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特開2024-166262有害物質除去用組成物の製造方法および有害物質を除去する方法
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  • 特開-有害物質除去用組成物の製造方法および有害物質を除去する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166262
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】有害物質除去用組成物の製造方法および有害物質を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/34 20060101AFI20241121BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241121BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241121BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20241121BHJP
   B01F 23/2375 20220101ALI20241121BHJP
   B01F 23/233 20220101ALI20241121BHJP
   B01F 25/45 20220101ALI20241121BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241121BHJP
   B01F 101/44 20220101ALN20241121BHJP
【FI】
A01N25/34 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/00 Z
A61L2/02
B01F23/2375
B01F23/233
B01F25/45
A61K9/00
A61P31/00
A61P31/12
B01F101:44
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153548
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2020090153の分割
【原出願日】2020-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020058705
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520460971
【氏名又は名称】シンバイオシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(74)【代理人】
【識別番号】100174012
【弁理士】
【氏名又は名称】小前 陽一
(72)【発明者】
【氏名】清水 真
(57)【要約】
【課題】 ウイルスや微生物等の有害物質を効果的に除去することのできる組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 下記の(I)及び(II)を含むことを特徴とする、殺菌成分を含まない有害物質除去用組成物であって、前記有害物質は、ウイルス、微生物および毒素から選択される少なくとも1種である有害物質除去用組成物の製造方法。
(I)平均気泡径がナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群(ただし、前記気泡中の気体成分としてオゾンを含むものを除く)であって、回転せん断方式による気泡を発生させる気泡発生工程と、前記気泡発生工程により発生させた気泡をフィルターによりナノバブル化するナノバブル化工程とにより得られた気泡群
(II)溶媒
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(I)及び(II)を含むことを特徴とする、殺菌成分を含まない有害物質除去用組成物であって、前記有害物質は、ウイルス、微生物および毒素から選択される少なくとも1種である有害物質除去用組成物の製造方法。
(I)平均気泡径がナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群(ただし、前記気泡中の気体成分としてオゾンを含むものを除く)であって、回転せん断方式による気泡を発生させる気泡発生工程と、前記気泡発生工程により発生させた気泡をフィルターによりナノバブル化するナノバブル化工程とにより得られた気泡群
(II)溶媒
【請求項2】
前記気泡中の気体成分が、下記の1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1記載の組成物の製造方法。
(i)大気
(ii)水素
(iii)窒素
(iv)酸素
(v)二酸化炭素
(vi)アルゴン
【請求項3】
(I)の濃度が、5000万個/ml以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物の製造方法。
【請求項4】
(I)の濃度が、8000万個/ml以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項5】
有害物質が、ウイルス及び/又は微生物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組成物の製造方法による組成物を用いて、有害物質を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的なウイルス及び/又は微生物等の有害物質の除去用組成物の製造方法及び有害物質を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毎年の新型インフルエンザの流行に見られるように、ウイルスは変異することによって、抗ウイルス剤や抗体への対抗手段を身につける能力を有していることから、人類とウイルスとの戦いは、イタチごっこのように終わりの見えないものである。
【0003】
一方で、ウイルスは、熱に弱く、一般には56℃・30分でカプシド蛋白質(又はコート蛋白)と呼ばれる外殻蛋白質が変性して不活化できるとも言われている。しかしながら、ウイルスによっては、例えばカプシド蛋白質の周りに存在する脂質性膜(エンベロープ)が無いノンエンベロープウイルス等、非常に耐熱性の高いものもあるため、この程度の加熱では十分では無く、外部熱源によって不活性化に十分な温度と時間を維持することが不可能な場所もあることから、人為的な加熱による除染には限界があった。
【0004】
従来、オゾン水等による除菌・ウイルス除去方法も開発されているが、大量のオゾンは人体に有害であることから、利用する際には、慎重を期する必要があった。
【0005】
このオゾン殺菌に、ナノバブル水を利用することも検討されているが(非特許文献1)、これは、主にオゾン自体の抗菌力を用いるもので、マイクロバブルの圧壊によって一部に生じたナノバブルを利用して、オゾンの長期保存性を高めたり、細かな位置までオゾンを届けることを目的とするものであって、ナノバブル自体の圧壊によってウイルス除去等をするものでは無かった。
【0006】
一方、従来、直径が1μm未満のナノバブル等を発生させる装置の開発が進み、それらの気泡を含有する溶液(ナノバブル水)が、医療、農業、水産・養殖業等の種々の分野で利用されるようになって来ており、例えば水産業での利用には、除菌等に用いられることが知られているが、効果が十分なものでは無かった。
【0007】
本発明者は、平均気泡径がナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群を含む溶液(以下、「ナノバブル水」と記載することがある。)を腸内フローラ移植等に利用する技術を開発したが(特許文献1)、これは気泡によって腸内細菌等を保護し、生きたまま腸に生着させるための技術であって、除菌を含めた有害物質等の除去技術とはむしろ逆の技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2019/168034
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】マイクロバブル・ナノバブルの基礎と工学的応用‐オゾンの新しい可能性についての検討‐(高橋正好,日本医療・環境オゾン研究会会報,Vol.14,No.4,68-74.(2007))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、ナノバブル水中に存在する微細な気泡の圧壊等の現象発生時に発生するエネルギーを、ウイルス除染や除菌等に応用することに思い至り、また更に、特許文献1の我々の腸内フローラ移植技術において、移植用の腸内細菌の高い「保存安定性」を、ナノバブル水で処理した腸内細菌の「増殖活性の維持」(試験例6)によって示したが、その後、増殖速度自体が腸内細菌本来の増殖速度よりも遅かったことに着目し、ナノバブルには、細菌の増殖速度の抑制効果もあるのではないかと考え、本発明に到達したものであって、その目的とするところは、ウイルスや微生物等の有害物質を効果的に除去することのできる組成物の製造方法等を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、下記第一の発明から第六の発明によって、達成される。
【0012】
<第一の発明>
下記の(I)及び(II)を含むことを特徴とする、殺菌成分を含まない有害物質除去用組成物であって、前記有害物質は、ウイルス、微生物および毒素から選択される少なくとも1種である有害物質除去用組成物の製造方法。
【0013】
(I)平均気泡径がナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群(ただし、前記気泡中の気体成分としてオゾンを含むものを除く)であって、回転せん断方式による気泡を発生させる気泡発生工程と、前記気泡発生工程により発生させた気泡をフィルターによりナノバブル化するナノバブル化工程とにより得られた気泡群
(II)溶媒
【0014】
<第二の発明>
前記気泡中の気体成分が、下記の1種又は2種以上であることを特徴とする、第一の発明に記載の組成物の製造方法。
【0015】
(i)大気
(ii)水素
(iii)窒素
(iv)酸素
(v)二酸化炭素
(vi)アルゴン
【0016】
<第三の発明>
(I)の濃度が、5000万個/ml以上であることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載の組成物の製造方法。
【0017】
<第四の発明>
(I)の濃度が、8000万個/ml以上であることを特徴とする、第一乃至第三のいずれか一つの発明に記載の組成物の製造方法。
【0018】
<第五の発明>
有害物質が、ウイルス及び/又は微生物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、第一乃至第四のいずれか一つの発明に記載の組成物の製造方法。
【0019】
<第六の発明>
第一乃至第五のいずれか一つの発明に記載の組成物を用いて、有害物質を除去する方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の「有害物質除去用組成物」は、耐性を引き起こす可能性のある薬剤や、オゾン等の除菌力は高いが人体にも有害な物質を主成分として使用しなくても、気泡の圧壊等によるエネルギーの発散のみで、ウイルスや微生物その他の有害物質を効果的に除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明で使用した実施例1乃至3の「有害物質除去用組成物(ナノバブル水)」(測定用の4000倍希釈液)中の、気泡の大きさ、数量等を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
[本発明の有害物質除去用組成物]
本発明の「有害物質除去用組成物」は、下記の(I)及び(II)を含むことを特徴とするものである。
(I)平均気泡径がナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群
(II)溶媒
【0024】
有害物質とは、ウイルス、微生物、毒素、放射性物質等のほか、人体に悪影響を及ぼすあらゆる物質を意味するが、気泡の圧壊等によって生じるエネルギー(2千数百℃に相当する発熱)によって除去可能な物質であることが好ましい。
【0025】
(ウイルスとは)
本発明の組成物による「除去対象」である「ウイルス」には、人体に有害な作用を及ぼす、公知及び未知(新型や未確認のもの等)のあらゆるウイルスが含まれ、構造上の分類としては、例えば、
一本鎖又は二本鎖のDNAウイルス、
一本鎖又は二本鎖のRNAウイルス、
一本鎖DNAと一本鎖RNAからなるハイブリッド体、
RNAとDNAが結合して一本鎖となったキメラ体、
等が挙げられ、
中でも病原ウイルスが、本願の適用が効果的である点で、好ましいものとして挙げられるが、これらに限られるものでは無い。
【0026】
また、「ウイルス」には、天然に存在するウイルスのほか、それらを人為的に操作した「改変体」や一から合成したもの、或いはウイルスの一部(モジュール)等も含まれる。「改変体」には、当該遺伝子としての機能を損なわない範囲で、1乃至数個の核酸を「欠失」、「置換」、「付加」、又は「挿入」した、核酸配列自体の改変体の他、「メチル化」、「リン酸化」、「アミノ基修飾」その他の、核酸医薬等に用いられる公知の修飾を施したもの等が含まれる。
【0027】
「ウイルス」の具体例は、例えば下記の[表1]に記載されたようなものが挙げられる。
【0028】
【表1】
(微生物とは)
本発明の組成物による「除去対象」である「微生物」としては、下記の病原性微生物、或いはその突然変異体や人為的な変異体等が、本発明の組成物を効果的に発揮できる対象として例示されるが、これらに限られるものではない。
【0029】
(真核生物)
【0030】
真菌:
白癬菌(水虫菌)、カンジダ、クリプトコッカス、コクシディオイデス・イミチス等
【0031】
細菌:肺炎マイコプラズマ等のマイコプラズマのほか、各種の病原性細菌が挙げられる。
【0032】
原虫:マラリヤ原虫、赤痢アメーバ、膣トリコモナス、ニューモチスカリニ肺炎、又はエキノコックス等、あるいはこれら原虫の卵等
【0033】
(原核生物)
【0034】
スピロヘータ:梅毒トレポネーマ、ポレリア(ライム病、回帰熱)、レプトスピラ(ワイル病)等
【0035】
リケッチア:発疹チフス、ツツガムシ病、Q熱(バーネッティ)、日本紅斑熱等の原因となる、動物由来の球形微生物
【0036】
クラミジア:オウム病、トラコーマ、鼠径リンパ肉芽腫症、クラミジア性感染症等の原因となる、細胞内寄生体
【0037】
尚、本発明においては、以下、「ウイルス及び/又は微生物」を、単に「ウイルス等」と記載することがある。
【0038】
(除去とは)
本発明において[除去」とは、除去の対象である「ウイルス等」の有害物質を、死滅、失活、不活化、又は増殖抑制することのほか、物理的に破壊又は対象部位から取り除くこと等を意味し、いわゆる消毒、無害化、中和、滅菌、殺菌、除染等も含まれる。
増殖抑制とは、増殖自体或いは増殖速度を抑制し、いわば「休眠状態」又は「仮眠状態」とすることによって、ウイルス等の繁殖を、(少なくとも一時的に)抑制することを言う。
失活とは、完全に死滅しないまでも、その生理活性等の作用をほぼ完全に失っている状態を言う。
不活化とは、なんらかの理由で一時的に生理活性等の作用を抑制されている状態を言う。
【0039】
尚、ナノサイズ以下(1μm未満)の気泡群は、数ナノ~数百ナノサイズのウイルスと接触すると、圧壊等によって、例えば3000K(ケルビン)以上(約2千数百℃相当)の非常に大きなエネルギーを発生するため、本発明の「有害物質除去用組成物」によれば、殆どの「ウイルス」を死滅又は少なくとも失活させることができると考えられる。
尚、気泡の圧壊は、同程度の大きさの対象に出会った場合に起こり易いことから、約1~5μmである細菌を初めとする、気泡よりも大きな微生物等の場合には、死滅や失活よりは、微生物同士の凝集に伴う爆発的な増殖を防止することによる、不活化又は増殖抑制効果、特に増殖速度の抑制効果が期待できる。
【0040】
《本発明で用いられる(I)の平均気泡径がナノサイズ以下の気泡群》
本発明で用いられる(I)の平均気泡径がナノサイズ以下の気泡群中の「気体成分」としては、例えば以下のようなものが好ましいが、必ずしもこれらに限定されるものでは無い。
【0041】
(気泡中の気体の種類)
気泡中の「気体成分」は、下記の1種又は2種以上であることが好ましい。
【0042】
(i)大気
(ii)水素
(iii)窒素
(iv)オゾン
(v)酸素
(vi)二酸化炭素
(vii)アルゴン
【0043】
(i)の大気を単独で用いる場合、例えば(ii)乃至(vii)のような特別な「気体成分」を準備しなくて良い点で、現実的であり、好ましい。
【0044】
尚、「大気」あるいは「2種以上の混合気体」を(II)の溶媒に導入した場合の、「溶媒(II)中に発生した気泡(I)」中の「各気体成分の封入比率」を正確に測定することは、容易ではない。
溶媒(II)中に気泡(I)を発生させる過程で、溶媒(II)中に溶け込み得る「量」や「スピード」が、「気体成分」毎に異なり、また、発生した気泡(I)中に封入された「気体成分」の「種類」や「比率」を正確に判定すること自体が容易ではないからである。
しかしながら、例えば単独種からなる「気体成分(仮にXとする。)」を用いた場合には、大気等の混合気体を用いる場合に比べて、「溶媒(II)中に発生した気泡(I)」中の、「気体成分(X)」の「封入比率」が高くなる筈であり、それによって、上述したような、「気体成分(X)」の特性(例えばウイルス等に対する除去性)を、より活かすことができると考えられる。
【0045】
従って、気泡中の「気体成分」として、敢えて「オゾン」等に代表されるような、それ自体で「(ウイルス等の)有害物質に対する除去効果を有する気体(下記(III))」を、大気に代えて或いは大気の一部を置換して封入することが好ましい場合もある。
【0046】
(III)有害物質に対する除去効果を有する気体
【0047】
しかしながら、本発明の「有害物質除去用組成物」は、そうした、除菌力は高いが、濃度や適用方法次第では人体にとっても悪影響を与える可能性を否定できない気体成分を、敢えて封入しなくとも、気泡の圧壊等の現象が生ずる時に発生するエネルギーのみで、ウイルス等を効果的に除去することができるため、「気体成分」としては、特別のものを準備しなくとも「大気」で十分である。
【0048】
尚、気体成分として「大気」を用いた場合にも、必然的に(III)等も気泡に封入される可能性があるが、大気に含まれる程度の比率では、当然ながら人体には殆ど無害であると考えられる。
【0049】
例えば、気泡中の特定の「気体成分(X)」の比率を、大気よりも高めるには、「気体成分(X)」単独を用いるほか、大気と「気体成分(X)」を併用する方法等が挙げられる。
【0050】
この場合、大気と「気体成分(X)」単独の気体を同時に封入しても良いが、大気とともに封入する「気体成分(X)」の濃度を段階的に増やしていく、或いは、当初は大気単独を用い、後半の段階で、「気体成分(X)」を封入する等の方法が挙げられ、これらの方法を用いることで、溶媒中への溶解等による「気体成分(X)」の損失が最小限に抑えられ、より多くの「気体成分(X)」を気泡中に封入することができると考えられる。
【0051】
大気と「気体成分(X)」を同時に用いる場合の比率は、特に制限されるものでは無いが、できるだけ多くの「気体成分(X)」を封入するには、例えば封入操作に使用する「気体成分(X)」の量を、使用する「(i)大気」の量の10倍以上とすることが好ましいと考えられ、より好ましくは、使用する「(i)大気」の量の100倍以上である。
【0052】
尚、この封入操作の過程で、(II)の溶媒中にも一部の「気体成分(X)」が溶解すると考えられるが、溶存した「気体成分(X)」自体に、ウイルス等に対する除去効果がある場合には、溶媒自体によっても、従来のいわゆるオゾン水同様、ある程度の除染効果が期待できる。
【0053】
従って、気泡への封入時に自然に溶け出す以外にも、敢えて(II)の溶媒中に、別途上記の「(III)有害物質に対する除去効果を有する気体」を溶解させることが、気泡の圧壊等の現象を生ずる時に発生するエネルギーとの相乗効果によって、本発明の組成物の、有害物質除去性を高めることができるため、好ましい場合もある。
【0054】
(気泡の大きさ)
本発明の「組成物」に用いられる気泡の大きさは、平均気泡径がナノサイズ以下である必要があるが、具体的な大きさは、臨機応変に変更することができる。
【0055】
「除去対象」が「ウイルス」の場合には、ウイルスに限界まで接近し、気泡の圧壊等の現象が生ずる時に発生するエネルギー3000K(ケルビン)以上(約2千数百℃に相当)で、ウイルスの外側に位置するエンベロープのような脂質成分や、カプシド蛋白質等を確実に変性・破壊するためにも、気泡の大きさは、ウイルス自体の大きさ(一般に10~100nm)に近いか、あるいはそれより小さいことが好ましい。
【0056】
また、ナノバブルの気泡内に含ませる気体として、オゾン等の「それ自体にウイルスや微生物等の有害物質の除去性能を有する気体」を用いる場合には、気泡の大きさを小さくすればするほど、気泡製造に伴って溶媒中へ必然的に溶解する気泡等の量も増えることから、溶媒自体にも、除去性能を持たせることができ、組成物全体としての除去性能が相乗的に高まるため、好ましい。
【0057】
従って、ほとんどのウイルス等に対しても、除去性能を発揮するためには、気泡は小さければ小さい程良く、また気泡を小さくするほど、組成物の単位体積当たりの気泡数を多くでき、組成物中の気泡圧壊等により発生するエネルギーの総量を飛躍的に上げることができるが、特定の除去対象を特に念入りに除去したい場合等には、その除去対象(例えばウイルス)と同程度の大きさの気泡の比率が高いほど、圧壊が起こり易いと考えられるため好ましい。
【0058】
「除去対象」が真菌の場合には、気泡の大きさは、真菌自体の大きさ(一般に数μm)より小さければ良い。
【0059】
(全気泡中のナノサイズ以下の気泡の比率)
本発明の「組成物」中の全気泡中、「ナノサイズ以下の気泡」の割合は、必ずしも100%である必要は無い。
【0060】
しかし、従来の「ナノバブルによる各種の除菌剤」と比較して、「本発明の組成物」の除去効果が高い理由は、高密度のナノバブルの圧壊等の際に生じる、爆発的なエネルギーによるものであるため、組成物中の「ナノサイズ以下の気泡」の数は、多ければ多い程良く、中でも、除去の対象であるウイルス等の大きさと同等適度の大きさを有するものの比率が高い程良い。
【0061】
更に、ナノサイズよりも大きな気泡が多く存在すると、その大きな気泡の圧壊による組成物変性が起こる可能性があるという点でも、できるだけ「ナノサイズ以下の気泡」の比率が高いことが望ましく、例えば好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。
【0062】
また、気泡の大きさは、必ずしも均質にはならず、ある程度の気泡径分布を有するのが一般的である。
【0063】
そのため、具体的な目安としては、気泡の「平均径」(平均気泡径)が、ナノサイズ以下(1μm未満)であれば、小さな気泡も多数含まれると考えられる。
【0064】
(組成物中の気泡の数)
上述の通り、本発明の「組成物」中の気泡の数は、多いほうが、気泡圧壊により生じる総発熱量が増えるため望ましい。
具体的な数は除去対象の種類や濃度(ウイルス等の数)によっても異なり、一概には言えないが、「(I)平均気泡径がナノサイズ以下の気泡群」を製造することのできる公知の製造機器を用いた場合に一般的に発生し得る、数千個~数億個/mlであれば十分であることが、確認できている。但し、数千万個~数億個/mlであれば、より好ましいと考えられる。
【0065】
より具体的には、例えば(I)の濃度が、5000万個/ml以上であることが好ましく、より好ましくは8000万個/ml以上、更に好ましくは1億個/ml以上、特に好ましくは2億個/ml以上である。
【0066】
尚、気泡群の平均気泡径を測定する方法としては、電気的検知帯法(ElectricalSensingZoneMethod)として知られる下記のコールター原理を用いた方法が挙げられ、具体的には、ベックマン・コールター株式会社製の「Multisizer3」、「Multisizer4」、「Multisizer4e」等を使用する方法等が挙げられる。
【0067】
コールター原理とは、微細な導電性の空孔(アパチャー)が設けられた筒(マノメーター)の内部に一定量の電解液を流し、マノメーターの内部と外部とに電極を設置して直流電圧(内部電極にプラス、外部電極にマイナス)を印加し、粒子(気泡等)が検知帯(アパチャー感応領域)を通過すると、粒子の大きさ(体積)に比例して2電極間の電気抵抗が変化する原理をいう。この電気抵抗の変化を検出及び増幅することにより、粒子の個数と体積を同時に計測することができ、平均気泡径を算出することができる。
【0068】
《本発明で用いられる(II)の溶媒》
本発明で用いられる(II)の溶媒としては、特に限定されず、精製水、生理食塩水、ミネラルウォーター、清涼飲料水等でも良い。
【0069】
尚、(II)の溶媒中に(I)の気泡を発生させる装置として、ステンレス製等の機器を用いる場合には、機器が錆びるのを防止する観点からは、精製水やミネラルウォーター等が好ましい場合もある。
【0070】
(気泡の生成方法)
「(II)の溶媒中に、(I)の気泡を発生させる」方法としては、例えば下記のような方法、あるいはこれらの併用方法等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
【0071】
気液混合せん断方式:
気体を液体と共に高速旋回させる方法である。
【0072】
超音波方式:
液体に、衝撃派やキャビテーションを加えて、一旦できた気泡を更に圧壊する方法である。
【0073】
加圧溶解方式:
気体と液体に圧力をかけ、一気に放出することで、気泡を発生させる方法である。
【0074】
微細孔方式:
オリフィス等を用い、圧力をかけながら気体を供給する方法である。
【0075】
電気分解方式:
水溶液中に浸漬した細線から、気体を発生させる方法である。
【0076】
上記の中でも、「気液混合せん断方式」は、マイクロバブルの更なるせん断処理により、安定したナノサイズ以下の気泡を発生させることができるため好ましい。
【0077】
また、具体的には、例えば、下記1)及び2)等の市販の装置を併用する等して、ナノバブルを発生させることができる。
1)協和機設社製マイクロナノバブル発生装置「バヴィタス(登録商標)HYK-25」による、直径1マイクロメートル以下の気泡生成(回転せん断方式)
2)株式会社亞八和社製「νG7(登録商標)」によるマイクロナノバブルの、ナノバブル化(ステンレス製フィルター)
【0078】
尚、本件発明者によって開発された、下記特許出願に記載の「ウルトラファインバブル発生装置」を使用すると、気泡の粒径が1μm未満、例えば平均気泡径が数nm~数百nmのオーダーで、且つ濃度(気泡数)の濃いナノバブル水を、効率良く生成することができるため、特に好ましい。
【0079】
特願2020-57176(本発明者特許出願1)
【0080】
《その他の成分》
尚、本発明の「有害物質除去用組成物」には、本発明の目的を阻害しない範囲で、アルコールや次亜塩素酸等の、他の公知の「ウイルスや微生物その他の有害物質に対する除去効果を有する物質(天然物、人工物の別や、有機、無機の別等を問わない)」の他、色素、顔料、殺菌剤、抗菌剤、pH調整剤、安定剤、保存剤、酸化防止剤、増粘剤、粘度調整剤、等の各種の添加剤を含有させることができる。
【0081】
《本発明の「有害物質除去用組成物」の製造方法》
本発明の組成物は、
必要に応じて各種の添加剤等を含有させた(II)の溶媒中に、上述の方法で(I)の気泡
群を発生させる方法
或いは
(II)の溶媒中に、上述の方法で(I)の気泡群を発生させた後、必要に応じて更に各種
の添加剤等を含有させる方法
等によって、製造することができる。
【0082】
《本発明の「有害物質除去用組成物」の形態》
本発明の「有害物質除去用組成物」は、組成物中の「平均気泡径がナノサイズ以下の気泡群(I)」の崩壊を引き起こさない限り、その形態に特に制限はなく、公知のあらゆる組成物の形態を取ることができるが、例えば液状物やゲル状物等の形態が好ましい。
【0083】
液状物としては、例えばスプリンクラーや噴霧器で使用する際には、散布又は噴霧できる程度に低粘度であるものが好ましい。
また、除菌・消毒用のスプレー、消毒用のジェル、ハンドソープの形態等が挙げられる。
【0084】
口腔から投与する場合の「口腔用組成物」の代表的な製品としては、ヒト又は非ヒト動物用の、「医薬品」、「医薬部外品」等の治療用組成物、「飲食品」、「栄養補助食品」等が挙げられる。
「眼科用組成物」としては、「点眼薬」等が挙げられる。
「耳鼻科用組成物」としては、「点鼻薬」等が挙げられる。
「経皮投与用組成物」としては、「パップ剤」等の「貼付剤」や「軟膏」や「スプレー」等の「塗り薬」が挙げられる。
【0085】
[本発明の有害物質除去方法]
本発明の有害物質除去方法は、上述の本発明の組成物を用いることによって、実施することができる。
【0086】
具体的には、例えば液状の本発明組成物を、スプリンクラーや噴霧器で、ウイルス等を除去したい空間に、散布又は噴霧することによって、ウイルス等を除去することができる。
【0087】
また、そのほか、上述したような、除菌・消毒用のスプレー、消毒用のジェル、ハンドソープの形態で使用することで、ウイルス等を除去することができる。
【0088】
[ウイルス等の除去効果の確認方法(残存ウイルス測定方法)]
下記の、公知の「次世代シーケンサー(NextGenerationSequencer:NGS)」を用い、ウイルス毎に特有の、公知の遺伝子を指標として、測定する方法等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0089】
(次世代シーケンサー(NGS))
「次世代シーケンサー」とは、2000年頃に米国で開発されたもので、塩基配列を並行して読み出せるDNA断片の数が、従来のDNAシーケンサーに比べて桁違いに多い機器であり、米国のイルミナ(Illumina)社等によって、率先して開発されたものである。
【0090】
本発明においては、イルミナ株式会社製の次世代シーケンサーとして、例えば、DNAシーケンサー「MiSeqシリーズ」、「NextSeqシリーズ」、「HiSeqシリーズ」等を用いることができるが、その原理や使用方法等については、下記に開示されている。
【0091】
https://jp.illumina.com/landing/s/metagenome.html
【0092】
尚、測定対象がRNAの場合には、逆転写酵素によって、対応するcDNAに変換して測定することができる。
【0093】
尚、上記以外に、簡易的な試験方法として、下記の公知のTCID50試験等を使用することもできる。
【0094】
(TCID50試験)
TCID50試験(50% Tissue Culture Infectious Dose)とは、ウイルスに感染すると、細胞の形状が変化する現象(細胞変性)を利用した方法である。
【0095】
宿主細胞のうち50%を変性させ得る、ウイルス試料の濃度を測定することによって、当該ウイルス試料の感染力の指標とすることができる。
【0096】
つまり、本発明の「有害物質除去用組成物」によって処理したウイルス検体が、宿主細胞に対する50%毒性を示せる「希釈倍率の限界値」を比較することで、組成物のウイルス除去能力を比較評価することができる。
【実施例0097】
[実施例1~3:有害物質除去用組成物]
《材料及び方法:Materialandmethod》
【0098】
(「ナノバブル水」の製造)
上述の本発明者特許出願1に記載の「ウルトラファインバブル発生装置」を用いて、試料A、B、C(実施例1、2、3)のナノバブル水(原液)を製造した。
尚、「ウルトラファインバブル」とは、ナノサイズ以下(1μm未満)の微細な気泡を意味する。
【0099】
試料A~Cは、いずれも本発明者特許出願1において、第2の実施形態として説明したウルトラファインバブル発生装置10Aを用いて製造した。
キャリアー水として、ミネラル(陽イオン)を溶質とするRO水(逆浸透膜水)を用い、置換気体は水素を用いた。
【0100】
各試料は同一の装置を用いて製造しているが、製造時期が異なっている。
試料Aは試作機を製作して最初に計測した試料であり、測定日からみて約9年(9年3ヶ月程度)前の試料である。
試料Bは測定日の約1年前に採水した試料である。
試料Cは測定日の9日前に採水した試料である。
水道水はリファレンス用として測定日当日に採取して計測した水道水である。
【0101】
水道水にウルトラファインバブルが一切含まれないことは当然であるが、この測定装置で測定すると、水道水中に混入しているパーティクルの粒子数が計測される。
試料A、B、Cは脱気水で4000倍希釈(約400倍希釈の試料をさらに10倍希釈して測定)したもの(希釈SampleA、B、C)を用いた。
【0102】
本実施形態の装置で生成したウルトラファインバブル水(試料A、B、C)については、4000倍に希釈しなければ計測できない程、大量の気泡が存在していたためである。なお、希釈には水道水を流しながら陰圧をかけてフラスコに溜める方法によって得られた脱気水を用いた。
【0103】
ベックマン・コールター株式会社製の「Multisizer4e」を用いて、上記で作製した「ナノバブル水の原液(試料A,B,C)」を、気泡径測定の便宜上、4000倍に希釈し、当該希釈溶液(サンプルA,B,C)中の、気泡の大きさ、数量(濃度)等を測定した。
【0104】
結果を図1に示すとともに、平均気泡径、気泡濃度を、下記に示す。
【0105】
サンプルA:平均気泡径391nm-気泡濃度58026個/ml
サンプルB:平均気泡径490nm-気泡濃度412198個/ml
サンプルC:平均気泡径383nm-気泡濃度168464個/ml
【0106】
従って、本発明で用いた「ナノバブル水(試料A,B,C)」(希釈前原液)の気泡濃度は、それぞれ下記の通りであると考えられる。
【0107】
試料A:58026×4000=約2.3億個/ml
試料B:412198×4000=約16.5億個/ml
試料C:168464×4000=約6.7億個/ml
【0108】
[実施例4~5:有害物質除去用組成物]
封入する気体成分として、水素単独を使用した以外は、実施例1~3と同様にして製造した「有害物質除去用組成物」を、実施例4(水素ナノバブル水)とした。
また同様に、封入する気体成分として、オゾン単独を使用した以外は、実施例1~3と同様にして製造した「有害物質除去用組成物」を、実施例5(オゾンナノバブル水)とした。
【0109】
[比較例1:有害物質除去用組成物]
比較のために、超純水を、比較例1の「有害物質除去用組成物」とした。
【0110】
[試験例1(ウイルス除去試験)]
下記の「有害物質除去用組成物」について、インフルエンザウイルスに対する除去効果を確認した。
【0111】
試験対象:
実施例3の「有害物質除去用組成物」(水素一部置換大気ナノバブル水)
実施例4の「有害物質除去用組成物」(水素ナノバブル水)
実施例5の「有害物質除去用組成物」(オゾンナノバブル水)
比較例1の「有害物質除去用組成物」(超純水)
【0112】
除去対象;
インフルエンザウイルス(一本鎖RNAウイルス)
【0113】
試験方法:
上述したTCID50試験を採用した。
【0114】
試験結果:
<宿主細胞の50%を変性し得る希釈倍率の限界値の比>
100倍希釈(実施例3処理):1000倍希釈(比較例1処理)
10倍希釈(実施例4又は5処理):1000倍希釈(比較例1処理)
【0115】
つまり
実施例3の組成物で処理したウイルス検体の場合、比較例1の組成物で処理したものより、ウイルスを不活性化させ得る希釈倍率の限界値の桁が1桁少なく
実施例4又は5の組成物で処理したウイルス検体の場合、比較例1の組成物で処理したものより、ウイルスを不活性化させ得る希釈倍率の限界値の桁が2桁以上少ないという結果が得られた。
【0116】
考察:
これは、インフルエンザウイルスが、本発明の組成物中の多数のナノバブルと接触することによって、気泡を圧壊等に導いた結果、その際に発生する高いエネルギーによって、インフルエンザウイルスがダメージを受けたことにより、当該ウイルス検体の、細胞変性能力(感染力)が劣化したことによるものと考えられる。
【0117】
[試験例2(細菌除去試験1)]
下記の「有害物質除去用組成物」について、生活空間における一般生菌数に与える除去効果を確認した。
【0118】
試験対象:
実施例3の「有害物質除去用組成物」(水素一部置換大気ナノバブル水)
実施例5の「有害物質除去用組成物」(オゾンナノバブル水)
【0119】
除去対象:
生活空間(特に除菌等を行っていない空間)において繁殖している細菌類
【0120】
試験方法:
(検体採取)
生活空間内にある同一の机の上に、下記の3つの試験円(半径約8cm)を、50cm程度の間隔を空けて描き、ブランク以外の2つの円には、下記のナノバブル水(NB水)を各々1ml噴霧し、3つの円各々について、直ちに無菌綿球で円内10か所を無作為に拭い取って、検体とした。10箇所は、1つの無菌綿球を回転させながら、満遍なく拭い取った。
【0121】
H2-NB水円:実施例3の「有害物質除去用組成物」(水素一部置換大気ナノバブル水)
O3-NB水円:実施例5の「有害物質除去用組成物」(オゾンナノバブル水)
ブランク-円:生活空間のまま(噴霧無し)
【0122】
(細菌培養)
無菌綿球に付着した微生物を浮遊液によく浮遊させて、各浮遊液1mlを評価用サンプルとした。各評価用サンプルから、定量白金耳で1μl採取し、寒天平板に塗沫し、一般生菌数を測定する常法に従い、35℃の孵卵器で、2日間培養した。
【0123】
(一般生菌数のカウント)
2日間の培養後、寒天平板上のコロニー数を目視にてカウントし、各評価用サンプル1μlあたりの一般生菌数(2日後のコロニー数)とした。
【0124】
尚、「一般生菌」とは、いわゆる「雑菌」、すなわち食品衛生法上で汚染の度合いを示す指標菌を意味する。
【0125】
試験結果:
「一般生菌数」
H2-NB水円(実施例3):コロニー数10個未満/評価用サンプル1μl :清浄
O3-NB水円(実施例5):コロニー数10個未満/評価用サンプル1μl :清浄
ブランク-円:コロニー数20個/評価用サンプル1μl :中程度の汚染
(※実施例及びブランクの全ての評価サンプルにおいて、大腸菌、黄色ブドウ球菌については、陰性)
【0126】
つまり、実施例の「有害物質除去用組成物」で処理した検体は、ブランクと比較して、明らかに一般生菌数が少なく、食品衛生法上で言うと、中程度の汚染状態が、清浄レベルになっていることが判明した。
【0127】
考察:
これは、本発明の有害物質除去用が、一般生菌(雑菌)の増殖抑制に効果的であることを示している。
【0128】
[試験例3(細菌除去試験2)]
下記の「有害物質除去用組成物」について、腸内細菌の「増殖抑制効果」を十分発揮し得る「気泡濃度」を確認した。
【0129】
尚、ここで用いた腸内細菌試料は、必ずしも「増殖抑制すべき有害物質」には当たらないが、ここでは、細菌の増殖を抑制し得る「気泡(ナノバブル)濃度」を確認するために、菌数の多い(高濃度)試料の代表として選択した。
【0130】
試験対象:
O3-NB-1)実施例5の「有害物質除去用組成物」(オゾンナノバブル水・原液)
O3-NB-2)実施例5の20倍希釈液
O3-NB-3)実施例5の100倍希釈液
O3-NB-4)実施例5の1000倍希釈液
【0131】
尚、上記の希釈には、「注射用蒸留水」を用いた。
【0132】
除去対象:(腸内細菌)
ヒト糞便「100g」を「250ml」の水素一部置換大気ナノバブル水に浸し、軽く拌して糞便を半自然溶解させ、溶解液(A)を得た。
次に、この溶解液(A)を、滅菌したガーゼを用いて、光学顕微鏡(低倍率)で食物残渣等の不要物が確認できなくなるまで複数回濾過し、濾液(B)を得た。
濾液(B)を注射用蒸留水で1000倍に希釈し、除去対象である「腸内細菌試料原液」(C)とした。
【0133】
尚、滅菌したガーゼは、「腸内細菌」や「ナノバブル」が通過できるサイズの空隙を有するものを使用した。
【0134】
また、糞便溶解時に、「水素一部置換大気ナノバブル水」を用いたのは、「腸内細菌試料原液」(C)の、密封保存下での、長期保存性確保のためである。
後述の「評価サンプル」の作成において、上述の試験対象(オゾンナノバブル水)があらためて「腸内細菌試料原液」(C)に加えられるが、長期保存性確保のために使用した「水素一部置換大気ナノバブル水」は、下記培養試験における、「各種濃度のオゾンナノバブル水」による、腸内細菌の増殖速度の抑制効果の比較には、大きな影響を与えるものではないと考えられる。
下記培養試験においては、密閉保存状態から開放して培養するため、「再び活性化すると思われる腸内細菌」の増殖速度の抑制には、あらためて、ナノバブル水が必要と考えられるからである。
【0135】
試験方法:
(評価サンプルの作成)
上記腸内細菌試料原液(C)10μlに、試験対象であるナノバブル水(実施例5の原液及び各希釈液)を、各々9990μl添加し(1000倍稀釈)、評価サンプル-1)~4)を得た。
【0136】
(細菌培養)
各評価サンプルから、定量白金耳で1μl採取し、寒天平板に塗沫し、一般生菌数を測定する常法に準じて、35℃の孵卵器で、2日間培養した。
【0137】
(腸内細菌数のカウント)
2日間の培養後、寒天平板上のコロニー数を目視にてカウントし、各評価サンプル1μlあたりの一般生菌数(2日後のコロニー数)とした。
【0138】
試験結果:
評価サンプル-1):腸内細菌コロニーの数20個/1μl
評価サンプル-2):腸内細菌コロニーの数40個/1μl
評価サンプル-3):腸内細菌コロニーの数20個/1μl
評価サンプル-4):腸内細菌コロニーの数70個/1μl
【0139】
上記の通り、実施例5の「有害物質除去用組成物」(オゾンナノバブル水・原液)を1000倍希釈しても、腸内細菌の増殖をある程度抑制出来ていることが判明した。
【0140】
考察:
実施例5のナノバブル水は、製造から9日以内のものであるため、実施例3(試料C:気泡濃度 約6.7億個/ml)と同等程度の気泡数を有するものである。
つまり、上述の結果は、気泡濃度67万個/ml以上のナノバブル水であれば、腸内細菌の「増殖抑制効果」を十分発揮し得ることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の有害物質除去用組成物は、各種のウイルスや微生物等に代表される有害物質を効果的に除去できるばかりでなく、薬剤等を用いた場合と比較して、耐性ができる可能性も低いと考えられるため、公衆衛生に非常に有益であると考えられる。
図1