バッファリング2161としての機能は
図16を用いて後述する端末1のメモリ12において実現され、DA変換部2162としての機能は
図1に示したUSBオーディオI/F2において実現されてよい。
【0037】
送信側において、AD変換部2131によってアナログ信号がデジタル信号に変換され、バンドストップフィルタ2132によって振動提示に利用する周波数帯が除去され、イコライザ2133によって特定の帯域の信号が強調され、インテンシティ算出部2135によって振動インテンシティの算出が行われた後に、信号が受信側へ送信される。振動インテンシティは波形信号と比較して100Hz程度の更新レートでよいため、通信量を削減する効果がある。なお、イコライザ2133は省略されてよい。
【0038】
受信側において、振動波形生成部2164によって受信された振動インテンシティに基づいて振動の生成が行われ、バッファリング2161によって周波数変換された提示振動がバッファされ、DA変換部2162によって提示振動のデジタル信号がアナログ信号に変換される。
【0039】
次に、以下の(1)~(3)において、周波数変換部2134,2163による周波数変換処理について説明する。
【0040】
(1)周波数変換処理例I
図6の(a)~(c)は、
図3,
図4に示した周波数変換部2134,2163による周波数変換処理を説明するためのグラフである。
【0041】
周波数変換部2134,2163は、包絡線(別言すれば、知覚情報)を維持して振幅変調波で提示する。
図6の(a)には元信号v0(t)が示され、
図6の(b)には元信号の上限と下限の包絡線信号eup(t), elow(t)がそれぞれ点線で示され、
図6の(c)には
図6の(b)の包絡線で内包されるように生成した振幅変調波vam(t)が示されている。振幅変調波vam(t)は、次式で表される。
【数1】
【0042】
ここで、A(t)は振幅変調波の振幅であり、fは提示する振幅変調波のキャリア周波数であり、voff(t)は振幅変調波のオフセットである。
【0043】
キャリア周波数fは元の信号の周波数成分と、異なる周波数で選定される。fはヒトが感じやすい150~400Hz程度の周波数を選ぶとよい。これにより元信号の包絡線の変動を感じることができる。
【0044】
(2)周波数変換処理例II
周波数変換部2134,2163は、刺激の等価主観的強度でマッピングを行って周波数変換処理を実施してよい。周波数f,振幅Aの振動の主観的強度が関数S(A, f)で求まるとする。元信号の振動の代表周波数f0が同定できるとき,主観的強度S(A0, f0)と、周波数変化後の振動の主観的強度S(A, f)が等価になるように振幅Aが求められる。等価となる主観的強度関数は、例えば、マグニチュード・バランス法によって得られる振動の等感曲線を用いてもよい。
【0045】
(3)周波数変換処理例III
周波数変換部2134,2163は、以下の数2で表される知覚インテンシティのみを利用して周波数変換処理を実施してもよい。次式を用いて、元信号の代表周波数f0の知覚インテンシティを求め、周波数変換後の振動の知覚インテンシティが等価になるように振幅Aを求める。
【数2】
【0046】
ここで、Aは振幅であり、Tfは周波数fにおける振幅閾値であり、bfは周波数fに依存する指数値である。
【0047】
ISMは、時間分割した知覚インテンシティを利用する方法であり、上述した周波数変換部2134,2163における処理に時間分割処理を加えたものであってよい。
【0048】
図7は、スルーアウトプットでの振幅の計測結果を例示するグラフである。
【0049】
図1に示した双方向触覚伝達システム100において、以下の条件により、ハウリングの検証を実施した。
センサ:圧電式振動センサVS-BV203
バイブレータ:Audio Exciter TEAX09C005-8
USBオーディオ:OCTA-CAPTURE
アンプ:SA-36A PRO
デバイス:縦100 mm、横 150 mmのマット加工したポリスチレンボード
【0050】
スルーアウトプットの場合には、
図7に示すように、ハウリングが確認された。一方、ISM処理を実施した場合には、スルーアウトプットの場合よりセンサ感度を上げてもハウリングは発生しなかった。すなわち、周波数変調が振動ハウリングに有効であることが確認された。
【0051】
図8は、
図1に示した双方向触覚伝達システム100においてISMを利用した場合のハウリングの抑制結果を例示するテーブルである。
【0052】
ISMで変換後の変調周波数(fm)を変化させてハウリングが生じるか検証した。板の固有周波数は約500Hzであり、fmは200~1000Hzである。
【0053】
図8において、〇は振動を加えても発振しないことを示し、△は少し振動を加えると発振することを示し、×は振動を加えなくても自励することを示す。
【0054】
fmと板の固有周波数を等しくしたとき、板を触らなくてもわずかな振動でハウリングが生じることが確認された。また、固有周波数の高調波である2倍の時は、板に振動を加えるとハウリングが生じることが確認された。一方、他の周波数では板に振動を加えてもハウリングが起きないことが確認された。すなわち、ISMで固有周波数から離れた周波数に振動を変換することでハウリングが対策できることが確認された。
【0055】
図9の(a)はスルーアウトプットの場合の出力振動の計測結果を例示するグラフであり、(b)はISMを利用した場合の出力振動の計測結果を例示するグラフである。
【0056】
ISMでは振動を任意のキャリア周波数に変換できる。センサの計測値にISMのキャリア周波数成分を除去するフィルタをかけることで振動子が引き起こす振動を除去する。
【0057】
ISMで変換後の周波数は200Hzとし、バンドストップフィルタ2132で200Hzの周波数を除去し、初期振動としてインパルス波形を提示した。
【0058】
図9の(a)に示すように、スルーアウトプットの場合には、符号G1に示す初期振動が減衰しながら符号G2,G3に示すループバックが複数回繰り返された。一方、
図9の(b)に示すように、ISMの場合には、符号G4に示す初期振動の後、ループバックは生じなかった。これにより、ISM処理とフィルタ処理との組み合わせがループバックに有効であることが確認された。
【0059】
ここから、
図10~
図15を用いて、振動入出力デバイス3,3a~3eの具体例を説明する。
【0060】
図10は、環境設置型の振動入出力デバイス3の第1の例を示す図である。
【0061】
図10に示す振動入出力デバイス3において、接触板301の背面には、振動センサ31及びバイブレータ32(別言すれば、振動子)が配置される。
【0062】
ユーザが接触板301に触れることで、振動入出力デバイス3は触覚の検出と提示を行う。接触板301の背面の2辺に沿うように直方体状の2本の固定部302が取り付けられ、固定部302よって机やノートパソコン型の端末1,キーボード(不図示)等に固定されてよい。接触板301は両端部を固定し、中間部を浮かせることで、前面を揺れやすい構造にしてもよい。接触板301に重ね合わせるように映像を投影し、伝達相手の映像等を表示してもよい。
【0063】
図11は、環境設置型の振動入出力デバイス3aの第2の例を示す図である。
【0064】
図11に示す振動入出力デバイス3aは、
図10に示した振動入出力デバイス3と同様に、接触板301が2本の固定部302よって固定される。振動入出力デバイス3aは、1つの振動センサ31及び複数(図示する例では4つ)のバイブレータ32を接触板301の背面に備える。また、手の位置をステレオカメラでトラッキングするデプスカメラなどにより、接触位置を検出する接触位置検知用センサ33(別言すれば、接触位置検出センサ)を別途に配置してよい。すなわち、
図1に示した振動入出力デバイス3において、接触位置検知用センサ33が追加で配置されてよい。
【0065】
このように、接触位置検知用センサ33による検出結果に基づき、振動の移動感覚がバイブレータ32に出力されてよい。例えば、接触位置検知用センサ33において検出された接触板301における接触位置に関する情報(例えば、座標情報)に基づき、振動が受信側の振動入出力デバイス3aの複数のバイブレータ32に分配して出力される。複数のバイブレータ32を配置することで、通信相手の接触位置に応じて各バイブレータ32の振動強度や刺激時間差を調整して、仮想的に接触対象の移動感を表現できる。
【0066】
図12は、環境設置型の振動入出力デバイス3bの第3の例を示す図である。
【0067】
図12に示す振動入出力デバイス3cは、
図10及び
図11に示した振動入出力デバイス3,3aと同様に、接触板301が2本の固定部302よって固定される。振動入出力デバイス3cは、複数(図示する例では4つ)の振動センサ31及び複数(図示する例では4つ)のバイブレータ32を接触板301の背面に備える。
【0068】
複数の振動センサ31を設けることにより、入力強度差により接触位置が推定され、複数の振動センサ31それぞれからの入力に基づき振動の移動感覚がバイブレータ32に出力されてよい。また、複数のバイブレータ32を設けることにより、接触板全面を揺らすことも可能である。さらに、通信相手の接触位置に応じて、各振動の振動強度や時間差を調整することで、仮想的に接触対象の移動感を表現することができる。
【0069】
図13は、リストバンド型の振動入出力デバイス3cを示す図である。
【0070】
図13に示す振動入出力デバイス3cは、ユーザが手首に装着するリストバンドの内面に、複数の振動センサ31及び複数のバイブレータ32を備える。なお、振動入出力デバイス3cは、ユーザが装着可能な種々のウェアラブルデバイスであってよい。
図13においては振動センサ31及びバイブレータ32が2つずつ明示されているが、振動センサ31及びバイブレータ32は、ユーザの手首を取り巻くように複数備えられてよく、例えば上下左右方向に4つずつ備えられてよい。
【0071】
振動センサ31を手首付近に装着し、物体への接触によりユーザの手先から伝播する振動を計測する。振動センサ31を複数用いることで、腕の部位による振動の違いを取得することができる。バイブレータ32も手首付近に装着し、通信相手から伝えられる振動を提示する。バイブレータ32を複数用いることで、部位による振動の違いを表現できる。
【0072】
図14は、抱き枕型の振動入出力デバイス3dを示す図である。
【0073】
図14に示す振動入出力デバイス3dは、ユーザの身体に接触可能又はユーザが把持可能な抱き枕やクッション等に、振動センサ31及びバイブレータ32が配置される。なお、振動センサ31及びバイブレータ32の数は、種々変更できる。振動入出力デバイス3dは、ユーザの腹部や脚部等の大面積に接触して、振動センサ31によってユーザの身体の振動を計測すると共に、バイブレータ32によってユーザの身体に振動を伝えることができる。なお、ユーザが把持可能なデバイスとして、ハンドヘルドのコントローラに振動センサ31及びバイブレータ32が配置されてもよい。
【0074】
図15は、ツール取り付け型の振動入出力デバイス3eを示す図である。
【0075】
図15に示す振動入出力デバイス3eは、レンチやドライバ等のユーザが把持可能なツールに、振動センサ31及びバイブレータ32が配置される。なお、振動センサ31及びバイブレータ32の数は、種々変更できる。振動センサ31によってツールに伝播する振動が計測され、ツールにバイブレータ32を取り付けて手が刺激され、刺激を双方向に伝達することで遠隔地のユーザに操作感等を伝え、リモートでの技術指導等を実施することができる。
【0076】
なお、
図10~
図15にそれぞれ示した振動入出力デバイス3,3a~3eにおいては、バイブレータ32における変換後の信号の出力と同時に、音、映像又は光の少なくともいずれかを出力してもよい。
【0077】
〔A-2〕端末
図16は、実施形態としての端末1の構成例を模式的に示すブロック図である。
【0078】
端末1は、Central Processing Unit(CPU)11,メモリ12及び記憶装置13を備える。
【0079】
メモリ12は、Read Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)を含む記憶装置である。
【0080】
記憶装置13は、データを読み書き可能に記憶する装置であり、例えば、Hard Disk Drive(HDD)やSolid State Drive(SSD),Storage Class Memory(SCM)が用いられてよい。記憶装置13は、生成した教師データや学習モデル等を記憶する。
【0081】
CPU11は、種々の制御や演算を行なう処理装置であり、メモリ12に格納されたOperating System(OS)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。すなわち、CPU11は、
図16に示すように、算出部113A,変換部114A及び信号出力部115Aとして機能してよい。
【0082】
CPU11は、コンピュータの一例であり、例示的に、端末1全体の動作を制御する。端末1全体の動作を制御するための装置は、CPU11に限定されず、例えば、MPUやDSP,ASIC,PLD,FPGA,専用プロセッサのいずれか1つであってもよい。また、端末1全体の動作を制御するための装置は、CPU,MPU,DSP,ASIC,PLD,FPGA及び専用プロセッサのうちの2種類以上の組み合わせであってもよい。なお、MPUはMicro Processing Unitの略称であり、DSPはDigital Signal Processorの略称であり、ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略称である。また、PLDはProgrammable Logic Deviceの略称であり、FPGAはField Programmable Gate Arrayの略称である。
【0083】
算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動から特定される知覚情報を算出する。算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動から特定される包絡線を知覚情報として算出よい。算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動の波形から、刺激の主観的強度を知覚情報として算出してよい。算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動から特定される知覚インテンシティ(別言すれば、信号のエネルギー)を知覚情報として算出してよい。算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動に関する信号を所定時間毎に分割し、分割された所定時間毎に知覚インテンシティを算出してよい。
【0084】
変換部114は、算出部113Aによって算出された知覚情報を維持しながら、振動に関する信号を所定の周波数に変換する。変換部114Aは、振動入出力デバイス3の筐体の共振周波数以外の別の周波数に信号を変換してよい。変換部114Aは、算出部113Aによって算出された包絡線を維持しながら、振動に関する信号を所定の周波数がキャリア周波数となるように変換された振幅変調信号として出力してよい。変換部114Aは、算出部113Aによって算出された主観的強度を維持するように、所定の等価主観的強度マップを利用して振動に関する信号を所定の周波数に変換してよい。変換部114Aは、算出部113Aによって算出された知覚インテンシティを維持しながら、振動に関する信号を別の周波数をもつ波形に変換してよい。変換部114Aは、信号の周波数成分のうち特定の周波数帯域の信号については知覚インテンシティを調整して波形の変換を行う一方、特定の周波数帯域以外の信号については知覚インテンシティを維持しながら別の周波数をもつ波形に変換を行ってよい。変換部114Aは、特定の信号特徴量に基づいて抽出された信号については知覚インテンシティを調整して波形の変換を行う一方、特定の特徴量で抽出されない信号については知覚インテンシティを維持しながら別の周波数をもつ波形に変換を行ってよい。変換部114Aは、バイブレータ32において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させてよい。なお、フィルタ処理は、
図3~
図5に示したバンドストップフィルタ2132によって実現されてよい。
【0085】
信号出力部115Aは、変換部114Aによって変換された変換後の信号を、他の振動入出力デバイス3のバイブレータ32に出力振動として出力させる。信号出力部115Aは、変換部114Aによって変換された振幅変調信号を、他の振動入出力デバイス3のバイブレータ32に出力してよい。
【0086】
なお、算出部113A,変換部114A及び信号出力部115Aとしての機能のうち、算出部113Aのみの組み合わせと、算出部113A及び変換部114Aの組み合わせと、算出部113A,変換部114A及び信号出力部115Aの組み合わせとのいずれかが、送信側の端末1に備えられてよい。また、算出部113A,変換部114A及び信号出力部115Aとしての機能のうち、信号出力部115Aのみの組み合わせと、変換部114A及び信号出力部115Aの組み合わせと、算出部113A,変換部114A及び信号出力部115Aの組み合わせとのいずれかが、受信側の端末1に備えられてもよい。
【0087】
〔A-3〕ISM
図17の(a)~(c)は、
図1に示した知覚インテンシティの分配処理に用いるISM処理を簡単に説明するグラフである。
【0088】
ISMは、高周波振動の触感を維持して低周波に変調する手法である。
図17の(a)に示す元の信号が変換されて、
図17の(b)に示すセグメントごとの振動インテンシティが計算される。そして、振動インテンシティを維持して、
図17の(c)に示す変換後の波形が生成される。
【0089】
図17において、変換前は400~600Hzの振動であるのに対して変換後は200Hzの波形であるが、変換後の波形としては任意の周波数を選択可能である。
【0090】
高周波成分信号の生成において、分配した知覚インテンシティと等価となる振動波形が生成される。簡易的には、各バイブレータ32の波形は同じ周波数をもつため、分配係数から求めるゲイン値を元波形に乗じて駆動してもよい(後述する低周波数成分と同じ方法)。しかし、一般に、触覚用のバイブレータ32は、応答周波数帯域が狭く、任意の振動波形をそのまま生成することが困難である。また、音響信号を振動源の波形として利用する場合、可聴域の周波数を含むため、バイブレータ32で駆動すると騒音が発生する問題がある。
【0091】
そこで、分配された知覚インテンシティIk を生成するように、適切なキャリア周波数をもつ振幅変調波に変換する。これにより、生成する信号のキャリア周波数が1つになる。キャリア周波数は、振動子の周波数応答特性に合わせて選定することができる。キャリア周波数は、ヒトの高周波振動の知覚特性を考慮すると、150~400Hzの範囲が適切である。
【0092】
高周波振動に対するヒトの知覚特性を考慮し、高周波帯域においては波形そのものではなく、ヒトの知覚特性に相関がある振動エネルギーに着目して、同等な振動エネルギーを持つ別の波形に置き換えることで、周波数帯域を変更可能とする。
【0093】
連続する任意の振動信号に対して、ヒトの知覚特性を考慮した適切な間隔で時間分割し、分割したセグメント毎に振動エネルギーに変換することで、ヒトが感じる触覚を同等に保ったまま、或いは、感じにくい高周波帯域を感じられるように、任意の信号波形に変換することを可能にする。
【0094】
変換後の振動の周波数を適切に選択することで、振動子の応答レンジに合わせて効率的に駆動したり、聴覚ノイズを低下させたり、任意の音源に変換させたりすることが可能になる。
【0095】
ヒトの振動に対する知覚は1kHz程度までであると言われている。そのため、1kHz以上の振動は無視されることが多い。一方、1kHz以上の振動であっても、その振幅がヒトによって感じられる程度の帯域で変動する振幅変調波の場合は、その包絡線成分を知覚し得ることが知られている。
【0096】
一方、ヒトの振動の100Hz程度以上の高周波振動に対する知覚特性として、振動エネルギーモデルが知られている。このことから、高周波振動エネルギーを保ったまま振幅変調波のキャリア周波数を置き換えても振動を分別できないことが判っている。しかし、振動エネルギーを保ったとしても、上述したように、振動の包絡成分が触覚情報の違いとして知覚できる場合があり、その知覚範囲は調査されていなかった。また、時間分割で振動エネルギーに基づいて信号を変換する方法が考案されているものの、低周波成分を維持する方法については検討されていない。
【0097】
図18は、ヒトによる振動の弁別可能性を示すグラフである。
図19は、
図18に示したグラフで示されている弁別可能性を判断するために実施した強制三選択肢弁別実験で使用した振動のサンプル波形である。
【0098】
従来から知られている振動エネルギーモデルを前提とし、振動エネルギーを保ったままで、ヒトの知覚分別特性を調査すると
図18に示すグラフが得られる。
図19の符号B1と符号B2とは同じ波形を示しており、
図19の符号B3は異なる波形を示している。被験者に対して、
図19の符号B1及びB2に示す一定振幅振動と符号B3に示す振幅変調刺激とを比較させ、振幅変調波がどれかを答えさせる。
図18においては強制三選択肢弁別実験で得られた正答率が、信号検出理論に基づく弁別性能指標であるSensitivity(d’: d-prime)で表されており、d’が1以下になると正答率が約6割を下回ることを意味している。
【0099】
図18に示すグラフによれば、包絡線成分を弁別可能な周波数の上限値は80~125Hz程度である。また、この周波数上限値以上の包絡成分は保つ必要が無く、振動エネルギーを保ったまま振幅変調波のキャリア周波数を置き換えていれば刺激を分別できないことを示している。
【0100】
前述のように、振動エネルギーを保ったとしても、エネルギーが低周波域で変動する場合は、その変動が触覚情報の違いとして知覚できる場合があり、その知覚範囲は調査されていなかった。そこで、知覚できる低周波の変動の上限値が80~125Hz程度にあることが発見されたことに基づき、2つの対策(後述する対策[1]及び対策[2]を参照)により低周波成分を維持しながら、振動エネルギーの変換を行なうこととする。
【0101】
図20は、
図16に示した端末1によるセグメント毎の変換前後の信号の波形を示すグラフである。
【0102】
ヒトの高周波知覚は、波形そのものよりも振動エネルギーに基づいているため、振動エネルギーを保てば同じ感覚と感じられる。ただし、振動エネルギーの変動が80~125Hz程度以下で起こっている場合は、その振動エネルギーの変動を再現する必要がある。
【0103】
そこで、本実施形態の一例では、所定の周波数(例えば、80~125Hz程度)以下の振動エネルギーの変動を維持する手段として、例えば、80~200Hz程度の区間で、振動を時間分割し、セグメント毎に振動エネルギーを求め、異なりキャリア周波数をもつ振動に置換する。
【0104】
図20に示す例では、符号C1に示す元の振動信号と、符号C2に示す変換後の信号とにおいて、同じ時間セグメント内で、変換後の信号のエネルギーが元の振動信号のエネルギーと同じになるように変換されている。
【0105】
時間分割の幅(別言すれば、分割幅)は、80~125Hz以下のエネルギー変動が表現できる程度(別言すれば、変動の山が合う程度)に設定されればよい(対策[1])。分割幅の周波数は、80~125Hz以上であってもよいが、分割幅を短くし過ぎると分割幅よりも長い周期の振動エネルギーの推定精度が悪くなる。そこで、下記の対策[2]によって、エネルギーを推定できない振動は波形をそのまま出力する。
【0106】
また、所定の周波数以下の成分を取り出して、そのまま刺激振動として提示してもよい(対策[2])。なお、所定の周波数は80~125Hz以上であってもよいが、所定の周波数成分以上の成分は、第2信号成分のエネルギー制御部113によって表現されてもよい。これにより、周波数選択に任意性を持たせることができる。ただし、所定の周波数を高周波に設定しすぎると、騒音の問題が発生したり、広帯域のバイブレーション装置が必要になったりするおそれがある。
【0107】
上記対策[1]及び対策[2]によれば、所定の周波数は、80~400Hz程度であってもよい。400Hzは、騒音問題とバイブレーション装置の性能の観点からの上限である。
【0108】
所定の周波数の設定には、振動を変換する際のキャリア周波数の選定も関わる。ヒトの知覚感度が良くなる振動周波数のピークは200~250Hzあたりにあることから、感度を高めつつ、騒音にならないキャリア周波数としては、150~400Hz程度が実用的である。キャリア周波数は、分割幅の定数倍であってよい。また、キャリア周波数は異なる周波数を複数用いてもよく、400Hz以上の高周波域を含めてもよい。
【0109】
また、低周波と高周波とを分ける所定周波数と、エネルギーを計算する分割幅の周波数とは、必ずしも一致させなくてもよい。
【0110】
ヒトの知覚可能性を向上されるために補正された振動エネルギーである補正エネルギーは、次の式で表せる。
【0111】
【数3】
Aは、分離された基底信号gkの振幅である。Tfは、振幅閾値であり、周波数fの信号においてヒトが感じられる最小の振幅である。bfは、指数値であり、周波数fの信号における非線形特性である。
【0112】
図21は、補正エネルギーの計算に用いられる振幅閾値Tfを表すグラフである。
【0113】
図21に示すように、振幅閾値は周波数によって異なり、およそ102~103Hzの範囲では比較的小さな振幅でもヒトが感じることができるが、それ以外の範囲では比較的大きな振幅でなければヒトが感じることができない。
【0114】
図22は、補正エネルギーの計算に用いられる指数値bfを表すグラフである。
【0115】
図22の指数値bfは、従来報告されている400Hz以下の指数値bfを線形補間した値を用いる例である。
【0116】
図23は、
図16に示した端末1における窓関数の利用を説明する図である。
【0117】
符号D1に示すように、高域信号H(t)が入力される。符号D2に示すように、高域信号H(t)がフレームi,i+1,i+2,・・・毎に信号hi,hi+1,hi+2,・・・としてそれぞれフレーム分割される。符号D3に示すように、分割された各フレームの信号hが、複数の基底信号g1,g2,g3・・・に分離される。符号D4に示すように、基底信号g1,g2,g3・・・がもつ周波数f1,f2,f3・・・に基づき、全ての基底信号g1,g2,g3・・・の補正エネルギーを合成したスカラ値Ei,Ei+1,Ei+2,・・・が出力される。符号D5に示すように、各フレームiで算出された振動エネルギーのスカラ値Ei,Ei+1,Ei+2,・・・が、同等の振動エネルギーを持つが別のキャリア周波数を持つ振動波形に変換され、その波形の振幅ai(t),ai+1(t),ai+2(t),・・・に対して窓関数を用いた窓掛け処理が実施される。符号D6に示すように、1~N番目のフレームについてフレーム合成が行なわれ、振動波形の振幅A(t)が出力される。符号D7に示すように、振幅がA(t)となるようなキャリア周波数をもつ第2振動波形S2(t)が出力される。
【0118】
図24は、
図16に示した端末1における低周波と高周波との合成例を説明するグラフである。
【0119】
図23の窓関数を利用して高域信号H(t)から生成した符号E1に示す第2振動波形S2(t)は、低域信号L(t)をそのまま出力した符号E2に示す第1振動波形S1(t)と合成される。これにより、符号E3に示す、合成波形S1(t)+S2(t)が出力される。
【0120】
図25は、
図16に示した端末1による変換前後の信号の波形の具体例を示すグラフである。
【0121】
図25においては、バイオリンの音の変換前の波形(符号F1参照)と変換後の波形(符号F2参照)とが、時間毎の振幅によって表されている。
【0122】
バイオリンのような高周波振動の音は、従来の触覚振動では聴覚ノイズが大きく発生してしまい、またローパスフィルタをかけるとヒトが認知できる振動が消えてしまう。そこで、波形が時間毎に低周波のキャリア周波数をもつ単一波長となるように、補正エネルギーが算出される。
【0123】
図26は、
図16に示した端末1におけるISM部1000の機能構成例を説明するブロック図である。
【0124】
ISM部1000は、時間分割制御部112,エネルギー制御部113,エネルギー振動変換部114a及び振動生成部114bとして機能する。本実施形態では、ISM部1000によって、バイブレータ32による100Hz程度以上の高周波成分を含む振動を信号によって制御する。本発明の100Hz以上の高周波成分を含む振動を制御する手法を総称してISMと呼ぶ。
【0125】
時間分割制御部112は、100Hz程度以上の高周波成分を含む振動の信号X(t)をN個のフレームに時間分割して、時間分割されたi番目のフレームの信号hiをエネルギー制御部113に入力する。なお、フレーム数Nは、所定の周期と窓掛け処理のオーバーラップ率とによって決定されてよい。
【0126】
エネルギー制御部113は、i番目のフレームの信号hiについて補正エネルギーeiを算出し、算出した補正エネルギーをエネルギー振動変換部114aに入力する。
【0127】
エネルギー振動変換部114aは、1~N番目のフレームの補正エネルギーe1~eNのそれぞれを合成した信号A(t)を生成して、第2振動生成部114bに入力する。
【0128】
振動生成部114bは、合成された信号A(t)に基づき、信号波形S(t)を出力する。
【0129】
図16に示した端末1における振動波形の生成処理の第1の実施例を、
図27に示すブロック図(ステップS1~S7)に従って説明する。
【0130】
信号除去部111aは、取得された変換前の信号X(t)から所定の周波数以下の成分を除去して高域信号H(t)を生成して、時間分割制御部112に入力する(ステップS1)。
【0131】
時間分割制御部112は、高域信号H(t)をN個のフレームに時間分割して、時間分割されたi番目のフレームの信号hiをエネルギー制御部113に入力する(ステップS2)。なお、フレーム数Nは、所定の周期と窓掛け処理のオーバーラップ率とによって決定されてよい。
【0132】
エネルギー制御部113は、i番目のフレームの信号hiについて補正エネルギーeiを算出し、算出した補正エネルギーをエネルギー振動変換部114aに入力する(ステップS3)。
【0133】
エネルギー振動変換部114aは、1~N番目のフレームの補正エネルギーe1~eNのそれぞれを合成した信号A(t)を生成して、第2振動生成部114bに入力する(ステップS4)。
【0134】
第2振動生成部114bは、合成された信号A(t)に基づき、第2振動波形S2(t)を出力する(ステップS5)。
【0135】
一方、低域通過濾波器111bは、取得された変換前の信号X(t)から所定の周波数以下の成分を過濾した低域信号L(t)を第1振動生成部114cに入力する(ステップS6)。
【0136】
第1振動生成部114cは、低域信号L(t)に基づき、第1振動波形S1(t)を出力する(ステップS7)。
【0137】
次に、
図27のステップS3に示したエネルギー制御処理の詳細を、
図28に示すブロック図(ステップS11~S14)に従って説明する。
【0138】
図28に示すように、エネルギー制御部113は、基底信号分離制御部113a,周波数算出部113b,エネルギー補正パラメータ算出部113c及び補正エネルギー算出部113dとして機能する。
【0139】
基底信号分離制御部113aは、入力信号である時間分割されたi番目のフレームの信号hiを複数の基底信号gに分離し、分離されたk番目の基底信号gkを周波数算出部113bに入力する(ステップS11)。例えば、短時間フーリエ解析やウェーブレット解析,Empirical Mode Decomposition(EMD)法などによって、信号が分離されてよい。
【0140】
周波数算出部113bは、例えば離散フーリエ解析やHilbert Spectrum解析などによって、k番目の基底信号gkの周波数fkを算出し、エネルギー補正パラメータ算出部113cに入力する(ステップS12)。
【0141】
エネルギー補正パラメータ算出部113cは、周波数fkに基づき、
図21及び
図22を用いて説明した指数値bk及び振幅閾値Tkを算出し、補正エネルギー算出部113dに入力する(ステップS13)。
【0142】
補正エネルギー算出部113dは、指数値bk及び振幅閾値Tkに基づき、数3で示した数式に従って、補正エネルギーIpcを基底信号gk毎に算出し、全ての基底信号gkの補正エネルギーを合算したスカラ値eiを出力する(ステップS14)。
【0143】
次に、
図16に示した端末1における振動波形の生成処理の第2の実施例として、
図26に示したエネルギー制御処理における低周波成分の分離処理を、
図29に示すブロック図(ステップS101~S105)に従って説明する。
【0144】
図29に示すように、エネルギー制御部113は、基底信号分離制御部113a,周波数算出部113b,エネルギー補正パラメータ算出部113c及び補正エネルギー算出部113dとして機能するとともに、低周波成分合成部113gへ低周波成分を分離する機能を有してよい。
【0145】
基底信号分離制御部113aは、入力信号である時間分割されたi番目のフレームの信号hiを複数の基底信号gに分離し、分離されたk番目の基底信号gkを周波数算出部113bに入力する(ステップS101)。例えば、短時間フーリエ解析やウェーブレット解析,EMD法などによって、信号が分離されてよい。
【0146】
周波数算出部113bは、例えば離散フーリエ解析やHilbert Spectrum解析などによって、k番目の基底信号gkの周波数fkを算出し、エネルギー補正パラメータ算出部113cに入力する(ステップS102)。
【0147】
エネルギー補正パラメータ算出部113cは、周波数fkに基づき、
図21及び
図22を用いて説明した指数値bk及び振幅閾値Tkを算出し、補正エネルギー算出部113dに入力する(ステップS103)。
【0148】
補正エネルギー算出部113dは、指数値bk及び振幅閾値Tkに基づき、数3で示した数式に従って、補正エネルギーIpcを基底信号gk毎に算出し、全ての基底信号gkの補正エネルギーを合算したスカラ値eiを出力する(ステップS104)。
【0149】
低周波成分合成部113gは、基底信号gkの周波数fkが所定の周波数よりも小さい基底信号を合成し、低周波成分L(t)を生成する(ステップS105)。
【0150】
複数の周波数帯域の信号を含む音源について、特定の周波数帯域の振動エネルギーを強調して振動として提示したい場合がある。そのような場合に、予め定められた周波数帯域に存在する基底信号のエネルギーを調整して波形の変換を行なう際に適用される変形例としてのエネルギー制御部1131及び1132について、
図30~
図35を用いて説明する。
【0151】
図30の(a)~(c)は、波形を強調せずにISMに従い振動を生成する例を説明するグラフである。
図30においては、ピアノトリオの楽曲から高周波成分のシンバル(ドラム)の波形に対応する帯域と、ピアノ及びベースの波形に対応する帯域が示されている。
図30の(a)~(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は周波数[Hz]を示し、濃く表わされているスペクトルはパワーが大きく薄く表わされているスペクトルはパワーが小さいことを示す。
【0152】
図30の(a)には、音源スペクトルの分布として、破線で示す高周波成分のシンバルの波形と、一点鎖線で示す低周波成分のピアノ及びベースの波形とが示されている。
【0153】
図30の(b)には、ISMで変換した際のスペクトル分布(200Hz中心)が示されている。
図30の(b)においては、ISMの効果で、シンバル、ピアノ及びベースの全てがインテンシティとして抽出されている。
【0154】
図30の(c)には、インテンシティに基づいて200Hzの周波数をもつ信号に変換せずに、基底信号の代表周波数を用いて信号に変換する例が示されている。これによりどの周波数帯が強調されたかを可視化している。
【0155】
図31の(a)~(c)は音源から高周波成分を強調して分離する第1の例を説明するグラフである。
図31においては、ピアノトリオの楽曲から高周波成分のシンバル(ドラム)を強調して分離する例が示されている。
図31の(a)~(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は周波数[Hz]を示し、濃く表わされているスペクトルはパワーが大きく薄く表わされているスペクトルはパワーが小さいことを示す。
【0156】
図31の(a)には、音源スペクトルの分布として、破線で示す高周波成分のシンバルの波形と、一点鎖線で示す低周波成分のピアノ及びベースの波形とが示されている。
【0157】
図31の(b)には、ISMで変換した際のスペクトル分布(200Hz中心)が示されている。
図31の(b)においては、3000Hz以上のインテンシティに限って+20dB(100倍)されている。
【0158】
図31の(c)には、インテンシティに基づいて200Hzの周波数をもつ信号に変換せずに、基底信号の代表周波数を用いて信号に変換する例が示されている。これによりどの周波数帯が強調されたかを可視化している。
図31の(c)においては、シンバルのスペクトルのパワーが大きくなっている。
【0159】
図32の(a)~(c)は、音源から高周波成分を強調して分離する第2の例を説明するグラフである。
図32においては、ピアノトリオの楽曲から高周波成分のシンバル(ドラム)を強調して分離する例が示されている。
図32の(a)~(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は周波数[Hz]を示し、濃く表わされているスペクトルはパワーが大きく薄く表わされているスペクトルはパワーが小さいことを示す。
【0160】
図32の(a)には、音源スペクトルの分布として、破線で示す高周波成分のシンバルの波形と、一点鎖線で示す低周波成分のピアノ及びベースの波形とが示されている。
【0161】
図32の(b)には、ISMで変換した際のスペクトル分布(200Hz中心)が示されている。
図32の(b)においては、3000Hz以上のインテンシティが+20dB(100倍)されている一方、1000Hz以下のインテンシティが-10dB(1/10倍)されている。
【0162】
図32の(c)には、インテンシティに基づいて200Hzの周波数をもつ信号に変換せずに、基底信号の代表周波数を用いて信号に変換する例が示されている。これによりどの周波数帯が強調されたかを可視化している。
図32の(c)においては、シンバルのスペクトルのパワーが大きくなっている。
【0163】
図33の(a)~(c)は、音源から低周波成分を強調して分離する例を説明するグラフである。
図33においては、ピアノトリオの楽曲から低周波成分のピアノ及びベースを強調して分離する例が示されている。
図33の(a)~(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は周波数[Hz]を示し、濃く表わされているスペクトルはパワーが大きく薄く表わされているスペクトルはパワーが小さいことを示す。
【0164】
図33の(a)には、音源スペクトルの分布として、破線で示す高周波成分のシンバルの波形と、一点鎖線で示す低周波成分のピアノ及びベースの波形とが示されている。
【0165】
図33の(b)には、ISMで変換した際のスペクトル分布(200Hz中心)が示されている。
図33の(b)においては、1000Hz以下のインテンシティが+10dB(10倍)されている。
【0166】
図33の(c)には、インテンシティに基づいて200Hzの周波数をもつ信号に変換せずに、基底信号の代表周波数を用いて信号に変換する例が示されている。これによりどの周波数帯が強調されたかを可視化している。
図33の(c)においては、ピアノ及びベースのスペクトルのパワーが大きくなっている。
【0167】
図30~
図33に示した任意の周波数成分を強調して分離する処理は、
図1に示した双方向触覚伝達システム100においても適用可能である。すなわち、信号の周波数成分のうち特定の周波数帯域の信号についてはエネルギーを調整して波形の変換が行われる一方、特定の周波数帯域以外の信号についてはエネルギーを維持しながら別の周波数をもつ波形に変換が行われてよい。また、特定の信号特徴量に基づいて抽出された信号についてはエネルギーを調整して波形の変換が行われる一方、特定の特徴量で抽出されない信号についてはエネルギーを維持しながら別の周波数をもつ波形に変換が行われてよい。
【0168】
図26に示したエネルギー制御処理の第1変形例を、
図34に示すブロック図(ステップS41~S45)に従って説明する。
【0169】
図34に示すように、エネルギー制御部1131は、
図28に示した基底信号分離制御部113a,周波数算出部113b,エネルギー補正パラメータ算出部113c及び補正エネルギー算出部113dに加えて、ゲイン算出部113eとして機能する。
【0170】
基底信号分離制御部113aは、入力信号である時間分割されたi番目のフレームの信号hiを複数の基底信号gに分離し、分離されたk番目の基底信号gkを周波数算出部113bに入力する(ステップS41)。例えば、短時間フーリエ解析やウェーブレット解析,EMD法などによって、信号が分離されてよい。
【0171】
周波数算出部113bは、例えば離散フーリエ解析やHilbert Spectrum解析などによって、k番目の基底信号gkの周波数fkを算出し、エネルギー補正パラメータ算出部113cに入力する(ステップS42)。
【0172】
エネルギー補正パラメータ算出部113cは、周波数fkに基づき、
図21及び
図22を用いて説明した指数値bk及び振幅閾値Tkを算出し、補正エネルギー算出部113dに入力する(ステップS43)。
【0173】
ゲイン算出部113eは、算出された基底信号gkの周波数fkに応じて、予め定められた周波数帯別のゲイン値Gkを出力する(ステップS44)。エネルギーを強調したい場合にはGk>1に設定され、エネルギーを抑制したい場合には0≦Gk<1に設定される。強調又は抑制によるエネルギーの調整は、1つの周波数帯域に対して実施されてもよいし、複数の周波数帯域に対して実施されてもよい。また、エネルギーの調整は、エネルギー制御部1131に入力された周波数帯域全体に対して実施されてもよい。
【0174】
補正エネルギー算出部113dは、分離された基底信号gkの振幅Aに対して、以下の数2に示す数式に従って、ゲイン調整した補正エネルギーIpcを基底信号gk毎に算出し、全ての基底信号gkの補正エネルギーを合算したスカラ値eiを出力する(ステップS45)。
【0175】
【数4】
図26に示したエネルギー制御処理の第2変形例を、
図35に示すブロック図(ステップS51~S56)に従って説明する。
【0176】
図35に示すように、エネルギー制御部1132は、
図28に示した基底信号分離制御部113a,周波数算出部113b,エネルギー補正パラメータ算出部113c及び補正エネルギー算出部113dに加えて、ゲイン算出部113e及び信号源識別部113fとして機能する。
【0177】
基底信号分離制御部113aは、入力信号である時間分割されたi番目のフレームの信号hiを複数の基底信号gに分離し、分離されたk番目の基底信号gkを周波数算出部113bに入力する(ステップS51)。例えば、短時間フーリエ解析やウェーブレット解析,EMD法などによって、信号が分離されてよい。
【0178】
周波数算出部113bは、例えば離散フーリエ解析やHilbert Spectrum解析などによって、k番目の基底信号gkの周波数fkを算出し、エネルギー補正パラメータ算出部113cに入力する(ステップS52)。
【0179】
エネルギー補正パラメータ算出部113cは、周波数fkに基づき、
図21及び
図22を用いて説明した指数値bk及び振幅閾値Tkを算出し、補正エネルギー算出部113dに入力する(ステップS53)。
【0180】
信号源識別部113fは、設定された信号特徴に基づき、入力信号hi及びhiの履歴等から識別候補を推定し、基底信号gkがどの信号源に属するかを識別して、識別結果をID(識別子)等で出力する(ステップS54)。信号源識別部113fは、機械学習等によって予め識別器を用意しておいてもよい。例えば、ディープラーニングで多くの楽器の特徴が学習され、現在の入力信号hi(又は入力信号hiが短すぎる場合には各複数の入力信号hiの履歴)にどの楽器が含まれるか候補群(例えば、ピアノ,ベース,ドラム)が推定され、基底信号gkがどの楽器に含まれるかが識別されてよい。
【0181】
ゲイン算出部113eは、信号源識別部113fによって特定されたIDに応じて、予め定められた周波数帯別のゲイン値Gkを出力する(ステップS55)。エネルギーを強調したい場合にはGk>1に設定され、エネルギーを抑制したい場合には0≦Gk<1に設定される。強調又は抑制によるエネルギーの調整は、1つの周波数帯域に対して実施されてもよいし、複数の周波数帯域に対して実施されてもよい。また、エネルギーの調整は、エネルギー制御部1132に入力された周波数帯域全体に対して実施されてもよい。
【0182】
補正エネルギー算出部113dは、分離された基底信号gkの振幅Aに対して、数4に示した数式に従って、ゲイン調整した補正エネルギーIpcを基底信号gk毎に算出し、全ての基底信号gkの補正エネルギーを合算したスカラ値eiを出力する(ステップS56)。
【0183】
次に、
図26のステップS4に示したエネルギー合成処理の詳細を、
図36に示すブロック図(ステップS21~S23)に従って説明する。
【0184】
エネルギー振動変換部114aは、エネルギー等価変換部1141a,窓掛け処理部1142a及びフレーム合成部1143aとして機能する。
【0185】
図36に示すように、エネルギー等価変換部1141aは、各フレームiで算出された振動エネルギーのスカラ値eiを、同等の振動エネルギーを持つが別のキャリア周波数を持つ振動波形に変換し、その波形の振幅ai(t)を窓掛け処理部1142aに対して出力する(ステップS21)。
【0186】
窓掛け処理部1142aは、入力された各フレームiの振幅ai(t)に対して
図23に示した窓関数を用いた窓掛け処理を行ない、処理結果をフレーム合成部1143aに入力する(ステップS22)。
【0187】
フレーム合成部1143aは、1~N番目のフレームについての窓掛け処理部1142aからの入力についてフレーム合成を行ない、振動波形の振幅A(t)を出力する(ステップS23)。
【0188】
次に、
図26のステップS5に示した補正した振動波形の生成処理の詳細を、
図37に示すブロック図(ステップS31及びS32)に従って説明する。
【0189】
図37に示すように、第2振動生成部114bは、振幅振動変換部1141b及び波形出力部1142bとして機能する。第2振動生成部114bは、入力された信号A(t)を持ち、キャリア周波数を持つ正弦波を出力する。生成される波形は、振動が滑らかに繋がるように位相が制御されてよい。
【0190】
振幅振動変換部1141bは、入力された振幅A(t)を振動に変換する(ステップS31)。
【0191】
波形出力部1142bは、振幅がA(t)になるように、キャリア周波数をもつ正弦波S2(t)を出力する(ステップS32)。
【0192】
〔B〕効果
実施形態の一例における双方向触覚伝達システム100,触覚伝達プログラム及び触覚伝達方法によれば、例えば、以下の作用効果を奏することができる。
【0193】
振動センサ31は、振動入出力デバイス3において発生した振動を計測する。算出部113Aは、振動センサ31によって計測された振動から特定される知覚情報を算出する。変換部114Aは、算出部113Aによって算出された知覚情報を維持しながら、振動にかする信号を所定の周波数に変換する。信号出力部115Aは、変換部114Aによって変換された変換後の信号を、他の振動入出力デバイス3のバイブレータ32に出力振動として出力させる。
【0194】
これにより、双方向触覚伝達システム100における接触信号のハウリング及びループバックを抑制することができる。具体的には、アクチュエータの信号を、知覚情報を維持しながら、筐体の固有振動とは別の周波数をもつ信号に変調して駆動することで、双方向通信によって生じるハウリングを抑制することが可能になる。また、アクチュエータの駆動信号を、筐体の固有振動とは異なるキャリア周波数で一定に保ち、センサ信号からこのキャリア周波数をもつ信号を除去することで、センサ信号への混信することを防ぎ、ループバックを抑制することが可能になる。
【0195】
〔C〕その他
開示の技術は上述した各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。各実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0196】
図38は、
図1に示した双方向触覚伝達システム100において複数の振動装置310,320を用いる場合のDACの構成例を示すブロック図である。
【0197】
図38に示す例では、
図3~
図5に示したDA変換部2162は、高域ゲイン調整器21a,低域ゲイン調整器21b,高域用振動装置駆動回路22a及び低域用振動装置駆動回路22bとして機能する。また、
図1に示したバイブレータ32は、高域用振動装置310及び低域用振動装置320として機能する。
【0198】
高域ゲイン調整器21aは、端末1から入力された第2振動波形S2(t)を、高域用振動装置駆動回路22aを介して、高域用振動装置310に出力する。また、低域ゲイン調整器21bは、端末1から入力された第1振動波形S1(t)を、低域用振動装置駆動回路22bを介して、低域用振動装置320に出力する。
【0199】
図39は、
図1に示した双方向触覚伝達システム100において単一の振動装置を用いる場合のDACの構成例を示すブロック図である。
【0200】
図39に示す例では、
図3~
図5に示したDA変換部2162は、高域ゲイン調整器21a,低域ゲイン調整器21b及び振動装置駆動回路22として機能する。また、
図1に示したバイブレータ32は、振動装置30として機能する。
【0201】
高域ゲイン調整器21a及び低域ゲイン調整器21bは、端末1から入力された第2振動波形S2(t)及び第1振動波形S1(t)をそれぞれ、共通の振動装置駆動回路22を介して、共通の振動装置30に出力する。
【符号の説明】
【0202】
100 :双方向触覚伝達システム
1 :端末
11 :CPU
1000 :ISM部
111 :周波数除去制御部
111a :信号除去部
111b :低域通過濾波器
111d :補正エネルギー算出部
112 :時間分割制御部
113A :算出部
113,1131,1132:エネルギー制御部
113a :基底信号分離制御部
113b :周波数算出部
113c :エネルギー補正パラメータ算出部
113d :補正エネルギー算出部
113e :ゲイン算出部
113f :信号源識別部
113g :低周波成分合成部
114A :変換部
114a :エネルギー振動変換部
114b :第2振動生成部
114c :第1振動生成部
1141a :エネルギー等価変換部
1142a :窓掛け処理部
1143a :フレーム合成部
1141b :振幅振動変換部
1142b :波形出力部
115A :信号出力部
12 :メモリ
13 :記憶装置
2 :USBオーディオI/F
21a :高域ゲイン調整器
21b :低域ゲイン調整器
211 :振動計測部
212,217:信号増幅部
213 :信号入力処理部
2131 :AD変換部
2132 :バンドストップフィルタ
2133 :イコライザ
2134,2163:周波数変換部
2135 :インテンシティ算出部
214 :信号送信部
215 :信号受信部
216 :信号出力部
2161 :バッファリング
2162 :DA変換部
2164 :振動波形生成部
22 :振動装置駆動回路
22a :高域用振動装置駆動回路
22b :低域用振動装置駆動回路
3,3a~3e:振動入出力デバイス
301 :接触板
302 :固定部
31 :振動センサ
310 :高域用振動装置
32 :バイブレータ
320 :低域用振動装置
33 :接触位置検知用センサ
4 :アンプ
【手続補正書】
【提出日】2024-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムであって、
前記触覚伝達装置において発生した振動及び前記振動の発生位置を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記計測部によって計測された前記発生位置に基づき前記他の触覚伝達装置の複数の振動子に分配して出力振動として出力させる信号出力部と、
を備え、
前記変換部は、前記複数の振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる、
双方向触覚伝達システム。
【請求項2】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムであって、
前記触覚伝達装置において発生した振動及び前記振動の発生位置を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記振動から特定される知覚情報を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された変換後の信号を、前記計測部によって計測された前記発生位置に基づき前記他の触覚伝達装置の複数の振動子に分配して出力振動として出力させる信号出力部と、
を備え、
前記変換部は、前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
双方向触覚伝達システム。
【請求項3】
前記計測部は、前記振動の発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出する接触位置検出センサを備え、
前記信号出力部は、前記接触位置検出センサによる検出の結果に基づき、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項4】
前記計測部は、複数の振動センサを備え、
前記信号出力部は、前記複数の振動センサに対する入力強度差に基づき、前記発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出して、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項5】
環境側に設置されると共にユーザの身体が接触することにより振動を伝える接触板において、前記計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1~4のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項6】
ユーザの身体に取り付け可能なウェアラブルデバイスに前記計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項7】
ユーザが把持するデバイスに前記計測部及び前記振動子が配置された、
請求項1又は2に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項8】
前記触覚伝達装置における前記振動及び前記発生位置の計測処理に基づいた前記他の触覚伝達装置における前記出力振動の出力処理は、前記他の触覚伝達装置における前記振動及び前記発生位置の計測処理に基づいた前記触覚伝達装置における前記出力振動の出力処理にも適用される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の双方向触覚伝達システム。
【請求項9】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおけるコンピュータに、
前記触覚伝達装置において発生した振動及び前記振動の発生位置を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、計測された前記発生位置に基づき前記他の触覚伝達装置の複数の振動子に分配して出力振動として出力させ、
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
処理を実行させる、双方向触覚伝達プログラム。
【請求項10】
前記発生位置を計測する処理において、前記発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出し、
前記出力振動を出力する処理において、前記検出の結果に基づき、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項9に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項11】
前記振動及び前記発生位置を計測する処理は、複数の振動センサによって実行され、
前記出力振動を出力する処理において、前記複数の振動センサに対する入力強度差に基づき、前記発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出して、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項9に記載の双方向触覚伝達プログラム。
【請求項12】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおける双方向触覚伝達方法であって、
前記触覚伝達装置において発生した振動及び前記振動の発生位置を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、計測された前記発生位置に基づき前記他の触覚伝達装置の複数の振動子に分配して出力振動として出力させ、
前記複数の振動子において出力される振動のループバックが抑制されるように、フィルタ処理によって特定の周波数帯域を減衰させる、
処理を実行させる、双方向触覚伝達方法。
【請求項13】
触覚伝達装置と他の触覚伝達装置とを有する双方向触覚伝達システムにおける双方向触覚伝達方法であって、
前記触覚伝達装置において発生した振動及び前記振動の発生位置を計測し、
計測された前記振動から特定される知覚情報を算出し、
算出された前記知覚情報を維持しながら、前記振動に関する信号を所定の周波数に変換し、
変換後の信号を、計測された前記発生位置に基づき前記他の触覚伝達装置の複数の振動子に分配して出力振動として出力させ、
前記所定の周波数として、前記触覚伝達装置の筐体の共振周波数以外の周波数に前記信号を変換する、
処理を実行させる、双方向触覚伝達方法。
【請求項14】
前記発生位置を計測する処理において、前記発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出し、
前記出力振動を出力する処理において、前記検出の結果に基づき、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
請求項12又は13に記載の双方向触覚伝達方法。
【請求項15】
前記振動及び前記発生位置を計測する処理は、複数の振動センサによって実行され、
前記出力振動を出力する処理において、前記複数の振動センサに対する入力強度差に基づき、前記発生位置を、ユーザの前記触覚伝達装置の筐体への接触位置として検出して、振動の移動感覚を前記複数の振動子に分配して出力させる、
請求項12又は13に記載の双方向触覚伝達方法。